図1は、本発明を適用した車両の内燃機関を含む始動情報表示装置の概要構成図である。エンジン1は、複数種類の燃料が混合された混合燃料を使用可能に構成されており、例えば、エタノールとガソリンを混合させた混合燃料を燃焼させることにより運転が行われる。エンジン1に空気を導入する吸気管2には、上流側からエアクリーナ3、スロットル弁4、インジェクタ5が設けられ、エアクリーナ3により浄化された吸入空気の流入量がスロットル弁4により調節され、インジェクタ5から噴射される燃料と混合されてエンジン1に供給される。エンジン1の排気管7の下流側には三元触媒8が設けられており、排気ガス中のHC、CO、NOx等の成分の浄化を行う。インジェクタ5は、エンジン1の作動を制御する制御装置、すなわちECU(Electric Control Unit)20に接続されており、ECU20からの噴射時間を含む噴射制御信号に基づいて、噴射時間に比例する量の混合燃料を吸気管2内に噴射する。ECU20には、始動表示器35が接続されており、ECU20からの表示制御信号に基づいて、環境条件がエンジンの始動性に与える影響が表示される。
スロットル弁4には、スロットル弁4の開度(スロットル開度TH)を検出するスロットル開度センサ(以下、THセンサと記載する)11が接続されており、例えばスロットル弁4における弁体の開閉角度位置を検出するポテンショメータを用いて構成される。スロットル弁4とエンジン1との間には、吸気管2内の圧力(吸気圧Pb)を検出する吸気圧センサ(以下、Pbセンサと記載する)12、吸気管2内に吸入された空気の温度(TA)を検出する吸気温センサ(以下、TAセンサと記載する)13が設けられている。Pbセンサ12は、例えば絶対圧型の圧力センサが用いられ、吸気管2内の絶対圧が検出される。THセンサ11、Pbセンサ12、TAセンサ13はECU20に接続されており、各センサの検出情報がECU20に入力される。
エンジン1には、エンジンを冷却する冷却水の温度(TW)を検出する水温センサ(以下、TWセンサと記載する)15、クランクシャフトの角度位置(クランク角CRK)を検出するクランク角センサ(以下、CRKセンサと記載する)16が設けられている。排気管7には、排気ガス中に含まれる酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(以下、O2センサと記載する)17が設けられている。なお、本実施形態では、エンジン1が水冷エンジンである場合の構成例を示す。TWセンサ15、CRKセンサ16、O2センサ17はECU20に接続されており、各センサの検出情報がECU20に入力される。
図2は、ECU20の内部構成を示したブロック図である。ECU20は、CPU21RAM22、ROM23、EEP−ROM24を備えており、これらはECU20の内部バスにより相互接続されている。THセンサ11、PBAセンサ12、TAセンサ13、TWセンサ15、CRKセンサ16、O2センサ17は、I/Oバスを介してCPU21に接続されており、上記各センサにおいて検出された検出情報がCPU21に入力される。また、インジェクタ5がI/Oバスを介してCPU21に接続されており、噴射制御信号をインジェクタ5に出力することにより、噴射制御信号に含まれる噴射時間に応じた量の混合燃料をインジェクタ5により噴射させる。
RAM22は、CPU21において動作する制御プログラムの動作領域等として用いられ、電力供給が停止されると、内部に記憶されている情報が消去される記憶デバイスである。ROM23は、CPU21にて動作する制御プログラムや、エンジン1を制御するための制御情報であるPb/Neマップ、Ne/THマップ、補正係数テーブル、始動制御情報などが予め設定記憶されており、電力供給が停止されても、内部に記憶されている情報が消去されずに保持される記憶デバイスである。EEP−ROM24は、CPU21の動作中にCPU21により情報の書き込み及び消去が行われ、電力供給が停止されても、内部に記憶されている情報が消去されずに保持される記憶デバイスである。
始動表示器35は、運転者に車両の運行状態を表示する走行表示装置に設けられている。図3に、走行表示装置の一例として自動二輪車のメータユニット40の正面図を示す。メータユニット40は、正面略中央部に配置されたタコメータ42、タコメータ42の前方に配置されたスピードメータ42、スピードメータ43の左右側方に配設された情報表示装置44,45、タコメータ42の左右側方に配設された各種インジケータランプ46などを備えて構成され、始動表示装置35は、このようなメータユニット40におけるインジケータランプのひとつ、例えば46dとして設けられる。
また図4に、走行表示装置の他の構成例として自動二輪車のメータユニット50の正面図を示す。このメータユニット50は、左右に並んで設けられたタコメータ52及びスピードメータ53と、これらのメータ52,53の間に位置してユニット中央部に設けられた情報表示装置54,55及び各種インジケータランプ56、情報表示装置の手前側に設けられたメインスイッチ(メインSW)58などを備えて構成され、始動表示器35は、このようなメータユニット50における情報表示装置のひとつ、例えば55として設けられ、指針式のメータや液晶表示装置等を用いて構成される。なお、図3及び図4では、始動表示器35を自動二輪車のメータユニットに設けた構成例を示すが、四輪車等にあっては、同様の表示器を運転席のメータユニット(いわゆるインパネ部)に設けて構成することができる。
(エンジン制御の原理)
次に、ECU20によるエンジン1の制御の原理について説明する。エンジン1は、吸気管2を通じて流入する空気とインジェクタ5から噴射される燃料との比率である空燃比が適切な値になったときに好適な状態で運転する。ここで、空燃比は空気量を燃料量で除した値で表される。ECU20は、様々な条件において、最適な状態でエンジン1を運転させるため、適切な噴射燃料量(噴射時間)の算出を行い、算出した噴射量の燃料をインジェクタ5に噴射させる制御を行う。ECU20による噴射燃料量の算出方法は、必要となる噴射燃料量の違いから、エンジン1の始動時と、通常運転時とで異なる方法が採用されている。なお、噴射燃料量はインジェクタ5から噴射される燃料の噴射時間により規定され、また通常運転時とは、エンジン1がスタータモータ等によらず自走運転している状態時のことをいう。
