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JP2006152001A - 神経損傷の治療薬 - Google Patents

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JP2006152001A JP2006060358A JP2006060358A JP2006152001A JP 2006152001 A JP2006152001 A JP 2006152001A JP 2006060358 A JP2006060358 A JP 2006060358A JP 2006060358 A JP2006060358 A JP 2006060358A JP 2006152001 A JP2006152001 A JP 2006152001A
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Masahiro Toda
正博 戸田
Yutaka Kawakami
裕 河上
Yoshiaki Toyama
芳昭 戸山
Hirotsugu Mikami
裕嗣 三上
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Institute of Gene and Brain Science
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Institute of Gene and Brain Science
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Abstract

【課題】 損傷部位局所に注入するだけでなく、静脈内投与を含む様々な投与法が可能であり、取り扱いが簡便でかつ長期保存が可能で、いつでも大量に調製することができる、優れた神経再生促進作用を有する脊髄損傷を含む中枢神経系損傷や脳梗塞等の神経機能不全疾患の治療薬を提供すること。
【解決手段】 IL−12、GM−CSF等の樹状細胞から分泌される物質、樹状細胞を誘導・増殖させる物質、樹状細胞を活性化する物質、神経組織中の神経栄養因子の発現を誘導する物質、及び神経組織中のマイクログリア、マクロファージを誘導・増殖させる物質から選ばれる1種又は2種以上の物質や、これら物質を発現することができるベクター、あるいは、神経栄養因子NT−3、CNTF、TGF−β1、IL−6、EGFを分泌する樹状細胞サブセットを有効成分とする、脊髄損傷を含む中枢神経系損傷や脳梗塞等の神経機能不全疾患の治療薬を調製する。
【選択図】なし

Description

本発明は、神経再生を促し、脊髄損傷を含む中枢神経系損傷や脳梗塞等の神経機能不全疾患の治療薬、特に遺伝子治療に応用可能な治療薬に関する。
脊髄損傷の多くは外傷性で、その原因は交通事故、スポーツ、労災などであるが、非外傷性のものとしては、炎症、出血、腫瘍、脊椎変形などが原因となっている。病態は、脊髄実質に出血、浮腫を基板とした脊髄の挫滅と圧迫病変であり、損傷部位に対応する神経障害が生じる。主な臨床症状として、障害レベル以下に、不全あるいは完全運動及び知覚麻痺が出現し、また、頚髄損傷では、特有な合併症として呼吸麻痺と過高熱(または過低熱)がみられる。上記神経障害の改善、特に運動障害の改善は、寝たきり老人増加の防止やQOL(Quality of Life)の向上に直結しており、近年の平均寿命の延長とともにその重要性が高まりつつある。
上記脊髄損傷の治療法として行われているのは、物理的な圧迫や傷害を除去するための外科的手術と、受傷急性期の脊髄浮腫に対してのステロイド療法である(非特許文献1参照)。ステロイド剤の中ではメチルプレドニゾロンの大量投与が脊髄損傷に伴う神経症状の改善に有効であると報告されている(非特許文献2参照)が、ステロイド剤の大量投与は全身的副作用も強く発現し、コントロールが難しいことに加えて、感染症を伴う脊髄損傷では感染防御機能低下をきたすという問題点がある。また、さらに現在ステロイド大量投与療法の有効性についてさえ議論されている。以上の様に現在まで、脊髄損傷に対する有効な治療薬はなく、新しい治療薬の開発が切望されている。上記以外の脊髄損傷の治療方法として報告されているものは、インビトロで炎症関連サイトカインにより前処理された神経膠星状細胞を中枢神経系(CNS)中の損傷部位に、治療上有効な量を移植する方法(特許文献1参照)や、同種の単核貪食細胞(単球、マクロファージ等)を、損傷または疾患部位に、あるいはその近傍の中枢神経系(CNS)に投与することにより、哺乳動物CNSにおける神経軸索再生を促進する方法(特許文献2及び非特許文献3〜6参照)などである。また、明確な機序は不明であるが、spinal cord homogenateによるvaccinationや髄鞘蛋白質であるmyelin basic proteinに特異的なT細胞を投与することにより、脊髄損傷後の運動維持の回復を促進させたという報告もなされている(非特許文献7、8参照)。
他方、樹状細胞(Dendritic Cell:DC)は造血幹細胞由来の樹枝状形態をとる細胞集団で、生体内に広く分布している。未成熟樹状細胞は、それぞれの組織に侵入したウイルスや細菌をはじめとする異物を認識して取り込み、リンパ系器官T細胞領域への移動の過程で消化分解してペプチドを生成し、MHC分子に結合させて細胞表面に提示することにより抗原特異的なT細胞を活性化して免疫応答を誘導する抗原提示細胞としての役割を担っている(非特許文献9、10参照)。
