本発明は、難燃性ポリエステル系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、難燃性に優れ、かつ、機械的物性、流動性、電気特性などに優れた難燃性ポリエステル系樹脂組成物に関する。
最近、射出成形法によって自動車部品、電気部品、電子部品などを製造する際の原料樹脂として、熱可塑性ポリエステル系樹脂が幅広く使用されている。上記用途では、原料樹脂に、機械的性質・成形性のみならず、高度な難燃性を発揮することが要求されるようになっている。従来、ポリエステル系樹脂用の難燃剤としては、臭素系難燃剤または塩素系難燃剤などが多く使用されているが、これら有機系難燃剤が配合された製品は、成形加工時に腐食性ガスを発生する、燃焼時に臭化水素ガス、塩化水素ガスなどの毒性、刺激性のあるガスを発生する、燃焼時に多量の黒煙を発生するなどの欠点がある。
非臭素系難燃剤または非塩素系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの含水無機化合物、またはトリアジン環を有する窒素化合物が知られている。しかしこれらの化合物は、臭素系または塩素系難燃剤に比較して難燃効果が劣るため、格別に高い難燃性を発揮する製品を製造するには、基体樹脂に対し多量配合する必要があり、そのために機械的性質や成形性を著しく悪化させるという欠点があった。
また、樹脂用難燃剤として知られている赤リンは、難燃効果が優れているので比較的少量の添加で高い難燃性を発揮できる。しかし、得られた製品が着色すること、高温高湿下ではポリエステル系樹脂製成形品(製品)の機械的性質を極端に低下することなどの欠点があり、実用的には不充分であった。
さらに、樹脂用難燃剤として知られているリン酸エステル系難燃剤は、臭素系または塩素系難燃剤に比較して、難燃効果が劣るので、格別に高い難燃性を発揮する製品とするためには、基体樹脂に多量配合する必要がある。これにより樹脂の結晶性を大幅に低下させ、機械的性質や成形性を著しく悪化させる。また、リン酸エステル系難燃剤が、ポリエステル系樹脂の耐加水分解性を極端に低下させるという欠点がある。さらに、格別に高い難燃性を発揮させるために多量配合されたリン酸エステル系難燃剤は、製品製造時に激しくプレートアウトするだけでなく、製品表面にブリードアウトし、外観不良や接点不良の原因ともなっていた。
特許文献1には、リン酸エステル難燃剤の低い難燃効果を補う目的で、熱可塑性線状ポリエステル系樹脂、有機リン酸エステルに加えて、ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素系または塩素系難燃剤を配合した、難燃性ポリエステル系組成物が開示されているが、臭素系または塩素系難燃剤が配合された製品は、上記したとおり、成形加工時に腐食性ガスを発生する、燃焼時に毒性、刺激性ガスを発生する、燃焼時に多量の黒煙を発生するなどの欠点がある。
特許文献2には、臭素原子や塩素原子を含有しない難燃剤を使用することによって、成形加工時の腐食性ガスの発生を抑制し、燃焼時の刺激性ガス、腐食性ガス、黒煙の発生を飛躍的に抑制し、機械的性質、流動性に優れ、かつ、難燃性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とし、(A)ポリエステル樹脂
95〜50重量部 (B)ポリフェニレンエーテル樹脂 5〜50重量部よりなる樹脂成分100重量部に対して、 (C)相溶化剤 0.05〜10重量部 (D)リン酸エステル化合物
2〜45重量部 (E)強化充填剤 0〜150重量部 (F)滴下防止剤 0.001〜15重量部 (G)シアヌル酸メラミン 0〜45重量部 (H)硼酸金属塩 1〜50重量部を配合してなる難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示されている。しかし、特許文献2には電気特性を改良することについては全く記載されていない。
また、近年、電気、電子部品や電装部品は、これら機器本体自体が小型化、軽量化される趨勢から、これら機器に組み込まれる樹脂製成形品(部品)も、薄肉化・小型化される傾向にある。樹脂製の薄肉成形品においては、成形品の最も薄い部分に対応する難燃性が要求される場合が多い。難燃性としてはUL−94に規定されるV−0の難燃性が指標とされ、一般に成形品が薄肉になるほど難燃化の達成は困難になる。成形品の薄肉部における難燃性を達成するために、難燃剤を多量配合すると、電気特性が悪化するという問題がある。更に、最近の環境意識の向上に伴い、塩素や臭素などを含むハロゲン系化合物が配合されていない樹脂材料が要求されている。例えば、UL−94難燃性試験で、厚さ1/64インチでV−0合格、かつ、CTIが275ボルト以上、好ましくは、300ボルトという、従来以上の高度の難燃性と電気特性を両立させた、非ハロゲン系ポリエステル系樹脂組成物が要求されようになった。CTIとは、比較トラッキング指数(Comparative Tracking Index)であり、固体電気絶縁材の表面に電界が加わった状態で、湿潤汚染されたときにおけるトラッキングによる導通トラブルに対する抵抗性を示す指標であり、この値が高いほど電気特性に優れている。さらに詳細に説明すると、トラッキング現象とは、電気接点(電極)の間に埃や水分が付着し、この部分に電圧が負荷されると僅かな電流が流れ、微小な火花が電気接点(電極)間の絶縁を劣化させる。この現象が繰り返されると、トラック(炭化導電路)を形成し、絶縁破壊していく現象である。さらに接点間から急激な炎が発生することもあり、この炎が周囲の可燃物に引火し、火災事故につながることがあるので、電気部品の製造用樹脂は、このトラッキングに対する抵抗性が高くなくてはならない。
特開昭60−47056号公報
特開2000−1606号公報
