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JP2008169939A - 真空ポンプ用転がり軸受およびこれを用いた真空ポンプ - Google Patents

真空ポンプ用転がり軸受およびこれを用いた真空ポンプ Download PDF

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JP2008169939A JP2007004621A JP2007004621A JP2008169939A JP 2008169939 A JP2008169939 A JP 2008169939A JP 2007004621 A JP2007004621 A JP 2007004621A JP 2007004621 A JP2007004621 A JP 2007004621A JP 2008169939 A JP2008169939 A JP 2008169939A
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大浦  行雄
Manabu Ohori
学 大堀
Susumu Tanaka
進 田中
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Abstract


【課題】長期に亘って優れた耐久性を発揮できる新規な真空ポンプ用転がり軸受およびこれを用いた真空ポンプの提供。
【解決手段】真空ポンプ用転がり軸受6,7の内輪61,71の軌道面および外輪62,72の軌道面の一方あるいは両軌道面に、転動体63,73との摩擦抵抗を低減する表面硬化層20を形成する。これによって、軌道面と転動体と接触部分での耐久性が向上するため、この転がり軸受を真空ポンプ用のタッチダウン軸受などとして適用することにより、軌道面と転動体63,73間にいきなり大きな摺動摩擦力が発生しても急激に摩耗することがなくなって優れた耐久性を長期に亘って発揮することができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、特に、ターボ分子ポンプやドライ真空ポンプなどの真空ポンプに適した転がり軸受に係り、そのターボ分子ポンプのタッチダウン軸受やドライ真空ポンプの軸受などとして適用可能な真空ポンプ用転がり軸受およびこれを用いた真空ポンプに関するものである。
従来からターボ分子ポンプなどの真空ポンプに多用されているタッチダウン軸受は、磁気軸受とともに採用される転がり軸受であり、通常時にはその回転輪(内輪または外輪)がポンプのロータ軸やハウジングなどの回転部材と接触せず、磁気軸受が何らかのトラブルで制御不能になったときに、その回転輪の回転部材との対向面が回転部材に接触して(タッチダウンして)軸受として機能することにより、磁気軸受および回転部材を保護するものである。
従来より、タッチダウン軸受の耐久性を上げることが求められており、そのために、前述したような真空中で使用されるタッチダウン軸受の場合には、例えば、以下の特許文献1〜3などに示すように転動体および内外輪の表面に固体潤滑剤からなる被膜(二硫化モリブデン等からなるコーティング被膜や、金、銀、鉛等の軟質金属からなるメッキ被膜)を形成することが行われている。
また、以下の特許文献4のタッチダウン軸受では、その転動体をセラミックス製で構成すると共に、内外輪の軌道面および回転部材との対向面に、窒化クロム(CrNまたはCrN)被膜または窒化ジルコニウム(ZrN)被膜を被覆することでフッ素ガスなどの腐食性雰囲気での耐久性を高めるようにしている。
また、以下の特許文献5などに示すように、現在使用されているタッチダウン軸受の殆どは、その内輪および外輪がSUJ2などの高炭素クロム軸受鋼やSUS440Cなどのマルテンサイト系ステンレス鋼によって形成されている。
実開昭64−48427号公報 実開平5−71444号公報 実開平5−209621号公報 特開2002−168252号公報 実開平3−88024号等
ところで、前述したようなタッチダウン軸受は、通常運転時、すなわち磁気軸受が正常に機能しているときは無用な摩耗などが発生しないように静止あるいは軽く空回りしている状態となっているが、磁気軸受が制御不能となってその真空ポンプの回転部材が接触したときには、いきなり大きな摺動摩擦力が各部材間に発生することになる。
そのため、前述したようにこのタッチダウン軸受を構成する各部材の表面には、急激な摺動摩擦を軽減するための固体潤滑剤などからなる被膜が被覆されているが、この被膜は数回程度のタッチダウンで大きく摩耗してしまうため、十分に満足のいく耐久性が得られていない。
そして、摩耗により使用不能となったタッチダウン軸受は、適宜新たなものに交換されることになるが、これを交換するには真空ポンプやこれに組み込まれている磁気軸受装置などを分解して、そのタッチダウン軸受などを新たなものに交換した後、その軸受の内輪と回転軸との間の隙間を高精度に調整しつつ再度磁気軸受装置などを組み立てる必要があり、その作業には著しい時間と手間が掛かるといった問題がある。
