ところで、前記バイパス通路の開口面積が小さいと、十分なバイパス量を確保することができず、所望の容量に調整することが難しい。つまり、バイパス通路を開けた場合、ピストンがバイパス通路の開口を塞いだときに圧縮室への冷媒の閉じ込みが完了する。そのため、ピストンがバイパス通路の開口を塞いだときの圧縮室の容積が所望の値となるようにバイパス通路の開口位置が決められている。しかしながら、バイパス通路の開口面積が小さいと、ピストンがバイパス通路の開口を塞いで圧縮室への冷媒の閉じ込みが完了したときには、該圧縮室内の冷媒は圧縮がある程度進んだ状態となり、見かけ上、ピストンがバイパス通路を塞ぐより前に圧縮室への冷媒の閉じ込みが完了してそこから冷媒の圧縮がある程度行われた状態と同じになる。つまり、ピストンがバイパス通路を塞いだ時点における圧縮室の容積が所望の値になるようにバイパス通路の開口位置を設計したにもかかわらず、実際の吸入容積は設計値よりも大きくなってしまう。
通常、バイパス通路はドリル等により穿孔されて断面円形状の孔となるが、圧縮室を区画形成する部材の寸法により、その孔径をあまり大きくすることができない。例えば、シリンダの内周面にバイパス通路を開口させる場合には、該開口の孔径をシリンダの高さよりも大きくすることはできない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮室に開口するバイパス通路の開口面積を十分に確保することにある。
第1の発明は、それぞれ平坦面を有して互いの該平坦面が対向する状態で配設された2つの端板部材(45,46,244,246)と、該2つの端板部材(45,46,244,246)の間に配設された固定部材(41a,41b,341a)と、該2つの端板部材(45,46,244,246)の間に配設されて該固定部材(41a,41b,341a)との間に圧縮室(42a,42b)を形成すると共に所定の回転軸(X)に対して偏心回転する可動部材(47a,47b)とを有して該圧縮室(42a,42b)中の冷媒を圧縮する圧縮機構(40a,240b,340a)を備えた圧縮機が対象である。そして、前記圧縮機構(40a,240b,340a)には、上流端が前記圧縮室(42a,42b)に開口して該圧縮室(42a,42b)から冷媒の一部を排出させて該圧縮機構(40a,240b,340a)の吸入側へ戻すためのバイパス通路(66,266,366)が設けられており、前記バイパス通路(66,266,366)を開閉させる開閉手段をさらに備え、前記バイパス通路(66,266,366)の上流端の断面は、前記回転軸(X)周りの周方向に細長い形状をしているものとする。
前記の構成の場合、前記バイパス通路(66,266,366)の開口を回転軸(X)回りの周方向に細長い形状とすることにより、バイパス通路(66,266,366)の開口面積を大きくすることができる。すなわち、固定部材(41a,41b,341a)と偏心回転する可動部材(47a,47b)との間に形成される圧縮室(42a,42b)においては、回転軸(X)からの半径方向及び回転軸(X)の軸方向へは、圧縮室(42a,42b)のサイズ等による制約を受け易く、バイパス通路(66,266,366)の開口を拡げることが難しい。その一方で、該圧縮室(42a,42b)は回転軸(X)周りの周方向に延びて形成されているため、該周方向へはバイパス通路(66,266,366)の開口を拡げ易い。そこで、バイパス通路(66,266,366)の上流端の断面を円形状ではなく、該回転軸(X)周りの周方向に細長い形状とすることによって、バイパス通路(66,266,366)の開口面積を拡大することができる。その結果、圧縮室(42a,42b)内の冷媒の一部を圧縮室(42a,42b)外に排出させる際に、十分な排出流量を確保することができ、圧縮室(42a,42b)の容積を所望の値に容易に調整することができる。
ここで、「周方向に細長い」とは、開口が厳密に周方向に沿った形状となっている必要はなく、径方向に対して直交する方向に沿って延びる形状も含む意味であり、径方向又は軸方向の寸法に比べて、周方向の寸法が長い形状を意味する。
第2の発明は、第1の発明において、前記バイパス通路(62,262,362)の上流端の断面は、前記回転軸(X)周りの周方向に沿って湾曲しているものとする。
前記の構成の場合、バイパス通路(62,262,362)の上流端の断面を回転軸(X)周りの周方向に沿って湾曲させることによって、バイパス通路(62,262,362)の上流端の断面を回転軸(X)の径方向や軸方向ではなく周方向に拡大することができ、圧縮室(42a,42b)に開口するバイパス通路(62,262,362)の開口面積を大きくすることができる。
第3の発明は、第1の発明において、前記バイパス通路(62b)の上流端の断面は、前記回転軸(X)の径方向に対して直交する方向に延びる長穴状であるものとする。
前記の構成の場合、バイパス通路(62b)の上流端の断面を回転軸(X)の径方向に対して直交する方向に延びる長穴状にすることによって、バイパス通路(62b)の上流端の断面を回転軸(X)の径方向や軸方向ではなく周方向に拡大することができ、圧縮室(42a,42b)に開口するバイパス通路(62b)の開口面積を大きくすることができる。
第4の発明は、第1の発明において、前記バイパス通路(62c)の上流端の断面は、前記回転軸(X)の径方向に対して直交する方向に長軸が延びる楕円状であるものとする。
前記の構成の場合、バイパス通路(62c)の上流端の断面を回転軸(X)の径方向に対して直交する方向に長軸が延びる楕円状にすることによって、バイパス通路(62c)の上流端の断面を回転軸(X)の径方向や軸方向ではなく周方向に拡大することができ、圧縮室(42a,42b)に開口するバイパス通路(62c)の開口面積を大きくすることができる。
第5の発明は、第1の発明において、前記バイパス通路(66,266)の開口は、前記端板部材(45,46,244,246)に形成されているものとする。
前記の構成の場合、固定部材(41a,41b)と可動部材(47a,47b)との間には、回転軸(X)周りの周方向に延びる円弧状の圧縮室(42a,42b)が形成される。つまり、端板部材(45,46,244,246)のうち圧縮室(42a,42b)に臨む部分の形状も回転軸(X)の周方向に延びており、回転軸(X)の径方向よりも周方向に細長い形状となる。そこで、前述の如く、バイパス通路(66,266)の上流端の断面を回転軸(X)の周方向に細長い形状とすることによって、バイパス通路(66,266)を端板部材(45,46,244,246)に形成する場合であっても、該バイパス通路(66,266)の開口面積を拡大することができる。
第6の発明は、第1の発明において、前記固定部材(341a)は、筒状に形成されて、その内周面が前記可動部材(47a)と摺接し、前記バイパス通路(366)の開口は、前記固定部材(341a)の内周面に形成されているものとする。
前記の構成の場合、前記固定部材(341a)の内周面のうち圧縮室(42a)に臨む部分の高さは、圧縮室(42a)の高さと同じであるため、バイパス通路(366)を固定部材(341a)に形成してその内周面に開口させる場合には、該バイパス通路(366)の上流端の断面を該内周面の高さ方向に拡大させることには限界がある。そこで、前述の如く、バイパス通路(366)の上流端の断面を回転軸(X)の周方向に細長い形状とすることによって、バイパス通路(366)を固定部材(341a)に形成する場合であっても、該バイパス通路(366)の開口面積を拡大することができる。
第7の発明は、それぞれ平坦面を有して互いの該平坦面が対向する状態で配設された2つの端板部材(45,46)と、該2つの端板部材(45,46)の間に配設された固定部材(41a)と、該2つの端板部材(45,46)の間に配設されて該固定部材(41a)との間に圧縮室(42a)を形成すると共に所定の回転軸(X)に対して偏心回転する可動部材(47a)とを有して該圧縮室(42a)中の冷媒を圧縮する圧縮機構(440a)を備えた圧縮機が対象である。そして、前記圧縮機構(440a)には、上流端が前記圧縮室(42a)に開口して該圧縮室(42a)中の冷媒の一部を排出させて該圧縮機構(440a)の吸入側へ戻すためのバイパス通路(466a,466b)が複数設けられ、前記バイパス通路(466a,466b)を開閉させる開閉手段をさらに備えているものとする。
前記の構成の場合、前記圧縮室(42a)に複数のバイパス通路(466a,466b)が開口させることによって、1つ1つのバイパス通路(466a,466b)の開口面積が大きくなくても、それらが複数集まることで全体としてのバイパス通路(466a,466b)の開口面積を拡大することができる。
第8の発明は、第7の発明において、前記開閉手段は、複数の前記バイパス通路(466a,466b)をそれぞれ個別に開閉させるものとする。
前記の構成の場合、複数の前記開閉手段によって複数のバイパス通路(466a,466b)はそれぞれ個別に開閉することができる。そして、複数のバイパス通路(466a,466b)の開閉を調節することによって、圧縮機構(440a)の容量を細かく調整することができる。
第9の発明は、第1又は第7の発明において、外部から吸入した冷媒を圧縮する低段側圧縮機構(40a,240a,340a,440a)と、前記低段側圧縮機構(40a,240a,340a,440a)が吐出した冷媒を吸入して圧縮する高段側圧縮機構(40b,240b)とを備え、前記低段側及び高段側圧縮機構の一方が、前記バイパス通路(66,266,366,466)を備えた前記圧縮機構(40a,240b,340a,440a)により構成されているものとする。