本発明者らは、上記した従来の課題を解消すべく鋭意検討を重ねた結果、特定成分からなるポリエステル系樹脂組成物が優れた難燃性、機械的性質、流動性、電気特性を発揮することを見出し、本発明を完成するに到った。本発明の目的は、次のとおりである。
1.臭素や塩素を含有しない非ハロゲン系難燃剤を使用し、成形加工時の腐食性ガスの発生、燃焼時の刺激性ガス、燃焼時の黒煙の発生を飛躍的に抑制した、難燃性ポリエステル系樹脂組成物を提供すること。
2.機械的性質、流動性、電気特性、特に耐トラッキング性に優れ、かつ、難燃性に極めて優れた難燃性ポリエステル系樹脂組成物を提供すること。
上記課題を解決するために、本発明では、ポリエステル樹脂(成分A)95〜50重量部、ポリフェニレンエーテル樹脂(成分B)5〜50重量部よりなる樹脂成分100重量部に対して、相溶化剤(成分C)0〜20重量部、リン酸エステル化合物および/またはホスホニトリル化合物(成分D)10〜80重量部、シアヌル酸メラミン(成分E)10〜80重量部、
硼酸金属塩(成分F)51〜150重量部、(G)強化充填剤(成分G)0〜200重量部、および、(H)滴下防止剤(成分H)0〜20重量部を配合してなることを特徴とする、難燃性ポリエステル系樹脂組成物を提供する。
本発明は、以下詳細に説明するとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る難燃性ポリエステル系樹脂組成物は、臭素や塩素を含有しない非ハロゲン系難燃剤を使用しているので、成形加工時の腐食性ガスの発生、燃焼時の刺激性ガス、燃焼時の黒煙の発生を飛躍的に抑制される。
2.本発明に係る難燃性ポリエステル系樹脂組成物は、耐加水分解性、流動性などに優れ、成形時や長期使用時に昇華物や分解生成物が生じ難い。
3.本発明に係る難燃性ポリエステル系樹脂組成物から得られる成形品は、耐トラッキング性などの電気的性質、機械的性質、寸法安定性に優れている。
発明の実施するための最良の形態
以下、本発明につき詳細に説明する。本発明に係る難燃性ポリエステル系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物と略称することがある)における樹脂成分は、ポリエステル樹脂(以下、成分Aと略称する)95〜50重量部、ポリフェニレンエーテル樹脂(以下、成分Bと略称する)5〜50重量部よりなる。成分Aは、ポリエステル樹脂60重量%以上と、ポリカーボネート、ABS樹脂などの他の熱可塑性重合物40重量%以下との混合物であってもよい。
成分Aのポリエステル樹脂は、少なくとも一種の二官能性カルボン酸成分と、少なくとも一種のグリコール成分またはオキシカルボン酸の重縮合により得られ、少なくとも固有粘度0.50以上の熱可塑性ポリエステル樹脂を意味する。二官能性カルボン酸成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、P,P−ジフェニルジカルボン酸、P,P−ジフェニルエーテルカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、スベリン酸、アゼライン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、または、これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。中でも、芳香族ジカルボン酸、または、これらのエステル形成性誘導体が好ましく、とりわけ、テレフタル酸またはテレフタル酸ジエステルが好ましい。カルボン酸成分は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
グリコール成分の具体例としては、一般式、HO(CH2)qOH(qは2〜20の整数)で表されるα,ω−アルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメトレングリコール、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのα,ω−アルキレングリコールが好ましく、とりわけ、1,4−ブタンジオールが好ましい。またオキシカルボン酸の具体例としては、オキシ安息香酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、または、これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。グリコール成分は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
本発明における成分B(ポリフェニレンエーテル樹脂)とは、次の一般式(4)で示される構造を有する単独重合体または共重合体を意味する。
(4)式において、R10は水素原子、もしくは、第一級または第二級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基を表し、R11は第一級または第二級のアルキル基、アリール基、アルキルアミノ基を表し、rは10以上の整数を表す。 第一級アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2,3−もしくは4−メチルペンチル、またはヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例としては、イソプロピル、sec−ブチルまたは1−エチルプロピルである。好適なPPEの単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなるものである。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組み合わせからなるランダム共重合体である。
