しかしながら、上述のエンジン始動制御装置では、膨張行程で停止している気筒は筒内気流が発生していないし温度も十分に上昇しているとはいえないため、混合気が気化しにくく、依然として失火のおそれがあった。また、大気圧点火に近いことからエンジンの熱効率が小さく燃焼エネルギが十分得られないため、結局はエンジン再始動時のスタータモータによるアシストが必要となるうえ、そのスタータモータの電気エネルギ消費量をスタータモータ単独でエンジン再始動を行う場合に比べて低減させることが難しかった。
本発明のエンジン始動制御装置は、エンジン再始動時の失火頻度を抑制することを目的の一つとする。また、エンジン再始動時の燃焼エネルギを大きくすることを目的の一つとする。
本発明は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明のエンジン始動制御装置は、
エンジンのクランクシャフトを回転させる回転駆動手段と、
前記エンジンの各気筒に燃料を噴射する燃料噴射手段と、
前記エンジンの各気筒内の混合気に点火する点火手段と、
前記エンジンが停止した時に膨張行程で停止する気筒に対して前記エンジンが停止する前に前記燃料噴射手段に燃料を噴射させる燃料噴射制御手段と、
前記エンジンが停止している間にエンジン再始動条件が成立したか否かを判定する再始動条件判定手段と、
前記再始動条件判定手段によってエンジン再始動条件が成立したと判定されたとき膨張行程で停止している気筒のピストンが膨張行程の初期位置又はその近傍に戻るよう前記回転駆動手段に前記クランクシャフトを逆回転させる回転駆動制御手段と、
前記膨張行程の初期位置又はその近傍にピストンが戻された気筒内の混合気に点火するよう前記点火手段を制御する点火制御手段と、
を備えたものである。
このエンジン始動制御装置では、エンジン停止時に膨張行程で停止する気筒に対してエンジン停止の前に燃料を噴射しておき、その後エンジン再始動条件が成立したとき膨張行程で停止している気筒のピストンが膨張行程の初期位置又はその近傍に戻るようクランクシャフトを逆回転させたあとその気筒内の混合気に点火する。このようにエンジン停止時に膨張行程で停止する気筒に対してエンジン停止前つまりエンジン温度が比較的高いときに燃料を噴射しておくため、エンジン再始動時にはその気筒内の燃料が十分気化しており失火のおそれが少ない。また、膨張行程で停止している気筒のピストンを膨張行程の初期又はその近傍に戻るようクランクシャフトを逆回転させたあと点火するため、圧縮点火が実現でき、これにより失火のおそれがより少なくなると共に、エンジン熱効率が増加し燃焼エネルギが大きくなる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、アイドルストップ制御によって前記エンジンが停止した時に膨張行程で停止する気筒に対して前記エンジンが停止する前に前記燃料噴射手段に燃料を噴射させ、前記再始動条件判定手段は、前記アイドルストップ制御によってエンジンが停止している間にエンジン再始動条件が成立したか否かを判定してもよい。アイドルストップ制御が行われると走行途中に何度もエンジン停止と再始動とを繰り返すため、本発明を適用する意義が大きい。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記燃料噴射手段は、前記エンジンの各気筒の吸入ポートに燃料を噴射するようにしてもよい。本発明では、直噴式を採用することもできるが、エンジン停止時に膨張行程で停止する気筒に対してエンジン停止前に燃料を噴射しておくため、吸入ポートに燃料を噴射するポート式を採用することも可能となる。
本発明のエンジン始動制御装置は、前記エンジンが停止した時に膨張行程で停止する気筒の排気バルブを閉じるよう制御する排気バルブ制御手段を備えていてもよい。こうすれば、エンジン停止時に膨張行程で停止している気筒の排気バルブが閉じているため、この気筒内の燃料が排気バルブから気筒外へ出ていくことがない。
本発明のエンジン始動制御装置は、前記クランクシャフトにフリクションを与えるフリクション付与手段と、前記エンジンが停止した時に所望の気筒が膨張行程で停止するよう前記フリクション付与手段による前記クランクシャフトへのフリクションを制御するフリクション制御手段と、を備えていてもよい。こうすれば、クランクシャフトに与えるフリクションとクランクシャフトの回転エネルギとの釣り合いにより、所望の気筒をエンジン停止時に膨張行程で停止させることができ、エンジン停止前にその所望の気筒に燃料を入れておくことができる。
