以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である測光機構が実際に測定する光の波長を特定する波長特定方法および分析装置について、血液や尿等、液体である検体の吸光度をもとに検体を分析する分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
図1は、本実施の形態にかかる分析装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器21にそれぞれ分注し、分注した反応容器21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行う。
測定機構2は、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、読取部16、試薬分注機構17、攪拌部18、測光部19および洗浄部20を備える。
検体移送部11は、血液や尿等、液体である検体を収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送される反応容器21に分注される。
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行うプローブが取り付けられている。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中からプローブによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、反応容器21に検体を吐出して分注を行う。
反応テーブル13は、反応容器21への検体や試薬の分注、反応容器21の攪拌、洗浄または測光を行うために反応容器21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
試薬庫14は、反応容器21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構17による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、恒温槽が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を恒温状態に保ち、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
試薬容器15の側面部には、試薬容器15に収容された試薬に関する試薬情報が記録された記録媒体が付されている。記録媒体は、符号化された各種の情報を表示しており、光学的に読み取られる。試薬庫14の外周部には、この記録媒体を光学的に読み取る読取部16が設けられている。読取部16は、記録媒体に対して赤外光または可視光を発し、記録媒体からの反射光を処理することによって、記録媒体の情報を読み取る。また、読取部16は、記録媒体を撮像処理し、撮像処理によって得られた画像情報を解読して、記録媒体の情報を取得してもよい。
試薬分注機構17は、検体分注機構12と同様に、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアーム17aを備える。アーム17aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。試薬分注機構17は、試薬庫14上の所定位置に移動された試薬容器15内の試薬をプローブによって吸引し、アーム17aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送された反応容器21に分注する。攪拌部18は、反応容器21に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる。
測光部19は、所定の測光位置に搬送された反応容器21に光を照射し、反応容器21内の液体を透過した光を分光し、反応液に特有の波長の吸光度を測定する。この測光部19による測定結果は、制御部31に出力され、分析部33において分析される。また、測光部19は、特定対象である波長を含む波長域に単調な傾斜をもった吸光度特性を有し、2種以上の濃度を持つ特定用サンプルに対して各吸光度を測定する。測光部19によって測定される特定用サンプルの濃度範囲は測光部19における受光感度特性に応じて決定される。言い換えると、測光部19によって測定される特定用サンプルの濃度範囲の上限は、測光部19における受光波長の半値全幅に応じて決定される。
洗浄部20は、図示しないノズルによって、測光部19による測定が終了した反応容器21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。この洗浄した反応容器21は再利用されるが、検査内容によっては1回の測定終了後に反応容器21を廃棄してもよい。
