インクジェット記録装置は、小型化が容易であることや、騒音が少ない、安価であることなどの利点を持っており、コンピュータの出力装置を始め、各種の印刷装置に利用されている。このインクジェット記録装置は、電気信号でインクを噴射できるノズルを複数有する記録ヘッドを備えている。そして、この記録ヘッドをキャリッジ上に装着して往復移動させながら、各ノズルを選択的に駆動することによって、該当するノズルから液滴状のインクを吐出させる。これによって、記録媒体上にインク滴が選択的に着弾されて所望の画像を形成することができる。更に記録ヘッドは、インクを吐出させるための複数のノズルを列状に配置して吐出部としている。そして、この吐出部を同一記録ヘッド内に複数備えることによって、各吐出部に異なるインク種、例えば色の異なるインクを供給することで、カラー印刷を可能とする。
このようなインクジェット記録装置の中で、インクを吐出させるためのノズルや、或いはノズルにインクを供給するインク流路において、それらを形成する材料を通して大気が透過・侵入することに伴う、インク中での気泡の発生・混入等が生ずる場合がある。また、ノズル先端に設けられている吐出口からの蒸発に伴うインクの粘度増大が生ずる場合もある。これらによって、前記したノズルからインクを液滴状にして吐出させることが正常になされない、即ち吐出不良を生ずる。このことは、記録媒体上において正規のインク液滴の着弾がなされず、形成される画像の品質低下を招くことにつながる。
この画像の品質低下を防止するために、インクジェット記録装置においては、従来から吐出不良を回避又は改善する目的でインク吐出状態の回復処理(吐出回復処理)が一般的になされている。この吐出回復処理の代表的なものには、ノズルから強制的にインクを排出させる処理や、吐出部におけるインクや紙粉等の付着による汚れを払拭する処理がある。
前者は、開口部を有するキャップを吐出部に密着させることで形成される空間内を減圧したり、或いはインク流路を加圧したりすることで、強制的にインクを流動させてノズルからインクを排出させる処理である。これによって、粘度上昇したインクやインク中の気泡が通常の液状インクと同時に排出されるものである。この強制的にインクを流動させてノズルからインクを排出させる処理を『強制流動回復』と称する。
更に前者の処理の中には、記録の開始直前や途中で、記録媒体から外れた領域で画像形成に無関係なインク吐出を行わせて、ノズル先端の吐出口部分で蒸発によって粘度上昇したインクを排出する処理もある。特にこの吐出によるインク排出処理を『予備吐出』と称する。
また後者は、インクの吐出に伴って生ずる微細なインクミストや、インク滴の着弾時に記録媒体から跳ね返るインク等によって起こる吐出部の濡れや紙粉の付着等で発生する汚れを、ゴム等で形成されるワイパーブレードで払拭する処理である。この処理を『ワイピング』と称する。
これらの中で、前述したインクの粘度増大やインク内への気泡混入の課題に対しては、近年のインクジェット記録装置においては、『吸引回復』機構を組み込むことがよく実施されている。『吸引回復』とは、吐出部を覆う開口部を有するキャップをその吐出部に当接し、吐出部とキャップ開口部で形成される空間の内部を減圧し、生ずる圧力差を利用して、ノズルを通して記録ヘッド内に充填されているインクを吸引して排出させることである。また、『吸引回復』操作を行う装置を『吸引回復装置』と称する。
吸引回復は、吐出不良を回避するためには非常に有効に作用するものであるが、その一方で不都合もある。この吸引回復は画像形成を目的とする各ノズルからののインク吐出動作とは独立して行われるものであるため、吸引回復を行っている間はインク吐出を中断せざるを得ない。つまり、この吸引回復操作が行われている間は、記録媒体上への画像形成を実施することができない。そしてこのことは、記録を意図してから仕上がるまでの時間を実質的に長くしてしまうという不都合を生じる。
更に、吸引回復ではノズルから強制的にインクを排出させているために、画像形成には寄与しないインクの消費を伴う。従って、記録に要するコストの増大を招く不都合が生ずる。また、排出されたインクは通常は再利用できないため、該インクを廃インクとして貯蔵しておく処理が必要となる不都合も生ずる。
以上の不都合の点から、吸引回復は少ない操作回数に留めることが望ましい。従って、吸引回復を、一定の時間が経過した後に自動で動作させるようにして品質上で必要な場合のみとし、不必要な吸引回復をなるべく行わないことを一般的に行っている。この自動で吸引回復を行う一手法として、『タイマー吸引』がある。『タイマー吸引』とは、インクジェット記録装置内に、予め一定の時間を設定したタイマーを備えておき、これと共に吸引回復を実施してからの経過時間を計測する。そして、その経過時間とタイマーの設定値とを参照して経過時間がタイマーの設定値を超えたときに自動的に吸引回復を実行することである。
通常のタイマー吸引における時間設定は、ノズル内及びインク流路内において発生し成長する気泡の量が、吐出不良を引き起こし得る状態に至るまでの時間に基づいている。この時間を、使用するインクジェット記録装置の特性として求め、タイマーに設定している。
ところで、ノズル及びインク流路の中でインク中に気泡が発生・成長する要因としては、記録ヘッド及びインク流路を構成する部材の接合部や部材自体を介し、空気が透過してインク内に入り込む場合が挙げられる。また、インク吐出の繰り返しによって吐出口から空気を取り込む場合が挙げられる。更に、熱エネルギーを利用してインクを瞬時に加熱・発泡させて吐出液滴を形成する方式の記録ヘッドにおいては、吐出終了後の消泡する際に残留気泡があり、それがインク中に蓄積する場合もある。
一般に、部材における気体の透過性と温度との関係はアレニウスの式に従うことが知られており、温度に対して気体の透過量は指数関数的に増大する。また実質的に孔のない部材を気体が透過する場合は、気体分子が高濃度側(気体の圧力が高い)の部材壁面に凝縮し、次いでその気体は、部材内に溶解していく。続いて溶解した気体分子は、部材両側間の気体分子の濃度勾配差を駆動力として、更に気体分子の低濃度側に向かって拡散していき、部材の反対側の面から蒸散して放出されることから起こる。