本発明のエンジン始動制御装置は、前記エンジンが停止する前にそのままエンジンが停止したとするとどの気筒が膨張行程で停止するかを予測する停止予測手段、を備え、前記燃料噴射制御手段は、前記停止予測手段によって膨張行程で停止すると予測された気筒に対して前記エンジンが停止する前に前記燃料噴射手段に燃料を噴射させてもよい。こうすれば、エンジン停止時に膨張行程で停止する気筒をエンジン停止前に予測するため、エンジン停止前にその気筒に燃料を入れておくことができる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、前記エンジンが停止する時に圧縮行程で停止する気筒に対しても前記エンジンが停止する前に前記燃料噴射手段に燃料を噴射させ、前記点火制御手段は、前記エンジンが停止する時に圧縮行程で停止していた気筒が膨張行程へ移行する手前で該気筒内の混合気に点火するよう前記点火手段を制御してもよい。こうすれば、エンジン再始動条件が成立したとき、まず膨張行程で停止している気筒のピストンを膨張行程の初期位置又はその近傍に戻してからその気筒内の混合気に点火して燃焼エネルギを得たあと、エンジン停止時に圧縮行程で停止していた気筒が膨張行程へ移行するが、その気筒内にも燃料が入っているため点火による燃焼エネルギが得られることになり、スムーズにエンジンの再始動が行われる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記回転駆動制御手段は、前記膨張行程の初期位置又はその近傍にピストンが戻された気筒内の混合気が点火されたあと、前記クランクシャフトの回転数が予め定めた所定回転数に達するまで前記回転駆動手段を正回転させてもよい。こうすれば、燃焼エネルギだけではエンジンが再始動しにくいときには回転駆動手段にアシストさせることにより確実にエンジンを再始動させることができる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記回転駆動手段は、前記エンジンのスタータモータであってもよい。こうすれば、スタータモータとは別に回転駆動手段を設ける必要がない。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記回転駆動手段は、前記クランクシャフトの回転エネルギを電気エネルギに変換してバッテリに蓄える機能と前記バッテリの電気エネルギを前記クランクシャフトの回転エネルギに変換する機能を備えたモータジェネレータであってもよい。こうすれば、例えば制動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリに蓄えておき、エンジン再始動時にその電気エネルギを利用してエンジンの再始動をアシストすることができる。
本発明のエンジン始動方法は、
(a)エンジンが停止する時に膨張行程で停止する気筒に対して前記エンジンが停止する前に燃料を噴射するステップと、
(b)前記エンジンが停止している間にエンジン再始動条件が成立したか否かを判定するステップと、
(c)前記ステップ(b)でエンジン再始動条件が成立したと判定されたとき膨張行程で停止している気筒のピストンが膨張行程の初期位置又はその近傍に戻すステップと、
(d)前記膨張行程の初期位置又はその近傍にピストンが戻された気筒内の混合気に点火するステップと、
を含むものである。
このエンジン始動方法では、エンジン停止時に膨張行程で停止する気筒に対してエンジン停止前つまりエンジン温度が比較的高いときに燃料を噴射しておくため、エンジン再始動時にはその気筒内の燃料が十分気化しており失火のおそれが少ない。また、膨張行程で停止している気筒のピストンを膨張行程の初期又はその近傍に戻るようクランクシャフトを逆回転させたあと点火するため、圧縮点火が実現でき、これにより失火のおそれがより少なくなると共に、エンジン熱効率が増加し燃焼エネルギが大きくなる。なお、このエンジン始動方法は上述したエンジン始動制御装置が備えている各種の構成手段の機能を実現するようなステップを追加してもよい。
本発明のエンジン始動制御装置を搭載した車両は、本発明のエンジン始動制御装置を搭載しているため、エンジン再始動時の失火のおそれを少なくすることができると共に、エンジン熱効率を増加させ燃焼エネルギを大きくすることができる。
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す説明図である。本実施形態のハイブリッド自動車20は、ガソリンにより駆動するエンジン30と、エンジン30の各気筒31に燃料を噴射するインジェクタ32と、エンジン30の各気筒内の混合気に点火する点火プラグ33と、エンジン30のクランクシャフト39と動力のやり取りを行なうモータジェネレータ40と、エンジン30をコントロールするエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)50と、エンジン30の始動・停止やモータジェネレータ40の駆動などを制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECUという)60とを備える。