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部35、出力部36および送受信部37を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部19から取得した吸光度測定結果に基づいて検体の成分分析等を行う。
特定部34は、測光部19が実際に測定する光の波長を特定する。まず、特定部34は、測光部19によって測定された特定用サンプルの濃度と吸光度との関係を示す直線の傾きを求める。そして、特定部34は、基準傾きと、演算した傾きとを比較し測定手段が実際に測定する光の波長を特定する。この基準傾きは、一つ以上の波長に対して予め求められた特定用サンプルの濃度と吸光度との関係を示す直線の傾きである。基準傾きは、特定対象である波長ごとにそれぞれ求められている。基準傾きは、測光部19における受光感度よりも高い受光感度を有する測光装置によって波長ごとに測定された特定用サンプルの各濃度の吸光度をもとに求められる。特定部34は、各基準傾きと、演算した傾きとの一致度をもとに測光機構が実際に測定する光の波長を特定する。本実施の形態においては、2種以上の濃度の特定用サンプルに対して通常の検体に対する測定処理と同様の測定処理を行ない、各濃度の特定用サンプルの吸光度をもとに測光部19が実際に測定する光の波長を特定する。
記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、一つ以上の波長に対して予め求められた基準傾きを記憶する。また、記憶部35は、測光部19における受光感度特性に応じて決定される特定用サンプルの濃度を記憶する。記憶部35は、測光部19における受光波長幅に応じて決定される特定用サンプルの濃度の上限を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
出力部36は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。出力部36は、特定部34によって特定された測光部19が実際に測定する光の波長を出力する。送受信部37は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有する。
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器21に対して、検体分注機構12が検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注機構17が試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部19が検体と試薬とを反応させた状態の試料の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部20が測光部19による測定が終了した後に搬送される反応容器21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
つぎに、図1に示す測光部19について説明する。測光部19は、図2に示すように、光を照射する光源191と、光源191から照射された光を反応容器21に対して集光するレンズ192と、反応容器21を通過した光をグレーティング195に対して集光するレンズ193,194と、レンズ193,194によって集光された光を分光するグレーティング195と、グレーティング195によって分光された光を波長ごとに絞るスリット部材196と、所定波長光の受光量をそれぞれ検出するフォトダイオード(以下、「PD」とする。)を1次元または2次元に配列しグレーティング195によって分光された各波長の光を受光するフォトダイオードアレイ(以下、「PDA」とする。)197とを備える。通常、血液や尿などの検体を生化学的に分析する分析装置においては、570nm帯域の波長光が測定光の一つとして用いられている。このため、本実施の形態においては、PDA197の各PDが受光する各波長のうち、570nm帯域の光に対して波長を特定する場合を例に説明する。なお、スリット部材196は、幅Dsの570nm帯域の光が通過するスリットを有する。
まず、570nm帯域の光の波長を特定するために用いる特定用サンプルについて説明する。ここで、分析装置1においては、測光部19が測定する570nm帯域の光は調整誤差により、所望の波長から多少の誤差を生じる。たとえば、所望波長570nmに対し、570〜575nmの範囲の誤差がある場合、高い分析精度を維持するためには、測光部19が570nm〜575nmのいずれかの波長の光を測定しているかを特定する必要がある。
