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JP2007138141A - セルロースアシレートの製造方法、セルロースアシレートフィルム、並びに、該フィルムを用いた偏光板、位相差フィルム、光学フィルムおよび液晶表示装置 - Google Patents

セルロースアシレートの製造方法、セルロースアシレートフィルム、並びに、該フィルムを用いた偏光板、位相差フィルム、光学フィルムおよび液晶表示装置 Download PDF

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JP2007138141A
JP2007138141A JP2006208738A JP2006208738A JP2007138141A JP 2007138141 A JP2007138141 A JP 2007138141A JP 2006208738 A JP2006208738 A JP 2006208738A JP 2006208738 A JP2006208738 A JP 2006208738A JP 2007138141 A JP2007138141 A JP 2007138141A
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cellulose acylate
cellulose
mass
acid
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Toyohisa Oya
豊尚 大屋
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Fujifilm Corp
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Abstract

【課題】平均分子量が高くて微小異物の含有量が少ないセルロースアシレートの製造方法を提供すること。
【解決手段】セルロースの水酸基に対して過剰量の酸無水物を含むエステル化剤を用いてセルロースのアシル化を行った後に、反応混合物の温度を−30℃〜35℃に制御しながら、反応混合物に水を含む反応停止剤を混合して酸無水物を加水分解する。
【選択図】なし

Description

本発明は、平均分子量が高くて微小異物の含有量が少ない、光学フィルムに適したセルロースアシレートの製造方法に関する。さらに、本発明は該セルロースアシレートを用いたセルロースアシレートフィルム、並びに該フィルムを用いた高品位な偏光板、位相差フィルム、光学フィルムおよび液晶表示装置に関する。
セルロースアセテートは、その透明性、強靭性ならびに光学的等方性から、写真感光材料の支持体として用いられてきたほか、近年では液晶表示装置用の光学フィルムとしてその用途を拡大してきている。液晶表示装置用の光学フィルムとしては、偏光板保護フィルムや、フィルムを延伸して面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させ、STN(super twisted nematic)方式などの液晶表示素子の位
相差膜として使用する方法が実施されている。
近年、STN型に比べてより高いRe,Rthの位相差が要求される、VA(vertical
alignment)方式やOCB(optically compensated bend)方式の表示素子が開発され、レターデーション発現性に優れた光学フィルム材料が要求されている。このような要求に対応するための新規な光学フィルム用材料として、セルロースのアセチル基とプロピオニル基の混合エステル(セルロースアセテートプロピオネート)を用いた溶液流延フィルムが開示されている(特許文献1)。また、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートは溶融温度がセルロースアセテートに比べて低いことから、これらのセルロースアシレートを溶融流延製膜して光学フィルムとして用いる方法が開示されている(特許文献2)。
セルロースアセテート以外のセルロースアシレートの市販品として、様々なセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが成型用または塗料用として販売されている(非特許文献1)。
しかし、これらの特許や文献に記載されているセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどは、アシル化の反応性が低く、セルロースアセテートと同一の反応条件を用いて製造を行った場合には、微小異物を含有しやすいという課題を有している。微小異物の実態について詳細は不明ではあるが、未反応またはアシル化度の低いセルロースであると推定されている。このようなセルロースアシレートから作成したフィルムを用いて偏光板を作成し、液晶表示装置に組み込むと、不溶解または不融解物である微小異物の屈折率がセルロースエステルと異なるために偏光状態の異常の原因となり、使用状況によっては光漏れなどの欠陥を起こして液晶表示装置の品位を低下させる場合がある。近年の液晶表示装置の高精細化と相まって、微小異物の含有量の低下は光学フィルム材料に要求される重要な特性の一つと認識されている。
セルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートに含有される微小異物を減少させる手段として、溶解したドープをフィルターでろ過する方法が開示されている(特許文献3)。
特開2001−188128号公報 特開2000−352620号公報 特開2001−188128号公報 イーストマンケミカル社カタログ(1994年)
この方法は、ろ過条件を適切に選択すれば、微小異物の減少に有効であるが、含有する微小異物の量が多い場合には、ろ過圧の上昇や、ろ剤の消耗による生産性の低下が課題となる。また、溶融流延製膜に用いる場合には、異物の生産性へ負荷はさらに大きいものになる。このため、セルロースアシレートが含有する微小異物の量を根本的に減少させることが必須である。
微小異物の量を減少させるための手段としては、反応温度を高くすること、反応時間を長くすること、あるいは、触媒の量を増加させることが有効である。しかしながら、セルロースのアシル化の際には、同時に解重合が進行するため、セルロースアセテートブチレート、あるいは、セルロースアセテートプロピオネートの製造において微小異物を許容量まで減少させると、アシル化完了時の平均分子量はセルロースアセテートに比べて低いものになることが多い。
溶液流延製膜用途においては、平均分子量が低い場合には溶液粘度の低下や製膜時の支持体からの剥離性が悪化するといった弊害を生じる場合があり、溶融流延製膜用途では、低重合度のセルロースアシレートはフィルムの力学特性を悪化させる場合がある。このような理由から、セルロースアシレートの製造工程での分子量の低下は極力避ける必要があるが、従来の技術では、微小異物量の削減と両立させることが困難であった。
これらの従来技術の課題を考慮して、本発明は、平均分子量が高くて微小異物の含有量が少ない、光学フィルムに適したセルロースアシレートの製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は該セルロースアシレートを用いた高品位な偏光板、位相差フィルム、光学フィルムおよび液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討した結果、セルロースアシレートの解重合はアシル化工程のみならず、アシル化工程の後に過剰の酸無水物を加水分解する工程(アシル化停止工程)においても相当量進行し、その反応速度がアシル化停止工程の温度に依存することを見出した。さらに、本発明者は、アシル化停止工程の反応混合物の温度を、−50℃〜35℃、好ましくは、−30℃〜35℃、さらに好ましくは、−20℃〜30℃、特に好ましくは、−10℃〜25℃に制御することにより、解重合の進行が実用上問題ないレベルまで抑制できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明により平均分子量が高く、かつ、微小異物量の少ないセルロースアシレートの製造が可能となり、該セルロースアシレートを使用することにより、高品位な偏光板、位相差フィルム、光学フィルムおよび画像表示装置が製造できるようになった。
すなわち、上記目的は、以下に記載される構成を有する本発明より達成された。
[1] 下記式(1)〜(3)を満足するセルロースアシレートの製造方法であって、
1) セルロースの水酸基に対して過剰量の酸無水物を含むエステル化剤を用いてセルロースのアシル化を行うアシル化工程と、
2) 該アシル化工程の後に、反応混合物の温度を−30℃〜35℃に制御しながら、反応混合物に水を含む反応停止剤を混合して酸無水物を加水分解するアシル化停止工程と、を含むことを特徴とするセルロースアシレートの製造方法。
式(1) 2.0≦A+B≦3
式(2) 0≦A≦2.9
式(3) 0.1≦B≦3
(Aはアセチル基の置換度を表し、Bは炭素数3〜9のアシル基の置換度の総和を表す。)
[2] 前記セルロースアシレートのGPC法による数平均分子量が40000〜500000であることを特徴とする、[1]に記載のセルロースアシレートの製造方法。
[3] 前記セルロースアシレートのGPC法による数平均分子量が60000〜300000であることを特徴とする、[1]に記載のセルロースアシレートの製造方法。
[4] 前記セルロースアシレートのGPC法による数平均分子量が85000〜300000であることを特徴とする、[1]に記載のセルロースアシレートの製造方法。
[5] 前記アシル化停止工程において、前記反応混合物の温度を−20℃〜30℃に制御することを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
[6] 前記アシル化停止工程において、前記反応停止剤を3分〜3時間かけて混合することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
[7] 前記反応停止剤が、5質量%〜80質量%の水を含有する、炭素数2〜4のカルボン酸水溶液であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
[8] 前記セルロースアシレートが、前記炭素数3〜9のアシル基として、プロピオニル基またはブチリル基を有することを特徴とする、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
[9] 前記アシル化工程の最高到達温度が10℃以上25℃未満であることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
[10] [1]〜[9]のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたセルロースアシレートを製膜したことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
[11] 残留溶剤量が0.01質量%以下であることを特徴とする[10]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[12] 前記製膜が溶液流延製膜であることを特徴とする[10]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[13] 前記製膜が溶融流延製膜であることを特徴とする[10]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[14] フィルム面内のレターデーション(Re)とフィルム厚み方向のレターデーション(Rth)が、下記式(4)および(5)を満足することを特徴とする[10]〜[13]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(4) 0nm≦Re≦300nm
式(5) −200nm≦Rth≦500nm
[15] 偏光膜と保護膜を有する偏光板であって、前記保護膜が[10]〜[14]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
[16] [10]〜[14]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする位相差フィルム。
[17] [10]〜[14]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、[15]に記載の偏光板、および[16]に記載の位相差フィルムからなる群より選択される少なくとも1つのフィルム上に、配向した液晶性化合物を含む光学異方性層を有することを特徴とする光学フィルム。
[18] [10]〜[14]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、[15]に記載の偏光板、[16]に記載の位相差フィルム、および[17]に記載の光学フィルムからなる群より選択される少なくとも1つのフィルムを用いることを特徴とする画像表示装置。
本発明の製造方法によれば、平均分子量が高くて微小異物の含有量が少ないセルロースアシレートを製造することができる。このセルロースアシレートは、製膜することにより光学用途に適したフィルムになる。このため、本発明によれば、高品位な偏光板、位相差フィルム、光学フィルムおよび液晶表示装置を提供することができる。
<セルロースアシレートの製造方法>
(セルロースアシレート)
まず、本発明の製造方法で製造されるセルロースアシレート(以下、本発明のセルロースアシレートという)について詳細に記載する。
セルロースを構成する、β−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をエステル化した重合体(ポリマー)である。本発明におけるセルロースアシレートの置換度は、2位、3位および6位のそれぞれの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化はそれぞれ置換度1)の合計を意味する。2位、3位および6位のすべての水酸基がエステル化しているときの置換度は3である。なお、天然のセルロース原料は由来とする生物や精製方法に対応してグルコース以外の構成糖(例えば、キシロース、マンノースなど)の重合体(ヘミセルロース)、リグニンなどのセルロース以外の成分を含有する場合があるが、本発明においては、これらを含有するセルロース原料をアシル化して製造された高分子についても、セルロースアシレートと総称する。
本発明のセルロースアシレートのアシル基は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基のいずれであってもよいが、少なくとも炭素数3〜9のアシル基を含有することを特徴とする。本発明のセルロースアシレートのアシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数2〜7であることが好ましく、炭素数2〜5であることがさらに好ましく、炭素数2〜4であることが特に好ましい。脂肪族アシル基の例としては、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基あるいはアルキニルカルボニル基などを挙げることができる。アシル基が芳香族アシル基である場合、炭素数7〜9であることが好ましく、炭素数7または8であることがさらに好ましく、炭素数7であることが特に好ましい。これらのアシル基は、それぞれさらに置換基を有していてもよい。
好ましいアシル基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、2−メチルプロピオニル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、2,6−ジメチルベンゾイル基、フタロイル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基などであり、特に好ましいものはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基である。
本発明のセルロースアシレートは混合エステルであってもよく、好ましい例として、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートオクタノエート、セルロースアセテートシクロヘキサンカルボキシレート、セルロースアセテートサルフェート、セルロースプロピオネートサルフェート、セルロースアセテートプロピオネートサルフェート、セルロースブチレートサルフェート、セルロースアセテートブチレートサルフェート、セルロースアセテートベンゾエートなどを挙げることができる。さらに好ましい例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロパノエートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートオクタノエートなどを挙げることができる。特に好ましい例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
本発明のセルロースアシレートは、下記式(1)〜(3)を満足する置換度を有することを特徴とする。
式(1) 2.0≦A+B≦3
式(2) 0≦A≦2.9
式(3) 0.1≦B≦3
Aはアセチル基の置換度を表し、以下ではアセチル置換度という。Bは炭素数3〜9のアシル基の置換度の総和を表す。本明細書では、A+Bを全アシル置換度という。
本発明において、全アシル置換度(A+B)は、好ましくは2.3以上3未満であり、さらに好ましくは2.5以上2.98未満であり、特に好ましくは2.6以上2.95未満である。
アセチル置換度(A)は、好ましくは0.05以上2.8未満であり、さらに好ましくは0.1以上2.5未満であり、特に好ましくは0.2以上2.2未満である。
Bで表される炭素数3〜9のアシル基の置換度(B)は、好ましくは0.2以上2.98未満であり、さらに好ましくは0.5以上2.8未満であり、特に好ましくは、0.7以上2.7未満である。
本発明においては、セルロースの2位、3位および6位のそれぞれの水酸基の置換度分布は特に限定されない。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合してもよい。また、多層構造を有するセルロースアシレートフィルムを製造する場合は、層によってセルロースアシレートの種類を変えたり、2種類以上のセルロースアシレートの混合物を用いたりしてもよい。
アシル基の置換度(平均置換度)は、ASTM D−817−91に準じた方法、セルロースアシレートを完全に加水分解し、遊離したカルボン酸またはその塩をガスクロマトグラフィーあるいは高速液体クロマトグラフィーで定量する方法、1H−NMRあるいは13C−NMRによる方法などを単独または組み合わせることにより決定することができる
本発明のセルロースアシレートが、セルロースアセテートプロピオネートであるとき、アセチル置換度(A)は0.2〜1.8であることが好ましく、0.25〜1.5であることがさらに好ましく、0.25〜1.0であることが特に好ましい。プロピオニル基の置換度(以下、プロピオニル置換度という)は、0.9〜2.7であることが好ましく、1.4〜2.65であることがさらに好ましく、1.5〜2.6であることが特に好ましい。また、全アシル置換度(A+B)は2.75〜2.99であることが好ましく、2.77〜2.97であることがさらに好ましく、2.80〜2.95であることが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートが、セルロースアセテートブチレートであるとき、アセチル置換度(A)は0.3〜2.0であることが好ましく、0.4〜1.8であることがさらに好ましく、0.6〜1.5であることが特に好ましい。ブチリル基の置換度(以下、ブチリル置換度という)は、0.5〜2.7であることが好ましく、0.8〜2.5であることがさらに好ましく、1.0〜2.4であることが特に好ましい。また、全アシル置換度(A+B)は2.70〜2.99であることが好ましく、2.75〜2.97であることがさらに好ましく、2.80〜2.95であることが特に好ましい。