エンジン30は、本実施形態では4気筒エンジンであり、各気筒31は、吸気通路22のうち吸気バルブ34の手前に設けられた吸入ポート36にインジェクタ32がガソリンを噴射するポート式として構成されている。ここで、図示しないエアクリーナおよびスロットルバルブを介して吸気通路22に吸入された空気は、吸入ポート36でインジェクタ32から噴射されたガソリンと混合して混合気となる。この混合気は、吸気バルブ34が開くことにより燃焼室37へ吸入され、点火プラグ33のスパークによって点火されて爆発燃焼し、その燃焼エネルギによりピストン38が往復運動して、クランクシャフト39を回転運動させる。燃焼後の排ガスは、排気バルブ35が開くことにより燃焼室37から排出される。また、エンジン30の各気筒は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程(燃焼行程ともいう)、排気行程を1サイクルとしてこのサイクルを順次繰り返すものであり、クランクシャフト39が半回転つまり180°回転するごとに行程が切り替わり、クランクシャフト39が2回転つまり720°回転するごとに1サイクル進む。また、4つの気筒の点火タイミングは本実施形態では1番気筒、3番気筒、4番気筒、2番気筒という順であり、したがって例えば1番気筒が膨張行程にあるとき、2番気筒は排気行程、3番気筒は圧縮行程、4番気筒は吸気行程となる。図2にクランク角CAと各気筒の行程との対応関係を表す説明図である。
エンジン30のクランクシャフト39は、オートマチックトランスミッション56に接続されている。このオートマチックトランスミッション56は、エンジン30からクランクシャフト39に出力された動力を変速してデファレンシャルギヤ52を介して駆動輪54a,54bに伝達する。また、クランクシャフト39にはクランク角センサ68が取り付けられ、吸気バルブ34や排気バルブ35を開閉する図示しないカムが配列されたカムシャフトにはカム角センサ69が取り付けられている。このうち、クランク角センサ68は、本実施形態では、クランクシャフト39に取り付けられた図示しないマグネットロータに対向する位置に磁気抵抗素子を配置したMRE回転センサであり、このクランク角センサ68が発生するパルスを利用してクランク角CAを特定したりエンジン回転数Neを求めたりすることができる。また、カム角センサ69は、図示しないカムシャフトと一体となって回転する歯車の歯がコイルのコアに接近するごとにパルスを出力する電磁誘導ピックアップ式センサであり、カムシャフトが1回転(クランクシャフト39が2回転)するごとに1個のパルスを発生する。
モータジェネレータ40は、モータとして駆動すると共にジェネレータとしても駆動する例えば同期交流電動発電機として構成されており、その回転軸に取り付けられたMG側プーリ26は、エンジン30のクランクシャフト39に接続されたエンジン側プーリ24にベルト28により接続されている。このため、モータジェネレータ40は、エンジン30からクランクシャフト39に出力された動力を用いて発電してインバータ42を介してバッテリ44を充電したり、バッテリ44からインバータ42を介して得られる電力を用いてクランクシャフト39に動力を出力できる。また、モータジェネレータ40は、エンジン30のスタータモータとしての役割も担っている。このため、モータジェネレータ40とは別にスタータモータを備える必要がない。なお、図1の構成をハイブリッド自動車と称しているのは、エンジン30を始動する際のモータジェネレータ40の回転力がオートマチックトランスミッション56を介して車輪に伝達されることでモータジェネレータ40が車両駆動用に利用され得るからである。
エンジンECU50は、エンジン30の運転を制御するものであり、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサにより構成され、CPUの他に処理プログラムやデータなどを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAMや入出力ポート、通信ポートを備えている。このエンジンECU50には、エンジン30の運転状態を示す種々のセンサ、例えば、前出のクランク角センサ68やカム角センサ69のほか、図示しないが吸入空気の温度を検出する吸気温センサ、スロットルバルブの開度(ポジション)を検出するスロットルバルブポジションセンサ、エンジン30の冷却水の温度(水温)を検出する水温センサなどが接続されており、各種センサからの検出信号が入力される。また、エンジンECU50からは、インジェクタ32への駆動信号や吸気バルブ34・排気バルブ35の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構72への制御信号、点火プラグ33に放電電圧を印加するイグニッションコイル74への制御信号などが出力される。なお、運転者の操作に基づく要求動力をエンジン30から出力するために、エンジンECU50には、シフトレバー62のポジションを検出するシフトポジションセンサ63からのシフトポジションやアクセルペダル64のポジションを検出するアクセルペダルポジションセンサ65からのアクセルペダルポジション、ブレーキペダル66が踏み込まれているか否かを検出するブレーキポジションセンサ67からのオンオフ信号も入力される。
