ところで、上記図8に示すような構成の圧縮機(100)では、上記外側及び内側シリンダ室(160,165)の容積を変化させて圧縮するため、定常運転時には圧縮機構(130)内に高圧の部分と低圧の部分とが存在し、該圧縮機構(130)全体で平均すると、高圧状態になっている圧縮機構(130)周囲よりも圧力は低くなる。すなわち、上述のとおり、ケーシング(110)内が高圧状態になる高圧ドーム型の圧縮機などの場合には、圧縮機構(130)の周囲の圧力が高圧であるため、該圧縮機構(130)内部の圧力との間に圧力差が生じ、この圧力差によってシリンダ鏡板(136)やピストン鏡板(141)が互いに近づく方向に変形を生じる。
特に、回転体であるピストン(140)の鏡板(141)は、固定部材であるシリンダ(135)に比べて肉厚が薄く且つ中央部分を駆動軸(125)によって支持されているだけなので、全体的に剛性が低く、上述のような圧力差によって変形を生じやすい。そのため、上述のように、上記ピストン(140)の背面側に、圧縮機構(130)内部よりも大きな圧力が作用すると、その圧力差によって該ピストン(140)は上記シリンダ(135)側に変形し、該ピストン(140)とシリンダ(135)との間隔が静止時よりも小さくなる。
そうすると、上記ピストン(140)の環状ピストン部(143)に設けられた揺動ブッシュ(156)は、該ピストン(140)とシリンダ(135)との間に挟み込まれた状態になり、該ピストン(140)やシリンダ(135)と接触して摩耗や焼き付きが発生したり摩擦損失が増大したりして圧縮機の信頼性や効率を大きく低下させることになる。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、環状のシリンダ室内に環状ピストン部が配置され、シリンダとピストンとが相対的に偏心回転可能に構成された回転式流体機械において、該シリンダやピストンが圧力変形を生じた場合でも、該揺動ブッシュの摩耗や焼き付きの発生及び摩擦損失の増大を防止して、信頼性向上及び効率向上を図ることにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る回転式流体機械(1)では、シリンダ(35)及びピストン(40)の少なくとも一方の鏡板背面側に環状空間(60,65)よりも高い圧力が作用する構成において、環状ピストン部(43)に形成された収納空間(44)に対し、軸線方向に所定の隙間(δ,δ1,δ2,δ',δ1',δ2')が形成されるように揺動部材(56,76,86,96)を配設した。
具体的に、第1の発明は、同心に配置されて環状の空間(60,65)を形成する外シリンダ部(38)及び内シリンダ部(52)と、該外シリンダ部(38)及び内シリンダ部(52)の軸線方向一端側に設けられたシリンダ鏡板(36)と、を有するシリンダ(35)と、上記シリンダ(35)に対して偏心した状態で上記環状空間(60,65)内に収納され、該環状空間(60,65)を外側室(60)と内側室(65)とに区画する環状ピストン部(43)と、該環状ピストン部(43)の軸線方向他端側に設けられたピストン鏡板(41)と、を有するピストン(40)と、上記環状ピストン部(43)に対して径方向に延びて該環状ピストン部(43)を貫通し、上記外側室(60)及び内側室(65)をそれぞれ第1室(61,66)と第2室(62,67)とに区画するブレード(45)と、上記環状ピストン部(43)のブレード貫通部分に形成された収容空間(44,84)内に配設され、上記ブレード(45)に対して摺接しつつ該ブレード(45)と上記環状ピストン部(43)とを相対的に揺動可能にする揺動部材(56,76,86,96)と、を備え、上記シリンダ(35)と上記ピストン(40)とが相対的に偏心回転するように構成された回転式流体機械を対象とする。
そして、上記シリンダ(35)及びピストン(40)のうち少なくとも一方の鏡板(36,41)背面側には、定常運転時に上記環状空間(60,65)よりも高い圧力が作用するように構成されていて、上記揺動部材(56,76,86,96)は、上記定常運転時でも上記シリンダ(35)とピストン(40)との間に挟持されないように、上記収容空間(44,84)内の上記軸線方向に所定の隙間(δ,δ1,δ2,δ',δ1',δ2')を形成するように配設されるものとする。
この構成により、定常運転時の圧力差によってシリンダ(35)とピストン(40)との間隔が小さくなっても、ブレード(45)に対して摺接しつつ環状ピストン部(43)とブレード(45)とを相対的に揺動可能にする揺動部材(56,76,86,96)が上記シリンダ(35)とピストン(40)との間に挟み込まれるのを防止することができる。すなわち、上記シリンダ(35)及びピストン(40)のうち少なくとも一方の部材の鏡板(36,41)背面側に環状空間(60,65)よりも高い圧力が作用している場合、その圧力差によって該部材が変形し、シリンダ(35)とピストン(40)との間隔が静止時に比べて小さくなるが、上述のように、環状ピストン部(43)に形成された収容空間(44,84)に対して軸線方向に所定の隙間(δ,δ1,δ2,δ',δ1',δ2')が形成されるように揺動部材(56,76,86,96)を配設することで、該揺動部材(56,76,86,96)がシリンダ(35)とピストン(40)との間に挟み込まれるのを防止できる。
したがって、圧力変形によって上記シリンダ(35)とピストン(40)との間に上記揺動部材(56,76,86,96)が挟持されることによる該揺動部材(56)の摩耗や焼き付きの発生、摩擦損失の増大などを防止することができる。