前記の構成の場合、所謂、2段圧縮機が対象となる。そして、前記圧縮機構(40a,240b,340a,440a)を前述の如くバイパス通路(66,266,366,466)により容量可変とすることによって、低段側と高段側との吸入容積比を可変とすることができる。その結果、圧縮機の運転状況に応じて、圧縮機構(40a,240b,340a,440a)の容量を調整することで低段側と高段側との吸入容積比を調整して、圧縮機の低振動化や、該圧縮機が接続される空調機の高効率化を図ることができる。
本発明によれば、バイパス通路(66,266,366)の上流端の断面を回転軸(X)の周方向に細長い形状とすることによって、固定部材(41a,41b,341a)と可動部材(47a,47b)との間に形成される円弧状の圧縮室(42a,42b)内においてバイパス通路(66,266,366)の開口面積を拡大することができ、その結果、圧縮室(42a,42b)内の冷媒の一部を排出させる際の排出流量を十分確保することができ、圧縮機構の容量を所望の値に容易に調整することができる。
第2の発明によれば、バイパス通路(62,262,362)の上流端の断面を回転軸(X)周りの周方向に沿って湾曲させることによって、バイパス通路(62,262,362)の開口面積を拡大することができる。
第3の発明によれば、バイパス通路(62b)の上流端の断面を回転軸(X)の径方向に対して直交する方向に延びる長穴状とすることによって、バイパス通路(62b)の開口面積を拡大することができる。
第4の発明によれば、バイパス通路(62c)の上流端の断面を回転軸(X)の径方向に対して直交する方向に長軸が延びる楕円状とすることによって、バイパス通路(62c)の開口面積を拡大することができる。
第5の発明によれば、バイパス通路(66,266)の上流端の断面を回転軸(X)の周方向に細長い形状とすることによって、バイパス通路(66,266)を端板部材(45,46,244,246)に形成する場合であっても、該バイパス通路(66,266)の開口面積を拡大することができる。
第6の発明によれば、バイパス通路(366)の上流端の断面を回転軸(X)の周方向に細長い形状とすることによって、バイパス通路(366)を固定部材(341a)に形成する場合であっても、該バイパス通路(366)の開口面積を拡大することができる。
別の本発明によれば、複数のバイパス通路(466a,466b)を圧縮室(42a)に開口させることによって、複数のバイパス通路(466a,466b)全体としての開口面積を拡大することができる。
第8の発明によれば、複数の開閉手段によって複数のバイパス通路(466a,466b)を個別に開閉させることによって、圧縮機構の容量を細かく制御することができる。
第9の発明によれば、圧縮機の運転状況に応じて圧縮機構(40a,240b,340a,440a)の容量を調整することによって、低段側と高段側との吸入容積比を調整することができ、圧縮機の低振動化や、該圧縮機が接続される空調機の高効率化を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る空調機(10)は、図2に示すように、2段圧縮機(20)を備えている。この空調機(10)は、冷媒回路(11)を備えている。
この冷媒回路(11)には、2段圧縮機(20)、室外熱交換器(14)、室内熱交換器(15)、第1膨張弁(16)、第2膨張弁(17)、四方切換弁(12)、三方切換弁(13)、気液分離器(18)、及びアキュームレータ(19)が接続されている。
詳しくは、2段圧縮機(20)の吐出側は、吐出管(23)を介して四方切換弁(12)の第1ポートに接続されている。また、2段圧縮機(20)の吸入側は、吸入管(22)を介してアキュームレータ(19)の底部に接続されている。また、アキュームレータ(19)の頂部は、四方切換弁(12)の第4ポートに接続されている。また、室外熱交換器(14)は、その一端が四方切換弁(12)の第2ポートに、その他端が第2膨張弁(17)を介して気液分離器(18)の底部に接続されている。一方、室内熱交換器(15)は、その一端が四方切換弁(12)の第3ポートに、その他端が第1膨張弁(16)を介して気液分離器(18)の底部に接続されている。
また、冷媒回路(11)には、インジェクション管(24)が設けられている。インジェクション管(24)は、その一端が気液分離器(18)の頂部に接続され、その他端が2段圧縮機(20)に接続されている。このインジェクション管(24)には、電磁弁(31)が設けられている。電磁弁(31)を開状態にすると、気液分離器(18)内の中間圧ガス冷媒がインジェクション管(24)によって2段圧縮機(20)に導入される。
また、冷媒回路(11)には、バイパス管(28)と導入管(29)が設けられている。バイパス管(28)は、その一端が2段圧縮機(20)に接続され、その他端が吸入管(22)に接続されている。一方、導入管(29)は、三方切換弁(13)が設けられ、その一端が2段圧縮機(20)に接続され、その他端が三方切換弁(13)を介して吐出管(23)と吸入管(22)とに接続されている。三方切換弁(13)は、導入管(29)が2段圧縮機(20)と吐出管(23)とを連通する状態(図2に実線で示す状態)と、導入管(29)が2段圧縮機(20)と吸入管(22)とを連通する状態(図2に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
四方切換弁(12)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し且つ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する状態(図2に実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通し且つ第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とが連通する状態(図2に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
続いて、2段圧縮機(20)の構成について説明する。2段圧縮機(20)は、図1に示すように縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(21)内に、低段側圧縮機構(40a)及び高段側圧縮機構(40b)を備える圧縮機構(40)と電動機(25)とが収納されて構成されている。ケーシング(21)内において、電動機(25)は圧縮機構(40)の上側に配置されている。
ケーシング(21)は、その胴部を吸入管(22)とインジェクション管(24)とバイパス管(28)と導入管(29)とが貫通している。また、ケーシング(21)は、その上部を吐出管(23)が貫通している。吐出管(23)は、その入口側がケーシング(21)内で屈曲し水平方向に延びて開口している。
前記電動機(25)は、ステータ(26)とロータ(27)とにより構成されている。ステータ(26)は、ケーシング(21)の内周面に固定されている。ロータ(27)は、ステータ(26)の内側に配置されている。ロータ(27)の中央部には、上下方向に延びるシャフト(33)の主軸部(34)が連結されている。
このシャフト(33)は、電動機(25)が作動することによって、所定の回転軸(X)回りに回転駆動される。シャフト(33)には、下側から順に第1偏心軸部(35)と第2偏心軸部(36)とが形成されている。第1偏心軸部(35)及び第2偏心軸部(36)は、主軸部(34)よりも大径に且つ主軸部(34)の回転軸(X)に対して偏心して形成されている。第1偏心軸部(35)と第2偏心軸部(36)とでは、回転軸(X)に対する偏心方向が逆になっている。また、第1偏心軸部(35)の高さは、第2偏心軸部(36)よりも高くなっている。このシャフト(33)が駆動軸部材を構成する。そして、該第1偏心軸部(35)に低段側圧縮機構(40a)が、該第2偏心軸部(36)に高段側圧縮機構(40b)が連結されている。
前記ケーシング(21)内の底部は潤滑油の油溜め部に構成され、該油溜め部の潤滑油には、シャフト(33)の下端部が浸漬されている。尚、シャフト(33)の下端部には、図示しないが、遠心式の油ポンプが設けられ、潤滑油が、シャフト(33)内の給油路(53)を通り、低段側圧縮機構(40a)及び高段側圧縮機構(40b)の摺動箇所に供給される。
前記低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)は、電動機(25)の下方位置において上下に並設されている。詳しくは、ケーシング(21)内における電動機(25)の下方空間において、上方から順にフロントヘッド(44)と、ミドルプレート(46)と、リアヘッド(45)とが互いに間隔を開けて配設されている。そして、リアヘッド(45)とミドルプレート(46)との間に低段側圧縮機構(40a)が、ミドルプレート(46)とフロントヘッド(44)との間に高段側圧縮機構(40b)が設けられている。