ハイブリッドECU60は、CPUを中心とするマイクロプロセッサにより構成されており、図示しないがCPUの他に処理プログラムやデータなどを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAMや入出力ポート、通信ポートを備えている。ハイブリッドECU60には、モータジェネレータ40に取り付けられた図示しない回転数センサや温度センサからのモータ回転数やモータ温度、インバータ42内の取り付けられた図示しない電流センサからのモータジェネレータ40への相電流、バッテリ44に取り付けられた図示しない温度センサからのバッテリ温度、バッテリ44の出力端子近傍に取り付けられた図示しない電圧センサや電流センサからの端子間電圧や充放電電流などが入力ポートを介して入力されており、ハイブリッドECU60からは、モータジェネレータ40を駆動制御するためのインバータ42へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、ハイブリッドECU60は、通信ポートを介してエンジンECU50と接続されており、必要に応じてエンジンECU50からエンジン30の状態に関するデータを受信すると共にエンジンECU50に制御信号を送信する。
次に、本実施形態のハイブリッド自動車20の動作、特にアイドルストップ制御に伴う動作について以下に説明する。このハイブリッド自動車20では、アイドル停車時にアクセルペダル64が踏み込まれていないアクセルOFFであると共にブレーキペダル66が踏み込まれているブレーキONの状態でエンジン回転数Neが所定の低速回転数以下であるなどの所定の停止条件が成立したときにエンジン30を自動停止し、その後ブレーキOFFとされると共にアクセルONされるなどの所定の始動条件が成立したときにモータジェネレータ40によりエンジン30が自動再始動されるアイドルストップ制御が行われる。以下には、このアイドルストップ制御で行われる自動停止制御ルーチンと自動再始動ルーチンについて説明する。
まず、自動停止制御ルーチンについて説明する。図3はこのルーチンのフローチャートである。このルーチンは、エンジン運転中、所定タイミングごと(例えば数msecごと)にハイブリッドECU60によって実行される。このルーチンが開始されると、ハイブリッドECU60は、アクセルペダルポジションセンサ65からのアクセルポジションがアクセルOFFでありブレーキポジションセンサ67からのブレーキペダルポジションがブレーキONであってエンジン回転数Neが所定の低速回転数以下という停止条件が揃ったか否かを判定する(ステップS100)。ここで、エンジン回転数Neはクランク角センサ68から出力されるパルスの時間間隔に基づいて算出される。なお、アクセルペダルポジションセンサ65、ブレーキポジションセンサ67、クランク角センサ68から出力される信号は、エンジンECU50を介してハイブリッドECU60へ入力される。また、所定の低速回転数は本実施形態では通常のアイドリング回転数をわずかに上回る数値に設定されている。
ステップS100で前出の停止条件が揃っていないときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、ステップS100で停止条件が揃ったときには、エンジン30の各気筒31のインジェクタ32への通電を停止すると共に点火プラグ33への通電を停止するようエンジンECU50に指令する(ステップS110)。この結果、エンジン30の各気筒31の点火及び燃料噴射が停止するため、エンジン30はクランクシャフト39を回転させるトルクを発生しなくなる。このため、クランクシャフト39は慣性力のみで回転する。この慣性力は、圧縮行程の気筒で発生するガス圧縮力などによって減衰されるため、クランクシャフト39の回転は停止に向けて収束する。
続いて、ハイブリッドECU60は、エンジン回転数Neが予め定めたしきい値Nth以下になったか否かを判定し(ステップS120)、NeがNth以下になっていないときにはそのまま待機し、NeがNth以下になったときには、予め定めた特定気筒(ここでは3番気筒とする)が吸気行程の直前のタイミングに至ったか否かを判定する(ステップS130)。ここで、しきい値Nthは、慣性力で回転しているクランクシャフト39を強制的に停止させたとしてもドライバビリティが悪化しないエンジン回転数を予め実験的に求めた値である。ただし、クランクシャフト39は、Neがしきい値Nth以下になったあと少なくとも2〜3サイクルは回転するものとする。また、特定気筒が吸気行程の直前のタイミングに至ったか否かの判定は、クランク角センサ68から出力されるパルスとカム角センサ69から出力されるパルスに基づいて行われる。