樹状細胞は、その分布が広範であるものの各組織における密度が高くなかったために多数の細胞の調製は困難であったが、未熟な前駆細胞の培養に分化増殖因子を添加することによりインビトロで多数の細胞が容易に調製可能になったことを受け、免疫賦活化剤として樹状細胞を利用することが検討され始めている(非特許文献11参照)。とりわけ、微弱な腫瘍免疫応答に対して樹状細胞に抗原をパルスすることにより特異的に免疫応答を増強しようとするものである。動物実験では、腫瘍由来のタンパク質や抗原ペプチドを提示した樹状細胞により特異的CD8細胞障害性T細胞が誘導されることが示されており、ヒトでも同様に腫瘍由来のタンパク質や抗原ペプチドを樹状細胞とともに生体に戻すことにより腫瘍の減少あるいは消失が報告されている。一方、サイトカインであるIL−12は主に抗原提示細胞である上記樹状細胞やB細胞から分泌され、T細胞やNK細胞に働き、その高い抗腫瘍活性が報告されている(非特許文献12、13参照)。このように、IL−12は癌の治療薬として注目されており、癌に対する新しい免疫療法として臨床治験が行われていたが、神経系に対しては従来全く用いられていなかった。
他方、動物モデルを用いた脊髄損傷の研究において最も重要なことの一つに運動機能評価が挙げられる。かかる運動機能評価は簡便で、かつ高い再現性を有することが望まれている。しかし、従来の運動機能評価法は、動物の歩行動作を多岐にわたるチェック項目での合計点(最高21点)で評価するBBBスコア法(非特許文献14)など、後肢個々の関節の動き、及びそれらの協調運動や全体としての歩行状態に注目したものが多く、運動の様子をビデオテープに録画して、録画後に詳細な計測を必要とするものもあり、煩雑で、実験者による個人差を生じやすいという問題があった。
特表2000−503983号公報 特表平11−13370号公報 N. Engl. J. Med. 322, 1405−1411, 1990、J. Neurosurg 93, 1−7, 2000 J. Spinal Disord. 5(1), 125−131, 1992 J. Mol. Med. 77, 713−717, 1999 J. Neurosci. 19(5), 1708−16, 1999 Neurosurgery 44(5), 1041−5, 1999 Trends. Neurosci 22(7), 295−9, 1999 Neuron 24, 639−647, 1999 Lancet 354, 286−287, 2000 Ann. Rev. Immunol. 9, 271−296, 1991 J. Exp. Med. 185, 2133−2141, 1997 J. Exp. Med. 183, 7−11, 1996 J. Exp. Med. 178, 1223−1230, 1993 J. Exp. Med. 189, 1121−1128, 1999 J Neurosung 93, 266−75, 2000
脊髄損傷を含む中枢神経系の損傷は極めて治療困難な疾患で、前記のように現在まで有効な治療法がなく、新たな治療法の開発が強く望まれている。また高齢化に伴い、神経系疾患に罹患する患者数は増加する傾向にあり、大きな社会問題となっている。しかし、中枢神経系は再生が極めて困難な臓器であり、また免疫反応が起こりにくい特殊な臓器である。前記のSchwartzらによるマクロファージを用いて中枢神経系(CNS)の神経軸索再生を促進させる方法においては、マクロファージのいかなる機能が軸索の再生に働きかけるのかは明らかではなかった。また、マクロファージ等の細胞を用いる場合、投与方法が限定されるばかりでなく、その取り扱いが繁雑で、生細胞を用いるだけに再現性のある治療効果が得られにくいという問題があった。本発明の課題は、損傷部位局所に注入するだけでなく、皮下又はリンパ節近傍や静脈内投与を含む様々な投与法が可能であり、取り扱いが簡便でかつ長期保存が可能で、いつでも大量に調製することができる、優れた神経再生促進作用を有する脊髄損傷を含む中枢神経系損傷や脳梗塞等の神経機能不全疾患の治療薬を提供することにある。
中枢神経系は他の組織と異なり、免疫系から隔絶された組織である。しかし、最近、本発明者らはマウス脳腫瘍モデルを用いた実験により、何の刺激もされていない未熟なT細胞は中枢神経系内へ侵入できないが、脳内の抗原により活性化されたT細胞は血液脳関門を通過して、脳腫瘍と反応しうることを報告している(Neuro−Oncology 1, S105, 1999)。また、神経特異的なT細胞を投与することにより、中枢神経損傷の機能回復を促進したという報告がある(Lancet 354, 286−287, 2000)。神経特異的なT細胞が血液脳関門を通過して中枢神経系内でどういう形で機能するかは、何らかのサイトカインの放出を介してなのか、直接神経細胞や軸索に付着して作用するのかなど未だ不明であるが、免疫系の介入による神経再生の可能性が示されている。一方、神経特異的なT細胞を誘導するためには、抗原提示細胞により神経系の抗原を取り込み、細胞内で処理した抗原ペプチドをT細胞へ提示する必要がある。
本発明者らは、脊髄損傷時において損傷組織の排除は極めて重要な第一段階であり、抗原を取り込み、T細胞に対する抗原提示能力が最も高い樹状細胞の特定のサブセットを脊髄損傷モデルマウスの損傷部位に直接移植することにより、脊髄機能の回復が促進されることを初めて実証した。上記の脊髄機能の回復促進の実証には、本発明者らにより確立された脊髄損傷マウスにおける運動機能評価方法が用いられた。この運動機能評価方法は、薬物の鎮静効果などの解析を目的として運動量の計測に使用されていた装置を脊髄損傷後の運動機能評価に応用したものである。本発明者らは、T細胞の活性化を含む中枢神経系内の環境変化をもたらす樹状細胞から分泌される物質や樹状細胞を誘導・増殖若しくは活性化する物質をターゲットとし、候補物質を脊髄損傷モデルマウス損傷部位に投与し、上記の脊髄損傷マウスにおける運動機能評価方法によりスクリーニングしたところ、癌の治療薬としては広く用いられているが、神経系では全く用いられていないIL−12や、GM−CSFが、樹状細胞と同様に脊髄機能の回復を促進することを見い出した。また、上記のように、樹状細胞サブセットを損傷脊髄内に移植することにより、有意な運動機能の回復が認められたことから、樹状細胞から分泌される神経再生を促す物質の解析を行ったところ、樹状細胞が神経栄養因子を発現し、また実際に分泌していることを確認した。本発明はこれらの知見により完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、インターロイキン−12(IL−12)を有効成分とすることを特徴とする神経損傷又は神経機能不全の治療剤(請求項1)や、神経損傷又は神経機能不全が、中枢神経損傷又は中枢神経機能不全であることを特徴とする請求項1記載の神経損傷又は神経機能不全の治療剤(請求項2)や、中枢神経損傷又は中枢神経機能不全が、脊髄損傷又は脊髄機能不全であることを特徴とする請求項2記載の神経損傷又は神経機能不全の治療剤(請求項3)に関する。