エンジン1の始動時に必要とされる燃料の噴射量、すなわちインジェクタ5の始動噴射時間(TICR)は、図5にエンジンの始動性に関する一般的特性を示すように、エンジン1始動時の環境温度が高い方が好適な始動噴射時間TICRが短く(噴射量が少なく)、環境温度が低下すると好適な始動噴射時間TICRが長くなる(噴射量が多くなる)傾向を有する。また同図中に、燃料がエタノールの場合を実線で示し、ガソリンの場合を点線で示すように、上記傾向は燃料がエタノールの場合により顕著に現れ、環境温度が所定温度T0(例えば10℃程度)を下回ると急激に好適な始動噴射時間TICRが長くなることが実験により求められている。
このことは、エンジンの始動時における環境温度が高い場合には、燃料タンクに貯留された燃料の混合比率にかかわらず、ほぼ一定の短い噴射時間で良好な始動性を確保できるが、環境温度がT0を下回ると、燃料の混合比率によっては(エタノールの混合比率が高いと)、良好な始動性を確保するために環境温度に応じた噴射時間が必要となり、始動噴射時間TICRが短いと始動性が悪化し得ることを示している。
(第1実施形態の始動情報表示装置)
そこで、第1実施形態の始動情報表示装置では、燃料の混合比率によっては、環境温度に応じた始動噴射時間TICRの設定が必要となる環境温度T0を予めROM23に記憶させておき、メインスイッチがONされたときに、CPU21がROM23から読み出した温度T0と、TAセンサ13から入力される吸気温TAの検出値(または外気温センサ18から入力される外気温TA′の検出値)とを対比して、エンジン1の始動性に与える影響を始動表示器35に表示させる。
具体的には、始動表示器35としてインジケータランプ46dを用いる構成において、吸気温TA(または外気温TA′、以下同様)がT0以下であり、始動性が悪化する可能性があると判定した場合にインジケータランプ46dを点灯させ、吸気温TAがT0を超えており始動性の悪化が想定されないと判定した場合にインジケータランプ46dを消灯させる。あるいは、インジケータランプ46dに複数色を発光可能なLED等を用い、吸気温TAがT0以下で始動性が悪化する可能性があると判定した場合にインジケータランプ46dを赤色に点灯させ、吸気温TAがT0を超えており始動性の悪化が想定されないと判定した場合にインジケータランプ46dを緑色に点灯させる。
このような構成の始動情報表示装置では、メインスイッチをONした際の温度がT0を超えるときにインジケータランプ46dが消灯状態で(複数色を発光可能なLED等を用いた構成例では緑色に点灯して)、環境温度に基づく始動性の悪化が想定されないことが報知され、温度がT0以下であるときにインジケータランプ46dが点灯して(同上構成例では赤色に点灯して)、燃料中のエタノールの混合比率が高い場合にはエンジン1がかかりにくい可能性があることが報知される。このため、運転者は当該環境下におけるエンジンの始動性の良否をエンジン始動に先だって認知することができる。
なお、図5中に付記するように、燃料の混合比率によりエタノールの混合比率が高い場合に環境温度に応じた始動噴射時間TICRの設定が必要となる温度、すなわちエンジンの始動性に影響が出る可能性がある温度T0の他に(またはT0に代えて)、エタノールの混合比率が所定以上である場合(例えばエタノールの混合比率が50%以上である場合)に環境温度に応じた始動噴射時間TICRの設定が必要となる温度、すなわち燃料として混合燃料を用いている場合にエンジンの始動性が悪化する可能性が高い温度T1を、予めROM23に記憶させておき、上記同様に始動表示器35に表示する構成とすることもできる。
例えば、吸気温TAがT0を超えていると判定した場合にインジケータランプ46dを消灯させ、吸気温TAがT1<TA≦T0であると判定した場合にインジケータランプ46dを点滅させ、吸気温TAがT1以下であると判定した場合にインジケータランプ46dを点灯させるように構成する。また、インジケータランプ46dとして複数色を発光可能なLEDを用いた構成例において、吸気温TAがT0を超えていると判定した場合にインジケータランプ46dを緑色に点灯させ、吸気温TAがT1<TA≦T0であると判定した場合にインジケータランプ46dを黄色に点灯させ、吸気温TAがT1以下であると判定した場合にインジケータランプ46dを赤色に点灯させるように構成する。
このような構成によれば、メインスイッチをONした際の温度がT0を超えるときにインジケータランプ46dが消灯状態で(複数色を発光可能なLED等を用いた構成例では緑色に点灯して)、環境温度に基づく始動性の悪化が想定されないことが報知され、温度がT1<TA≦T0であるときにインジケータランプ46dが点滅して(同上構成例では黄色に点灯して)燃料中のエタノールの混合比率が高い場合にエンジン1がかかりにくい可能性のあることが報知され、温度がT1以下であるときにインジケータランプ46dが点灯して(同上構成例では赤色に点灯して)混合燃料では始動性の悪化が想定されることが報知される。このため、運転者は当該環境下におけるエンジンの始動性の良否をエンジン始動に先だってより細かく認知することができる。
また、始動表示器35として情報表示装置55を用いる構成例では、CPU21はROM23から読み出した温度T0と、吸気温TAとを対比した情報を情報表示装置55に表示させる。例えば、情報表示装置55に、図6に示すような指針式のメータを用いた場合において、指針55aの指示範囲における基準指標55bから右側を良好な始動性が想定される領域H、基準指標55bから左側を始動性の悪化が想定される領域Cとして規定し、CPU21はTAセンサ13において検出された吸気温TAに基づいて想定される始動性の良否を指針55aの指示位置により表示する。
具体的には、TAセンサ13において検出された吸気温TAが前記所定の温度T0に等しい場合に指針55aが基準指標55bを指し、吸気温TAがT0を超えている場合に指針55aが基準指標55bよりも右側の領域H、吸気温TAがT0未満である場合に指針55aが基準指標55bよりも左側の領域Cを指すように構成する。基準指標55bに対する指針55aの振れ(ゲイン)は、適宜設定することができ、例えばT0を基準として左右方向とも温度変化に対して直線的な対応関係とし、あるいは、図5に示した環境温度と始動噴射時間TICRとの関係に合わせて、吸気温TAがT0を超えた場合の基準指標55bから右方向の振れ幅を温度変化に対して対数的に圧縮し、吸気温TAがT0未満になった場合の基準指標55bから左方向の振れ幅を温度変化に対して二次的に増大させた対応関係として設定することができる。なお、情報表示装置55に、LEDを利用したバーメータや液晶表示装置を用いることもでき、例えばLEDを利用したバーメータでは、T0を基準とする基準指標の左右で発光色の異なるLEDを採用し、あるいはT0を基準として連続的に色彩が変化するように構成することができる。
