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JP2007004530A - 分子シミュレーション方法 - Google Patents

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JP2007004530A
JP2007004530A JP2005184648A JP2005184648A JP2007004530A JP 2007004530 A JP2007004530 A JP 2007004530A JP 2005184648 A JP2005184648 A JP 2005184648A JP 2005184648 A JP2005184648 A JP 2005184648A JP 2007004530 A JP2007004530 A JP 2007004530A
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Toshikuni Miyazaki
利邦 宮崎
Hiroshi Teranishi
浩 寺西
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Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】 大規模な体系に対して、高精度で高速に現象解析を行うことが可能な分子シミュレーション方法を提供する。
【解決手段】 所定数の原子によって構成される第1原子集団と、第1原子集団の周囲に位置する第2原子集団と、第2原子集団の周囲に位置する第3原子集団と、から構成されるモデルに対して電子状態計算を行うことにより、原子の位置とエネルギー又は力との関係を示すポテンシャルマップを作成する。そして、現象解析手順では、ポテンシャルマップを参照して現象解析を行う。上記の分子シミュレーション方法によれば、ポテンシャルマップを用いることにより原子のエネルギーなどの算出に要する計算を削減することができるため、計算時間を短縮することができる。更に、ポテンシャルマップは、遠方に位置する原子の効果を平均的に考慮しつつ、電子状態計算を適切に用いることによって作成されているため、高精度に現象解析を行うことができる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、分子シミュレーション方法に関する。
従来より、複数の原子から構成される体系の相転移や吸脱着などの現象解析を行う分子シミュレーション方法が知られている。例えば、特許文献1には、半導体装置の結晶シリコン中の点欠陥の拡散経路及び障壁エネルギーを算出する分子構造遷移シミュレーション方法が記載されている。更に、特許文献2乃至6には、分子動力学法などを用いた分子シミュレーション方法が記載されている。
特開2002−260975号公報 特許2950253号公報 特許3110310号公報 特許2792487号公報 特開平5−274277号公報 特開平5−151190号公報
しかしながら、上記した特許文献1乃至6に記載された技術では、原子間ポテンシャルの存在や精度の面から応用範囲が制限されてしまう場合や、計算負荷が膨大となるためにモデルの規模を小さくした短時間の局所的な現象解析しか実行できない場合があった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、大規模な体系に対して、高精度で高速に現象解析を行うことが可能な分子シミュレーション方法を提供することにある。
本発明の1つの観点では、所定数の原子によって構成される第1原子集団と、前記第1原子集団が存在する領域の周囲に位置する第2原子集団と、前記第1原子集団及び前記第2原子集団が存在する領域の周囲に位置する第3原子集団と、から構成されるモデルに対して電子状態計算を行うことにより、原子の位置とエネルギー又は力との関係を示すポテンシャルマップを作成するポテンシャルマップ作成手順と、作成された前記ポテンシャルマップを参照して、現象解析を行う現象解析手順と、を備える。
