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JP2008144226A - 転動疲労特性に優れた等速自在継手及びその製造方法 - Google Patents

転動疲労特性に優れた等速自在継手及びその製造方法 Download PDF

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JP2008144226A JP2006332224A JP2006332224A JP2008144226A JP 2008144226 A JP2008144226 A JP 2008144226A JP 2006332224 A JP2006332224 A JP 2006332224A JP 2006332224 A JP2006332224 A JP 2006332224A JP 2008144226 A JP2008144226 A JP 2008144226A
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Yasuhiro Omori
靖浩 大森
Takaaki Toyooka
高明 豊岡
Takashi Iwamoto
岩本  隆
Hideto Kimura
秀途 木村
Kazuhiko Yoshida
和彦 吉田
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JFE Steel Corp
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NTN Corp
JFE Steel Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
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Abstract

【課題】従来のPb添加快削鋼と同等以上の被削性を有し、しかも窒化後の特性にも優れた機械構造用炭素鋼を使用した転動疲労特性に優れた等速自在継手を提供する。
【解決手段】内周部に複数の案内溝を有する外側部材1と、外周部に複数の案内溝を有する内側部材2と、トルク伝達ボール3と、保持器4とを備えた等速自在継手において、前記外側部材及び内側部材は、当該部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼から構成し、かつ高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔を円相当直径で7μm以下に、さらに該高周波焼入れ焼戻し後の組織を、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有するものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、高周波焼入れ焼戻し処理を施して製造する、転走面を有する自動車等に用いる等速自在継手に関して、特にその高周波焼入れ焼戻し後の転動疲労特性、さらには冷間または温間加工時の被削性並びに鍛造性の向上を図るものである。
自動車用の等速自在継手を構成する部品は、いわゆる機械構造用鋼を、冷間鍛造または温間鍛造、あるいはそれらの併用し、さらに切削して所定の形状に加工し、その後高周波焼入れ焼戻し処理によって、機械部品としての要求特性を確保する方法に従って製造されることが多い。こうした機械構造用鋼の被削性を改善するには、鋼中にPb,S,Bi及びP等の快削性元素を単独または複合して添加する手法が一般的である。特に、Pbは被削性を改善する作用が極めて強いために多用されている。
ところが、Pbは人体に有害な元素でもあり、鋼材の製造工程や機械部品の加工工程で大掛かりな排気設備を必要とする上、鋼材のリサイクルの点からも鋼材に含まれることは問題である。
一方で、鋼材の冷間および温間鍛造性の改善のためには、Pb,S,Te,Bi及びP等の元素は逆に抑制する事が望ましい。
従来、これらの相矛盾する要求の下に合金設計を可能にするために、鋼中Cを黒鉛化する方法が提案されている(特許文献1参照)。
