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JP2008011099A - ヘッドフォン音響再生システム、ヘッドフォン装置 - Google Patents

ヘッドフォン音響再生システム、ヘッドフォン装置 Download PDF

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JP2008011099A
JP2008011099A JP2006178573A JP2006178573A JP2008011099A JP 2008011099 A JP2008011099 A JP 2008011099A JP 2006178573 A JP2006178573 A JP 2006178573A JP 2006178573 A JP2006178573 A JP 2006178573A JP 2008011099 A JP2008011099 A JP 2008011099A
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JP2006178573A
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Fumitaka Nishio
文孝 西尾
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Sony Corp
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Abstract

【課題】マルチチャンネルに対応するヘッドフォンとして、より理想的な音場の再現が行えるようにする。
【解決手段】5.1chサラウンドに対応しては、左音響ユニットにおいてLFchの主音声成分、Cch、RFchの副音声成分、LSchの主音声成分、RFの副音声成分、LFEchを出力するドライブユニットを個別に設ける。右音響ユニットにおいては、RFchの主音声成分、Cch、LFchの副音声成分、RSchの主音声成分、LFの副音声成分、LFEchを出力するドライブユニットを個別に設ける。また、これらのドライブユニットは、チャンネル音源位置に対応した配列順により配置する。副音声成分の音声信号は、主音声成分に対する信号特性差が与えられるようにして、フィルタ処理、遅延処理を施して生成する。
【選択図】図8

Description

本発明は、ヘッドフォン装置を備えて音響再生を行うようにされたヘッドフォン音響再生システムと、このようなヘッドフォン音響再生システムにおいて備えられるヘッドフォン装置に関するものである。
例えば、5.1chサラウンドなどに代表される、いわゆるマルチチャンネルといわれるチャンネル構成により音響再生を行うことが知られている。このようなマルチチャンネルの音声ソースは、一般的には、チャンネル数に対応してしかるべき位置関係により配置させたスピーカのそれぞれから出力させるものとされており、また、このようにして再生出力されることを前提として各チャンネルの音声信号がつくられる。そして、実際にスピーカから再生出力されるマルチチャンネルの音声を聴いた場合には、いろいろな音源の音像が聴取位置の周囲で定位するようになり、例えば2チャンネルステレオなどよりもより立体的で臨場感のある音響効果を楽しむことができる。
上記のようにして、本来のマルチチャンネルの音響再生は、チャンネル数分のスピーカを配置して行うべきものなのであるが、ヘッドフォン再生によっても、あたかも、実際にスピーカを配置して聴く場合と同様に、聴取者の頭外のしかるべき位置にて音像が定位して聴こえるようにするための信号処理技術が提案されており、また実現化されて普及してきている状況にある。
このような信号処理技術では、例えば、チャンネルごとに対応する音源から発せられた音が、聴取者の左耳と右耳に到達して聴こえるまでの経路の伝達関数を利用するようにされる。この場合において用いられる伝達関数は、例えば、音源から聴取者の鼓膜に到達するまでの音の伝達特性に対応するものとされており、頭部伝達関数ともいわれる。
そして、マルチチャンネルを構成するチャンネルごとの音源となる音声信号を、左耳と右耳に対応させて振り分けた上で、これらの音声信号に対して、頭部伝達関数に基づいた信号特性を与えるようにされる。つまり、各チャンネルの音声信号の原音から、そのチャンネルとしての音源位置から左耳に到達するとされる特性の信号と、右耳に到達するとされる特性の信号を生成する。そして、各チャンネルの左耳に到達するまでの経路の頭部伝達関数を有する信号を合成して得られる信号を、ヘッドフォンの左ドライブユニットから音として再生出力させ、同じく各チャンネルの右耳に到達するまでの経路の頭部伝達関数を有する信号を合成して得られる信号を、ヘッドフォンの右ドライブユニットから音として再生出力させるようにする。
このようにして再生出力される音を、例えば聴取者がヘッドフォンによりほぼ直接的に両耳で聴くことで、頭内で音像が定位するのではなく、例えばマルチチャンネルに対応するスピーカを実際に配置した環境で聴いているのと同等の音像定位が感じられることになる。つまり、いわゆるサラウンドといわれる音響効果を得ることが可能になる。
特開2003−274493号公報
しかしながら、上記のようなヘッドフォンによる音響再生システムは、あくまでも頭部伝達関数を利用した信号処理によって仮想的な音場を得るものであることから、実際にユーザが聴き取ることのできる音響効果が不十分であると感じられてしまうことが、少なからずあるというのが現状である。
この主たる原因の1つは、頭部伝達関数に基づいて得られた各チャンネルの音声信号を、左右のドライブユニットごとに対応させて、左右のチャンネルの音声信号として合成していることが挙げられる。
実際にスピーカを配置したマルチチャンネルの再生環境では、各チャンネルのスピーカから発せられた音(音波)が空間にて合成される。聴取者は、この合成された音を聴くことになる。例えばこの場合において、異なるチャンネル間で、逆相となるような信号が再生されているとしても、空間で合成されることで正確に打ち消し合わされるようなことにはならず、これがかえって豊かな音場感が得られることの要因となっている。
これに対して、上記のヘッドフォン音響再生システムでは、空間で音を合成する代わりに、音声信号段階での合成を行っている。すると、異なるチャンネル間で信号が逆相になったような場合には、その信号が的確に打ち消し合うようなことになり、これが音場感を不自然なものとしたり、不充分なものとすることにつながってしまう。
上記のような問題については、特に有効な解決が図られていない、というのが現状であり、従って、マルチチャンネルに対応して仮想音場を得るようにされるヘッドフォン音響再生システムとしては、より忠実な音響効果が得られるようにするための余地が残っている、ということがいえる。
そこで本発明は上記した課題を考慮して、ヘッドフォン音響再生システムとして次のように構成する。
つまり、左右の耳に対応して対となるドライブユニットの組を、所定のチャンネル構成を成す複数のチャンネルごとに対応して複数組備え、ドライブユニットの組の少なくとも1つは、対応するチャンネルの仮想音源位置から一方の耳に対応した位置に到達するとされる主音声成分に対応した主音声信号を入力して再生出力するようにされて、この再生出力された音声が一方の耳により聴き取られるようにして設けられる主音声対応片側ドライブユニットと、対応するチャンネルの仮想音源位置から他方の耳に対応した位置に到達するとされる副音声成分に対応した副音声信号を入力して再生出力するようにされて、再生出力された音声が他方の耳により聴き取られるようにして設けられる副音声対応片側ドライブユニットとから成るとともに、主音声成分に対する副音声成分の所定特性の差分に応じた信号特性を主音声信号に対して与えることにより副音声信号を得る副音声用信号特性付与手段を備えることとした。
上記構成では、所定のチャンネル構成に対応して複数のドライブユニットの組を備える。ドライブユニットとは、振動板などを備えた構造を有して、音声信号に応じた駆動信号により駆動されることで音声を出力するための部位とされる、ドライブユニットの組の個々は、左耳と右耳のそれぞれに1つづつ対応した一対(2つ)のドライブユニットから成るものであり、また、これら一対のドライブユニットのうち、一方のドライブユニットは、主音声対応片側ドライブユニットとされて、対応するチャンネルの仮想音源位置から一方の耳に対応した位置に到達するとされる主音声成分に対応した主音声信号を入力して再生出力し、他方のドライブユニットは、副音声対応片側ドライブユニットとされて、同じチャンネルの仮想音源位置から他方の耳に対応した位置に到達するとされる副音声成分に対応した副音声信号を入力して再生出力するようにされている。
つまり、本願発明による構成の基本概念としては、チャンネルごとに対応する音源位置を再現するのにあたり、そのチャンネルの音源が一方の耳に到達する音声成分の音声信号(主音声信号)と、他方の耳に到達する音声成分の音声信号(副音声信号)とを生成したうえで、これらの音声信号をそれぞれ独立したドライブユニットにより、右耳あるいは左耳で聴き取ることができるようにして再生出力させようとするものである。
このような構成であれば、例えばチャンネルごとの音源位置から左右の各耳に到達すべき音は、それぞれがドライブユニットから発せられて、先ずは耳に近いところの空間で合成されたうえで、耳介、鼓膜に到達することになる。
上記のようにして、本願発明にあっては、ヘッドフォンによる再生でありながら、チャンネルごとの音源位置から左右の各耳に到来してくるとされる音は、空間にて合成されてから耳に到達してくるようにされる。これにより、これまでよりも理想に近いとされる音場を再現することが可能なヘッドフォン音響再生システムを提供することが可能になるものである。
以下、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明を行っていく。
本実施の形態は、ヘッドフォン音響再生システムとして、例えば5.1chサラウンドなどに代表されるマルチチャンネル構成により得られる音像定位を仮想的に実現しようとするものである。先ず、このような仮想音像定位をヘッドフォン再生により実現する技術の基本構成概念について説明しておくこととする。
ここでは音源の音像定位については最も簡単な例を挙げる。つまり、聴取者に対して或る位置関係にある単一の音源の音像定位をヘッドフォンにより仮想的に再生する場合を考える。これは、例えば図17の音響モデルにより模式的に示すようにして、聴取者Mと、この聴取者Mに対して一定角度及び一定距離に在るとされる1つの音源Srcとの関係として捉えることができる。この図に示すように、音源Srcから発せられる音は、聴取者Mの左耳に対しては伝達関数Hlが畳み込まれるようにして与えられて伝達され、右耳に対しては伝達関数Hrが与えられて伝達される。
なお、ここでの伝達関数Hl、Hrは、音源から聴取者の鼓膜に到達するまでの音の伝達特性に対応する頭部伝達関数とされる。また、この場合の音源Srcは、聴取者Mの前方において左側に位置していることから、音源Srcから聴取者Mの左右の各耳に到達する音のうちで、左耳に到達する音は、直接音的な主音声成分であるとして、また、右耳に到達する音は、本来は左耳に到達して聴こえる音が回折などして右耳にて聴き取られるクロストーク成分であり、従って、主音声成分に対して副音声成分となるものであるとして扱うことができる。
図18は、上記図17において、音源Srcから発せられて聴取者Mの左耳にて聴き取られたとされる、伝達関数Hlの経路による音の周波数特性Aと、聴取者Mの右耳にて聴き取られたとされる、伝達関数Hrの経路による音の周波数特性Bを示している。
上記もしているように、この場合の音源Srcは聴取者Mの左前方に位置していることで、聴取者Mの左耳にて聴き取られる音は直接音的なものである。これに対して、聴取者Mの左耳にて聴き取られる音は、間接音、クロストーク成分とされる。周波数特性Aに対する周波数特性Bの差分として、周波数特性Bのほうの音圧が小さくなっているのは、このことに対応したものである。
このようにして、1つの音源Srcから発せられて左右の各耳に到達して聴こえる音は、その周波数特性が異なっている。また、図17において示されているように、音源Srcから左耳までの距離と右耳までの距離との間には距離差Dsが存在し、この距離差Dsに応じて、音源Srcから発せられた音が左右の各耳に到達する時間差である到達時間差dlも生じることになる。図17に示した伝達関数Hl、Hrは、音源Srcから発せられたものとされる原音に対して、このような周波数特性差や到達時間差などの特性差を与えるものとなる。