このことをインク流路に当てはめて考えると、まず、インク流路を構成している部材の外側壁面、即ち空気が多い側の壁面に、空気中の気体分子が凝集して部材内に溶解していく。そしてインク流路を構成している部材における前記壁面の反対側の面、即ちインクと接している内壁面は空気がほとんどないために、先の部材内に溶解した気体分子はインク流路内壁側に向かって拡散し、その後にインク中に放出されることになる。このようなことから、インク流路を構成している部材の両壁面側における気体の濃度差が作用し、インク流路内にインクが存在しているうちは気体透過が続くため、時間の経過と共にインク流路内で蓄積する気体量は多くなる。
このようなことから、タイマー吸引としては、使用するインクジェット記録装置の動作を保証する温度環境の範囲内で、最高温度における特性で時間設定を行う。本来ならば、インクジェット記録装置が使用されている間における温度変化を逐次検知し、その温度変化履歴によってインク内に透過して蓄積した気体の量を導き出し、その量に基づいて適切な吸引回復操作の時期を判定することが好ましい。しかし、インクジェット記録装置の電源が入っていない間も含めて、記録が休止している間の温度変化を逐一検知して履歴を記憶しておくには、温度検知用のセンサを常時動作させておく必要がある。そのためにインクジェット記録装置としては、センサ駆動及びセンサ出力処理用に常に通電し続けなければならないため、実用上は困難である。
従って、インクジェット記録装置の動作保証を行うためには、実使用における最高温度における気体透過特性に基づいて、タイマーの時間設定を行い、それに従ったタイマー吸引を行わざるを得ない。
このため、実際のインクジェット記録装置の使用環境によっては、タイマーで設定されている時間に達した場合であっても、吸引回復をさせなくとも満足なインク吐出が可能な場合もある。このことは、言い換えれば不必要なインク排出を行うこともあり得るということになる。
このような不必要なインク排出を防止するためには、タイマーの設定値を変更できる構成をもつことが好ましい。このタイマーの設定値を変更する構成として、例えば特許文献1では、記録媒体の種類に応じて吸引タイマーの設定値を増減させることを開示している。つまり基準となる設定値に対して普通紙ならば+12時間、高品位を求める光沢紙ならば−10時間にする、という構成を開示している。また特許文献2では、液体を貯留したカートリッジが着脱可能である装置で、カートリッジが装着されてから規定回数までの第1判断基準時間を短くし、規定回数よりも後の第2判断基準時間は長く設定することが開示されている。
特開2001−260370号公報(第6頁、図3−4)
特開2004−136502号公報(第5−6頁、図10)
まず、本発明が適用されるインクジェット記録装置(以下『記録装置』と略記する)の一例の構成について、図4及び図5を用いて説明する。図4に記録装置の外観の概略構成を示すが、この記録装置本体1000の外殻は、下ケース1001、上ケース1002、アクセスカバー1003および排出トレイ1004を含む外装部材とから構成される。そしてこれらの外装部材内には、図5に示すシャーシ2001で構成される記録装置ユニット2000を収納している。このシャーシ2001は、所定の剛性を有する複数の板状金属部材によって構成され、記録装置の骨格をなし、後述の各記録動作機構を保持するものである。
また、下ケース1001は装置本体1000の外装の略下半部を、上ケース1002は装置本体1000の外装の略上半部をそれぞれ形成しており、両ケースの組合せによって、内部に後述の各機構を収納する収納空間を有する中空体構造をなしている。装置本体1000の上面部及び前面部には、それぞれ記録媒体を給送及び排出させるための開口部が形成されている。
更に、排出トレイ1004は、その一端部が下ケース1001に回転自在に保持され、その回転によって下ケース1001の前面部に形成される前記開口部を開閉させ得るようになっている。このため、記録動作を実行させる際には、排出トレイ1004を前面側へと回転させて開口部を出すことにより、ここから記録媒体が排出可能となると共に排出された記録媒体を順次積載し得るようになっている。また、排出トレイ1004には、2枚の補助トレイ1004a及び1004bが収納されており、必要に応じて各トレイを手前に引き出すことにより、記録媒体の支持面積を3段階に拡大、縮小させ得るようになっている。
アクセスカバー1003は、その一端部が上ケース1002に回転自在に保持され、上面に形成される開口部を開閉し得るようになっている。このアクセスカバー1003を開くことによって本体内部に収納されているヘッドカートリッジ或いはインクタンク等の交換が可能となる。このヘッドカートリッジは、記録ヘッド部にインクタンクの装着部を備えたヘッドカートリッジ本体とインクタンクとから構成されているものであり、その構成の詳細は後述する。なお、ここでは特に図示しないが、アクセスカバー1003を開閉させると、その裏面に形成された突起がカバー開閉レバーを回転させるようになっている。そして、そのレバーの回転位置をマイクロスイッチなどで検出することにより、アクセスカバーの開閉状態を検出し得るようになっている。
また、上ケース1002の後部上面には、電源キー3001およびレジュームキー3002が押下可能に設けられると共に、LEDからなる発光部3003が設けられている。そして、電源キー3001を押下すると、発光部3003が点灯し記録可能であることを使用者に知らせるものとなっている。また、発光部3003は点滅の仕方や発光色の変化により、記録装置の異常等を使用者に知らせる等の種々の表示機能を有する。さらに、ブザーをならすこともできる。なお、異常等が解決した場合には、レジュームキー3002を押下することによって記録が再開されるようになっている。