そこで、本発明はこのような課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、長期に亘って優れた耐久性を発揮できる新規な真空ポンプ用転がり軸受およびこれを用いた真空ポンプを提供するものである。
前記課題を解決するための請求項1の発明は、
外周面に軌道面を有する内輪と、当該内輪の軌道面に対向する軌道面を内周面に有する外輪と、当該軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体とを有する真空ポンプ用転がり軸受であって、前記内輪の軌道面および外輪の軌道面の一方あるいは両軌道面に、前記転動体との摩擦抵抗を低減する表面硬化層を形成したことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
このように本発明の真空ポンプ用転がり軸受は、内輪の軌道面および外輪の軌道面の一方あるいは両軌道面に転動体との摩擦抵抗を低減する表面硬化層を形成したため、軌道面と転動体と接触部分での耐久性が向上する。
従ってこの転がり軸受を真空ポンプ用のタッチダウン軸受などとして適用することにより、軌道面と転動体間にいきなり大きな摺動摩擦力が発生しても急激に摩耗することがなくなり、優れた耐久性を長期に亘って発揮することができる。
また、この表面硬化層を形成した軌道面では、軸受組み立て時や回転時に摩耗や損傷が生じ難くなって不良品の発生率を抑えることができると共に、回転開始時に生じるトルクや発熱も大幅に低減させることが可能となる。
ここで、本発明における表面硬化層としては、以下の請求項4に示すように公知の浸炭窒化処理、浸硫窒化処理等の窒化処理により、最表面より所定深さ(例えば、表面からの深さが3〜100μm)の窒化層を有する表面硬化層であっても良いし、また、以下の請求項5および6に示すようにショットピーニング処理によって形成されたショットピーニング層や以下の請求項7に示す公知のダイヤモンドライクカーボン層(以下、適宜「DLC層」と略す)、あるいは以下の請求項8に示すセラミックス層をコーティングすることにより、所定深さの表面硬化層であっても良い。特に、耐摩耗性をより向上させることを考慮すると、摩擦係数を低減させる表面硬化層としては、ショットピーニング層やDLC層あるいはセラミックス層で形成することが好ましい(以下の請求項2および3の真空ポンプ用転がり軸受についても同じである)。
また、この表面硬化層の厚さとしては特に限定されるものではないが、真空ポンプ用のタッチダウン軸受などとして適用した場合、厚さが数μm程度では、そのタッチダウン時の急激な摺動摩擦力によって摩耗したり、剥離したりするおそれがあるため、少なくとも20μm以上確保することが望ましい。
また、請求項2の発明は、
外周面に軌道面を有する内輪と、当該内輪の軌道面に対向する軌道面を内周面に有する外輪と、当該軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体とを有する真空ポンプ用転がり軸受であって、前記転動体の表面に、前記内輪の軌道面および外輪の軌道面の一方あるいは両軌道面との摩擦抵抗を低減する表面硬化層を形成したことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
これによって、請求項1の発明と同様に軌道面と転動体と接触部分での摩擦抵抗が大きく減少して耐久性が向上するため、この転がり軸受を真空ポンプ用のタッチダウン軸受などとして用いることにより、軌道面と転動体間にいきなり大きな摺動摩擦力が発生しても大きく摩耗することなく、優れた耐久性を長期に亘って発揮することができる。
また、請求項3の発明は、
外周面に軌道面を有する内輪と、当該内輪の軌道面に対向する軌道面を内周面に有する外輪と、当該軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体とを有する真空ポンプ用転がり軸受であって、他の回転部材と接触する前記内輪の内周面および外輪の外周面の一方あるいは両面に、前記他の回転部材との摩擦抵抗を低減する表面硬化層を形成したことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
これによって、回転軸などのような他の回転部材と接触する前記内輪の内周面および外輪の外周面の一方あるいは両面の摩擦抵抗が大きく減少して耐久性が向上するため、この転がり軸受を真空ポンプ用のタッチダウン軸受などとして用いることにより、他の回転部材との接触部分にいきなり大きな摺動摩擦力が発生しても大きく摩耗することなく、優れた耐久性を長期に亘って発揮することができる。