これらフロントヘッド(44)、ミドルプレート(46)及びリアヘッド(45)の中央部には、シャフト(33)が貫通している。そして、前記第1偏心軸部(35)は、リアヘッド(45)とミドルプレート(46)との間に位置する一方、前記第2偏心軸部(36)は、ミドルプレート(46)とフロントヘッド(44)との間に位置する。これらフロントヘッド(44)、ミドルプレート(46)及びリアヘッド(45)が端板部材を構成し、互いに対向する各面は、平坦面に形成されている。
低段側圧縮機構(40a)及び高段側圧縮機構(40b)は、基本的な構成はほぼ同一であって、何れもいわゆる揺動ピストン型のロータリ圧縮機で構成されている。
低段側圧縮機構(40a)は、図1,3に示すように、前記リアヘッド(45)及びミドルプレート(46)と、低段側シリンダ(41a)と、該低段側シリンダ(41a)内に収容された低段側ピストン(47a)と、該低段側ピストン(47a)に設けられたブレード(38)と、該ブレード(38)を支持するブッシュ(39,39)とで構成されている。この低段側圧縮機構(40a)が第1圧縮機構を構成する。
前記低段側シリンダ(41a)は、概略円筒状の部材であって、その上面がミドルプレート(46)の下面と当接する一方、その下面がリアヘッド(45)の上面と当接している。該ミドルプレート(46)の下面及びリアヘッド(45)の上面とは共に平坦面に形成されている。この低段側シリンダ(41a)が固定部材を構成する。
前記低段側ピストン(47a)は、概略円筒状の部材であって、第1偏心軸部(35)に回転自在に嵌め込まれた状態で、前記低段側シリンダ(41a)内に収容されている。この低段側ピストン(47a)は、その外周面の一部が低段側シリンダ(41a)の内周面の一部と当接していると共に、その上面及び下面がそれぞれミドルプレート(46)の下面及びリアヘッド(45)の上面に当接している。これらミドルプレート(46)、リアヘッド(45)、低段側シリンダ(41a)及び低段側ピストン(47a)で低段側シリンダ室(42a)が区画形成されている。この低段側ピストン(47a)が可動部材を、低段側シリンダ室(42a)が圧縮室を構成する。
前記低段側シリンダ(41a)には、図3に示すように、回転軸(X)方向に延びる円柱状のブッシュ孔(56)がその側周面の一部が長手方向に亘って低段側シリンダ室(42a)に開口するようにして設けられている。このブッシュ孔(56)内には、一対の揺動ブッシュ(39,39)が回動自在に設けられている。この一対の揺動ブッシュ(39,39)は、円柱をその中心軸を通る平面で分割した形状となっており、各揺動ブッシュ(39)の円弧状の外周面がブッシュ孔(56)の内周面と摺接している。
前記低段側ピストン(47a)には、その側周面から径方向に延びるブレード(38)が一体的に形成されている。このブレード(38)は、一対の揺動ブッシュ(39,39)に挟持された状態で支持される。つまり、低段側ピストン(47a)は、ブレード(38)及び一対の揺動ブッシュ(39,39)によって、ブッシュ孔(56)の中心軸回りに回転自在に支持されていると共に、揺動ブッシュ(39,39)の分割面に対して進退自在に支持されている
また、このブレード(38)によって、前記低段側シリンダ室(42a)は低圧側の低圧室(42a-Lp)と高圧側の高圧室(42a-Hp)とに区画されている。
前記低段側シリンダ(41a)には、低段側吸入通路(48a)が形成されており、この低段側吸入通路(48a)の下流端が揺動ブッシュ(39,39)の近傍において低段側シリンダ室(42a)の低圧室(42a-Lp)に開口して吸入口を構成している。この低段側吸入通路(48a)の上流端には、前記冷媒回路(11)の吸入管(22)が接続されている。該吸入管(22)は、低段側圧縮機構(40a)に低圧ガス冷媒を供給する。
前記ミドルプレート(46)は、その内部に中圧空間(50)が形成されている。また、このミドルプレート(46)には、低段側吐出通路(49a)が形成されており、この低段側吐出通路(49a)の上流端が揺動ブッシュ(39,39)の近傍において低段側シリンダ室(42a)の高圧室(42a-Hp)に開口して吐出口を構成すると共に、その下流端が中圧空間(50)に連通している。尚、図示しないが、前記低段側吐出通路(49a)には、所定の吐出圧力になると吐出口を開口する吐出弁が設けられている。また、ミドルプレート(46)には、中圧空間(50)に連通するように前記インジェクション管(24)が接続されている。つまり、中圧空間(50)は、低段側圧縮機構(40a)から吐出される中間圧ガス冷媒とインジェクション管(24)を介して供給される中間圧ガス冷媒とによって中間圧雰囲気になっている。
前記低段側ピストン(47a)は、その外周面の一部が低段側シリンダ(41a)の内周面の一部と接触した状態で回転軸(X)回りに偏心回転することで、低段側シリンダ室(42a)の容積を変化させて冷媒を圧縮するように構成されている。
前記高段側圧縮機構(40b)は、前記フロントヘッド(44)及びミドルプレート(46)と、高段側シリンダ(41b)と、該高段側シリンダ(41b)内に収容された高段側ピストン(47b)と、該高段側ピストン(47b)に設けられたブレード(図示省略)と、該ブレードを支持するブッシュ(図示省略)とで構成されている。この高段側圧縮機構(40b)が第2圧縮機構を構成する。尚、高段側圧縮機構(40b)は、低段側圧縮機構(40a)と基本的には同じ構成をしており、低段側圧縮機構(40a)の構成要素と対応する構成要素は、低段側圧縮機構(40a)の構成要素の符号中の添字「a」を「b」に変えて表している。
高段側シリンダ(41b)は、その上面がフロントヘッド(44)と当接する一方、その下面がミドルプレート(46)と当接している。そして、高段側ピストン(47b)は、第2偏心軸部(36)に回転自在に嵌め込まれた状態で且つ、その外周面の一部が高段側シリンダ(41b)の内周面の一部と接触した状態で高段側シリンダ(41b)内に収容されている。これらフロントヘッド(44)、ミドルプレート(46)、高段側シリンダ(41b)及び高段側ピストン(47b)で高段側シリンダ室(42b)が区画形成されている。高段側ピストン(47b)は、図示は省略するが、低段側ピストン(47a)と同様に、該高段側ピストン(47b)に設けられたブレードが揺動ブッシュで挟持された状態で支持されている。
また、高段側シリンダ(41b)には、高段側吸入通路(48b)が形成されている。この高段側吸入通路(48b)の下流端は揺動ブッシュの近傍において高段側シリンダ室(42b)の低圧室(図示省略)に開口して吸入口を構成している。一方、ミドルプレート(46)には、その上部に前記中圧空間(50)に開口する連通路(57)が貫通形成されており、この連通路(57)の下流端が、前記高段側吸入通路(48b)の上流端と連通している。つまり、高段側シリンダ室(42b)の低圧室は、高段側吸入通路(48b)及び連通路(57)を介してミドルプレート(46)の中圧空間(50)と連通している。
一方、フロントヘッド(44)には、高段側吐出通路(49b)が形成されている。この高段側吐出通路(49b)は、その上流端が揺動ブッシュの近傍において高段側シリンダ室(42b)の高圧室(図示省略)に開口して吐出口を構成すると共に、その下流端がフロントヘッド(44)の上面に開口している。つまり、高段側圧縮機構(40b)で圧縮された冷媒は、高段側吐出通路(49b)を介してケーシング(21)内に吐出される。尚、フロントヘッド(44)の上部には、高段側圧縮機構(40b)の高段側吐出通路(49b)を覆うマフラ(58)が設けられている。
前記低段側シリンダ(41a)と高段側シリンダ(41b)とは、内径が互いに等しく形成されている。また、低段側ピストン(47a)と高段側ピストン(47b)とは、外径が互いに等しく形成されている。さらに、低段側シリンダ(41a)及び低段側ピストン(47a)の高さは、高段側シリンダ(41b)及び高段側ピストン(47b)よりも高くなっている。したがって、低段側シリンダ室(42a)の最大容積(即ち、高圧室の容積と低圧室との容積との和、又は、閉じ込みが完了した時点でのシリンダ室の容積)は、高段側シリンダ室(42b)の最大容積よりも大きくなっている。
続いて、低段側圧縮機構(40a)に設けられたバイパス通路及びその開閉機構について説明する。
前記リアヘッド(45)には、その下面から上面近傍まで、大径の弁体収容孔(61)が穿孔されていると共に、該弁体収容孔(61)の天井面からリアヘッド(45)の上面に開口するように小径のバイパス孔(62)が穿孔されている。これら弁体収容孔(61)とバイパス孔(62)とは同軸上に形成されている。この弁体収容孔(61)及びバイパス孔(62)の断面は、図3に示すように、回転軸(X)周りの周方向に沿って湾曲した弓形状をしている。このバイパス孔(62)は、低段側シリンダ(41a)の内周縁に跨って、該内周縁に沿って延びている。これら弁体収容孔(61)及びバイパス孔(62)は、低段側シリンダ室(42a)における低段側吸入通路(48a)側の領域に設けられている。また、弁体収容孔(61)の下端は、蓋部材(63)により封止されている。