このような情報表示装置55を用いた始動情報表示装置によれば、メインスイッチをONした際の温度が、始動性の判断基準となるT0と等しいときに指針55aが基準指標55bを指し、T0を超えるときに基準指標55bの右側の領域H、T0未満であるときに基準指標55bの左側の領域Cに位置し、かつ良好な始動性が想定される領域H及び始動性の悪化が想定される領域Cとも、その程度がどの位であるかが表示される。このため、運転者は情報表示装置55を一瞥するだけで、当該環境下におけるエンジンの始動性の良否及びその程度をエンジン始動に先だって直感的に詳細に認知することができる。
従って、以上説明した第1実施形態の始動情報表示装置によれば、環境温度の変化に基づくエンジン1の始動性に与える影響が始動表示器35に表示されるため、運転者は当該環境下においてエンジンの始動性の良否をエンジン始動に先だって認知することができ、吸気または外気の温度を検出する温度検出器13とECU20及び始動表示器35からなる簡明かつ安価な構成で、使い勝手の良好な車両を提供することができる。なお、実施形態ではエンジンの作動を制御するECU20が始動表示器35の表示を制御する構成例を示したが、ECU20と別途の制御装置により表示制御を行うように構成してもよい。
(第2実施形態の始動情報表示装置)
以上ではエンジンの始動性に関する一般的特性として環境温度と始動噴射時間TICRとの関係に基づくエンジンの始動性について説明したが、始動噴射時間TICRは、エンジン1の温度が環境温度とほぼ同程度の状態での始動(コールドスタート)と、エンジン1が暖まった暖機状態での再始動(ホットスタート)で相違する。これは、エンジンが暖まった状態では、吸入された空気及び燃料が吸入〜圧縮行程で暖められること、及びシリンダ内壁やピストンに付着した燃料が気化して着火しやすくなることに起因すると考えられている。このため、エンジン1が暖まった状態でのホットスタートでは、環境温度がコールドスタートよりも低い温度になるまで、略一定の噴射時間でエンジンの始動性が悪化しにくくなる。すなわち、ホットスタートでは、エンジンの始動性に影響が出る可能性がある温度T0が、前述したコールドスタートよりも低い温度に変化する。
ここで、エンジン1の暖機状態を判断する指標としては、例えば、エンジン1が水冷エンジンの場合においては、冷却水の温度を検出するTWセンサ15の検出値(水温TW)、エンジン1が空冷エンジンの場合にはシリンダブロックの温度を検出するエンジン温度検出センサの検出値(エンジン温度)が代表例として例示されるが、エンジン1における他の部位の温度、例えばエンジン1内の潤滑油の温度を検出する油温検出センサの検出値(潤滑油温)等を用いることもできる。水冷エンジンにおける冷却水の水温と、水温に応じた暖機状態での好適な始動噴射時間との関係を求めると、水温TWと始動噴射時間TICRとの対応関係は、実験結果等から図7(a)のように求められる。
図7(a)から明らかなように、エンジン1が暖まって水温TWが所定温度T3を超えている場合には、図5に示した吸気温がT0を超える場合と同様の略一定の短い噴射時間で良好な始動性を確保できるが、水温TWがT3を下回る場合には、エンジンの暖機効果が得られず、始動噴射時間TICRが短いと混合燃料のエタノールの混合比率が高い場合に始動性が悪化し得る。
これを、一定の始動噴射時間TICRで良好な始動性を確保できるか否かという見地から、冷却水温TWと吸気温TAとの関係について表したものが図7(b)であり、このグラフにおける特性線Dcよりも上側が、略一定の噴射時間で良好な始動性が想定される領域、特性線Dcよりも下側が一定の噴射時間では良好な始動性を確保することが難しく、始動性の悪化が想定される領域である。この図に示されるように、水温TWがT3を超えている場合には、エンジンの暖機効果により、吸気温TAが一定範囲でT0を下回っても水温(エンジンの暖機状態)に応じて良好な始動性を得ることができる。一方、水温TWがT3を下回る場合にはエンジンの暖機効果が得られず、既述したように、吸気温TAがT0を超えているか否かにより始動性の良否の判断が分かれることになる。
そこで、第2実施形態の始動情報表示装置においては、図7(b)に示したような水温TWと吸気温TAとに基づく始動性判定テーブルをROM23に予め設定記憶させておき、メインスイッチがONされたときに、CPU21が始動性判定テーブルを読み出すとともに、TWセンサ15から入力される水温TWの検出値、及びTAセンサ13から入力される吸気温TAの検出値を当該テーブルに当てはめて始動性の良否を判定し、この判定結果を始動表示器35に表示させる。
具体的には、CPU21は、TAセンサ13により検出された吸気温TAとTWセンサにより検出された水温TWを当該テーブルに当てはめて、現状の吸気温TA及び水温TWの組み合わせが特性線Dcの上側に位置するが下側に位置するかにより始動性の良否を判定し、その判定結果を始動表示器35に表示させる。
例えば、始動表示器35としてインジケータランプ46dを用いる構成において、現状の吸気温TA及び水温TWの組み合わせが、図7(b)中に示すP1である場合には、P1は特性線Dcの上側に位置しているため始動性は良好であると判定し、インジケータランプ46dは点灯させない。すなわち、この組み合わせの場合には、吸気温TAがT0を下回っているが、エンジンの暖機効果により良好な始動性が想定され、インジケータランプ46dが消灯状態に維持される。また、現状の吸気温TA及び水温TWの組み合わせが、同図中に示すP2である場合(または特性線上にある場合)には、P2は特性線Dcの下側に位置することから始動性が良好でないと判定し、インジケータランプ46dを点灯させる。この組み合わせでは、水温TWはT3を超えているが、吸気温TAがT0を大きく下回っており、エンジンの暖機効果のみでは良好な始動性を確保することが困難であると想定され、インジケータランプ46dが点灯状態とされる。一方、水温TWがT3以下の場合にはエンジンの暖機効果が得られないため、吸気温TAがT0を超えているか否かにより始動性の良否の判定が行われ、既述した第1実施形態の始動情報表示装置と同様の表示制御が行われる。なお発光色が複数のLEDを用い、始動性の良否に応じて発光色を切り換える構成についても同様に構成できる。