また、請求項4の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、前記表面硬化層は、最表面に窒化層を有すると共に、当該窒化層は、表面硬さがHv900以上の化合物層と拡散硬化層とからなり、かつ、その表面粗さRaが0.2μm以下であることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
これによって、各部材表面に形成された表面硬化層の硬度や平滑性が向上するため、各部材間の摩擦抵抗が減少して表面摩耗が大幅に低減する。
ここで、本発明における窒化層は、表面硬さがHv900以上の化合物層と拡散硬化層とからなるため、被膜と母材との密着性に強く剥離し難いといった長所を発揮する。また、化合物層は(Fe,Cr)2,3or4N、CrN、CrN、MoN、VNなどの緻密な窒化物から構成されており、優れた表面特性を有する。また、この化合物層の厚さとしては特に限定されるものではないが、その厚さが少なすぎるとその特性が十分に発揮できず、反対に大きくなりすぎると処理コストが嵩むだけでなく、本来鋼が持っている物性を損なって耐衝撃性などが低下するため、例えば、転動体の場合の化合物層の厚さは、少なくとも3μm以上でその転動体直径の2%以下であることが望ましい。
また、表面に窒化層を形成することによって自体の摩耗だけでなく、接触する相手部材の損傷をも抑制できるため、耐フレッチング性を高めることができる。また、転動体表面にこの窒化層を形成した場合、組み立て時のボール傷が極端に減少し、不良質低下などの効果も期待できる。
また、その表面粗さRaが0.2μmを超えると、摩擦抵抗が高くなって前記のような効果が乏しくなるため、その表面粗さRaは0.2μmであることが望ましい。
また、請求項5の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、前記表面硬化層は、ショットピーニング処理にて形成されたショットピーニング層からなると共に、当該ショットピーニング層は、表面硬さがHv900以上でかつ表面最大粗さRaが2.5μm以下であることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
また、請求項6の発明は、
請求項5に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、前記ショットピーニング層の表面に固体潤滑剤が分散された被膜を形成したことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
このような請求項5および6の構成によれば、その表面は微小な凹凸が均一に分散した表面組織となるため、この凹凸の凹部に潤滑剤が保持されて潤滑剤の被膜が均一に形成されることになる。
これによって各部材間の直接的な接触を防止できると共に、ショットピーニングによる圧縮残留応力の増加により、各部材の硬度が上昇して耐摩耗性が向上すると共に、摩擦抵抗も小さくなるため、各部材の接触部分における摩耗や発熱を低下させることが可能となる。
また、この凹凸の凹部に潤滑剤を保持させることによって油膜切れを確実に防止することができるため、良好な潤滑性を長期間に亘って維持することができる。
そして、このようにショットピーニング層の凹部に潤滑剤を保持させる効果を考慮すると、表面の最大粗さRaは、少なくとも「0.5μm」以上、より好ましくは「1.0μm」以上とすることが望ましいが、その一方その表面最大粗さRaが大きすぎると、その表面が不均一となり、却って摩擦抵抗が増大してしまうことから、表面最大粗さRaは「2.5μm」以下とする必要がある。
また、表面硬さをHv900以上にすることにより、より確実に耐摩耗性を向上させることができる。
また、本発明のようにショットピーニング層の表面に固体潤滑剤が分散された被膜を形成する方法としては、例えば、ショットピーニング処理に用いる噴射粉体と、二硫化モリブデン(MoS)や二硫化タングステン(WS)、窒化ホウ素(BN)、フッ素樹脂(例えば、PTFE)などの固体潤滑剤の粒体とを混合したものを用いれば、通常通りにショットピーニング処理を実施するだけで、このショットピーニング層の表面に固体潤滑剤が均一に分散された被膜を容易に形成することが可能である。
また、請求項7の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、前記表面硬化層は、ダイヤモンドライクカーボン層(以下、適宜「DLC層」という)からなることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
これによって、この表面硬化層の硬さが高くなると共に、このDLC層は、従来の表面硬化層と比べてすべり摩擦係数が「0.1」以下と小さいため、各部材間のすべり摩擦力をより確実に低減させることができる。