この弁体収容孔(61)内には、前記バイパス孔(62)の開閉を行う弁体(64)及びバネ部材(65)が収容されている。この弁体(64)は、柱状部材であって、その断面が弁体収容孔(61)及びバイパス孔(62)と同様に弓形状となっている。また、弁体(64)は、図4(a)に示すように、上側から下側に向かって外形が2段階に拡大している。つまり、弁体(64)は、上側の小形部(64a)、中段の中形部(64b)及び下側の大形部(64c)とを有する。これら小形部(64a)、中形部(64b)及び大形部(64c)は同軸上に形成されている。小形部(64a)は、その外周形状が前記バイパス孔(62)の内周形状と略一致する一方、大形部(64c)は、その外周形状が前記弁体収容孔(61)の内周形状と略一致しており、小形部(64a)がバイパス孔(62)に、大形部(64c)が弁体収容孔(61)に嵌め合って摺動するように構成されている。この大形部(64c)によって、弁体収容孔(61)は上部空間(61a)と下部空間(61b)とに区画されている。
また、中形部(64b)は、その外周形状が弁体収容孔(61)の内周形状よりも小さく構成されており、中形部(64b)の周りにバネ部材(65)が設けられている。このバネ部材(65)は、上部空間(61a)において、一端が大形部(64c)の上面と当接する一方、他端が弁体収容孔(61)の天井面と当接するようにして設けられている。このバネ部材(65)が自然長の状態においては、小形部(64a)がバイパス孔(62)から抜ける位置まで弁体(64)が下方に押し下げられる。
また、小形部(64a)の先端面は、平坦であって且つ、弁体(64)が弁体収容孔(61)内に収容された状態においてリアヘッド(45)の上面と平行になるように形成されている。この小形部(64a)の高さは、バイパス孔(62)の深さと略一致するか、又は、少なくともバイパス孔(62)の深さよりも高くならないように構成されている。つまり、弁体(64)の小形部(64a)は、中形部(64b)が弁体収容孔(61)の天井面に当接したときに最もバイパス孔(62)内に挿入された状態となるが、このとき小形部(64a)の先端面は、リアヘッド(45)の上面と面一になるか又はリアヘッド(45)の上面よりも若干陥没した状態となり、小形部(64a)の先端が低段側シリンダ室(42a)内に突出することはない。
また、リアヘッド(45)には、バイパス管(28)が前記上部空間(61a)に開口するように接続されると共に、導入管(29)が前記下部空間(61b)に開口するように接続されている。すなわち、弁体収容孔(61)における下部空間(61b)は、吐出管(23)を流通する高圧冷媒が導入される状態と、吸入管(22)を流通する低圧冷媒が導入される状態とが三方切換弁(13)によって切り換えられる。
これらバイパス孔(62)、弁体収容孔(61)の上部空間(61a)及びバイパス管(28)がバイパス通路(66)を構成し、バイパス孔(62)がバイパス通路(66)の上流端を構成する。また、弁体(64)、バネ部材(65)、導入管(29)及び三方切換弁(13)が開閉機構を構成する。
具体的に、三方切換弁(13)を図2に実線で示す状態に設定すると、吐出管(23)を流通する高圧冷媒が導入管(29)によって下部空間(61b)に導入される。すると、その高圧冷媒がバネ部材(65)を収縮させて弁体(64)を上方に移動させる。そして、図4(a)に示すように、弁体(64)の小形部(64a)がバイパス孔(62)に挿入され、該バイパス通路(66)が閉状態になる。また、三方切換弁(13)を図2に破線で示す状態に設定すると、吸入管(22)を流通する低圧冷媒が導入管(29)によって下部空間(61b)に導入される。すると、バネ部材(65)が伸長して弁体(64)を下側に移動させる。そして、図4(b)に示すように、弁体(64)の小形部(64a)がバイパス孔(62)から引き出され、バイパス通路(66)が開状態になる。こうしてバイパス通路(66)が開状態となると、低段側シリンダ室(42a)は吸入管(22)と連通する。
−運転動作−
前記空調機(10)の動作について説明する。ここでは、空調機(10)の冷房運転時及び暖房運転時の動作について説明し、続いて2段圧縮機(20)の動作について説明する。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、四方切換弁(12)が図2に実線で示す状態に切り換えられる。この状態で2段圧縮機(20)の電動機(25)に通電すると、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
2段圧縮機(20)で圧縮された冷媒は、吐出管(23)から吐出されて四方切換弁(12)を通り、室外熱交換器(14)へ送られて室外空気へ放熱する。室外熱交換器(14)で放熱した高圧冷媒は、第2膨張弁(17)で減圧されて中間圧冷媒となり気液分離器(18)に流入する。気液分離器(18)に流入した中間圧冷媒は、中間圧ガス冷媒と中間圧液冷媒とに分離される。そのうち気液分離器(18)の底部から流出した中間圧液冷媒は、第1膨張弁(16)で減圧されて低圧液冷媒となり室内熱交換器(15)へ流入する。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(15)から流出した低圧冷媒は、四方切換弁(12)とアキュームレータ(19)を順に通過して2段圧縮機(20)へ吸入される。2段圧縮機(20)は、吸入した冷媒を再び圧縮して吐出する。
また、前記冷房運転において、電磁弁(31)を開状態に設定すると、気液分離器(18)内の中間圧ガス冷媒がインジェクション管(24)によって2段圧縮機(20)の中圧空間(50)へ導入される。中圧空間(50)へ導入された冷媒は、低段側圧縮機構(40a)から吐出された冷媒と共に高段側圧縮機構(40b)で圧縮される。2段圧縮機(20)の動作の詳細は後述する。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、四方切換弁(12)が図2に破線で示す状態に切り換えられる。この状態で2段圧縮機(20)の電動機(25)に通電すると、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
2段圧縮機(20)で圧縮された冷媒は、吐出管(23)から吐出されて四方切換弁(12)を通り、室内熱交換器(15)へ流入する。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。室内熱交換器(15)で放熱した冷媒は、第1膨張弁(16)で減圧されて中間圧冷媒となり気液分離器(18)に流入する。気液分離器に流入した中間圧冷媒は、中間圧ガス冷媒と中間圧液冷媒とに分離される。そのうち気液分離器(18)の底部から流出した中間圧液冷媒は、第2膨張弁(17)で減圧されて低圧液冷媒となる。第2膨張弁(17)で減圧された低圧液冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られ、室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(14)から流出した低圧冷媒は、四方切換弁(12)とアキュームレータ(19)を順に通過して2段圧縮機(20)へ吸入される。2段圧縮機(20)は、吸入した冷媒を再び圧縮して吐出する。
また、前記暖房運転においても、電磁弁(31)を開状態に設定すると、気液分離器(18)内の中間圧のガス冷媒が中圧空間(50)へ導入される。中圧空間(50)へ導入された冷媒は、低段側圧縮機構(40a)から吐出された冷媒と共に高段側圧縮機構(40b)で圧縮される。
〈2段圧縮機の動作〉
2段圧縮機(20)の動作について、図5を参照して説明する。この2段圧縮機(20)は、電動機(25)に通電すると、その電動機(25)で発生する動力によってシャフト(33)が回転し、該シャフト(33)に設けられた第1及び第2偏心軸部(35,36)に摺動自在に外接する低段側及び高段側ピストン(47a,47b)がそれぞれ、低段側及び高段側シリンダ(41a,41b)内で偏心回転を行う。これにより、低段側圧縮機構(40a)及び高段側圧縮機構(40b)で冷媒の圧縮が行われる。以下に、前記バイパス通路(66)を閉状態にしたときとバイパス通路(66)を開状態にしたときとのそれぞれについて2段圧縮機(20)の動作の説明を行う。尚、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)の圧縮動作は基本的には同じであるため、主として低段側圧縮機構(40a)について説明する。
まず、バイパス通路(66)を閉状態にしたときの2段圧縮機(20)の動作について説明する。前述したように、三方切換弁(13)を図2に実線で示す状態に設定すると、バイパス通路(66)が閉状態になる。
低段側ピストン(47a)の偏心回転角度は、平面視において、シャフト(33)の回転軸(X)から径方向に延びる直線上に揺動ブッシュ(39,39)の揺動中心と低段側ピストン(47a)の軸心(第1偏心軸部(35)の軸心)(Y)とが並んだ(即ち、回転軸(X)と揺動ブッシュ(39,39)とを結ぶ線分上に低段側ピストン(47a)の軸心(Y)が位置する)時点における偏心回転角度を0°とする。
シャフト(33)が回転して、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が0°の状態から僅かに回転して、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過すると、低段側シリンダ室(42a)内に低圧室(42a-Lp)が形成され、低段側吸入通路(48a)から該低圧室(42a-Lp)へ冷媒が流入し始める。そして、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が90°,180°,270°と大きくなるのに伴って低圧室(42a-Lp)の容積が拡大すると共に冷媒が流入し、偏心回転角度が360°になるまで冷媒が流入し続ける。