このような構成の始動情報表示装置では、メインスイッチをONした際の吸気温TAと水温TWとの組み合わせが、エンジンの暖機状態を考慮して設定された始動性の良否の判断基準となる特性線Dcよりも上側にあるときにインジケータランプ46dが消灯状態で、環境条件に基づく始動性の悪化が想定されないことが報知され、吸気温TAと水温TWとの組み合わせが、特性線Dc上または特性線Dc下側にあるときにインジケータランプ46dが点灯して、燃料中のエタノールの混合比率が高い場合にはエンジン1がかかりにくい可能性があることが報知される。このため、運転者はエンジンの暖機状態を加味した環境条件下におけるエンジンの始動性の良否をエンジン始動に先だって認知することができる。
また、始動表示器35として情報表示装置55を用いる構成、例えば、図6に示した指針式のメータを用いる場合において、指針55aの指示範囲における基準指標55bを図7(b)における特性線Dcに対応させ、基準指標55bから右側の良好な始動性が想定される領域Hを図7(b)における特性線Dcよりも上側の領域に対応させ、基準指標55bから左側の始動性の悪化が想定される領域Cを図7(b)における特性線Dcよりも下側の領域に対応させて、現状の吸気温TA及び水温TWの組み合わせが特性線Dcの上側に位置するが下側に位置するかに基づいて、判定結果を始動表示器35に表示させる。
すなわち、TAセンサ13において検出された吸気温TA及びTWセンサにおいて検出された水温TWの組み合わせが、図7(b)における特性線Dcの線上に位置する場合に指針55aが基準指標55bを指し、吸気温TAと水温TWの組み合わせが特性線Dcよりも上側に位置する場合(例えば同図中のP1である場合)に指針55aが基準指標55bよりも右側の領域H、吸気温TAと水温TWの組み合わせが特性線Dcよりも下側に位置する場合(例えば同図中のP2である場合)に指針55aが基準指標55bよりも左側の領域Cを指すように構成する。
なお、前述した実施形態と同様に、基準指標55bに対する指針55aの振れ(ゲイン)は、適宜設定することができ、例えば特性線Dcを基準として、現状の吸気温TAと水温TWの組み合わせ(例えば上記P1またはP2)が特性線Dcからどれくらい離れているかを、左右方向とも直線的な対応関係として設定し、あるいは、現状の水温TW(暖機状態)では吸気温TAがあとどのくらい上下すれば特性線Dc上になるかを吸気温TAに対して直線的な対応関係として設定し、または、現状の吸気温TAと水温TWの組み合わせが特性線Dcよりも上側に位置する場合(例えばP1の場合)の基準指標55bから右方向の振れ幅を吸気温TAの温度変化に対して対数的に圧縮し、現状の吸気温TAと水温TWの組み合わせが特性線Dcよりも下側に位置する場合(例えばP2の場合)の基準指標55bから左方向の振れ幅を吸気温TAの温度変化に対して二次的に増大させた対応関係として設定することができる。なお、情報表示装置55に、LEDを利用したバーメータや液晶表示装置を用いるば場合にも同様に構成することができる。
このような情報表示装置55を用いた始動情報表示装置によれば、メインスイッチをONした際の吸気温TAと水温TWとの組み合わせが、エンジンの暖機状態を考慮して設定された始動性の良否をの判断基準となる特性線Dcと等しいときに指針55aが基準指標55bを指し、吸気温TAと水温TWとの組み合わせが特性線Dcよりも上側に位置するときに基準指標55bの右側の領域H、特性線Dcよりも下側に位置するときに基準指標55bの左側の領域Cを指し、かつ良好な始動性が想定される領域H及び始動性の悪化が想定される領域Cとも、その程度がどの位であるかが表示される。このため、運転者は情報表示装置55を一瞥するだけで、エンジンの暖機状態を加味した環境条件下におけるエンジンの始動性の良否及びその程度をエンジン始動に先だって直感的に詳細に認知することができる。
以上説明した第2実施形態の始動情報表示装置によれば、エンジンの暖機状態を加味した環境条件の始動性に与える影響が始動表示器35に表示される。このような構成によれば、始動性の良否に関する判定がエンジンの暖機状態と関連づけられるため、吸気温度が変動するような場合であっても、始動性に関する情報を始動表示器35に安定して表示させることができるとともに、エンジンが暖まった状態で再始動するような場合に実際の始動性に近い始動情報を表示することができる。
(第3実施形態の始動情報表示装置)
次に、エンジンの排気ガスに含まれる酸素濃度からエタノールの混合比率を推定し、推定された混合比率に応じて、環境条件に基づく始動性に与える影響の情報を表示する始動情報表示装置について説明する。
まず、通常運転時における燃料噴射時間の算出と、エタノールの混合比率の推定方法について説明する。通常運転時に、CPU21は、予め実験結果等に基づいて求められているPb/Neマップ、あるいはNe/THマップを参照することにより、様々な条件下での吸入空気量を求め、求めた吸入空気量と予め定められた目標空燃比に基づいて、基本燃料噴射時間(TIM)を算出する。図8(a)は、Pb/Neマップの例を示した図であり、図8(b)は、Ne/THマップの例を示した図である。
Pb/Neマップは、アイドリング等の低負荷運転時に採用されるスピードデンシティ方式と呼ばれる吸入酸素量の推定方式において用いられるマップであり、当該マップにより吸気圧Pbと、エンジン回転数(Ne)に基づいて吸入空気量が求められる。図8(a)に示すように、吸気圧Pbとエンジン回転数Neとの間で一定の相関性は成立せず、等空気量線図として吸入空気量が特定される。
一方、Ne/THマップは、高負荷運転時に採用されるスロットルスピード方式と呼ばれる吸入酸素量の推定方式において用いられるマップであり、当該マップによりエンジンの回転数Neと、スロットル開度THに基づいて吸入空気量が求められる。図8(b)に示すように、Ne/THマップもPb/Neマップと同様に、NeとTHとの間で一定の相関性が成立せず、等空気量線図として吸入空気量が特定される。
Pb/NeマップあるいはNe/THマップから得られる吸入空気量に基づいて基本燃料噴射時間TIMを算出すると、次に、実験状態と実際のエンジン1の運転状態の環境条件の違いによる補正を行なう必要がある。図9は、吸気温を計測するTAセンサ13から得られる吸気温TAに対応する吸気温補正係数(KTA)を求めるための補正係数テーブルの例を示した図である。補正係数としては、他に、THセンサ11、TWセンサ15、CRKセンサ16、O2センサ17から得られる検出値に基づく補正係数が存在し、具体的には、始動後増量補正係数(KAST)、水温補正係数(KTW)、加速補正係数(TACC)、非同期補正係数(OPINJ)、点火時期係数等の補正係数がある。これらの補正係数ごとに補正係数テーブルが存在し、上記基本燃料噴射時間TIMと、これらの複数の補正係数とに基づいて、インジェクタ5に燃料を噴射させる燃料噴射時間(Tout)が算出される。