ここで、高周波焼入れ焼戻し処理は、短時間の処理で鋼材の表面に硬化層を形成し、耐摩耗性及び疲労強度等を向上させるため、機械部品等の分野において多く用いられている。しかしながら、冷間または温間鍛造性、さらに被削性を向上する手段として、前記の黒鉛析出を用いた鋼において、高周波焼入れ焼戻し処理を適用しようとすると、焼入れ加熱時の黒鉛粒子の固溶が十分に進行せずに、処理後の表面近傍に黒鉛粒子が残存し、あるいは黒鉛そのものは固溶するものの、その存在痕跡としての空孔が残存し、これらが、転動疲労で応力集中源として作用して、鋼材の転動疲労特性が劣化するという問題を来すことになる。
従って、高周波焼入れ焼戻しを前提としたプロセスにおいて、冷間または温間加工性の向上を目的とした黒鉛析出技術の適用は実質上困難であった。
特開昭51-57621号公報
本発明の目的は、上記従来技術が抱えている問題を有利に解決することにある。すなわち、本発明の目的は、必ずしもPb等の快削成分を用いることなく、かつ冷間および温間での鍛造性を阻害することなしに、従来のPb添加快削鋼と同等以上の被削性を有し、しかも高周波焼入れ後の特性にも優れた機械構造用炭素鋼を少なくとも一部に使用した転動疲労特性に優れた等速自在継手を、その有利な製造方法に併せて提案するものである。
さて、発明者らは、上記の問題を解決すべく、被削性、冷間および温間の鍛造性、並びに高周波焼入れ焼戻し後の転動疲労特性の全てに優れる鋼材を工業的に安定して製造するための方途について、鋭意検討した結果、以下の知見を得るに到った。
すなわち、高周波熱処理により表面硬化した転動疲労特性および捩り疲労強度特性に直接影響を及ぼすのは表層部近傍のミクロ組織であるため、冷間および温間鍛造、切削等の冷間および温間加工時には黒鉛の効果を活用し、高周波焼入れ焼戻し後には、転動疲労特性を要求される表面近傍に黒鉛に起因する粗大な欠陥が存在していなければ、所期した特性は満足されることになる。従って、冷間および温間加工時には黒鉛を析出させ、その後の高周波焼入れ焼戻し後の表層近傍には黒鉛起因の粗大な欠陥等の転動疲労時の応力集中源となるような欠陥が存在しない、ミクロ組織を得ることが、上記の使途には最適である。
また、本発明に規定するミクロ組織を実現する方法についても鋭意検討したところ、高周波焼入れ前の冷間または温間加工の加工率を50%以上として鋼中の黒鉛粒子の分散を微細化させること、および高周波加熱条件を850℃以上1050℃未満の温度で保持時間1.5s以下として黒鉛の母相への固溶の途中段階で焼入れを行い、黒鉛あるいは黒鉛起因の空孔の周囲に、母相マルテンサイト組織に比べてC濃度の高いマルテンサイト相が生成したミクロ組織とすること、が有効であることも見出した。
本発明は、上記の知見に由来するものである。すなわち、本発明の要旨は、次の通りである。
(1)内周部に複数の案内溝を有する外側部材と、外周部に複数の案内溝を有する内側部材と、外側部材及び内側部材の案内溝にて形成される複数のボールトラックにそれぞれ配置したトルク伝達ボールと、これらトルク伝達ボールを保持する保持器とを備えた等速自在継手において、
前記外側部材及び内側部材は、当該部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼からなり、かつ高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であり、さらに該高周波焼入れ焼戻し後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することを特徴とする転動疲労特性に優れた等速自在継手。
(2)内周部に3本のトラック溝を有し、かつ各トラック溝の両側にそれぞれローラ案内面を有する外側部材と、放射状に突出する3本の脚軸を有するトリポード部材と、該トリポード部材の各脚軸に転動体を介して回転可能に装着されたローラとを備え、該ローラをトラック溝の両側のローラ案内面で外側部材の軸方向に案内する等速自在継手において、
前記外側部材及びトリポード部材は、当該部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼からなり、かつ高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であり、さらに該高周波焼入れ焼戻し後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することを特徴とする転動疲労特性に優れた等速自在継手。
(3)内周部に複数の案内溝を有する外側部材と、外周部に複数の案内溝を有する内側部材と、外側部材及び内側部材の案内溝にて形成される複数の交叉状ボールトラックの交叉部分にそれぞれ配置したトルク伝達ボールと、これらトルク伝達ボールを保持する保持器とを備えた等速自在継手において、