成分Bは、クロロホルム中で測定した30℃における固有粘度が、0.2〜0.8dl/gの範囲のものが好ましく、より好ましくは固有粘度が0.25〜0.7dl/gのものであり、特には0.3〜0.6dl/gのものが好適である。固有粘度が0.2dl/g未満であると、組成物の耐衝撃性が不充分となり、0.8dl/gを超えるとゲル成分が多く、成形品外観が悪化する。
本発明に係る樹脂組成物における樹脂成分は、成分A95〜50重量部、成分B5〜50重量部で組み合わせて、両者の合計量を100重量部とする。樹脂成分における成分Bの比率が5重量部未満であると、樹脂組成物の難燃性や耐加水分解性が不充分になり、50重量部より多いと樹脂組成物の流動性や耐薬品性、電気特性が著しく低下する。成分Aと成分Bの好ましい組み合わせは、成分A92〜55重量部、成分B8〜45重量部であり、とりわけ好ましいのは、成分A90〜60重量部、成分B10〜40重量部である。
本発明における相溶化剤(以下、成分Cと略称する)は、成分Aへの成分Bの分散性を向上させるように機能する。成分Cとしては、ポリカーボネート樹脂やカルボキシル基、カルボン酸エステル基、酸アミド基、イミド基、酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリニル基、アミノ基、水酸基を一つ以上有する化合物や、亜リン酸エステル化合物が挙げられる。具体例としては、エポキシ基付加ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ヒドロキシアルキル化PPE樹脂、末端オキサゾリン化PPE樹脂、ポリスチレンによりカルボキシル基末端の変性されたポリエステル、ポリエチレンによりOH基末端の変性されたポリエステル、亜リン酸エステルなどが挙げられる。中でも、樹脂組成物の耐加水分解性、結晶性、機械的物性、難燃性の観点から、亜リン酸エステルまたははポリカーボネート樹脂が好ましい。亜リン酸エステルにおいては、亜リン酸トリエステルが好ましく、特に、次の一般式(5)、(6)で表される亜リン酸トリエステルが好適である。
(5)式において、R12〜R14は、各々炭素数1〜20のアルキル基、または、炭素数6〜30の置換または非置換アリール基を示す。R12〜R14は、O原子、N原子、S原子を含んでいてもよい。一般式(5)の具体例としては、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジラウリルフェニルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)フェニルホスファイト、ジイソオクチルフェニルホスファイトなどが挙げられる。
(6)式において、uは1または2であり、R15は各々炭素数1〜20のアルキル基、もしくは、炭素数6〜30の置換または非置換アリール基を示し、R16は、uが1の場合、各々炭素数1〜20のアルキレン基、または、炭素数6〜30の置換または非置換アリーレン基を示し、uが2の場合、炭素数4〜18のアルキルテトライル基を示し、R15は各々同じでも異なっていてもよく、R15およびR16の置換基は、O原子、N原子またはS原子を含む置換基であってもよい。R15の例としては、メチル、エチル、プロピル、オクチル、イソオクチル、イソデシル、デシル、ステアリル、ラウリル、フェニル、2,3−または4−メチルフェニル、2,4−または2,6−ジメチルフェニル、2,3,6−トリメチルフェニル、2−、3−または4−エチルフェニル、2−,4−または2−,6−ジエチルフェニル、2,3,6−トリエチルフェニル、2−,3−若しくは4−tert−ブチルフェニル、2,4−または2,6−ジ−tert−ブチルフェニル、2,6−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル、2,6−ジ−tert−ブチル−6−エチルフェニル、オクチルフェニル、イソオクチルフェニル、2−,3−またはは4−ノニルフェニル、2,4−ジノニルフェニル、ビフェニル、ナフチルなどが挙げられる。中でも、置換または非置換アリール基類が好ましい。またR16としては、一般式(4)で、u=1のとき、1,2−フェニレン基、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレンなどのポリメチレン基が挙げられる。
具体例としては、(フェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(4−メチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジメチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(4−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(フェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(4−メチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジメチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(4−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,4−ブタンジオール)ホスファイトなどが挙げられる。また、u=2のとき、R16は、次の一般式(7)に示すペンタエリスリチル構造のテトライル基などが挙げられる。