本実施形態では、カム角センサ69は1番気筒が膨張行程に入いるごとにパルスを出力するように設定され、クランク角センサ68はクランクシャフト39が所定角度回転するごとにパルスを出力するように設定されている。このため、カム角センサ69からパルスが出力されるごとにクランク角をゼロにリセットしつつ、クランク角センサ68からパルスが出力されるごとにクランク角を所定角度ずつ進めることにより、クランク角を0〜720°の範囲で算出することができる。そして、このように算出したクランク角を、図2に示すクランク角CAと各気筒の行程との対応関係に照らすことにより、どの気筒がどの行程にあるのかを判別することができる。本実施形態では特定気筒が3番気筒であるから図2に示すようにクランク角が540°になったときに吸気行程に入いることになり、吸気行程の直前のタイミングは540°−αとなる。なお、クランク角センサ68やカム角センサ69から出力される信号は、エンジンECU50を介してハイブリッドECU60へ入力される。
そして、ステップS130で特定気筒が吸気行程の直前のタイミングに至っていないときにはそのまま待機し、特定気筒が吸気行程の直前のタイミングに至ったときにはその特定気筒のインジェクタ32に通電して燃料を噴射するようエンジンECU50へ指令する(ステップS140)。この結果、インジェクタ32から噴射された燃料が吸気ポート36内の空気と混合して混合気となり、その混合気は吸気バルブ34が開いたときに特定気筒の燃焼室37へ吸入される。続いて、この特定気筒が膨張行程に至ったか否かをクランク角に基づいて判定する(ステップS150)。本実施形態では特定気筒が3番気筒であるから図2に示すようにクランク角が180°になったときに膨張行程に入ることになる。そして、ステップS150で特定気筒が膨張行程に至っていないときにはそのまま待機し、特定気筒が膨張行程に至ったときにはモータジェネレータ40をジェネレータとして作用させることによりクランクシャフト39にフリクションを与えてクランクシャフト39を強制的に停止させる(ステップS160)。その後、ハイブリッドECU60は、今回の特定気筒を識別する情報を図示しないバックアップRAMに保存し(ステップS170)、本ルーチンを終了する。これにより、アイドルストップ制御において、エンジン30が停止した時に膨張行程で停止する気筒を特定気筒とすることができ、その特定気筒内に未燃焼の混合気を吸入しておくことができる。
次に、自動再始動制御ルーチンについて説明する。図4はこのルーチンのフローチャートである。このルーチンは、自動制御ルーチン終了後、所定タイミングごと(例えば数msecごと)にハイブリッドECU60によって実行される。このルーチンが開始されると、ハイブリッドECU60は、ブレーキポジションセンサ67からのブレーキペダルポジションがブレーキOFFでアクセルペダルポジションセンサ65からのアクセルポジションがアクセルONという再始動条件が揃ったか否かを判定する(ステップS200)。
ステップS200で前出の再始動条件が揃っていないときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、ステップS200で再始動条件が揃ったときには、ハイブリッドECU60は、図示しないバックアップRAMから特定気筒を読み出し(ステップS210)、モータジェネレータ40をモータとして作用させてベルト28を介してクランクシャフト39を逆回転させる(ステップS220)。これにより、特定気筒のピストン38は膨張行程の初期位置である上死点TDCに戻る方向へ動き出す。続いて、クランク角が所定のクランク角に達したか否かを判定する(ステップS230)。ここで、所定のクランク角は、特定気筒のピストン38が膨張行程の上死点TDCにあるときのクランク角としてもよいし、それよりもわずかに進角したクランク角としてもよい。本実施形態では特定気筒が3番気筒のため、所定のクランク角は膨張行程の上死点TDCである180°(図2参照)かそれよりわずかに進角したクランク角に設定されている。そして、ステップS230でクランク角が所定のクランク角に達していないときには、クランク角速度が実質的にゼロになったか否かをクランク角センサ68から出力されるパルスに基づいて判定し(ステップS240)、クランク角速度が実質的にゼロになっていないときには再びステップS220に戻る。ここで、クランク角速度が実質的にゼロになったか否かを判定するのは、クランク角が所定のクランク角に達する前にピストン38によるガス圧縮力等の抵抗によりクランクシャフト39がそれ以上逆回転しなくなり停止することがあるからである。