そして、人の音像定位能力としては、上記のような左耳と右耳との間で聴き取る音についての周波数特性差(ここでは音量差の要素を含む)、時間差などの所定特性の差分から、音像の定位感を知覚するものであるとされている。このことに基づけば、1音源の仮想音像定位をヘッドフォンにより再生するためには、原音の音声信号を基として上記のような、主音声分と副音声成分とに対応する信号特性差を与えた2つの音声信号を得て、これらの音声信号の一方を左耳に対応するドライブユニットから再生出力させ、他方を右耳に対応するドライブユニットから再生出力させればよい、ということになる。
上記したことをふまえた上で、図19の音響モデルに示すようにして、聴取者Mに対して左右前方に配置した左音源Srclと右音源Srcrにより得られるとされる音像定位をヘッドフォンにより再現する場合を考えてみる。
この場合、先ず、左音源Srclから発せられる音は、主音声分として伝達関数Hllが与えられた聴取者Mの左耳に到達するとともに、副音声として伝達関数Hlrが与えられて右耳に到達するものとされる。また、右音源Srcrから発せられる音は、主音声分として伝達関数Hrrが与えられた聴取者Mの右耳に到達するとともに、副音声として伝達関数Hrlが与えられて聴取者Mの左耳に到達するものとされる。
そして、上記図19に示した左右前方による音像定位をヘッドフォン再生により実現するための信号処理系の構成としては、図20に示す態様を考えることができる。
先ず、この図20に示される構成においては、入力信号として、図19の左音源Srclにて発せられる原音に対応した原音声信号Slと、同じ図19の右音源Srcrとして発せられる原音に対応した原音声信号Srとを入力するようにされる。
原音声信号Slは、合成器13aに直接的に入力される系と、フィルタ11bから遅延器12bを介して合成器13bに入力される系とに分岐される。また、原音声信号Srも、合成器13bに直接的に入力される系と、フィルタ11aから遅延器12aを介して合成器13aに入力される系とに分岐される。
合成器13aでは、上記のようにして、直接的に入力された原音声信号Slと、原音声信号Srをフィルタ11a、遅延器12aにより処理した信号とを合成して、左(L)出力チャンネル用信号として、左耳に対応したドライブユニットSPu−Lにより音声として出力させるものとしている。
また、合成器13bは、直接的に入力された原音声信号Srと、原音声信号Slをフィルタ11b、遅延器12bにより処理した信号とを合成して、右(R)出力チャンネル用信号として、右耳に対応したドライブユニットSPu−Rにより音声として出力させるものとされる。
これらのドライブユニットの実際としては、例えば所定の材質形状による振動板を備え、音声信号を増幅して得られる駆動電流により上記振動板が駆動されることで音を再生するようにされた部位をいう。つまりは、ヘッドフォンなどの耳に近いところで音を再生するようにされたスピーカユニットとされる。
上記図20に示す構成において、先ず、原音声信号Slが合成器13aに直接的に入力されてドライブユニットSPu−Lに至る系は、左音源Srclから左耳に到達する主音声成分に対応するものとされ、後述するようにして、伝達関数Hllに応じた信号特性を与えていることと等価となる。これに対して、原音声信号Slがフィルタ11b、遅延器12b、合成器13bを経由してドライブユニットSPu−Rに至る系は、左音源Srclから右耳に到達する副音声成分に対応するものとされ、フィルタ11b、遅延器12bにより主音声成分に対する信号特性差(周波数特性差、到達時間差dl)を与えることで、伝達関数Hlrが畳み込まれたのと等価の信号特性を与えるようにされる。
同様にして、原音声信号Srが合成器13bに直接的に入力されてドライブユニットSPu−Rに至る系は、右音源Srcrから右耳に到達する主音声成分に対応し、伝達関数Hrrに応じた信号特性を与えているものとされ、原音声信号Srがフィルタ11a、遅延器12a、合成器13aを経由してドライブユニットSPu−Lに至る系は、右音源Srcから左耳に到達する副音声成分に対応するものとされ、フィルタ11a、遅延器12aにより、主音声成分に対する特性差を与えることで、伝達関数Hlrが畳み込まれたのと等価の信号特性を与えるようにされる。
例えばL,Rによる2チャンネルステレオのヘッドフォンについての一般的なこととして、ドライブユニットの再生音声の周波数特性をはじめ、音響ユニットにて再生される音の特性は、実際に聴取者がヘッドフォンを装着して左右各耳の音響ユニットから再生される音を聴いたときに、周波数帯域のバランスなどが自然なものとして聴こえるようにして設定されている。このことから、ヘッドフォン装置により音声再生された段階で、例えばL,Rの各チャンネルの再生音声には、それぞれのチャンネルが対応して、左右の各耳に到達するまでの経路に応じた伝達関数が近似的に与えられているものとして考えることができる。本実施の形態に対応したヘッドフォン装置としても、このようなことを前提として例えばドライブユニットなどがつくられているものとされる。
上記したことに基づけば、少なくとも、図20における主音声成分である、信号Slが合成器13aに直接的に入力されてドライブユニットSPu−Lに至る系と、信号Srが合成器13bに直接的に入力されてドライブユニットSPu−Rに至る系については、特にフィルタ処理や遅延処理を行わなくとも、ドライブユニットから音として出力されることを以て、伝達関数Hll、Hlrが畳み込まれたことと等価とされる特性の音が得られるものとして捉えることができることになるわけである。
そして、そのうえで、先にも説明したようにして、上記主音声成分に対応する副音声成分については、フィルタ及び遅延器により、伝達関数に応じた主音声成分に対する周波数特性差、到達時間差が与えられるようにされる。
これにより、左音源Srclから左耳に到達すべき伝達関数Hllによる主音声と、右耳に到達すべき伝達関数Hlrによる副音声とが、それぞれドライブユニットSPu−L、SPu−Rから再生出力されることになり、この音の成分を聴いたとすれば、しかるべき位置に左音源Srclが定位していると知覚できることになる。同様にして、右音源Srcrから右耳に到達すべき伝達関数Hrrによる主音声と、左耳に到達すべき伝達関数Hrlによる副音声とが、それぞれドライブユニットSPu−R、SPu−Lから再生出力されることになり、この音の成分を聴いた場合には、しかるべき位置に右音源Srcrが定位していると知覚できることになる。つまり、聴取者は、左音源Srclと右音源Srcrが左右前方におけるしかるべき位置にて定位した音像を知覚できることになり、仮想音像定位が実現される。
ここで、上記図20に示すシステム構成に対応したヘッドフォン装置と聴取者の頭部との関係を図21に示しておく。この場合のヘッドフォン装置は、図21に示すようにして、聴取者Mの左右の耳ごとに対応して左音響ユニット1L、右音響ユニット1Rを有している。ここでは図示していないが、例えば左音響ユニット1L、右音響ユニット1Rをヘッドバンドなどにより連結して、頭部に装着可能な構造を採るようにされている。そして、左音響ユニット1L、左音響ユニット1Rには、それぞれ、ドライブユニットSPu−L、SPu−Rが取り付けられており、ヘッドフォン装置が適正に頭部に装着された状態では、ドライブユニットSPu−L、SPu−Rが、それぞれ、左耳、右耳により聴き取ることのできる最適とされる位置に在るようにされる。
次に、上記図19〜図21により説明した2音源(2チャンネル構成)に対応する構成に基づいた、より実際的なマルチチャンネル構成に対応するヘッドフォン音響再生システムの構成について、図22及び図23を参照して説明する。ここでは、マルチチャンネル構成として、5.1chサラウンドの規格に対応させた場合を例に挙げることとする。
先ず、図22は、5.1chサラウンドのチャンネル構成のモデルを模式的に示しているものとされる。
周知のようにして、5.1chサラウンドは、LF(Left Front)ch、C(Center)ch、RF(Right Front)ch、LS(Left Surround)ch、RS(Right Surround)chと、サブウーファともいわれるLFE(Low Frequency Effect)chの、計6チャンネルによるチャンネル構成を採るものとされる。これらのチャンネルについては例えばITU−Rなどによって理想的とされる音源位置、つまり、リスニングポジション(聴取者M)に対するスピーカの位置、高さなどが規定されている。ただし、LFEchについては、その再生周波数帯域が他のチャンネルに対して相当に低いために指向性が鈍く、聴取者にとっても明確な定位を感じにくいことから、その音源位置についての規定は緩やかなものとされている。
そして、図22においては、LFch、Cch、RFch、LSch、RSch、LFEchのそれぞれに応じた音源として、スピーカSP−LF、SP−C、SP−RF、SP−LS、SP−RS、SP−LFEが示され、これらのスピーカから出力されて左耳と右耳のそれぞれ到達する音声を聴取者Mが聴き取る、というモデルが示されている。
例えば5.1chサラウンドの規格に従ったこれらスピーカの配置位置としては、聴取者Mの位置に対する左前方にスピーカSP−LFを配置し、中央前方にスピーカSP−Cを配置し、右前方にスピーカSP−RFを配置し、左後方にスピーカSP−LSを配置し、右後方にスピーカSP−RSを配置するようにされる。
そして、図19に倣えば、図22に示されるチャンネル構成の下での、各スピーカから聴取者Mの右耳、左耳に到達する音の経路については、下記の伝達関数(頭部伝達関数)により表すことができる。
Hlfl:スピーカSP−LFから主音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hlfr:スピーカSP−LFから副音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
Hcl:スピーカSP−Cから主音声/副音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hcr:スピーカSP−Cから副音声/主音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
Hrfl:スピーカSP−RFから副音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hrfr:スピーカSP−RFから主音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
Hlsl:スピーカSP−LSから主音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hlsr:スピーカSP−LSから副音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
Hrsl:スピーカSP−RSから副音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hrsr:スピーカSP−RSから主音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
図23は、先の図19及び図20により示される基本概念を基として構成した、5.1chサラウンドに対応するヘッドフォン再生システムの例を示している。
先ず、この図においても、ドライブユニットとしては、左出力チャンネルと右出力チャンネルに対応した一対のドライブユニットSPu−L、SPu−Rが備えられる。ドライブユニットSPu−Lには、合成器13aにより入力音声信号を合成して得られた左出力チャンネル用音声信号が入力され、ドライブユニットSPu−Rには、合成器13bにより入力音声信号を合成して得られた右出力チャンネル用音声信号が入力される。
そのうえで、5.1chサラウンドとしての各チャンネルの音声信号を、下記のようにして振り分けて合成器13a、13bに入力するようにされている。
先ず、LFchの原音声信号は、合成器13aに対して直接入力するようにしているとともに、フィルタ11b、遅延値12bを経由して合成器13bに入力させることとしている。
また、RFchの原音声信号は、合成器13bに対して直接入力するようにしていると共に、フィルタ11a、遅延器12bを経由して合成器13aに入力させることとしている。