上記の分子シミュレーション方法は、複数の原子から構成される体系の相転移や吸脱着などの現象解析を行う場合などに好適に使用される。ポテンシャルマップ作成手順では、第1原子集団と第2原子集団と第3原子集団から構成されるモデルに対して電子状態計算を行うことにより、原子の位置とエネルギー又は力との関係を示すポテンシャルマップを作成する。そして、現象解析手順では、作成されたポテンシャルマップを参照して現象解析を行う。具体的には、第1原子集団は、所定数の原子数で構成され、モデルにおける中心部分に概ね位置する。第2原子集団は、第1原子集団が存在する領域の周囲に位置する。詳しくは、第2原子集団は、第1原子集団の中心原子から少なくとも所定距離離れた場所に位置する。一方、第3原子集団は、第1原子集団及び第2原子集団の存在する領域の周囲に位置する。以上より、上記の分子シミュレーション方法によれば、ポテンシャルマップを用いることにより原子のエネルギーなどに要する計算を削減することができるため、計算時間を短縮することができる。更に、ポテンシャルマップは、遠方に位置する原子の効果を平均的に考慮しつつ、電子状態計算を適切に用いることによって作成されているため、高精度に現象解析を行うことができる。したがって、上記の分子シミュレーション方法によれば、大規模な体系に対して、高精度で高速に現象解析を行うことが可能となる。
好適な1つの実施例では、前記第1原子集団及び前記第3原子集団は固定され、前記第2原子集団は、前記第1原子集団及び前記第3原子集団の影響によって移動させる。
この場合、第1原子集団を構成する原子は、ポテンシャルマップの各離散点に位置させるため、配置位置は固定する。一方、第2原子集団を構成する原子は、ポテンシャルマップにおける第1原子集団などの配置位置に応じて移動させる。即ち、第2原子集団を構成する原子は、ポテンシャルマップ作成の手順において、配置位置の最適化が行われる。一方、第3原子集団を構成する原子は、周囲の原子に対して影響を与えるが、配置位置は移動させない。
上記の分子シミュレーション方法の一態様では、前記電子状態計算は、バンド計算又は分子軌道計算によって行う。
この態様では、ポテンシャルマップ作成手順では、バンド計算又は分子軌道計算を行うことによってポテンシャルマップを作成する。これにより、反応などによって原子配置の組み換えによって電子状態が変化しても、古典的ポテンシャルとして扱うことが可能となる。
上記の分子シミュレーション方法の他の一態様では、前記現象解析手順は、前記ポテンシャルマップをスプライン補間することによって原子のエネルギー又は力を求める手順を有している。
この態様では、前記現象解析手順は、ポテンシャルマップから得られるエネルギー(ポテンシャルエネルギー)や力をスプライン補間して用いる。ポテンシャルマップを離散点によって作成した場合には、ポテンシャルエネルギーなどを求めるべき対象となっている原子は、必ずしも、この離散点上には位置しない。そのため、この原子の近傍の位置におけるポテンシャルエネルギーをポテンシャルマップから読み出し、読み出したポテンシャルエネルギーをスプライン補間した値を、求めるべきポテンシャルエネルギーとする。これにより、離散点によりポテンシャルマップを表すことによってデータ数の削減を図っても、現象解析の精度を確保することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[ポテンシャルマップ作成方法]
まず、本発明の実施形態に係るポテンシャルマップの作成方法について説明する。
図1は、ポテンシャルマップ作成に用いる電子状態計算モデルの基本概念を説明するための図である。
このモデルは、図1中の立方体の概ね中心部分に位置する原子集団(以下、「第1原子集団1」と呼ぶ。)と、第1原子集団1の存在する領域の周辺に位置する原子集団(以下、「第2原子集団2」と呼ぶ。)と、第2原子集団2の存在する領域の周辺に位置する原子集団(以下、「第3原子集団3」と呼ぶ。)によって構成される。第1原子集団1は、結晶の配位数程度の原子数によって構成され(図1の例では、4個)、後述するポテンシャルマップにおける各離散点に位置する。言い換えると、第1原子集団1を中心にしてポテンシャルマップを作成する。また、第2原子集団2は、第1原子集団1の中心原子から、結晶の第2又は第3近接程度離れた距離に位置する原子集団によって構成される。一方、第3原子集団3は、第1原子集団1の中心原子から第2又は第3近接程度の距離よりも更に離れた距離に位置する原子集団によって構成される。