しかも、このダイヤモンドライクカーボン層は、低い処理温度(例えば200℃以下)で容易に形成できるため、このダイヤモンドライクカーボン層を形成する各部材が層形成時の熱影響を受け難くなり、マルテンサイト系ステンレス鋼や高速度鋼等の高合金鋼に焼入れおよび焼戻しを施したものを用いても、焼入れおよび焼戻し後の硬さを維持できるという優れた利点を有する。この利点により、初期設計時の軸受形状や軸受隙間が変化し難くなるため、軸受性能特性を維持できる。
また、請求項8の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、前記表面硬化層は、セラミックス層からなることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
これにより、この表面硬化層を形成した摺接面の硬さが高く、かつすべり摩擦係数が小さくなるため、各部材間のすべり摩擦を大幅に低減させることができる。
また、このセラミックス層は、この層を形成する合金の種類等によって硬さや摩擦係数を変化させることができるという利点を有する。
ここで、このセラミックス層を形成するための材料としては特に限定されるものではないが、具体例としては、TiN(硬さHv2000〜2400で、摩擦係数0.40〜0.45),TiCN(硬さHv3000〜3500で、摩擦係数0.12〜0.15),TiAlN(硬さHv2300〜2800で、摩擦係数0.3〜0.4),TiC(硬さHv3000〜3500で、摩擦係数0.40〜0.45),CrN(硬さHv2000〜2200で、摩擦係数0.25〜0.35)などのセラミックス層や、TiC/TiN,TiC/TiCN/Al23,TiC/Al23/TiN,TiC/TiCN/TiC/Al23等の積層構造を有するセラミックス層が挙げられる。
特に、TiN,TiAlN,TiCN等のセラミックス層や、これらを含む積層構造を有するセラミックス層や、CrN等のセラミックス層は、硬さが高く、低摩擦係数で、高い密着性を有しており、摩耗や損傷を効果的に防止できる。
このうち、TiNやTiC/TiN等のセラミックス層は、耐摩耗性や耐剥離性の点で優れている。同様に、TiC/TiCN/Al23,TiC/Al23/TiN,TiC/TiCN/TiC/Al23等の積層構造を有するセラミックス層は、耐摩耗性や凝着防止の点で優れている。さらに、CrN等のセラミックス層は、耐食性、耐酸化性、および耐焼付き性の点で優れている。
また、請求項9の発明は、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、前記表面硬化層を形成した前記内外輪または転動体の母材として、軸受鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼を用いたことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
これにより、従来から軸受用母材料として用いられている材料をそのまま用いることができるため、強度や加工性など従来の軸受と同等以上の性能や信頼性が期待できると共に、材料コストも少なく抑えることができる。
すなわち、例えば、請求項4に示したような表面硬化層として窒化層を採用した場合、一般に窒化処理は、400〜600℃、好ましくは400〜480℃の範囲で実施されるが、窒化処理した後にはその深部は焼戻し作用によって軟化し、硬度が著しく低下する場合がある。通常、窒化処理後には、表面に化合物層が形成され、それよりも深いところでは、窒素の拡散による拡散硬化層を有する。そして、窒化処理は、この拡散硬化層を有するため、被膜と母材との密着性が強く、剥離し難い。しかし、軸受が作動したときに、窒化層よりも深い最大剪断応力位置で大きな剪断力を受けると、その部分に十分な強度がない場合には塑性変形を伴って表面硬化層の破損を招くおそれがある。これは、請求項5〜8のように表面硬化層として、ショットピーニング層やDLC層、セラミック層を採用した場合でも同様である。
従って、内外輪は勿論、特に転動体に使用される材料には表面硬化層を形成した後でも剪断応力に耐えられるだけの十分な硬度を有する材料であることが必要である。具体的には、本発明のように表面硬化層を形成した前記内外輪または転動体の母材として、軸受鋼またはマルテンサイトステンレス鋼を用いことが望ましい。
ここで、本発明の転がり軸受を構成する内外輪または転動体の母材として使用する「軸受鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼」とは、高炭素クロム軸受鋼の他に、浸炭鋼、耐熱鋼、ステンレス鋼、合金工具鋼、高速度鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼などであり、例えばJIS G 4805記載のSUJ2は勿論のことSUS440Cや0.7C−13Crステンレス、あるいはM50などの従来から軸受に使用される一般的な鋼を用いることができる。但し、従来のSUS440Cのような高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼の場合には粗大な共晶炭化物を多数含有するため、静粛性や耐摩耗性の点でSUJ2に劣るため、できればSUJ2を用いることが好ましい。特に潤滑剤としてフッ素系オイルを使用するドライ真空ポンプなどのように潤滑条件が悪い場合には、積極的にSUJ2を用いることが好ましい。
