JP2006063351A - 耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板および製造方法、並びにラインパイプ用鋼管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)Mn、Nb、Ti、Al、O(酸素)、NおよびCa等の成分を含有し、Ca/Sが2以上であり、不純物のうちS、O(酸素)、Nと結合して介在物を形成する元素の含有量の合計が0.01%以下であり、かつ前記S、O(酸素)、Nと結合した介在物およびNb−Ti−C−N系介在物のいずれの介在物であってもその大きさが5μmを超えない高強度鋼板である。(2)上記組成の鋼材を用い、鋼材中心部の温度が1125℃以上になるように加熱し、熱間圧延に際して各圧延パスでの圧下率を10%以上として仕上げ圧延を行った後、Ar3点+20℃以上から冷却を開始し、冷却速度を5〜50℃/秒とし550℃以下で水冷を停止する高強度鋼板の製造方法である。
【選択図】図2
Description
(a)CaやREM等の添加を行うことにより、硫化物の形態をMnSから熱間圧延時に延伸し難いCaSやREM硫化物とし、熱間圧延後も球状化状態を保ち、耐HIC性を向上させる方法(特許文献1参照)。
(b)MnおよびP濃度の高くなる鋼材の中心偏析部では、硬化組織が形成されHIC感受性が高くなることから、MnおよびP含有量を減少するか、または熱間圧延前にソーキング(均熱拡散)を行って中心偏析を拡散させ偏析を軽減する方法(特許文献2参照)。
(c)鋼板の圧延段階で加速冷却を行い、または加工熱処理(TMCP)を施すことにより、偏析部のミクロ組織を改善し金属組織を均一化して割れ抵抗性を増大させる方法(特許文献3参照)。
(d)鋼の成分としてCuを添加することにより、湿潤硫化水素環境における鋼中への水素侵入を抑制し、鋼表面での腐食作用を抑制する方法。
CTR=Σb(割れ厚さ)/T(母材厚)×100% ・・・ (e)
最近においては、上記のNACE評価基準をクリアする鋼板や鋼管に関する開発がなされるようになる。代表的な先行技術として下記の特許文献4〜6に記載の技術が挙げられるが、いずれも所定のNACE評価基準をクリアする特性を具備するものである。
(a)前述の通り、HICは鋼材中のMnSなどの介在物および中心偏析部の硬化組織を起点に発生するため、C、Mn、PおよびSの含有を低減し、かつ強度および靭性が確保できるように最適な成分設計を行うことが、耐HIC性を向上させるのに有効な技術である。
(b)破面観察の結果によれば、HICの起点となる介在物としては、MnS以外にNb−Ti−C−N系介在物の存在がある。このNb−Ti−C−N系介在物は板厚中心部付近で発生し易く、この介在物を起点にHICが発生する場合は、偏析線に沿って割れが伝播する。
(c)HICの起点となる介在物であって、その大きさが5μm以上になると、介在物に吸着する水素吸着量の増加が顕著になり、HICの発生頻度が高くなる。一方、介在物が残存しても微小になると、水素吸着量が少なくなり、HICの発生頻度は著しく軽減される。
(d)鋼材の加熱に際し、鋼材の中心温度を最適化することにより、鋼材の中心部に存在するNb−Ti−C−N系介在物を完全に固溶することで可能であり、介在物の固溶にともなってHICが発生しない領域を確保することができる。
(e)熱間圧延後の冷却に際し、冷却停止温度を最適な範囲にすることにより、板厚方向に均一な組織を形成し、かつHICの亀裂伝播に影響を及ぼす中心偏析を無くすことが可能になり、耐HIC性を改善することができる。
(1)質量%で、C:0.02〜0.09%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.35%、P:0.015%以下、S:0.002%以下、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.025%、Al:0.005〜0.05%、O(酸素):0.0050%以下、N:0.0005〜0.0100%およびCa:0.001〜0.005%を含有し、Ca/Sが2以上であり、残部がFeおよび不純物からなる鋼組成を有し、前記不純物のうちS、O(酸素)、Nと結合して介在物を形成する元素の含有量の合計が0.01%以下であり、かつ前記S、O(酸素)、Nと結合した介在物およびNb−Ti−C−N系介在物のいずれの介在物であってもその大きさが5μmを超えないことを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板である。