次に、装置本体1000に収納されている記録装置ユニット2000の記録動作機構について図5を用いて説明する。本実施例における記録動作機構は、記録媒体を装置本体内へと自動的に給送する自動給送部2002を有する。また、自動給送部2002から1枚ずつ送出される記録媒体を所定の記録位置へと導くと共に、記録位置から排出部2004へと記録媒体を導く搬送部2003を有する。さらに、記録位置に搬送された記録媒体に所望の記録を行う記録部と、前記記録部等に対する吐出回復処理を行う吐出回復装置部2200とを有している。
ここで、記録部は、キャリッジ軸2103によって移動可能に支持されたキャリッジ2100と、このキャリッジ2100に着脱可能に搭載されるヘッドカートリッジ4000(図6参照)とからなる。そしてキャリッジ2100は、駆動源であるキャリッジモータ3020の駆動力で、伝達機構2104を介して矢印Sの主走査方向に往復移動される。
図6および図7はヘッドカートリッジ4000の構成例を示し、図6はインクを貯留するインクタンク4100をヘッドカートリッジ本体4001に取り付けた状態を示す斜視図を示す。また、図7はインクタンク4100をヘッドカートリッジ本体4001から取り外した状態を、図6とは天地を逆にして示した斜視図である。本例においては、ヘッドカートリッジ本体4001は前述したキャリッジ2100に対して着脱可能に搭載されるものである。ここに示すヘッドカートリッジ4000では、写真調の高画質なカラー記録を可能とするため、インクタンクとして、例えば、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ及びイエローの各色独立のインクタンク4100が用意されている。そして、それぞれが吐出部4002を有するヘッドカートリッジ本体4001に対して着脱自在となっている。
図8はヘッドカートリッジ本体4001の分解斜視図である。本例のヘッドカートリッジ本体4001は、記録素子基体4010、第1のプレート4020、電気配線基板4030、第2のプレート4040、タンクホルダ4050、インク流路形成部材4060、フィルタ4070、シールゴム4080から構成されている。
記録素子基体4010は、シリコン基板の片面にインクを吐出するための複数の記録素子と、各記録素子に電力を供給するアルミニウム等の電極配線とが成膜技術により形成される。そして、この記録素子に対応した複数のインク流路と吐出口4011を有する複数のノズルとがフォトリソグラフィ技術により形成されると共に、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。この記録素子は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するものであって、その熱エネルギーを発生する電気熱変換体を備えている。即ち、電気熱変換体から発生する熱エネルギーによってインクに膜沸騰が生じ、インク中の気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口からインクを吐出させる構成となっている。この電気熱変換体は、複数の吐出口4011のそれぞれに対応して設けられている。
図9(A)は記録素子基体4010上の記録素子および電極配線の構成を示す模式的平面図、図9(B)はそのA−A′部の模式的断面図である。記録素子基体4010の作製には、シリコン基板、あるいは既に駆動用のICを作り込んだシリコン基板を用いる。シリコン基板の場合は、熱酸化法、スパッタ法、CVD法などによって二酸化珪素から成る蓄熱層を形成し、ICを作り込んだシリコン基板も同様にその製造プロセス中で、二酸化珪素から成る蓄熱層を形成しておく。図9(B)では4012が二酸化珪素から成る蓄熱層に相当し、2μm弱の膜厚を有する。
次に、共通の電極配線として第1のアルミニウム電極層(不図示)をスパッタリング法にて0.55μmの厚さに形成し、フォトリソグラフィ法を用いて配線パターンを形成し、リアクティブイオンエッチング法でエッチングを行う。次に、スパッタ法、CVD法などによって、窒化珪素或いは二酸化珪素等から成る層間絶縁膜4013を1.4μm形成する。次いで、ヒータとしてTaSiN層4014を0.018μmの厚さに、さらに電極配線としての第2のアルミニウム電極層4015を0.2μmの厚さに、それぞれスパッタリング法、或いは反応性スパッタリング法により形成する。次に、フォトリソグラフィ法を用いて配線パターンを形成し、リアクティブイオンエッチング法で、アルミニウム、TaSiNと連続的にエッチングを行う。再びフォトリソグラフィ法により図9中の符号4016で示されるように発熱部を露出させるために、ウェットエッチングによりアルミニウム層を取り去る。次に、第1の保護膜4017として窒化珪素あるいは二酸化珪素等から成る絶縁膜を0.3μmの厚さに、スパッタリング法,プラズマCVD法などによって形成する。その上に、第2の保護膜4018としてのタンタル層を0.23μmの厚さに、必要に応じてパターニング処理を行いながら成膜する。
再び図8に移る。このように作製された記録素子基体4010は第1のプレート4020に接着固定されており、ここには、記録素子基体4010にインクを供給するためのインク供給口4021が形成されている。さらに、第1のプレート4020には、開口部を有する第2のプレート4040が接着固定されており、この第2のプレート4040を介して、電気配線基板4030が記録素子基体4010に対して電気的に接続されるよう保持されている。この電気配線基板4030は、主に記録素子基体4010にインクを吐出するための電気信号を印加するものである。そして、記録素子基体4010に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置して本体からの電気信号を受け取るための外部信号入出力端子4031とを有しており、外部信号入出力端子4031は、タンクホルダ4050の背面側に位置決め固定されている。