(7)式において、v、w、x、yはそれぞれ0〜6の整数を示す。(7)で表される化合物の具体例としては、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(3−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,3,6−トリメチルフェニル)ベンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(3−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ビフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジナフチルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
これらの亜リン酸トリエステルの中では、前記一般式(6)のuが1または2が好ましく、さらには式(4)のu=2で、一般式(6)に示すペンタエリスリチル構造のテトライル基などを有するものがより好ましい。その中でも、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどがより好ましく、とりわけ、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好適である。なお、本発明に係る樹脂組成物は、これら亜リン酸トリエステルの分解(加水分解や熱分解など)により生じた化合物を含んでいてもよい。
成分Cとしてのポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって作られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。中でも好ましいのは、ビスフェノールAである。
分岐したポリカーボネート樹脂を得るには、上記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、以下に挙げる化合物に代えて使用すればよい。代えて使用できる化合物としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどが挙げられる。これら化合物の使用量は、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
成分Cとしてのポリカーボネート樹脂分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物を使用すればよい。一価芳香族ヒドロキシ化合物としては、m−およびp−メチルフェノール、m−およびp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノールおよびp−長鎖アルキル置換フェノール、などが挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと、他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、16,000〜30,000であり、好ましくは18,000〜23,000である。ポリカーボネート樹脂は、成分組成の異なるもの、分子量の異なるものなどを二種以上組み合わせたものであってもよい。
前記樹脂成分に対する成分C(相溶化剤)の配合量は、樹脂成分100重量部に対して0〜20重量部とする。成分Cの配合量が20重量部より多いと、樹脂組成物の難燃性、得られる製品の表面外観が低下する。成分Cの配合は必須ではないが、機械的強度の低下防止のため、0.05重量部以上配合するのか好ましい。成分Cの好ましい配合量は0.05〜10重量部であり、中でも0.3〜5重量部が特に好ましい。
本発明におけるリン酸エステル化合物および/またはホスホニトリル化合物(以下、成分Dと略称する)は、後記する成分Eとともに、樹脂組成物に難燃性を付与する。成分Dのうち、リン酸エステル化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等が挙げられるが、中でも、次の一般式(8)で表される化合物が好ましい。一般式(8)において、R1〜R8は、H原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、耐加水分解性を向上させるためには、炭素数6以下のアルキル基が好ましく、中でも、炭素数2以下のアルキル基が、特にはメチル基が好ましい。mは0または1以上4以下の整数であり、好ましくは1〜3、とりわけ1が好ましい。リン酸エステル化合物は、一種でも二種以上であってもよい。
(8)式において、R1〜R8は、H原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、mは0または1以上4以下の整数である。R9は、次の(9)式に示す構造の中から選ばれる。
R9は、(9)式の中の(9−1)または(9−2)が好ましく、中でも、(91−)が好適である。
成分(D)のうち、ホスホニトリル化合物としては、次の一般式(10)で表される基を有するホスホニトリル化合物も使用できる。R17、R18は炭素数1〜20のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基であり、具体例としては、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、ナフチルなどが挙げられる。n、pは1〜12の整数であり、一般に3〜10が、特に3または4が好ましい。またホスホニトリル化合物は、線状重合体であっても環状重合体であってもよく、中でも環状重合体が好適である。ホスホニトリル化合物は、一種でも二種以上であってもよい。