(原料および前処理)
本発明の製造方法に用いるセルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92質量%〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。
セルロース原料がシート状や塊状である場合は、あらかじめ解砕しておくことが好ましく、セルロースの形態は綿状、羽毛状、あるいは粉末状になるまで解砕が進行していることが好ましい。セルロースアシレートの原料綿や一般的な合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7頁〜12頁にも詳細に記載されている。
(活性化)
セルロース原料はアシル化に先立って、活性化剤と接触させる処理(活性化)を行うことが好ましい。好ましい活性化剤としては、カルボン酸、水、または両者の混合物を用いることができるが、水を用いた場合には、活性化の後に酸無水物を過剰に添加して脱水を行ったり、水を置換するためにカルボン酸で洗浄したり、アシル化の条件を調節したりするといった工程を含むことが好ましい。活性化剤はいかなる温度に調節して添加してもよく、添加方法としては噴霧、滴下、浸漬などの方法から選択することができる。
活性化剤として好ましいカルボン酸は、炭素数2〜9のカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−メチルプロピオン酸、吉草酸、3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2,2−ジメチルプロピオン酸(ピバル酸)、ヘキサン酸、2−メチル吉草酸、3−メチル吉草酸、4−メチル吉草酸、2,2−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、ヘプタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸など)であり、より好ましくは、酢酸、プロピオン酸、または酪酸であり、特に好ましくは酢酸である。
活性化の際は、必要に応じてさらに硫酸などのアシル化の触媒を加えることもできる。しかし、硫酸のような強酸を添加すると、解重合が促進されることがあるため、その添加量はセルロースに対して0.1質量%〜10質量%程度に留めることが好ましい。また、2種類以上の活性化剤を併用したり、炭素数2〜9のカルボン酸の酸無水物を添加したりしてもよい。
活性化剤の添加量は、セルロースに対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。活性化剤の量が5質量%以上であれば、セルロースの活性化の程度が低下するなどの不具合が生じないので好ましい。活性化剤の添加量の上限は生産性を低下させない限りにおいて特に制限はないが、セルロースに対して質量で100倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることが特に好ましい。活性化剤をセルロースに対して大過剰加えて活性化を行い、その後、ろ過、遠心分離、送風乾燥、加熱乾燥、減圧留去、溶媒置換などの操作を単独または組み合わせで行って活性化剤の量を減少させてもよい。
活性化の時間は20分以上であることが好ましい。上限については生産性に影響を及ぼさない範囲であれば特に制限はないが、好ましくは72時間以下、さらに好ましくは24時間以下、特に好ましくは12時間以下である。また、活性化の温度は0℃〜90℃が好ましく、15℃〜80℃がさらに好ましく、20℃〜70℃が特に好ましい。セルロースの活性化の工程は加圧または減圧条件下で行うこともできる。また、加熱の手段として、マイクロ波や赤外線などの電磁波を用いてもよい。
(アシル化)
本発明の製造方法においては、セルロースにカルボン酸の酸無水物を加え、ブレンステッド酸またはルイス酸を触媒として反応させることで、セルロースの水酸基をアシル化することが好ましい。
6位置換度の大きいセルロースアシレートを合成する場合は、特開平11−5851号、特開2002−212338号や特開2002−338601号などの各公報の記載を参考にすることができる。
(酸無水物)
カルボン酸の酸無水物として、好ましくはカルボン酸としての炭素数が2〜9であり、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、2−メチルプロピオン酸無水物、吉草酸無水物、3−メチル酪酸無水物、2−メチル酪酸無水物、2,2−ジメチルプロピオン酸無水物(ピバル酸無水物)、ヘキサン酸無水物、2−メチル吉草酸無水物、3−メチル吉草酸無水物、4−メチル吉草酸無水物、2,2−ジメチル酪酸無水物、2,3−ジメチル酪酸無水物、3,3−ジメチル酪酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、ヘプタン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、安息香酸無水物などを挙げることができる。
より好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物などの無水物であり、特に好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物である。
本発明の製造方法においては、酸無水物はセルロースの水酸基に対して過剰当量添加する。すなわち、セルロースの水酸基に対して1.1〜50当量添加することが好ましく、1.2〜30当量添加することがより好ましく、1.5〜10当量添加することが特に好ましい。
セルロース混合アシレートを得る方法としては、アシル化剤として2種のカルボン酸無水物を混合または逐次添加により反応させる方法、2種のカルボン酸の混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を用いる方法、カルボン酸と別のカルボン酸の酸無水物(例えば、酢酸とプロピオン酸無水物)を原料として反応系内で混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を生成させてセルロースと反応させる方法などが好ましいが、置換度が3に満たないセルロースアシレートを本発明の製造方法により一旦合成し、さらに、酸無水物や酸ハライドを用いて、残存する水酸基をさらにアシル化してもよい。
混合エステルを調製する目的で、炭素数の異なるカルボン酸や酸無水物を併用して使用する際には、その組成比は目的とする混合エステルの置換比に応じて決定することが好ましい。
(触媒)
本発明におけるセルロースアシレートの製造に用いるアシル化の触媒には、ブレンステッド酸またはルイス酸を使用することが好ましい。ブレンステッド酸およびルイス酸の定義については、例えば、「理化学辞典」第五版(2000年)に記載されている。好ましいブレンステッド酸の例としては、硫酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを挙げることができる。好ましいルイス酸の例としては、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化マグネシウムなどを挙げることができる。
触媒としては、硫酸または過塩素酸がより好ましく、硫酸が特に好ましい。触媒の好ましい添加量は、セルロースに対して0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは3〜12質量%である。また、触媒の好ましい濃度は、反応混合物に対して、0.001〜15質量%であり、より好ましくは0.01〜10質量%であり、特に好ましくは0.1〜5質量%である。
(溶媒)
アシル化を行う際には、粘度、反応速度、攪拌性、アシル置換比などを調整する目的で、溶媒を添加してもよい。このような溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、カルボン酸、アセトン、エチルメチルケトン、トルエン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどを用いることもできるが、好ましくはカルボン酸であり、例えば、炭素数2〜9のカルボン酸{例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−メチルプロピオン酸、吉草酸、3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2,2−ジメチルプロピオン酸(ピバル酸)、ヘキサン酸、2−メチル吉草酸、3−メチル吉草酸、4−メチル吉草酸、2,2−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、シクロヘキサンカルボン酸}などを挙げることができる。さらに好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸などを挙げることができる。これらの溶媒は混合して用いてもよい。
溶媒の量は任意に選択することができるが、好ましい添加量は、セルロースに対して0〜5000質量%であり、より好ましくは0〜3000質量%であり、特に好ましくは0〜2000質量%である。
活性化剤、アシル化剤、溶媒、触媒の合計量のセルロースに対する質量比は、1.5:1ないし100:1であることが好ましく、1.9:1ないし50:1であることがより好ましく、3:1ないし20:1であることが特に好ましい。
(アシル化の条件)
アシル化を行う際には、酸無水物と触媒、さらに、必要に応じて溶媒を混合してからセルロースと混合してもよく、またこれらを別々にセルロースと逐次混合してもよいが、通常は、酸無水物と触媒との混合物、または、酸無水物と溶媒と触媒との混合物をアシル化剤として調整してからセルロースと反応させることが好ましい。アシル化の際の反応熱による反応容器内の温度上昇を抑制するために、アシル化剤は予め冷却しておくことが好ましい。冷却温度としては、−50℃〜20℃が好ましく、−35℃〜10℃がより好ましく、−25℃〜5℃が特に好ましい。アシル化剤は液状で添加しても、凍結させて結晶、フレーク、またはブロック状の固体として添加してもよい。
アシル化剤はさらに、セルロースに対して一度に添加しても、分割して添加してもよい。また、アシル化剤に対してセルロースを一度に添加しても、分割して添加してもよい。アシル化剤を分割して添加する場合は、同一組成のアシル化剤を用いても、組成の異なる複数のアシル化剤を用いてもよい。好ましい例として、1)触媒のアシル化剤溶液をまず添加し、次いで、触媒を含まないアシル化剤を添加する、2)触媒を含まないアシル化剤をまず添加し、次いで、触媒のアシル化剤溶液を添加する、3)触媒の一部を含むアシル化剤をまず添加し、次いで、触媒の残りを含むアシル化剤を添加する、などを挙げることができる。これらの組み合わせに対し、さらにアシル化剤中の溶媒と酸無水物の組成を任意に変化させて組み合わせることができる。
セルロースのアシル化は発熱反応であるが、本発明のセルロースアシレートを製造する方法においては、アシル化の際の最高到達温度が50℃未満にすることが好ましい。反応温度が50℃未満であれば、解重合が進行して本発明の用途に適した重合度のセルロースアシレートを得難くなるなどの不都合が生じにくくなるため好ましい。アシル化の際の最高到達温度は、好ましくは35℃未満であり、より好ましくは25℃未満であり、特に好ましくは20℃未満である。反応温度は温度調節装置を用いて制御しても、アシル化剤の初期温度で制御してもよい。反応容器を減圧して、反応系中の液体成分の気化熱で反応温度を制御することもできる。アシル化の際の発熱は反応初期が大きいため、反応初期には冷却し、その後は加熱するなどの制御を行うこともできる。アシル化の終点は、光線透過率、溶液粘度、反応系の温度変化、反応物の有機溶媒に対する溶解性、顕微鏡観察、偏光顕微鏡観察などの手段により決定することができ、通常は反応混合物中から未反応セルロース繊維が消失した点を基準とする。
反応の最低温度は−50℃以上が好ましく、−30℃以上がより好ましく、−20℃以上が特に好ましい。好ましいアシル化時間は0.5時間〜24時間であり、1時間〜12時間がより好ましく、1.5時間〜6時間が特に好ましい。0.5時間以上であれば通常の反応条件でも反応が十分に進行しやすく、24時間以下であれば工業的な製造効率がよくなる傾向がある。
(反応停止剤)
本発明の製造方法においては、アシル化反応の後に、反応停止剤を混合することを特徴とする。
本発明で用いる反応停止剤としては、水を含む組成物を用いるが、さらに、酸無水物を分解する水以外の物質(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール)を併せて用いてもよい。反応停止剤は、後述の中和剤を含んでいてもよい。
水を含む組成物の例としてはいかなる組み合わせでもよいが、セルロースアシレートが望まない形態で沈殿したりする場合があるなどの不都合を避けるため、水を直接添加するよりも、溶媒(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトンなど)との混合物を添加することが好ましい。溶媒としてはカルボン酸がより好ましく、酢酸、プロピオン酸、酪酸がさらに好ましく、酢酸が特に好ましい。溶媒と水の組成比は任意の割合で用いることができるが、水の含有量が5質量%〜80質量%、さらには10質量%〜60質量%、特には15質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。水を含む組成物は、単一の組成のものを用いても、複数の組成のものを組みあわせて用いてもよい。
反応混合物に添加する水の量は、少なくとも残存する酸無水物の当量以上あればよいが、過剰量であることが好ましい。過剰とする水の量は、目的とするセルロースアシレートの置換度、置換度分布、分子量、残存硫酸根量などに応じて任意に選択できるが、酸無水物の加水分解が終了した時点で、反応混合物中のカルボン酸(セルロースにアシル基として結合したものは含まない)に対して、0.1〜50モル%であることが好ましく、0.5〜40モル%であることがさらに好ましく、1〜30モル%であることが特に好ましい。
本発明においては、反応停止工程において、反応混合物の温度を−30℃〜35℃に制御しながら、反応混合物に水を含む反応停止剤を混合して酸無水物を加水分解することを特徴とする。反応停止工程における反応混合物の温度は、−20℃〜30℃であることが好ましく、−15℃〜25℃であることが好ましく、−15℃〜23℃であることが特に好ましい。
酸無水物の加水分解は発熱反応であるが、反応停止工程中に反応混合物の温度が35℃を超過すると、反応停止工程中の発熱による解重合が無視できない程度起こる場合がある。
本発明によれば、アシル化の反応性が低く、アシル化完了時の平均分子量がセルロースアセテートに比べて低いものになることが多いプロピオニル基やブチリル基などを含有するセルロースアシレートについても、高い分子量のものを得ることが可能である。
本発明の製造方法は、いかなる分子量のセルロースアシレートの製造に用いてもよいが、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法による数平均分子量が40000〜500000であるセルロースアシレートの製造に好ましく用いることができる。さらに好ましくは、数平均分子量が60000〜300000であり、特に好ましくは、80000〜300000である。平均重合度の他の測定方法としては、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)などを用いることもできる。
反応停止剤は、アシル化の反応容器に添加しても、反応停止剤の容器に反応物を添加してもよい。反応停止剤は3分〜3時間かけて添加することが好ましい。反応停止剤の添加時間が3分以上であれば、発熱が大きくなりすぎて重合度低下の原因となったり、酸無水物の加水分解が不十分になったり、セルロースアシレートの安定性を低下させたりするなどの不都合を生じにくいので好ましい。また反応停止剤の添加時間が3時間以下であれば、工業的な生産性の低下などの問題も生じないので好ましい。反応停止剤の添加時間として、好ましくは4分〜2時間であり、さらに好ましくは5分〜1.5時間であり、特に好ましくは10分〜1時間である。反応停止剤を添加する際には反応容器を冷却しても冷却しなくてもよいが、反応混合物の温度を本発明の範囲内に保持する目的から、反応容器を冷却して温度上昇を抑制することが好ましい。また、反応停止剤を冷却しておくことも好ましい。
(中和剤)
アシル化の反応停止工程中あるいはアシル化の反応停止工程後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解、カルボン酸およびエステル化触媒の一部または全部の中和、残留硫酸根量と残留金属量の調整などのために、中和剤またはその溶液を添加してもよい。
中和剤の好ましい例としては、アンモニウム、有機4級アンモニウム(例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ジイソプロピルジエチルアンモニウムなど)、アルカリ金属(好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、さらに好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、特に好ましくは、ナトリウム、カリウム)、2族の金属(好ましくは、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、さらに好ましくは、カルシウム、マグネシウム、バリウム、特に好ましくは、カルシウム、マグネシウム)、3〜12族の金属(例えば、鉄、クロム、ニッケル、銅、鉛、亜鉛、モリブデン、ニオブ、チタンなど)または13〜15族の元素(例えば、アルミニウム、スズ、アンチモンなど)の、炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、フタル酸水素塩、クエン酸塩、酒石酸塩など)、水酸化物または酸化物などを挙げることができる。これら中和剤は混合して用いてもよく、混合塩(例えば、酢酸プロピオン酸マグネシウム、酒石酸カリウムナトリウムなど)を形成していてもよい。
中和剤としてさらに好ましくは、アルカリ金属または2族の金属の炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩、水酸化物または酸化物などであり、特に好ましくは、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムの、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物である。
中和剤の溶媒としては、水、アルコール(例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなど)、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、ケトン(例えば、アセトン、エチルメチルケトンなど)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの極性溶媒、および、これらの混合溶媒を好ましい例として挙げることができる。
(部分加水分解)
このようにして得られたセルロースアシレートは、全アシル置換度がほぼ3に近いものであるが、所望の置換度のものを得る目的で、少量の触媒(一般には、残存する硫酸などのアシル化触媒)と水との存在下で、20〜90℃に数分〜数日間保つことによりエステル結合を部分的に加水分解し、セルロースアシレートのアシル置換度を所望の程度まで減少させること(いわゆる熟成)が一般的に行われる。部分加水分解の過程でセルロースの硫酸エステルも加水分解されることから、加水分解の条件を調節することにより、セルロースに結合した硫酸エステルの量を削減することができる。