Cchの原音声信号は、フィルタ11e、遅延器12eを経由した上で二系統に分岐させたうえで、各系の信号を、それぞれ合成器13a、遅延器13bに入力させることとしている。
LSchの原音声信号は、フィルタ11d、遅延器12dを経由して合成器13aに入力させるとともに、フィルタ11g、遅延器12gを経由して合成器13bに入力させることとしている。
RSchの原音声信号は、フィルタ11c、遅延器12cを経由して合成器13aに入力させるとともに、フィルタ11f、遅延器12fを経由して合成器13bに入力させることとしている。z
LFEchの原音声信号は、先ず、2系統に分岐した上で、各系の信号をそれぞれ、合成器13a、合成器13bに直接入力させることとしている。
上記図23に示される構成において、先ず、LFch、RFchの組に対応する信号系の構成は、先に図20に示した左音源Srclと右音源Srcrの2チャンネル分に対応するヘッドフォンシステムの基本構成に対応している。このために、LFchの主音声成分(左出力チャンネル)に対応する信号は、フィルタ、遅延器を経由させないで合成器13aからドライブユニットSPu−Lにより出力させることとしており、これにより、伝達関数Hlflが畳み込まれたのと同等の信号特性の音を得ようとしているものである。また、LFchの副音声成分(右出力チャンネル)に対応する信号については、フィルタ11b、遅延器12bを経由させることで、主音声に対する副音声の周波数特性差、到達時間差を与えるようにすることで、伝達関数Hlfrが畳み込まれたのと同等の信号特性の音を得るようにされる。
同様にして、RFchの主音声成分(右出力チャンネル)に対応する信号は、フィルタ、遅延器を経由させずに合成器13bからドライブユニットSPu−Rにより出力させることで、伝達関数Hrflが畳み込まれたのと同等の信号特性の音を得るようにされ、RFchの副音声成分(左出力チャンネル)に対応する信号については、フィルタ11a、遅延器12aを経由させることで、主音声に対する副音声の周波数特性差、到達時間差を与え、伝達関数Hrflが畳み込まれたのと同等の信号特性の音を得るようにされる。
また、LSchの主音声成分(左出力チャンネル)に対応して備えられるフィルタ11d、遅延器12dは、対応する伝達関数Hlslが畳み込まれたのと同等の信号特性を得るために、LFchの主音声成分に対する特性差(周波数特性差、及び到達時間差)を与えるためのパラメータ(通過帯域特性、遅延時間)が設定されるようになっている。つまり、LSchの主音声成分を基準とすれば、LFchの主音声成分は、互いの音源位置に応じて左耳に到達するまでの経路が異なってくることから、LSchの主音声成分に対する特性差を持つものであり、この特性差を、上記フィルタ11d、遅延器12dにより得ることとしているものである。
そのうえで、LSchの副音声成分(右出力チャンネル)に対応して備えられるフィルタ11g、遅延器11gは、対応する伝達関数Hlsrが畳み込まれたのと同等の信号特性を得るために、同じLSchの主音声成分に対する特性差を与えるためのパラメータを設定する。
また、RSchの主音声成分(右出力チャンネル)に対応して備えられるフィルタ11f、遅延器11fは、対応する伝達関数Hlslが畳み込まれたのと同等の信号特性を得るために、LFchの主音声成分に対する特性差を与えるためのパラメータが設定されるようになっている。そのうえで、LSchの副音声成分(右出力チャンネル)に対応して備えられるフィルタ11g、遅延器11gは、対応する伝達関数Hrsrが畳み込まれたのと同等の信号特性を得るために、同じLSchの主音声成分に対する特性差を与えるためのパラメータを設定する。
またCchについては、フィルタ11e、遅延器12eを経由してから、左出力チャンネルと右出力チャンネルとに対応する信号系に分岐されている。Cchは、図22に示されるようにして、聴取者Mの前方正面に位置する音源とされる。このために、理想的には、聴取者Mの左右の耳に到達する各系の音に対応する伝達特性Hcl、Hcrは同等であり、また、LFch、RFch、LSch、RSchのような主音声成分と副音声成分の相違も生じない。換言すれば、Cchでは、聴取者Mの左の耳に対応する系と、右の耳対応する系との間で、どちらを主音声成分、副音声成分としてあつかったとしても、実質的な差違は無いものである。
ただし、LFch、RFchの主音声成分を基準とすると、これに対するCchの左右の各耳に対応する音成分の信号特性差は存在する。従って、この信号特性差を与えれば、Cchとしての伝達特性Hcl、Hcrが得られ、その音像定位が実現されることになる。フィルタ11e、遅延器12eは、この信号特性差を与えるようにしてそのパラメータが設定される。
また、LFEchについては、先に図22により説明したように、その再生周波数帯域が低いために他のチャンネルの音と比較して指向性が鈍い。この点ではヘッドフォン再生においても同様である。そこで、LFEchについては、特に信号特性を与えることなく、直接、合成器13a、13bに分岐して入力させることとしているものである。
このようにして、図23に示す構成では、LFEch以外のチャンネルの音声信号について、左耳に到達する音成分に対応する伝達特性と、右耳に到達する音成分の伝達特性とを畳み込むようにして与えたうえで合成し、左出力チャンネルのドライブユニットSPu−Lと右出力チャンネルのドライブユニットSPu−Rからそれぞれ出力させることとしている。そして、このようにして出力される音を聴取者Mが聴くことで、図22により示したとされる音源位置に応じた音像定位が知覚されることになるものである。
ところで、上記のようにして、図23に示した構成のヘッドフォン再生システムによっては、原理的には、5.1chサラウンドのチャンネル構成に対応する仮想的音像定位を聴くことが可能となるのであるが、現実には、音像定位が、希薄あるいは不自然になるなどして良好に知覚されない場合のあることが分かっている。
その原因の主たる要因として、1つには、左右の各耳に到達すべきチャンネルごとの音声成分を、合成器13a、13bを用いて音声信号の段階で電気的に合成していることが挙げられる。
5.1chサラウンドとしての本来の音響再生システムは、例えば図22に準じて各チャンネルのスピーカを配置し、これらのスピーカから、対応のチャンネル音声を再生出力させるようにして構成される。この場合、聴取者Mの左右の耳には、各チャンネルのスピーカから発せられて到達しようとする音成分が空間上で合成された上で鼓膜に伝わるようにされる。
例えば、チャンネル間で再生される音声は、相互に逆相、同相になるような状態となり得る。原理的に逆相の音同士は打ち消し合って聴こえなくなり、同相の音は強め合うのであるが、空間上で合成される場合には、周囲環境などの影響で、的確に打ち消し合ったり強め合ったりするようなことには成りにくく、このような現象がかえって豊かな音場感が得られることにつながっていると考えられている。しかしながら、このような位相関係の音同士が、音声信号の段階にて電気的に合成された場合には、ほぼ正確に打ち消し合ったり、あるいは強め合ったりすることになり、これが例えば不自然な聴こえ方になってしまうなどして、音場感が良好でないと知覚させる要因となっているものである。
また、音像定位感が良好でなくなることの、もう1つの主たる原因として、実際の聴取者における個人差が大きく影響する場合がある。
これまでに図17〜図23により説明したヘッドフォン再生システムにおいて用いられる伝達関数は頭部伝達関数といわれるもので、例えば音源から聴取者の鼓膜に到達するまでの音の経路についての伝達特性を表すものとされている。このために、頭部伝達関数においては、人の耳介により反射して鼓膜に到達するとされる特性成分も含むことになる。現実に、人の耳介の形状には個人差が有り、このような違いに対応させて頭部伝達関数を設定することは困難である。そこで、頭部伝達関数の設定にあたっては、しかるべき手法により、標準として設定した耳介形状を想定するようにされている。しかしながら、頭部伝達関数において、耳介形状が与える特性が占める割合は相応に高い。また、現実における人の耳介形状は、個人ごとに異なるものと考えて良いうえ、その個人差も相応に大きい。このために、例えば、標準として設定した耳介形状とかなり違った形状の耳介を持った聴取者には、設定した伝達関数による音とはかけ離れた音をきくことになり、結果、良好でない音像定位が知覚されることになるわけである。
そこで、本実施の形態としては、上記したような要因ができるだけ排除されるようにして、良好な仮想音像定位感が得られるように構成されたヘッドフォン再生システムを提供するようにされる。以降、このための構成について説明を行っていくこととする。
先ず、図1により、本実施の形態としてのヘッドフォン再生システムにおいて前提となる基本の音響モデルを示す。この図では、図19の場合と同様にして、聴取者M(リスニングポジション)の前方における左右対称の位置に、左音源Srcl、右音源Srcrをそれぞれ設定した場合を示している。
例えば図19に示した音響モデルでは、左音源Srcl、右音源Srcrから左右の各耳に到達する音の伝達関数Hll、Hlr、Hrr、Hrlは、音源位置から鼓膜に至る音の経路までに対応する頭部伝達関数であることとしており、従って、その測定点としては、鼓膜に対応した耳介内であるものとされている。
これに対して、本実施の形態としては、左音源Srcl、右音源Srcrから左右の各耳に到達する音の測定点について、空間測定範囲P1,P2として示される、左右の耳介の外側近傍となる空間上の位置範囲を設定することとしている。この空間測定範囲P1,P2においては、図2に示すようにして、各音源に対応する測定位置が設定されている。先ず、空間測定範囲P1においては、左音源Srclが左耳に到達する音の測定点Pllと、右音源Srcrが左耳に到達する音の測定点Prlが設定される。また、空間測定範囲P2においては、右音源Srcrが右耳に到達する音の測定点Prrと、左音源Srclが左耳に到達する音の測定点Plrが設定される。なお、これらの測定点に対する、水平方向(横の並び方向)及び垂直方向(高さ方向)、及び耳介からの距離等についての位置の設定は、図4により後述するようにしてヘッドフォン装置を構成することとした場合における、4つの各音を再生出力するためのドライブユニットの配置位置に対応して決められるものとされる。つまり、これらの測定点(Pll、Prl、Prr、Plr)は、対応する音のドライブユニットが配置される空間上の位置であることとされる。このようにして測定点を設定していることで、本実施の形態における、左音源Srcl、右音源Srcrから左右の各耳に到達する音の伝達関数としては、耳介に到達する直前までの空間経路に対応するものとされ、耳介の影響が排除されたものとして得られることになる。
なお、左音源Srclから左、右の各耳に到達する主音声成分、副音声成分と、右音源Srcrから右、左の各耳に到達する主音声成分、副音声成分について、図19では、それぞれHll、Hlr、Hrr、Hrlと表記したが、上記図1のようにして、本実施の形態で扱う耳介の影響が排除された伝達関数については、sHll、sHlr、sHrr、sHrlと表記することにする。
次に、図3により、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系の構成例として、上記図1の音響モデルに対応した基本構成を示す。
この図3の構成においては、入力信号として、上記図1の左音源Srclにて発せられる原音に対応した原音声信号Slと、同じ図19の右音源Srcrとして発せられる原音に対応した原音声信号Srとを入力するようにされている。
そのうえで、原音声信号Slについては、左音源Srclから左耳に到達する主音声成分と、右耳に到達する副音声成分とに対応させて2系統に分岐し、主音声成分に対応する系はフィルタ処理、遅延処理を特に施すことなく、ドライブユニットSPu−Lにより再生出力させることで、伝達関数sHllが畳み込まれたのと等価の音声を得るようにされる。ここで、主音声成分に対応する系について、特にフィルタ処理、及び遅延処理を施さないことにより、伝達関数sHllが畳み込まれたのと等価の信号特性が与えられることとしているのは、図20における主音声成分に対応する系の音声信号について、フィルタ処理、及び遅延処理を施していないことと同じ理由によるものである。この点については、後述する、右音源Srcrの主音声成分に対応して原音声信号SrをドライブユニットSPu−Rから出力させる系についても同様とされる。