(2)上記(1)の耐HIC性に優れた高強度鋼板では、さらに、質量%で、Cu:0.01〜1.5%、Ni:0.01〜2.5%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.50%、V:0.01〜0.1%およびB:0.00005〜0.0020%のうち1種または2種以上を含有するのが望ましい。
(3)上記(1)または(2)に記載の鋼組成を有し、下記(a)式に示す中心偏析部の硬度SHVが330以下であることを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板である。
ここで、元素は質量%で示し、Seg.Mnは中心偏析部のMn濃度であり、下記(b)式で示す
Seg.Mn=9×C+1.5×Mn−0.17 ・・・ (b)
また、Seg.Pは中心偏析部のP濃度であり、下記(c)式で示す
Seg.P=0.9×C+7×P−0.03 ・・・ (c)
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼材を用い、鋼材中心部の温度が1125℃以上になるように加熱し、熱間圧延に際して各圧延パスでの圧下率を10%以上として仕上げ圧延を行った後、Ar3点+20℃以上から冷却を開始し、冷却速度を5〜50℃/秒とし550℃以下で水冷を停止することを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板の製造方法である。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板を用いて成形したラインパイプ用鋼管である。
1.鋼板の化学組成
C:0.02〜0.09%
Cは、強度を確保する上で必要な元素である。その含有量が0.02%未満であると、必要な強度が得られず、一方、0.09%を超えると、素材および溶接継手部の靱性が劣化する。このため、C含有量は0.02〜0.09%としたが、0.03〜0.07%に調整するのが望ましい。
Siは無添加でもよいが、鋼の溶製時に脱酸剤として作用するとともに強度の向上に有効である。これらの効果を得るために積極的に添加する場合、その下限は、0.01%とするのが望ましい。一方、その含有量が0.5%を超えると、島状マルテンサイトの生成が促進され、溶接熱影響部(HAZ)の靱性劣化をもたらす。このため、Si含有量は0.5%以下としたが、0.35%以下とするのが望ましい。
Mnは脱酸剤として、または素材の強度と靱性を向上させる元素として有効である。本発明が対象とするAPI規格のX52グレード以上の素材強度を確保するには、0.50%以上のMn含有量が必要である。一方、その含有が1.35%を超えると、中心偏析部の硬度上昇にともなって耐HIC性の劣化が顕著になる。このため、Mn含有量は0.50〜1.35%した。望ましい含有量は、0.80〜1.30%である。
Pは不純物であるが、中心偏析を助長するなどの作用があり、耐HIC性を劣化させる。このため、Pの含有は0.010%以下とし、0.008%以下に調整するのがさらに望ましい。
Sは不純物であり、多量に存在する場合には溶接割れの原因となり、MnS等の割れの起点となり得る介在物を形成する。また、HAZ部の靱性確保に影響のない程度に、その含有量を止めるため、0.002%以下としたが、望ましくは0.001%以下である。
Nbは、微細な炭窒化物を形成し、強度を上昇させる効果を有する。この効果を得るには、その含有量を0.005%以上とする必要があり、一方、0.10%を超えて含有すると、脆化が顕著となる。このため、Nb含有量は0.005〜0.10%とし、望ましくは0.030〜0.050%である。
Tiは、微細な窒化物を形成することによってオーステナイト粒の粗大化を防止し、靱性を向上させるのに有効である。この効果を得るには0.005%以上を含有させる必要がある。一方、その含有が0.025%を超えると、炭化物の析出によって靱性が低下する。そのため、Ti含有量を0.005〜0.025%した。望ましい含有量は、0.005〜0.015%である。