(10)式において、Xは、O原子、S原子、N−H原子を表し、R17、R18は炭素数1〜20のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基であり、−X−R17、−X−R18は同一でも異なってもよく、n、pは1以上12以下の整数である。中でも、O原子、N−H原子がより好ましく、とりわけO原始が好ましい。
前記樹脂成分に対する成分Dの配合量は、樹脂成分100重量部に対して10〜80重量部とする。成分Dの配合量が10重量部より少ないと、樹脂組成物の厚さが1/64インチの試験片での難燃性が不充分になり、80重量部より多いと機械的物性、成形性が著しく低下するので、いずれも好ましくない。成分Dの好ましい配合量は15〜70重量部であり、とりわけ20〜60重量部が好ましい。
本発明におけるシアヌル酸メラミン(以下、成分Eと略称する)は、上記成分Dとともに、樹脂組成物に難燃性を付与する。成分Eは、シアヌル酸とメラミンとのほぼ等モル反応物であって、例えば、シアヌル酸の水溶液とメラミンの水溶液とを混合し、90〜100℃の温度で攪拌下反応させ、生成した沈澱を濾過することにより得ることができる。このシアヌル酸メラミンの粒径は0.01〜1000ミクロン、好ましくは0.01〜500ミクロンの粒子である。シアヌル酸メラミンのアミノ基または水酸基の内のいくつかが、他の置換基で置換されていても良い。
前記樹脂成分に対する成分Eの配合量は、樹脂成分100重量部に対して10〜80重量部とする。成分Eの配合量が10重量部より少ないと、樹脂組成物の厚さが1/64インチでの試験片での難燃性が不充分になり、80重量部より多いと、樹脂組成物の靱性や延性の低下の原因、ブリードアウトやプレートアウト発生原因となるので、好ましくない。成分Eの好ましい配合量は、20〜60重量部である。
本発明に係る樹脂組成物では、上記成分Dと成分Eの二成分が難燃剤として機能するが、成分Dと成分Eとの比率は、特に限定されるものではない。通常は、成分D対成分Eとの比率は、1.0対9.0〜9.0対1.0の比率とするのが好ましい。中でも、2.0対8.0〜8.0対2.0、とりわけ2.5対7.5〜7.5対2.5が好適である。また、成分Dと成分Eの配合量の合計量は、前記樹脂成分(成分Aと成分B)の合計100重量部に対して、30〜150重量部の範囲とするのが好ましく、中でも50〜120重量部が好適である。
本発明における硼酸金属塩(以下、成分Fと略称する)は、樹脂組成物の難燃性と電気特性を向上させる。成分Fは、通常使用する条件下で安定的であり、揮発成分のないものが好ましい。硼酸金属塩としては、硼酸のアルカリ金属塩(四硼酸ナトリウム、メタ硼酸カリウムなど)、または、アルカリ土類金属塩(硼酸カルシウム、オルト硼酸マグネシウム、オルト硼酸バリウム、硼酸亜鉛など)などが挙げられる。これらの中でも好ましいのは、2ZnO・3B2O3・xH2O(x=3.3〜3.7)の型の硼酸亜鉛である。水和硼酸塩亜鉛としては、好ましくは、2ZnO・3B2O3・3.5H2Oの式で表わされるものであり、かつ、260℃またはそれより高い温度まで安定なものである。
前記樹脂成分に対する成分Fの配合量は、樹脂成分100重量部に対して51〜150重量部とする。成分Fの配合量が51重量部未満であると、厚さが1/64インチの試験片での難燃性改良効果、および電気特性(CTIランク)の改良効果が不十分となり易く、150重量部を越えると機械的物性が低下する傾向があり、いずれも好ましくない。成分Fの好ましい配合量は60〜140重量部であり、とりわけ70〜125重量部が好適である。
本発明における強化充填剤(以下、成分Gと略称する)は、樹脂組成物の機械的物性を向上させるように機能する。成分Gは、有機系強化充填材、無機系強化充填材のいずれでもよい。成分Gの具体例としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ミルドファイバー、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸ジルコニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、チタン酸カリウムウィスカー、などが挙げられる。また成分Gは、樹脂成分に混合した後の平均アスペクト比は3.0以上となるものが好ましく、より好ましくは5.0以上になるもの、中でも10以上になるものがとりわけ好ましい。
上記成分Gは、一種または二種以上を併用することもでき、要すれば、シラン系化合物またはチタン系化合物などのカップリング剤によって、表面処理したものであってもよい。また、これらカップリング剤とポリエステル系樹脂組成物の界面の接着性を向上させるために、無水マレイン酸などの酸無水物を添加してもよく、界面の接着性をさらに向上させる目的で、同時に有機過酸化物を添加することもできる。
前記樹脂成分に対する成分Gの配合量は、樹脂成分100重量部に対して0〜200重量部とする。成分Gの配合量の配合量が200重量部より多いと、樹脂組成物の流動性が著しく低下する。成分Gの配合は必須ではないが、機械的物性の低下防止のため、10重量部以上配合するのが好ましい。成分Gの好ましい配合量は10〜150重量部であり、中でも好ましいのは20〜1305重量部である。
本発明における滴下防止剤(以下、成分Hと略称する)は、製品燃焼時の樹脂の滴下を防止する性質を有した化合物をいう。成分Hの具体例としては、シリコンオイル、シリカ、アスベスト、フッ素樹脂、タルク、マイカなどの層状珪酸塩などが挙げられる。これらの中では、樹脂組成物の難燃性の観点から、フッ素含有ポリマー、層状珪酸塩などが好ましい。