また本発明は、インターロイキン−12(IL−12)の発現ベクターを有効成分とすることを特徴とする神経損傷又は神経機能不全の治療剤(請求項4)や、神経損傷又は神経機能不全が、中枢神経損傷又は中枢神経機能不全であることを特徴とする請求項4記載の神経損傷又は神経機能不全の治療剤(請求項5)や、中枢神経損傷又は中枢神経機能不全が、脊髄損傷又は脊髄機能不全であることを特徴とする請求項5記載の神経損傷又は神経機能不全の治療剤(請求項6)に関する。
本発明の神経損傷又は神経機能不全疾患治療薬としては、樹状細胞から分泌される物質や、樹状細胞を誘導・増殖させる物質や、樹状細胞を活性化する物質や、神経組織中の神経栄養因子の発現を誘導する物質や、神経組織中のマイクログリア、マクロファージを誘導・増殖させる物質であって、神経損傷又は神経機能不全疾患の予防効果、症状改善効果又は治療効果を有する物質(以下これら物質を総称して「樹状細胞関連有効物質」という)や、それら物質の混合物を有効成分とするものを挙げることができ、上記樹状細胞から分泌される物質としてはIL−12、IL−1α、IL−1β、IFN−γなどのサイトカインを好適に例示することができ、樹状細胞を誘導・増殖させる物質としてはGM−CSF、IL−4などのサイトカインを好適に例示することができ、樹状細胞を活性化する物質としてはIL−1β,CD40Lなどを好適に例示することができ、損傷後の神経組織中の神経栄養因子の発現を誘導する物質としてはGM−CSFなどのサイトカインを好適に例示することができ、損傷後の神経組織中のマイクログリア、マクロファージを誘導・増殖させる物質としてはGM−CSF、M−CSFなどのサイトカインを好適に例示することができる。上記神経栄養因子としては、インビボでの神経再生効果やマイクログリアの増殖、食作用の増強を誘導するNT−3、損傷脊髄の運動ニューロンの変性、脱落を抑制するBDNF、コリン作動性ニューロンの神経栄養因子NGF、脊髄の運動知覚両神経に対し変性・細胞死保護の効果を有するCNTFなどを挙げることができる。
樹状細胞から分泌される物質や、樹状細胞を誘導・増殖させる物質や、樹状細胞を活性化する物質や、神経組織中の神経栄養因子の発現を誘導する物質や、神経組織中のマイクログリア、マクロファージを誘導・増殖させる物質としては、樹状細胞の誘導・増殖作用等を有するそれぞれ公知の物質を用いることができるが、例えば、樹状細胞から分泌される物質は、樹状細胞をインビトロで培養することにより得ることができ、樹状細胞の誘導・増殖作用を有する物質は、候補物質の存在下に樹状細胞をインビトロで培養し、樹状細胞の誘導・増殖の程度を測定・評価することにより得ることができ、樹状細胞を活性化する物質は、候補物質の存在下に樹状細胞をインビトロで培養し、樹状細胞の神経栄養因子産生能の程度を測定・評価することにより得ることができ、神経組織中の神経栄養因子の発現を誘導する物質は、候補物質を投与した損傷した神経組織中の神経栄養因子の発現・誘導の程度を測定・評価することにより得ることができ、神経組織中のマイクログリア、マクロファージを誘導・増殖させる物質は、候補物質を投与した損傷した神経組織中の、貧食能が強い活性型マイクログリア及び脊髄外から流入したモノサイト由来のマクロファージと考えられるアメーバ状(ameboid)細胞や、貧食能は乏しいが種々の神経栄養因子やサイトカインを分泌する活性型マイクログリアと考えられる分枝状(ramified)細胞の誘導・増殖の程度を測定・評価することにより得ることができる。
上記樹状細胞関連有効物質を神経損傷又は神経機能不全疾患治療薬として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。またかかる治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口に局所に投与することができる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできる。
また、上記樹状細胞関連有効物質として、該物質を発現することができるベクターを用いることができ、遺伝子治療として、かかるベクターを局所投与する場合、樹状細胞関連有効物質を有効成分とする治療薬を局所投与する場合に比べて、該物質の安定した発現により、樹状細胞関連有効物質を局所に安定的に供給することが可能になる。多くの樹状細胞関連有効物質は半減期がきわめて短く、不安定であるのに対して、樹状細胞関連有効物質を発現することができるベクターを用いて、神経損傷部位の細胞へ遺伝子導入することにより、所定の期間の安定した発現を得ることができる。このようなベクターとしては、ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、アデノウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター等のウイルスベクターを好適に挙げることができるが、これらウイルスベクターの中でもHSVベクターが好ましい。HSVベクターは、神経親和性が高く、HSVが細胞の染色体DNAに組み込まれないため安全であり、また、導入遺伝子の発現期間を調節することが可能である。また、樹状細胞関連有効物質を発現するウイルスベクターは、常法により調製することができる。