部分加水分解の条件によりセルロースアセテートの置換度と置換度分布を調節する方法が、特開2003−201301号公報に記載されている。
(部分加水分解の停止)
部分加水分解の進行により所望の置換度のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を、前記のような中和剤またはその溶液を用いて完全に中和し、部分加水分解を停止させることが好ましい。反応混合物に添加する中和剤の量は、硫酸根(遊離の硫酸、セルロースの結合硫酸)に対して過剰当量であることが好ましい。中和剤は一度に添加しても、分割して添加することもできるが、部分加水分解(熟成)の完了後に、中和剤の量を硫酸根に対して過剰当量になるように添加することが好ましい。
セルロースに結合した硫酸(セルロースサルフェート)は1価の酸であるが、本発明においては、遊離した硫酸に換算して中和剤の当量を計算する。これにより、中和剤の当量は添加した硫酸の量から求めることが可能となる。本発明において、中和剤の好ましい添加量は、硫酸根に対して好ましくは1.2〜50当量であり、さらに好ましくは1.3〜20当量であり、特に好ましくは、1.5〜10当量である。
反応溶液に対して溶解性が低い塩を生成する中和剤(例えば、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなど)を添加することにより、溶液中あるいはセルロースに結合した触媒(例えば、硫酸エステル)を効果的に除去することも好ましい。
(後加熱工程)
本発明の製造方法では、上記部分加水分解の停止後の反応混合物を、さらに30℃〜100℃に保持すること(後加熱工程)もまた好ましい。本工程を実施することにより、セルロースアシレートの結合硫酸量をさらに低下させ、熱安定性の良好なセルロースアシレートを得ることができる。本工程によって、セルロースアシレートの結合硫酸量が低下する理由については、いかなる理論にも拘泥するものではないが、過剰の塩基の存在下でセルロースアシレート溶液を加熱することにより、アシルエステルに比べて加水分解されやすい硫酸エステルが徐々に脱エステル化され、遊離した硫酸が塩基によって中和されることで平衡が脱エステル側に偏るためであると考えられる。
後加熱工程において、保持する温度は好ましくは30℃〜100℃であり、さらに好ましくは50℃〜90℃であり、特に好ましくは60℃〜80℃である。温度が30℃以上であれば、結合硫酸量を低減する効果が十分に得られやすく、100℃以下であれば、操作性や安全性の点で有利である。また、後加熱工程において保持する時間は好ましくは15分間〜100時間であり、さらに好ましくは30分間〜100時間であり、特に好ましくは1時間〜50時間である。15分間以上であれば結合硫酸量を低減する効果が十分に得られやすく、100時間以下であれば工業的生産性の点で有利である。後加熱工程においては、反応混合物は攪拌することが好ましい。また、中和剤、水、溶媒、およびこれらの混合物を後加熱工程中に追加してもよい。
(ろ過)
セルロースアシレート中の未反応物、難溶解性塩、その他の異物などを除去または削減することを目的として、反応混合物(ドープ)のろ過を行ってもよい。ろ過は、アシル化の完了から再沈殿までの間のいかなる工程において行ってもよいが、再沈殿の直前がより好ましい。
ろ過に用いるフィルターの保留粒子径は、好ましくは0.1μm〜50μmであり、さらに好ましくは0.5μm以上40μm以下であり、特に好ましくは1μm〜30μmである。フィルターの保留粒子径が0.1μm以上であれば、ろ過圧が過度に上昇することがなく、実用的な工業生産に適している。また、保留粒子径が40μm以下であれば、異物の除去がより十分にできる。また、濾過は2回以上繰り返してもよい。
フィルターの材質は溶媒によって悪影響を受けないものであれば特に限定されないが、好ましい例としては、セルロース系フィルター、金属フィルター、金属焼結フィルター、セラミック焼結フィルター、テフロンフィルター(PTFEフィルター)、ポリエーテルサルホンフィルター、ポリプロピレンフィルター、ポリエチレンフィルター、ガラス繊維性フィルターなどを挙げることができ、これらを組み合わせて使用してもよい。中でもステンレス製の金属フィルター、金属焼結フィルターが好ましい。
フィルターの材質として、電荷的捕捉機能を有するフィルターもまた、好ましく用いることができる。電荷的捕捉機能を有するフィルターとは、電気的に荷電異物を捕捉除去する機能を有するフィルターであり、通常、濾材に電荷を付与したものが用いられる。このようなフィルターの例としては、特表平4−504379号公報、特開2000−212226号公報などに記載されたものを選択することができる。
また、濾過助剤として、セライト、層状粘土鉱物(好ましくは、タルク、マイカ、カオリナイトなど)などをセルロースアシレート溶液に混合し、これを濾過するいわゆるケーク濾過を行う方法も好ましく用いることができる。
ろ過圧や取り扱い性の制御の目的から、ろ過に先立って適切な溶媒で希釈することも好ましい。
(再沈殿)
このようにして得られたセルロースアシレート溶液を、水またはカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸など)水溶液のような貧溶媒中に混合するか、セルロースアシレート溶液中に、貧溶媒を混合することにより、セルロースアシレートを再沈殿させ、洗浄および安定化処理により目的のセルロースアシレートを得ることができる。再沈殿は連続的に行っても、一定量ずつバッチ式で行ってもよい。セルロースアシレート溶液の濃度および貧溶媒の組成をセルロースアシレートの置換様式あるいは重合度により調整することで、再沈殿したセルロースアシレートの形態や見かけ密度、あるいは分子量分布を制御することも好ましい。
(洗浄)
生成したセルロースアシレートは洗浄処理することが好ましい。洗浄溶媒はセルロースアシレートの溶解性が低く、かつ、不純物を除去することができるものであればいかなるものでもよいが、通常は水または温水が用いられる。洗浄水の温度は、好ましくは15℃〜100℃であり、さらに好ましくは25℃〜90℃であり、特に好ましくは30℃〜80℃である。洗浄処理はろ過と洗浄液の交換を繰り返すいわゆるバッチ式で行っても、連続洗浄装置を用いて行ってもよい。再沈殿および洗浄の工程で発生した廃液を再沈殿工程の貧溶媒として再利用したり、蒸留などの手段によりカルボン酸などの溶媒を回収して再利用したりすることも好ましい。
洗浄の進行はいかなる手段で追跡を行ってよいが、水素イオン濃度、イオンクロマトグラフィー、電気伝導度、ICP、元素分析、原子吸光スペクトルなどの方法を好ましい例として挙げることができる。
このような処理により、セルロースアシレート中の触媒(硫酸、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩化亜鉛など)、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物など)、中和剤と触媒との反応物、カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、中和剤とカルボン酸との反応物などを除去することができ、このことはセルロースアシレートの安定性を高めるために有効である。
(安定化)
洗浄後のセルロースアシレートは、安定性をさらに向上させたり、カルボン酸臭を低下させたりするために、弱アルカリ(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物など)の水溶液などの安定化剤で処理することも好ましい。残存させる安定化剤の量と種類は、洗浄液の量、洗浄の温度、時間、攪拌方法、洗浄容器の形態、安定化剤の組成や濃度により制御できる。
(乾燥)
本発明においてセルロースアシレートの含水率を好ましい量に調整するためには、セルロースアシレートを乾燥することが好ましい。乾燥の方法については、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されないが、加熱、送風、減圧、攪拌などの手段を単独または組み合わせて用いることで効率的に行うことが好ましい。乾燥温度は、好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは50〜100℃である。本発明のセルロースアシレートは、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
(形態)
本発明の製造方法によって製造されるセルロースアシレートは、粒子状、粉末状、繊維状、塊状など種々の形状にすることができる。フィルム製造の原料としては粒子状または粉末状であることが好ましいことから、乾燥後のセルロースアシレートは、粒子サイズの均一化や取り扱い性の改善のために、粉砕や篩がけを行ってもよい。セルロースアシレートが粒子状であるとき、使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子サイズを有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子サイズを有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。また、本発明のセルロースアシレートは、見かけ密度が好ましくは0.5〜1.3g/cm3、さらに好ましくは0.7〜1.2g/cm3、特に好ましくは0.8〜1.15g/cm3である。見かけ密度の測定法に関しては、JIS K−73
65に規定されている。
本発明のセルロースアシレートは安息角が10〜70度であることが好ましく、15〜60度であることがさらに好ましく、20〜50度であることが特に好ましい。
(微小異物)
セルロースアシレート中には、肉眼では認識することは困難で、顕微鏡や偏光顕微鏡などを用いることで観察される微小異物が含まれていることがある。この微小異物は、その直径が1μm以上10μm未満で、クロスニコル下の偏光顕微鏡で観察される。微小異物を含むセルロースアシレートから偏光板保護フィルム等を作製し、これを画像表示装置に組み込むと、特に光を全て遮断する黒表示の場合に光漏れによる故障を起こすことがある。このため、光学フィルムとして使用する場合にセルロースアシレート中に許容される微細異物量は、好ましくは0個/mm2〜10個/mm2、より好ましくは0個/mm2〜8個/mm2、特に好ましくは0個/mm2〜5個/mm2である。
これらの微小異物は、製膜工程において、セルロースアシレート溶液(ドープ)あるいは溶融物をろ過することによってある程度取り除くことは可能であるが、ろ過圧が上がり過ぎたり、ろ剤の交換頻度が高くなりすぎたりするのを防止するため、セルロースアシレートの製造段階でその大部分を除去することが好ましい。
本発明のセルロースアシレートの製造方法においては、微小異物の量を削減し、かつ、重合度を高く維持することが可能である。
(残留溶剤量)
本発明の製造方法によって製造されるセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量はできるだけ少ないことが好ましい。具体的には、残留溶剤量は0.01質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以下であることがさらに好ましく、検出されないことが特に好ましい。後述する溶融流延製膜法によりセルロースアシレートフィルムを製膜すれば、残留溶剤量が0.01質量%以下のフィルムを得ることができる。フィルム中の残留溶剤量については、ガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
(残留硫酸根量)
本発明の製造方法によって製造されるセルロースアシレートは、残留硫酸根量S(Sは残留硫酸根の硫黄原子の含有量)が0ppm<S<200ppmであることが好ましい。残留硫酸根量Sとしてより好ましくは1ppm<S<150ppmであり、さらに好ましくは、2ppm<S<100ppmであり、さらにより好ましくは5ppm<S<50ppmであり、特に好ましくは5ppm<S<30ppmである。この範囲内であれば、セルロースアシレートの熱安定性が良好となる。残存硫酸根量が200ppm未満であれば、後述の金属量との関係によって熱安定性が低下する問題が生じにくく、高温下に置かれた場合であっても光学フィルムとして不適切な着色を生じにくい。200ppmを超える場合は光学フィルム用途としては商品として供するに耐えない場合がある。
残留硫酸根量が0ppm<S<200ppmであるセルロースアシレートの熱安定性が良好である理由の詳細は明らかではないが、この範囲の上限を超える過剰の硫酸根がセルロースアシレート中に存在している状態で加熱を行うと、セルロースアシレートの酸化や分解が起こって着色が生じ、その程度が残留硫酸根の量が増加すると顕著になることから、フィルムを作成するに当たっての許容される量がこの範囲に合致するものと推定される。
ここでいう残留硫酸根は、結合硫酸、非結合の硫酸、塩、エステル、錯体などの形でセルロースアシレート中に存在している硫酸根の全量の合計をいう。セルロースアシレートの硫酸根は、アシル化の触媒としての硫酸がセルロースの水酸基に硫酸エステルなどの形で結合したもの、あるいは、遊離の硫酸、塩、エステル、錯体などの形でセルロースアシレート中に取り込まれ、洗浄工程で除去しきれないものが残留するものと考えられる。
本発明において残留硫酸根の量は、硫黄原子の含有量で定義する。すなわち、例えば、硫酸98.07gは硫黄原子32.06gに換算して、硫黄原子の含量で表記する。セルロースアシレート中の硫黄の含有量は、例えば、高周波燃焼装置あるいは電気炉にて試料を酸素気流中で燃焼させ、発生した二酸化硫黄等の硫黄酸化物を、過酸化水素を含む吸収液に吸収させ、水酸化ナトリウム水溶液による容量滴定法あるいは電量滴定法によって定量することができる。
(残留金属量)
本発明においては、セルロースアシレートの残留アルカリ金属量M1ならびに残留2族金属量M2の合計Mは、好ましくは0ppm<M<600ppm、さらに好ましくは、5ppm<M<400ppm、特に好ましくは10ppm<M<200ppmである。ここでいうアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが挙げられるが、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはナトリウム、カリウムである。2族金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどを挙げられるが、好ましくはマグネシウム、カルシウム、バリウムであり、さらに好ましくはマグネシウム、カルシウムである。これらの金属が存在することでセルロースアシレートの熱安定性をさらに良化することができる。残留金属の量と種類は、中和剤や安定化剤として添加する化合物の量と種類、使用する水の金属含有量、ならびに、工程上の処理によって制御することができる。
これらのセルロースアシレート中の金属の量は、セルロースアシレートを焼成して得られる残渣、あるいは、硝酸中での高周波湿式灰化を行うなどの方法で前処理した試料について、イオンクロマトグラフィー、原子吸光スペクトル分析、ICP分析、ICP−MS分析などの方法で分析することより定量できる。
セルロースアシレートの残留硫酸根量S'(S'は残留硫酸根の硫黄原子の含有量のモル換算量)、残留アルカリ金属のモル換算量M1'および残留2族元素のモル換算量M2'から下記式(A)にて与えられる金属/硫黄当量比は、0.25〜3であることが好ましく、0.5〜2.5であることがさらに好ましく、0.6〜1.8であることが特に好ましい。金属/硫黄当量比が0.25〜3であればセルロースアシレートの熱安定性が良好であり、セルロースアシレートフィルムやセルロースアシレート溶液の白濁、フィルムの耐候性の悪化、製膜性の悪化、着色といった問題が発生しにくい。
式(A): 金属/硫黄当量比={(M1'/2)+M2'}/S'
<セルロースアシレートフィルム>
次に、本発明のセルロースアシレートフィルムについて説明する。本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記の本発明のセルロースアシレートを製膜したものである。その製膜方法は、特に規定するものではないが、溶融流延製膜法または溶液流延製膜法により製造することが好ましい。
(溶融流延製膜法)
本発明のセルロースアシレートフィルムの溶融流延製膜法による製法の好ましい形態について説明する。
本発明において、セルロースアシレートは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明のセルロースアシレート以外の高分子成分を適宜混合することもできる。混合される高分子成分はセルロースアシレートと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの光線透過率が80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上であることが好ましい。
[1]可塑剤
本発明では可塑剤を添加することも好ましく行われる。可塑剤の例としては、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステル類やカルボン酸エステル類等が挙げられる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えばリン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ビフェニルジフェニル等を挙げることができる。
カルボン酸エステルとしては、例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルおよびフタル酸ジ(エチルヘキシル)等のフタル酸エステル類、およびクエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類を挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独または併用することも好ましい。
これらの可塑剤の添加量は、セルロースアシレートに対して0質量%〜15質量%が好ましく、0質量%〜10質量%がより好ましく、0質量%〜8質量%が特に好ましい。これらの可塑剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。
[2]安定剤
本発明において、フィルム構成材料中に、安定剤の少なくとも一種を前記セルロースアシレートの加熱溶融前または加熱溶融時に添加することが好ましい。これらは、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために有用である。その時、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。これらの安定化剤は次に挙げられる効果に用いるがこれらに限定されるものではない。
安定剤の代表的な素材としては、フェノール系安定剤、亜リン酸系安定剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定剤、アミン系安定剤、エポキシ系安定剤、ラクトン系安定剤、アミン系安定剤、金属不活性化剤(スズ系安定剤)などが挙げられる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載がある。
これらの安定剤は、それぞれ単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、セルロース樹脂の質量に対して安定化剤の添加量は0.001質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜0.8質量%である。