外側部材及び内側部材は、当該部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼からなり、かつ高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であり、さらに該高周波焼入れ焼戻し後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することを特徴とする転動疲労特性に優れた等速自在継手。
(4)前記鋼の成分組成が、
C:0.4 mass%以上0.6mass%以下、
Si:0.5 mass%以上1.0mass%以下、
Mn:0.1 mass%以上0.5mass%以下、
B:0.0003 mass%以上0.0150mass%以下、
Al:0.005 mass%以上0.1mass%以下、
O:0.0030mass%以下、
P:0.020mass%以下、
S:0.035mass%以下及び
N:0.0015 mass%以上0.0150mass%以下
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする上記(1)、(2)または(3)に記載の等速自在継手。
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の等速自在継手を製造するに際し、該等速自在継手の外側部材、内側部材またはトリポード部材について、鋼素材を熱間加工したのち焼鈍を施し、次いで鍛造加工および切削加工によって各種部材形状に成形し、その後高周波焼入れを行って作製するに当り、前記焼鈍を680℃ないし720℃における滞在時間を3時間以上とし、その後の高周波焼入れに先立ち、加工率が50%以上の冷間鍛造、あるいは、A点以下の温度域での加工率が50%以上の温間鍛造を行い、その後の高周波焼入れの加熱時に少なくとも鋼材の表面を950℃以上1050℃以下の温度に1.5s以下保持することを特徴とする転動疲労特性に優れた等速自在継手の製造方法。
本発明によれば、ミクロ組織を適正な範囲に制御した鋼材を等速自在継手における転動疲労の要求される部品に適用したことから、優れた加工性の下に冷間または温間での加工が可能になり、しかも高周波焼入れ焼戻し後には転動疲労特性に優れた部品となるため、かような部品を組み込んだ等速自在継手にも優れた転動疲労特性を与えることができる。
また、以上の効果は、Pb等の人体に悪影響を及ぼす元素を用いることなしに実現できるために、リサイクルまでを含めた環境負荷が極めて小さい製品の提供が可能になる。
まず、本発明の対象となる等速自在継手について、図面を参照して説明する。
図1に示す固定式等速自在継手は、円筒状の外側部材1と、この外側部材1の内側に配置する内側部材2との間の継手である。この外側部材1の内周部1aには、軸L方向に延びる直線状の案内溝1bを複数(例えば6本)有し、一方内側部材2の球面状の外周部には、やはり軸L方向に延びる直線状の案内溝2bを複数(例えば6本)有する。そして、外側部材1の案内溝1bと内側部材2の案内溝2bとから形成されるボールトラックに、複数(例えば6個)のトルク伝達ボール3を配置し、これらトルク伝達ボール3を保持器4にて保持して成る。
以上の構成の等速自在継手は、作動角(外側部材1の軸中心を取る軸線と内側部材2に嵌合されるシャフトの軸中心を取る軸線とがあり、作動角が0°の場合は、これら両軸線が一致する状態であり、此れを基準に外側部材1を固定しシャフトを折り曲げた時の折り曲げ角度;両軸線のなす角度をいう)θの下に回転トルクを伝達する際、上記保持器4は、内側部材2の傾きに応じてボールトラック上を移動するトルク伝達ボール3の位置まで回転し、トルク伝達ボール3を作動角θの角度二等分面(θ/2)に保持する。これにより、継手の等速性が確保される。また、外側部材1と内側部材2とが軸方向に相対移動すると、保持器4の外径面と外側部材1の内径面1aとの間で滑りが生じ、円滑な軸方向移動が可能になる。