本実施形態では、上記のような原子集団によって構成されるモデルに対して電子状態計算を行うことによりポテンシャルマップを作成する。具体的には、第1原子集団1を構成する原子は、ポテンシャルマップの各離散点に位置させるため、配置位置は固定する。即ち、第1原子集団1は、周囲の原子の力などによって移動させない。一方、第2原子集団2を構成する原子は、ポテンシャルマップにおける第1原子集団1などの配置位置に応じて移動させる。即ち、第2原子集団2を構成する原子は、周囲の原子の力などを受けて移動し、ポテンシャルマップ作成の手順において、配置位置の最適化が行われる。一方、第3原子集団3を構成する原子は、周囲の原子に対して影響を与えるが、配置位置は移動させない。
ここで、上記した電子状態計算の具体例について、図2を用いて説明する。
図2(a)は、バンド計算を説明するための図である。破線11で示す領域内(以下、この領域を「クラスター」とも呼ぶ。)には第1原子集団1が位置する。また、破線11で示す領域を除く、破線12で示す領域内には第2原子集団2が位置する。この場合、第2原子集団2は、破線15で示すような結晶格子を形成する。一方、破線11及び破線12で示す領域を除く、実線13で示す領域内には第3原子集団3が位置する。バンド計算によれば、種々の原子配置について周期境界条件を課して力やエネルギーなどを計算することにより全エネルギーを求めることができる。この場合、実線13で囲まれた領域内の全ての原子が、バンド計算におけるスーパーセルを構成する。即ち、結晶格子15を適当に積層したスーパーセル13の中心部分をクラスター11に置き換えたユニットに対して周期境界条件を課して、バンド計算を行う。そして、求められた全エネルギーを第1原子集団1の原子配置に対してマップ化することにより、ポテンシャルマップが得られる。
図2(b)は、分子軌道計算(MO;MOPAC)を説明するための図である。図2(b)においても、図2(a)と同様な配置位置に、第1原子集団1、第2原子集団2、及び第3原子集団3は位置している。分子軌道計算においては、周期境界条件を用いずに、上記したユニットを孤立分子と見なして全エネルギーを求める点でバンド計算とは異なる。この場合も、求められた全エネルギーを第1原子集団1の原子配置に対してマップ化することにより、ポテンシャルマップが得られる。
次に、ポテンシャルマップ作成方法について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。ここでは、一例として、昇華法によるSiCの単結晶成長についてのポテンシャルマップの作成方法について説明する。なお、ポテンシャルマップ作成方法は、パーソナルコンピュータなどによって実行される。具体的には、パーソナルコンピュータは、所定のプログラムを実行することによってポテンシャルマップを作成する。
まず、ステップS101では、クラスターに含まれる原子数N(即ち、第1原子集団1の数)と、クラスターサイズ(力の仕切り距離)を設定する。例えば、ガスと結晶を有するモデルが採用された場合、ガス相の原子数Nは「3」以下であり、結晶層の原子数Nは「3」より大きく「6」以下である。ステップS101の設定が終了すると、ステップS102の手順に進む。ステップS102では、シミュレーションを行う系に含まれる元素種を設定して、ステップS103に進む。
ステップS103では、原子数Nが「3」より大きいか否かの判定を行う。このような判定を行うのは、作成するポテンシャルマップの対象がガス相である場合(N≦3)と、結晶相である場合(N>3)とを区別するためである。原子数Nが「3」より大きい場合(ステップS103;Yes)には、ステップS120に進み、原子数Nが「3」以下である場合(ステップS103;No)には、ステップS104に進む。
ステップS104では、変数iに「0」を代入し、ステップS105に進む。ステップS105では、原子数Nが「2」以上である原子集団において規定される原子間距離rを、演算式「r=r0+rd×REAL(i)」によって得る。この場合、「r0」は最小原子間距離を示し、「rd」は更新する際の間隔を示している。また、「REAL(i)」は、変数iを実数に変換する演算式を示している。ステップS105の手順が終了すると、ステップS106に進む。なお、ステップS105の手順は、原子間距離rが最大原子間距離となるまで繰り返し行われる。