上述の構成において、上記収容空間(44)は、上記軸線方向の高さが上記環状ピストン部(43)の軸線方向高さと同等になるように形成されていて、上記揺動部材(56,76)は、上記軸線方向の高さが上記外シリンダ部(38)、内シリンダ部(52)及び環状ピストン部(43)よりも低くなるように形成されているものとする(第2の発明)。
このように上記揺動部材(56,76)の軸線方向の高さを低くすることで、上記所定の隙間(δ,δ1,δ2)を容易に形成することができ、上記第1の発明の作用を得ることができる。
一方、上述のように上記揺動部材(56,76)の軸線方向の高さを低くするのではなく、上記収容空間(84)を、上記軸線方向の高さが上記揺動部材(86,96)よりも高くなるように形成してもよい(第3の発明)。これにより、上記揺動部材(86,96)の寸法を変えなくても該揺動部材(86,96)がシリンダとピストンとの間に挟み込まれるのを防止できるため、該揺動部材(86,96)の剛性やシール性の低下を防止できる。
また、上記第1室(61,66)は、第2室(62,67)よりも高圧の空間であり、上記揺動部材(56,76,86,96)は、上記ブレード(45)に対して第1室(61,66)側に配設される第1室側部材(56A,76A,86A,96A)と、該ブレード(45)に対して第2室(62,67)側に配設される第2室側部材(56B,76B,86B,96B)と、からなり、上記第1室側部材(56A,76A,86A,96A)は、上記定常運転時に該第1室側部材(56A,76A,86A,96A)に対応する上記所定の隙間(δ,δ2,δ',δ2')が無くなって上記第1室(61,66)が気密状態になるように、上記収容空間(44,84)内に配設されるのが好ましい(第4の発明)。
ここで、上記第2室(62,67)は吸入ポート(39)の近傍に位置するため、常時、吸入圧力であり、第2室側部材(56B,76B,86B,96B)は圧力差を受けない。一方、上記第1室(61,66)は、1回転中に圧力が大きく変動し、外側室(60)の第1室(61)と内側室(65)の第1室(66)では圧力の上昇するタイミングが異なるため、第1室側部材(56A,76A,86A,96A)は大きな圧力差を受ける。よって、上述のように、上記第1室側部材(56A,76A,86A,96A)は、定常運転時に該第1室側部材(56A,76A,86A,96A)に対応する上記所定の隙間(δ,δ2,δ',δ2')が無くなって上記第1室(61,66)が気密状態になるように、上記収容空間(44,84)内に配設されるのが好ましい。
これにより、定常運転時の圧力変形によって揺動部材(56,76,86,96)がシリンダ(35)とピストン(40)との間に挟み込まれるのを防止できるとともに、高圧の第1室(61,66)の気密性を確保することができ、該第1室(61,66)間のガス冷媒の行き来を確実に防止することができる。したがって、機械の信頼性向上と運転効率向上との両立を図れる。
上述の構成において、特に、上記第2室側部材(76B,96B)は、上記第1室側部材(76A,96A)に対応する上記隙間(δ2,δ2')よりも大きな隙間(δ1,δ1')を上記収容空間(44,84)内の上記軸線方向に形成するように配設されるのが好ましい(第5の発明)。
このように、圧力が作用しない揺動部材(76,96)の第2室側部材(76B,96B)の隙間(δ1,δ1')を、高圧が作用する第1室側部材(76A,96A)の隙間(δ2,δ2')よりも大きくすることで、定常運転時の圧力変形によって該第2室側部材(76B,96B)がシリンダ(35)及びピストン(40)に押し付けられるのをより確実に防止することができる。すなわち、比較的大きな圧力の作用する上記第1室側部材(76A,96A)は、その耐圧性も考慮して隙間(δ2,δ2')を決める必要があるが、あまり大きな圧力の作用しない上記第2室側部材(76B,96B)は、隙間(δ1,δ1')を大きくすることで、摺動部材(76,96)全体として、摩耗や焼き付きの発生、摩擦損失の増大を極力抑えることができる。
さらに、上述のような各構成は、上記シリンダ(35)及びピストン(40)のうち偏心回転する部材の鏡板(36,41)背面側に上記環状空間(60,65)よりも高い圧力が作用するように構成された回転式流体機械に適用するのが好ましい(第6の発明)。回転する部材は、固定されている部材に比べて、軽量で且つ中央部分で軸支されているだけなので剛性が低く、圧力差によって変形を生じやすい。そのため、上述のような各発明の構成にすることで、該シリンダ(35)とピストン(40)との間に揺動部材(56,76,86,96)が挟み込まれるのを防止することができ、該揺動部材(56,76,86,96)の摩耗や焼き付きの発生及び摩耗損失の増大を防止することができる。
以上より、本発明に係る回転式流体機械(1)によれば、シリンダ(35)及びピストン(40)の少なくとも一方の鏡板(36,41)背面側に環状空間(60,65)よりも高い圧力が作用する構成において、環状ピストン部(43)に形成された収納空間(44,84)に対し、軸線方向に所定の隙間(δ,δ1,δ2,δ',δ1',δ2')が形成されるように揺動部材(56,76,86,96)を配設したため、圧力差によって上記シリンダ(35)やピストン(40)が変形して両者の間隔が小さくなっても、上記揺動部材(56,76,86,96)が該シリンダ(35)とピストン(40)との間に挟み込まれて摩耗や焼き付きが発生したり、摩擦損失が増大したりするのを防止することができる。したがって、機械の信頼性向上と運転効率の向上との両立を図れる。