ヘッドカートリッジ本体4001には記録素子基体4010についての所要の情報、すなわち発熱部4016に対応した駆動条件を規定するための情報を格納し、装置本体に装着された際にこれを提示するための手段が設けられている。その手段としては例えば電気配線基板4030に実装されたEEPROMやヒューズROM等の不揮発性メモリとすることができる。また、ヘッドカートリッジ本体4001ないし記録素子基体4010には、温度を検出してその情報を提示するための温度センサを設けることができる。そして、それらの提示情報は外部信号入出力端子4031を介して記録装置本体制御部に伝達することができる。
一方、インクタンク4100を着脱可能に保持するタンクホルダ4050には、インク流路形成部材4060が、超音波溶着等により接合して固定され、インクタンク4100から第1のプレート4020に亘るインク流路4051を形成している。また、インクタンク4100と係合するインク流路4051におけるインクタンク側の端部には、フィルタ4070が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようにしている。また、インクタンク4100との係合部にはシールゴム4080が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようにしている。
さらに、タンクホルダ部は、タンクホルダ4050、流路形成部材4060、フィルタ4070及びシールゴム4080から構成される。また、記録素子部は、記録素子基体4010、第1のプレート4020、電気配線基板4030および第2のプレート4040から構成される。そして、タンクホルダ部と記録素子部とを接着等で結合することにより、ヘッドカートリッジ本体4001を構成している。
次に、再び図5を参照して上記構成のヘッドカートリッジ4000を搭載するキャリッジ2100を説明する。キャリッジ2100には、キャリッジ2100と係合し、ヘッドカートリッジ本体4001をキャリッジ2100上の所定の装着位置に案内するためのキャリッジカバー2101が設けられている。また、キャリッジ2100には、ヘッドカートリッジ本体4001のタンクホルダー4050と係合し、ヘッドカートリッジ本体4001を所定の装着位置にセットさせるよう押圧するヘッドセットレバー2102が設けられている。
即ちヘッドセットレバー2102は、キャリッジ2100の上部にヘッドセットレバー軸に対して回動可能に設けられると共に、ヘッドカートリッジ本体4001との係合部には、ばね付勢されるヘッドセットプレート(不図示)が備えられる。そして、このばね力によってヘッドカートリッジ本体4001を押圧しながらキャリッジ2100に装着する構成となっている。
また、キャリッジ2100のヘッドカートリッジ本体4001との別の係合部にはコンタクトフレキシブル記録ケーブル3011が設けられる。そして、コンタクトフレキシブル記録ケーブル3011上のコンタクト部3010と、ヘッドカートリッジ本体4001に設けられたコンタクト部(外部信号入力端子)4031とが電気的に接触する。これにより、記録のための各種情報等の授受やヘッドカートリッジ本体4001への電力の供給などを行うようになっている。
ここで、コンタクトフレキシブル記録ケーブル3011のコンタクト部とキャリッジ2100との間には不図示のゴムなどの弾性部材が設けられる。この弾性部材の弾性力とヘッドセットレバーばねによる押圧力とによって、コンタクトフレキシブル記録ケーブル3011上のコンタクト部3010と、ヘッドカートリッジ本体4001のコンタクト部4031との確実な接触を可能とするようにしている。さらに、コンタクトフレキシブル記録ケーブル3011は、キャリッジ2100の背面に搭載されたキャリッジ基板(不図示)に接続されている。
このような構成のキャリッジ2100は、キャリッジモータ3020の駆動力を伝達する伝動機構である駆動ベルト2105の一部に連結され、かつキャリッジ軸2103に沿って矢印Sの主走査方向に移動自在にガイドされている。キャリッジモータ3020の正転及び逆転によって、キャリッジ2100は、キャリッジ軸2103に沿って往復移動する。2106はキャリッジ2100の矢印Sの主走査方向における絶対位置を示すスケールである。本例のスケール2106としては、透明なPETフィルムに、所定ピッチの黒色のバーが印刷されたものが用いられており、その一方の端部はシャーシ2001に固着され、他方の端部は不図示の板ばねに支持されている。
本例の記録装置1000においては、ヘッドカートリッジ4000の吐出部4002に対向するように、不図示のプラテンが設けられている(搬送部2003の下部)。そして、キャリッジモータ3020の駆動力によって、ヘッドカートリッジ4000が搭載されたキャリッジ2100を主走査方向に往復移動させる。そして、それと同時に、記録信号に基づいてヘッドカートリッジ4000からインクを吐出することによって、プラテン上に搬送された記録媒体の幅方向に記録が行われる。
続いて図10及び図11を参照して、本例における吐出回復部を説明する。図10は吐出回復部の一側部を示す斜視図、図11は、同一の吐出回復部に関して図10の対向する側部を示す斜視図である。吐出回復部はヘッドカートリッジ4000を載置したキャリッジ2100が記録動作のために往復移動する範囲の外、つまり記録領域の外に配設されており、ヘッドカートリッジ4000の吐出状態を良好に維持するための回復処理をするものである。その配設位置は、例えば、キャリッジ2100及びヘッドカートリッジ4000のホームポジションと対応する位置等、記録領域外の所望位置に設定される。更に本例では、装置本体1000に対して、独立して着脱可能とする吐出回復装置2200によって構成されている。この吐出回復装置2200は、ヘッドカートリッジ4000の記録素子基板4010に付着した異物を除去するためのワイピング手段を備えている。また、インクタンク4100からヘッドカートリッジ4000の記録素子基板4010に至るインク流路におけるインク供給の正常化を図るための吸引回復手段を備えている。
ワイピング手段は、3枚のワイパーブレード2201、2202、2203と、これらを支持するワイパーホルダ2204と、これを図中の矢印C方向に往復運動させるために螺旋状に形成された溝2205aを備えたスクリュー2205より構成されている。