また、表面硬化層として請求項4に示すような窒化層を採用した場合、好ましくはCr、Mo、V、Nb、W、Ti、Al、Siなどの合金元素を、例えば2〜25%の割合で含有する鋼を使用して表面に窒化層を形成すると、この窒化層にはこれらの元素を含む微細な窒化物が析出して、フレッチング耐久性、耐焼付性、耐摩耗性が向上する。
また、この窒化層を形成するための窒化処理は、前述したように、通常400〜600℃程度の比較的高い処理温度で実施されるため、母材に十分な耐久性がない場合には、窒化層を支える下地の強度が不足して簡単に窒化層の破損を招く。従って、最大剪断応力位置の硬度を少なくともHv653以上確保する。具体的には、前記合金元素添加によって耐熱性を向上させるか、あるいは窒化層の拡散硬化層をより深く設ける。また、窒化処理前に浸炭、浸炭窒化処理を行って耐熱性を確保しても良い。また、マルテンサイト系ステンレス鋼あるいは高速度鋼などであれば、十分な耐熱性があり、窒化処理後においても十分な硬度を保持できるため、より好ましい。また、窒化処理温度が高い場合には、母材の耐熱性が不足して十分な下地の硬度が得られない場合もあるため、窒化処理温度は好ましくは500℃以下、より好ましくは460以下とする。
また、窒化処理後の表面粗さRaは、0.5〜2.5μm程度と大きいため、このままでは、相手材への攻撃性が大きい上に、表面の窒化物あるいは酸化物粒子が点同時に剥離して脱落するなどの悪影響が考えられる。そのため、その窒化層表面は、窒化処理後に仕上げ加工されていることが必要である。具体的には、その表面粗さRaが0.2μmを超えると、摩擦抵抗が高くなって前記のような効果が乏しくなるため、その表面粗さRaは0.2μmであることが望ましい。
また、請求項10の発明は、
請求項1または3に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、前記転動体は、セラミック材料からなることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受である。
これにより、転動体自体の硬さが高く、かつすべり摩擦係数が小さくなるため、軌道面とのすべり摩擦を大幅に低減させることができる。
一方、請求項11の発明は、
回転部材を磁気によって支持する磁気軸受と、当該磁気軸受が制御不能となったときに前記回転部材の予備軸受として機能するタッチダウン軸受を備えた真空ポンプであって、前記タッチダウン軸受として、請求項1〜10のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受を用いたことを特徴とする真空ポンプである。
これによって、タッチダウンが繰り返し発生してもタッチダウン軸受が摩耗することがなくなり、耐久性が大幅に向上する。
また、ポンプの分解および軸受交換作業などの頻度が大幅に減少するため、ポンプの信頼性が向上すると共に、運転コストも安価となる。
本発明によれば、真空ポンプ用の転がり軸受を構成する各部材表面に、窒化層やショットピーニング層、セラミックス層、ダイヤモンドライクカーボン層などからなる摩擦抵抗を低減する表面硬化層を形成したため、軌道面や転動体、回転部材間との接触部分での摩耗が大幅に減少して軸受として長期に亘って優れた耐久性を発揮することができる。 これによって、この転がり軸受を真空ポンプ用のタッチダウン軸受などとして用いることにより、真空ポンプの寿命を長くすることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る真空ポンプのうち、本発明の転がり軸受をタッチダウン軸受として用いた磁気浮上式ターボ分子ポンプの実施の一形態を示す縦断面図である。
図において符号1はロータ翼であり、このロータ翼1と一体に回転するロータ軸2は、一組のアキシアル磁気軸受3と2組のラジアル磁気軸受4,5とにより、非接触状態で回転自在に支持されている。
また、ラジアル荷重を受ける総玉タイプの深溝玉軸受(転がり軸受)6と、アキシアル荷重を受ける組み合わせアンギュラ玉軸受(転がり軸受)7が、タッチダウン軸受として設けられている。
ロータ軸2は鉛直方向に延びる回転軸であって、ロータ軸2の下部にはフランジ21が一体に形成されている。アキシアル磁気軸受3は、このフランジ21を、対をなす電磁石3a,3bで挟むように配置されている。