次に、図2にトリポード型等速自在継手を示す。この等速自在継手は、外側部材1の内周部1aに例えば3本のトラック溝5を有し、各トラック溝5の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面5aを有する。一方、外側部材1の内側に組み込むトリポード部材6は、その半径方向に突出する3本の脚軸6aを有する。このトリポード部材6の3本の脚軸6aのそれぞれに、例えばニードルローラなどの転動体7を介してローラ8を回転可能に装着してなる。各ローラ8は、トラック溝5の両側のローラ案内面5aにそれぞれ収容されている。各ローラ8が脚軸6aの軸心回りに回転しながらローラ案内面5a上を転動することにより、外側部材1とトリポード部材6との間の相対的な軸方向変位や角度変位が円滑に案内されると同時に、外側部材1とトリポード部材6とが所定の作動角を維持しつつ回転トルクを伝達する際に、各脚軸6aのローラ案内面5aに対する軸方向変位を、回転方向位相の変化に伴って円滑に案内できる。
また、図3にクロスグルーブ型等速自在継手を示す。この等速自在継手は、外側部材1の球面状の内周面1aに複数(通常は6本)の案内溝1bを有し、同様に内側部材2の球面状の外径面2aに複数(通常は6本)の案内溝2bを有し、これら外側部材1の案内溝1bと内側部材2の案内溝2bとで形成される複数のボールトラックを交差状の配置で設け、両トラックの交差部に複数(通常は6個)のトルク伝達ボール3を配置し、さらにトルク伝達ボール3を保持器4にて保持してなる。
ここで、図1に示した固定型等速自在継手における外側部材1及び内側部材2、図2に示したトリポード型等速自在継手における外側部材1及びトリポード部材6、そして図3に示したクロスグルーブ型等速自在継手における外側部材1及び内側部材2は、当該部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼からなり、かつ高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であり、さらに該高周波焼入れ焼戻し後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することが肝要である。
すなわち、各部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼とするのは、鋼中の黒鉛析出により、硬質なセメンタイト量を減少させ、冷間鍛造、温間鍛造時の変形能を向上し、変形抵抗を低減することを目的とする。また、黒鉛析出により鋼材に優れた被削性を兼備することが可能となり、各C量に応じて、同一C量では従来達成し得なかった加工性を得ることが可能となる。
また、高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であるとするのは、以下の理由による。すなわち、前述の黒鉛が高周波焼入れ後も存在すると、使用環境において黒鉛が応力集中源となり、疲労特性を著しく劣化させるからである。また、黒鉛そのものが消失しても、それに起因する空孔など欠陥が鋼中に残存すると同様の疲労特性の劣化を引き起こす。発明者らは、これら欠陥が疲労特性に及ぼす影響を詳細に調査した結果、そのサイズが円相当直径で7μm以下であれば、直接疲労特性に悪影響を及ぼさないことを確認した。これら知見に基づき、本発明において、高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であることを規定するものである。
さらに、本発明の等速自在継手は、高周波焼入れ焼戻し後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛相の痕跡の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することが肝要である。
すなわち、黒鉛相を有する鋼材に焼入れ処理を施すと、該焼入れ処理後のミクロ組織は、マルテンサイトの母相中に、黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方が分散して存在するものとなる。かようなミクロ組織において、黒鉛相もしくは黒鉛起因の空孔の周囲に、母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を存在させることによって、疲労破壊の起点となる黒鉛相への応力集中が緩和されて、黒鉛相からの亀裂の発生が抑制される結果、等速自在継手における外側部材及び内側部材、或いはトリポード部材の疲労特性は格段に向上する。
ここで、黒鉛相もしくは黒鉛起因の空孔の周囲に、母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相が存在するとは、焼入れ後の黒鉛相あるいは黒鉛起因の空孔の周囲組織がマルテンサイト相であり、かつ、例えば図4に示すようなEPMA(電子線プローブマイクロアナライザー)によるC分析において、母相に比べC濃度の高い領域が黒鉛相あるいは黒鉛相起因の空孔の周囲に存在していることを言う。