吸引回復手段は、ヘッドカートリッジ4000の記録素子基板4010を覆うことが可能なように、ゴム等で形成されたキャップ2206を備えている。そして、このキャップ2206の内部に設けられる吸収体2207と、キャップ2206をヘッドカートリッジ4000に対して図中B方向に動作し当接離反するためのアーム2208を備えている。
キャップ2206は、アーム2208とは別体的に構成されたホルダに支持され、ホルダがアーム2208に支持されるようになっている。キャップ2206は、チューブ2209によりポンプ2210と接続され、ポンプ2210を動作させることによりキャップ2206に覆われたヘッドカートリッジ4000からインクを吸引する構成となっている。キャップ2206とポンプ2210との途中には、大気連通弁2212を備えた別のチューブ2211が設けられている。
大気連通弁2212は、ゴム材等で構成されており、この弁と当接及び離脱可能な大気連通弁アーム2213が軸2214を中心に図中D方向に回転可能に設けられている。この大気連通弁アーム2213を、大気連通弁2212に対して当接させてポンプ2210を動作すると、ヘッドカートリッジ4000よりインクが吸引される。この大気連通弁アーム2213を離脱してポンプ2210を動作すると、キャップ2206とヘッドカートリッジ4000とが当接状態であっても、ヘッドカートリッジ4000からインクは吸引されず、キャップ2206内に存在するインクのみが吸引される。
吐出回復装置2200におけるこれらのワイピング手段及び吸引回復手段の動作は、PGモータ3022と所定の駆動切り替え手段によって行われる。更に、大気連通弁アーム2213の動作は、搬送モータ3021と所定のギヤ列を介して排出ローラ(不図示)から伝動され動作する仕組みになっている。
更に、吐出回復装置2200における吸引回復手段として、ポンプ2210の動作条件を変更することによって、各種の吸引方法を行えるように制御可能な構成をとっている。本例においては、3種類の吸引モードを持っている。1種類目が、吐出回復用の吸引である。2種類目が、インクタンク4100をヘッドカートリッジに対して装着し直した(交換した)際に、インクタンク内に貯蔵されているインクをインク流路内のインクと連続させるインクタンク交換吸引である。3種類目が、ノズル及びインク流路内インクが充填されていない新しいヘッドカートリッジを初めてキャリッジ2100に装着した際に、内部にインクを充填するインク充填吸引である。これらの各モードでは、吸引用のポンプ2210の吸引動作時間をそれぞれ変更することで、吸引量を変更している。なお、各モードにおける吸引量は、吐出回復用の吸引を基準にして、インクタンク交換吸引は2倍の吸引量、インク充填吸引は3倍の吸引量で設定している。
次に、図12に本発明の記録装置1000における制御系のブロック図を示す。ここで、制御部100はマイクロプロセッサユニット(MPU)101と、後述する処理手順を含む制御プログラム及び各種パラメーターが格納されるROM102、記録画像データが一時格納されるRAM103を備える。また、吐出回復装置2200内の吸引手段に設置されている吸引ポンプを動作させてからの経過時間を計測するための計時器104、入出力ポート105を備える。さらに、計時器104を動作させておく計時器駆動用電池106、計時器104で計測された値を記憶するためにEPROM、EEPROM、FeRAM等の不揮発性メモリ107(NVRAM)を備えている。計時器104は、計時器駆動用電池106によってバックアップされているため、記録装置1000の電源が入っているか否かに拘わらず、常に時間を計測することになる。また、この計時器104は、後述するように所定のタイミングでリセット、スタートされ、その時点にて0にリセットされてからの経過時間を計測する。
また、記録装置1000へ送出する画像信号をつくり出すためのホストコンピュータ(不図示)からインターフェイス回路200を介して記録画像データが入力される。本実施例の記録装置1000は、ホストコンピュータだけでなく操作パネル300を介して制御することもできる。更に、各種センサ400によって記録媒体の有無や、キャリッジ2100のホームポジションの検出、ヘッドカートリッジ4000の装着有無などの検出がなされる。各部に対する電力の供給は、電源部500によって行われる。ヘッドカートリッジ4000に対する吐出回復装置2200は、前述したように吐出部4002に対するキャッピング及び吸引回復を行う。この吸引回復は、ヘッドカートリッジ4000内の複数のノズルからのインク吐出に不良が発生した際に行う。例えば、ヘッドカートリッジ4000に設けられている吐出部4002の中の記録素子基板4010にキャップ2206を当接することで、複数の吐出口4011(図8参照)の周囲を密閉する。そして、その密閉空間内に負圧を作用させることにより、インクを吸引して排出させることにより、同時にノズルやインク流路内の気泡や吐出周囲に付着している塵埃を除去することを行う。
続いて、記録装置1000に搭載されている吐出回復装置2200における吸引動作制御の流れについて説明する。
本発明を適用した記録装置1000は、ヘッドカートリッジ4000を交換可能な形態で構成している。通常、ヘッドカートリッジ4000を交換する場合は、それまで装着されているヘッドカートリッジをキャリッジ2100から取り外し、その次にキャリッジ2100に新しいヘッドカートリッジを装着する。従ってヘッドカートリッジ4000が交換された際には、ノズル及びインク流路内にはインクが存在しないため、まずこれらの中にインクを充填する必要がある。このヘッドカートリッジ4000の交換は、先に説明したように、図4におけるアクセスカバー1003の開閉で行われると共に、記録装置1000内で、この開閉状態を検出できる構成をとっている。但し、このアクセスカバー1003の開閉は、インクタンク4100の交換の際にも行われる。このため、ヘッドカートリッジ4000が交換されたことを認識するには、前記開閉状態の検出と同時に、キャリッジ2100とヘッドカートリッジ4000との間の電気的接続における導通切断の有無を検出する必要がある。これらの2つの検出がなされたときに、ヘッドカートリッジ4000の交換がなされたことを認識する。