本実施の形態においては、570nm帯域の光の波長を特定する特定用サンプルとして、図3に示すように、色素液であるアシッドレッドを用いる。図3に示すように、アシッドレッドは、特定対象である570nm〜575nmの範囲において単調かつ急峻な傾斜をもった吸光度特性を有する。このため、アシッドレッドは、570nm〜575nmの範囲内であれば、吸収波長が1nmしか変化しなかった場合であっても、吸光度に大きな差が生じる。このため、アシッドレッドの吸光度を用いることによって、アシッドレッドが吸収した光の波長変化を1nm以下の単位で把握することができる。また、アシッドレッドは、570nm〜575nmの範囲において高い吸光度を有するため、希釈した場合であっても測光部19において測定可能である程度に570nm〜575nmの波長の光を吸収できる。したがって、アシッドレッドを各濃度に希釈して570nm〜575nmの各波長の吸光度をそれぞれ測定した場合、波長ごとに濃度と吸光度との関係がそれぞれ求められる。なお、波長特定のために用いる色素液は、吸光度において吸収波長変化に対応した分の変化が認められるため、特定対象である波長範囲において単調な傾斜をもった吸光度特性を有すれば足りる。さらに、実施の形態において例示するアシッドレッドは、特定対象である570nm〜575nmの範囲において急峻な吸光度特性を有するため、吸収波長の微小な変化であっても吸光度に大きな差が生じ、アシッドレッドが吸収した光の波長変化を微小な単位で把握することができる。
図4に、実際に所定濃度の原液を各希釈率で希釈したアシッドレッドの各濃度の吸光度を570nm〜575nmの波長光で測定した結果を示す。図4に示す測定結果は、希釈率を0〜1の間で0.1ずつ変化させて所定濃度の原液を希釈した11種の濃度の各アシッドレッドに対して、570nm〜575nmの各波長の吸光度を測定した場合に対応する。図4に示すように、各波長の光の吸光度とアシッドレッドの各希釈率との関係は、1次関数によって表すことができる。図4に示す直線l570は、570nmの波長の光の吸光度とアシッドレッドの各希釈率との関係を示し、直線l571は、571nmの波長の光の吸光度とアシッドレッドの各希釈率との関係を示し、直線l572は、572nmの波長の光の吸光度とアシッドレッドの各希釈率との関係を示し、直線l573は、573nmの波長の光の吸光度とアシッドレッドの各希釈率との関係を示し、直線l574は、574nmの波長の光の吸光度とアシッドレッドの各希釈率との関係を示し、直線l575は、575nmの波長の光の吸光度とアシッドレッドの各希釈率との関係を示す。なお、これらのアシッドレッドの各濃度の吸光度は、測光部19の受光波長の半値全幅より狭い受光波長の半値全幅を有し高い受光感度を有する分光光度計によって測定されたものである。
図4の直線l570〜直線l575に示すように、570nm〜575nmの各波長の光の吸光度とアシッドレッドの各希釈率との関係を示す直線は、それぞれ異なる傾きを有することが分かる。
図5は、図4に示す570nm〜575nmの各波長に対応する直線における傾きaと切片bとを演算した結果を示す図である。図5に示すように、570nm〜575nmの各波長によって、570nm〜575nmの各波長に対応する直線の傾きaおよび切片bはそれぞれ異なる値となる。この各波長に対応する傾きaの値は、分析装置1内の測光部19よりも高い受光感度を有する分光光度計による測定結果に基づくものであるため、各波長において固有のものとして扱ってもよいと考えられる。図5に示す各波長に対応するアシッドレッドの希釈率と吸光度との関係を示す直線の傾きaは、予め求められて記憶部35内に記憶されている。
特定部34は、実際に測光部19にアシッドレッドの2種以上の希釈率に対する吸光度を測定させ、測光部19によって測定されたアシッドレッドの希釈率と吸光度との関係を示す直線の傾きを演算し、演算した傾きを図5に示す各波長に対応する直線の傾きaと比較することによって、測光部19が実際に測定する光の波長を特定する。
ここで、測光部19におけるスリット部材196のスリット幅Dsに対応して図6に示す受光波長幅Wsが決定する。たとえば、基準傾きを取得するために予め吸光度を測定する分光光度計の受光側のスリット幅は、0.1mmである。この場合における受光波長幅は2nmとなり、受光波長のずれは、この受光波長幅2nmの誤差内に抑えられる。これに対し、測光部19のスリット部材196のスリット幅Dsは、分光光度計と比べて広く、たとえば0.4mmである。この場合における測光部19の受光波長幅Wsは8nmとなり、測定波長のずれ幅も分光光度計と比較して大きくなる可能性が高い。
そして、図6に示すように、アシッドレッドは、特定対象である570nm帯域において単調かつ急峻な傾斜をもった吸光度特性を有する。このため、曲線l11のようにアシッドレッドが高濃度である場合には、曲線l12および曲線l13のようにアシッドレッドが低濃度である場合と比較し、吸光度特性が急峻に変化して吸光度が格段に高くなる。さらに、測光部19における実際の出力値は、受光波長幅Wsに含まれる波長光の光量を受光波長幅Wsで積分した値である。受光波長幅Wsが図6に示すように広い場合、曲線l11に示す高濃度のアシッドレッドの吸光度量は、曲線l13に示す低濃度のアシッドレッドの吸光度量S13よりも格段に多い吸光度量S11の差を有することとなる。このように、波長光の光量を受光波長幅Wsで積分した値が測光部19の出力値となるため、受光波長幅Wsが広い場合には特に、測定波長のずれが微小であった場合であっても、高濃度のアシッドレッドの吸光度は大きく変動してしまう。したがって、測光部19の受光波長幅Wsが広い場合には、高濃度アシッドレッドの吸光度を正確に測定することができない場合がある。