また、第2の発明によれば、上記揺動部材(56)の軸線方向の高さを外シリンダ部(38)、内シリンダ部(52)及び環状ピストン部(43)よりも低くすることで、簡単な構成により上記第1の発明の効果を得ることができる。
また、第3の発明によれば、上記揺動部材(56)の収容される収容空間(44)は、該揺動部材(56)の軸線方向高さよりも高いため、該揺動部材(56)の構成や特性を変えることなく、上記第1の発明の効果が得られる。
また、第4の発明によれば、上記揺動部材(56,76,86,96)は第1室側部材(56A,76A,86A,96A)と第2室側部材(56B,76B,86B,96B)とからなり、高圧側の第1室側部材(56A,76A,86A,96A)に対応する収容空間(44,84)との隙間(δ,δ2,δ',δ2')は、定常運転時に無くなって第1室(61,66)を気密状態にするように設定されるため、該第1室(61,66)間のガスの行き来を防止することができ、運転効率をより確実に向上することができる。
また、第5の発明によれば、上記第2室側部材(76B,96B)に対応する収容空間(44,84)の隙間(δ1,δ1')は、上記第1室側部材(76A,96A)に対応する隙間(δ2,δ2')よりも大きいため、高圧側でのガス漏れの発生を防止しつつ、揺動部材(76,96)がシリンダ(35)とピストン(40)との間に挟み込まれて摩耗や焼き付きが発生したり摩擦損失が増大したりするのを極力防止することができる。
さらに、第6の発明によれば、上記シリンダ(35)及びピストン(40)のうち偏心回転する部材の背面側に環状空間(60,65)よりも高い圧力が作用するように構成された回転式流体機械(1)では、定常運転時の圧力変形によってシリンダ(35)とピストン(40)との間隔がより小さくなり、揺動部材(56,76,86,96)は該シリンダ(35)とピストン(40)との間に挟み込まれやすくなるが、このような構成に対して上述の各発明の構成を適用すれば、該揺動部材(56,76,86,96)の摩耗や焼き付きの発生及び摩擦損失の増大を防止できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
−構成−
図1に示すように、実施形態に係る回転式流体機械としての圧縮機(1)は、ケーシング(10)内に、駆動機構(20)と圧縮機構(30)とが収納され、全密閉型に構成されている。この圧縮機(1)は、例えば、空気調和装置の冷媒回路において、蒸発器から吸入した冷媒を圧縮して、凝縮器へ吐出するために用いられる。
上記ケーシング(10)は、縦長の円筒状に形成された円筒部(12)と、椀状に形成されて、該円筒部(12)の両端に外側に凸になるように配設される一対の端板部(13,13)と、によって構成された縦長の密閉容器である。そして、上記円筒部(12)の上端側を塞ぐ一方の端板部(13)には、該端板部(13)を厚み方向に貫通する吐出管(14)が設けられ、上記円筒部(12)には、該円筒部(12)を厚み方向に貫通する吸入管(15)が設けられている。
ここで、上記図1に示すように、上記吐出管(14)は、ケーシング(10)内部に連通している一方、上記吸入管(15)は、該ケーシング(10)内の圧縮機構(30)に繋がっている。すなわち、上記圧縮機(1)は、圧縮機構(30)で圧縮された冷媒がケーシング(10)の内部空間へ吐出されて、その後、上記吐出管(14)を通ってケーシング(10)外へ送出されるように構成されており、該ケーシング(10)内が高圧の状態になる、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機である。すなわち、上記ケーシング(10)内の空間が高圧空間(S2)となる。
上記ケーシング(10)の内部には、上から下へ向かって順に、上記駆動機構としての電動機(20)と圧縮機構(30)とが配設されている。また、上記ケーシング(10)の内部には、該ケーシング(10)の円筒部(12)内を筒軸方向に延びるように駆動軸(25)が配設されていて、この駆動軸(25)を介して、上記圧縮機構(30)及び電動機(20)が駆動連結されている。なお、密閉容器状の上記ケーシング(10)内の底部は、上記圧縮機構(30)の各摺動部等に供給される潤滑油が溜められている貯留部(59)になっている。
上記駆動軸(25)は、主軸部(26)と偏心部(27)とを有している。この偏心部(27)は、駆動軸(25)の下端寄りの位置で、上記主軸部(26)よりも大径の円柱状に形成されている。また、この偏心部(27)は、軸心が上記主軸部(26)の軸心に対して偏心するように設けられている。さらに、上記偏心部(27)は、後述する圧縮機構(30)のピストン(40)を貫通した状態で、該ピストン(40)に対して一体回転可能に固定されている。
また、上記駆動軸(25)の内部には、該駆動軸(25)の下端から上方へ延びる給油通路(25a)が形成されている。これにより、上記ケーシング(10)内の底部に位置する上記貯留部(59)の潤滑油は、該ケーシング(10)内の高い圧力によって上記給油通路(25a)内を上昇し、圧縮機構(30)の各摺動部等へ供給される。
上記電動機(20)は、ステータ(21)とロータ(22)とを備えている。このステータ(21)は、ケーシング(10)の円筒部(12)の内面に固定されている。上記ロータ(22)には、上記駆動軸(25)の主軸部(26)が貫通していて、この状態で概略円筒形状の上記ステータ(21)の内側に配置されている。