その後、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が360°(即ち、0°)の状態から僅かに回転すると、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過する。低段側圧縮機構(40a)では、この当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過した時点で、低圧室(42a-Lp)における冷媒の閉じ込みが完了する。そして、この状態からシャフト(33)がさらに回転すると、低圧室(42a-Lp)は高圧室(42a-Lp)となって冷媒の圧縮を開始する。低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が90°,180°,270°と大きくなるのに伴って低圧室(42a-Lp)の容積が縮小して冷媒が圧縮される。そして、高圧室(42a-Hp)内の冷媒の圧力が中圧空間(50)の冷媒の圧力を上回ると、吐出弁が開状態になり冷媒が吐出通路(49a)から中圧空間(50)へ吐出される。冷媒の吐出は、シャフト(33)の偏心回転角度が360°になるまで続く。
一方、高段側圧縮機構(40b)では、低段側圧縮機構(40a)と同様に、高段側ピストン(47b)の偏心回転に伴って、高段側シリンダ室(42b)内へ冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮する。そして、高段側シリンダ室(42b)内の冷媒の圧力がケーシング(21)内の空間の冷媒の圧力を上回ると、吐出弁が開状態になり、冷媒が吐出通路(49b)からケーシング(21)内の空間へ吐出される。ケーシング(21)内の空間へ吐出された冷媒は、吐出管(23)から冷媒回路(11)へ吐出される。尚、第1偏心軸部(35)と第2偏心軸部(36)とは回転軸(X)を挟んで反対側に偏心しているため、低段側ピストン(47a)と高段側ピストン(47b)とは、常に位相が180°ずれた状態で偏心回転している。
次に、バイパス通路(66)を開状態にした時の2段圧縮機(20)の動作について説明する。前述したように、三方切換弁(13)を図2に破線で示す状態に設定すると、バイパス通路(66)が開状態になる。
シャフト(33)が回転して、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が0°の状態から僅かに回転して、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過すると、前述の如く、低段側シリンダ室(42a)内に低圧室(42a-Lp)が形成され、低段側吸入通路(48a)から該低圧室(42a-Lp)へ冷媒が流入し始める。
そして、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が再び0°となり、その状態からさらに偏心回転して、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過すると、その時点で、低圧室(42a-Lp)における冷媒の吸入が完了すると共に、低圧室(42a-Lp)が高圧室(42a-Hp)となる。
ここで、バイパス通路(66)が開状態となっているため、低段側ピストン(47a)がさらに偏心回転しても、高圧室(42a-Hp)では冷媒の圧縮が行われず、高圧室(42a-Hp)内の冷媒はバイパス孔(62)からバイパス通路(66)を経て吸入管(22)へ排出される。この冷媒の排出は、低段側ピストン(47a)がバイパス孔(62)を塞ぐ状態(偏心回転角度約135°)になるまで続く。そして、低段側ピストン(47a)がバイパス孔(62)を塞いだ時点で、冷媒の排出が終了すると同時に、高圧室(42a-Hp)における冷媒の閉じ込みが完了する。そして、この状態からシャフト(33)がさらに回転すると、高圧室(42a-Hp)における冷媒の圧縮が開始され、高圧室(42a-Hp)内の冷媒の圧力が中圧空間(50)の冷媒の圧力を上回ると、吐出弁が開状態になり冷媒が吐出通路(49a)から中圧空間(50)へ吐出される。冷媒の吐出は、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が360°に達するまで続く。
高段側圧縮機構(40b)における冷媒の流入から圧縮までの過程は、バイパス通路(66)が閉状態の場合と同様であるので省略する。
前述のように、バイパス通路(66)の閉状態では、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過した時点で低段側圧縮機構(40a)における冷媒の閉じ込みが完了する一方、バイパス通路(66)の開状態では、低段側ピストン(47a)がバイパス孔(62)を塞いだ時点で低段側圧縮機構(40a)における冷媒の閉じ込みが完了する。このように、この2段圧縮機(20)では、バイパス通路(66)を開閉することで、低段側圧縮機構(40a)の閉じ込み容積を変化させることができる。これにより、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積(即ち、低段側シリンダ室(42a)の最大容積)と高段側圧縮機構(40b)の吸入容積(即ち、高段側シリンダ室(42b)の最大容積)との比が変化する。
例えば、バイパス通路(66)の閉状態における高段側圧縮機構(40b)の吸入容積V2に対する低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1の容積比率K(=V2/V1)が、0.7となるように設計されている2段圧縮機(20)について説明する。この2段圧縮機(20)は、その吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差が比較的大きい運転条件の時にバイパス通路(66)の閉状態にすると、冷媒の圧縮行程が低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)とでバランス良く行われる。この2段圧縮機(20)では、前記圧力差が小さい運転条件の時に、バイパス通路(66)を開状態にして、低段側圧縮機構(40a)の閉じ込み容積を小さくする。これにより、前記容積比率Kが大きくなって、各圧縮機構(40a,40b)における冷媒の圧縮比が平均化されるので、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)との間における冷媒の圧縮行程のバランスが調節される。
−実施形態1の効果−
したがって、実施形態1によれば、バイパス孔(62)を回転軸(X)の周方向に沿って湾曲する弓形状とすることによって、バイパス孔(62)の開口面積を可及的に大きくすることができ、バイパス通路(66)を開状態として低段側シリンダ室(42a)の冷媒の一部を吸入管(22)へ戻す際に、十分な排出流量を確保することができる。
詳しくは、低段側ピストン(47a)の内周端縁、即ち、低段側ピストン(47a)の内部空間は、低段側ピストン(47a)が偏心回転する間に図5の一点鎖線で示す軌跡(Z)を描く。尚、軌跡(Z)は、回転軸(X)を中心とし、第1偏心軸部(35)の回転軸(X)からの偏心量と低段側ピストン(47a)の内径(半径)との和を半径とする円である。バイパス孔(62)をこの軌跡(Z)よりも内側に形成すると、偏心回転する低段側ピストン(47a)の内部空間とバイパス孔(62)とが重なり合って、該低段側ピストン(47a)の内部空間に供給されている高圧且つ高温の潤滑油がバイパス孔(62)を介して吸気管(22)へ漏れるおそれがあるため、バイパス孔(62)は該軌跡(Z)よりも外側に開口するように形成する必要がある。つまり、バイパス孔(62)は、リアヘッド(45)の上面のうち軌跡(Z)よりも外側且つ低段側シリンダ(41a)よりも内側の環帯状の領域に開口するように形成することが好ましい。
ここで、バイパス孔が断面円形状の場合、バイパス孔の開口面積を大きくしようとしても前記環帯状の領域に開口させるためにはバイパス孔の径をあまり大きくできない。バイパス孔の開口面積が小さいと、バイパス通路(66)を開状態としても冷媒の排出流量を十分に確保できない。その結果、低段側ピストン(47a)がバイパス孔を塞いで高圧室(42a-Hp)への冷媒の閉じ込みが完了したときには、該高圧室(42a-Hp)内の冷媒は圧縮がある程度進んだ状態となり、見かけ上、低段側ピストン(47a)がバイパス孔を塞ぐより前に高圧室(42a-Hp)への冷媒の閉じ込みが完了してそこから冷媒の圧縮がある程度行われた状態と同じになる。つまり、低段側ピストン(47a)がバイパス孔を塞いだ時点における高圧室(42a-Hp)の容積が所望の吸入容積V1になるようにバイパス孔の位置を設計したにもかかわらず、実際の吸入容積V1は設計値よりも大きくなってしまう。