また、本発明の神経損傷又は神経機能不全疾患治療薬としては、樹状細胞、特に好ましくは神経栄養因子NT−3を分泌する樹状細胞サブセットを有効成分とするものを挙げることができ、上記神経栄養因子NT−3を分泌する樹状細胞サブセットとしては、インビボでの神経再生効果やマイクログリアの増殖、食作用の増強を誘導するNT−3に加えて、脊髄運動知覚両神経に対し変性・細胞死保護の効果が示すCNTF、マイクログリアやマクロファージ由来の細胞障害性物質の放出の抑制作用を有するTGF−β1、各種ニューロン(コリン・カテコールアミン・ドーパミン作動性)に対する保護効果を誘導するIL−6を発現する未成熟樹状細胞サブセットや、NT−3に加えて、CNTF、TGF−β1、IL−6、神経保護効果の認められているEGFを発現する成熟樹状細胞サブセットが好ましく、細胞表面にCD11cの表面マーカーを有する未成熟樹状細胞サブセットや該未成熟樹状細胞に由来する成熟樹状細胞サブセットを例示することができる。
そして、上記成熟樹状細胞サブセットとして、LPS、IL−1、TNF−α、CD40L等の未成熟樹状細胞を成熟させるための刺激剤の存在下で、未成熟樹状細胞サブセットをインビトロで培養することにより得られる成熟樹状細胞サブセットを用いることもできる。この場合、NT−3等の神経栄養因子の発現が変化して、より高い再生効果を誘導することができる可能性がある。また、MBP(myelin basic protein)、MAG(myelin−associated glycoprotein)等のミエリン蛋白やNogo等の神経軸索の伸展を抑制する因子などの神経系のタンパク質若しくはペプチド、又はそれらをコードする遺伝子がインテグレイトされたウイルスベクター等の発現系が導入された(取り込まれた)成熟樹状細胞サブセットを用いることもできる。
神経栄養因子NT−3を分泌する樹状細胞サブセットは、例えば、末梢血等に対し密度遠心分離処理等の前処理を行った後、樹状細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体を用いてFACSでソートする方法や、樹状細胞表面抗原に対する磁気ビーズ結合モノクローナル抗体を用いる分離方法等により樹状細胞サブセットを分離し、それらの中からNT−3を分泌する樹状細胞サブセットを選択することにより得ることができる。かかる神経栄養因子NT−3を分泌する樹状細胞サブセットは脊髄等の神経損傷部位に移植することができる。また、特に、上記神経系のタンパク質若しくはペプチド、又はそれらをコードする遺伝子の発現系が導入された(取り込まれた)成熟樹状細胞サブセットは、皮下又はリンパ節近傍へ投与することができる。以上のように、本発明の神経損傷又は神経機能不全疾患の治療方法としては、前記樹状細胞関連有効物質や神経栄養因子NT−3を分泌する同種の樹状細胞サブセットを有効成分とする神経損傷又は神経機能不全疾患治療剤を、神経損傷部位、皮下若しくはリンパ節近傍、又は静脈内に投与(移植)する方法を例示することができる。
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(脊髄損傷モデルBALB/cマウスの作製)
生後6週齢のBALB/c雌マウス(n=9)をそれぞれ用い、エーテル麻酔下に第8胸椎椎弓切除を行い、尖刃にて脊髄を左半切した脊髄損傷モデルマウス(損傷群;◇)を作製した。脊髄損傷後にこのマウスは左下肢の麻痺を呈した。コントロール(対照群;□)として椎弓切除のみを行った、生後6週齢のBALB/c雌マウス(n=9)を用いた。手術後、急性期として2、4日目、亜急性期として7日目、慢性期として14、21、28、56日目の上記各マウスの自発運動量を、行動解析装置SCANETMV−10(東洋産業;426mm四方の正方形内に縦横に走行する近赤外線センサー144組を上下に2段重ねに設置した装置)を用いて計測し運動機能評価を行った。なお、自発運動量の計測としては、大小2種類の水平方向の動き(Movement1、2;M1、M2と略し、M1は12mm以上、M2は60mm以上動きがあったとき動作をしたとみなし、運動量を計測する)、垂直方法の動き(Rearing;RGと略し、6.75cm以上の立ち上がり動作の回数を計測する)の形で検出し計測し、1匹あたり10分間の計測を行うように設定した。BALB/c雌マウスを用いた場合の結果を図1に示す。なお、図中のp値はStudent’s t testを用いて算出した(*:p<0.05、**:p<0.01)。これら対照群と損傷群との各運動機能評価を比較した結果、水平方向の運動評価を示すM1(図1上段)、M2(図1中段)では、急性期・亜急性期においては有意差が認められたが、慢性期では有意差は認められなかった。一方、垂直方向の運動評価を示すRGでは両群間において慢性期まで明らかな有意差が認められた(図1下段)。
(脊髄損傷モデルC57BL/6マウスの作製)
また、上記生後6週齢のBALB/c雌マウス(n=9)に代えて、生後6週齢のC57BL/6雌マウス(n=16)を用いる以外は実施例1と同様に行動解析装置SCANETMV−10を用いて運動機能評価を行った。結果を図2に示す。なお、図中のp値はStudent’s t testを用いて算出した(**:p<0.01)。これら対照群(□)と損傷群(◇)との各運動機能評価を比較した結果、急性期・亜急性期・慢性期を通じて、水平方向の運動評価を示すM1(図2上段)、M2(図2中段)では明らかな有意差は認められなかった。一方、垂直方向の運動評価を示すRGでは両群間において慢性期まで明らかな有意差が認められた(図2下段)。以上2種類の異なる系統のマウスの実験結果より、水平運動量(M1、M2)は健側の下肢及び両上肢により代償され、左下肢の麻痺を正確に評価できなかったのに対して、垂直方向運動(RG)は脊髄損傷後の運動機能を正確に評価しうることが示された。