また、符号8Aは上部ケーシングであり、8Bは下部ケーシングである。符号81は、上部ケーシング8Aの一部をなす部材であって、ラジアル磁気軸受4,5および深溝玉軸受6のハウジングとなっている。符号82は吸気口であり、83は排気口であり、84は電源導入端子であり、85は保護ネットである。また、符号9はロータ軸2を高速回転させる電動モータである。
そして、一方のタッチダウン軸受として機能する深溝玉軸受6は、ロータ軸2の上部に、他方のタッチダウン軸受として機能するアンギュラ玉軸受7は、ロータ軸2の下部のフランジ21の直ぐ上にそれぞれ設置されている。
図2にこの深溝玉軸受6の設置位置の拡大図を、図3にアンギュラ玉軸受7の設置位置の拡大図を示す。
先ず、図2に示すように、この深溝玉軸受6は、外周面に軌道面を有する内輪(回転輪)61と、この内輪61の軌道面61aに対向する軌道面62aを内周面に有する外輪62と、この軌道面61a、62a間に転動自在に配置される複数の転動体63とから構成されており、この内輪61とロータ軸2との間には、半径方向に所定の隙間6Aが設けられている。この隙間6Aは、ラジアル磁気軸受4,5のロータ軸2に対する半径方向の隙間より小さい。
一方、図3に示すように、アンギュラ玉軸受7も同様に、外周面に軌道面を有する内輪(回転輪)71と、この内輪71の軌道面71aに対向する軌道面72aを内周面に有する外輪72と、この軌道面71a、72a間に転動自在に配置される複数の転動体73とから構成されており、この内輪(回転輪)71とロータ軸2との間には、半径方向に所定の隙間7Aが設けられている。この隙間7Aも、ラジアル磁気軸受4,5のロータ軸2に対する半径方向の隙間より小さい。アンギュラ玉軸受7の外輪72は、アキシアル磁気軸受3のハウジング31に取り付けられている。
従って、ロータ軸2は、通常時には、ラジアル磁気軸受4,5とアキシアル磁気軸受3とにより、回転自在に支持される。また、これらの磁気軸受が制御不能となったときに、ロータ軸2が深溝玉軸受6およびアンギュラ玉軸受7の内輪61,71にタッチダウンして、これら軸受6,7がタッチダウン軸受として機能するようになる。
<第1実施形態>
第1の実施の形態は、このタッチダウン軸受として機能する深溝玉軸受6およびアンギュラ玉軸受7の内外輪61,62,71,72のそれぞれ内周側の軌道面61a、62a、71a、72aおよび転動体63、73、ならびにタッチダウン時にロータ軸(回転部材)2と接触する内輪61の内周面61bの表面であって、図4に示すようにその母材10上に、窒化層からなる表面硬化層20を被覆形成したものである。
この窒化層は、前述したように表面硬さがHv900以上の化合物層と拡散硬化層とからなり、かつ、その表面粗さが0.2μmRa以下である。従って、このような窒化層を備えた転がり軸受を前述した深溝玉軸受6やアンギュラ玉軸受7などのタッチダウン軸受として用いれば、その接触部分の硬さが高く、かつすべり摩擦係数が小さくなるため、タッチダウン時のすべり摩擦を大幅に低減させることができる。
<第2実施形態>
第2の実施の形態は、同じく図4に示すようにその母材10上に、ショットピーニング処理によって形成されたショットピーニング層からなる表面硬化層20を形成したものである。
このショットピーニング層は、その表面の最大粗さが2.5μm以下であってその表面は微小な凹凸が均一に分散した表面組織となっているため、この凹凸部の凹部に潤滑剤が保持されて潤滑膜が形成されている。
これにより、表面粗さを最適に制御することにより、各部材同士の直接的な金属接触を防止できると共に、ショットピーニングによる圧縮残留応力の増加により、摩耗を防止することができる。
さらに、それら各部材の接触面における摩擦を低減させることができるので、発熱を低下させることが可能となる。また、凹部に潤滑剤を保持させることは、各部材の接触面での潤滑膜切れを無くす作用もあり、それらの潤滑状況を長期間に亘って良好に維持することができる。
ここで、このショットピーニング処理としては、例えばWPC(Wonder Process Craft)処理(株式会社不二製作所および株式会社不二機販から提供されるショットピーニング加工処理(登録商標))を用いることが効果的である。
一例を挙げると、粒径が40〜200μmで硬度がその母材10の硬度と同等以上(例えば、その母材10と同じ材料またはSiOなど)の粉末を噴射粒体として用い、これを噴射速度100m/sec以上で母材の表面に数秒間から数十秒間程度噴射することにより、その母材10の表面がA3変態点以上の温度域での急熱・急冷が瞬時に繰り返され、前述の熱処理効果、鍛錬効果を有する加工が行われることになる。これによって、金属表面層の残留オーステナイトのマルテンサイト化や再結晶、微細化が行われ、緻密な高硬度で靱性に富む組織が得られる。また、表面の内部残留圧縮応力も高めることができる。