実際に測光部19において各希釈率のアシッドレッドに対して所定波長の吸光度積分値を測定した結果について説明する。図7は、測光部19による吸光度積分値の希釈率依存性を示す図である。図7においては、曲線l1に測光部19による吸光度積分値の希釈率依存性を示すとともに、直線l0に測光部19よりも高い受光感度を有する分光光度計によって測定した吸光度積分値の希釈率依存性を示す。測光部19よりも受光感度の高い分光光度計を用いた場合には、希釈率が高い高濃度のアシッドレッドであっても正確に吸光度を測定することができるため、吸光度積分値の希釈率依存性は直線l0となる。これに対し、測光部19においては、曲線l0に対応する分光光度計よりも受光波長の半値全幅が広く吸光度が正確に測定できないため、吸光度積分値の希釈率依存性は、アシッドレッドの希釈率が0.5以上の高濃度領域において直線l0から乖離した曲線l1となってしまう。
このため、図7におけるP15のように、直線l0から乖離する領域の希釈率ではなく、正確に吸光度を測定でき直線l0から乖離しない領域の希釈率でアシッドレッドを調製することが好ましい。図7の場合、直線l0から乖離しない希釈率は、0〜0.4であるため、希釈率0.4を上限として、特定用サンプルの各希釈率を決定すればよい。図7の場合には、たとえば、点P11に示す希釈率0.1である特定用サンプル、点P12に示す希釈率0.2である特定用サンプル、点P13に示す希釈率0.3である特定用サンプル、点P14に示す希釈率0.4である特定用サンプルのいずれか2種を用いる。
具体的に、図8を参照して、特定部34が波長を特定する処理内容について説明する。たとえば、図7の特定用サンプルの希釈率範囲の上限にしたがって、希釈率0.1のアシッドレッド、希釈率0.2のアシッドレッドおよび希釈率0.4のアシッドレッドの吸光度を測光部19において測定した場合を例に説明する。この場合、特定部34は、図8の点P21に示す希釈率0.1のアシッドレッドの吸光度、点P22に示す希釈率0.2のアシッドレッドの吸光度および点P24に示す希釈率0.4のアシッドレッドの吸光度をもとに、点P21、点22および点P24を通る直線l21を求め、この直線l21の傾きaを演算する。特定部34は、直線l21の傾きaを演算した後、記憶部35内から図5に示す各波長の傾きを参照し、演算した傾きが一致する波長を判断する。この場合、特定部34は、直線l21の傾きが2.886であると演算したため、矢印Y21に示すように、直線l21は571nmの波長の光に対応すると判断し、測光部19が実際に測定する光の波長は、571nmであると特定する。
さらに所定期間経過後において、たとえば、図7の特定用サンプルの希釈率範囲の上限にしたがって、希釈率0.3のアシッドレッドおよび希釈率0.4のアシッドレッドの吸光度を測光部19において測定した場合について説明する。この場合、特定部34は、図8の点P33に示す希釈率0.3のアシッドレッドの吸光度および点P34に示す希釈率0.4のアシッドレッドの吸光度をもとに、点P33および点P34を通る直線l31を求め、この直線l31の傾きaを演算する。特定部34は、直線l31の傾きaを演算した後、記憶部35内から図5に示す各波長の傾きを参照し、演算した傾きが一致する波長を判断する。この場合、特定部34は、直線l31の傾きが2.563であると演算したため、図5において一致する傾きがない。ただし、特定部34は、直線l31の傾きが2.563であるため、直線l31の傾きaと最も値が近い573nm〜574nmの範囲に対応すると判断できる。
そして、特定部34は、演算した直線l31の傾きaと最も値が近い573nmおよび574nmの傾きを用いて、演算した傾きaとの差および比などを演算することによって対応する波長を詳細に特定すればよい。たとえば、特定部34は、演算した直線l31の傾きa(2.563)と波長573nmの傾きa(2.6365)との差分値を求める。つぎに、特定部34は、演算した直線l31の傾きa(2.563)と最も値が近い573nmの傾きa(2.6365)と574nmの傾きa(2.4899)との差分値を求める。特定部34は、573nmの傾きa(2.6365)と574nmの傾きa(2.4899)との差分値に対する、直線l31の傾きa(2.563)と波長573nmの傾きa(2.6365)との差分値の比率を演算し、たとえば、0.1μm単位で直線l31に対応する波長を求めることができる。図8の直線l31の場合には、直線l31の傾きa(2.563)と波長573nmの傾きa(2.6365)との差分値が、573nmの傾きa(2.6365)と574nmの傾きa(2.4899)との差分値に対して、0.5の比率を占める。このため、特定部34は、直線l31をもとに、矢印Y31に示すように、測光部19が実際に測定する光の波長は、573.5nmであると特定できる。この結果、測光部19が実際に測定する光の波長は、571nmに対応する直線l21を演算した前回波長特定時よりも、高波長側に2.5nmずれていることを確認することができる。このように、分析装置1においては、測光部19が測定する光の波長のずれを絶対的に取得することができる。