上記圧縮機構(30)は、シリンダ(35)と、リアエンド(50)と、ピストン(40)とを備えている。このシリンダ(35)は、概略有底円筒状に形成されていて、上記リアエンド(50)の上側に、底部が上方に位置付けられるように配設される。これにより、両者間には上記ピストン(40)を収容するための空間が形成される。
上記ピストン(40)は、駆動軸(25)の偏心部(27)に嵌合する円筒状の軸受部(42)と、該軸受部(42)の外周側で該軸受部(42)に対して同心状に位置する環状ピストン部(43)と、該軸受部(42)及び環状ピストン部(43)を下端側(圧縮機構(30)における軸方向の一端側)で一体化するように設けられた円板状のピストン側鏡板(41)とを備えている。上記環状ピストン部(43)は、図2に示すように、円環の一部分が分断された略C字型形状に形成されていて、この分断部(44)に後述するブレード溝(58)が形成される。
上記リアエンド(50)は、厚肉の円板状の部材で、その外周縁部で上記ケーシング(10)の内周面に固定されているとともに、外周部分が上記シリンダ(35)に対して密着するように固定されている。また、上記リアエンド(50)の中央部分には、上記駆動軸(25)の主軸部(26)が貫通しており、その貫通孔の内周面には該主軸部(26)を回転可能に支持する滑り軸受(50a)が設けられている。
上記シリンダ(35)は、円板上のシリンダ側鏡板(36)と外シリンダ部としての周縁部(38)と軸受部(37)とを備えており、該周縁部(38)でケーシング(10)の内面に固定されている一方、該軸受部(37)で上記駆動軸(25)を回転可能に支持している。
具体的には、上記シリンダ鏡板(36)は、厚肉の円板状に形成されていて、該シリンダ鏡板(36)の外周側に位置する上記周縁部(38)が、溶接等によって上記ケーシング(10)の円筒部(12)の内面に固定されている。また、上記シリンダ鏡板(36)の中央部分には、上方に向かって膨出する円筒状の軸受部(37)が形成されていて、該軸受部(37)には、該軸受部(37)を上下方向に貫通した状態で上記駆動軸(25)の主軸部(26)を回転可能に支持する滑り軸受(37a)が設けられている。
上記周縁部(38)は、シリンダ鏡板(36)の下面から下方に向かって膨出する略円筒状に形成されていて、該周縁部(38)を径方向に貫通する吸入ポート(39)が形成されている。この吸入ポート(39)は、一端側が上記シリンダ(35)及びリアエンド(50)によって形成される空間に開口している一方、他端側は上記吸入管(15)に接続されていて、これにより、上記空間内に冷媒を吸入するための吸入通路の一部を構成している。すなわち、上記吸入ポート(39)は低圧空間(S1)の一部をなしている。
また、上記シリンダ鏡板(36)の下面には、上記周縁部(38)と同心円状に配置された略円筒状の内シリンダ部(52)が突設されていて、これにより、該内シリンダ部(52)と上記周縁部(38)(以下、外シリンダ部ともいう)との間に、圧縮室としてのシリンダ室(60,65)が形成されている。そして、上記ピストン(40)の環状ピストン部(43)は、図2に示すように、環状の上記シリンダ室(60,65)内に位置付けられている。
より詳しくは、上記外シリンダ部(38)の内周面と内シリンダ部(52)の外周面とは、互いに同一中心上に配置された円筒面であり、その間に上記シリンダ室(60,65)が形成されている。上記ピストン(40)の環状ピストン部(43)は、外周面が外シリンダ部(38)の内周面よりも小径で、内周面が内シリンダ部(52)の外周面よりも大径に形成されている。このことにより、上記環状ピストン部(43)の外周面と外シリンダ部(38)の内周面との間に外側シリンダ室(60)が形成され、該環状ピストン部(43)の内周面と内シリンダ部(52)の外周面との間に内側シリンダ室(65)が形成されている。
すなわち、上記シリンダ鏡板(36)とピストン側鏡板(41)と外シリンダ部(38)と環状ピストン部(43)とによって外側シリンダ室(60)が形成され、上記シリンダ側鏡板(36)とピストン側鏡板(41)と内シリンダ部(52)と環状ピストン部(43)とによって内側シリンダ室(65)が形成されている。また、上記シリンダ鏡板(36)とピストン側鏡板(41)とピストン(40)の軸受部(42)と内シリンダ部(52)との間には、内シリンダ部(52)の内周側で軸受部(42)の偏心回転動作を許容するための動作空間(68)が形成されている。
また、上記ピストン(40)とシリンダ(35)とは、環状ピストン部(43)の外周面と外シリンダ部(38)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、環状ピストン部(43)の内周面と内シリンダ部(52)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。