また、左音源Srclからの副音声成分に対応する系は、フィルタ11−f(L)、遅延器12−f(L)を経由させた上で、ドライブユニットSPu−f(L)により再生出力させるようにする。本実施の形態では、耳介の影響が排除された伝達関数が与えられるものの、1つの音源から左耳側に到達してしかるべき測定点にて測定される音の信号特性と、右耳側に到達して測定点にて測定される音の信号特性との間には、依然として、音の到達角度や到達方向の違いによる周波数特性差、到達時間差が生じるものであり、これが伝達特性の差としても表されるものである。そこで、フィルタ11−f(L)、遅延器12−f(L)によっては、左音源Srclからの主音声成分に対する信号特性差を与えることとして、これにより、伝達関数sHrlが畳み込まれたのと等価の信号特性を得るようにされる。
また、原音声信号Srについても、右音源Srcrから右耳に到達する主音声成分と、左耳に到達する副音声成分とに対応させて2系統に分岐させ、主音声成分に対応する系はフィルタ処理、遅延処理を特に施すことなく、ドライブユニットSPu−Rにより再生出力させ、伝達関数sHrrが畳み込まれたのと等価の音声を得る。
また、右音源Srcrからの副音声成分に対応する系は、フィルタ11−f(R)、遅延器12−f(R)を経由させて、右音源Srcrからの主音声成分に対する信号特性差を与え、ドライブユニットSPu−f(R)により再生出力させる。これにより、伝達関数sHlrlが畳み込まれたのと等価の信号特性による音が再現される。
例えば、先に示した図20によるヘッドフォン再生システムの構成では、ドライブユニットは、左右の出力チャンネルごとに応じて、各1つのみとされおり、2つの音源から左耳に到達して聴こえる音に対応する音声信号と、右耳に到達して聴こえる音に対応する音声信号とを、それぞれ合成したうえで、左右の各出力チャンネルのドライブユニットSPu−L、SPu−Rにより出力させることとしていたものである。
これに対して本実施の形態では、左音源Srclと右音源Srcrの各音源から左耳側、右耳側に到達するとされる音に対応した音声信号を、左右の出力チャンネル(L,R)ごとに合成するのではなく、個々に独立したドライブユニットから出力させるようにしているものである。つまり、本実施の形態では、左音源Srclと右音源Srcrの各音源から左耳側、右耳側に到達するとされる音に対応した音声信号ごとに対応して、出力チャンネル、つまりドライブユニットSPu−Lが設けられるものである。なお、ここでは、ドライブユニットSPu−L、SPu−R、SPu−f(R)、SPu−f(L)ごとに対応して、出力チャンネルL,R,f(R),f(L)として示している。
図4は、上記図3に示した音声信号系の構成に対応したヘッドフォン装置の態様例として、左右の音響ユニットにおけるドライブユニットの配置構造例を模式的に示している。
この図に示されるようにして、先ず、ヘッドフォン装置の左音響ユニット1Lにおいては、ドライブユニットSPu−L、SPu−f(R)が設けられて、左耳により、これらのドライブユニットにて再生される音が聴こえるようにされる。また、右音響ユニット1Rにおいては、ドライブユニットSPu−R、SPu−f(L)が設けられて、右耳により、これらのドライブユニットにて再生される音が聴こえるようにされる。
そのうえで、左音響ユニット1Lにおけるドライブユニットの配置としては、先ず、ドライブユニットSPu−Lを、図2の測定点Pllに対応するとされる位置に対応させて配置させることとしている。この位置は、例えば耳に対して前方にも後方にも偏りが無いとされる基準位置としてみなされる。ドライブユニットSPu−f(R)は、ドライブユニットSPu−Lに対して前方であって、例えば所定の距離差DS1だけ離れた測定点Prlに対応する位置に配置するようにされる。
右用音響ユニット1Rにおけるドライブユニットの配置も、上記左音響ユニット1Lに準じて、ドライブユニットSPu−Rを、図1の測定点Prrに対応するとされる基準となる位置に対応させて配置させたうえで、ドライブユニットSPu−f(L)は、ドライブユニットSPu−Rに対して、距離差DS1だけ前方に離れた測定点Plrに対応する位置に配置する。
上記図3及び図4に示す本実施の形態としてのヘッドフォン再生システムの基本構成では、先ず、左音源Srclについては、左耳にて、ドライブユニットSPu−Lから出力される主音声成分を聴き取り、右耳にて、ドライブユニットSPu−f(L)から出力される副音声成分を聴き取るようにされる。このとき、ドライブユニットSPu−f(L)は、右耳に対して基準的に配置されるドライブユニットSPu−Rより前方に位置していることから、この副音声成分の音は前方から到来するようにして耳に到達することになる。これにより、聴取者は、左音源Srclの音については、左前方に定位するものとして知覚することができる。
同様にして、右音源Srcrについては、右耳にて、ドライブユニットSPu−Rから出力される主音声成分を聴き取り、左耳にて、ドライブユニットSPu−f(R)から出力される副音声成分を聴き取るようにされる。ドライブユニットSPu−f(R)も、左耳側において基準的に配置されるドライブユニットSPu−Lより前方に位置しているので、この副音声成分の音も前方から到来するようにして耳に到達することになり、右音源Srcrの音についても、左前方に定位するものとして知覚できることになる。つまり、左音源Srcl、右音源Srcrの音像定位を知覚することが可能とされる。
そのうえで、聴取者Mの左耳には、出力チャンネルLに対応する左音源Srclからの主音声成分と、出力チャンネルf(R)に対応する右音源Srcrからの副音声成分とが、左音響ユニット1L内の空間で合成されたうえで到達して聴こえることになる。同様にして、聴取者Mの右耳には、出力チャンネルRに対応する右音源Srcrからの主音声成分と、出力チャンネルf(L)に対応する左音源Srclからの副音声成分とが、右音響ユニット1R内の空間で合成されたうえで到達して聴こえることになる。
このようにして本実施の形態のヘッドフォン装置では、音源から各耳に到達するとされる出力チャンネルの音を、それぞれ独立したドライブユニットにより再生した上で、左右の各耳に近い空間で合成するようにしている。このために、例えば、音源から各耳に到達するとされる音に対応する音声信号を電気的に合成してから音声として出力させる場合のように、逆相、同相の信号同士が的確に打ち消し合ったり強め合ったりするような現象も解消される。これにより、より良好な音場感を得ることが可能になる。
また、本実施の形態のようにして、音源から各耳に到達するものとされる出力チャンネルごとの音が空間上で合成されてから耳に到達するようにされているということは、ドライブユニットから発せられた音は、空間上で合成された後に耳介にて反射などしてから鼓膜に到達するものである、ということがいえる。
従って、本実施の形態のようにして、音源から各耳に到達するものとされる出力チャンネルごとの音声信号について耳介の影響を排除した伝達特性(周波数特性、遅延時間差)を与えるようにすれば、この耳介に対応して変化する特性は、実際の聴取者個人の耳介により形成できることになる。このことは、例えば耳介の形状などの個人差によらず、良好な音像定位を感じることが可能になるということを意味している。
このようにして、本実施の形態のヘッドフォン再生システムは、これまでよりも良好とされる音像定位感が、より多くの人にとって得られるようにされているものである。
ところで、図3に示される遅延器12−f(R)、遅延器12−f(L)の遅延時間は、これまでにも述べてきているように、同じ音源位置から一方の耳に主音声成分が到達するまでの距離と、他方の耳に副音声成分が到達するまでの距離とに応じて決まる到達時間差を、副音声成分の音声信号に与えるためのものとされる。例えば図20に示される構成の場合であれば、一方の音源の主音声成分と、他方の音源の副音声成分の音は,音声信号の段階で合成されることから、遅延器によって上記の到達時間差をそのまま与えるようにすることがベストモードとなる。
しかしながら、本実施の形態では、図4に示しているように、例えば左音響ユニット1Lであれば、ドライブユニットSPu−LとドライブユニットSPu−f(R)の配置位置について、物理的な距離DS1が与えられているので、必然的に、この距離DS1に応じて、ドライブユニットSPu−Lから出力される左音源Srclの主音声が左耳に到達する時間に対して、ドライブユニットSPu−f(R)から出力される右音源Srcrの副音声が左耳に到達する時間の遅延が生じることになる。従って、ベストモードの到達時間差を得るようにするためには、左音源Srclから左耳に主音声成分が到達するまでの距離と、右耳に副音声成分が到達するまでの距離とに応じて決まる到達時間差から、上記距離DS1に応じた遅延時間を差し引いた分の時間を、遅延器12−f(R)に設定すべきことになる。
続いて、上記図1〜図4により説明した基本構成に基づいた、マルチチャンネルに対応するヘッドフォン音響再生システムの構成例について説明していくこととする。なお、ここでも、マルチチャンネル構成としては、5.1chサラウンドの規格に例に挙げる。
先ず、図5により、本実施の形態に対応する5.1chサラウンドの音響モデルを示す。
この図に示す音響モデルとしても,例えば図22において示したのと同様に、LFch、Cch、RFch、LSch、RSch、LFEchのそれぞれに応じた音源として、スピーカSP−LF、SP−C、SP−RF、SP−LS、SP−RS、SP−LFEが示されている。また、これらのスピーカの配置も,図22と同様となる。
ただし、本実施の形態では、5.1chサラウンドに対応するヘッドフォン音響再生システムを構成するのにあたり、各チャンネルの音源(スピーカ)から聴取者Mの左右の耳に到達するものとされる各音の伝達関数については、図1によっても説明したように、耳介の影響が排除されたものを用いるようにされる。つまり、左右の耳介の外側近傍において、各音に対応するドライブユニットが位置するとされる空間上の測定点の集合範囲である空間測定範囲P1、P2内にて設定した測定点にて測定される、各音源からの音の伝達関数を用いるものである。
この場合の空間測定範囲P1、P2における測定点の設定例は、図6に示されている。先ず、左耳に対応する空間測定範囲P1においては、スピーカSP−LFから到達する音に対応する測定点Plflを基準に、その前方にSP−Cから到達する音の測定点Pclを設定し、このさらに前方に、スピーカSP−RFから到達する音の測定点Prflを設定する。また、上記基準の測定点Plflの後方に対して、スピーカSP−LSから到達する音の測定点Plslを設定し、さらに後方に対して、スピーカSP−RSから到達する音の測定点Prslを設定している。
また、右耳に対応する空間測定範囲P2においては、スピーカSP−RFから到達する音に対応する測定点Prfrを基準に、その前方にSP−Cから到達する音の測定点Pcrを設定し、このさらに前方に、スピーカSP−LFから到達する音の測定点Plfrを設定する。また、上記基準の測定点Prfrの後方に対して、スピーカSP−RSから到達する音の測定点Prsrを設定し、さらに後方に対して、スピーカSP−RSから到達する音の測定点Plsrを設定している。
そして、ここでは図5に示されるようにして、各音に対応する伝達関数を下記のようにして表すこととしている。
sHlfl:スピーカSP−LFから主音声成分として左耳側(測定点Plfl)に到達する経路の伝達関数
sHlfr:スピーカSP−LFから副音声成分として右耳側(測定点Plfr)に到達する経路の伝達関数
sHcl:スピーカSP−Cから主音声/副音声成分として左耳側(測定点Pcl)に到達する経路の伝達関数
sHcr:スピーカSP−Cから副音声/主音声成分として右耳側(測定点Pcr)に到達する経路の伝達関数
sHrfl:スピーカSP−RFから副音声成分として左耳側(測定点Prfl)に到達する経路の伝達関数
sHrfr:スピーカSP−RFから主音声成分として右耳側(測定点Prfr)に到達する経路の伝達関数
sHlsl:スピーカSP−LSから主音声成分として左耳側(測定点Plsl)に到達する経路の伝達関数
sHlsr:スピーカSP−LSから副音声成分として右耳側(測定点Plsr)に到達する経路の伝達関数
sHrsl:スピーカSP−RSから副音声成分として左耳側(測定点Prsl)に到達する経路の伝達関数
sHrsr:スピーカSP−RSから主音声成分として右耳側(測定点Prsr)に到達する経路の伝達関数