[2−1]フェノール系安定剤
本発明において、フィルム構成材料の熱溶融時における安定化のために用いる化合物として有用なヒンダードフェノール系安定剤は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているものを始めとする2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。
中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WLとして入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手することができる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80として入手することができる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336Bとしても入手することができる。
[2−2]亜リン酸系安定剤
上記の亜リン酸系安定剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
本発明の亜リン酸エステル系安定剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。亜リン酸エステル系安定剤の具体例として、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定剤の好ましい具体例として、亜リン酸エステル系安定剤は、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されているものを挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定剤はこれらに限定されるものではない。また、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定剤も好ましく用いられ、具体的な化合物として、特開平10−273494号公報に記載される化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる安定化剤はこれらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPを挙げることができる。
[2−3]チオエーテル系安定剤
安定剤として使用されるチオエーテル系安定剤について説明する。本発明においてセルロースアシレートに添加することができるチオエーテル系安定剤は分子量が500以上であるものが好ましく、公知の任意のチオエーテル系安定剤を用いることができる。
これらは、住友化学株式会社からスミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
[2−4]エポキシ系安定剤
エポキシ系安定剤は、酸捕捉剤として作用し、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでいるものが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たり約8〜40モルのエチレンオキシドなどを縮合させることによって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、および塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子を有する脂肪酸と、2〜4個の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、および種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油および他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、およびエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
本発明で用いるエポキシ系安定剤としては、脂肪族、芳香族、脂環族、芳香族脂肪族またはヘテロ環式構造を有し、側鎖としてエポキシ基を有する化合物も有用である。エポキシ基は好ましくは、グリシジル基としてエーテルまたはエステル結合により分子の残基に結合するか、あるいはヘテロ環式アミン、アミドまたはイミドのN−グリシジル誘導体である。これらのタイプのエポキシ化合物は広く公知であり、市販品として容易に入手可能である。これらの素材は特開平11−189706号公報の[0096]〜[0112]に詳細に記載されている。
以上の中でもより好ましくは、エポキシ化リノール酸オクチル、エポキシ化リシノール酸オクチル、エポキシ化大豆油脂肪酸オクチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油であり、特に好ましくは、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油である。これらのエポキシ系素材は、アデカスタブ O−130P、アデカスタブ O−180A(旭電化工業株式会社)から、市販品として入手できる。
[2−5]スズ系安定剤
上記スズ系安定剤としては、公知の任意のスズ系安定剤を用いることができる。好ましいスズ系安定剤の具体例としては、オクチル錫マレエートポリマー、モノステアリル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ジラウレートが挙げられる。
[2−6]酸捕捉剤
セルロースアシレートは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては酸捕捉剤を含有することが好ましい。
本発明において有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、および塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の2〜4個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、および種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油など)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油および他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815Cも好ましく用いることができる。
さらに上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、或いはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報[0068]〜[0105]に記載されているものが含まれる。
なお酸捕捉剤は酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
本発明に用いられるフィルム形成材料中の酸捕捉剤としては、少なくとも上記の1種以上選択できる。添加量は、セルロースアシレートの質量に対して、0.001質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜2質量%である。
[2−7]紫外線吸収剤
本発明のセルロースアシレートには、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。前記紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースアシレートに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。その添加量は、調製する溶融物(メルト)の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明に有用な高分子紫外線吸収剤としては、特開平6−148430号公報に記載されている高分子紫外線吸収剤や、紫外線吸収剤モノマーを含むポリマーを制限なく使用できる。紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマーの重量平均分子量は2000〜30000であることが好ましく、より好ましくは5000〜20000である。
紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマー中の紫外線吸収性モノマーの含有量が1〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは、5〜60質量%である。
本発明に用いることができる市販品としての紫外線吸収剤モノマーとして、1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゼンまたはこの類似化合物がある。これらを単独または共重合したポリマーまたはコポリマーも好ましく用いられるが、これらに限定されない。例えば、市販品の高分子紫外線吸収剤として、大塚化学(株)製のPUVA−30Mも好ましく用いられる。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
これらの紫外線吸収剤として、以下の市販品も利用できる。ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミソーブ340(住友化学社製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業社製)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成社製)、シーソーブ101(シプロ化成社製)、シーソーブ101S(シプロ化成社製)、シーソーブ102(シプロ化成社製)、シーソーブ103(シプロ化成社製)、アデカスタブLA−51(旭電化工業社製)、ケミソープ111(ケミプロ化成社製)、UVINUL D−49(BASF社製)などを挙げられる。また、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)がある。さらにサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成社製)やシーソーブ202(シプロ化成社製)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成社製)、UVINUL N−539(BASF社製)がある。これらの中でも、特にアデカスタブLA−31が好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤および紫外線吸収性ポリマーの使用量は、化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、紫外線吸収剤である場合には、光学フィルム1m2当たり0.2〜3.0gが好ましく、0.4〜2.0gがさらに好ましく、0.5〜1.5gが特に好ましい。また、紫外線吸収ポリマーである場合には、光学フィルム1m2 当たり0.6〜9.0gが好ましく、1.2〜6.0gがさらに好ましく、1.5〜3.0gが特に好ましい。
[2−8]ヒンダードアミン光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系耐光安定剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、またこれらヒンダードアミン系耐光安定剤と可塑剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用しても、添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。これらを添加する時期は、溶融物(メルト)作製工程の何れの段階であってもよく、また、溶融物作製工程(メルト調製工程)の最後に添加剤を添加する工程を加えてもよい。
[3]その他の添加剤
さらに、上記添加剤以外に、種々の添加剤(例えば、光学異方性制御剤、微粒子、赤外線吸収剤、界面活性剤、臭気トラップ剤(アミン等)、熱安定剤など)を加えることもできる。赤外線吸収染料としては、例えば、特開2001−194522号公報に記載のものが使用でき、紫外線吸収剤は例えば特開2001−151901号公報に記載のものが使用でき、それぞれセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。微粒子は、平均粒子サイズが5〜3000nmのものを使用することが好ましく、金属酸化物や架橋ポリマーからなるものを使用でき、セルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。劣化防止剤はセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有させることが好ましい。光学異方性制御剤は例えば特開2003−66230号公報、特開2002−49128号公報記載のものを使用でき、セルロースアシレートに対して0.1〜15質量%含有させることが好ましい。
(ペレット化)
上記セルロースアシレートを溶融流延製膜する場合、必要により添加物を混合してペレット化してから製膜することが好ましい。
ペレット化を行うにあたりセルロースアシレートおよび添加物は事前に乾燥を行うことが好ましいが、ベント式押出機を用いることで、これを代用することもできる。乾燥を行う場合は、乾燥方法として、加熱炉内にて90℃で8時間以上加熱する方法等を用いることができるが、この限りではない。ペレット化は上記セルロースアシレートと添加物を2軸混練押出機を用い150℃〜250℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作成することができる。また、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウオーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。
押出機は十分な、溶融混練が得られる限り、任意の公知の単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。 好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
またペレット化を行う時に、上記添加物は押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することもできる。
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpm、さらにより好ましくは30rpm〜500rpmである。回転数が10rpm以上であれば、熱劣化による分子量の低下や黄色味の悪化を防ぎやすい。また、1000rpm以下であれば、剪断による分子切断による分子量低下や架橋ゲルの発生を防ぎやすい。
ペレット化における押出滞留時間は好ましくは10秒〜30分、より好ましくは15秒〜10分、さらに好ましくは30秒〜3分である。十分に溶融ができれば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色み発生を抑えることができる点で好ましい。
(溶融流延製膜の具体的方法)
以下に、溶融流延製膜の具体的な方法について説明する。
[1]乾燥
本発明のセルロースアシレートフィルムを製膜する原料として、セルロースアシレートをペレット化したものを用いるのが好ましい。すなわち、溶融流延製膜に先立ちペレット中の含水率を1%以下、より好ましくは0.5%以下にした後、溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーの温度をセルロースアシレートの(Tg−50℃)〜(Tg+30℃)とすることが好ましく、(Tg−40℃)〜(Tg+10℃)にすることがより好ましく、(Tg−30℃)〜Tgにすることが特に好ましい。これによりホッパー内での水分の再吸着を抑制し、上記乾燥の効率をより発現しやすくできる。
[2]混練押出し
混練溶融は120℃〜250℃で行うことが好ましく、140℃〜240℃で行うことがさらに好ましく、150℃〜230℃で混練溶融することが特に好ましい。この時、溶融温度は一定温度で行ってもよく、いくつかに分割して制御してもよい。好ましい混練時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、特に好ましくは4分〜30分である。さらに、溶融押出し機内を不活性(窒素等)気流中、またはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
[3]製膜
上記方法にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。特にエッジピニングと呼ばれる、フィルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定される物ではない。
キャスティングドラムは複数本用い、徐冷することがより好ましい、特に一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は50mm〜5000mmが好ましく、より好ましくは100mm〜2000mm、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
キャスティングドラムの温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
製膜幅は好ましくは0.7m〜5m、さらに好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mである。このようにして得られた未延伸フィルムの厚みは30μm〜400μmが好ましく、より好ましくは40μm〜300μm、さらに好ましくは50μm〜200μmである。
また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂でもよく、金属ロールでもよい。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。
タッチロール温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
タッチロール法の詳細は、例えば、特開2004−216717号公報、特開2004−287418号公報、特開2004−50560号公報、特開2004−330651号公報などにも記載されている。
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理、再沈殿、あるいは解重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として、または異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミネートフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。
(溶液流延製膜法)
次に、本発明のセルロースアシレートフィルムの溶液流延製膜法による製法の好ましい形態について説明する。
本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、セルロースアシレートの溶媒は特に限定されない。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤、ならびに非塩素系有機溶媒を挙げることができる。