さらに、図2に示すように、上記圧縮機構(30)は、上記シリンダ室(60,65)を第1室としての高圧室(61,66)と第2室としての低圧室(62,67)とに区画するブレード(45)と、該ブレード(45)に対して環状ピストン部(43)を該環状ピストン部(43)の分断箇所において揺動可能に連結する揺動部材としての揺動ブッシュ(56)と、を備えている。上記ブレード(45)は、シリンダ室(60,65)の径方向線上で、該シリンダ室(60,65)の内周側の壁面(内側シリンダ部(52)の外周面)から外周側の壁面(外側シリンダ部としての周縁部(38)の内周面)まで、環状ピストン部(43)の分断箇所を挿通して延在するように構成され、外シリンダ部(38)及び内シリンダ部(52)に両端部を固定されている。なお、上記ブレード(45)は、外シリンダ部(38)及び内シリンダ部(52)と一体的に形成してもよいし、別部材を両シリンダ部(38,52)に取り付けてもよい。ここでは、別部材を両シリンダ部(38,52)に固定してブレード(45)としている。
上記揺動ブッシュ(56)は、ブレード(45)に対して高圧室(61,66)側に位置する第1室側部材としての吐出側ブッシュ(56A)と、ブレード(45)に対して低圧室(62,67)側に位置する第2室側部材としての吸入側ブッシュ(56B)とから構成されている。該吐出側ブッシュ(56A)及び吸入側ブッシュ(56B)は、いずれも断面形状が略半円形の同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように環状ピストン部(43)の分断部(44)内に配置されている。そして、両ブッシュ(56A,56B)の対向面の間のスペースがブレード溝(58)を構成している。なお、上記分断部(44)によって上記揺動ブッシュ(56)を収納するための収納空間が構成される。
上記ブレード溝(58)内に上記ブレード(45)が挿入され、揺動ブッシュ(56A,56B)のフラット面が該ブレード(45)と実質的に面接触し、揺動ブッシュ(56A,56B)の円弧状の外周面が環状ピストン部(43)と実質的に面接触している。揺動ブッシュ(56A,56B)は、ブレード溝(58)にブレード(45)を挟んだ状態で、該ブレード(45)の面方向(伸長方向)に進退するように構成されている。また、上記揺動ブッシュ(56A,56B)は、環状ピストン部(43)がブレード(45)に対して揺動するように構成されている。したがって、上記揺動ブッシュ(56)は、該揺動ブッシュ(56)の中心点を揺動中心として上記環状ピストン部(43)がブレード(45)に対して揺動可能となり、かつ上記環状ピストン部(43)がブレード(45)に対して該ブレード(45)の面方向へ進退可能となるように構成されている。
なお、この実施形態では両ブッシュ(56A,56B)を別体とした例について説明したが、両ブッシュ(56A,56B)は、一部で連結することにより一体構造としてもよい。
以上の構成において、駆動軸(25)が回転すると、環状ピストン部(43)は、揺動ブッシュ(56)がブレード(45)に沿って進退しながら、揺動ブッシュ(56)の中心点を揺動中心として揺動する。この揺動動作により、環状ピストン部(43)とシリンダ(35)との接触点が図3(A)から図3(H)へ順に移動する。なお、図3はいわゆる可動ブッシュ方式の圧縮機構(30)の動作状態を表す図であり、図3(A)から図3(H)まで45°間隔で環状ピストン部(43)が図の時計回り方向に移動している様子を表している。このとき、上記環状ピストン部(43)は駆動軸(25)の周りを公転するが、自転はしない。
上述のとおり、上記シリンダ(35)には吸入管(15)に連通する吸入ポート(39)が設けられていて、この吸入ポート(39)の一端側は、上記外側シリンダ室(60)の低圧室(62)に開口している(図1参照)。また、上記環状ピストン部(43)には、上記外側シリンダ室(60)の低圧室(62)と内側シリンダ室(65)の低圧室(67)とを連通する貫通孔(53)が形成されている。
一方、上記図2及び図3に示すように、上記シリンダ(35)には外側吐出ポート(54)及び内側吐出ポート(55)が形成されている。これらの吐出ポート(54,55)は、それぞれ、上記シリンダ(35)のシリンダ側鏡板(36)をその厚み方向に貫通している。上記外側吐出ポート(54)の下端は外側シリンダ室(60)の高圧室(61)に臨むように開口し、上記内側吐出ポート(55)の下端は内側シリンダ室(65)の高圧室(66)に臨むように開口している。なお、これらの吐出ポート(54,55)には、該吐出ポート(54,55)を開閉するための吐出弁(図示省略)が設けられている。
また、上記ピストン(40)における環状ピストン部(43)及び軸受部(42)の先端面(図1における上端面)は、共に上記シリンダ(35)のシリンダ側鏡板(36)に摺接している一方、上記シリンダ(35)の内シリンダ部(52)の先端面(図1における下端面)も上記ピストン(40)のピストン側鏡板(41)と摺接している。これにより、上記シリンダ(35)と上記ピストン(40)とによって形成される上記シリンダ室(60,65)は気密状態になっている。
さらに、上記図1に示すように、上記リアエンド(50)の上面には、上記ピストン(40)のピストン側鏡板(41)の中央部に対応してシールリング(70)が設けられている。このシールリング(70)は、上記リアエンド(50)とピストン(40)との間の空間を径方向に分割するように設けられている。
そして、上記シールリング(70)よりも内周側の空間は、ケーシング(10)内の高圧空間(S2)と連通していて、上記貯留部(59)から駆動軸(25)の給油通路(25a)内を通ってきた高圧の潤滑油が供給されるように構成されている。すなわち、上記シールリング(70)よりも内側の空間は定常運転時には高圧の状態になっているため、上記ピストン(40)に対して上記シリンダ(35)側に押し付ける背圧が作用する。