また、上記のミクロ組織を得るには、まず焼入れ処理に供する鋼材は黒鉛相を有する必要があり、この焼入れ前の鋼材における黒鉛化率は好ましくは5%以上とする。なぜなら、黒鉛析出により、硬質なセメンタイト量を減少させ、また黒鉛が切削時に潤滑剤として作用し被削性を向上するためである。一方、上限は、黒鉛化率が60%以上となると、切削時に鋼材表面にむしれが生じ易くなるため、60%未満とすることが好ましい。
なお、黒鉛化率は、{(測定黒鉛面積率)/(添加Cが全て黒鉛化した際の黒鉛面積率)}×100 (%)で定義される。
次に、本発明の上記部材の素材となる鋼材について、その好適成分組成について説明する。
C:0.4〜0.6mass%
黒鉛相を形成し、また等速自在継手の部品としての強度を確保するために必須の成分である。すなわち、C含有量が0.4mass%未満では被削性を確保する上で必要な黒鉛相を確保することが困難であり、また等速ジョイントとして必要となる部品強度確保の観点からも、0.4mass%以上の添加を必要とする。一方、0.6mass%を超えて添加すると、冷間または温間の加工時の変形抵抗が上昇するとともに変形能が低下し、鋼材の割れや疵の発生が増大するとともに、切削加工における工具寿命が低下するため、0.6mass%を上限とする。
Si:0.5〜1.0mass%
Siは、セメンタイト中に固溶せず、セメンタイトを不安定化することにより黒鉛化を促進するとともに、転動寿命の向上にも効果のある元素であるため、0.5mass%以上添加する。一方、1.0mass%を超える添加は、冷間または温間の加工時の変形抵抗を却って増大させるため、0.5〜1.0mass%の添加範囲とする。
Mn:0.1〜0.5mass%
Mnは、鋼の脱酸に有効であるばかりでなく、焼入性にも有用な元素であるので積極的に添加するが、一方で、セメンタイト中に固溶し、黒鉛化を阻害する。すなわち、0.1mass%未満の添加では、脱酸に効果がないため、少なくとも0.1mass%以上の添加が必要であるが、0.5mass%を超えて添加すると、黒鉛化を阻害することから、0.5mass%以下の添加とする。
B:0.0003〜0.0150mass%
Bは、鋼中のNと化合してBNを形成し、これが黒鉛の結晶化の核として作用し、黒鉛化を促進するとともに、黒鉛粒を微細化する。また、鋼の焼入性を高め、焼入後の強度を確保する上でも有用な元素である。すなわち、0.0003mass%未満の添加では、黒鉛化および焼入性向上への効果が小さく、0.0003mass%以上の添加を必要とするが、0.0150mass%を超えて添加すると、Bがセメンタイト中に固溶してセメンタイトを安定化することにより、逆に黒鉛化を阻害することになるため、0.0150mass%以下の添加とする。
Al:0.005〜0.1mass%
Alは、鋼中のNと反応してAlNを形成し、これが黒鉛の核形成サイトとして作用することにより、黒鉛化を促進するので積極的に添加する。すなわち、0.005mass%未満の添加では、その作用が小さく、少なくとも0.005mass%の添加を必要とする。一方、0.1mass%を超えて添加すると、鋳造工程において、Al系酸化物が多数形成される。この酸化物は、単独でも疲労破壊の起点となるばかりでなく、この酸化物を核として著しく粗大な黒鉛粒が形成される。また、Al系酸化物は硬質なため、切削時に工具を摩耗させることにより被削性を低下させる。以上の理由により、Alの添加量は、0.1mass%未満に限定する。
O:0.0030mass%以下
Oは、酸化物系非金属介在物を形成し、冷間および温間鍛造性と、被削性および疲労強度とをともに低下させるから極力低減すべきであるが、0.0030mass%までは許容される。
P:0.020mass%以下
Pは、黒鉛化を阻害するとともに、フェライト層を脆化させることにより冷間および温間鍛造性を劣化させる元素である。また、焼入れ焼戻し時に粒界に偏析し粒界強度を低下させることにより、疲労亀裂の伝播に対する抵抗を低下させ、疲労強度を低下させる。したがって、極力低減すべきであるが、0.020mass%まで許容される。
S:0.035mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、これが冷間および温間鍛造時の割れ発生の起点となり冷間および温間鍛造性を劣化させる。また、MnSはそれ自身が疲労破壊の起点となることとともに、黒鉛の結晶化の核として作用することにより粗大な黒鉛を形成し、これが疲労強度を低下させる作用があるので極力低減すべきであるが、0.035mass%まで許容される。