続いて、図7により、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムとして、5.1chサラウンドに対応した信号系の構成例について説明する。
なお、ここでの説明にあたっては、図7において示されるフィルタ11、遅延器12のうちで、破線で示されるものを省略して信号処理系を簡易化した構成を前提として説明する。
先ず、この構成では、5.1chサラウンドを構成する6つのチャンネル(LFch、Cch、RFch、LSch、RSch、LFEch)ごとについて、左耳と右耳とにそれぞれ到達する音成分に対応した12の出力チャンネル(LF、f(LF)、RF、f(RF)、C(L)、C(R)LS、f(LS)、RS、f(RS)、LFE(L)、LFE(R))を設けることとしている。そのうえで、ドライブユニットとしても、これらの出力チャンネルごとに対応して、ドライブユニットSPu−LF、SPu−f(LF)、SPu−RF、SPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−C(R)、SPu−LS、SPu−f(LS)、SPu−RS、SPu−f(RS)、SPu−LFE(L)、SPu−LFE(R)を設けるようにされている。
そのうえで、5.1chサラウンドとしての各チャンネルの音声信号ごとの信号系を下記のようにして形成するようにされる。なお、ここでの説明は、上記した簡易な構成を前提とするので、破線で示されるフィルタ11、遅延器12は省略されているものとして扱う。
先ず、この図7に示す信号系の構成においては、図3に対応する基本構成部分を、LFchとRFchに対応した信号系として備える。つまり、図3と図7とのチャンネルの対応関係として、入力ソース側については、図3の左音源Srcl、右音源Srcrがそれぞれ図7のLFch、RFchに対応し、出力チャンネル側については、図3のL、f(L)、R、f(R)がそれぞれ、LF、f(LF)、RF、f(RF)に対応する。
上記した対応関係に応じて、先ず、LFchの原音声信号は2系統に分岐され、一方の系は、主音声成分として、フィルタ処理、遅延処理が施されることなく、直接的にドライブユニットSPu−LFに入力されるようにしている。この系により、伝達関数sHlflが与えられるものとしている。また、他方の系は、フィルタ11−f(LF)、遅延器12−f(LF)を経由することで、上記主音声成分に対する差分の信号特性が与えられて、上記ドライブユニットSPu−f(LF)に入力されるようになっており、これにより、伝達関数sHlfrが畳み込まれるようにして与えられた音声が再生されるようにする。
また、LFchに対して左右対象となる音源であるRFchの原音声信号も、主音声成分と副音声成分の2系統に分岐され、主音声成分の系は、フィルタ処理、遅延処理が施されることなく、直接的にドライブユニットSPu−RFに入力されるようにして、伝達関数sHrfrが与えられる。また、副音声成分の系は、フィルタ11−f(RF)、遅延器12−f(RF)を経由することで、上記主音声成分に対する差分の信号特性が与えられて、上記ドライブユニットSPu−f(LF)に入力されており、これにより、伝達関数sHrflが与えられた音声が再生されるようにする。
そして、この基本構成部分に対して、下記のようにして、残るLSch、RSch、Cch、LFEchの信号系が備えられることになる。
Lschの原音声信号は、主音声成分についてはフィルタ処理などを介することなく直接的にドライブユニットSPu−LSに入力されており、これにより、伝達関数sHlslが与えられた音声が再生されるようにする。また、副音声成分については、主音声成分に対する信号特性差を与えるためにフィルタ11−f(LS)を経由させてドライブユニットSPu−f(LS)に入力させることで、伝達関数sHlsrが与えられた再生音声を得る。
また、LSchに対して左右対称となるRschの原音声信号は、主音声成分についてはフィルタ処理などを介することなく直接的にドライブユニットSPu−RSに入力されており、これにより、伝達関数sHrsrが与えられた音声が再生されるようにする。また、副音声成分については、主音声成分に対する信号特性差を与えるためにフィルタ11−f(RS)を経由させてドライブユニットSPu−f(RS)に入力させることで、伝達関数sHrslが与えられた再生音声を得る。
また、Cchの原音声信号も、2分岐させることとして、一方の系は、ドライブユニットSPu−C(L)に直接的に入力させ、他方の系はドライブユニットSPu−C(R)に直接的に入力させるようにしている。先に図23により説明したのと同様に、Cchは、聴取者Mの正面前方にて定位する音源であるために、聴取者Mの左右の耳に対応した位置(測定点P1,P2)にて観測される音について、主音声成分と副音声成分とに対応した信号特性差は生じないとされ、各音の伝達関数sHcl、sHcrとしても同等であるとされる。このために、上記のようにして、左右の音響ユニットに対応するドライブユニットSPu−C(R)、SPu−C(L)に対して、同じCchの原音信号を入力させることとしているものである。
また、LFEchの音声については、図23によっても説明したように、指向性が鈍い。そこで、左右の音響ユニットから同じ音が出力されていれば充分であるとの考え方をとることとして、ここでは、LFEchの原音声信号は、2系統に分岐して、各系の信号を、左右の音響ユニットに対応するドライブユニットSPu−LFE(L)、SPu−LFE(R)に対して、直接的に入力させることとしているものである。
ここで、図7に示される12個のドライブユニットの音響再生特性としては、同一とされるものを用いるようにされる。音響ユニット再生特性を同等とすることを前提とすれば、フィルタ11の通過帯域特性を設定しやすくなる。ただし、LFEchに対応するドライブユニットSPu−LFE(L)、SPu−LFE(R)については、他のドライブユニットが再生すべき周波数帯域と比較すると、相当に低い帯域を再生することが要求されることから、このような低域再生に適合するような音響再生特性のものとしてよい。
続いて、上記図7に示した信号系の構成に対応した、ヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置例について、図8〜図10を参照して説明する。
先ず、図8と図9に示すようにして、ヘッドフォン装置の左音響ユニット1Lにおいては、前方から後方にかけて、水平仮想線H上に発音部の中心位置が沿うようにして、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)を配置するようにされる。また、ドライブユニットSPu−LFE(L)については、この場合には、ドライブユニットSPu−C(L)、SPu−LFが配置される位置の下側に配置させるようにしている。
また、ヘッドフォン装置の右音響ユニット1Rにおいては、前方から後方にかけて、水平仮想線H上に発音部の中心位置が沿うようにして、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LF)を配置するようにされる。また、ドライブユニットSPu−LFE(R)については、ドライブユニットSPu−C(R)、SPu−RFが配置される位置の下側に配置させるようにしている。
上記した配置の態様では、先ず、LFEch以外のチャンネルに対応するドライブユニットが、左右の音響ユニットにおいて、同じ水平仮想線H上に沿うようにして配置されている。この配置態様では、5.1chサラウンドとしての各チャンネル音源の位置に対応したものとなっている。
つまり、例えば左音響ユニット1Lの側であれば、LFchの主音声成分に対応するドライブユニットSPu−LFの後方に、LSchの主音声成分に対応するドライブユニットSPu−LSを配置することとしている。また、ドライブユニットSPu−LFの前方に、Cchに対応するドライブユニットSPu−C(L)を配置している。このようにして主音声成分、及び主音成分に相当するチャンネルの音に対応するドライブユニットについては、チャンネル音源の位置に対応して配置されていることが分かる。また、副音声成分に対応するドライブユニットのうち、前方の音源に対応するドライブユニットSPu−f(RF)については、基準位置にあるドライブユニットSPu−LFに対して前方側に配置するようにされ、後方の音源に対応するドライブユニットSPu−f(RS)については、基準位置より後方側に配置するようにされる。
また、右音響ユニット1Rの側においては、左音響ユニット1Lとは左右対称となる位置関係により、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(R)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RF)を配置するようにしており、従って、右音響ユニット1Rの側においても、主音声成分に対応するドライブユニットについては、チャンネル音源の位置に対応して配置され、かつ、副音声成分として前方の音源に対応するドライブユニットSPu−f(LF)については、基準位置より前方側に配置され、後方の音源に対応するドライブユニットSPu−f(LS)は基準位置より後方側に配置されるようになっている。
この場合においては、上記もしているように、左右の音響ユニットにおいて配置されるドライブユニットのうちで、それぞれドライブユニットSPu−LF、SPu−RFの配置位置を基準としている。つまり、ドライブユニットSPu−LF、SPu−RFについては、左右それぞれの耳に出力音声が到達する位置、方向として、前方にも後方にも偏っていないとされる位置が設定される。この位置は、例えば通常のL,Rステレオとしてのヘッドフォン装置を構成することとした場合の、左右のドライブユニットの配置態様と同等になるものとされる。そのうえで、他のドライブユニットについての前後方向における位置関係が設定されているものである。
そのうえで、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−f(LF)が、左右の各音響ユニットにおいて、基準位置より前方にあることで、LFch、RFchとしての音像が前方のしかるべき位置に定位して聴こえることとなるのは、先に図4により説明したとおりである。
また、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−f(RF)が、左右の各音響ユニットにおいて、基準位置より後方にあることによっては、図4の説明に準じて、後方のしかるべき位置にて音像が定位して聴こえることになるものである。
そして、上記したLF,RF,LSch、RSchの音とともに、Cch、LFEchの音が音響ユニット内にて空間的に合成されたうえで、左右の各耳に到達してくることになる。この結果、聴取者には、例えば図5に示したチャンネル構成に応じた音源位置による音像定位が明確に感じられることになる。
さらに、図8によれば、各音響ユニットにおいて、仮想線H上に沿って配置されるLFEch以外に対応する5つのドライブユニット([SPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RF)][ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RF)]については、それぞれ、前後方向において平面的に配置されるのではなく、耳を囲む曲面に沿うようにして角度が与えられている。これにより、例えばドライブユニットの配置位置関係が、5.1chサラウンドのチャンネル構成における音源位置により近づくようにされ、その音像定位感がより明確になるようにされている。
なお、上記のようにして、曲面的にドライブユニットを配置していく場合における取り付け角度などについては、実際に得られる音像定位感などを検証して設定してよい。
ところで、この図9のようにして、ドライブユニットを聴取者の前後方向に沿って配置することによっては、次のような作用も得られる。
例えば左音響ユニット1Lにおける、RFchの副音声成分に対応するドライブユニットSPu−f(RF)と、LFchの主音声成分に対応するドライブユニットSPu−LFとの位置関係に着目してみると、左耳に対しては、ドライブユニットSPu−LFに対してドライブユニットSPu−f(RF)のほうが遠い位置に在ることになる。