前記樹脂成分に対する成分Hの添加量は、成分Hの種類によって若干ことなるが、樹脂成分100重量部に対して0〜20重量部とする。成分Hが20重量部より多いと、樹脂組成物の流動性や機械的物性が低下する。成分Hの配合は必須ではないが、0.001重量部より多めに配合すると、製品燃焼中の滴下防止効果が改善され、難燃性が更に向上する。成分Hの好ましい配合量は0.001〜15重量部であり、中でも0.005〜10重量部の範囲が好適である。
成分Hとしてのフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、フッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素化ポリオレフィンが好ましい。中でも、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体がより好ましく、とりわけ、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体が好適である。
成分Hとしてのフッ素樹脂は、温度350℃における溶融粘度が、1.0×103〜1.0×1016(ポイズ)のものが好ましく、中でも1.0×104〜1.0×1015(ポイズ)、とりわけ1.0×1011〜1.0×1013(ポイズ)のものが好適である。溶融粘度が1.0×103(ポイズ)未満であると、製品燃焼時の滴下防止効果が不充分であり、1.0×1016(ポイズ)より大きいと樹脂組成物の流動性が著しく低下し、いずれも好ましくない。
前記樹脂成分に対する成分Hとしてのフッ素樹脂の配合量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜15重量部が好ましい。フッ素樹脂の添加量が0.001重量部より少ないと、製品燃焼中の滴下防止効果が不充分であり、15重量部より多いと樹脂組成物の流動性や機械的物性が低下する。フッ素樹脂の好ましい配合量は、0.005〜12重量部であり、中でも0.001〜10重量部が好適である。
成分Hとしては、樹脂組成物溶融時の流動性の観点から、層状珪酸塩を使用するのが好ましい。層状珪酸塩としては、層状珪酸塩、変性層状珪酸塩(層間に四級有機オニウムカチオンを挿入した層状珪酸塩)、反応性官能基を付与した層状珪酸塩、または変性層状珪酸塩が挙げられる。層状珪酸塩の樹脂成分への分散性、および燃焼時の滴下防止効果の観点から、変性層状珪酸塩、反応性官能基を付加した層状珪酸塩、または変性層状珪酸塩が好ましく、中でも、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基、カルボキシル基、酸無水物などの反応性官能基を付加した、層状珪酸塩または変性層状珪酸塩が好適である。官能基付与方法としては特に制限はないが、官能化試薬(シランカップリング剤)で処理する方法が簡単で好ましい。
具体例としては、エポキシ基を有するクロロシラン類、カルボキシル基を有するクロロシラン類、メルカプト基を有するクロロシラン類、アミノ基を有するアルコキシシラン類、エポキシ基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。中でも、3−グリシジルオキシプロピルジメチルクロロシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルクロロシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリクロロシランなどのエポキシ基を有するクロロシラン類、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン類、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン類が好ましい。これら官能化試剤の層状珪酸塩への接触方法は特に制限はなく、通常、無溶媒または極性溶媒中に混合して、接触させることができる。
層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スブチンサイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母などの膨潤性合成雲母、バーミキュライト、フッ素バーミキュライト、ハロイサイトなどが挙げられる。これらは、天然のもの、合成されたもののいずれであってもよい。中でも、モンモリナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母などの膨潤性合成雲母が好ましい。
変性層状珪酸塩の層間に挿入される四級オニウムカチオンには、特に制限はない。具体例としては、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウム類が挙げられる。
前記樹脂成分に対する成分Hとしての上記層状珪酸塩などの配合量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜15重量部とするのが好ましい。層状珪酸塩などの配合量が0.1重量部より少ないと、製品燃焼中の滴下防止効果が不充分であり、15重量部より多いと樹脂組成物の流動性や、製品の機械的物性が極端に低下するので、いずれも好ましくない。上記層状珪酸塩などの好ましい配合量は0.3〜12重量部であり、中でも0.5〜10重量部が好適である。なお、層状珪酸塩は一種でも、二種以上の混合物であってもよい。
成分Hとして、さらにシリコンオイルが挙げられる。シリコンオイルとしては、次の一般式(11)で表されるジメチルポリシロキシン骨格を有する化合物であり、末端または側鎖の一部または全部が、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級アルコキシ変性、フッ素変性されて、官能基化されたものであってもよい。式(11)において、tは重合度を表わす。