N:0.0015〜0.150mass%
Nは、Bと化合してBNを形成し、このBNが黒鉛の結晶化の核となることにより、著しく黒鉛粒を細粒化するとともに黒鉛化を促進するので、本発明においては必須の元素であるが、0.0015mass%未満の添加ではBNが十分に形成されず、一方、0.0150mass%を超えて添加すると連続鋳造時に鋳片の割れを促進するので0.0015〜0.0150mass%未満の添加とする。
上記した元素以外の残部は、Fe及び不可避的不純物である。
次に、本発明の等速自在継手を製造する条件について説明する。
上記の好適組成に成分調整した鋼材を、熱間加工例えば熱間棒鋼圧延して棒鋼とし、この棒鋼を所定長さに切断し、その後焼鈍を施したのち、冷間または温間での鍛造加工および切削加工によって各種部材形状に成形し、その後高周波焼入れを行って、等速自在継手における上記外側部材、内側部材或いはトリポード部材を作製する。
ここで、上記焼鈍は、各部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する組織とするために、680℃ないし720℃における滞在時間を3時間以上とする必要がある。すなわち、上記温度範囲は焼鈍時に黒鉛形成が進行する温度域であり、当該温度域で十分な滞在時間を得ること無しに必要とする黒鉛析出量の確保は困難である。
さらに、高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であるためには、高周波焼入れに先立ち、加工率が50%以上の冷間鍛造あるいはA点以下の温度域での温間鍛造を行うことによって、鋼中の黒鉛粒子の分散を微細化させること、また高周波焼入れの加熱時に少なくとも鋼材の表面を950℃以上1050℃以下の温度に1.5s以下保持することによって、黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有する、ミクロ組織とすることが肝要である。
まず、冷間鍛造の場合に加工率が50%未満では、本発明で狙いとする加工による黒鉛粒子の分断が十分に起こり得ず、低温の高周波焼入れ時に黒鉛粒子の母相への固溶が十分に進行し得なくなる。その結果、高周波焼入れ後に黒鉛粒子あるいはそれに起因する欠陥が残存しやすくなり、そのサイズを7μm以下に制御することが困難となる。温間鍛造の場合に温度がA点を超えると、黒鉛粒子の鋼母相中への固溶が起こり、黒鉛粒子の存在による温間および冷間加工性の向上効果が、それに応じて低減することとなる。
また、高周波焼入れの加熱時において、鋼材の表面温度が950℃未満では、黒鉛粒子の鋼母相中への固溶が十分に進行せず、冷間加工などによる事前の黒鉛粒子微細化が成されていない場合には、黒鉛およびそれに起因する空孔等の欠陥が著しく残存しやすくなり、そのサイズを7μm以下に制御することが困難となる。
一方、鋼材の表面温度が1050℃を超えると、黒鉛粒子の鋼母相中への固溶が急速に起こり、黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有する、ミクロ組織の形成が困難になる。同様に、上記温度域の加熱保持時間が1.5sを超える場合も、黒鉛粒子の鋼母相中への固溶が急速に起こり、黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有する、ミクロ組織の形成が困難になる。
表1に示す化学組成の鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造によりブルームとした。次いでビレット圧延を経てさらに棒鋼圧延により25mmφの棒鋼とし、黒鉛析出焼鈍に際して黒鉛が析出する680〜720℃における保持時間を変化させて種々の黒鉛化率を有する棒鋼を得た。こうして得た棒鋼を素材として、以下に示す種々のミクロ組織および特性を調査した。
すなわち、圧延ままの25mmφ丸棒について、黒鉛析出を伴う軟化焼鈍を施した後、ミクロ組織および冷間鍛造性を調査した。さらに、その素材を冷間または温間で等速自在継手の各部材の形状に鍛造加工した。その後、切削加工にて図1ないし図3に示した等速自在継手の各部材の最終形状に整えてから、高周波焼入れを施した。それぞれの熱処理条件を表2中に示す。なお、高周波焼入れ時の加熱に際して、加熱時の最高到達温度に到達後水冷開始までの時間を保持時間とした。焼入れ後、それぞれの部品に関して150℃および2h保持の焼戻しを行った。その後、以下に示す、黒鉛化率、冷間鍛造性および被削性と、表面硬さおよび有効硬化深さとを、それぞれ調査した。その結果を、表2に併記する。