ステップS230でクランク角が所定のクランク角に達したか、又はステップS240でクランク角速度が実質的にゼロになったときには、特定気筒の点火プラグ33に放電電圧を印加してスパークを発生させる(ステップS250)。すると、特定気筒の燃焼室37内の混合気はクランクシャフト39を逆回転させて膨張行程の上死点TDCの付近まで戻されたことにより圧縮されているため点火プラグ33のスパークによって確実に燃焼し、しかも圧縮点火により比較的大きな燃焼エネルギが発生するためピストン38が下死点BDCに向かって付勢され、それに応じてクランクシャフト39は正回転し始める。続いて、モータジェネレータ40をモータとして作用させてベルト28を介してクランクシャフト39を正回転させることによりエンジン再始動をアシストし(ステップS260)、エンジン回転数Neが所定の始動回転数Nstartに達したか否かを判定し(ステップS270)、NeがNstartに達していないときには再びステップS260へ戻り、NeがNstartに達したときにはモータジェネレータ40による正回転アシストを終了し(ステップS280)、本ルーチンを終了する。なお、本ルーチン終了後は、通常の走行時の制御を実行することになる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のモータジェネレータ40が本発明の回転駆動手段及びフリクション付与手段に相当し、インジェクタ32が燃料噴射手段に相当し、点火プラグ33が点火手段に相当し、ハイブリッドECU60が再始動条件判定手段及びフリクション制御手段に相当し、ハイブリッドECU60とエンジンECU50の両方が燃料噴射制御手段に相当しまた回転駆動制御手段に相当する。なお、本実施形態では、ハイブリッド自動車20の動作を説明することにより本発明のエンジン始動制御装置の一例を明らかにすると共に本発明のエンジン始動方法の一例も明らかにしている。
以上詳述した本実施形態のハイブリッド自動車20によれば、アイドルストップ制御におけるエンジン停止時に膨張行程で停止する特定気筒に対してエンジン停止前つまりエンジン温度が比較的高いときに燃料を吸入しておくため、エンジン再始動時にはその気筒内の燃料が十分気化しており失火のおそれが少ない。また、膨張行程で停止している特定気筒のピストンを膨張行程の初期位置である上死点TDC又はその近傍に戻るようクランクシャフト39をモータジェネレータ40により逆回転させたあと点火するため、圧縮点火が実現でき、これにより失火のおそれが一層少なくなると共に、エンジン熱効率が増加し燃焼エネルギが大きくなる。このようにモータジェネレータ40によりクランクシャフト39を逆回転させているにもかかわらず大きな燃焼エネルギが得られるため、モータジェネレータ40のみで再始動する場合に比べてトータル的な電気エネルギの使用量を低減化できる。
また、アイドルストップ制御では走行途中に何度もエンジン停止と再始動とを繰り返すため、低減される電気エネルギの使用量の累算値が大きくなり有利である。
更に、エンジン停止時に膨張行程で停止する特定気筒に対してエンジン停止前に燃料を噴射しておくため、吸入ポート36に燃料を噴射するポート式を採用することが可能である。
更にまた、ステップS160においてモータジェネレータ40がクランクシャフト39に与えるフリクションとクランクシャフト39の回転エネルギとの釣り合いにより、特定気筒をエンジン停止時に膨張行程で停止させることができる。
そして、燃焼エネルギだけではエンジン30が再始動しにくいときにはモータジェネレータ40にクランクシャフト39を正回転させアシストすることにより確実にエンジン30を再始動させることができる。このモータジェネレータ40は、制動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ44に蓄えておき、エンジン再始動時にその電気エネルギを利用してエンジン30の再始動をアシストするため、エネルギを有効に利用できる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態の自動停止制御ルーチンにおいて、図5に示すようにステップS110で各気筒の点火及び燃料噴射を停止したあと、排気バルブ35を開くタイミングを膨張行程の下死点BDCとするようエンジンECU50に指令し(ステップS115)、その後ステップS120へ進んでエンジン回転数Neが予め定めたしきい値Nth以下になったか否かを判定するようにしてもよい。なお、ステップS115で指令を受けたエンジンECU50は、可変バルブタイミング機構72の図示しないアクチュエータを作動させて排気バルブ35の開放タイミングを変更する。こうすれば、通常時には排気バルブ35は膨張行程の下死点BDCの手前で開くが(図6の実線の矢印参照)、ステップS115では排気バルブ35は膨張行程の下死点BDCで開くため(図6の点線の矢印参照)、膨張行程において排気バルブ35が開くことがなく、特定気筒の燃焼室37内に吸入された燃料が排気バルブ35から気筒外へ出ていくことがない。この場合、ハイブリッドECU60及びエンジンECU50の両方が本発明の排気バルブ制御手段に相当する。