ステップS106では、原子数Nが「3」であるか否かの判定を行う。原子数Nが「3」である場合(ステップS106;Yes)には、ステップS108に進む。この場合には、3つの原子間に働く3体力を求める必要がある。一方、原子数Nが「3」ではない場合(ステップS106;No)、即ち原子数Nが「2」である場合には、ステップS107に進む。この場合には、2つの原子間に働く2体力を求める必要がある。
ステップS107では、分子軌道計算(MO)を用いて、原子数Nが「2」である場合の原子間相互作用エネルギーV(i)を算出する(以下では、原子間相互作用エネルギーを、「ポテンシャルエネルギー」、又は単に「ポテンシャル」若しくは「エネルギー」とも呼ぶ。)。この場合、原子間距離rが最小原子間距離r0から最大原子間距離となるまで変数iを更新している際に、その変数iに対応する原子間相互作用エネルギーV(i)を繰り返し算出する。ステップS107の手順が終了すると、ステップS117に進む。
一方、ステップS108では、変数jを「0」に設定し、ステップS109に進む。ステップS109では、原子数Nが「3」以上である原子集団において規定される第3原子間距離sを、演算式「s=s0+sd×REAL(j)」によって得る。この場合、「s0」は最小第3原子間距離を示し、「sd」は更新する際の間隔を示し、「REAL(j)」は変数jを実数に変換する演算式を示している。ステップS109の手順が終了すると、ステップS110に進む。なお、ステップS109の手順は、第3原子間距離rが最大第3原子間距離となるまで繰り返し行われる。
ステップS110では、変数kを「0」に設定し、ステップS111に進む。ステップS111では、原子数Nが「3」以上である原子集団において規定される、中心原子を挟む角度t(以下、「原子間角度」と呼ぶ。)を演算式「t=t0+td×REAL(k)」によって得る。この場合、「t0」は最小原子間角度を示し、「td」は更新する際の間隔を示し、「REAL(k)」は変数kを実数に変換する演算式を示している。ステップS111の手順が終了すると、ステップS112に進む。なお、ステップS111の手順は、原子間角度tが最大原子間角度となるまで繰り返し行われる。
ステップS112では、分子軌道計算(MO)を用いて、原子数Nが「3」である場合の原子間相互作用エネルギーV(i、j、k)を算出する。なお、原子間距離rが最小原子間距離r0から最大原子間距離となるまで、第3原子間距離sが最小第3原子間距離s0から最大第3原子間距離となるまで、及び原子間角度tが最小原子間角度t0から最大原子間角度となるまで、変数i、j、kを種々の値に更新した際に、これらの変数i、j、kに対応する原子間相互作用エネルギーV(i、j、k)を繰り返し算出する。以上のステップS112の手順が終了すると、ステップS113に進む。
ステップS113では、変数kを「k+1」に更新し、ステップS114に進む。ステップS114では、変数kの更新が終了したか否かを判定する。具体的には、原子間角度tが最大原子間角度になったか否かを判定する。原子間角度tが最大原子間角度になっている場合(ステップS114;Yes)には、ステップS115に進む。一方、原子間角度tが最大原子間角度になっていない場合(ステップS114;No)には、ステップS111に戻る。
ステップS115では、変数jを「j+1」に更新し、ステップS116に進む。ステップS116では、変数jの更新が終了したか否かを判定する。具体的には、第3原子間距離sが最大第3原子間距離になったか否かを判定する。第3原子間距離sが最大第3原子間距離になっている場合(ステップS116;Yes)には、ステップS117に進む。一方、第3原子間距離sが最大第3原子間距離になっていない場合(ステップS116;No)には、ステップS109に戻る。
ステップS117では、変数iを「i+1」に更新し、ステップS118に進む。ステップS118では、変数iの更新が終了したか否かを判定する。具体的には、原子間距離rが最大原子間距離になったか否かを判定する。原子間距離rが最大原子間距離になっている場合(ステップS118;Yes)には、ステップS123に進む。一方、原子間距離rが最大原子間距離になっていない場合(ステップS118;No)には、ステップS105に戻る。