成分Hとしてのシリコンオイルは、温度25℃における粘度が1000〜30000(センチストークス、以下cs.と略記する)の範囲のものが好ましい。粘度が1000(cs.)未満であると、製品燃焼中の滴下防止効果が不充分で、難燃性が向上せず、30000(cs.)より大きいと、増粘効果により樹脂組成物の流動性が著しく低下し、いずれも好ましくない。シリコンオイルの好ましい粘度は2000〜25000(cs.)の範囲であり、中でも3000〜20000(cs.)の範囲が好適である。
前記樹脂成分に対する成分Hとしてのシリコンオイルの配合量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜10重量部とするのが好ましい。シリコンオイルの配合量が0.001重量部未満であると、製品燃焼時の滴下防止効果が不充分であり、10重量部より多いと流動性、機械的性質が著しく低下し、いずれも好ましくない。シリコンオイルの好ましい配合量は、0.005〜8重量部であり、中でも0.01〜5.0重量部が好適である。
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂成分に上記した成分Aないし成分Hの各成分が、上記した範囲で配合されたものであるが、上記した成分Aないし成分Hの外に、成分B(ポリフェニレンエーテル樹脂)の粘度を下げる目的で、成分Iとしてポリスチレンを配合することができる。成分Bのガラス転移温度は高く、成分Aに均一に分散し難いが、成分Iとしてポリスチレンを配合することにより、成分Aと成分Bとの分散性を向上させることができる。樹脂成分に対する成分Iの配合量は、樹脂成分100量部に対して、1〜30重量部の範囲で選ぶのが好ましい。成分Iの配合量が1重量部より少ないと、成分Aと成分Bとの分散性を向上せず、多すぎると樹脂組成物の難燃性、および機械的性質が低下するので、いずれも好ましくない。成分Iの好ましい配合量は、2〜20重量部である。
本発明に係る樹脂組成物には、成分Aないし成分Iの外に、成分Aの耐加水分解性を向上させる目的で、成分Jとしてエポキシ化合物を配合することができる。成分Jの配合量は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜3重量部の範囲で選ぶことができる。成分Jの配合量を0.01重量部以下とすると、耐加水分解性向上効果が小さく、3重量部以上とすると樹脂組成物の流動性が悪化し、いずれも好ましくない。
本発明に係る樹脂組成物には、成分Aないし成分Jの外に、従来から知られている他の樹脂添加剤を配合することができる。他の樹脂添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、接着促進剤、結晶化促進剤、滑剤、着色剤、発泡剤、可塑剤、増粘剤、防滴剤、離型剤、衝撃性改良剤、発煙抑制剤などが挙げられる。
本発明に係る樹脂組成物を調製する方法は、特に限定されるものではなく、従来から知られている方法によればよい。例えば、(a)本発明に係る樹脂組成物を構成する各成分を所定量秤量し、ブレンダーやミキサーなどによってドライブレンドする方法、(b)少量の成分を、予め、成分A、成分Bまたは成分Cなどでマスターバッチを調製し、各成分を所定量秤量し、ブレンダーやミキサーなどによってドライブレンドする方法、(c)各成分を所定量秤量して混合した混合物を、溶融混練機によって溶融混練して粒状化する方法、などが挙げられる。
なお、(c)の方法によって粒状化する方法では、(c1)各成分を一括して溶融混練する方法、(c2)特定成分を先に溶融混合し、残りの成分を後で溶融混合する方法、などが挙げられる。中でも機械的物性の観点から、成分Aのポリエステル系樹脂、成分Bのポリフェニレンエーテル樹脂および成分Cの相溶化剤の三成分を、先に溶融混合した後に、残りの成分を混合する方法であってもよい。なお、残りの成分を混合する(c2)の方法において、成分Aまたは成分Bでマスターバッチを調製し、三成分を含むペレットに配合・混合し、溶融混練する方法、溶媒に可溶性の成分を溶媒中で混合した後、三成分を含むペレットに配合・混合する方法のいずれであってもよい。後者の方法で使用できる溶媒としては、キシレン、トルエン、トリクロロベンゼン、クロロホルム、a−クロロナフタレンなどが挙げられる。腐食性ガス発生の抑制、脱溶媒の容易性の観点から、キシレン、トルエンが好ましく、特にはキシレンが好適である。使用した溶媒は、溶融混練する際にベント式押出機を使用し、ベントから強制的に脱気させて除去できる。
本発明による難燃性ポリエステル樹脂組成物は難燃性、耐トラッキング性などの電気的特性、機械的物性、耐加水分解性などに優れ、腐食性ガス発生による金型腐食がなく、さらに低比重、流動性に優れるので、薄肉または複雑な形状の成形品の製造用材料として好適である。
以下に、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例で使用した各成分は、次のような特性を有するものである。
(A−1)PBT:固有粘度が0.85のポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチック社製、商品名:ノバデュラン)である。
(A−2)PET:固有粘度が0.55のポリエチレンテレフタレート(三菱化学製、商品名:ノバペックス)である。
(B)PPE:固有粘度が0.40のポリフェニレンエーテル(三菱エンジニアリングプラスチック社製、商品名:ユピエース)である。
(C−1)PEP36:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ社製、商品名:MARK PEP36)である。