また、上述した実施形態のアイドルストップ制御では図3の自動停止制御ルーチンと図4の自動再始動制御ルーチンを採用したが、図7の自動停止制御ルーチンと図8の自動再始動制御ルーチンを採用してもよい。図7の自動停止制御ルーチンでは、ハイブリッドECU60は、ステップS100〜S120と同様のステップS300〜S320の処理を行ったあと、ステップS320でエンジン回転数Neがしきい値Nth以下になったときには、そのままエンジン30が停止したとするとどの気筒が膨張行程で停止するか、つまりどの気筒が停止時膨張行程気筒となるかを予測する(ステップS330)。この予測方法の一例を以下に示す。まず、エンジン30が慣性力のみで回転する状態となってからガス圧縮力などによって減衰されてエンジン回転数Neがしきい値Nthに達したときのクランク角と、更に減衰されてエンジン30が停止したときのクランク角との関係を予め実験的に求めてマップを作成しておく。そして、ステップS320でエンジン回転数Neがしきい値Nth以下になったときのクランク角を求め、そのクランク角に対応するエンジン停止時のクランク角を先ほどのマップから読み出し、図2のクランク角CAと各気筒の行程との対応関係から停止時膨張行程気筒を予測することができる。そして、予測した停止時膨張行程気筒が吸気行程の直前のタイミングに至ったか否かを判定し(ステップS340)、そのタイミングに至ったときにはその気筒のインジェクタ32に通電して燃料を噴射するようエンジンECU50へ指令する(ステップS350)。この結果、インジェクタ32から噴射された燃料が吸気ポート36内の空気と混合して混合気となり、吸気バルブ34が開いたときに特定気筒の燃焼室37へ吸入される。続いて、エンジン回転数Neが実質ゼロになったか否かを判定し(ステップS360)、Neが実質ゼロになったときには今回停止時膨張行程気筒として予測した気筒を識別する情報を図示しないバックアップRAMに保存し(ステップS370)、本ルーチンを終了する。
一方、図8の自動再始動制御ルーチンでは、ハイブリッドECU60は、ステップS400でステップ200と同様の再始動条件成立の判定を行ったあと、再始動条件が成立したときにはバックアップRAMから停止時膨張行程気筒を読み出し(ステップS410)、その後ステップS220〜S280と同様のステップS420〜S480を実行し、本ルーチンを終了する。ただし、ステップ420〜S480ではステップS220〜S280の特定気筒を停止時膨張行程気筒に置き換えて制御を実行するものとする。こうすれば、エンジン停止時に膨張行程で停止する気筒をエンジン停止前に予測するため、エンジン停止前にその気筒に燃料を噴射しておくことができ、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この場合、ハイブリッドECU60が停止予測手段に相当する。
あるいは、図9の自動停止制御ルーチンと図10の自動再始動制御ルーチンを採用してもよい。図9の自動停止制御ルーチンでは、ステップS100〜S120と同様のステップS500〜S520の処理を行ったあと、ステップS520でエンジン回転数Neがしきい値Nth以下になったときには、第1特定気筒(ここでは3番気筒)が吸気行程の直前のタイミングに至ったか否かを判定し(ステップS530)、そのタイミングに至ったときには第1特定気筒のインジェクタ32に通電して燃料を噴射するようエンジンECU50に指令し(ステップS540)、続いて第2特定気筒(ここでは4番気筒、第1特定気筒が膨張行程のとき圧縮行程にある気筒)が吸気行程の直前のタイミングに至ったか否かを判定し(ステップS550)、そのタイミングに至ったときには第2特定気筒のインジェクタ32に通電して燃料を噴射するようエンジンECU50に指令する(ステップS560)。この結果、第1及び第2特定気筒の各々において、インジェクタ32から噴射された燃料が吸気ポート36内の空気と混合して混合気となり、吸気バルブ34が開いたときに燃焼室37へ吸入される。続いて、第1特定気筒が膨張行程に至ったか否かを判定し(ステップS570)、第1特定気筒が膨張行程に至ったときにはクランクシャフト39を強制的に停止させ(ステップS580)、今回の第1及び第2特定気筒を識別する情報を図示しないバックアップRAMに保存し(ステップS590)、本ルーチンを終了する。これにより、エンジン30が停止した時に膨張行程で停止する気筒を第1特定気筒、圧縮行程で停止する気筒を第2特定気筒とすることができ、第1及び第2特定気筒内に未燃焼の混合気を吸入しておくことができる。