エタノール等のアルコール燃料は、その組成に酸素原子Oを含有しているため、単位体積当たりでの燃焼に必要な酸素量はガソリンを燃焼させる場合に比べて少なくて済む。従って、エタノールとガソリンとを混合させた混合燃料を用いる場合には、ガソリンのみからなる単一燃料を用いる場合よりも理論空燃比は小さくなる。そのため、エンジン1を最適な状態で運転させる場合には、エタノールとガソリンの混合比率ごとに、Pb/Neマップ、Ne/THマップ、各種補正係数テーブルを設定する必要がある。
ここで、エタノールがある濃度の場合に、最適な状態でエンジン1を運転させるためのマップやテーブルを、ある一定範囲内において他の濃度に適用しても、当該他の濃度における適切なマップやテーブルを適用した場合と同程度の制御を行うことが可能であることが実験結果等から知られている。そこで、本エンジン制御システムでは、図10に示すような濃度の範囲を設定し、それぞれの範囲におけるエタノールの基準濃度として、エタノール22%(E22)、エタノール50%(E50)、エタノール80%(E80)、エタノール100%(E100)の4種類を予め求めておき、それぞれのエタノール濃度ごとに、Pb/Neマップ、Ne/THマップ、各種補正係数テーブルを生成する。なお、基準濃度は、3つ以上であれば良く、0%〜100%までのどの濃度を基準として適正に割り振っても良い。それぞれのマップとテーブルは、図10に示すように濃度として相互に重なり合う範囲を有して設定される。
ROM23には、各エタノールの基準濃度ごとに生成したPb/Neマップ、Ne/THマップ、各種補正係数テーブル等が各1組のマップ(以下、基準燃料噴射マップと記載する)として予め設定記憶されている。なお、以下の説明において、基準濃度ごとの基準燃料噴射マップを、それぞれE22%マップ、E50%マップ、E80%マップ、E100%マップと記載する。
次に、エタノール濃度の推定方法について、CPU21の制御プログラムにおけるE22%マップ、E50%マップ、E80%マップ、E100%マップの切り換え方法に基づいて説明する。図11にマップ切換え処理の概念図を示すように、CPU21はO2センサ17が検出する排気ガスの酸素濃度を示した検出信号(VO2)から、制御プログラムが算出する要求噴射量倍率(KO2)、あるいは要求噴射量倍率KO2の平均学習値(KO2REF)の値を参照することにより行われる。要求噴射量倍率KO2は、排気ガス中の酸素濃度が高いときに大きい値を示し、排気ガス中の酸素濃度が低いときには小さい値を示す。
そして、要求噴射量倍率KO2あるいはその平均学習値であるKO2REFが大きい値のとき(排気ガス中の酸素濃度が高いとき)には、インジェクタ5からの噴射量が少ない状態(リーン状態)であることを意味し、さらに、少ない燃料噴射量でエンジンを運転していることから、混合燃料中のエタノール濃度は現在設定されている基準噴射燃料マップのエタノール濃度よりも高いと判定して、エタノール濃度が高いマップへ切り換える処理を行う。例えば、現在の基準噴射燃料マップがE50%マップである場合において、KO2REFが大きい値のときには、混合燃料中のエタノール濃度はエタノール50%よりも高いと判定して、エタノール80%のE80%マップに切り換える。
一方、KO2あるいはKO2REFが小さい値のとき(排気ガス中の酸素濃度が低いとき)には、インジェクタ5からの噴射量が多い状態(リッチ状態)であることを意味し、さらに、過剰な燃料噴射量でエンジンを運転していることから、混合燃料中のエタノール濃度は現在設定されている基準噴射燃料マップのエタノール濃度よりも低いと判定して、エタノール濃度が低いマップへ切り換える処理を行う。例えば、現在の基準噴射燃料マップがE50%マップである場合において、KO2REFが小さい値のときには混合燃料中のエタノール濃度はエタノール50%よりも低いと判定して、エタノール22%のE22%マップに切り換える。
このように、O2センサ17により検出される排気ガス中の酸素濃度からエタノール濃度を推定することができ、こうして推定されたエタノールの基準濃度に応じたマップが選択されて、EEP−ROM24に記憶される。
ところで、図5に示した環境温度と始動噴射時間との関係図からもわかるように、同図中に示した所定温度T0は、混合燃料中のエタノール濃度に応じて変化し、エタノールの混合比率が低いほど(ガソリンの混合比率が高いほど)低い温度になる。これを基準エタノール濃度に対応して示すと、エタノール100%のときの所定温度をT01、エタノール80%のときの所定温度をT02、エタノール50%のときの所定温度をT03、エタノール22%のときの所定温度をT04とすれば、T01<T02<T03<T04となる(図5中に付記した一点鎖線を参照)。そして、エンジン始動時の環境温度が、それぞれのエタノール濃度に対応した上記所定温度を下回る場合に、略一定の噴射時間では始動性の悪化が想定されることとなる。
そこで、本実施形態の始動情報表示装置では、環境温度に応じた始動噴射時間TICRの設定が必要となる所定温度T01,T02,T03,T04を、4種類のエタノール基準濃度に対応させて予めROM23に記憶させておき、メインスイッチがONされたときに、CPU21がEEP−ROM24からエタノール濃度を読み出すとともに、このエタノール濃度に対応する上記所定温度をROM23から読み出し、TAセンサ13から入力される吸気温TAの検出値と対比して、その結果に基づいた始動性に与える影響を始動表示器35に表示させる。
例えば、エタノール濃度の推定設定により、EEP−ROM24に記録された燃料の混合比率がエタノール50%である場合において、CPU21は、メインスイッチがONされたときに、EEP−ROM24から燃料のエタノール濃度が50%であることを読み出し、ROM23からエタノール50%に対応する所定温度T03を読み出す。そして、TAセンサ13から入力される吸気温TAの検出値と対比して、吸気温TAがT03以下であり、始動性の悪化が想定されると判定した場合にインジケータランプ46dを点灯させ、吸気温TAがT03を超えており始動性の悪化が想定されないと判定した場合にインジケータランプ46dを消灯させる。なお発光色が複数のLEDを用い、発光色を切り換える構成についても既述したと同様に構成できる。