それに対し、本実施形態1においては、バイパス孔(62)は、その断面が回転軸(X)の周方向に沿って湾曲して延びる弓形状に形成している。こうすることで、回転軸(X)の径方向の幅が限られた前記環帯状の領域であっても、開口面積の大きなバイパス孔(62)を形成することができる。その結果、バイパス通路(66)を開状態としたときの冷媒の排出流量を十分に確保することができ、冷媒を排出させるときに高圧室(42a-Hp)内で冷媒の圧縮が進むことを抑制して、実際の吸入容積V1を所望の値に近づけることができる。尚、バイパス孔(62)は、その断面の全てが前記環帯状の領域内に開口する必要はなく、図3に示すように、断面の一部が低段側シリンダ(41a)に覆われている場合であっても、断面の残りの部分が前記環帯状の領域に開口する構成であればよい。
また、バイパス孔(62)を大きく形成しても、前述の如く、該バイパス孔(62)はリアヘッド(45)の上面のうち、前記軌跡(Z)よりも外側の部分に開口しているため、低段側ピストン(47a)が偏心回転する際に、該低段側ピストン(47a)の内部空間から高圧且つ高温の潤滑油がバイパス孔(62)を介して吸気管(22)へ漏れることを防止することができ、冷媒が潤滑油により加熱されて容積効率が低下することを防止することができる。
さらに、平坦面であるリアヘッド(45)の上面に、バイパス通路(66)の上流端であるバイパス孔(62)を開口させると共に、弁体(64)の先端面を平坦且つリアヘッド(45)の上面と平行に形成することによって、バイパス通路(66)が閉状態のときの該リアヘッド(45)の上面と弁体(64)の先端面との間の死容積を可及的に低減することができる。これにより、バイパス通路(66)の閉状態において圧縮時に低段側圧縮機構(40a)内に吐出されずに残る冷媒がほとんどなくなるので、バイパス通路(66)の接続によって低段側圧縮機構(40a)における冷媒の圧縮効率が低下することを防止することができる。このとき、弁体(64)の先端面は平坦面に形成すればよいため、弁体(64)の先端面を低段側シリンダ(61a)の内周面に沿った湾曲面に形成する場合に比べて、弁体(64)の製造コストを抑制することができる。
尚、弁体(64)の先端面は、バイパス通路(66)が閉状態のときにおいて、リアヘッド(45)の上面と面一であることが好ましい。こうすることによって、リアヘッド(45)の上面と弁体(64)の先端面との間の死容積をなくすことができ、低段側圧縮機構(40a)の圧縮効率をさらに向上させることができる。
さらに、前記バイパス通路(66)を設けることによって、低段側圧縮機構(40a)の回転速度と高段側圧縮機構(40b)の回転速度とが常に同じになる構造の2段圧縮機(20)においても、各圧縮機構(40a,40b)における吸入容積の比を可変とすることができる。このため、例えば2段圧縮機(20)の吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差が変動しても、その変動に応じて低段側圧縮機構(40a)又は高段側圧縮機構(40b)の吸入容積を調節することで、各圧縮機構(40a,40b)における冷媒の圧縮比を平均化することができる。各圧縮機構(40a,40b)における冷媒の圧縮比が平均化されると、各圧縮機構(40a,40b)で冷媒を圧縮するのに要する圧縮トルクの変動幅は互いの差が小さくなる。その結果、各圧縮機構(40a,40b)における圧縮トルクの変動が平均化され、2段圧縮機(20)全体での圧縮トルクの変動幅が小さくなる。従って、本実施形態によれば、2段圧縮機(20)の運転状態が変動しても、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)との吸入容積比を調節することによって2段圧縮機(20)の振動を低く抑えることができる。
また、前記実施形態1では、低段側圧縮機構(40a)の閉じ込み容積を変化させることで、低段側圧縮機構(40a)から高段側圧縮機構(40b)へ供給される冷媒の量を変化させて、インジェクション管(24)から高段側圧縮機構(40b)に導入される中間圧ガス冷媒の量が調節されるようにしている。
ここで、従来の2段圧縮機では、その吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差が比較的大きい運転条件の時に冷媒の圧縮行程が低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)とでバランス良く行われるように設計すると、前記圧力差が比較的小さい運転条件の時に、低段側圧縮機構(40a)で冷媒の圧縮行程のほとんどが行われ、中圧空間(50)の圧力が比較的高くなってしまう。そして、インジェクション管(24)から中圧空間(50)に導入される中間圧冷媒の量が低下して、所定のエコノマイザ効果が得られない場合があった。つまり、中間圧冷媒の供給量が少なくなって高段側圧縮機構(40b)の吸入冷媒のエンタルピを十分に下げられなくなり、高段側圧縮機構(40b)の駆動に要する動力を低減できなくなるおそれがあった。また、蒸発器(冷房運転では室内熱交換器(15)、暖房運転では室外熱交換器(14))の入口のエンタルピも十分に低下させられないおそれもあった。
この実施形態1では、このような場合であっても、低段側圧縮機構(40a)の閉じ込み容積を小さくすることでその低段側圧縮機構(40a)から高段側圧縮機構(40b)へ供給される冷媒の量を減少させて、高段側圧縮機構(40b)に導入される中間圧ガス冷媒の量の低下を抑制することができる。従って、所定のエコノマイザ効果が発揮されるようになり、2段圧縮機(20)の運転効率が向上する。また、空調機(10)の冷房効率、暖房効率も向上する。
また、前記実施形態1では、低段側圧縮機構(40a)の閉じ込み容積を小さくすることによって、電動機(25)の回転速度を下げることなく冷媒回路(11)の冷媒の循環量を減少させることができる。従来は、冷媒回路(11)の冷媒の循環量を減少させるのに、電動機(25)の回転速度を下げていた。従って、従来とは異なり、電動機(25)を高効率が得られる回転速度に保ったままで冷媒の循環量を削減することができる。
−変形例−
尚、前記実施形態1は、次の変形例のように構成してもよい。
すなわち、図6に示すように、バイパス孔(62b)の断面を長穴状に形成してもよい。バイパス孔(62b)の断面は、回転軸(X)からの径方向に対して直交する方向に延びる長穴状になっている。すなわち、このバイパス孔(62b)は、低段側シリンダ(41a)の内周縁の接線方向に沿って且つ該内周縁に跨って延びている。このように、バイパス孔(62b)を断面長穴状に形成することによっても、バイパス孔の断面を円形状にする場合と比べて、バイパス孔(62b)の開口面積を大きくすることができる。このとき、前記弁体収容孔(61)及び弁体(64)も、バイパス孔(62b)と同様に断面長穴状に形成する。
また、図7に示すように、バイパス孔(62)の断面を楕円状に形成してもよい。このバイパス孔(62c)の断面は、回転軸(X)からの径方向に対して直交する方向に長軸が延びる楕円状になっている。すなわち、このバイパス孔(62c)の長軸は、低段側シリンダ(41a)の内周縁の接線方向に沿って且つ該内周縁に曲がって延びている。このように、バイパス孔(62c)を断面楕円状に形成することによっても、バイパス孔の断面を円形状にする場合と比べて、バイパス孔(62c)の開口面積を大きくすることができる。このとき、前記弁体収容孔(61)及び弁体(64)も、バイパス孔(62c)と同様に断面楕円状に形成する。
尚、バイパス孔(62b,62c)は、できる限り回転軸(X)側に、即ち、前記軌跡(Z)に近接させて形成することが好ましい。こうすることで、バイパス孔(62b,62c)の開口面積を可及的に大きくすることができる。
《発明の実施形態2》
次に、本発明の実施形態2について説明する。この実施形態2に係る2段圧縮機(220)では、バイパス通路が高段側圧縮機構(240b)に設けられ、高段側圧縮機構(240b)の閉じ込み容積を変化させる点で実施形態1と異なる。つまり、低段側圧縮機構(240a)が第2圧縮機構を、高段側圧縮機構(240b)が圧縮機構を構成する。尚、実施形態1と同様の構成には、同様の符号を付し、説明を省略する。
具体的に、フロントヘッド(244)には、図8に示すように、実施形態1のリアヘッド(45)と同様に、その上面から下面近傍まで、大径の弁体収容孔(261)が穿孔されていると共に、該弁体収容孔(261)の底面からフロントヘッド(244)の下面に開口するように小径のバイパス孔(262)が穿孔されている。これら弁体収容孔(261)とバイパス孔(262)とは同軸上に形成されている。また、弁体収容孔(261)の下端は、蓋部材(263)により封止されている。
この弁体収容孔(261)内には、前記バイパス孔(262)の開閉を行う弁体(264)及びバネ部材(265)が収容されている。この弁体(264)は、下側から上側に向かって外形が2段階に拡大する柱状部材であって、下側の小形部(264a)、中段の中形部(264b)及び上側の大形部(264c)とを有する。これら小形部(264a)、中形部(264b)及び大形部(264c)は同軸上に形成されている。小形部(264a)は、その外周形状が前記バイパス孔(262)の内周形状と略一致する一方、大形部(264c)は、その外周形状が前記弁体収容孔(261)の内周形状と略一致しており、小形部(264a)がバイパス孔(262)に、大形部(264c)が弁体収容孔(261)に嵌め合って摺動するように構成されている。この大形部(264c)によって、弁体収容孔(261)は下部空間(261a)と上部空間(261b)とに区画されている。