本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル(−COO−)、ケトン(−CO−)、およびエーテル(−O−)から選択される、複数の同種または異なる種類の基を有する化合物も、主溶媒として用いることができる。さらに、エステル、ケトンおよびエーテルの少なくとも一つと、これ以外の官能基、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ペンチルなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例としては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールなどが挙げられる。複数の官能基を有する有機溶媒の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、その塩素系有機溶媒は特に限定されない。塩素系有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルムが好ましく、ジクロロメタンが特に好ましい。塩素系有機溶媒に塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも好ましい。ジクロロメタンを塩素系有機溶媒に選択する場合は、ジクロロメタンは少なくとも50質量%使用することが好ましい。
本発明において塩素系有機溶剤に好ましく併用される非塩素系有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい非塩素系有機溶媒としては炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル(−COO−)、ケトン(−CO−)、およびエーテル(−O−)から選択される、複数の同種または異なる種類の基を有する化合物も、主溶媒として用いることができる。さらに、エステル、ケトンおよびエーテルの少なくとも一つと、これ以外の官能基、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例としては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールなどが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールなどが挙げられる。
塩素系有機溶媒は炭素原子数1〜12のアルコールと併用してもよい。アルコールは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの好ましい例としは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールなどを挙げることができる。また、アルコールとしては、フッ素系アルコール(例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールなど)を用いてもよい。
塩素系有機溶媒は炭素原子数5〜22の炭化水素と併用してもよい。炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよく、芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例としては、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどを挙げることができる。
主溶媒である塩素系有機溶媒に併用される非塩素系有機溶媒については、特に限定されないが、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサン、炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステル、炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ぶことが好ましい。さらに好ましくは、酢酸メチル、アセトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンなどを挙げることができる。
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜35質量%溶解させることが好ましい。より好ましくは13〜30質量%であり、特に好ましくは15〜28質量%である。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれかの方法で本発明の好ましい溶液濃度になるように実施されればその調整方法は特に限定されない。
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でも冷却溶解法あるいは高温溶解法でもよく、さらにはこれらの組み合わせでもよい。セルロースアシレート溶液の調製法に関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号の各公報などに記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて適宜適用することができる。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)22頁〜25頁に記載されている。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。これらの測定は、試料溶液1mLを用意して、レオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて行う。具体的には、Oscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率G'(Pa)を求める。なお、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であることが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万であることが好ましい。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paであることが好ましい。
(溶液流延製膜の具体的方法)
次に、本発明のセルロースアシレートフィルムの溶液流延製膜の具体的方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法および設備は、従来のセルロースアシレートフィルム製造に供する溶液流延製膜法および溶液流延製膜装置が用いることができる。
好ましい方法では、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離,延伸などに分類される。
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。さらには−30〜40℃であることが好ましく、特には−20〜30℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の相対湿度は0〜70%が好ましく、さらには0〜50%が好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度は−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃であり、さらに好ましくは−20〜15℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
本発明においてその各層の内容と流延については、特に以下の構成が好ましい。すなわち、セルロースアシレート溶液が、25℃において、少なくとも1種の液体または固体の可塑剤をセルロースアシレートに対して0.1〜20質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、および/または少なくとも1種の液体または固体の紫外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、および/または少なくとも1種の固体でその平均粒子サイズが5〜3000nmである微粒子粉体をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、および/または少なくとも1種のフッ素系界面活性剤をセルロースアシレートに対して0.001〜2質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、および/または少なくとも1種の剥離剤をセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、および/または少なくとも1種の劣化防止剤をセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、および/または少なくとも1種の光学異方性コントロール剤をセルロースアシレートに対して0.1〜15質量%含有していること、および/または少なくとも1種の赤外吸収剤をセルロースアシレートに対して0.1〜5質量%含有しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時およびまたは逐次共流延してもよい。2層以上からなる流延工程を有する場合は、作製されるセルロースアシレート溶液およびセルロースアシレートフィルムにおいて、各層の塩素系溶媒の組成が同一であるか異なる組成のどちらか一方であること、各層の添加剤が1種類であるかあるいは2種類以上の混合物のどちらか一方であること、各層への添加剤の添加位置が同一層であるか異なる層のどちらか一方であること、添加剤の溶液中の濃度が各層とも同一濃度であるかあるいは異なる濃度のどちらか一方であること、各層の会合体分子量が同一であるかあるいは異なる会合体分子量のどちらか一方であること、各層の溶液の温度が同一であるか異なる温度のどちらか一方であること、また各層の塗布量が同一か異なる塗布量のどちらか一方であること、各層の粘度が同一であるか異なる粘度のどちらか一方であること、各層の乾燥後の膜厚が同一であるか異なる厚さのどちらか一方であること、さらに各層に存在する素材が同一状態あるいは分布であるか異なる状態あるいは分布であること、各層の物性が同一であるかあるいは異なる物性のどちらか一方であること、各層の物性が均一であるか異なる物性の分布のどちらか一方であること、を特徴とするセルロースアシレート溶液およびその溶液から作製されるセルロースアシレートフィルムであることも好ましい。ここで、物性とは発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)6頁〜7頁に詳細に記載されている物性を含むものであり、例えばヘイズ、透過率、分光特性、レターゼーションRe、同Rth、分子配向軸、軸ズレ、引裂強度、耐折強度、引張強度、巻き内外Rt差、キシミ、動摩擦、アルカリ加水分解、カール値、含水率、残留溶剤量、熱収縮率、高湿寸度評価、透湿度、ベースの平面性、寸法安定性、熱収縮開始温度、弾性率、および輝点異物の測定などであり、さらにはベースの評価に用いられるインピーダンス、面状も含まれるものである。また、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)11頁に詳細に記載されているセルロースアシレートのイエローインデックス、透明度、熱物性(Tg、結晶化熱)なども挙げることができる。
(延伸)
以上のようにして、溶融流延製膜法あるいは溶液流延製膜法によって製造した本発明のセルロースアシレートフィルムは、面状の改良、Re,Rthの発現、線膨張率の改善などを目的として、延伸することが好ましい。
延伸は製膜工程中、オン−ラインで実施してもよく、製膜完了後、一度巻き取った後オフ−ラインで実施してもよい。すなわち、溶融流延製膜の場合、延伸は製膜中の冷却が完了しない実施してもよく、冷却終了後に実施してもよい。
延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、特に好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は0.1%〜500%、さらに好ましくは10%〜300%、特に好ましくは30%〜200%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は縦延伸、横延伸、およびこれらの組み合わせによって実施される。縦延伸は、(1)ロール延伸(出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸)、(2)固定端延伸(フィルムの両端を把持し、これを長手方向に次第に早く搬送し長手方向に延伸)、等を用いることができる。さらに横延伸は、テンター延伸(フィルムの両端をチャックで把持しこれを横方向(長手方向と直角方向)に広げて延伸)、等を使用することができる。これらの縦延伸、横延伸は、それだけで行ってもよく(1軸延伸)、組み合わせて行ってもよい(2軸延伸)。2軸延伸の場合、縦、横逐次で実施してもよく(逐次延伸)、同時に実施してもよい(同時延伸)。
縦延伸、横延伸の延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、特に好ましくは30%/分〜800%/分である。多段延伸の場合、各段の延伸速度の平均値を指す。
このような延伸に引き続き、縦または横方向に0%から10%緩和することも好ましい。さらに、延伸に引き続き、150℃〜250℃で1秒〜3分熱固定することも好ましい。
このようにして延伸した後の膜厚は10〜300μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、30μm〜100μmが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムのReは0nm〜300nmが好ましく、10nm〜250nmがより好ましく、20nm〜200nmが特に好ましい。Rthは−200nm〜500nmが好ましく、−150nm〜400nmがより好ましく、0nm〜350nmが特に好ましい。
Re,Rthは、Re≦Rthであることが好ましく、Re×1.5≦Rthであることがより好ましく、Re≦Rth×2であることが特に好ましい。このようなRe,Rthは固定端1軸延伸、より好ましくは縦、横方向の2軸延伸により達成することができる。即ち、縦、横に延伸することで面内の屈折率(nx、ny)の差を小さくしReを小さくすることができ、さらに、縦、横に延伸し面積倍率を大きくして厚み減少に伴う厚み方向の配向を強くすることでRthを大きくすることができるためである。このようなRe、Rthにすることで、より一層黒表示での光漏れを軽減することができる。
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°または−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほどよく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、特に好ましくは0±1°である。横延伸の場合は、90±3°または−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°または−90±2°、特に好ましくは90±1°または−90±1°である。
本明細書において、Reレターデーション値およびRthレターデーション値は、以下に基づき算出するものとする。Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。この時、平均屈折率の仮定値および膜厚を入力することが必要である。KOBRA 21ADHはRth(λ)に加えてnx、ny、nzも算出する。平均屈折率は、セルロースアセテートでは1.48を使用するが、セルロースアセテート以外の代表的な光学用途のポリマーフィルムの値としては、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)、等の値を用いることができる。その他の既存のポリマー材料の平均屈折率値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)やポリマーフィルムのカタログ値を使用することができる。また、平均屈折率が不明な材料の場合は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。本明細書におけるλは、特に記載がなければ550±5nmまたは590±5nmを指す。
上述の未延伸または延伸セルロースアシレートフィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板を組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。
(光弾性係数)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板保護フィルム、または位相差板として使用されることが好ましい。偏光板保護フィルム、または位相差板として使用した場合には、吸湿による伸張、収縮による応力により複屈折(Re,Rth)が変化する場合がある。このような応力に伴う複屈折の変化は光弾性係数として測定できるが、その範囲は、5×10-7(cm2/kgf)〜30×10-7(cm2/kgf)が好ましく、6×10-7(cm2/kgf)〜25×10-7(cm2/kgf)がより好ましく、7×10-7(cm2/kgf)〜20×10-7(cm2/kgf)であることが特に好ましい。
(表面処理)
未延伸、または、延伸後のセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.13〜2.7x103Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液に浸漬してもよく、鹸化液を塗布してもよい。浸漬法の場合は、NaOHやKOH等のpH10〜14の水溶液を20℃〜80℃に加温した槽を0.1分〜10分通過させたあと、中和、水洗、乾燥することで達成できる。
塗布方法の場合、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を用いることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがより好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がより好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗または酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開第02/46809号パンフレットに内容の記載が挙げられる。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
<機能層との組み合わせ>
本発明のセルロースアシレートフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板の形成)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
[偏光膜]
(偏光膜の素材)
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素または二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素または二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素またはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーまたは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。バインダーには、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]に記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。