このことは、例えば、先に図4にて説明した距離DS1が、ドライブユニットSPu−LFに対するドライブユニットSPu−f(RF)との間に存在する、ということを意味する。従って、ドライブユニットSPu−LFから左耳に音が到達する時間よりも、ドライブユニットSPu−f(RF)から左耳に音が到達する時間のほうが長くなるという時間差を生じる。ドライブユニットSPu−LFと、これと左右対称のドライブユニットSPu−RFとについての耳までの音の到達時間は同等である。副音声成分の信号特性としては、主音声成分に対する到達時間差を与えることが必要であるが、上記したことからすると、この到達時間差を、ドライブユニットSPu−f(RF)とドライブユニットSPu−Lとの位置関係により、稼ぐことができていることになる。これにより、後述もするようにして、本実施の形態としては、ドライブユニットSPu−f(RF)により音声を出力させる系における遅延器の省略が可能となり、簡易な信号処理系の構成を実現できるものである。
このことと同様の理由によって、右音響ユニット1RにおけるドライブユニットSPu−f(LF)も、ドライブユニットSPu−f(RF)と同じ位置関係により配置されている。また、左音響ユニット1LにおけるドライブユニットSPu−f(RS)も、ドライブユニットSPu−LSよりも後方に配置され、同様にして、右音響ユニット1RにおけるドライブユニットSPu−f(LS)も、ドライブユニットSPu−RSよりも後方に配置される。
なお、先に図6に示した空間測定範囲P1、P2における測定点は、上記図8及び図9に示される、ドライブユニットの空間的な配置位置に対応して設定されているものとされる。つまり、左耳に対応する空間測定範囲P1内の測定点Prfl、Pcl、Plfl、Plsl、Prslは、それぞれ、左音響ユニット1LにおけるドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)の配置位置との対応を考慮して設定されるべきものとなる。同様にして、右耳に対応する空間測定範囲P2内の測定点Plfr、Pcr、Prfr、Prsr、Plsrは、それぞれ、右音響ユニット1RにおけるドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の配置位置との対応を考慮して設定されるべきものとなる。
また、図10により、音響ユニット内におけるドライブユニットの配置態様の変形例を示す。なお、この図において図9と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図10においては、先ず、左音響ユニット1Lにおいて備えられるLFEch以外のチャンネルに対応する5つのドライブユニットのうちで、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LFについては、図9と同様の仮想水平線H上に沿って配置させているのに対して、ドライブユニットSPu−LS、SPu−f(RS)については、仮想水平線Hよりも所定だけ高い位置に設定された仮想水平線Hu上に沿うようにして配置させている。同様にして、右音響ユニット1Rにおいても、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RFについては仮想水平線H上に沿って配置させ、ドライブユニットSPu−RS、SPu−f(LS)については、仮想水平線Hu上に沿うようにして配置させている。
つまり、5.1chサラウンドのチャンネル構成においては、聴取位置に対して位置するとされるLSch、RSchを音源とする主音声成分、副音声成分に対応するドライブユニットを、他のチャンネルのドライブユニットよりも高い位置となるように設定しているものである。
例えば、実際の5.1chサラウンドなどのマルチチャンネル構成に対応したスピーカシステムにより音響再生を行う場合においては、聴取位置よりも後ろの位置に配置されるチャンネルのスピーカを、聴取位置に対して前方となる位置に配置されるチャンネルのスピーカよりも若干高い位置に設置すると、良好な音像定位感の得られることが経験的に知られている。上記図10に示したドライブユニットの配置例は、このことを応用したものであり、これにより、本実施の形態のヘッドフォン装置としても、より良好な音場を得ることが可能となるものである。
なお、この図10に示すようにして、ドライブユニットの配置位置を高さ方向に変更した場合には、空間測定範囲P1、P2内の各測定点についての高さ方向の位置が変更設定されるべきことになる。
ところで、先に述べたように、先の図7についての説明は、破線により示したフィルタ11、遅延器12などが省略されているものとした、簡易化した構成であることを前提としてはいるが、図7に示される信号系においては、LFch、RFch、LSch、RSchにおける副音声の系について、主音声との周波数特性差を与えるためのフィルタ11が省略されることなく備えられている。このフィルタ11については、例えばデジタルフィルタにより構成することができるが、信号処理系についてできるだけ簡易化、低コスト化が図られるようにすることを考慮した場合には、フィルタ11としてアナログのフィルタを用いることも考えられる。
図11は、アナログ回路によるフィルタ11の構成例を示している。
この図に示おいては、先ず、信号が入力される初段においてインダクタL1が直列に挿入されており、このインダクタL1の後段に対して、順次、フィルタ部11a、11b、11cが接続されて成るものとしている。フィルタ部11aは、インダクタL2、抵抗R2、コンデンサC2から成る直列回路と、インダクタL3、抵抗R3、コンデンサC3から成る並列回路を図示するようにして接続して形成される。また、フィルタ部11bは、インダクタL4、抵抗R4、コンデンサC4から成る直列回路と、インダクタL5、抵抗R5、コンデンサC5から成る並列回路を図示するようにして接続して形成される。また、フィルタ部11cは、インダクタL6及び抵抗R6から成る並列回路と、抵抗R7、コンデンサC7から成る直列回路とを、図示するようにして接続して成る。
図12は、主音声の周波数特性を基準のフラットな特性であるとして設定した場合における、副音声の周波数特性の例を示すものである。この副音声の周波数特性は、特性部分Aとして示すようにして、先ずは、低域から高域となっていくのに応じて緩やかに電圧(振幅)が低下していき、次いで、特性部分B,Cとして示すように、中域における2つの或る周波数のポイントで、ディップが生じるものとなる。これより高い帯域では、特性部分Dとして示すように、緩やかに電圧が低下していく。
図11のフィルタ11は、主音声成分に対応した特性の音声信号(原音声信号)を入力して、図12に示す信号特性を与えるためのものとされ、インダクタL1により、特性部分Dの特性を与え、フィルタ部11aにより特性部分Bの特性を与え、フィルタ部11bにより特性部分Cの特性を与え、フィルタ部11cにより特性部分Aの特性を与えるようにするものである。
なお、図11に示される、アナログ回路としてのフィルタ11の構成例はあくまでも一例であり、例えば図12に示すような特性が実用上許容される範囲で得られるようにされるのであれば、他の回路構成が採られてかまわないものである。
また、例えば図3に示した基本構成の下では、副音声成分の系に対しては、フィルタ11とともに、遅延器12が備えられている。前述のように、遅延器12によっては、音源から一方の耳に主音声成分が到達するまでの時間に対する、他方の耳に副音声成分が到達するまでの時間の差を作り出すためのものとされる。しかしながら、図7に示される簡易信号処理系としての構成では、LFch、RFch、LSch、RSchの各副音声の系について、この遅延器12が省略された形態が示されている。つまり、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムでは、下記のようにして、副音声成分を出力する系そのものにより相応の遅延時間を得るようにされており、このために遅延器を省略可能としている。
先ず、副音声成分を出力すべき系においては、上記のようにして、主音声成分に対する周波数特性差を与えるためのフィルタ11が備えられる。一般的なこととして、信号がフィルタを通過することによっては、入力信号に対する位相差が生じる。この位相差は、信号の遅延としてみることができる。
また、副音声を出力すべきドライブユニットは、図4、図8などにより示したように、音響ユニットにおいて、基準となるチャンネルのドライブユニット(SPu−L、SPu−R)(SPu−LR、SPu−RF)に対して、或る一定の距離(DS1)を隔てるようにして配置され、これにより、耳に到達するまでの時間の遅延が得られるようにもされている。
このようにして、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムにおいては、副音声成分の音声信号が音として耳に到達するまでの経路において、相応の遅延時間が与えられている。そこで、このようにして得られる遅延時間が、実際に遅延器12により設定すべき遅延時間に対して許容範囲内の誤差に収まるようであれば、その系における遅延器12を省略することが可能となるわけである。
また、5.1chサラウンドに対応したヘッドフォン音響再生システムを構成する場合においては、厳密には、先に図23にても説明したように、例えばLFch、RFchを基準にしたとすると、この基準のチャンネルに対する、他のチャンネル(Cch、LSch、RSch)の音の信号特性差を与えて、しかるべき伝達関数が畳み込まれた音を得ることが必要である。
しかしながら、図7の構成では、Cch、LSch、RSchについては、主音声成分に対するフィルタは省略されている。つまり、LFch、RFchの音に対する信号特性差を与えるフィルタが省略されているものである。
これも、本実施の形態では、音響ユニットにおいて、各出力チャンネルに応じたドライブユニットが個別に配置されていることによるものである。つまり、本実施の形態では、先に図8により説明したようにして、例えば5.1chサラウンドを形成する各チャンネルの音源位置に対応させて、ドライブユニットを配列することとしており、このことが、良好な音像定位が得られることの主要な要因となっている。つまり、音響ユニット内におけるドライブユニットの配置位置関係によって、例えばLFch、RFchの音に対する信号特性差を与えることと等価の作用が得られているものである。図7との場合であれば、破線により示している、Cch、LSch、RSchのフィルタ11−C、11−LS、11−RSを挿入しているのと等価の構成が得られている、ということになる。
なお、図7においては、Cchの系についても、破線で示すようにして、遅延器12−Cを省略した形態が示されている。Cchの系は、左右の耳に到達する音の間での信号特性差は存在しないものとして扱うことができるが、例えば基準となるLFch、RFchの主音声成分に対する信号特性差として、その遅延時間差も含まれることになる。遅延器12−Cは、本来、この遅延時間差を正確に発生させるためのものであるが、この遅延器12−Cが省略可能とされているのは、上記したドライブユニットの配置位置によるものである。つまり、左右のCchに対応するドライブユニットSPu−C(L)、SPu−C(R)は、それぞれ、スピーカユニットSPu−L、SPu−Rの位置を基準として、その前方に対して一定の距離を隔てて配置されており、これにより、各耳への音の到達時間についての遅延が得られることになる。そこで、このようなドライブユニットの配置位置による音の到達時間の遅延を利用すれば、遅延器12−Cを省略したとしても、これを備えたことと等価の信号特性が得えられるようにされるものである。
このようにして、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムとしては、出力チャンネルごとに対応する信号系において、フィルタ、遅延器を省略し、また、フィルタにはアナログの回路を採用するなどして、その構成についての簡易化を図ることができる。これにより、例えば大幅な低コスト化が図られることが期待される。
続いては、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムについての簡易化策として、音響ユニット内のドライブユニットの数を削減することとした、ドライブユニット削減型のヘッドフォン音響再生システムの構成例について、図13〜図16を参照して説明する。
先ず、図13においては、ドライブユニット削減型のヘッドフォン音響再生システムとしての信号系の構成例を示している。なお、この図において、図7と同一部分については、同一符号を付して説明を省略する。
この図に示す信号系としては、合成器13a、13b、13c、13dが設けられている。