また、硬度がHv800以上で粒径が20〜200μmのSiO粉体などを噴射粒体として用い、これを噴射速度50m/sec以上でその母材の表面に噴射してその表面付近の温度をA3変態点以上に上昇させると共に、その表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成することにより、潤滑油切れによる摩耗を防止することができる。
また、さらにTiCやTiNなどの超硬粉体を噴射粉体として用いると、その表面に析出しているコバルトなどの超硬材料が内部に押し込まれると共に微細化し、その母材10の表面の内部残留応力も高くなり、表面も平滑化されて摩擦係数をより小さくすることも可能となる。
さらに、このようなショットピーニング処理を行うに際して、母材10の母相をなす金属の粒体と、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、窒化ホウ素(BN)、フッ素樹脂(例えば、PTFE)などの固体潤滑剤の粒体とを混合してなる噴射粒体を用いれば、そのショットピーニング層中に固体潤滑剤が分散された被膜が形成されるようになるため、上記の効果をさらに向上することが可能となる。
また、このショットピーニング処理は、旋削工程およびプレス工程におけるバリや旋削加工目、熱処理工程におけるスケールや溶着物などを除去することができるため、清浄度向上にも効果があり、内輪、外輪及び転動体等の軸受内部での接触状態が改善される。そのため、このショットピーニング処理は少なくとも母材10の表面全体に施すとなお良い。
従って、このようなショットピーニング層を備えた転がり軸受を深溝玉軸受6やアンギュラ玉軸受7などのタッチダウン軸受として用いれば前記第1の実施の形態と同様に、その接触部分の硬さが高く、かつすべり摩擦係数が小さくなるため、タッチダウン時のすべり摩擦を大幅に低減させることができる。
<第3実施形態>
第3の実施の形態は、同じく図4に示すようにその母材10上に、PVD法などによるDLC層またはセラミック層からなる表面硬化層20を形成したものである。
このように各部材の母材10の表面にDLC層またはセラミック層が形成した場合でも前記第2および第3実施の形態と同様にその表面の硬さが高く、かつ、すべり摩擦係数が小さくなるため、タッチダウン時のすべり摩擦を低減させることができる。
ここで、このDLC層の形成方法としては、特に限定されるものでなくPVD法などを用いた従来公知の方法をそのまま適用することができる。
一例を挙げると、先ず母材10の表面に対して、粒径20〜30μmのスチール製ビーズなどを用いてショットブラスト処理を行い、その表面粗さRaを調整した後、その表面を脱脂してからスパッタリング装置に設置し、アルゴンプラズマによるスパッタリングを用いてその部材の表面にボンバード処理を施す。そして、タングステンおよびクロムなどをターゲットとしてこの母材の表面にスパッタリングして成膜し、金属層を形成する。次に、この2種類の金属のスパッタリングを続けながら、カーボンをターゲットとした炭素のスパッタリングを開始する。このようなスパッタリングによって、前記2種類の金属と炭素とが結合した金属カーバイドからなる複合層が、金属層の上に形成される。そして、さらに、前記2種類の金属のスパッタ効率を徐々に減少させながら、炭素のスパッタ効率を徐々に増加させ、前記2種類の金属のスパッタリングを終了したならば、炭素のスパッタリングのみとして、複合層の上にカーボン層を形成する。
これによって、2種類の金属で構成された層(金属層)から炭素で構成された層(カーボン層)に向かって層の組成が連続的に徐々に変化していくDLC層を形成することができる。そして、このような構成のDLC層は、その厚さが1.0〜4.0μm程度であって各層の間の密着性が非常に優れているとともに、潤滑性に優れたカーボン層と母材である鋼との密着性も非常に優れているという特長を有することになる。
なお、前記各実施の形態では、タッチダウン軸受として機能する深溝玉軸受6およびアンギュラ玉軸受7の内外輪61,62,71,72のそれぞれ内周側の軌道面61a、62a、71a、72aおよび転動体63、73、ならびにタッチダウン時にロータ軸(回転部材)2と接触する内輪61の内周面61bの全てに表面硬化層20を形成した例で説明したが、軌道面61a、62a、71a、72aのみ、あるいは転動体63、73の表面のみ、さらにはタッチダウン時にロータ軸(回転部材)2と接触する内輪61の内周面61bのみに形成するようにしても良い。特に、内輪61の内周面61bにはタッチダウン時に瞬間的に大きな摩擦力が発生するため、この部分の表面硬化層20は他の部分よりもできるだけ厚く形成することが望ましい(例えば、20μm以上)。
また、さらにこの転動体63、73全体をセラミック材料で形成すれば、転動体63、73に対する処理が不要となると共に、その表面が摩耗しても長期に亘って優れた耐久性を発揮することができる。