一方、上記シールリング(70)よりも外周側の空間は、背圧空間(S3)であり、該シールリング(70)を越えて進入する潤滑油や、軸受から圧縮室(60,65)を介して漏れ出た潤滑油によって、該空間(S3)内の圧力が、上記吸入ポート(39)よりも高圧で且つ上記ケーシング(10)内の高圧空間(S2)よりも低圧の中間圧になっている。このことにより、この背圧空間(S3)内の圧力も上記ピストン(40)を背面側から押し付けるように作用する。
これにより、上記ピストン(40)には、定常運転時に背面側から高圧若しくは中間圧が作用することになり、低圧のガス冷媒を吸入して圧縮することで高圧にする上記シリンダ室(60,65)内部の圧力に比べて、上記ピストン背面側の圧力の方が大きくなる。そうすると、その圧力差によって上記ピストン(40)はシリンダ(35)側へ変形を生じる。
また、上述のように、上記ケーシング(10)内は高圧空間(S1)であるため、上記シリンダ(35)の鏡板(36)の背面側にも高い圧力が作用することになり、該シリンダ鏡板(36)もピストン(40)側に変形することになる。
そのため、上記揺動ブッシュ(56)は、上記ピストン(40)のピストン側鏡板(41)とシリンダ(35)のシリンダ側鏡板(36)との間に挟み込まれることになり、摩耗や焼き付きが発生したり、摩擦損失が増大したりするなど、圧縮機(1)の信頼性や運転効率を低下させるような問題が生じる。
これに対して、本発明の特等部分として、図4に示すように、上記揺動ブッシュ(56)の高さ寸法を外シリンダ部(38)、内シリンダ部(52)及び環状ピストン部(43)の軸線方向高さよりも小さくした。すなわち、上記揺動ブッシュ(56)は、環状ピストン部(43)の軸線方向高さと同等の高さを有するように該環状ピストン部(43)に形成された分断部(44)に対し、所定の隙間δが形成されるように高さ寸法が設定されている。
ここで、上記所定の隙間δは、上述のように定常運転時に上記ピストン(40)が変形した場合でも、上記揺動ブッシュ(56)がピストン(40)とシリンダ(35)との間に挟み込まれず、且つほとんど零になって高圧室(61,66)を気密状態にするような寸法に設定される。
これにより、上記シリンダ室(60,65)内とピストン(40)及びシリンダ(35)の背面側との間でそれぞれ生じる圧力差によって、該ピストン(40)がシリンダ(35)側に、該シリンダ(35)がピストン(40)側に、それぞれ変形した場合でも、上記揺動ブッシュ(56)が該ピストン(40)とシリンダ(35)との間に挟持されるのを防止することができる。
しかも、定常運転時の上記ピストン(40)の変形によって上記所定の隙間δはほとんど零になって高圧室(61,66)の気密性が保たれるため、ガス漏れによる効率低下を防止することができる。
したがって、上述のような構成にすることで、定常運転時の圧力差によるピストン(40)やシリンダ(35)の変形によって上記揺動ブッシュ(56)の摩耗や焼き付きが発生したり、摩擦損失が増大したりするのを防止することができるとともに、上記高圧室(61,66)のガス漏れを防止することができ、圧縮機(1)の信頼性向上と効率向上との両立を図れる。
−運転動作−
次に、上記圧縮機(1)の運転動作について説明する。
まず、電動機(20)を起動すると、ロータ(22)の回転が駆動軸(25)を介して圧縮機構(30)のピストン(40)に伝達される。そうすると、揺動ブッシュ(56A,56B)がブレード(45)に沿って往復運動(進退動作)を行い、かつ、環状ピストン部(43)及び揺動ブッシュ(56A,56B)が一体的になってブレード(45)に対して揺動動作を行う。その際、揺動ブッシュ(56A,56B)は、環状ピストン部(43)及びブレード(45)に対して実質的に面接触をする。そして、環状ピストン部(43)が外側シリンダ部(38)及び内側シリンダ部(52)に対して揺動しながら公転し、圧縮機構(30)が所定の圧縮動作を行う。
具体的に、外側シリンダ室(60)では、図3(B)の状態で低圧室(62)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(25)が図の右回りに回転して図3(C)〜図3(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(62)の容積が増大するときに、冷媒が、吸入管(15)及び吸入ポート(39)を通って該低圧室(62)に吸入される。
上記駆動軸(25)が一回転して再び図3(B)の状態になると、上記低圧室(62)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(62)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(61)となり、ブレード(45)を隔てて新たな低圧室(62)が形成される。駆動軸(25)がさらに回転すると、上記低圧室(62)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(61)の容積が減少し、該高圧室(61)で冷媒が圧縮される。高圧室(61)の圧力が所定値となって吐出空間との差圧が設定値に達すると、該高圧室(61)の高圧冷媒によって弁が開き、高圧冷媒が吐出空間からケーシング(10)内の高圧空間(S2)へ流出する。