(脊髄損傷に対する樹状細胞の効果)
実施例1と同様の手術により脊髄損傷モデルマウス(BALB/c雌マウス)を作製し、直ちにRPMI1640培地のみ[コントロール(◇)、図3;n=14、図4;n=6]、又は、脾臓から単離した樹状細胞を含む抗原提示細胞[5×10個/マウス,n=13(図3;○)]若しくは免疫磁気ビーズ法にてCD11c(+)のサブセットをソートすることによって得られた樹状細胞[1×10個/マウス,n=6(図4;○)]を脊髄損傷部位に移植した。また、脊髄損傷を加えないコントロールとして椎弓切除のみ施行したマウスを用いた[図3;□(n=6)]。実施例1と同様に2、4、7、14、21、28、56日目の各マウスの垂直方向の自発運動量を、行動解析装置SCANETMV−10を用いて計測し運動機能評価を行った。それらの結果を図3及び図4に示す。なお、図中のp値はStudent’s t testを用いて算出した(*:p<0.05、**:p<0.01)。これらの結果から、CD11c(+)樹状細胞サブセットを損傷部位に投与することにより、コントロールと比較して垂直方向の運動量に有意な差が認められた。以上のことから、神経損傷部位に樹状細胞を投与することにより脊髄機能の回復が促進されることが明らかになった。
(脊髄損傷に対するIL−12の効果)
生後6週齢のBALB/c雌マウスを用いて、実施例1と同様に手術し脊髄損傷モデルマウスを作製した。また、脊髄損傷を加えないコントロールとして椎弓切除のみを行った、生後6週齢のBALB/c雌マウス(□;n=6)を用いた。脊髄損傷直後に、生理食塩水のみ(◇;n=14)又はIL−12(100ng/マウス;ファーミンジェン社製,○;n=14)を5μl脊髄損傷部位に投与した後、実施例1と同様に2、4、7、14、21、28日目の各マウスの垂直方向の自発運動量を、行動解析装置SCANETMV−10を用いて計測し運動機能評価を行った。その結果を図5に示す。なお、図中のp値はStudent’s t testを用いて算出した(*:p<0.05、**:p<0.01)。これらの結果から、IL−12を損傷部位に投与することにより、生理食塩水の投与と比較して垂直方向の運動量において明らかな有意差が認められた。以上のことから、神経損傷部位にIL−12を投与することにより、上記樹状細胞を用いた場合と同様に、脊髄機能の回復が促進されることが明らかになった。
(脊髄損傷に対するGM−CSFの効果)
生後6週齢のBALB/c雌マウスを用いて、実施例1と同様に手術し脊髄損傷モデルマウスを作製した。また、脊髄損傷を加えないコントロールとして椎弓切除のみを行った、生後6週齢のBALB/c雌マウス(□;n=6)を用いた。脊髄損傷直後に、生理食塩水のみ(◇;n=7)又はGM−CSF(10ng/マウス;Genzyme社製,○;n=6)を5μl脊髄損傷部位に投与した後、実施例1と同様に2、4、7、14、21、28日目の各マウスの垂直方向の自発運動量を、行動解析装置SCANETMV−10を用いて計測し運動機能評価を行った。その結果を図6に示す。なお、図中のp値はStudent’s t testを用いて算出した(**:p<0.01)。これらの結果から、GM−CSFを損傷部位に投与することにより、生理食塩水の投与と比較して垂直方向の運動量において明らかな有意差が認められた。以上のことから、神経損傷部位にGM−CSFを投与することにより、上記樹状細胞を用いた場合と同様に、脊髄機能の回復が促進されることが明らかになった。
(未成熟樹状細胞サブセット及び成熟樹状細胞サブセットの調製)
生後6週齢のBALB/c雌成熟マウスの脾臓より、免疫磁気ビーズ法にてCD11c陽性のサブセットを分離することにより未成熟樹状細胞を得た。具体的には、まず脾臓を100U/mlコラーゲナーゼ(Worthington Biochemical Corporation社)にてホモジェネートした後、分離しにくい被膜部分をさらに400U/mlコラーゲナーゼにて37℃、5%CO下に20分間インキュベートして、細胞を分離した。得られた細胞を35%BSA溶液中に浮遊させて、遠心管中でさらにRPMI1640+10%胎仔血清を重層させた後、4℃、3000rpm、30分間遠心し、35%BSA溶液とRPMI1640+10%胎仔血清溶液との境界層の細胞を回収した。次に得られた細胞に対して、CD11c抗原に対する磁気ビーズ結合モノクローナル抗体(2×10ビーズ、Miltenyi Biotec社)を4℃15分間反応させ、ビーズ結合細胞を磁気により分離することにより、未成熟樹状細胞サブセットが濃縮された画分を得た。また、得られた未成熟樹状細胞サブセットをRPMI1640+10%胎仔血清の培養液中で37℃、5%CO下24時間培養することにより成熟樹状細胞サブセットを得た。
(樹状細胞における神経栄養因子の遺伝子発現)
未成熟樹状細胞サブセット及び成熟樹状細胞サブセットのそれぞれの細胞からTRIzol(Life Technologies社)を用いて全RNAを抽出し、各5μgの全RNAからAMV(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素とオリゴ(dT)プライマーを用いて、42℃で60分間インキュベートし、総量200μlのcDNAを合成した。β−アクチンのプライマーを用いてPCRを施行し、遺伝子発現を確認した後、各神経栄養因子についてそれぞれの条件下でPCRを行った。PCRは1μlのcDNAをテンプレートとしてExtaq(TAKARA社)の反応酵素を用いて、サーマルサイクラー(Perkin−Elmer社)により遺伝子を増幅した。用いたプライマーとPCR条件を[表1]に示す。なお混入したゲノミックDNAから増幅された遺伝子産物でないことを示すために、コントロールとして全RNAをテンプレートとして、それぞれPCR反応を行った。未成熟樹状細胞サブセットにおける結果を図7に、成熟樹状細胞サブセットにおける結果を図8にそれぞれ示す。