先ず、合成器13aによっては、RFchの副音声成分に対応する伝達関数sHrflが畳み込まれるべき音声信号と、左耳に到達するCchの音に対応する伝達関数sHclが畳み込まれるべき音声信号とを合成するようにされる。そして、この合成器13aの出力を、出力チャンネルf(RF)+Cの音声信号として、左音響ユニット1Lに設けられるドライブユニットSPu−f(RF)Cに入力させることとしている。
また、合成器13bによっては、LFchの副音声成分に対応する伝達関数sHlfrが畳み込まれるべき音声信号と、右耳に到達するCchの音に対応する伝達関数sHcrが畳み込まれるべき音声信号とを合成し、出力チャンネルf(LF)+Cの音声信号として、右音響ユニット1Rに設けられるドライブユニットSPu−f(LF)Cに入力させることとしている。
また、合成器13cによっては、RSchの副音声成分に対応する、伝達関数sHrslが畳み込まれるべき音声信号と、左音響ユニット1Lから出力させるべきLFEchの音声信号とを合成し、出力チャンネルf(RS)+LFEの音声信号として、左音響ユニット1Lに設けられるドライブユニットSPu−f(RS)LFEに入力させることとしている。
また、合成器13dによっては、LSchの副音声成分に対応する、伝達関数sHlsrが畳み込まれるべき音声信号と、右音響ユニット1Rから出力させるべきLFEchの音声信号とを合成し、出力チャンネルf(LS)+LFEの音声信号として、右音響ユニット1Rに設けられるドライブユニットSPu−f(LS)LFEに入力させることとしている。
つまり、本実施の形態では、本来は左右の音響ユニットごとに応じて6つずつとされて、12在るべき出力チャンネルのうちで、f(RF)及びC(L)、f(LF)及びC(R)、f(RS)及びLFE(L)、f(LS)及びLFE(R)の組を、音声信号段階で合成して、共通のドライブユニットから出力させようとするものである。これにより、同じ図13から分かるように、左音響ユニット1L及び右音響ユニット1Rにおいて備えられるドライブユニットとしては、各4つとなるものである。つまり、図7との比較では、ドライブユニットの数は、左音響ユニット1Lと右音響ユニット1Rにおいて、それぞれ2つずつ削減されており、総計としては、12から8に削減されているものである。
また、上記図13に示す構成に対応した、音響ユニットにおけるドライブユニットの配置例を図14及び図15に示す。
これらの図に示すようにして、先ず、左音響ユニット1Lにおいては、水平仮想線H上に発音部の中心位置が沿うようにして、前方から後方にかけて、ドライブユニットSPu−f(RF)C、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)LFEを配置するようにされる。
また、右音響ユニット1Rにおいても、水平仮想線H上に発音部の中心位置が沿うようにして、前方から後方にかけて、ドライブユニットSPu−f(LF)C、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)LFEを配置するようにされる。このとき、左側のドライブユニットSPu−f(RF)C、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)LFEと、右側のドライブユニットSPu−f(LF)C、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)LFEが、それぞれ、左右で対称となる位置関係となるようにされている。
ここで、ドライブユニットSPu−f(RF)C、ドライブユニットSPu−f(LF)Cから出力されるべき各チャンネルの音の成分の音源位置は、何れも聴取者の前方にあるべきものとされている。そして、上記ドライブユニットSPu−f(RF)C、ドライブユニットSPu−f(LF)Cは、それぞれ、左音響ユニット1L、右音響ユニット1Rにおいて、耳に対して前方に対して位置するようにされており、音源からの音の到来方向に対応するようになっている。これにより、ドライブユニットSPu−f(RF)C、ドライブユニットSPu−f(LF)Cから出力される音声成分を含む、LFch、RFch、Cchの各チャンネルの音については、適正とされる音像定位が得られるようにされる。
また、他方のドライブユニットSPu−f(RS)LFE、SPu−f(LS)LFEについては、それぞれ耳の後方側に配置されるようになっていることで、これらのドライブユニットSPu−f(RS)LFE、SPu−f(LS)LFEから出力されるRSchの副音声とLSchの副音声もまた、RSch、LSchの音源位置からの音の到来方向と対応されていることになる。従って、RSch、LSchの音についても、適正な音像定位感が得られることになる。なお、LFEchの音については、これまでにも説明したように、その周波数特性上、音像定位感については考慮する必要性がない。
ところで、先にも述べたように、マルチチャンネル構成において、異なるチャンネルの音声成分を音声信号の段階で合成した場合には、空間で合成される場合と異なって、位相の干渉などが音像定位を損なうことにつながりやすいという問題がある。このことからすると、上記したヘッドフォンユニット削減型のヘッドフォン音響再生システムとしても、その構成上、上記の問題を含むことになる。
しかしながら、上記ヘッドフォンユニット削減型のヘッドフォン音響再生システムの構成では、例えば5.1chサラウンドとしてのマルチチャンネル構成において、波形や周波数帯域などの特性に関しての音声信号の相関性ができるだけ低いとされるチャンネルの音声信号を合成することで、上記した問題を回避しているものである。
つまり、上記の構成では、先ず、RFchの副音声成分(f(RF))とCchの音声、あるいはLSchの副音声成分(f(LF))とCchの音声を合成することとしている。例えば、実際の5.1chサラウンドの音声ソースなどによると、Cchが、画面中央に位置している人物などの声を再生しているとすると、LFch若しくはRFchでは、その周囲の人の声、物音などを再生するなどのようにして、LFch若しくはRFchと、Cchとは、その再生内容が異なっている場合が多い。つまり、音声信号としてみた場合には、LFch、RFchとCchとの波形についての相関性が低いということが一般的にいえる。
また、LFEchの音は、他のチャンネルの音と比較して非常に低域に集中することから、例えばLSch、RSchの副音声などと対照させても、周波数帯域についての相関性は非常に低い。
このようにして、信号特性的に相関性の低い音声信号を合成することで、位相の干渉は生じる可能性は低くなるものであり、これに伴って、音像定位感が損なわれるような現象も生じる可能性が低くなる。つまり、聴取者としては、良好な音像定位が維持された状態の音を聴くことができるものである。
また、上記ドライブユニット削減型のヘッドフォン音響再生システムについての、音響ユニット内のドライブユニットの配置に関する変形例を図16に示しておく。
この図に示すドライブユニットの配置は、先に図10に示した配置例を、ドライブユニット削減型とされたヘッドフォン装置に適用したものである。つまり、図示するようにして、先ず、左音響ユニット1Lにおいて備えられるドライブユニットのうちで、ドライブユニットSPu−f(RF)C、SPu−−LFについては、図15と同じく仮想水平線H上に沿って配置させるのに対して、聴取者の後方の音源位置となるチャンネルに対応する音成分を出力するドライブユニットSPu−LS、SPu−f(RS)LFEについては、仮想水平線Hよりも所定だけ高い位置に設定された仮想水平線Hu上に沿うようにして配置させるものである。同様にして、右音響ユニット1Rにおいても、ドライブユニットSPu−f(LF)、C(R)、SPu−RFについては仮想水平線H上に沿って配置させ、ドライブユニットSPu−RS、SPu−f(LS)LFEについては、仮想水平線Hu上に沿うようにして配置させるものである。このような配置とすることで、図10にて説明したように、より良好な音場感が得られることになるものである。
なお、このドライブユニット削減型の構成に対応する空間測定範囲P1、P2内の測定点の設定も、上記図14に示される平面方向から見たドライブユニットの配置態様と、図15(又は図16)に示される側面方向から見たドライブユニットの配置態様とに応じたものとなるようにされる。この場合、同じ1つのドライブユニットから合成出力される複数の音声成分に対応する測定点については、しかるべき同じ位置が設定されることになる。
また、これまでにおいては、図7の信号系の構成を簡易化するための構成について説明したが、本願においては、その逆に、非常に忠実な音場が再現されるようにすることを目的として信号系を構成することも妨げられるものではない。
この場合には、例えば、図7において破線により示されているフィルタ11、遅延器12を実際に設けることとして、しかるべき通過帯域特性、遅延時間を設定し、主音声成分と副音声成分間の厳密な信号特性差が与えられるように、つまり、相応に正確な伝達関数が畳み込まれるようにして信号系を構成するようにされる。このときには、例えばフィルタ11についてもデジタルフィルタを用いることとすれば、精度が高くなる。
また、図7においては、基準となるLFch、RFchの主音声成分の信号系には、フィルタ、遅延器を設けていない。これも先に説明したように、LFch、RFchについては、例えばヘッドフォン装置が本来持つとされる音響特性を利用して、必要とされる信号特性を簡易に得ようとしているものである。しかしながら、厳密には、例えば図5にも示されているように、LFch、RFchの主音声成分についても、その音源位置に応じた伝達関数が存在するものであり、本来はこの伝達関数が忠実に畳み込まれることで、その音源の定位感が良好になる。このことからすれば、LFch、RFchの主音声成分の信号系についても、フィルタ(及び遅延器)を備えてしかるべき信号特性が得られるようにしてよいものである。この場合、LSch、RFchの主音声成分以外の他の出力チャンネルに対応する音については、上記のようにしてフィルタ(及び遅延器)を経由することで与えられることとなるLFch、RFchの主音声成分の信号特性を基準として、その信号特性差が得られるようにすればよいことになる。
ここで、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムとしては、実際に聴取者が頭部に装着して使用するヘッドフォン装置と、例えば図7、図13などに示される信号系に対応する信号処理回路部とを備えて構成されるべきものとなる。このヘッドフォン装置と信号処理回路部とについての実際の構成の組み合わせとしては、例えば1つには、ヘッドフォン装置と、信号処理回路部を備える信号処理装置部とを別体としたシステム構成とすることが考えられる。この場合、信号処理装置部からヘッドフォン装置に対する音声信号の伝送は、例えば、有線により行われるようにしてもよいし、赤外線、電波などによる所定の無線送受信方式を採用して無線により行われるようにしてもよい。
また、もう1つの構成としては、ヘッドフォン装置本体を構成する音響ユニットやヘッドバンド部などの所定部位に対して、信号処理回路部を内蔵させて一体化する構成も考えられる。
ところで、ヘッドフォン装置単体として、マルチチャンネルに対応して独立したドライブユニットを音響ユニットに備えた構成のものが既に知られている。このヘッドフォン装置の構成を図24,及び図25により示す。このヘッドフォン装置も、音声ソースとしては、5.1chサラウンドに対応しようとするものである。
これらの図に示すヘッドフォン装置は、先ず、図24に示されるように、左音響ユニット1Lにおいて、前方の位置にLFchに対応するドライブユニットSPu−LFを配置し、この後方上側の位置にCchに対応するドライブユニットSPu−Cを配置し、さらに、この後方下側の位置にLSchに対応するドライブユニットSPu−LSを配置し、下側に対してLFEchに対応するドライブユニットSPu−LFEを配置している。
また、右音響ユニット1Rにおいては、前方の位置にRFchに対応するドライブユニットSPu−RFを配置し、この後方上側の位置にCchに対応するドライブユニットSPu−Cを配置し、さらに、この後方下側の位置にLSchに対応するドライブユニットSPu−RSを配置し、下側に対してLFEchに対応するドライブユニットSPu−LFEを配置している。