また、始動表示器35として情報表示装置55を用いた構成例において、吸気温TAがT03に等しい場合に指針55aが基準指標55bを指し、吸気温TAがT03を超えている場合に指針55aが右側の領域H、吸気温TAがT03未満である場合に指針55a左側の領域Cを指すように構成する。基準指標55bに対する指針55aの振れは、既述したように適宜設定することができ、またLEDを利用したバーメータや液晶表示装置を用いた場合についても同様に適用することができる。
燃料を給油してエタノールの混合比率が変化した場合、例えば、ガソリンを給油してエタノール濃度が20%程度に低下したような場合には、上述したマップの切り換え処理により通常運転時の基準燃料噴射マップがE50%マップからE22%マップに切り換えられてEEP−ROM24に記録される。このため、次回の始動時にはROM23からエタノール22%に対応する所定温度T04が読み出され、TAセンサ13から入力される吸気温TAの検出値と対比されて、その結果が始動表示器35に表示される。
このような始動情報表示装置によれば、燃料の混合比率に応じた始動性の良否判断が行われてその判断結果が表示されるため、エンジンの始動性に関して、より的確な情報をエンジンの始動に先立って運転者に伝達することができる。また、燃料タンクや制御バルブ等を複数設けることが困難な車両にも適用可能であるとともに、燃料タンクにエタノール濃度センサを設ける必要がないため、低コスト化を図ることができる。
なお、以上では、O2センサ17の検出値に基づき燃料中のエタノール濃度を推定してこれに対応する所定温度を始動性判断の基準に設定する構成を示したが、エタノール濃度を運転者が設定するエタノール濃度設定手段(例えばエタノール濃度E22%,E50%,E80%,E100%のいずれかを選択して設定するエタノール濃度選択スイッチ)を設け、メインスイッチがONされたときに、CPU21が当該メタノール濃度設定手段における設定を参照し、運転者の設定したエタノール濃度に応じた所定温度(T01,T02,T03,T04)をROM23から読み出して、TAセンサ13から入力される吸気温TAの検出値との対比に基づいた表示を始動表示器35にさせるように構成してもよい。このような構成によれば、簡明な構成でエタノール濃度に応じた始動性の判定を行うことができるとともに、運転者が設定を切り換えることで、混合燃料中のエタノール濃度によってどの程度の影響が生じるかを認知することができる。
(第4実施形態の始動情報表示装置)
さて、以上では、始動噴射時間TICRを略一定とした場合に、環境条件に基づいて始動性の悪化が想定されるかどうかの情報を表示する構成を示してきたが、次に、環境条件の変化に応じて始動噴射時間TICRを変化させ、環境条件に適した噴射量でエンジン1の作動を制御するエンジン制御システムを有する車両への本発明の適用について説明する。
このエンジン制御システムでは、通常運転時において、排気ガス中の酸素濃度から推定されEEP−ROM24に記憶されたエタノール濃度に応じたPb/Neマップ、あるいはNe/THマップを参照し、基本燃料噴射時間TIMを算出し、ROM23に記憶された吸気温補正係数KTA、始動後増量補正係数KAST、水温補正係数KTW、加速補正係数TACC、非同期補正係数OPINJ、点火時期係数等の補正係数テーブルとに基づいて、実際にインジェクタ5に燃料を噴射させる燃料噴射時間Toutを算出する。
また、始動噴射時間についても、図12(a)に示すように、一定の水温TWであっても、エタノール濃度ごとに好適な噴射時間が異なる。このため、良好な始動性を維持するためにはエタノール濃度の下限時に過剰な燃料噴射を防止しつつ、エタノール濃度の上限時には最大噴射を行えるような噴射時間を設定することが望ましい。そこで、始動噴射時間TICRを設定する場合も、図12(b)に示すような濃度の範囲を設定し、エタノール22%(E22)、エタノール50%(E50)、エタノール80%(E80)、エタノール100%(E100)を基準濃度として、図7(a)に示した水温TWと始動噴射時間TICRとの対応関係を示す始動噴射テーブルが各基準濃度に対応した4つの始動噴射テーブルとしてROM23に記憶されている。また、始動噴射テーブルには、予め定められる定数として、始動噴射時間の増量幅Δti、何回噴射を行ったら噴射時間を増量するかの基準となる回数を示す反復回数N、始動噴射時間の上限値Tmaxが対応付けられている。これらの定数の値も予めROM23に記憶させておく。以下、始動噴射テーブルとこれらの定数を含んだ情報を始動噴射情報と記載する。
ROM23には、図13に示すように、各エタノールの基準濃度ごとに生成したPb/Neマップ、Ne/THマップ、各種補正係数テーブル、及び始動噴射情報をそれぞれ1組のマップ(基準燃料噴射マップ)として予め記憶させておく。また、この基準燃料噴射マップをマップセットまたは設定セットと呼ぶ。これにより、全てのエタノール濃度の範囲におけるエンジン1の制御を、4組の基準燃料噴射マップで行うことが可能になる。さらに、4組の基準燃料噴射マップを用いて0%から100%まで連続的に変化し得るエタノール含有量を4種類のエタノール基準濃度の値で代表させることによって、適切な基準濃度の基準燃料噴射マップからの補正が少なくて済むことから運転状態を安定させることができる。
通常運転時におけるE22%マップ、E50%マップ、E80%マップ、E100%マップの切り換えについては、図11を参照して既に説明したように、O2センサ17が検出する排気ガスの酸素濃度を示した検出信号VO2から、CPU21の制御プログラムが算出する要求噴射量倍率KO2あるいはKO2の平均学習値KO2REFの値を参照することにより行われる。
図14は、通常運転時におけるCPU21の制御プログラムによる基準燃料噴射量マップ切り替えの処理を示したフローチャートである。当該フローチャートによる基準燃料噴射量マップの切替処理は、通常運転時の制御処理の過程で繰り返し呼び出されて実行される。まず、ステップSa1において、CRKセンサ16の検出値からエンジン回転数Neを算出し、算出したエンジン回転数Neと、THセンサ11から得られるスロットル開度THとが、図15に示すKO2REF算出領域内にあるか否かが判定され、KO2REF算出領域外であれば基準燃料噴射マップの切り替えを行わずに処理を終了する。一方、KO2REF算出領域内である場合には、ステップSa2に進んでTWセンサ15及びTAセンサ13において検出される冷却水温TW及び吸気温TAからエンジン1が暖機状態であるか否かを判定する。そして暖機状態でないと判定した場合には基準燃料噴射マップの切り替えを行わずに処理を終了し、暖機状態であると判定した場合にはステップSa3に進んでKO2REFの更新、すなわち、新たにO2センサ17が検出した酸素濃度から得られるKO2の値に基づいて平均学習を行ってKO2REFを算出し、算出された値を新たなKO2REFとして更新する。