内側シリンダ室(65)では、図3(F)の状態で低圧室(67)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(25)が図の右回りに回転して図3(G)〜図3(E)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(67)の容積が増大するときに、冷媒が、吸入管(15)、吸入ポート(39)、及び貫通孔(53)を通って内側シリンダ室(65)の低圧室(67)へ吸入される。
駆動軸(25)が一回転して再び図3(F)の状態になると、上記低圧室(67)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(67)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(66)となり、ブレード(45)を隔てて新たな低圧室(67)が形成される。駆動軸(25)がさらに回転すると、上記低圧室(67)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(66)の容積が減少し、該高圧室(66)で冷媒が圧縮される。高圧室(66)の圧力が所定値となって吐出空間との差圧が設定値に達すると、該高圧室(66)の高圧冷媒によって弁が開き、高圧冷媒が吐出空間からケーシング(10)内の高圧空間(S2)へ流出する。
外側シリンダ室(60)では、ほぼ図3(E)のタイミングで冷媒の吐出が開始され、内側シリンダ室(65)ではほぼ図3(A)のタイミングで吐出が開始される。つまり、外側シリンダ室(60)と内側シリンダ室(65)とでは、吐出のタイミングがほぼ180°異なっている。外側シリンダ室(60)及び内側シリンダ室(65)で圧縮されてケーシング(10)内の高圧空間(S2)へ流出した高圧の冷媒は吐出管(14)から吐出され、冷媒回路で凝縮行程、膨張行程、及び蒸発行程を経た後、再度圧縮機(1)に吸入される。
ここで、上記貯留部(59)の潤滑油は、駆動軸(25)下端の遠心ポンプ作用により、該駆動軸(25)の給油通路(25a)内を上方へ押し上げられて、圧縮機構(30)の各滑り軸受(37a,50a)や、上記ピストン(40)とリアエンド(50)との間で上記シールリング(70)よりも内周側の空間に供給される。
そのため、上記シールリング(70)によって区画された内側の空間内は、高圧状態であり、該ピストン(40)の背面側には高い圧力が作用する。すなわち、低圧空間と高圧空間とが混在する上記シリンダ室(60,65)の圧力に比べてピストン背面側の圧力が高いため、該ピストン(40)はシリンダ側へ変形を生じる。これに対して、上記揺動ブッシュ(56)は、外シリンダ部(38)、内シリンダ部(52)及び環状ピストン部(43)の軸線方向高さよりも低く、該環状ピストン部(43)の分断部(44)内に所定の隙間δを形成するように配設されているため、上述のように上記ピストン(40)が変形しても、該ピストン(40)とシリンダ(35)との間に挟み込まれるのを防止でき、摩耗や焼き付きの発生、摩擦損失の増大等を防止できる。
また、定常運転時には、ケーシング(10)内の空間(S2)が高圧になるため、上記シリンダ(35)にもピストン(40)側への変形が生じる。これに対しても、上述のように揺動ブッシュ(56)を構成することで、該ピストン(40)とシリンダ(35)との間に揺動ブッシュ(56)が挟み込まれるのを防止でき、摩耗や焼き付きの発生、摩擦損失の増大等を防止できる。なお、圧力差による変形量は、回転体であり剛性の低い上記ピストン(40)の方が大きいため、該ピストン(40)の変形のみを考慮するようにしてもよい。
−実施形態の効果−
以上説明したように、本実施形態によれば、環状ピストン部(43)をブレード(45)に対して揺動可能に且つ摺動可能に支持する揺動ブッシュ(56)を、外シリンダ部(38)、内シリンダ部(52)及び環状ピストン部(43)の軸線方向高さよりも低くして、該揺動ブッシュ(56)の収納空間である環状ピストン部(43)の分断部(44)に軸線方向の隙間δを形成したため、定常運転時のシリンダ室(60,65)とピストン(40)背面との圧力差によって該ピストン(40)にシリンダ(35)側への変形が生じた場合や、該シリンダ室(60,65)とシリンダ(35)背面との圧力差によって該シリンダ(35)にピストン(40)側への変形が生じた場合でも、上記揺動ブッシュ(56)がピストン(40)とシリンダ(35)との間に挟み込まれるのを防止することができる。
これにより、上記揺動ブッシュ(56)がピストン(40)及びシリンダ(35)に押し付けられて、摩耗や焼き付きが発生したり、摩擦損失が増大したりするのを防止することができ、圧縮機(1)の信頼性向上及び効率向上を図れる。
また、上記揺動ブッシュ(56)は、上述のように定常運転時に上記ピストン(40)が変形を生じた場合に、上記隙間δがほぼ零になるような高さに設定されているため、シリンダ室(60,65)の高圧室(61,66)の気密性を確保することができ、ガス漏れによる効率低下を防止することができる。
−実施形態の変形例1−
この変形例は、図5に示すように、環状ピストン部(43)の分断部(44)に配設される揺動ブッシュ(76A,76B)のうち、吸入側ブッシュ(76B)の高さを吐出側ブッシュ(76A)の高さよりも低くした点が上記実施形態と異なる。
詳しくは、ブレード(45)を挟んで低圧室(62,67)側に位置する吸入側ブッシュ(76B)は、環状ピストン部(43)軸線方向の高さが高圧室(61,66)側に位置する吐出側ブッシュ(76A)よりも低くなるように形成されていて、上記吸入側ブッシュ(76B)に対応する隙間(δ1)が上記吐出側ブッシュ(76B)に対応する隙間(δ2)よりも大きくなっている。