また、中形部(264b)は、その外周形状が弁体収容孔(261)の内周形状よりも小さく構成されており、中形部(264b)の周りにバネ部材(265)が設けられている。このバネ部材(265)は、下部空間(261a)において、一端が大形部(264c)の下面と当接する一方、他端が弁体収容孔(261)の底面と当接するようにして設けられている。このバネ部材(265)が自然長の状態においては、小形部(264a)がバイパス孔(262)から抜ける位置まで弁体(264)が上方に押し上げられる。
また、小形部(264a)の先端面は、平坦であって且つ、弁体(264)が弁体収容孔(261)内に収容された状態においてフロントヘッド(244)の上面と平行になるように形成されている。この小形部(264a)の高さは、バイパス孔(262)の深さと略一致するか、又は、少なくともバイパス孔(262)の深さよりも高くならないように構成されている。つまり、弁体(264)の小形部(264a)は、中形部(264b)が弁体収容孔(261)の底面に当接したときに最もバイパス孔(262)内に挿入された状態となるが、このとき小形部(264a)の先端面は、フロントヘッド(244)の下面と面一になるか又はフロントヘッド(244)の下面よりも若干陥没した状態となり、小形部(264a)の先端が低段側シリンダ室(42a)内に突出することはない。
また、フロントヘッド(244)には、バイパス管(228)の上流端が前記下部空間(261a)に開口するように接続されると共に、導入管(229)の下流端が前記上部空間(261b)に開口するように接続されている。すなわち、弁体収容孔(261)における上部空間(261b)は、吐出管(23)を流通する高圧冷媒が導入される状態と、吸入管(22)を流通する低圧冷媒が導入される状態とが三方切換弁(13)によって切り換えられる。尚、バイパス管(228)の下流端は、ミドルプレート(246)の中圧空間(50)内に開口している。
これらバイパス孔(262)、弁体収容孔(261)の下部空間(261a)及びバイパス管(228)がバイパス通路(266)を構成し、バイパス孔(262)がバイパス通路(266)の上流端を構成する。また、弁体(264)、バネ部材(265)、導入管(229)及び三方切換弁(13)が開閉機構を構成する。
この実施形態2の2段圧縮機(220)は、例えば、バイパス通路(266)の閉状態における高段側圧縮機構(240b)の閉じ込み容積V2に対する低段側圧縮機構(240a)の閉じ込み容積V1の容積比率K(=V2/V1)が0.85になるように設計する。この2段圧縮機(220)は、その吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差が比較的小さい運転条件の時にバイパス通路(266)の閉状態にすると、冷媒の圧縮行程が低段側圧縮機構(240a)と高段側圧縮機構(240b)とでバランス良く行われる。この2段圧縮機(220)では、前記圧力差が大きい運転条件の時に、バイパス通路(266)を開状態にして、高段側圧縮機構(240b)の閉じ込み容積を小さくする。これにより、前記容積比率Kが小さくなって、各圧縮機構(240a,240b)における冷媒の圧縮比が平均化されるので、低段側圧縮機構(240a)と高段側圧縮機構(240b)との間における冷媒の圧縮行程のバランスが調節される。また、中圧空間(50)の圧力が所定のエコノマイザ効果を効率的に得られる圧力値に調節される。
ここで、高段側ピストン(47b)が偏心回転する間に、高段側ピストン(47b)の内周端縁、即ち、高段側ピストン(47b)の内部空間は、図5に示す低段側ピストン(47a)の軌跡(Z)と同様の軌跡を描く。すなわち、高段側ピストン(47b)の内部空間の潤滑油がバイパス通路(262)に漏れ出ることを防止するためには、軌跡(Z)よりも外側且つ高段側シリンダ(41b)よりも内側の環帯状の領域に該バイパス通路(262)を開口させることが好ましい。そこで、実施形態2においては、実施形態1と同様に、バイパス孔(262)の断面を、回転軸(X)周りの周方向に沿って延びる弓形状としている。こうすることで、回転軸(X)の径方向の幅が限られた前記環帯状の領域であっても、開口面積の大きなバイパス孔(262)を形成することができる。
《発明の実施形態3》
次に、本発明の実施形態3について説明する。この実施形態3に係る2段圧縮機(320)では、低段側圧縮機構(340a)における低段側シリンダ(341a)の側壁に弁体収容孔(361)及びバイパス孔(362)が形成される点で実施形態1と異なる。尚、実施形態1と同様の構成には、同様の符号を付し、説明を省略する。
実施形態3に係る2段圧縮機(320)は、図9に示すように、リアヘッドではなく、低段側シリンダ(341a)の側壁に弁体収容孔(361)及びバイパス孔(362)が形成されている。低段側シリンダ(341a)の側壁において回転軸(X)の径方向外側から内側に向かって、弁体収容孔(361)及びバイパス孔(362)がこの順番で形成されている。バイパス孔(362)は低段側シリンダ(341a)の内周面に開口する一方、弁体収容孔(361)は低段側シリンダ(341a)の外周面に開口している。これら弁体収容孔(361)及びバイパス孔(362)は、低段側シリンダ(341a)の側壁のうち低段側吸入通路(48a)寄りの位置に形成されている。
バイパス孔(362)の断面は、図10に示すように、回転軸(X)の周方向に延びる長穴状をしている。尚、バイパス孔(362)の断面は、楕円状等、回転軸(X)の周方向に細長い形状であればよい。
また、弁体収容孔(361)には、弁体(364)及びバネ部材(365)が収容され、弁体収容孔(361)の径方向外側端は蓋部材(363)で封止されている。弁体(364)は、外周形状が径方向内側から外側に向かって2段階に拡大する柱状の部材で構成されている。すなわち、弁体(364)は、径方向内側の小形部(364a)と、径方向中央の中形部(364b)と、径方向外側の大形部(364c)とを有している。小形部(364a)は、その外周形状がバイパス孔(362)の内周形状と略一致する一方、大径部(364c)は、その外周形状が弁体収容孔(361)の内周形状と略一致する。中形部(364b)は、その外周形状が小形部(364a)の外周形状よりも大きく且つ大形部(364c)の外周形状よりも小さく形成されると共に、小形部(364a)及び大形部(364c)と相似形をしている。
弁体(364)が弁体収容孔(361)に収容された状態において、弁体(364)は弁体収容孔(361)内の空間を弁体(364)の大形部(364c)よりも径方向内方の内側空間(361a)と弁体(464)の大形部(364c)よりも径方向外方の外側空間(361b)とに仕切っている。この内側空間(361a)には、バネ部材(365)が弁体(364)の中形部(364b)の周りに嵌められた状態で設けられている。また、内側空間(361a)には、バイパス管(328)が接続されている一方、外側空間(361b)には、導入管(329)が接続されている。前記バイパス孔(362)、弁体収容孔(361)の内側空間(361a)及びバイパス管(328)がバイパス通路(366)を構成している。
弁体(364)の小形部(364a)の先端面は、低段側シリンダ(341a)の内周面に沿った湾曲形状となっている(即ち、弁体(364)の小径部(364a)の曲率半径は低段側シリンダ(341a)の内径と略同じになっている)。また、弁体(364)の小形部(364a)は、中形部(364b)が弁体収容孔(361)の内側端面に当接したときに最もバイパス孔(362)内に挿入された状態となるが、このとき小形部(364a)の先端面は、低段側シリンダ(341a)の内周面と面一になるか又は低段側シリンダ(341a)の内周面よりも若干陥没した状態となり、小形部(364a)の先端が低段側シリンダ室(342a)内に突出することはない。
このように低段側シリンダ(341a)の内周面にバイパス孔(362)を開口させる場合、低段側シリンダ(341a)の高さは低段側シリンダ室(342a)の容積によって決まっているため、バイパス孔(362)を低段側シリンダ(341a)の高さ方向に拡大することはできない。そのため、バイパス孔を断面円形状で形成すると、その開口面積は低段側シリンダ(341a)の高さにより制約を受け、あまり大きくすることができない。それに対し、実施形態3においては、バイパス孔(362)の断面を回転軸(X)の周方向に延びる長穴状に形成することによって、バイパス孔(362)の開口面積を十分に拡大することができる。
《発明の実施形態4》
次に、本発明の実施形態4について説明する。この実施形態4に係る2段圧縮機(420)では、バイパス孔が複数形成される点で実施形態1と異なる。尚、実施形態1と同様の構成には、同様の符号を付し、説明を省略する。
実施形態4に係る2段圧縮機(420)は、図11に示すように、低段側圧縮機構(440a)におけるリアヘッド(445)に複数のバイパス孔(462a,462b)が形成されている。具体的には、第1及び第2バイパス孔(462a,462b)は、その断面が円形状であって、低段側ピストン(47a)が偏心回転する際の該低段側ピストン(47a)の内部空間の軌跡(Z)よりも外側においてリアヘッド(445)の上面に開口している。ここで、第1バイパス孔(462a)は、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が約90°のときに該低段側ピストン(47a)で塞がれる位置に配設され、第2バイパス孔(462b)は、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が約160°のときに該低段側ピストン(47a)で塞がれる位置に配設されている。