[黒鉛化率]
黒鉛化率は冷間加工前の素材から、表層黒鉛面積率は高周波焼入れ前の素材から、それぞれ光学顕微鏡観察用試片を採取し、研磨後は腐食することなく、画像解析装置により、表面から1/4厚み断面における5箇所について、400倍の倍率の光学顕微鏡像10視野にわたって黒鉛の面積率を測定した。かくして求めた黒鉛面積率を、添加Cが全て黒鉛化した際の値との比として、以下のように黒鉛化率を定義した。
(測定黒鉛面積率)/(添加Cが全て黒鉛化した際の黒鉛面積率)×100(%)
[冷間鍛造性]
焼鈍後素材より15mmφ×22.5mm長さの円柱状試験片を作製し、300tプレスを用いて圧縮試験を行い、試験時の荷重より変形抵抗を算出した。ここでは、圧縮率(高さ減少率)60%時の変形抵抗を示した。また、繰り返し数10個とし、試験片側面の割れ発生の有無を確認し、試験後の試験片の半数に割れの発生する圧縮率を限界圧縮率として変形能の指標とした。
[被削性]
冷間または温間加工後の各部材のドリル穿孔試験を実施した。工具は直径4mmのコーティングなしのストレートドリルを用い、送り速度0.15mm/revの乾式切削を行い、切削不能となるまでの穿孔深さにより被削性を評価した。
[表面硬さおよび有効硬化深さ]
高周波焼入れ焼戻し後の硬さおよび断面硬度分布を測定した。断面硬度分布より、C量に応じて下記の硬さになる表面からの距離を有効硬化層深さとして測定した。

C量(mass%) 判定硬度(ビッカース硬さ)
〜0.43未満 400
0.43〜0.53未満 450
0.53〜 500
また、上記に従って作製した、図1に示した等速自在継手の外側部材および内側部材、図2に示した等速自在継手の外側部材およびトリポート部材、並びに図3に示した等速自在継手の外側部材および内側部材について、次に示す転動疲労性を調査した。その調査結果を、表3に示す。
[転動疲労性]
高周波焼入れ焼戻し後の各部材に関して、転動疲労試験を実施した。すなわち、転動疲労試験は、それぞれ外輪のトラック部に2.8GPaの面圧が作用するトルクを負荷し、作動角5°、回転数650rpmの条件で運転し、トラック部には剥離や欠けが発生し作動性が悪化するまでの運転時間(寿命時間)を調査した。試験結果は、JIS-S53Cの結果を1として、それに対する比の値を表3に示した。
鋼材の特性を表2に示すように、No.21はJIS-S53Cに相当する鋼であり、No.22はこれにCa,Pbを添加したものである。
本発明範囲にある鋼材は、いずれもPb添加および非添加のS53Cに相当する鋼G,H(No.21,22)と比較して同等以上の優れた被削性と冷間鍛造性を有している。本発明例中においても、黒鉛面積率の高い鋼ほど優れた被削性、冷間鍛造性を示す傾向が認められた。
これに対して、No.18〜23では、軟化焼鈍後の黒鉛の析出が認められなかった。そのために、被削性および冷間鍛造性も、本発明と比較すると著しく劣るものであった。化学組成が本発明内にあっても、鍛造条件および高周波加熱温度下限が本発明の規定外となる場合(No.5,10)には、高周波焼入れ焼戻し後の表層近傍に黒鉛粒子あるいはそれに起因する粗大な欠陥が残留し、そのため有効硬化深さが低下するとともに、表3に示す転動寿命は本発明と比較すると劣るものであった。
また、高周波焼入れ条件(加熱温度、保持時間)が本発明の規定外であるため、黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相が生成していない場合(No.2,4,5,6,8,12,15,17)には、S53C相当の鋼Gに対しては転動寿命は良いものの、C濃度の高いマルテンサイト相が生成している場合(No.1,3,7,11,14,16)と比較すると、転動寿命に劣るものであった。
温間鍛造時の加工温度が本発明規定よりも高い場合(No.9)には、素鋼材中の黒鉛が、鍛造時に母相へ固溶、消失するため、鍛造後の被削性が著しく低下した。
また、本発明に適合する実施例の中でも、素材黒鉛化率の高い場合(No.11)は他の実施例と比較して、転動寿命は低位にとどまっている。
本発明の等速自在継手を示す断面図である。 本発明の別の等速自在継手を示す断面図である。 本発明のさらに別の等速自在継手を示す断面図である。 電子顕微鏡組織写真に示した走査方向における、EPMAによるライン分析結果を示す図である。