そのうえで、図25に示すようにして、ドライブユニットSPu−LF、SPu−RFに対しては、それぞれLFch、RFchの音声信号を直接的に入力させ、左右のドライブユニットSPu−Cには、同じCchの音声信号を分岐させたものを直接的に入力させ、ドライブユニットSPu−LS、SPu−RSに対しては、それぞれ、LSch、RSchの音声信号を直接的に入力させることとしている。また、左右のドライブユニットSPu−LFEに対しては、LFEchの音声信号を直接的に入力しているものである。
つまり、図24、図25に示されるヘッドフォン装置では、さしあたり、5.1chサラウンドのチャンネルの音源位置に応じて、LFch、LSchと、RFch、RSchとについては、左音響ユニットと右音響ユニットに振り分けてドライブユニットを設けることとしたうえで、Cchについては、頭部中央に定位させる必要性から左右の音響ユニットにドライブユニットを設け、LFEchについても、偏った定位感が生じないようにするために左右の音響ユニットにドライブユニットを設けるものである。そのうえで、各ドライブユニットに対しては、例えば5.1chサラウンドの音声ソースを成す各チャンネルの音声信号を、特にフィルタ処理や遅延処理を施すことなく、直接的に入力させるようにしている。
このような構成の場合、5.1chサラウンドを成す各チャンネルの音声が、それぞれ独立した異なるドライブユニットから出力されることにはなる。しかしながら、各ドライブユニットからは、対応するチャンネルの原音声信号の音が発せられるのみであって、本実施の形態のようにして、1チャンネルごとについてしかるべき信号特性の関係が与えられた主音声と副音声の成分とが両耳で聴きとることができるようにはなっていない。また、定位感を与えるべきLFEch以外に対応するドライブユニットについての前後方向に沿った配列をみても、例えば図24においてドライブユニットSPu−LFの位置を基準として設定した仮想線Hに対する他のドライブユニットの配置は特に規則性が見られず適当なものとなっている。このようなことから、図24,図25のヘッドフォン装置では、各チャンネルの音を或る程度明確に聞き分けることはできるものの、本実施の形態のようにして、5.1chサラウンドとしてのしかるべき音像定位感を得ることは非常に困難である、ということがいえる。
ここで、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムとしては、実際に聴取者が頭部に装着して使用するヘッドフォン装置と、例えば図7、図13などに示される信号系に対応する信号処理回路部とを備えて構成されるべきものとなる。このヘッドフォン装置と信号処理回路部とについての実際の構成の組み合わせとしては、例えば1つには、ヘッドフォン装置と、信号処理回路部を備える信号処理装置部とを別体としたシステム構成とすることが考えられる。この場合、信号処理装置部からヘッドフォン装置に対する音声信号の伝送は、例えば、有線により行われるようにしてもよいし、赤外線、電波などによる所定の無線送受信方式を採用して無線により行われるようにしてもよい。
また、もう1つの構成としては、ヘッドフォン装置本体を構成するとされる所定の部位に対して、信号処理回路部を内蔵させて一体化する構成も考えられる。
なお、本願発明としては、これまでに説明した実施の形態としての構成に限定されるべきものではない。
先ず、音響ユニットに対して備えるべきドライブユニットの物理的な配置の態様については、これまでに図示したものや、これまでに説明したバリエーション以外にも考えられるものである。
また、実施の形態としては、5.1chサラウンドに対応する構成を例に挙げているが、例えば7.1chサラウンドなど、他の方式のマルチチャンネル構成にも適用が可能とされる。
本願発明の実施の形態としてのヘッドフォン音響再生システムに対応する基本の音響モデルを示す図である。 図1の音響モデルにおける各音源の音成分に対応する測定位置の設定例を示す図である。 図1に対応するヘッドフォン音響再生システムについての音声信号処理系の構成例を示す図である。 図3の構成に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を示す図である。 実施の形態のヘッドフォン音響再生システムに対応する5.1chサラウンドの音響モデルを示す図である。 図5の音響モデルにおける各音源の音成分に対応する測定位置の設定例を示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系の構成例を示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を、平面方向より模式的に示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を、側面方向より模式的に示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン装置におけるドライブユニットについての他の配置態様例を、側面方向より模式的に示す図である。 実施の形態のヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系において備えられるフィルタの構成例を示す回路図である。 図11に示すフィルタの特性例を示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系として、ドライブユニット削減型の構成例を示す図である。 図13に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を、平面方向より模式的に示す図である。 図13に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を、側面方向より模式的に示す図である。 図13に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットについての他の配置態様例を、側面方向より模式的に示す図である。 一音源を聴き取る場合の音響モデル例を示す図である。 図17の音響モデルにおける主音声成分と副音声成分の信号特性差を示す図である。 二音源を聴き取る場合の音響モデル例を示す図である。 図19に示す音響モデルに対応したヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系の構成例を示す図である。 図20に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を、平面方向より模式的に示す図である。 5.1chサラウンドの一般的な音響モデルを示す図である。 図22に示す音響モデルに対応したヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系の構成例を示す図である。 マルチチャンネル構成に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を平面方向より示す図である。 マルチチャンネル構成に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を側面方向より示す図である。
符号の説明
1L 左音響ユニット、1R 右音響ユニット、11(11−LS、11−RS、11−f(RS)、11−f(LS)、11−C、11−f(LF)、11−f(RF)) フィルタ、12(12−(RF)、12−f(RS)、12−(LF)、12−f(LS)) 遅延器、SPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)、SPu−LFE(L)、SPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)、SPu−LFE(R)、SPu−f(RS)LFE(L)、SPu−f(LS)LFE(L)、SPu−f(RF)C、SPu−f(LF)C ドライブユニット

Claims (6)

  1. 左右の耳に対応して対となるドライブユニットの組を、所定のチャンネル構成を成す複数のチャンネルごとに対応して複数組備え、
    上記ドライブユニットの組の少なくとも1つは、
    対応するチャンネルの仮想音源位置から一方の耳に対応した位置に到達するとされる主音声成分に対応した主音声信号を入力して再生出力するようにされて、この再生出力された音声が上記一方の耳により聴き取られるようにして設けられる主音声対応片側ドライブユニットと、
    上記対応するチャンネルの仮想音源位置から他方の耳に対応した位置に到達するとされる副音声成分に対応した副音声信号を入力して再生出力するようにされて、再生出力された音声が上記他方の耳により聴き取られるようにして設けられる副音声対応片側ドライブユニットとから成るとともに、
    主音声成分に対する副音声成分の所定特性の差分に応じた信号特性を上記主音声信号に対して与えることにより上記副音声信号を得る副音声用信号特性付与手段を備える、
    ことを特徴とするヘッドフォン音響再生システム。
  2. 上記副音声用信号特性付与手段は、
    上記主音声成分に対する上記副音声成分の所定特性の差分に応じた信号特性を上記副音声信号に与えるために、上記主音声成分と上記副音声成分についての、耳介の影響を排除して得られる頭部伝達関数に基づいて得られる所定特性を利用するようにされている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドフォン音響再生システム。
  3. 上記所定のチャンネル構成を成すチャンネルごとに応じて、左耳により聴き取られるようにして設けられる左耳側ドライブユニット群を成す所定チャンネルごとの主音声対応片側ドライブユニット及び/又は副音声対応片側ドライブユニットと、
    右耳により聴き取られるようにして設けられる右耳側ドライブユニット群を成す所定チャンネルごとの主音声対応片側ドライブユニット及び/又は副音声対応片側ドライブユニットは、
    それぞれ、対応するチャンネルごとの仮想音源位置についての、聴取位置を基準とした位置関係に応じて、前後方向に沿った所定の位置関係により配置されるようにして設けられる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドフォン音響再生システム。
  4. 左耳側ドライブユニット群と右耳側ドライブユニット群の少なくとも一方において、
    上記所定のチャンネル構成を成すチャンネルのうちで、その仮想音源位置が聴取位置に対して後となるチャンネルに対応する音声を再生出力すべきドライブユニットについては、他のチャンネルに対応する音声を再生出力すべきドライブユニットよりも高い位置となるようにして配置するようにされる、
    ことを特徴とする請求項3に記載のヘッドフォン音響再生システム。
  5. 上記所定のチャンネル構成を成すチャンネルのうちで、所定の条件を満たすとされる複数のチャンネルに対応して1つのドライブユニットの組を共通となるように設けることとして、
    この複数のチャンネルに対応するドライブユニットの組を成す、左耳側と右耳側のドライブユニットは、それぞれ、上記複数のチャンネルに対応して出力させるべき主音声成分及び/又は副音声成分を合成して得られる音声信号を入力するようにされる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドフォン音響再生システム。
  6. 左右の耳に対応して対となるドライブユニットの組を、所定のチャンネル構成を成す複数のチャンネルごとに対応して複数組備え、
    上記ドライブユニットの組の少なくとも1つは、
    対応するチャンネルの仮想音源位置から一方の耳に対応した位置に到達するとされる主音声成分に対応した主音声信号を入力して再生出力するようにされて、この再生出力された音声が上記一方の耳により聴き取られるようにして設けられる主音声対応片側ドライブユニットと、
    上記対応するチャンネルの仮想音源位置から他方の耳に対応した位置に到達するとされる、上記主音声成分に対する所定特性についての差分に応じた副音声成分としての信号特性を与えるための信号処理を上記主音声信号に対して実行することで得られる副音声信号を入力して再生出力するようにされて、再生出力された音声が上記他方の耳により聴き取られるようにして設けられる副音声対応片側ドライブユニットとから成る、
    ことを特徴とするヘッドフォン装置。
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