未成熟樹状細胞では、インビボでの神経再生効果やマイクログリアの増殖、食作用の増強を誘導するNT−3、脊髄運動知覚両神経に対し変性・細胞死保護の効果を有するCNTF、マイクログリアやマクロファージ由来の細胞障害性物質の放出の抑制作用を有するTGF−β1、各種ニューロン(コリン・カテコールアミン・ドーパミン作動性)に対する保護効果を誘導するIL−6の発現が確認された(図7)。また、成熟樹状細胞では、NT−3、CNTF、TGF−β1、IL−6に加え、神経保護効果の認められているEGFの発現が確認された(図8)。それぞれの遺伝子について、ゲルからcDNAを抽出して塩基配列を解析し、発現産物がそれぞれNT−3、CNTF、TGF−β1、IL−6及びEGFであることを確認した。
(神経栄養因子NT−3の分泌)
さらに神経再生のために最も重要と考えられている神経栄養因子の一つであるNT−3に関して、実際に樹状細胞から分泌されているかをNT−3イムノアッセイシステム(Promega社製)を用いたELISA法にて解析した。実施例1と同様にして、生後6週齢のBALB/c雌成熟マウスの脾臓から、免疫磁気ビーズ法によりCD11c陽性の未成熟樹状細胞分離した。このCD11c陽性の未成熟樹状細胞1×10個を、RPMI1640+10%胎仔血清の培養液中で37℃、5%CO下24時間インキュベートした後、その培養上清を回収した。コントロールとしてRPMI1640のみ、及びCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞それぞれ1×10個を用いた。2種の抗NT−3抗体を用いたサンドイッチELISA法により上清中のNT−3を定量的に解析した結果、1×10個の樹状細胞が24時間で約1.75ngのNT−3を分泌していることが明らかになった。RPMI1640のみ、及びCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞では分泌は認められなかった(図9)。
(脊髄損傷に対する樹状細胞の効果の再確認)
生後6週齡のBALB/c雌マウスをエーテル麻酔下に第8胸椎椎弓切除を行い、顕微鏡下で左側脊髄を半切した脊髄損傷モデルマウスを作製した。脊髄損傷部位に直ちに樹状細胞1×10個を移植した後(DC,n=17)、本発明者らが開発した下肢の運動機能評価法(行動解析装置SCANET MV−10を用いて、立ち上がり回数を自動的に解析する、RGスコア)、及びすでに確立された下肢の運動機能評価法の一つであるBBBスケール(0−21点の間で評価し、0点は全く下肢運動が認められない、21点は正常)を用いて、経時的に評価を行った。コントロールとしてRPMI1640(RPMI,n=18)、及びCD8陽性T細胞(T,n=10)を同様に損傷脊髄部位に移植した。結果を図10に示す。図10からもわかるように、2つの評価法(RGスコア及びBBBスケール)で共に、コントロールのT細胞やRPMIの場合と比較して、DC移植群で統計学的有意に高いスコアを示した。従って、神経栄養因子NT−3を分泌する樹状細胞サブセットを脊髄損傷部位に移植することにより、脊髄機能の回復が促進されることが再確認することができた。
(樹状細胞移植による内在性マイクログリアの活性化)
樹状細胞移植により内在性マイクログリアや、損傷部の血管から侵入したマクロファージの反応性に変化がみられるかどうかを検討するため、それらを認識するMac−1抗体を用いて、免疫組織染色を行い、陽性細胞数の経時的な変化を調べた。まず、損傷後2,4,7,14日の樹状細胞移植マウスについて、2%パラフォルムアルデヒドで経心臓的灌流固定を行い、凍結切片を作製した(n=3)。コントロールとして、RPMI1640移植群を用いた(n=3)。次に、一次抗体として抗マウスMac−1抗体(Pharmingen社)を利用した免疫組織染色を行った。計測領域に関しては、細胞を移植する際に用いたgelfoam(変性コラーゲン)の最も遠位部、及びそこから1mm離れた地点それぞれで、背側から腹側に至る部分として、損傷辺縁部、頭側・尾側の3つに分類した。計測するMac−1陽性細胞の種類に関しては、脊髄外より流入したモノサイト由来のマクロファージと貪食能が特に強い活性型マイクログリアとの両方が含まれるアメーバ状細胞と、貪食能に関しては乏しい活性型マイクログリアと考えられる分枝状細胞の2つに分けて行った。
損傷辺縁部から頭側にかけての代表的切片の染色像を図11に示す。両群ともに、損傷後2日では細胞浸潤は乏しいが、4日では損傷辺縁部ではアメーバ状細胞の著明な浸潤が認められた。損傷後4日以降では、樹状細胞移植群において、頭側の遠隔部にMac−1陽性細胞の浸潤が認められたものの、コントロール群ではそのような変化は乏しかった。
次にそれぞれMac−1陽性細胞を画像解析装置(Flovel社)を用いて定量的に解析した。図12にアメーバ状細胞数の領域別の経時的変化を示す。アメーバ状細胞の浸潤はほとんど損傷辺縁部に限局していた。損傷辺縁部や尾側において両群間で明らかな細胞数の違いを認めなかったが、頭側ではとくに損傷後14日目に樹状細胞移植群で陽性細胞が多く認められた。一方、図13は分枝状細胞数の領域別の経時的変化を示しているが、細胞数はすべての領域、計測日で樹状細胞移植群において多い結果となった。樹状細胞移植群で、頭側でアメーバ状の活性型マイクログリアの増加がみられたことは、特にアメーバ状細胞は貪食能が強いため、損傷部から離れた場所で神経軸索伸展を阻害する変性ミエリンや損傷組織に由来する蛋白質の除去を行っていると考えられる。一方、広範囲で分枝状の活性型マイクログリアの増加がみられたことは、活性型マイクログリア自身がNT−3、CNTF、IL−6、TGF−β1、EGF、bFGF、NGF、BDNF、GDNFなどの神経栄養因子を分泌することにより、神経機能の回復を促進させたと考えられる。