なかでも水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましい。
ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載されている。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、2種以上を併用してもよい。
バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合してもよく、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与してもよい。架橋は、光、熱またはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許第23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
(偏光膜の延伸)
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がより好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸により実施することができる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸により実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。ここでいう延伸倍率は(延伸後の偏光膜の長さ/延伸前の偏光膜の長さ)を表す。延伸はMD方向に平行に行ってもよく(平行延伸)、斜め方向に行ってもよい(斜め延伸)。これらの延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。より好ましいのが斜め方向に10度から80度の傾きを付けて延伸する斜め延伸である。
(イ)平行延伸法
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させる。膨潤度は通常1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、通常15〜50℃、好ましくは17〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくして行うことができる。前記作用効果の点より好ましい延伸倍率(延伸後/初期状態の長さ比:以下同じ)は1.2〜3.5倍、より好ましくは1.5〜3.0倍である。この後、50℃〜90℃において乾燥させて偏光膜を得る。
(ロ)斜め延伸法
斜め延伸法は、特開2002−86554号公報に記載されているように、傾斜め方向に張り出したテンターを用いて延伸することにより実施することができる。この延伸は空気中で行うため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%、より好ましくは10%〜100%である。
延伸時の温度は40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜80℃である。相対湿度は50%〜100%が好ましく、より好ましくは70%〜100%、特に好ましくは80%〜100%である。長手方向の進行速度は、1m/分以上が好ましく、より好ましくは3m/分以上である。
延伸の終了後、好ましくは50℃〜100℃、より好ましくは60℃〜90℃で、好ましくは0.5分〜10分、より好ましくは1分〜5分乾燥する。
このようにして得られる偏光膜の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、特に好ましくは実質的に45°(40°〜50°)である。
(貼り合せ)
上記鹸化後のセルロースアシレートフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、セルロースアシレートフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45°になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
このようにして得た偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがより好ましく、40〜50%の範囲にあることが特に好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがより好ましく、99〜100%の範囲にあることが特に好ましい。
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光板を作成することができる。この場合λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸を45度になるように積層する。この時、λ/4板は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20度〜70度傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層からなるλ/4板を用いることが好ましい。
[光学補償層の付与(光学補償シートの作成)]
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースアシレートフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
(配向膜)
上記表面処理したセルロースアシレートフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、またはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与または光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、または液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーまたは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]に記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例としては、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ基、ジアルコキシ基、モノアルコキシ基)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、または液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0080]〜[0100]に記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。2種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報の段落番号[0023]〜[0024]に記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。が発生することがある。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行ってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがより好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、通常20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、80℃〜100℃がより好ましい。乾燥時間は通常1分〜36時間にすることができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、通常pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、液晶表示装置を製造する際に行う液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムまたはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
工業的に実施する場合、搬送している偏光膜のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
(光学異方性層)
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、または架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
1)棒状液晶性分子
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基あるいはカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報の段落番号[0064]〜[0086]に記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
2)円盤状液晶性分子
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載されている。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報の段落番号[0151]〜[0168]に記載の化合物等が挙げられる。
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、または増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子または配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子または円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
(光学異方性層の他の組成物)
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、または配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性またはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基を有する液晶化合物に対して共重合性を示すものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報の段落番号[0018]〜[0020]に記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1質量%〜50質量%の範囲にあり、5質量%〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]に記載の化合物が挙げられる。
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースアシレートを挙げることができる。セルロースアシレートの好ましい例としては、特開2000−155216号公報の段落番号[0178]に記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1質量%〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70℃〜170℃がより好ましい。
(光学異方性層の形成)
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがより好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 〜50J/cm2 の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2 の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2 の範囲にあることが特に好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
(偏光膜との組み合わせ)
この光学補償フィルムと偏光膜を組み合わせることも好ましい。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
偏光膜と光学補償層の傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
[反射防止層の付与(反射防止フィルムの作製)]
反射防止フィルムは、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明支持体上に設けてなる。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜の形成方法として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法等が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止フィルムとして、無機粒子をマトリックスに分散した分散物を塗布することにより薄膜を積層した反射防止フィルムも各種提案されている。塗布による反射防止フィルムとして、表面に微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した層を最上層に形成した反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは上記いずれの方式で製造する反射防止フィルムにも適用できるが、塗布による方式(塗布型)で製造する反射防止フィルムに適用することが特に好ましい。
(塗布型反射防止フィルムの層構成)
透明支持体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)を順に形成した層構成からなる反射防止フィルムは、屈折率が以下の関係を満足するように設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間には、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなるものであってもよい。例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載されているものが挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等に記載されるもの)等が挙げられる。
反射防止フィルムのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが特に好ましい。
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止フィルムの高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上の無機化合物が挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするためには、粒子表面を表面処理剤で処理する技術(例えば、特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報に記載されるシランカップリング剤で処理する技術や、特開2001−310432号公報等に記載されるアニオン性化合物あるいは有機金属カップリング剤で処理する技術)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする技術(例えば、特開2001−166104等に記載される技術)、特定の分散剤を併用する技術(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1号明細書、特開2002−2776069号公報等に記載される技術)等を利用することができる。マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上有する多官能性化合物を含有する組成物、加水分解性基を有する有機金属化合物およびその部分縮合体の組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。これらの組成物に用いる化合物として、例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載される硬化性膜を挙げることができる。
高屈折率層の屈折率は、一般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがより好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる層である。低屈折率層の屈折率は一般に1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
低屈折率層は、耐擦傷性や防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させるためには表面に滑り性を付与することが有効であり、具体的には従来公知のシリコーン化合物や含フッ素化合物を導入した薄膜層の形成法を適用することができる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性または重合性の官能基を含む化合物であることが好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物はポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基または重合性官能基を有し、膜中で橋かけ構造を形成しているものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例えば、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤や増感剤等を含有する最外層形成用の塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基を有するシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応させて硬化したゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ(パーフルオロアルキルエーテル)基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報に記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成してもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましく、60〜120nmであることが特に好ましい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設けることができる。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成することが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基を有する有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物であることが好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したものと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第O0/46617号パンフレット等に記載されるものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層の説明で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが特に好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほ
ど好ましい。
(前方散乱層)
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等に記載される技術を用いることができる。
(その他の層)
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(塗布方法)
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(アンチグレア機能)
反射防止フィルムは、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止フィルムの表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止フィルムがアンチグレア機能を有する場合、反射防止フィルムのヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止フィルムの表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
<液晶表示装置>
本発明のセルロースアシレートフィルム、該セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板、位相差フィルムおよび光学フィルムは、それぞれ液晶表示に好ましく組み込むことができる。以下に各液晶モードについて説明する。
(TNモード液晶表示装置)
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensated Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
(IPSモード液晶表示装置)
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941号、特開2004−12731号、特開2004−215620号、特開2002−221726号、特開2002−55341号、特開2003−195333号の各公報に記載のものなどを使用できる。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードに対しても、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(置換度の測定)
120℃で1時間乾燥させた試料約10mgを重クロロホルム0.5mlに溶解し、1
H−NMR測定(ブルッカー社、AV−400核磁気共鳴装置)を行った。このときのアセチル基とそれ以外のアシル基の面積強度、ならびに、ピラノース環由来のプロトンの面積強度の関係より、アシル置換度を求めた。
(平均分子量の測定)
試料を0.5%濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解し、GPC測定を行った。(東ソー社、HLC−8220GPC装置、カラム:TSKGEL Super HZM−M,HZ4000,HZ2000,HZ−L、検出:RI)標準物質にはTSK製ポリスチレン試料を用い、相対法により平均分子量を決定した。
(不溶解物の観察)
試料を20%の濃度となるようにジクロロメタンに溶解し、乾燥後の膜厚が80μmになるようにクリアランスを調整して、ガラス盤上で溶液流涎製膜を実施した。乾燥後のフィルムを2.5cm四方に裁断し、クロスニコル条件での偏光顕微鏡にて倍率100倍にて観察し、光漏れを生じる不溶解物の1平方mmあたりの量を計測した。
<実施例1> セルロースアセテートプロピオネートP−1の合成
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(木材パルプ)200質量部、酢酸121質量部を取り、60℃で4時間攪拌することによりセルロースを活性化した。無水酢酸166質量部、プロピオン酸1040質量部、プロオピオン酸無水物1475質量部、硫酸14質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
反応の最高温度が19.5℃になるようにエステル化を実施し、未反応セルロースが消失した時点を反応の終点とした。未反応セルロースの消失は、反応混合物をプレパラート上に採り、偏光顕微鏡にて観察することにより確認した(以下同じ)。終点での反応混合物の温度は10℃になるように調節した。ここで反応溶液から約10gを採取し、酢酸水溶液に添加して再沈殿を行い、温水にて洗浄後に乾燥して、GPC法により平均分子量を求めた。このときの数平均分子量は104000、重量平均分子量263000であった。
水367質量部、酢酸733質量部の混合物を−5℃に冷却した反応停止剤を、反応混合物の温度が23℃を超えないように添加した。このときの所要時間は1時間であった。反応液を採取し、反応停止前と同様にして平均分子量を測定した。このときの数平均分子量は103000、重量平均分子量は259000であった。
反応混合物の温度を60℃とし、2時間攪拌して部分加水分解を行った。酢酸水溶液と混合することにより得られた高分子化合物の再沈殿を実施し、70〜80℃の温水での洗浄を繰り返した。脱液の後、0.005質量%の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、30分攪拌を行った後に再度脱液を行った。70℃で乾燥を行い、セルロースアセテートプロピオネートP−1を得た。
得られたセルロースアセテートプロピオネートP−1は、アセチル置換度0.72、プロピオニル置換度2.10、全アシル置換度2.82、数平均分子量96000、重量平均分子量254000であった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフィルムを偏光顕微鏡で観察した結果、不溶解物はほとんど認められなかった。
<実施例2> セルロースアセテートプロピオネートP−2の合成
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(リンター)200質量部、酢酸100質量部を取り、60℃で4時間攪拌することによりセルロースを活性化した。プロオピオン酸無水物2060質量部、硫酸14質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
反応の最高温度が22.5℃になるようにエステル化を実施し、未反応セルロースが消失した時点を反応の終点とした。終点での反応混合物の温度は10℃になるように調節した。ここで反応溶液から約10gを採取し、酢酸水溶液に添加して再沈殿を行い、温水にて洗浄後に乾燥して、GPC法により平均分子量を求めた。このときの数平均分子量は121000、重量平均分子量は303000であった。
水353質量部、酢酸1059質量部の混合物を−5℃に冷却した反応停止剤を、反応混合物の温度が23℃を超えないように添加した。このときの所要時間は1時間であった。反応液を採取し、反応停止前と同様にして平均分子量を測定した。このときの数平均分子量は122000、重量平均分子量は305000であった。
反応混合物の温度を40℃とし、0.5時間攪拌して部分加水分解を行った。酢酸水溶液と混合することにより得られた高分子化合物の再沈殿を実施し、70〜80℃の温水での洗浄を繰り返した。脱液の後、0.005質量%の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、30分攪拌を行った後に再度脱液を行った。70℃で乾燥を行い、セルロースアセテートプロピオネートP−2を得た。
得られたセルロースアセテートプロピオネートP−2は、アセチル置換度0.26、プロピオニル置換度2.66、全アシル置換度2.92、数平均分子量119000、重量平均分子量302000であった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフィルムを偏光顕微鏡で観察した結果、不溶解物はほとんど認められなかった。
<実施例3> セルロースアセテートブチレートB−1の合成
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(木材パルプ)200質量部、酢酸100質量部を取り、60℃で4時間攪拌することによりセルロースを活性化した。酢酸161質量部、無水酢酸449質量部、酪酸742質量部、酪酸無水物1349質量部、硫酸14質量部を混合し、−35℃に冷却してから反応容器に添加した。
反応の最高温度が17.5℃になるようにエステル化を実施し、未反応セルロースが消失した時点を反応の終点とした。終点での反応混合物の温度は10℃になるように調節した。ここで反応溶液から約10gを採取し、酢酸水溶液に添加して再沈殿を行い、温水にて洗浄後に乾燥して、GPC法により平均分子量を求めた。このときの数平均分子量は123000、重量平均分子量は326000であった。
水297質量部、酢酸558質量部の混合物を−5℃に冷却した反応停止剤を、反応混合物の温度が23℃を超えないように添加した。このときの所要時間は1時間であった。反応液を採取し、反応停止前と同様にして平均分子量を測定した。このときの数平均分子量は122000、重量平均分子量は317000であった。
反応混合物の温度を60℃とし、1時間攪拌して部分加水分解を行った。酢酸水溶液と混合することにより得られた高分子化合物の再沈殿を実施し、70〜80℃の温水での洗浄を繰り返した。脱液の後、0.005質量%の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、30分攪拌を行った後に再度脱液を行った。70℃で乾燥を行い、セルロースアセテートブチレートB−1を得た。
得られたセルロースアセテートブチレートB−1は、アセチル置換度1.66、ブチリル置換度1.25、全アシル置換度2.91、数平均分子量118000、重量平均分子量308000であった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフィルムを偏光顕微鏡で観察した結果、不溶解物はほとんど認められなかった。
<実施例4> セルロースアセテートブチレートB−2の合成
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(リンター)100質量部、酢酸180質量部を取り、60℃で4時間攪拌することによりセルロースを活性化した。酪酸無水物960質量部、硫酸3質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
反応の最高温度が17.5℃になるようにエステル化を実施し、未反応セルロースが消失した時点を反応の終点とした。終点での反応混合物の温度は10℃になるように調節した。ここで反応溶液から約10gを採取し、酢酸水溶液に添加して再沈殿を行い、温水にて洗浄後に乾燥して、GPC法により平均分子量を求めた。このときの数平均分子量は115000、重量平均分子量は282000であった。
水153質量部、酢酸457質量部の混合物を−5℃に冷却した反応停止剤を、反応混合物の温度が20℃を超えないように添加した。このときの所要時間は1時間であった。反応液を採取し、反応停止前と同様にして平均分子量を測定した。このときの数平均分子量は113000、重量平均分子量は282000であった。
反応混合物の温度を60℃とし、1.5時間攪拌して部分加水分解を行った。酢酸水溶液と混合することにより得られた高分子化合物の再沈殿を実施し、70〜80℃の温水での洗浄を繰り返した。脱液の後、0.005質量%の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、30分攪拌を行った後に再度脱液を行った。70℃で乾燥を行い、セルロースアセテートブチレートB−2を得た。
得られたセルロースアセテートブチレートB−2は、アセチル置換度1.11、ブチリル置換度1.77、全アシル置換度2.88、数平均分子量106000、重量平均分子量273000であった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフィルムを偏光顕微鏡で観察した結果、不溶解物はほとんど認められなかった。
<実施例5> セルロースアセテートプロピオネートP−3の合成
セルロース(広葉樹パルプ)10質量部に、酢酸0.1質量部、プロピオン酸2.7質量部を噴霧した後、1時間室温で保存した。別途、無水酢酸1.2質量部、プロピオン酸無水物61質量部、硫酸0.7質量部の混合物を調製し、−10℃に冷却後に、前記前処理を行ったセルロースと反応容器内で混合した。30分経過後、外設温度を30℃まで上昇させ、4時間反応させた。
ここで反応溶液から約10gを採取し、酢酸水溶液に添加して再沈殿を行い、温水にて洗浄後に乾燥して、GPC法により平均分子量を求めた。このときの数平均分子量は55400、重量平均分子量138400であった。
25%含水酢酸46質量部を−5℃に冷却した反応停止剤を、反応混合物の温度が23℃を超えないように、反応装置を冷却しながら添加した。このときの所要時間は20分間であった。反応液を採取し、反応停止前と同様にして平均分子量を測定した。このときの数平均分子量は55300、重量平均分子量は137900であった。
内温を60℃に上昇させて、2時間攪拌した。酢酸マグネシウム4水和物と酢酸と水とを等重量ずつ混合した溶液を6.2質量部添加し、30分間攪拌した。反応液を、保留粒子径40μm、10μm、5μmの各金属焼結フィルターにて順に加圧ろ過して異物を除去した。75%含水酢酸に濾過後の反応液を混合してセルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた後、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った。さらに、0.001%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌する処理を行った後に濾過した。得られたセルロースアセテートプロピオネートを70℃で乾燥して、セルロースアセテートプロピオネートP−3とした。
1H−NMRの測定から、得られたセルロースアセテートプロピオネートP−3は、アセチル置換度0.15、プロピオニル置換度2.62、全アシル置換度2.77、数平均分子量54500(数平均重合度DPn=173)、質量平均分子量132000(質量平均重合度DPw=419)、残存硫酸量45ppm、マグネシウム含有量8ppm、カルシウム含有量46ppm、ナトリウム含有量1ppm、カリウム含有量1ppm、鉄含有量2ppmであった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフィルムを偏光顕微鏡で観察した結果、偏光子を直交させた場合も平行にした場合も、異物はほとんど認められなかった。
<比較例1> セルロースアセテートプロピオネートP−10の合成
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(木材パルプ)200質量部、酢酸121質量部を取り、60℃で4時間攪拌することによりセルロースを活性化した。無水酢酸166質量部、プロピオン酸1040質量部、プロオピオン酸無水物1475質量部、硫酸14質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
反応の最高温度が19.5℃になるようにエステル化を実施し、未反応セルロースが消失した時点を反応の終点とした。終点での反応混合物の温度は10℃になるように調節した。ここで反応溶液から約10gを採取し、酢酸水溶液に添加して再沈殿を行い、温水にて洗浄後に乾燥して、GPC法により平均分子量を求めた。数平均分子量は105000、重量平均分子量266000であった。
水367質量部、酢酸733質量部の混合物を−5℃に冷却した反応停止剤を12分間で添加した。酸無水物の加水分解による発熱により、反応混合物の温度は55℃まで上昇した。反応液を採取し、反応停止前と同様にして平均分子量を測定した。このときの数平均分子量は73000、重量平均分子量199000であった。
反応停止剤の添加後に反応混合物の温度を60℃とし、2時間攪拌して部分加水分解を行った。酢酸水溶液と混合することにより得られた高分子化合物の再沈殿を実施し、70〜80℃の温水での洗浄を繰り返した。脱液の後、0.005質量%の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、30分攪拌を行った後に再度脱液を行った。70℃で乾燥を行い、セルロースアセテートプロピオネートP−10を得た。
得られたセルロースアセテートプロピオネートP−10は、アセチル置換度0.70、プロピオニル置換度2.08、全アシル置換度2.78、数平均分子量71000、重量平均分子量184000であった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフィルムを偏光顕微鏡で観察した結果、不溶解物はほとんど認められなかった。
<比較例2> セルロースアセテートブチレートB−10の合成
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(リンター)100質量部、酢酸180質量部を取り、60℃で4時間攪拌することによりセルロースを活性化した。酪酸無水物960質量部、硫酸3質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
反応の最高温度が17.5℃になるようにエステル化を実施し、未反応セルロースが消失した時点を反応の終点とした。終点での反応混合物の温度は10℃になるように調節した。ここで反応溶液から約10gを採取し、酢酸水溶液に添加して再沈殿を行い、温水にて洗浄後に乾燥して、GPC法により平均分子量を求めた。このときの数平均分子量は104000、重量平均分子量は265000であった。
水153質量部、酢酸457質量部の混合物を−5℃に冷却した反応停止剤を15分間で添加した。酸無水物の加水分解による発熱により、反応混合物の温度は45℃まで上昇した。反応液を採取し、反応停止前と同様にして平均分子量を測定した。このときの数平均分子量は63000、重量平均分子量は162000であった。
反応停止剤の添加後に加熱をして反応混合物の温度を60℃とし、1.5時間攪拌して部分加水分解を行った。酢酸水溶液と混合することにより得られた高分子化合物の再沈殿を実施し、70〜80℃の温水での洗浄を繰り返した。脱液の後、0.005質量%の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、30分攪拌を行った後に再度脱液を行った。70℃で乾燥を行い、セルロースアセテートブチレートB−10を得た。
得られたセルロースアセテートブチレートB−10は、アセチル置換度1.13、ブチリル置換度1.76、全アシル置換度2.89、数平均分子量61000、重量平均分子量157000であった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフィルムを偏光顕微鏡で観察した結果、不溶解物はほとんど認められなかった。
<比較例3> セルロースアセテートブチレートB−11の合成
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(リンター)100質量部、酢酸180質量部を取り、60℃で4時間攪拌することによりセルロースを活性化した。酪酸無水物960質量部、硫酸3質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