これらの動作について、図1を用いて説明する。まず記録装置1000でアクセスカバー1003が開かれ、不図示のマイクロスイッチの動作でアクセスカバー1003が開かれたことを検知した場合には、図1に示すシーケンスに移行する。ここでは、最初にステップS101に進み、ヘッドカートリッジ4000とキャリッジ2100のそれぞれに設けられている電気的接点の接触状態を調査する。このために、前述したコンタクトフレキシブル記録ケーブル3011上のコンタクト部3010と、ヘッドカートリッジ本体4001の外部信号入出力端子4031との間の接触状態で確認をする。ここで通常の接触状態と認識されればステップS104に移行し、非接触状態、即ち両者の電気的接続が切断されていると認識された場合はステップS102に進む。
先のステップS101にてヘッドカートリッジ4000とキャリッジ2100との間で通常の接触状態と認識された状態は、アクセスカバー1003が開かれても、キャリッジ2100に装着されたヘッドカートリッジ4000はそのままである。従って、次に移行したステップS104において、アクセスカバー1003が閉じられるか否かを判定する。ここでアクセスカバー1003が閉じられていない、即ちアクセスカバー1003は開かれた状態のままであると認識された場合には、その時点以降にヘッドカートリッジ4000或いはインクタンク4100の交換が予定されていることになる。このため、ステップS101に戻る。従って、アクセスカバー1003が単に開けられた状態のままのうちは、ステップS101とステップS104との間を循環し、次の動作が行われるまで待機する。
一方、ステップS101にてヘッドカートリッジ4000とキャリッジ2100との間で電気的接続が切断された、即ちヘッドカートリッジ4000がキャリッジ2100から取り外されと認識され、ステップS102に進んだ後は、変数Nの値を0にする。ここで変数Nは、ヘッドカートリッジ4000のタイマー吸引の実施履歴を示す変数であり、後述するように、吸引を実施するたびに値を1ずつ増加させていくものである。そして変数Nの値は、更新されるたびに不揮発性メモリ107に格納される。ここまでのステップにおいては、キャリッジ2100からヘッドカートリッジ4000が取り外されただけの状態であるため、その後に新しいヘッドカートリッジが装着される予定の状態である。従って、この後にステップS103に進む。
ステップS103においては、再度ヘッドカートリッジ4000とキャリッジ2100のそれぞれに設けられている電気的接点の接触状態を調査する。接触されていなければ、新しいヘッドカートリッジの装着が未完了であるので、ステップS102に戻り、前記の接触状態が認識されるまでステップS102とステップS103との間を循環する。またステップS103で電気的接点の接触が認識されると、新しいヘッドカートリッジが取り付けられたことであるので、ステップS104に進む。このステップS104における内容は前述した通りであり、アクセスカバー1003が閉じられるまで待機する。
ステップS104において、不図示のマイクロスイッチの動作によってアクセスカバー1003が閉じられたと認識された後は、ステップS105に進む。そして、記録装置1000を正規の状態に戻すために、キャリッジ2100をホームポジションに戻し、引き続きステップS106に進む。
ステップS106においては、前述したヘッドカートリッジ4000のタイマー吸引実施履歴を示す変数のNを参照する。ここでN=0であるならば、ヘッドカートリッジが新しいものに交換された直後であることになるので、ステップS107に進んでインク充填吸引を行う。一方、N=0が成り立っていなく、1以上の数値が格納されている場合は、先のアクセスカバー1003の開閉で記録ヘッドは交換されていなく、インクタンク交換がなされた場合であるので、ステップS108に進んでインクタンク交換吸引を行う。これらのステップS107及びステップS108のいずれを終えた後でも、吸引操作の直後であるので、ステップS109に進み、吸引を行ってからの経過時間を表すTの値を0にする。ここまでで、ヘッドカートリッジは吐出可能な状態となっているので、一連の処理を終了する。なお、インク充填吸引及びインクタンク交換吸引の内容については、吐出回復装置の説明で述べた設定である。また以上の図1に基づく動作は、アクセスカバー1003が開かれた場合のみになされるものであり、アクセスカバー1003が開かれない場合には、上記動作は行われない。
以下に、タイマー吸引による吸引動作制御について説明するが、該制御は、次に述べる背景から成り立つものである。
記録装置が初めての画像形成に利用されるまでの間において、ノズル及びインク流路の内壁には、それらの構成成分以外の物質が微量ではあっても点在して付着している場合がある。この付着物質としては、記録ヘッドの製造後に検査インクを充填して吐出状態の検査を行って、その検査インクを抜き取った後の僅かな残留インクが挙げられる。また、更にはその残留検査インク中の揮発成分が蒸発した後に付着した検査インク中の固形分からなる物質、或いはその他の夾雑物等が挙げられる。記録装置を利用するために、ノズル及びインク流路にインクを充填する際に、これらの付着物質の存在により、内部を完璧にインクで満たされる状態とすることは困難である場合がある。
特にこのことは、本例のヘッドカートリッジ本体4001のような、記録ヘッド部分を、インクタンクとは別体にして構成し、キャリッジ上にて交換可能とした形態では、ヘッドカートリッジ本体を交換するたびに発生する可能性が高い。この場合、交換用のヘッドカートリッジ本体のノズル及びインク流路中に、インク又はそれに類似の液体で満たし、更にそのヘッドカートリッジ本体の包装形態を密閉性の非常に高いものとすれば、完璧にインク充填することも可能であると考えられる。しかし、ヘッドカートリッジ内に満たした液体が、包装材内部で全く蒸発を起こさない形態とすることは困難であり、またコスト高にも結びつくため、現実性は非常に低い。