Alは、Siと同様に、脱酸剤として有効な元素である。その含有量が0.005%未満であると、充分な脱酸ができず母材の靭性が劣化し、0.05%を超えると鋼の清浄度が低下する。そのため、Alの含有を0.005〜0.05%の範囲に限定した。
Oは、HICの発生起点となる酸化物系介在物のクラスターを生成する。このクラスター生成を極力低減するため、O含有量を極力低減する必要があり、0.005%以下とした。
Nは、多量に存在すると、母材およびHAZ部ともに靱性を悪化させる。通常、Tiを添加してTiNの形態で鋼中に固定し無害化しているが、Nが0.0100%を超えて存在する場合は、加熱時にHAZ部でTiNが鋼中に固溶して、HAZ部を硬化させ、靱性が劣化する。このため、Nの含有は0.0100%を上限とする。一方、Nの含有を0.0005%未満にまで低減することは、実際の操業上難しく、経済性の観点からその下限を0.0005%とする。
Caは、MnSの形態を球状化させることにより衝撃値を向上させる有用元素であるが、その含有量が0.0001%未満では、その効果は実効に乏しいものとなる。一方、0.0050%を超える含有では、鋼中の清浄度を低下し、耐HIC性や靭性に悪影響を及ぼすことになる。このため、Ca含有量は、0.001〜0.005%とする。
前述の通り、Sは硫化物系介在物としてMnSを形成し、圧延にともなって長く伸びた介在物を構成するので耐HIC性を最も劣化させる。このため、Caを添加して鋼中の硫化物系介在物をCaSとして形態を制御し、耐HIC性に対し無害化する。この効果を発揮するには、Ca/Sを2以上で管理することが必要になる。Ca/Sが2未満であると、鋼中にMnSが残存し、これを起点としてHICが発生するおそれがある。
Cuは含有させなくてもよいが、鋼の強度を上昇させるのに有効な元素である。この効果を得るには、0.01%以上の含有量が必要であり、一方、1.5%を超えて含有すると溶接性を劣化させる。このため、積極的に含有させる場合には、Cu含有量は、0.01〜1.5%とする。
Niは含有させなくてもよいが、鋼の強度と靱性の向上に有効な元素である。これらの効果を確保するには、0.01%以上の含有量が必要になるが、2.5%を超えて含有すると、得られる効果が飽和し経済性を損なうことになる。このため、積極的に含有させる場合には、Ni含有量は0.01〜2.5%とする。
Crは含有させなくてもよいが、鋼の強度上昇に有効な元素である。この効果を得るには、0.01%以上の含有量が必要になるが、その含有が1.0%を超えると溶接性を劣化する。このため、積極的に含有させる場合には、Cr含有量は0.01〜1.0%とする。
Moは、含有させなくてもよい。しかし、Moは、焼入れ性の向上とオーステナイトの再結晶を抑制する作用を発揮するので、制御圧延による効果を増大させることにより、鋼の強度を上昇させるのに有効な元素である。特に、Nbとの複合添加により促進することができる。
Vは含有させなくてもよいが、Nbと同様に、炭窒化物を形成し鋼の強度を上昇させる。しかし、Nbほどの効果はないため、0.01%以上の含有量とすればよい。一方、0.1%を超える含有では、鋼の靱性を損なうことになる。このため、積極的に含有させる場合には、V含有量は0.01〜0.1%とする。
Bは含有させなくてもよいが、微量でもオーステナイト粒界の焼き入れ性を増し、母材強度を高めるためには有効な元素である。この効果を得るには、0.00005%以上含有させることが必要になる。しかし、0.0020%を超えて含有させると、HAZ部の硬化を招くことになる。このため、積極的に含有させる場合には、B含有量は0.00005〜0.0020%とする。
2.鋼中の介在物、偏析部等
本発明で規定する「S、O、Nと結合して介在物を形成する元素」とは、いわゆる「硫化物系介在物」、「酸化物系介在物」および「炭窒化物系介在物」を形成する元素を意味し、Pb、Bi、Zr、Te、Be、REM、MgおよびSe等が例示される。例えば、ZrはSと結合し硫化物系介在物を形成し、またPbはOと結合し酸化物系介在物を形成し、さらにBeはNと結合し窒化物系介在物を形成する。
図2は、(a)式に示す中心偏析部の硬度SHVとHIC感受性との関係を示す図である。図2において、HIC感受性をNACE浴(0.5%酢酸+5%食塩水、25℃、 1気圧H2S飽和)に96hr浸漬した時の割れ面積率(CAR)で示した。また、同時に、BP溶液(硫化水素飽和の人工海水、pH4.8〜5.4)に96hr浸漬した時の割れ面積率(CAR)も評価した。CARは、下記(f)式によって算出される。