反応の最高温度が14℃になるようにエステル化を実施し、実施例4と同一の反応時間でアシル化を停止した。この時点では未反応セルロースが確認された。アシル化終点での反応混合物の温度は10℃になるように調節した。ここで反応溶液から約10gを採取し、酢酸水溶液に添加して再沈殿を行い、温水にて洗浄後に乾燥して、GPC法により平均分子量を求めた。このときの数平均分子量は136000、重量平均分子量は343000であった。
水153質量部、酢酸457質量部の混合物を−5℃に冷却した反応停止剤を15分間で添加した。酸無水物の加水分解による発熱により、反応混合物の温度は45℃まで上昇した。反応液を採取し、反応停止前と同様にして平均分子量を測定した。このときの数平均分子量は108000、重量平均分子量は284000であった。
反応停止剤の添加後に加熱をして反応混合物の温度を60℃とし、1.5時間攪拌して部分加水分解を行った。酢酸水溶液と混合することにより得られた高分子化合物の再沈殿を実施し、70〜80℃の温水での洗浄を繰り返した。脱液の後、0.005質量%の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、30分攪拌を行った後に再度脱液を行った。70℃で乾燥を行い、セルロースアセテートブチレートB−11を得た。
得られたセルロースアセテートブチレートB−11は、アセチル置換度1.13、ブチリル置換度1.77、全アシル置換度2.90、数平均分子量は104000、重量平均分子量は277000であった。本試料のジクロロメタン溶液からキャストしたフィルムを偏光顕微鏡で観察した結果、多量の不溶解物を認めた。
実施例1〜5および比較例1〜3の結果より、以下のことが分かる。
本発明の実施例1〜4では、高分子量かつ不溶解物のほとんど無いセルロースアシレートが合成できている。これに対し、本発明外の比較例1および2では、不溶解物はほとんど認められないものの、本発明に対して分子量が低下している。また、比較例3では、本発明に対して分子量は同等であるが、不溶解物の量が多い。
実施例の内容を、さらに詳細に説明する。アシル化停止工程において反応混合物の温度を−30℃〜35℃に制御しながら、反応混合物に水を含む反応停止剤を混合する本発明の方法では、アシル化停止工程の前後での平均分子量の変化はほとんど無いか、きわめて少ない。一方、停止剤を比較的短時間で添加し、反応熱による反応混合物の温度上昇を積極的には抑制しない比較例1、2では、工程前後での平均分子量の低下が著しい。この原因については明確ではないが、非水かつ高温の条件では、酸触媒によるセルロース骨格の解重合が進行しやすいことが推察される。平均分子量の低下はその後の部分加水分解工程でも若干は起きてはいるが、アシル化停止工程での平均分子量低下を抑制する本発明の製造方法が、高分子量のセルロースアシレートを得るために有効である。
比較例3の方法は、反応停止工程での解重合を織り込んで、エステル化停止時の平均分子量を大きくするプロセス設計である。この方法では本発明と同等な高い分子量のセルロースアシレートを得ることができるが、不溶解物が多く、総合的な製品の品質では劣っている。
実施例5では、反応後の溶液を精密濾過している。本発明により、微小異物の削減の効果は十分ではあるが、精密濾過と組み合わせることにより、本発明は一層優れた効果を発現することができる。
以上の様に、本発明によれば、平均分子量が高く、かつ、微小異物の含有量が少ない、光学フィルムに適したセルロースアシレートを製造することができる。
<実施例6> 溶融製膜フィルムの作成1
(1)セルロースアシレートの調製
実施例1〜5ならびに比較例1〜3に記載の試料を用いた。
(2)ペレット化
これらのセルロースアシレートを120℃で3時間送風乾燥し、含水率を0.1質量%にした。これに、表1に記載の可塑剤、および二酸化珪素微粒子(アエロジルR972V)0.05質量%、ホスファイト系安定剤 3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデセン(0.20質量%)、「紫外線吸収剤a」2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(0.8質量%)、「紫外線吸収剤b」2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(0.25質量%)を添加し、混合物を2軸混練押出し機を用いて190℃で溶融混練した。なお、この2軸混練押出し機には真空ベントを設け、真空排気[0.3気圧(30.3kPa)に設定]を行った。水浴中に直径3mmのストランド状に押出し、長さ5mmに裁断した。
(3)溶融流延製膜
上記方法で調製したセルロースアシレートペレットを、100℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これをTg−10℃になるように調整したホッパーに投入し、単軸押出機を用いて、圧縮比3.0のスクリューを用い、下記の温度でセルロースアシレートを溶融押出した。
スクリュー温度パターン: 上流供給部(180〜195℃)
中間圧縮部(200〜210℃) 下流計量部(210〜240℃)
次に、溶融したセルロースアシレートをギヤポンプに通し、押出機の脈動を除去した後、3μmフィルターでろ過し、230℃のダイを通してキャストドラムに流延した。この時、3kVの電極をメルトから5cm離した所に設置し、両端5cmずつ静電印加処理を行った。Tg−5℃、Tg、Tg−10℃に設定した直径60cmの3本キャスティングドラムを通し固化させ、表1に記載の厚みのセルロースアシレートフィルムを得た。両端5cmトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけ、各水準とも、幅が1.5m、製膜速度が30m/分、2000m巻きのサンプルを取った。
(4)セルロースアシレートフィルム物性の測定
(4−1)微小異物
溶融流延製膜後、または延伸後のサンプルフィルムを、偏光膜を直交させた偏光顕微鏡を用い倍率100倍で観察した。ここで観察される1μm以上10μm未満の白色の異物の数を目視で計測し、1平方ミリメートルあたりの個数で表した。
(4−2)Re,Rth測定
上記サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、波長590nmにおける面内レターデーション値(Re)と厚み方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。
(4−3)着色(色調)
セルロースアシレートフィルムの着色を目視で観察し、5段階で評価した。1,2が商品として許容なレベルであり、3は用途が限定されるレベルであり、4,5は商品としては不適切である。
(4−4)面状
セルロースアシレートフィルムの段ムラやダイ筋を目視で観察し、5段階で評価して、表2に記載した。1,2が商品として許容なレベルであり、3は用途が限定されるレベルであり、4,5は商品としては不適切である。
(4−5)その他
製膜時に溶剤を用いていないため、得られたセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量はすべてゼロである。
Figure 2007138141
本発明の製造方法によるセルロースアシレートから製造したフィルムは、微小異物が少ないうえに、フィルム表面のダイスジや段ムラがなく、面状に優れている。これに対し、本発明外の製造方法によるセルロースアシレートから製造したフィルムは、面状が劣る、あるいは、微小物が多いという点で、商品としての品質は劣ることが分かる。
<実施例7> 溶融製膜フィルムの作成2
(1)セルロースアシレートの調製
実施例1〜5ならびに比較例1〜3に記載の試料を用いた。
(2)セルロースアシレートのペレット化
上記セルロースアシレート80重量部、後述のセルロースアシレートフィルムの端部を破砕したもの20重量部、安定剤(住友化学(株)製スミライザーGP)0.3重量部を混合した。これらを100℃で3時間乾燥し含水率を0.1質量%以下にした後、2軸混練機を用い180℃で溶融した後、60℃の温水中に押し出しストランドとした後に裁断し、直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。
(3)溶融製膜
上記ペレットを、露点温度−40℃の脱湿風を用いて100℃で5時間乾燥して含水率を0.01質量%以下にした後、80℃の1軸混練押出し機のホッパーに投入し、180℃(入口温度)から230℃(出口温度)に調整した溶融押出し機で溶融した。なお、これに用いたスクリューの直径は60mm、L/D=50、圧縮比4であった。溶融押出機から押出された樹脂はギアポンプで一定量計量され送り出されるが、この時ギアポンプ前の樹脂圧力が10MPaの一定圧力で制御できる様に、押出機の回転数を変更させた。ギアポンプから送り出されたメルト樹脂は、濾過精度5μmmのリーフディスクフィルターにて濾過した。その後、スタティックミキサーを経由してスリット間隔0.8mm、230℃のハンガーコートダイから、キャスティングドラム(CD)上にメルト(セルロースアシレートの融体)を押出した。これをTg−5℃、Tg、Tg−10℃に設定した3連のキャストロール上に押し出し(Tgはガラス転移温度)、最上流側のキャストロールに押さえ圧が1.5MPaとなるようにタッチロールを接触させた。なお、タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い、Tg−5℃に調温した(但し薄肉金属外筒厚みは3mmとした)。「押さえ圧」とは、タッチロールに加える荷重を、タッチロールとキャスティングロールが接触している面積で割った値である。
固化したメルトをキャスティングドラムから剥ぎ取り、巻き取り直前に両端(全幅の各5%)をトリミングした。トリミングしたものは、0.5cm2の大きさに裁断し、上述のペレット化の際に再溶解し、フィルム原料とした。
トリミング後、製膜フィルム両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、30m/分で幅1.5m、長さ3000mの未延伸フィルムを得た。このフィルムの残留溶媒量を上記方法で測定したところ、残留溶媒は検出されなかった。なお、このフィルムのTgは、DSCを用いて次の方法で測定した。すなわち、DSCの測定パンにサンプルを20mg入れ、これを窒素気流中で10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。その後、再度30℃から250℃まで昇温したときに、ベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(4)製膜フィルムの評価
実施例6と同様にして、セルロースアシレートフィルム物性の測定を行った。本実施例においても、本発明の製造方法により製造したセルロースアシレートから得られたフィルムは、微小異物が少ないうえに、フィルム表面のダイスジや段ムラがなく、面状が優れていた。
<実施例8> 溶液流延製膜フィルムの作成
混合セルロースアシレートの溶液流延製膜
実施例1〜5ならびに比較例1〜3に記載の試料を用い、各100gを、塩化メチレン/メタノール(9/1)溶液600mLに溶解させた。このポリマー溶液(ドープ)を、15℃に保冷したSUS板上にドクターブレード流延し、25℃で30分乾燥させた。形成されたフィルムを、200mm/秒の速度で支持体から剥ぎ取った。この時、支持体上のはげ残りを目視で評価した。フィルム剥ぎ取り後の支持体上において、残存フィルムが全く見られない場合を「なし」、残存フィルムが確認できる場合を「あり」、残存フィルムがかすかに確認できる場合を「あり(微量)」とした。また、これを、100℃で10分、133℃で30分乾燥し、透明フィルムを得た。このフィルムを実施例5と同様の手法で微細偏光異物を観察した。結果を表2に示す。
Figure 2007138141
本発明の製造方法によるセルロースアシレートから製造したフィルムは、微小異物が少ないうえに、剥ぎ取り性も良好なことからフィルム表面のダイスジや段ムラがなく、面状に優れている。これに対し、本発明外の製造方法によるセルロースアシレートから製造したフィルムは、剥ぎ取り性が劣ることによる面状の荒れや、微小物が多いという点で、商品としての品質は劣ることが分かる。
<実施例9> 偏光板、画像表示装置、低反射フィルムおよび光学補償フィルムの作成
(1)セルロースアシレートフィルムの鹸化
実施例6〜8で作成した各セルロースアシレートフィルムを次の浸漬鹸化法で鹸化した。このとき、2.5mol/LのNaOH水溶液を鹸化液として用いた。これを60
℃に調温し、セルロースアシレートフィルムを2分間浸漬した。この後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬し、水洗した。
(2)偏光膜の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を作製した。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光膜と、上記鹸化処理した未延伸および延伸セルロースアシレートフィルムならびに鹸化処理したフジタック(未延伸トリアセテートフィルム)を、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光膜の延伸方向とセルロースアシレートの製膜流れ方向(長手方法)に下記組み合わせで張り合わせた。
偏光板A:未延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/フジタックTD80U
偏光板B:未延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/未延伸セルロースアシレートフィルム
(4)画像表示装置による実装評価
VA型液晶セルを使用した26インチおよび40インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に液晶層を挟んで設置されている2対の偏光板のうち、観察者側の片面の偏光板を剥がし、粘着剤を用い、代わりに上記偏光板AまたはBを貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置して、液晶表示装置を作成した。得られた液晶表示装置が、黒表示状態で発生する光漏れと色ムラ、面内の均一性を観察した。本発明のセルロースアシレートフィルムは、光漏れと色ムラがなく、良好な性質を示した。また、本発明のセルロースアシレートフィルムは色調変化が無く、非常に優れたものであった。
(5)低反射フィルムの作成
本発明のセルロースアシレートフィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の実施例47に従い、低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能を示した。
(6)光学補償フィルムの作成
本発明のセルロースアシレートフィルムを特開平11−316378号公報の実施例1に従い、液晶層を塗布したところ、良好な光学補償フィルムが得られた。
本発明の製造方法によれば、平均分子量が高くて微小異物の含有量が少ないセルロースアシレートを製造することができる。このセルロースアシレートは、製膜することにより光学用途に適したフィルムになる。このため、本発明によれば、高品位な偏光板、位相差フィルム、光学フィルムおよび液晶表示装置を提供することができる。したがって、本発明の産業上の利用可能性は高い。

Claims (18)

  1. 下記式(1)〜(3)を満足するセルロースアシレートの製造方法であって、
    1) セルロースの水酸基に対して過剰量の酸無水物を含むエステル化剤を用いてセルロースのアシル化を行うアシル化工程と、
    2) 該アシル化工程の後に、反応混合物の温度を−30℃〜35℃に制御しながら、反応混合物に水を含む反応停止剤を混合して酸無水物を加水分解するアシル化停止工程と、を含むことを特徴とするセルロースアシレートの製造方法。
    式(1) 2.0≦A+B≦3
    式(2) 0≦A≦2.9
    式(3) 0.1≦B≦3
    (Aはアセチル基の置換度を表し、Bは炭素数3〜9のアシル基の置換度の総和を表す。)
  2. 前記セルロースアシレートのGPC法による数平均分子量が40000〜500000であることを特徴とする、請求項1に記載のセルロースアシレートの製造方法。
  3. 前記セルロースアシレートのGPC法による数平均分子量が60000〜300000であることを特徴とする、請求項1に記載のセルロースアシレートの製造方法。
  4. 前記セルロースアシレートのGPC法による数平均分子量が85000〜300000であることを特徴とする、請求項1に記載のセルロースアシレートの製造方法。
  5. 前記アシル化停止工程において、前記反応混合物の温度を−20℃〜30℃に制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
  6. 前記アシル化停止工程において、前記反応停止剤を3分〜3時間かけて混合することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
  7. 前記反応停止剤が、5質量%〜80質量%の水を含有する、炭素数2〜4のカルボン酸水溶液であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
  8. 前記セルロースアシレートが、前記炭素数3〜9のアシル基として、プロピオニル基またはブチリル基を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
  9. 前記アシル化工程の最高到達温度が10℃以上25℃未満であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたセルロースアシレートを製膜したことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
  11. 残留溶剤量が0.01質量%以下であることを特徴とする請求項10に記載のセルロースアシレートフィルム。
  12. 前記製膜が溶液流延製膜であることを特徴とする請求項10に記載のセルロースアシレートフィルム。
  13. 前記製膜が溶融流延製膜であることを特徴とする請求項10に記載のセルロースアシレートフィルム。
  14. フィルム面内のレターデーション(Re)とフィルム厚み方向のレターデーション(Rth)が、下記式(4)および(5)を満足することを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
    式(4) 0nm≦Re≦300nm
    式(5) −200nm≦Rth≦500nm
  15. 偏光膜と保護膜を有する偏光板であって、前記保護膜が請求項10〜14のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
  16. 請求項10〜14のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする位相差フィルム。
  17. 請求項10〜14のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、請求項15に記載の偏光板、および請求項16に記載の位相差フィルムからなる群より選択される少なくとも1つのフィルム上に、配向した液晶性化合物を含む光学異方性層を有することを特徴とする光学フィルム。
  18. 請求項10〜14のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、請求項15に記載の偏光板、請求項16に記載の位相差フィルム、および請求項17に記載の光学フィルムからなる群より選択される少なくとも1つのフィルムを用いることを特徴とする画像表示装置。
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