また、ノズル及びインク流路を構成するにあたり、本例のタンクホルダ4050、流路形成部材4060との接合形態のように、ノズル及びインク流路用の溝を形成した部材同士を接着や溶着等で接合して溝を管状にする方法もある。このような構成では、接合される部材の各接合面に余剰の接着剤や溶融した材料の流れを逃がして留めておく部分を設けておく必要があり、更にその部分においては前記した材料の流れは不均質である。従って、インク流路の内壁面全周にわたってみたときに、接合部分において僅かな間隙が存在する場合もある。インク充填時に、この間隙は流抵抗が高いためにインクは十分に入り込まずに、気体の空間となり得る。
前述したインク充填は、通常では吐出口からの吸引やインク貯蔵部からの加圧でインクを流動させて行われる。その際、ノズル及びインク流路における内壁部は、ノズル及びインク流路におけるインク流れ方向に対する断面の中心付近、所謂内部に比べてインクの流速が遅くなる。従って内壁部では、付着物質に阻害されてインクで十分に満たされない箇所、或いは接合部分の間隙でインクが入り込まずに空気が残る箇所等が存在することになる。これらの箇所は非常に微小な範囲ではあるが、所謂インクのない箇所が存在するということは、内壁部において微小な気泡が残ることにも結びつく。
これらのインク充填時におけるインクのない箇所を解消しようとすると、吸引又は加圧時の圧力を上げて内壁部近傍におけるインクの流速を上げることが考えられる。しかし、この場合にはインク貯蔵側からインクと共に空気を同時に取り込んでしまうこともあり得るため、圧力を上げすぎることはできない。従って、インク充填時の圧力としては、適正な範囲があり、これは吸引回復時の吸引圧力条件としても同様にいえる。
このようなことから、記録装置の使用初期においては、ノズル及びインク流路において、気泡の存在を完全に排除した状態をつくりだすことはむずかしく、微小な気泡が残留してしまうことは免れない。
しかしながら、このような微小な気泡が残留した状態であっても、その後の時間経過に伴って、残存気泡の一部がインク中に溶解する、残存気泡同士が合体する、残存気泡と時間経過で透過した気体とが合体する、等の現象が次第に起こってくる。また固体と液体が接触した状態で時間が経過すると、その界面において液体の濡れ性が向上していく。このことがノズル及びインク流路の内壁においても同様に起こり、濡れ性の向上に伴って内壁に残留していた気泡が次第に内壁から離れやすくなる。
いずれにしても、時間の経過を伴って、当初は内壁に点在していた微小な気泡群が、大きくなり、しかも内壁から離れやすくなるという状態に移行する。このような状態から吸引回復によってインクを強制排出させると、内部の気泡をインクと共に排出させることが容易となる。従って、インク充填を行ってからある程度の時間を経過した後にインク排出を行うと、インク充填時に比べて気泡の残留は極めて少なくなる。
上記の現象から、インク充填直後において吸引回復を繰り返しても気泡の除去は困難であるが、ある程度の時間を経過した後であれば、1回の吸引回復の操作でも気泡の除去は容易であることがいえる。更に気泡をほとんど除去した後であれば、その後におけるインク中の気泡成長速度も初回に比べて非常に遅くなる傾向があることも見出した。即ち、タイマー吸引の時間設定を延長可能とするものである。つまり吸引回復後においては、気泡成長の核となる微小気泡がノズル及びインク流路中からほとんど消滅するため、その後に部材の壁を通して大気が透過したとしても吐出不良に至る気泡量に成長するまでの時間が長くなる。本発明はこれらの現象を利用したものである。
以下に、タイマー吸引による吸引動作制御について具体的に説明する。前記のとおり、ヘッドカートリッジ4000内のノズル及びインク流路の内壁において微小な気泡群が残留する傾向は、時間の経過と、その後に吸引を行った際のインク排出によって、徐々に減少する。従って、タイマー吸引における設定時間の閾値は、タイマー吸引の経験回数に応じて大きくすることが可能である。即ち、タイマー吸引の経験回数に応じて、タイマーの設定時間を長くすることが可能である。このような特性に基づいて、記録装置1000に搭載されている吐出回復装置2200に備えられている吸引回復手段の動作制御を行う方式について説明する。図2に、この制御の流れを説明するフローチャートを示し、更に図3に制御を行う際に参照するテーブルを示す。
記録装置1000に記録用画像信号が送出されると、ヘッドカートリッジ4000によるインク吐出の前に図2に示すシーケンスに移行する。ここでは、最初にステップS301に進み、前回の吸引動作がなされてから現時点までの経過時間Tを、不揮発性メモリ107に記憶されている値から取得する。その後ステップS302に進み、先に取得したTの値とタイマー吸引の設定時間TMとを比較する。本例においては、タイマー吸引の初期設定値を120時間に設定しており、この値をT0として不揮発性メモリ107に格納している。
ステップS302において、Tの値がTMの値よりも小さければ、現在の経過時間では吸引を行う必要がないと判断されるので、本制御を終了して通常の記録動作に移行する。一方、Tの値がTMの値と同じか或いは超えたときは、時間の経過でヘッドカートリッジ4000のノズル及びインク流路の中で気泡成長が進行し、そのままで正常な吐出の継続ができない場合があるため、吸引回復を実行する必要がある。従って次にステップS303に進んで、吸引動作を行うためのポンプ2210に動作指令を送ることによって吸引回復動作を行う。その吸引回復動作を終えた後はステップS304に進む。
この時点においては、吸引回復を行った直後であることから、吸引回復の累積回数を示すNの値を更新すると共に、吸引回復からの経過時間をリセットする必要がある。そこで、ステップS304において、まず不揮発性メモリ107から現在のNの値を取得する。次にステップS305に進み、取得したNの値に対し1を加えて更新し、その更新したNの値を、改めて不揮発性メモリ107に格納する。続いてステップS306に進んで、吸引回復動作がなされてからの経過時間Tを0とし、不揮発性メモリ107に格納した後にステップS307に進む。