上記(a)式に示す中心偏析部の硬度SHVを算出するには、元素は質量%で示し、Seg.Mnは中心偏析部のMn濃度であり、下記(b)式で示す
Seg.Mn=9×C+1.5×Mn−0.17 ・・・ (b)
また、Seg.Pは中心偏析部のP濃度であり、下記(c)式で示す
Seg.P=0.9×C+7×P−0.03 ・・・ (c)
図2に示すように、中心偏析部の硬度SHVが330を超えると、HICが発生する傾向を示すが、中心偏析部の硬度SHVが330以下であるとHICの発生は見られない。したがって、鋼板の耐HIC性を向上させるには、中心偏析部の硬度SHVを330以下にするのが望ましい。
3.鋼板の製造方法
本発明の製造方法では、上記の鋼組成を有する鋼材を用いて、鋼材中心部の温度が1125℃以上になるように加熱し、熱間圧延に際して各圧延パスでの圧下率を10%以上として仕上げ圧延を行った後、Ar3点+20℃以上から冷却を開始し、冷却速度を5〜50℃/秒とし550℃以下で水冷を停止することを特徴としている。
耐HIC性の評価では、個々の試験片における観察断面が「CLR≦5%」の場合に優れるとした。具体的には、条件毎に3枚の試験片を採取し、超音波探傷試験により検出される最大のHIC欠陥部を切断後、上記(d)式に基づいてCLRを算出し評価を行った。その評価結果を表4に示した。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.02〜0.09%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.35%、P:0.015%以下、S:0.002%以下、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.025%、Al:0.005〜0.05%、O(酸素):0.0050%以下、N:0.0005〜0.0100%およびCa:0.001〜0.005%を含有し、Ca/Sが2以上であり、残部がFeおよび不純物からなる鋼組成を有し、
前記不純物のうちS、O(酸素)、Nと結合して介在物を形成する元素の含有量の合計が0.01%以下であり、かつ前記S、O(酸素)、Nと結合した介在物およびNb−Ti−C−N系介在物のいずれの介在物であってもその大きさが5μmを超えないことを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板。 - さらに、質量%で、Cu:0.01〜1.5%、Ni:0.01〜2.5%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.50%、V:0.01〜0.1%およびB:0.00005〜0.0020%のうち1種または2種以上を含有したことを特徴とする請求項1に記載の耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板。
- 請求項1または2に記載の鋼組成を有し、下記(a)式に示す中心偏析部の硬度SHVが330以下であることを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板。
SHV=442×C+70×Seg.Mn+188×Seg.P+122・・・(a)
ここで、元素は質量%で示し、Seg.Mnは中心偏析部のMn濃度であり、下記(b)式で示す
Seg.Mn=9×C+1.5×Mn−0.17 ・・・ (b)
また、Seg.Pは中心偏析部のP濃度であり、下記(c)式で示す
Seg.P=0.9×C+7×P−0.03 ・・・ (c) - 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼材を用い、鋼材中心部の温度が1125℃以上になるように加熱し、熱間圧延に際して各圧延パスでの圧下率を10%以上として仕上げ圧延を行った後、Ar3点+20℃以上から冷却を開始し、冷却速度を5〜50℃/秒とし550℃以下で水冷を停止することを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- 請求項1〜3のいずらかに記載の鋼板を用いて成形したラインパイプ用鋼管。
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