次に、ステップSa4では、更新したKO2REEFが現在のエタノールの濃度における閾値の範囲内か否かを判定する。ここで、基準濃度における閾値とは、図16に示す基準濃度ごとに設定される上限と下限の値であり、閾値はそれぞれのマップが重なるように調整して設定される。例えば、図16に示すように、E22%マップの場合に下限閾値は0であり、上限閾値は1.1である。同様に、E50%マップの場合の下限閾値は0.85、上限閾値は1.08であり、E80%マップの場合の下限閾値は0.85、上限閾値は1.1である。E100%マップの場合には下限閾値のみであり、その値は0.8である。例えば、現状の基準濃度がE50%である場合において、算出されたKO2REFの値が0.85から1.08の間にあるときには閾値範囲内であると判定され、マップの切り替えは行われない。一方、算出されたKO2REFの値が0.85未満となったときにはE22%マップへの切り替えが行われ、KO2REFが1.08を超える値となったときにはE80%マップへの切り替えが行われる(ステップSa5)。
マップ切り替えが行われた後、例えば、E50%マップからE80%マップに切り換えられた後にも、図14に示すマップ切り替え処理が繰り返し呼び出されて実行されるが、この場合、基準燃料噴射マップがE80%マップに切り替えられたことに対応して噴射時間が変化(増加)し、O2センサ17により計測される酸素濃度が変化(低下)するため、KO2の値は減少方向に変化し、平均学習によりKO2REFの値が1.0近傍の値となってE80%マップで安定することになる。
このような基準燃料噴射マップ切換処理によりエタノール濃度に応じた基準濃度のマップが選択されることになるため、通常運転時においてエタノール濃度が変化した場合であっても、エンジン1を最適な状態で運転させることが可能となる。なお、図14を参照して説明した基準燃料噴射量マップ切換処理では、KO2REFを基準とした処理について説明したが、O2センサ17により検出される酸素濃度に基づいて算出されるKO2をKO2REFの代わりに適用して図14の処理を行うように構成しても良い。
次に、図17及び図18を参照して、エンジン1が停止された後再び運転が行われる場合のエンジンの始動制御について説明する。ここで、図17は始動制御の処理を示したフローチャート、図18は始動制御の処理によるTICRの変化を示す図である。
この始動制御では、まず、ステップSb1において、CPU21は通常運転中にO2センサ17により検出される酸素濃度からエタノール濃度を算出し、算出したエタノール濃度に対して平均学習を行ってエタノール濃度学習値を算出する。
次に、ステップSb2では、ステップSb1において算出したエタノール濃度学習値と、図10に示したエタノール濃度の範囲とを対比して基準濃度を求め、求めた基準濃度からEEP−ROM24に記憶させる設定セットとして、基準燃料噴射量マップであるE22%マップ、E50%マップ、E80%マップ、E100%マップのいずれかを選択し、選択した設定セットと基準濃度とを、EEP−ROM24に記憶させる(ステップSb3)。その後、メインスイッチ(メインSW)がOFFにされてバッテリからECU20への電力供給が遮断され(ステップSb4)、車両の運転が停止される。このとき、RAM22に記憶されていた情報は消去されるが、ROM23に記憶されている情報、及びEEP−ROMに記憶されている情報は消去されることなく保持される。
エンジン1の始動に先立ちメインSWがONにされて、バッテリからECU20に電力供給が開始されると、CPU21において始動制御の制御プログラムが起動する。制御プログラムが起動すると、CPU21は、ステップSb5においてEEP−ROM24に記憶保持されている設定セットを呼び出し、呼び出した設定セットの中から始動噴射情報を読み出す。そして、ステップSb6に進んで始動噴射情報に含まれる始動噴射テーブルと、TAセンサ13から入力される吸気温TA、TWセンサ15から入力される冷却水の水温TWに基づいて始動噴射時間TICRの初期値を求める。また始動噴射情報に含まれる増量幅Δti、反復回数N、始動噴射時間上限値Tmaxも読み出して、制御プログラム内で各情報の設定を行い、始動噴射回数nの変数を0にリセットしてステップSb7に進む。
ステップSb7では、クランキング中であるか否かが判定される。そして、クランキング中でないと判定した場合にはクランキングが開始されるまで判定が継続され、クランキング中であると判定した場合には、ステップSb8において始動噴射回数nに1を加算した値を代入し、ステップSb9に進む。例えば、初回のクランキング中にはステップSb6において0にリセットされた始動噴射回数nに1が加算されてn=1が代入され、ステップSb9に進む。ステップSb9では始動噴射時間TICRが始動噴射時間上限値Tmax未満であるか否かが判定され、始動噴射時間TICRが始動噴射時間上限値Tmax未満である場合には、次のステップSb10に進んで始動噴射回数nが反復回数Nと等しいか否かを判定する。そしてステップSb10において始動噴射回数nが反復回数Nに等しい(所定の反復回数、始動噴射が行われた)と判定した場合には、ステップSb11において現在の始動噴射時間TICRに増量幅Δtiを加算した値をTICRに代入し、ステップSb12において始動噴射回数nを0にリセットして、ステップSb13に進む。
ステップSb13では、CRKセンサの検出信号から現在のエンジン回転数Neが所定の回転数Aを超えている否かに基づいて始動完了しているか否かが判定される。そして現在のエンジン回転数Neが所定の回転数Aを超えており始動完了していると判定した場合には、既に通常運転が開始されているため、ステップSb14に進んで噴射制御を通常運転時の噴射制御、すなわち図14に示した処理を行いつつ、ステップSb1からステップSb3の処理をメインSWがOFFされるまでの間繰り返して実行する。一方、現在のエンジン回転数Neが所定の回転数A以下であり、未だ始動中であると判定した場合には、始動制御を継続させるためステップSb7に戻る。