ステップS307においては、図3に示すテーブルを参照して、先のステップS305で更新されたタイマー吸引の累積実施回数Nの値に対応して、初期設定時間に対する増分DTを求める。例えばN=0であった場合には、DT=0時間、N=8であった場合にはDT=72時間、N=30であった場合にはDT=120時間となる。そして、DTを求めた後はステップS308に進み、確定したDTの値をタイマー吸引設定時間の初期値であるT0(本例では120時間)に加えた値を、新しくTMとして更新し、本制御を終了する。
このような制御を行うことにより、ヘッドカートリッジ4000が使用初期の状態にあるときは、ノズル及びインク流路内での気泡成長が相対的に速いので、タイマー吸引の時間設定は相対的に短い。しかし、記録装置1000の使用を継続していって、ノズル及びインク流路内での気泡成長が次第に遅くなっていった状態に対しては、それまでのヘッドカートリッジ4000の使用履歴に応じて適切なタイマー吸引の時間設定を施すことが可能となる。
なお、本実施例では、インク流路内のインクが常に満たされるように、インクタンクのインク残量を検知してインクタンクが完全に空になる前にインクタンクを交換させることを可能とするインク残量検知手段を備えたインクジェット記録装置を使用した。このため、貯蔵インクが消費されたインクタンクから、新しいインクタンクに交換しても、ノズル及びインク流路の内壁の状態は変化しないので、上記特性は維持される。従ってインクタンクを交換するたびに、タイマー吸引の時間設定を元の値に戻す必要はない。
また、これらの気泡の挙動に関しては、X線CT装置を用いることによって、ノズル及びインク流路の内部を観察することによって直接的に確認することができる。
前記実施例においては、1つの記録ヘッド内で複数色のインクを吐出するそれぞれのノズル列を1つの吐出部として有し、その1つの吐出部を一体のキャップを用いて吸引する形態の記録装置の例で説明してきた。しかし本発明はこの形態に特定されるものではなく、記録ヘッドの構成により、各種の記録装置の形態がある。
1つの記録ヘッドが、その中で複数のインク種を供給する形態である場合は、記録ヘッドの構成内の限られた領域内で各インクに対応したインク流路を形成することになる。このため、それぞれのインク流路ごとに断面形状や長さが異なってくる場合が多い。このようにインク流路ごとに断面形状や長さが異なれば、それぞれで充填されているインク中への気体の透過・侵入状況が変化し得る。従ってインク流路ごとにタイマー吸引用の時間設定を行うことが最も好ましい。
インクの異なるノズル列ごとに、該当する領域にキャップを当接して独立して吸引回復動作を行うように構成をとっている記録装置においては、タイマー吸引用の時間延長変更に対しても、ノズル列ごとに独立して制御することができる。そしてこの場合の第1及び第2の閾値の設定、タイマー吸引の累積実施回数に対する増分の設定等も夫々ノズル列ごとに独立して制御可能であるため、より細かな時間設定を行うことで、不必要なインク排出及び記録時間の増大を更に防止することができる。
他に、1つの記録ヘッド内で、吐出するインクの色ごとに2つ以上の吐出部に分けた記録ヘッドを用い、更に吐出部ごとに独立して吸引回復用のキャップを有し、吸引回復動作も吐出部ごとに独立して行うように構成をとっている記録装置がある。このような記録装置においては、タイマー吸引用の時間設定をそれぞれの吐出部で独立して有することが可能である。従って、タイマー吸引用の時間延長変更に対しても、各吐出部ごとに独立して制御することができる。そしてこの場合の第1及び第2の閾値の設定、並びにタイマー吸引の累積実施回数に対する増分の設定などもそれぞれ吐出部ごとに独立して制御可能である。この場合でも細かな時間設定を行うことは可能である。
一方、単色の記録ヘッドを搭載する場合では、前述の実施例の形態のままで適用できることはいうまでもない。
更に、記録ヘッドの形態として、キャリッジ上で交換可能なカートリッジ形態で説明をしてきたが、これに限らず予め記録ヘッドが記録装置内に組み込まれ、交換する必要のない記録装置においても、本発明は同様に適用できるものである。
他に上記の実施例では、計時器を記録装置内で常に動作させておくために、計時器駆動用電池を内蔵しているが、この時間の計測もこの方式に限定されるものではない。記録装置とホストコンピュータとの双方向通信を利用し、ホストコンピュータに内蔵の時計の時刻を読み取り、これを記録装置内の不揮発性メモリに記憶させる方式でも本発明は適用できる。なお、ホストコンピュータに内蔵の時計の時刻を読み取るタイミングとしては、記録信号が記録装置に送出されたとき、タイマー吸引が実行されたとき等が挙げられる。この方式を利用すれば、記録信号が送出された際に読み取った時刻と、不揮発性メモリに記憶されている前回のタイマー吸引が実行されたときの時刻、の2つの値から経過時間を算出することができる。更に、この方式によれば、記録装置内で計時を行う必要がなくなるため、計時器駆動用電池も不要となる利点がある。
また、以上の例においては、強制流動回復として吸引回復操作の場合で説明を行ってきたが、ノズルへインクを供給する経路を加圧することでインクの排出を行う、加圧回復操作を適用したインクジェット記録装置であっても、本発明は全く同様に適用できる。
さらに、本発明は、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式の記録装置であることが好ましい。このようないわゆるサーマル式の記録装置を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できるためである。しかし、本発明は、サーマル式の記録装置に限られない。
また、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。