ステップS123では、得られたポテンシャルマップを保存する。具体的には、原子数Nが「2」である場合に種々の変数iを代入することによって得られた原子間相互作用エネルギーV(i)、又は原子数Nが「3」である場合に種々の変数i、j、kを代入することによって得られた原子間相互作用エネルギーV(i、j、k)がポテンシャルマップに対応する。以上の手順が終了すると、当該フローを抜ける。
一方、原子数Nが「3」より大きい場合、即ちポテンシャルマップの作成対象が結晶である場合には、ステップS120〜ステップS122の手順を行う。ステップS120では、前述したステップS105、S109、S111と同様に、原子間距離rや第3原子間距離sや原子間角度tなどを更新する手順を行う。そして、ステップS121の手順に進む。
ステップS121では、前述した電子状態計算のいずれかを選択し、原子数Nにおける原子間相互作用エネルギーV(i、j、k、…)を算出する。具体的には、クラスターに含まれる複数の原子に対して中心原子を原点として極座標表示して、原子配置をあらゆる位置に移動させることによって、原子間相互作用エネルギーV(i、j、k、…)を算出する。例えば、クラスターに含まれる原子数は、最大で5〜6個程度である。また、原子間相互作用エネルギーV(i、j、k、…)は、前述したバンド計算や分子軌道計算などの電子状態計算によって計算することができる。ステップS121の手順が終了すると、ステップS122の手順に進む。
ステップS122では、原子間距離rや第3原子間距離sなどのパラメータが最大値に達するまで変数i、j、k、…が更新されたか否かを判定している。更新が終了している場合(ステップS122;Yes)には、ステップS123の手順に進み、更新が終了していない場合(ステップS122;No)には、ステップS120の手順に戻る。
ステップS123では、得られたポテンシャルマップを保存する。具体的には、種々の変数i、j、k、…を代入することによって得られた原子間相互作用エネルギーV(i、j、k、…)をポテンシャルマップとして記憶する。以上の手順が終了すると、当該フローを抜ける。
ここで、作成されたポテンシャルマップの例を図4に示す。図4は、SiC種結晶表面上のポテンシャルエネルギー場を示している。また、図4中の「V」はポテンシャルエネルギーを示している。具体的には、図4(a)は、3C−SiCの種結晶を示し、図4(b)は、2H−SiCの種結晶を示している。これより、ポテンシャルマップ上に予想安定点(格子位置)などが現れていることがわかる。
このように、本実施形態に係るポテンシャルマップは、遠方に位置する原子の効果を平均的に考慮しつつ、電子状態計算を適切に用いることによって作成される。したがって、このポテンシャルマップによって決定されるポテンシャルは、成長させる結晶場で得られるポテンシャルに近い値となるとと共に、反応などによって原子配置の組み換えによって電子状態が変化しても、古典的ポテンシャルとして扱うことができる。
[現象解析方法]
次に、前述したポテンシャルマップを利用した現象解析方法について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。ここでは、一例とし、昇華法によるSiCの単結晶成長をシミュレーションした場合について説明する。なお、現象解析方法は、パーソナルコンピュータなどによって実行される。具体的には、パーソナルコンピュータは所定のプログラムを実行することにより、現象解析を行う。
まず、ステップS201では、解析する現象の条件(シミュレーション条件)を設定する。具体的には、ガス種の種類や、温度や、密度(分圧)や、供給条件や、種結晶の大きさや、方位や、温度条件などを設定する。ステップS201の設定が終了すると、ステップS202の手順に進む。
ステップS202では、現象解析の対象となっている原子の位置や速度などの初期状態を設定する。例えば、シミュレーションボックス(シミュレーションで設定しているモデルの単位)内の下方部分に、結晶系と表面の面方位を考慮してSi原子、C原子を配置する。そして、シミュレーションボックスの上方部分に、所定の分圧に比例した密度の原料ガス分子を配置する。この場合、結晶相の原子とガス相の原子は、温度に応じた平均速度を有するように速度を設定する。また、シミュレーションボックスのサイズや、結晶相の温度や、ガス相の温度や、ガス分圧や、番号が付された各原子に対する元素種と座標と速度なども初期状態として設定する。以上のステップS202の手順が終了すると、ステップS203の手順に進む。