本発明に係る真空ポンプの一例を示す磁気浮上式ターボ分子ポンプの実施の一形態を示す縦断面図である。 本発明の転がり軸受の1つである深溝玉軸受を示す拡大断面図である。 本発明の転がり軸受の1つであるアンギュラ玉軸受を示す拡大断面図である。 本発明の転がり軸受を構成する各部材の表面構造を示す拡大断面である。
符号の説明
100…磁気浮上式ターボ分子ポンプ(真空ポンプ)
1…ロータ翼
2…ロータ軸
3…磁気軸受(アキシアル磁気軸受)
4,5…磁気軸受(ラジアル磁気軸受)
6…深溝玉軸受(真空ポンプ用転がり軸受)
7…アンギュラ玉軸受(真空ポンプ用転がり軸受)
10…母材
20…表面硬化層(窒化層、ショットピーニング層、DLC層、セラミックス層)
61,71…内輪
62,72…外輪
63,73…転動体

Claims (11)

  1. 外周面に軌道面を有する内輪と、当該内輪の軌道面に対向する軌道面を内周面に有する外輪と、当該軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体とを有する真空ポンプ用転がり軸受であって、
    前記内輪の軌道面および外輪の軌道面の一方あるいは両軌道面に、前記転動体との摩擦抵抗を低減する表面硬化層を形成したことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  2. 外周面に軌道面を有する内輪と、当該内輪の軌道面に対向する軌道面を内周面に有する外輪と、当該軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体とを有する真空ポンプ用転がり軸受であって、
    前記転動体の表面に、前記内輪の軌道面および外輪の軌道面の一方あるいは両軌道面との摩擦抵抗を低減する表面硬化層を形成したことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  3. 外周面に軌道面を有する内輪と、当該内輪の軌道面に対向する軌道面を内周面に有する外輪と、当該軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体とを有する真空ポンプ用転がり軸受であって、
    他の回転部材と接触する前記内輪の内周面および外輪の外周面の一方あるいは両面に、前記他の回転部材との摩擦抵抗を低減する表面硬化層を形成したことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、
    前記表面硬化層は、最表面に窒化層を有すると共に、
    当該窒化層は、表面硬さがHv900以上の化合物層と拡散硬化層とからなり、かつ、その表面粗さRaが0.2μm以下であることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、
    前記表面硬化層は、ショットピーニング処理にて形成されたショットピーニング層からなると共に、
    当該ショットピーニング層は、表面硬さがHv900以上でかつ表面最大粗さRaが2.5μm以下であることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  6. 請求項5に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、
    前記ショットピーニング層の表面に固体潤滑剤が分散された被膜を形成したことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、
    前記表面硬化層は、ダイヤモンドライクカーボン層からなることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、
    前記表面硬化層は、セラミックス層からなることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、
    前記表面硬化層を形成した前記内外輪または転動体の母材として、軸受鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼を用いたことを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  10. 請求項1または3に記載の真空ポンプ用転がり軸受において、
    前記転動体は、セラミック材料からなることを特徴とする真空ポンプ用転がり軸受。
  11. 回転部材を磁気によって支持する磁気軸受と、当該磁気軸受が制御不能となったときに前記回転部材の予備軸受として機能するタッチダウン軸受を備えた真空ポンプであって、
    前記タッチダウン軸受として、請求項1〜10のいずれか1項に記載の真空ポンプ用転がり軸受を用いたことを特徴とする真空ポンプ。
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