(樹状細胞移植による内在性神経幹細胞/前駆細胞の解析)
樹状細胞移植による内在性神経幹細胞/前駆細胞の反応性を検討するため、それらを認識するMusashi−1抗体を用いて、免疫組織染色を行い、陽性細胞数の経時的な変化を調べた。まず、損傷後2、4、7日の樹状細胞移植マウスについて、2%パラフォルムアルデヒドで経心臓的灌流固定を行い、凍結切片を作製した(n=3)。コントロールとして、RPMI1640移植群を用いた(n=3)。次に、一次抗体として抗マウスMusashi−1抗体を利用した免疫組織染色を行った。Musashi−1は1994年にOkanoらにより同定された分子量約38kDaのRNA結合タンパクであり(Neuron, 1994)、マウスのMusashi−1に対するモノクローナル抗体を用いた解析では神経幹細胞/前駆細胞に強く発現することが報告されている(Dev. Biol. 1996, J. Neurosci. 1997, Dev. Neurosci. 2000)。計測領域に関しては、細胞を移植する際に用いたgelfoam(変性コラーゲン)の最も遠位部、及びそこから1mm離れた地点それぞれで、背側から腹側に至る部分として、損傷辺縁部、遠位部(頭側・尾側)の2つに分類した(図14)。
損傷辺縁部から頭側にかけての代表的切片の染色像を図15に示す。両群ともに、損傷後2日では差はみられないが、損傷後4日以降では、樹状細胞移植群において、辺縁部、遠位部ともにMusashi−1陽性細胞が多く認められたものの、コントロール群ではそのような変化は乏しかった。
次にMusashi−1陽性細胞を画像解析装置(Flovel社)を用いて定量的に解析した。図16にMusashi−1陽性細胞数の領域別経時変化を示す。損傷後4日以降で損傷辺縁部や遠位部ともに、コントロールと比較して樹状細胞移植により有意なMusashi−1陽性細胞数の増加を認めた。特に損傷辺縁部では、損傷後2日から4日の間に樹状細胞移植群でMusashi−1陽性細胞の著しい増加が認められた。
以上、樹状細胞の移植により、内在性神経幹細胞/前駆細胞が増殖誘導されることが明らかになった。
(GM−CSF投与後の損傷神経組織における神経栄養因子の発現誘導)
生後6週齢のBALB/c雌マウスを用いて、脊髄損傷モデルマウスを作成した。損傷直後に、生理食塩水のみ又はGM−CSF(250pg/マウス;Genzyme社製)を5μl脊髄損傷部位に投与し、2日目に脊髄を摘出した。摘出した脊髄は液体窒素中で凍結後80℃にて保存し、TRIzol(Life Technologies社製)を用いて全RNAを抽出した。各5μgの全RNAからAMV(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素とオリゴ(dT)プライマーを用いて、42℃で60分間インキュベートし、総量200μlのcDNAを合成した。β−アクチンのプライマーを用いてPCRを施行し、遺伝子発現を確認した後、各神経栄養因子についてそれぞれの条件下でPCRを行った。PCRは1μlのcDNAをテンプレートとしてExtaq(TAKARA社製)の反応酵素を用いて、サーマルサイクラー(Perkin−Elmer社)により遺伝子を増幅した。用いたプライマーとPCR条件を[表2]に示す。なお混入したゲノミックDNAから増幅された遺伝子産物ではないことを示すために、コントロールとして全RNAをテンプレートとして、それぞれPCR反応を行った。
損傷脊髄にGM−CSFを投与することにより、インビボでの神経再生効果やマイクログリアの増殖、食作用の増強を誘導する神経栄養因子NT−3、損傷脊髄の運動ニューロンの変性、脱落を抑制する神経栄養因子BDNF、コリン作動性ニューロンの神経栄養因子NGF、及び脊髄の運動知覚両神経に対し変性・細胞死保護の効果を有する神経栄養因子CNTFの発現が誘導されることが明らかになった(図17)。
(GM−CSF投与による内在性マイクログリアの活性化)
GM−CSFはインビトロでマイクログリア及びマクロファージの増殖や活性化に関与することが知られているが、中枢神経系組織内のマイクログリア及び損傷部血管から侵入したマクロファージに対する反応性を解析するため、それらを認識するMac−1抗体を用いて、免疫組織染色を行い、陽性細胞数の経時的な変化を調べた。まず、損傷後2、4、7日のGM−CSF投与マウスについて、2%パラフォルムアルデヒドで経心臓的灌流固定を行い、凍結切片を作製した(n=3)。コントロールとして、生理食塩水投与マウスを用いた(n=3)。次に、一次抗体として抗マウスMac−1抗体(Pharmingen社)を利用した免疫組織染色を行った。計測領域に関しては、細胞を移植する際に用いたgelfoam(変性コラーゲン)の最も遠位部から背側及び腹側1mm離れた領域を解析した(図18)。計測するMac−1陽性細胞の種類に関しては、貧食能が強い活性型マイクログリア及び脊髄外から流入したモノサイト由来のマクロファージと考えられるアメーバ状(ameboid)細胞と、貧食能は乏しいが種々の神経栄養因子やサイトカインを分泌する活性型マイクログリアと考えられる分枝状(ramified)細胞の2つに分けて、画像解析装置(Flovel社)を用いて定量的に解析した。
図19及び20にアメーバ状及び分岐状細胞数の経時的変化を示す。GM−CSF投与群では損傷後2日目から多くのアメーバ状細胞を認め、7日目においてコントロールと比較して有意な細胞数の増加を認めた。また、分岐状細胞に関しても、コントロールと比較して損傷後4日目、7日目において有意な細胞数の増加を認めた。GM−CSF投与群でアメーバ状細胞の増加がみられたことは、特にアメーバ状細胞は貧食能が強いため、神経軸索伸展を阻害する変性ミエリンや損傷組織に由来する蛋白質の除去を行っていると考えられる。また分岐状細胞の増加がみられたことは、活性型マイクログリア自身がNT−3、BDNF、NGF、CNTF等の神経栄養因子を分泌することにより、神経機能の回復を促進させたと考えられる。