ステップS203では、現象解析の対象となっている全ての原子に対して、近傍に存在する原子の数、元素種、位置、速度をテーブルデータ(以下、「クラスタテーブル」と呼ぶ。)として記録する。このクラスタテーブルには、中心原子を原点に、最も近い原子をz軸に位置させ、次に近い原子をxz面内に位置させた極座標によって表示した原子配置データが記録されている。更に、クラスタテーブルには、上記の極座標系と空間に固定した座標系との関係をオイラー角で示した変換行列によって表されたクラスター方位も記録されている。以上のステップS203の手順が終了すると、ステップS204の手順に進む。
ステップS204では、記憶しているポテンシャルマップを参照してポテンシャルエネルギーを読み出す。詳しくは、まず、ポテンシャルエネルギーの算出の対象となっている中心原子(以下、「対象原子」と呼ぶ。)の原子配置データをクラスタテーブルから読み出し、この原子配置データに最も近いポテンシャルマップにおける点(以下、「最近接点」と呼ぶ。)と、この最近接点に隣接する点(以下、「隣接点」と呼ぶ。)を決定する。そして、最近接点のポテンシャルエネルギーと、隣接点のポテンシャルエネルギーを読み出す。このような手順を行うのは、ポテンシャルマップは離散点によって規定されているため、対象原子が、必ずしも離散点上に位置しないためである。以上のステップS204の手順が終了すると、ステップS205の手順に進む。
ステップS205では、以下の手順を行う。まず、対象原子のポテンシャルエネルギーを、対象原子の原子配置データとポテンシャルマップ内の最近接点との距離に基づいて、ステップS204で決定した最近接点のポテンシャルエネルギーと隣接点のポテンシャルエネルギーとをスプライン補間することによって求める。更に、対象原子に働く力を、最近接点のポテンシャルエネルギーと隣接点のポテンシャルエネルギーとの差分を求め、求めた差分を各成分に分解した値に対してスプライン補間することによって求める。このように、スプライン補間によりポテンシャルエネルギーを求めることにより、ポテンシャルマップのデータ数の削減を図っても、現象解析の精度を確保することが可能となる。なお、ポテンシャルエネルギーを求める際にポテンシャルマップを補間する方法は、スプライン補間に限定はされない。また、計算速度の向上のために、補間を行わずに、最近接点のポテンシャルエネルギーをそのまま用いてもよい。
次に、対象原子の位置及び速度の変化を、運動方程式を差分化した式(例えばベルレの運動方程式)に、上記のようにして得られた対象原子に働く力を代入することによって求める。そして、前回ステップS205の手順において得られた値に対して、求められた対象原子の位置及び速度の変化を加算することによって、対象原子の位置と速度を更新する。なお、上記したエネルギー、力、位置、及び速度の計算は、系に含まれる全原子に対して行う。
更に、ステップS205では、ガス相に存在する全原子についての運動エネルギーの平均値及びビリアルを計算することによって、ガス相の温度と圧力を求める。これと同時に、結晶相に存在する全原子についての運動エネルギーの平均値を計算することによって、結晶相の温度を求める。以上のステップS205の手順が終了すると、ステップS206の手順を行う。
ステップS206の手順では、ステップS203〜S205までの手順を繰り返し行ったステップ数が所定のサイクル(補正サイクル)に達したか否かを判定する。例えば、補正サイクルは、温度や圧力などの熱力学データの補正を行うまでに繰り返し実行する回数に対応する。ステップ数が補正サイクルに達している場合(ステップS206;Yes)には、ステップS207の手順に進み、ステップ数が補正サイクルに達していない場合(ステップS206;No)には、ステップS203の手順に戻る。
ステップS207では、温度・圧力の平均値を更新すると共に、温度・圧力を補正する。具体的には、系の温度・圧力は所定の期間で更新し、この更新を行う間においては、温度・圧力の平均値を算出する。また、更新する前に、系の温度及び圧力と、ステップS201、S202などで設定した設定条件とを比較し、差がある場合には適切な方法によって補正を行う。以上のステップS207の手順が終了すると、ステップS208に進む。