また、ステップSb9において始動噴射時間TICRが始動噴射時間上限値Tmax未満でないと判定した場合、すなわち始動噴射時間TICRが始動噴射時間上限値Tmaxに達している場合、及び、ステップSb10において始動噴射回数nが反復回数Nに等しくないと判定した場合、すなわち始動噴射が所定の反復回数に到達していない場合には、現状の始動噴射時間TICR及び始動噴射回数nを維持したままステップSb13に進んで始動完了の判定を行う。
図18は、反復回数Nを4とした場合の始動噴射時間TICRの変化を示した図であり、同一始動噴射時間で4回噴射するごとに、始動噴射時間TICRが増量幅Δtiずつ段階的に増加し、始動噴射時間TICRが始動噴射時間上限値Tmaxに到達して以降は、始動噴射時間TICRを上限値に維持した状態でクランキングが継続される。このとき、始動噴射時間TICRの最小値は、設定セットにおいて設定されていたエタノールの基準濃度における最小の要求噴射量(下限濃度要求噴射量)であり、最大値は、当該エタノール濃度における最大の要求噴射量(上限濃度要求噴射量)になるように設定されている(図12(b)を参照)。
このような処理により、エンジンの停止中にエタノールあるいはガソリンが補給されたとしても、燃料配管に残っている燃料の混合比率は、補給を行う前の状態であることから、メインSWがOFFされる直前の通常運転時のエタノールの基準濃度に対応する基準燃料噴射量マップを使用して始動制御を行うことで、エンジン1においてプラグのかぶりを回避しつつ適切な状態での迅速な始動制御を行うことができる。また、図17に示した処理では、始動噴射回数が反復回数Nになるごとに、増量幅Δtiだけ始動噴射時間TICRを増加させるようにしていることから、エンジンの始動が完了するまで、燃料噴射時間を徐々に増大、すなわち、インジェクタ5から噴射される燃料噴射量を徐々に増大させて始動制御を行うことができる。
なお、図17に示した処理において、EEP−ROM24に、基準燃料噴射量マップであるE22%マップ、E50%マップ、E80%マップ、E100%マップのいずれかを選択してに記憶させる構成を例示したが、エタノール濃度学習値、あるいはエタノール基準濃度のみをEEP−ROM24に記憶させ、次回の始動時に、EEP−ROM24から読み出した値に基づいて、ROM23から対応する基準燃料噴射量マップを読み出すように構成してもよい。また図17の処理において、始動噴射回数nが反復回数Nに到達するごとに、増量幅Δtiだけ始動噴射時間TICRを増加させるようにしているが、噴射を行った時間が一定時間を超えるごとに増量幅Δtiだけ始動噴射時間TICRを増加させるようにしてもよい。
このようなエンジン制御システムを有する車両においては、環境条件(環境温度やエタノール濃度等)に応じた始動噴射時間TICRが設定されるため、燃料噴射時間が略一定であることに起因して始動性が悪化することは避けられる。
しかしながら、図5や図7等から明らかなように、混合燃料使用時には、環境温度が所定温度(T0,T3,T01,T02,T03,T04)以下の状態では、環境温度の温度変化(ΔT)に対する始動噴射時間の変化量(ΔTICR)が大きくなり、また推定設定されたエタノール基準濃度が一定の濃度幅を有していることから、設定された基準濃度と現実のエタノール濃度との差により最適始動噴射時間に誤差が生じる可能性がある。そのため、環境温度が所定温度(T01,T02,T03,T04)を下回るときには、エンジンのかかり具合がクランキング当初には必ずしも良好とは言えない(エンジンの始動性が低下する)場合が生じ得る。
そこで、本実施形態の始動情報表示装置では、排気ガス中の酸素濃度から推定設定されたエタノール基準濃度において、吸気温度TAが各エタノール濃度における所定温度(T01,T02,T03,T04)を下回るとき、あるいは、これにエンジンの暖気状態(水温TW)を加味して判断した所定温度T3を下回るときに、CPU21が始動表示器35に始動性に関する情報を表示させる。
具体的には、環境温度に応じた始動噴射時間TICRの設定が必要となる所定温度T01,T02,T03,T04を、4種類のエタノール基準濃度に対応させて予めROM23に記憶させておき、メインスイッチがONされたときに、CPU21がEEP−ROM24からエタノール基準濃度を読み出すとともに、このエタノール基準濃度に対応する上記所定温度をROM23から読み出し、TAセンサ13から入力される吸気温TAの検出値、及びTWセンサ15から入力される水温TWの検出値と対比して、その結果に基づいた始動性に与える影響を始動表示器35に表示させる。
例えば、通常運転時におけるエタノール濃度推定により、EEP−ROM24にE50%の設定セットが記憶されている場合に、CPU21は、メインスイッチがONされたときに、EEP−ROM24から当該設定セットを呼び出すとともに、ROM23からエタノール50%に対応する所定温度T03及び水温補正係数のマップをROM23から読み出す。そして、TAセンサ13から入力される吸気温TAの検出値及びTWセンサ15から入力される水温TWの検出値と対比し、水温補正係数KTWを加味したうえで吸気温TAがT03以下である場合にインジケータランプ46dを点灯させ、吸気温TAがT03を超えている場合にインジケータランプ46dを消灯させる。始動表示器35として情報表示装置55を用いた場合も、エタノール基準濃度に応じた所定温度T01,T02,T03,T04を基準として同様に構成することができる。
なお、実施形態では、エタノールの基準濃度を4種類(E22%,E50%,E80%,E100%)とし、これに合わせて所定温度(T01,T02,T03,T04)を4段階としたが、エタノールの基準濃度及び所定温度をさらに多段とし、あるいは連続的な数値として設定しても良く、または直接燃料通路内のアルコール濃度を検知して表示するように構成しても良い。
このような第4実施形態の始動情報表示装置によれば、燃料の混合比率及び環境温度に応じた始動噴射時間TICRが設定され、環境条件の変化によるエンジンの始動性の悪化が抑制されたうえで、環境条件の微妙な変化によりクランキング当初にはエンジンのかかり具合が必ずしも良好ではない(エンジンの始動性が低下する)可能性があることを、エンジンの始動に先立って運転者に伝達することができる。
そして、以上説明した各実施形態の始動情報表示装置によれば、始動性の悪化が想定されるような場合に、当該状況をエンジン始動に先だって運転者が認知可能な装置を、簡明かつ安価な構成で提供することができる。