一方、図10の自動再始動制御ルーチンでは、ハイブリッドECU60は、ステップ600でステップS200と同様の再始動条件成立の判定を行ったあと、再始動条件が成立したときにはバックアップRAMから第1及び第2特定気筒を読み出し(ステップS610)、その後ステップS220〜S270と同様のステップS620〜S670を実行する。ただし、ステップ620〜S670ではステップS220〜S270の特定気筒を第1特定気筒に置き換えて制御を実行するものとする。そして、ステップS670でエンジン回転数Neが所定の始動回転数Nstartに達していないとき、第2特定気筒の点火タイミングか否かを判定し(ステップS672)、第2特定気筒の点火タイミングでないときには再びステップS660へ戻り、第2特定気筒の点火タイミングのときには第2特定気筒の点火プラグ33に放電電圧を印加してこの気筒内の混合気を燃焼させ(ステップS674)、その後ステップS660に戻る。一方、ステップS670でエンジン回転数Neが所定の始動回転数Nstartに達したときには、モータジェネレータ40による正回転アシストを終了し(ステップS680)、本ルーチンを終了する。こうすれば、エンジン再始動条件が成立したとき、まず膨張行程で停止している第1特定気筒のピストン38を膨張行程の初期位置である上死点TDC又はその近傍に戻してからその気筒内の混合気に点火して燃焼エネルギを得たあと、エンジン停止時に圧縮行程で停止していた第2特定気筒が膨張行程へ移行するが、その気筒内にも燃料が吸入されているため点火による燃焼エネルギが得られることになり、スムーズにエンジンの再始動が行われる。なお、予め第1及び第2特定気筒を定めておく代わりに、図7及び図8のフローチャートに示したように停止時膨張行程気筒を予測してもよい。この場合、停止時圧縮行程気筒は停止時膨張行程気筒が決まれば一義的に決まる(図2参照)。
更に、上述した実施形態では、モータジェネレータ40のMG側プーリ26とエンジン30のクランクシャフト39に接続されたエンジン側プーリ24との間のエネルギ伝達をベルト28を介して行ったが、モータジェネレータ40とクランクシャフト39との間のエネルギ伝達をギヤを介して行ってもよい。
更にまた、上述した実施形態では、クランク角センサ68としてMRE回転センサを採用したが、クランクシャフト39に取り付けられたマグネットロータに対向する位置にホール素子を配置して磁束密度変化を電圧変化に変換する磁電変換式センサを採用してもよいし、発光ダイオードとフォトトランジスタとを対向させその間をスリットを切った円盤が回転することによりクランク角を検出する光電式センサを採用してもよいし、クランクシャフト39と一体となって回転する歯車の歯がコイルのコアに接近するごとにパルスを出力する電磁誘導ピックアップ式センサを採用してもよい。ただし、クランクシャフト39の低速回転時においても良好な出力が得られることを考慮するとMRE回転センサや磁電変換式センサ、光電式センサが好ましい。なお、エンジン側プーリ24とMG側プーリ26に架け渡されたベルト28にスベリが発生しないならばモータジェネレータ40に取り付けた回転数センサからの出力に基づいてクランク角を算出してもよい。この場合の回転数センサとしてはMRE回転センサや磁電変換式センサ、光電式センサが好ましい。
そして、上述した実施形態では、特定気筒を3番気筒として説明したが、アイドルストップ制御が実行されるごとに特定気筒を順次変更してもよい。特定気筒をある気筒に固定した場合にはアイドルストップ制御を繰り返すにつれてその気筒の状態が他の気筒と異なってくるおそれがあるのに対し、特定気筒を順次変更する場合にはそのようなおそれが少ない。
そしてまた、上述した実施形態では、4気筒エンジンを例に挙げて説明したが、他の多気筒エンジンにおいても同様にして本発明を適用することができる。例えば、6気筒エンジンでは、タイミングによっては二つの気筒が膨張行程に入ることがあるが、その場合には先に膨張行程に入る気筒に対して上述した実施形態と同様の処理を実行する。
そして更に、上述した実施形態では、自動再始動制御ルーチンにおいてモータジェネレータ40による正回転アシストを行うようにしたが、このようなアシストを省略してもよいし、あるいは、エンジン停止時に膨張行程で停止していた気筒の混合気を圧縮点火してから所定時間経過してもエンジン回転数Neが所定の始動回転数Nstartに達しなかったときにアシストするようにしてもよい。
そして更にまた、上述した実施形態では、ハイブリッド自動車20に本発明を適用した場合を例示したが、モータジェネレータ40の動力を車両駆動軸に伝達させない構成の単なるアイドルストップ機能付き車両に本発明を適用してもよいことはいうまでもない。
20…ハイブリッド自動車、22…吸気通路、24…エンジン側プーリ、26…MG側プーリ、28…ベルト、30…エンジン、31…気筒、32…インジェクタ、33…点火プラグ、34…吸気バルブ、35…排気バルブ、36…吸入ポート、37…燃焼室、38…ピストン、39…クランクシャフト、40…モータジェネレータ、42…インバータ、44…バッテリ、50…エンジンECU、52…デファレンシャルギヤ、54a,54b…駆動輪、56…オートマチックトランスミッション、60…ハイブリッドECU、62…シフトレバー、63…シフトポジションセンサ、64…アクセルペダル、65…アクセルペダルポジションセンサ、66…ブレーキペダル、67…ブレーキポジションセンサ、68…クランク角センサ、69…カム角センサ、72…可変バルブタイミング機構、74…イグニッションコイル。