ステップS208の手順では、ステップS203〜S207までの手順を繰り返し行ったステップ数が所定のステップ(最終ステップ)に達したか否かを判定する。この最終ステップは、シミュレーションを行うべき時間(即ち、繰り返し実行回数)などに対応する。ステップ数が最終ステップに達している場合(ステップS208;Yes)にはステップS209の手順に進み、ステップ数が最終ステップに達していない場合(ステップS208;No)には、ステップS203の手順に戻る。
ステップS209では、上記のシミュレーションを行うことによって得られた現象解析ファイルを作成する。具体的には、シミュレーションの実行時に随時記録された原子の位置・速度などのデータに基づいて、シミュレーションボックスのスナップショットの経時変化などの現象解析ファイルを作成する。以上の手順が終了すると、当該フローを抜ける。
このように、本実施形態に係る現象解析方法では、予め作成されたポテンシャルマップを用いて現象解析を行う。これにより、系の状態が変化するごとに原子のポテンシャルエネルギーなどをモンテカルロ法(MC)や分子動力学法などによって計算する必要がないため、計算時間を短縮することができる。更に、ポテンシャルマップは、遠方に位置する原子の効果を平均的に考慮しつつ、電子状態計算を適切に用いることによって作成されているため、ポテンシャルマップを用いることにより、高精度に現象解析を行うことができる。以上より、本実施形態に係る現象解析方法によれば、大規模な体系に対して、高精度で高速に現象解析を行うことが可能となる。
ポテンシャルマップ作成に用いる電子状態計算モデルの基本概念を説明するための図である。 電子状態計算の具体例を説明するための図である。 本実施形態に係るポテンシャルマップの作成方法を示すフローチャートである。 ポテンシャルマップの具体例を示す図である。 本実施形態に係る現象解析方法を示すフローチャートである。
符号の説明
1 第1原子集団
2 第2原子集団
3 第3原子集団
11 クラスター
13 スーパーセル
15 結晶格子

Claims (4)

  1. 所定数の原子によって構成される第1原子集団と、前記第1原子集団が存在する領域の周囲に位置する第2原子集団と、前記第1原子集団及び前記第2原子集団が存在する領域の周囲に位置する第3原子集団と、から構成されるモデルに対して電子状態計算を行うことにより、原子の位置とエネルギー又は力との関係を示すポテンシャルマップを作成するポテンシャルマップ作成手順と、
    作成された前記ポテンシャルマップを参照して、現象解析を行う現象解析手順と、を備えることを特徴とする分子シミュレーション方法。
  2. 前記第1原子集団及び前記第3原子集団は固定され、
    前記第2原子集団は、前記第1原子集団及び前記第3原子集団の影響によって移動させることを特徴とする請求項1に記載の分子シミュレーション方法。
  3. 前記電子状態計算は、バンド計算又は分子軌道計算によって行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の分子シミュレーション方法。
  4. 前記現象解析手順は、前記ポテンシャルマップをスプライン補間することによって原子のエネルギー又は力を求める手順を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分子シミュレーション方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8315441B2 (en) 2007-06-29 2012-11-20 Nec Corporation Masquerade detection system, masquerade detection method and masquerade detection program
CN111816267A (zh) * 2020-07-23 2020-10-23 深圳先进电子材料国际创新研究院 一种用于复合材料设计的多粒径颗粒填充体系级配的模拟优化方法

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