(C−2)PC:粘度平均分子量15000のポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック社製、商品名:ノバレックス、7022PJ−4LV)である。
(D−1)リン酸エステル:次の式(12)で示されるリン酸エステルである。
(D−2)ホスホニトリル化合物:次の式(13)で示されるポスホニトリル化合物である。式(13)において、qは重合度である。
(E)シアヌル酸メラミン:三菱化学社製の製品である。
(F)硼酸亜鉛:ボラックス・ジャパン社製の製品である。
(G)GF:ガラス繊維(エポキシシランで表面処理された長さが3mmチョップドストランド、日本電気硝子社製)である。
(H−1)PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業社製、商品名:M−18)である。
(H−2)タルク:林化成社製の製品(商品名:TALCAN POWDER PK−C)である。
(I)PS:ポリスチレン(PSジャパン社製、商品名:HF77)である。
(J)エポキシ化合物:ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(旭電化社製、商品名:アデカサイザーEP−17である。)
樹脂組成物の評価方法は、以下のとおりである。
(1)溶融粘度(単位:Pa・sec−1):東洋精機社製のキャピログラフ1−C(ノズル1mmφ、長さ30mm)を使用し、温度270℃、γ=91.2sec−1
における溶融粘度を測定した。ただし、実施例5では測定温度を温度260℃とした。
(2)UL−94:厚さが1/64インチの試験片について、アンダーライターズラボラトリーズ(Underwriter's Laboratories Inc.)UL94規格の垂直燃焼試験に準拠して測定する方法である。難燃性のレベルは、V−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
(3)CTI(Comparative Tracking Index)試験:厚さが3mmの試験片について、IEC0112規格に定める試験法により、CTを決定した。このCTIは、固体電気絶縁材料の表面に繰り返し高電圧低電流のアークを放電させ、材料が導電路を生じさせる程度を表わす。IEC0112規格では、CTIの測定方法の詳細が記載されており、これによると、樹脂製平板に特定形状の白金電極を4mmの間隔で接触させ、白金電極に100V〜600Vの間で任意の電圧を25V間隔で負荷し、そこに塩化アンモニウムの0.1%水溶液を30秒間隔で滴下し、50滴まで破壊しない最大電圧(V)がCTIとなる。CTIは数値が大きいほど好ましく、具体的には275以上が好ましくは、300以上がさらに好ましい。
(4)引張強度:ISO 527に準拠して測定した。試験片は、射出成形機(住友重機械社製、型式:SG−75SYCAP−MIII)を使用し、シリンダー温度を250℃に設定し、金型設定温度80℃の条件下で成形した。
[実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例2]
まず、原料の各成分を表−1に示した割合で秤量し、GF以外の各成分をブレンダーで混合して混合物を得た。次いで、得られた混合物を、バレル温度270℃に設定した30mmφのベント型二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30)を使用して溶融した。樹脂成分を溶融させた後、GFを途中フィードして溶融・混練し、ストランド状に押出しペレット化した。得られたペレットを原料とし、射出成形機(住友重機械社製、型式:SH-100)を使用して、シリンダー設定温度250℃、金型設定温度80℃の条件下で試験片を成形した。試験片は、縦横10cm、厚さ3mmのトラッキング試験用試験片と、厚さ1/64インチであるUL−94規格規定の試験片である。得られた樹脂組成物と、得られた試験片について、上記した評価項目につき、上記した方法で評価試験を行った。評価結果を、表−1および表−2に示す。
表−1に示された結果より次のことが判明する。
(1)本発明の実施例1〜実施例8の樹脂組成物は、いずれも厚さが1/64インチ試験片の燃焼性においてV−0に合格であり、CTIも300ボルトで好ましい目標を達成している。すなわち、本発明は、硼酸金属塩を特許文献2の請求項に記載の配合量範囲よりも大きいところに本発明の目的を解決する手段を見出したものである。
(2)これに対して、硼酸金属塩を請求項1で規定する下限より少なくした比較例1の組成物は、厚さが1/64インチ試験片の燃焼性においてV−0に不合格であり、CTIも225ボルトで目標を達成しない。
(3)PPEの配合量を多くした実施例9の樹脂組成物は、厚さが1/64インチ試験片の燃焼性においてV−0に合格であり、CTIが275ボルトとやや低いが良好の範囲である。
(4)これに対して、PPEを配合してない比較例2の組成物は、CTIは300ボルトと良好であるが、厚さが1/64インチ試験片の燃焼性においてV−0に不合格である。
本発明に係る難燃性ポリエステル系樹脂組成物は、難燃性に極めて優れ、さらに難燃剤として臭素系化合物、塩素系化合物を含まないため、成形加工時の腐食性ガスの発生が飛躍的に抑制される。また、機械的性質、耐加水分解性、流動性、耐トラッキング性などの電気特性に優れ、成形品製造時に分解生成物が生じ難く、製品を長期使用時に昇華物を生じ難く、成形品は寸法安定性に優れるので、電気・電子部品などの各種用途に適した樹脂材料として有用である。本発明に係る難燃性ポリエステル樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などの従来から知られている成形法によって、目的の成形品(製品)を製造することができる。