これは、上記吸入側ブッシュ(76B)が低圧側であり、高圧側ほど厳密に気密性を保つ必要がないため、シリンダ室(60,65)内とピストン(40)背面との圧力差による該ピストン(40)の変形をより確実に吸収できるように分断部(44)での隙間(δ1)をなるべく大きくとることができるからである。
一方、上記吐出側ブッシュ(76A)では、高圧のガス冷媒が漏れないように気密性を確保する必要があり、隙間(δ2)は、定常運転時に上記ピストン(40)が変形した場合にほぼ零になるように設定される。
これにより、高圧側では気密性を確保してガス漏れを防止しつつ、低圧側では上記ピストン(40)の変形に起因する揺動ブッシュ(76)の摩耗や焼き付きの発生、摩擦損失の増大を確実に防止することができる。したがって、揺動ブッシュ(76)全体として、ガス漏れ防止によって圧縮機(1)の運転効率を向上しつつ、摩耗や焼き付きの発生、摩擦損失の増大を極力抑えることができ、圧縮機(1)の信頼性向上と運転効率の向上との両立をより確実に図れるようになる。
−実施形態の変形例2−
この変形例は、図6に示すように、環状ピストン部(43)の分断部(84)を、揺動ブッシュ(86)の高さよりも深くした点が上記実施形態と異なる。
詳しくは、上記分断部(84)は、環状ピストン部(43)の軸線方向高さよりも深く形成されていて、その下端はピストン側鏡板(41)の厚み方向内部に位置付けられている。すなわち、上記分断部(84)の下部は、ピストン側鏡板(41)の上面に形成された凹部(41a)によって構成されている。
そして、上述のように形成された分断部(84)内に揺動ブッシュ(86A,86B)を配設することで、該分断部(84)内で揺動ブッシュ(86A,86B)の軸線方向には隙間(δ')が形成される。これにより、定常運転時の圧力差によって上記ピストン(40)に変形が生じても、該ピストン(40)とシリンダ(35)との間に上記揺動ブッシュ(86)が挟持されるのを防止することができ、該揺動ブッシュ(86)で摩耗や焼き付きが発生したり、摩擦損失が増大したりするのを防止することができる。
−実施形態の変形例3−
この変形例は、図7に示すように、上記変形例2の分断部(84)内に配設される揺動ブッシュ(96)のうち、吸入側ブッシュ(96B)の高さを吐出側ブッシュ(96A)の高さよりも低くした点が上記実施形態と異なる。
詳しくは、環状ピストン部(43)の分断部(84)を上記変形例2の図6のように形成するとともに、ブレード(45)を挟んで低圧室(62,67)側に位置する吸入側ブッシュ(96B)を、高圧室(61,66)側に位置する吐出側ブッシュ(96A)よりも低く形成した。これにより、上記変形例1のように、上記吸入側ブッシュ(96B)に対応する隙間(δ1')が上記吐出側ブッシュ(96B)に対応する隙間(δ2')よりも大きくなり、低圧側ではピストン(40)の変形をより確実に吸収することができる。
したがって、上記変形例1と同様、高圧側では高圧室(61,66)の気密性を確保しつつ、低圧側では上記ピストン(40)の変形に起因する揺動ブッシュ(96)の摩耗や焼き付きの発生、摩擦損失の増大をより確実に防止することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態では、ケーシング(10)内が高圧空間(S2)になる高圧ドーム型の圧縮機(1)への適用について説明したが、この限りではなく、部分的に低圧空間になる高低圧ドーム型の圧縮機に適用にするようにしてもよい。この場合には、シリンダ(35)またはピストン(40)のいずれか一方の背面側に高い圧力が作用して、該一方の部材が変形することになる。
また、上記実施形態では、環状ピストン部(43)の分断部(44)内に収納される揺動ブッシュ(56)によって形成される軸線方向の隙間(δ)を、定常運転時の圧力変形によって該揺動ブッシュ(56)がシリンダ(35)とピストン(40)との間に挟み込まれず、且つ隙間が殆ど零になってシリンダ室(60,65)の高圧室(61,66)及び低圧室(62,67)を気密状態にするような寸法に設定しているが、この限りではなく、単に定常運転時に上記揺動ブッシュ(56)がシリンダ(35)とピストン(40)との間に挟み込まれないような寸法に設定してもよい。
また、上記実施形態では、ピストン(40)に駆動軸(25)を連結することで、環状ピストン部(43)を回転させるようにしているが、この限りではなく、該環状ピストン部(43)を固定側の上記シリンダ(35)に設けるとともに、外シリンダ部(38)及び内シリンダ部(52)を回転側の上記ピストン(40)に設けて、該外シリンダ部(38)及び内シリンダ部(52)を回転させるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、定常運転時に生じるシリンダ室(60,65)とピストン背面との圧力差、及び該シリンダ室(60,65)とシリンダ背面との圧力差による該ピストン(40)及びシリンダ(35)の変形に対し、揺動ブッシュ(65)が挟み込まれないようにしているが、この限りではなく、上記ピストン(40)やシリンダ(35)に変形が生じて上記揺動ブッシュ(65)を挟み込むような圧力差が発生する他の運転状態を考慮してもよい。
さらに、上記実施形態では、本発明の流体機械として圧縮機(1)について説明したが、本発明は、高圧冷媒などのガスをシリンダ室に導入し、該ガスが膨張することによって回転軸の駆動力を発生させる膨張機にも適用できるし、ポンプにも適用できる。