これらバイパス孔(462a,462b)と繋がる弁体収容孔(461a,461b)には、それぞれ別々の弁体(464a,464b)が収容されている。各弁体収容孔(461a(461b))、バイパス孔(462a(462b))及び弁体(464a(464b))の構成は、実施形態1の弁体収容孔(61)、バイパス孔(62)及び弁体(64)と同様である。
また、図12に示すように、冷媒回路(411)には、2つの三方切換弁、即ち、第1三方切換弁(413a)と第2三方切換弁(413b)とが接続されている。
この第1三方切換弁(413a)は、第1導入管(29a)を介して2段圧縮機(420)と接続されており、2段圧縮機(420)と吐出管(23)とを連通する状態(図12に実線で示す状態)と、2段圧縮機(420)と吸入管(22)とを連通する状態(図12に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。この第1導入管(29a)の下流端は、第1弁体収容孔(461a)における第1弁体(464a)より下方の下部空間に接続されている。第1弁体収容孔(461a)における第1弁体(464a)より上方の上部空間には、第1バイパス管(28a)の上流端が接続されており、該第1バイパス管(28a)の下流端は吸入管(22)に接続されている。これら第1バイパス通路(462a)、第1弁体収容孔(461a)の上部空間及び第1バイパス管(28a)が第1バイパス通路(466a)を構成する。
一方、第2三方切換弁(413b)は、第2導入管(29b)を介して2段圧縮機(420)と接続されており、2段圧縮機(420)と吐出管(23)とを連通する状態(図12に実線で示す状態)と、2段圧縮機(420)と吸入管(22)とを連通する状態(図12に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。この第2導入管(29b)の下流端は、第2弁体収容孔(461b)における第2弁体(464b)より下方の下部空間に接続されている。第2弁体収容孔(461b)における第2弁体(464b)より上方の上部空間には、第2バイパス管(28b)の上流端が接続されており、該第2バイパス管(28b)の下流端は吸入管(22)に接続されている。これら第2バイパス通路(462b)、第2弁体収容孔(461b)の上部空間及び第2バイパス管(28b)が第2バイパス通路(466b)を構成する。
つまり、第1バイパス通路(466a)と第2バイパス通路(466b)とは、第1三方切換弁(413a)と第2三方切換弁(413b)とによって別々に開閉制御される。これら第1及び第2バイパス通路(466a,466b)の開閉状態を種々切り替えることによって、高段側圧縮機構(40b)の吸入容積V2に対する低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1の容積比率K(=V2/V1)を調整することができる。
詳しくは、2段圧縮機(420)の吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差が比較的大きい第1運転条件のときには、第1及び第2バイパス通路(466a,466b)を共に閉状態とする(第1開閉状態という)。このとき、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1は最大となり、前記容積比率Kは最小となる。
そして、2段圧縮機(420)の吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差が第1運転条件よりも小さい第2運転条件のときには、第1バイパス通路(466a)を開状態とする一方、第2バイパス通路(466b)を閉状態とする(第2開閉状態という)。このとき、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1は2番目に大きくなり、前記容積比率Kは2番目に小さくなる。
また、2段圧縮機(420)の吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差が第2運転条件よりもさらに小さい第3運転条件のときには、第1バイパス通路(466a)を閉状態とする一方、第2バイパス通路(466b)を開状態とする(第3開閉状態という)。このとき、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1は3番目に大きくなり、前記容積比率Kは3番目に小さくなる。
さらに、2段圧縮機(420)の吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差が第3運転条件よりもさらに小さい第4運転条件のときには、第1及び第2バイパス通路(466a,466b)を開状態とする(第4開閉状態という)。この第4運転条件のときには、低段側ピストン(47a)が第2バイパス孔(462b)を塞いで高圧室(42a-Hp)への冷媒の閉じ込みが完了するタイミングは、第3運転条件のときと同じであるが、バイパス孔の開口面積は第1及び第2バイパス孔(462a,462b)の開口面積の合計となるため、十分な冷媒の排出流量を確保することができる。その結果、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1を設計値により近い値にすることができる(換言すれば、第3運転条件のときには、第2バイパス孔(462b)だけでは開口面積が十分でないため、高圧室(42a-Hp)への冷媒の閉じ込みが完了したときの低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1は、実際の高圧室(42a-Hp)の容積よりも大きくなっている)。つまり、該吸入容積V1は最小となり、前記容積比率Kは最大となる。
つまり、容積比率Kは、第1開閉状態から第4開閉状態へ変化するにつれて、大きくなる。
このように、2段圧縮機(420)の吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差に応じて、第1及び第2バイパス通路(466a,466b)の開閉状態を切り替えることで前記容積比率Kを調整して、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)との間における冷媒の圧縮行程のバランスを調整している。
したがって、実施形態4によれば、複数のバイパス通路(466a,466b)を設けることによって、バイパス孔(462a,462b)全体としての開口面積を拡大することができる。
また、複数のバイパス通路’(466a,466b)の開閉状態を個別に制御することによって、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1を細かく調整することができ、2段圧縮機(420)の吸入冷媒と吐出冷媒との圧力差に応じた高段側圧縮機構(40b)の吸入容積V2に対する低段側圧縮機構(40a)の吸入容積V1の容積比率Kで2段圧縮機(420)を運転することができる。
尚、前記実施形態4では、バイパス孔(462a,462b)の断面を円形に形成しているが、これに限られるものではない。例えば、前記実施形態1及びその変形例のように、断面が弓形状、長穴状、楕円状等の形状であってもよいし、これら以外の任意の形状であってもよい。
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
すなわち、実施形態1〜4では、低段側圧縮機構と高段側圧縮機構とを有する2段圧縮機が対象となっているが、これに限られるものではない。例えば、1つの圧縮機構を有する単段の圧縮機に本発明を採用することもできる。
また、前記バイパス通路は、圧縮機構につき1つだけ設けられているが、これに限られず、1つの圧縮機構に複数のバイパス通路を設け、閉じ込み容積を複数段に調整するものであってもよい。
さらに、前記バイパス孔及び弁体の断面は、円形であるが、これに限られず、任意の形状を採用することができる。
さらにまた、実施形態1〜4では、前記バイパス孔及び弁体をリアヘッド又はフロントヘッドに配設しているが、これに限られず、ミドルプレートに配設してもよい。
また、実施形態1〜4では、圧縮機構として、揺動ピストン型のロータリ圧縮機が対象となっているが、これに限られるものではない。例えば、実施形態1〜4と同様にシリンダと該シリンダ内に収納されたピストンとを備える圧縮機であって、該ピストンが自転することなく偏心回転するロータリ圧縮機であってもよい。また、外側シリンダ部及び内側シリンダ部を有して該外側シリンダ部と内側シリンダ部との間に環状の圧縮室が形成されたシリンダと、該シリンダに対して偏心した状態で圧縮室に収納されて該圧縮室を外側圧縮室と内側圧縮室とに区画する環状のピストンとを有し、該シリンダ及びピストンの一方が揺動しながら偏心回転する外側圧縮室及び内側圧縮室内の冷媒を圧縮する圧縮機であってもよい。すなわち、本発明は、固定部材に対して可動部材が相対的に偏心回転することで冷媒を圧縮する圧縮機であれば、任意の構造の圧縮機に採用することができる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。