(GM−CSF投与による内在性神経幹細胞/前駆細胞の増殖誘導)
GM−CSF投与による中枢神経系内の神経幹細胞/前駆細胞に対する反応性を解析するため、それらを認識するMusashi−1抗体を用いて、免疫組織染色を行い、陽性細胞数の経時的な変化を調べた。まず、損傷後2、4、7日のGM−CSF投与マウスについて、2%パラフォルムアルデヒドで経心臓的灌流固定を行い、凍結切片を作製した(n=3)。コントロールとして、生理食塩水投与マウスを用いた(n=3)。次に、一次抗体として抗Musashi−1抗体を利用した免疫組織染色を行った。計測領域に関しては、細胞を移植する際に用いたgelfoamの最も遠位部から背側及び腹側0.5mm離れた領域を画像解析装置を用いて定量的に解析した(図21)。図22にMusashi−1陽性細胞数の経時的変化を示す。GM−CSF投与群では損傷後2日目からコントロールと比較して多数のMusashi−1陽性細胞を認め、7日目において有意な細胞数の増加を認めた。以上、GM−CSF投与により、内在性神経幹細胞/前駆細胞が増殖誘導されることが明らかになった。
以上のことより、損傷部位への樹状細胞移植により、自身の分泌する神経栄養因子、内在性マイクログリアの活性化を介した神経栄養因子の分泌及び神経軸索伸展の阻害因子の除去作用、並びに、内在性神経幹細胞/前駆細胞の増殖誘導による新たな神経細胞の再生及び再髄鞘化などを介して、神経機能が回復されたと考えられる。また、損傷部位へのGM−CSF投与により、神経細胞内における神経栄養因子の発現誘導、内在性マイクログリアの活性化を介した神経栄養因子の分泌及び神経軸索伸展の阻害因子の除去作用、並びに、内在性神経幹細胞/前駆細胞の増殖誘導による新たな神経細胞の再生及び再髄鞘化などを介して、神経機能が回復されたと考えられる。
本発明の神経損傷又は神経機能不全疾患治療薬は、損傷部位局所に注入するだけでなく、皮下又はリンパ節近傍や静脈内投与を含む様々な投与法が可能であり、優れた神経機能回復作用を有すため、脊髄損傷を含む中枢神経系損傷や脳梗塞等の神経機能不全疾患等の疾患に有用である。また、IL−12、GM−CSFなどの樹状細胞関連有効物質は、取り扱いが簡便でかつ長期保存が可能で、いつでも大量に調製することができる点で有用であり、遺伝子治療などへの応用が可能である。
脊髄損傷モデルBALB/cマウスの運動機能評価の結果を示す図である。 脊髄損傷モデルC57BL/6マウスの運動機能評価の結果を示す図である。 脊髄損傷に対する樹状細胞を含む抗原提示細胞の効果を示す図である。 脊髄損傷に対するCD11c(+)の樹状細胞の効果を示す図である。 脊髄損傷に対する本発明のIL−12の効果を示す図である。 脊髄損傷に対する本発明のGM−CSFの効果を示す図である。 RT−PCRによる未成熟樹状細胞サブセットにおける神経栄養因子の発現結果を示す図である。 RT−PCRによる成熟樹状細胞サブセットにおける神経栄養因子の発現結果を示す図である。 ELISAによる樹状細胞等のNT−3の分泌結果を示す図である。 脊髄損傷に対する神経栄養因子を分泌する樹状細胞サブセットの効果を示す図である。 樹状細胞(DC)、RPMI1640(RPMI)移植群それぞれにおける、抗Mac−1抗体を用いた免疫染色の結果、特に損傷辺縁部から頭側にかけての経時的な代表的切片を示す写真である。 樹状細胞、RPMI1640移植群それぞれにおける、Mac−1陽性アメーバ状細胞数の領域別の経時的変化を示す図である。 樹状細胞、RPMI1640移植群それぞれにおける、Mac−1陽性分枝状細胞数の領域別の経時的変化を示す図である。 Musashi−1陽性細胞数計測のための領域設定を示す写真である。 樹状細胞(DC)、RPMI1640(RPMI)移植群それぞれにおける、抗Musashi−1抗体を用いた免疫染色の結果、特に損傷辺縁部から頭側にかけて経時的な代表的切片を示す写真である。 樹状細胞、RPMI1640移植群それぞれにおける、Musashi−1陽性細胞数の領域別の経時的変化を示す図である。 RT−PCRによるGM−CSF投与後の脊髄損傷部位における神経栄養因子の発現結果を示す図である。 Mac−1陽性細胞数計測のための領域設定を示す図である。 GM−CSF投与群、コントロール(生理食塩水投与)群それぞれにおける内在性マイクログリア細胞(アメーバ状)数の経時的変化を示す図である。 GM−CSF投与群、コントロール(生理食塩水投与)群それぞれにおける内在性マイクログリア細胞(分岐状)の経時的変化を示す図である。 Musashi−1陽性細胞数計測のための領域設定を示す図である。 GM−CSF投与群、コントロール(生理食塩水投与)群それぞれにおける、Musashi−1陽性細胞数の経時的変化を示す図である。

Claims (6)

  1. インターロイキン−12(IL−12)を有効成分とすることを特徴とする神経損傷又は神経機能不全の治療剤。
  2. 神経損傷又は神経機能不全が、中枢神経損傷又は中枢神経機能不全であることを特徴とする請求項1記載の神経損傷又は神経機能不全の治療剤。
  3. 中枢神経損傷又は中枢神経機能不全が、脊髄損傷又は脊髄機能不全であることを特徴とする請求項2記載の神経損傷又は神経機能不全の治療剤。
  4. インターロイキン−12(IL−12)の発現ベクターを有効成分とすることを特徴とする神経損傷又は神経機能不全の治療剤。
  5. 神経損傷又は神経機能不全が、中枢神経損傷又は中枢神経機能不全であることを特徴とする請求項4記載の神経損傷又は神経機能不全の治療剤。
  6. 中枢神経損傷又は中枢神経機能不全が、脊髄損傷又は脊髄機能不全であることを特徴とする請求項5記載の神経損傷又は神経機能不全の治療剤。
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