符号の説明
1 外側部材
1a 内周部
1b 案内溝
2 内側部材
2a 外周部
2b 案内溝
3 トルク伝達ボール
4 保持器

Claims (5)

  1. 内周部に複数の案内溝を有する外側部材と、外周部に複数の案内溝を有する内側部材と、外側部材及び内側部材の案内溝にて形成される複数のボールトラックにそれぞれ配置したトルク伝達ボールと、これらトルク伝達ボールを保持する保持器とを備えた等速自在継手において、
    前記外側部材及び内側部材は、当該部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼からなり、かつ高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であり、さらに該高周波焼入れ焼戻し後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することを特徴とする転動疲労特性に優れた等速自在継手。
  2. 内周部に3本のトラック溝を有し、かつ各トラック溝の両側にそれぞれローラ案内面を有する外側部材と、放射状に突出する3本の脚軸を有するトリポード部材と、該トリポード部材の各脚軸に転動体を介して回転可能に装着されたローラとを備え、該ローラをトラック溝の両側のローラ案内面で外側部材の軸方向に案内する等速自在継手において、
    前記外側部材及びトリポード部材は、当該部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼からなり、かつ高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であり、さらに該高周波焼入れ焼戻し後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することを特徴とする転動疲労特性に優れた等速自在継手。
  3. 内周部に複数の案内溝を有する外側部材と、外周部に複数の案内溝を有する内側部材と、外側部材及び内側部材の案内溝にて形成される複数の交叉状ボールトラックの交叉部分にそれぞれ配置したトルク伝達ボールと、これらトルク伝達ボールを保持する保持器とを備えた等速自在継手において、
    外側部材及び内側部材は、当該部材の成形加工時に含有C量の5%以上の黒鉛相を有する鋼からなり、かつ高周波焼入れ焼戻し後の表層部に存在する、残留黒鉛粒子並びに黒鉛起因の空孔が円相当直径で7μm以下であり、さらに該高周波焼入れ焼戻し後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することを特徴とする転動疲労特性に優れた等速自在継手。
  4. 前記鋼の成分組成が、
    C:0.4 mass%以上0.6mass%以下、
    Si:0.5 mass%以上1.0mass%以下、
    Mn:0.1 mass%以上0.5mass%以下、
    B:0.0003 mass%以上0.0150mass%以下、
    Al:0.005 mass%以上0.1mass%以下、
    O:0.0030mass%以下、
    P:0.020mass%以下、
    S:0.035mass%以下及び
    N:0.0015 mass%以上0.0150mass%以下
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1、2または3に記載の等速自在継手。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の等速自在継手を製造するに際し、該等速自在継手の外側部材、内側部材またはトリポード部材について、鋼素材を熱間加工したのち焼鈍を施し、次いで鍛造加工および切削加工によって各種部材形状に成形し、その後高周波焼入れを行って作製するに当り、前記焼鈍を680℃ないし720℃における滞在時間を3時間以上とし、その後の高周波焼入れに先立ち、加工率が50%以上の冷間鍛造、あるいは、A点以下の温度域での加工率が50%以上の温間鍛造を行い、その後の高周波焼入れの加熱時に少なくとも鋼材の表面を950℃以上1050℃以下の温度に1.5s以下保持することを特徴とする転動疲労特性に優れた等速自在継手の製造方法。
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