つぎに、図9を参照して、分析装置1における波長特定処理について説明する。図9に示すように、特定部34は、入力部32から入力された指示情報をもとに、測光部19が実際に測定する光の波長の特定を指示されたか否かを判断する(ステップS2)。この波長特定の指示は、たとえば、操作者による入力部32の操作によって、出力部36を構成するディスプレイ画面上に表示されたメニュー欄から波長特定を指示する選択欄が選択された場合、入力部32から測光部19の波長の特定を指示する指示情報が制御部31に入力される。
特定部34は、測光部19が実際に測定する光の波長の特定を指示されたと判断するまでステップS2の判断を繰り返し、波長特定を指示されたと判断した場合(ステップS2:Yes)、測光部19による受光感度特性に応じて決定された特定用サンプルの濃度範囲の上限をもとに、推奨される特定用サンプルの各希釈率を出力部36に出力させる(ステップS4)。操作者は、出力部36から出力された各希釈率を参照して、特定用サンプルを用意する。そして、特定部34は、各希釈率で希釈されたアシッドレッドなどの波長特定用サンプルの吸光度測定を測光部19に指示し、測光部19は、波長特定用サンプルの吸光度測定を行い(ステップS6)、測定結果を出力する。次いで、特定部34は、入力部32から入力された情報などをもとに、測光部19によって測定された波長特定用サンプルの各希釈率を取得する(ステップS8)。そして、特定部34は、波長特定用サンプルの希釈率と波長特定用サンプルの吸光度との関係を示す直線を取得し(ステップS10)、この直線の傾きを演算する。つぎに、特定部34は、たとえば図5に例示する、一つ以上の波長に対して予め求められた特定用サンプルの希釈率と吸光度との関係を示す各波長の直線の傾きを基準波長情報として記憶部35内から取得する(ステップS12)。そして、特定部34は、ステップS10において取得した直線の傾きと、ステップS12において基準波長情報として取得した各波長の傾きとの一致度をもとに、測光部19が実際に測定する光の波長を特定する(ステップS14)。出力部36は、特定部34が特定した波長を出力する(ステップS16)。操作者は、出力部36によって出力された特定波長を確認することによって、分析装置1における測光部19が実際に測定する光の波長を認識することができ、測光結果の補正処理を従来よりも適切に行なうことができる。
このように、本実施の形態によれば、特定用サンプルにおける各波長に固有の吸光度と濃度との関係を示す直線の傾きを用いることによって、現に測光部19が測定する光の波長を正確に特定することができる。また、本実施の形態においては、専用の特定用サンプルに対して通常の検体に対する測定処理と同様の測定処理を行ない測光部19が実際に測定する光の波長を特定する。このため、本実施の形態によれば、従来において必要であった波長特定用の専用ユニットが不要であるとともに通常の分析処理と異なる煩雑な処理を行なう必要がないため、測光部19が実際に測定する光の波長を簡易に特定することが可能になる。さらに、本実施の形態においては、特定用サンプルの濃度を、特定用サンプルの吸光度特性の急峻さを考慮した上で、測光部19による受光感度特性に応じて決定する。言い換えると、本実施の形態においては、特定用サンプルの濃度の上限を測光部19における受光波長の半値全幅に応じて決定する。この結果、測光部19において正確に吸光度を測定できる濃度の特定用サンプルの測定結果を用いるため、高い精度で波長を特定することができる。
なお、特定部34の波長特定処理として、図5を参照し複数の波長における吸光度と濃度との関係を示す直線の傾きを用いて波長を特定した場合について説明したが、これに限らない。特定部34は、たとえば、基準波長である一つの波長における吸光度と濃度との関係を示す直線の傾きを参照し、この傾きと測光部19が実際に測定した特定用サンプルの吸光度と濃度との関係を示す直線の傾きとが一致するか否を判断することによって、測光部19が実際に測定する光の波長が、基準波長と一致、または、ずれているかを特定してもよい。また、実施の形態によれば、測光部19が実際に測定した特定用サンプルの吸光度と濃度との関係を示す直線を求めるため、特定用サンプルの濃度は、所定の上限以下の濃度において少なくとも2種あればよい。
また、本実施の形態においては、アシッドレッドを用いて570nm帯域の光の波長を特定する場合を例に説明したが、もちろんこれに限らず、波長特定を所望する帯域に単調な傾斜をもった吸光度特性を有するサンプルの2種以上の濃度の吸光度を実際に測定することによって、波長を特定すればよい。
また、上記実施の形態で説明した分析装置1は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置の処理動作を実現する。