JP2005000940A - 多層積層型ろう材およびろう付補修方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】弁等の耐摩耗部材に形成された欠陥を補修するためのろう材として、硬度,肉盛り性,浸透性等の性質を兼ね備えた多層積層型ろう材を提供すること。
【解決手段】基材11に被着された耐摩耗部材12の表面に発生した溝状欠陥16aを補修するために、耐摩耗部材12より融点が低く、かつ、耐摩耗部材12の表面に被着されるろう材において、ろう材は、複数のろう材層からなる多層積層構造を有し、ろう材は、耐摩耗部材12の表面の溝状欠陥16aを含む領域に直接被着される内側ろう材層14aと、内側ろう材層14aに接するように被着され内側ろう材層14aの外側に設けられる外側ろう材層14bとを備えると共に、内側ろう材層14aを構成する混合金属材料より、外側ろう材層14bを構成する混合金属材料が高融点を有すること。
【選択図】 図1
【解決手段】基材11に被着された耐摩耗部材12の表面に発生した溝状欠陥16aを補修するために、耐摩耗部材12より融点が低く、かつ、耐摩耗部材12の表面に被着されるろう材において、ろう材は、複数のろう材層からなる多層積層構造を有し、ろう材は、耐摩耗部材12の表面の溝状欠陥16aを含む領域に直接被着される内側ろう材層14aと、内側ろう材層14aに接するように被着され内側ろう材層14aの外側に設けられる外側ろう材層14bとを備えると共に、内側ろう材層14aを構成する混合金属材料より、外側ろう材層14bを構成する混合金属材料が高融点を有すること。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弁の摩耗や欠陥に効果的な補修を施工し、弁を高品質に維持させる多層積層型ろう材およびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属材料により製造される基材において、特に圧力負荷の高い部分や、硬度(耐摩耗性)を必要とされる部分には、機械的性質の向上のため高硬度の材質を有する金属材料を耐摩耗部材として肉盛り施工される場合がある。
【0003】
火力,原子力等の発電プラントを構成する弁の弁座表面を肉盛り施工させると、閉弁の際、弁体と弁座表面の肉盛り施工部とが水密的に当接されるので、弁のシール効果を向上させる。ただし、弁の長期使用の結果、基材に肉盛り施工された耐摩耗部材には摩耗や欠陥(溝)等が形成され、弁体と弁座とのシール性が劣化する。
【0004】
耐摩耗部材に形成される摩耗や欠陥の補修方法として、耐摩耗部材を構成する金属材料と同質の金属材料を用いて耐摩耗部材の摩耗や欠陥に溶接補修施工を行なうものがある。この方法では、弁体と弁座とのシール性を再び維持させることができる。
【0005】
しかし、耐摩耗部材を構成する金属材料と同質の金属材料を用いて溶接補修施工を実施すると、加熱によって溶接用の金属材料の溶融を行なうため、溶接用の金属材料だけでなく、耐摩耗部材を構成する金属材料自体が部分的に溶融する。そして、耐摩耗部材の溶融部分と非溶融部分との境界面に発生する残留応力が要因になって、欠陥近傍に再度、摩耗や欠陥が発生する。よって、弁の補修効率が悪く、長期間シール効果を維持できない。
【0006】
また、耐摩耗部材に形成される欠陥の補修方法として、肉盛り施工部分を全面補修することも行われる。全面補修では、残留応力は局部的に残らないが、一旦肉盛り施工部分を機械加工により除去した後、再び肉盛り施工をする必要がある。よって、限られた作業空間内での補修作業に困難性を有し、労力的、時間的な問題がある。
【0007】
そこで、耐摩耗部材に形成される欠陥の補修方法として、溶接補修施工に代わり、耐摩耗部材を構成する金属材料より融点の低い金属材料を肉盛り施工部の欠陥にろう付させる補修方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
耐摩耗部材を構成する金属材料より融点の低い金属材料を欠陥にろう付させる補修方法にて、耐摩耗部材の表面を覆い、ぬれ性の低下原因である酸化皮膜を除去するために、還元ガス・フラックスを使用する。しかし、大気中で肉盛り施工するため、フラックスの残渣や、還元ガス・フラックスが酸化皮膜と反応した結果生成される反応生成物(金属塩)が、肉盛り部に堆積する等の不具合を十分に避けることができず、補修部の品質が劣化してしまう。
【0009】
そこで、肉盛り施工の際、補修部を真空あるいは不活性ガス雰囲気にて行ない、酸化皮膜の蒸発・熱解離を促進させ、不具合を防止する加熱方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
図6は、従来のろう材およびろう付補修方法であって、欠陥を補修するろう材を示す概略図である。
【0011】
図6(a)は、Cr−Mo鋼の基材1と、基材1にプラズマアーク溶接によって肉盛り施工して被着させた耐摩耗部材2とを示す。そして、耐摩耗部材2には、長期間の使用により、所要の深さをもつ複数の欠陥3が発生して成長する。
【0012】
図6(b)に示されたように、欠陥3を備えた耐摩耗部材2の表面であって、欠陥3を含む領域にろう材4を被着させる。このろう材4の材料として、耐摩耗部材2より融点が低く、主成分材料をAu、副成分材料をCuとする混合金属材料(合金,粒状,粉末状等)を用いる。
【0013】
さらに、不活性ガス雰囲気中または真空中において、図6(c)に示されたように、ろう材4を所要の温度に加熱してろう材4を溶融させ、溶融されたろう材4を欠陥3の内部に浸透させる。ろう材4の加熱方法としては、欠陥3を局部的に加熱する方法が望ましく、加熱方法として、高周波誘導加熱・高エネルギビームを照射する方法等が挙げられる。
【0014】
そして、所要時間加熱後、加熱を停止してろう材4を冷却し、ろう材4の温度が融点以下になると、欠陥3の内部に浸透したろう材4が凝固される。
【0015】
【特許文献1】
特開平11−123617号公報(第4頁、図1−図5)
【0016】
【特許文献2】
特開2003−1402号公報(第3頁−第5頁、図1,2)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
図6に示された従来の耐摩耗部材2の補修手順によると、耐摩耗部材2に被着されたろう材4を高周波誘導加熱・高エネルギビームを照射することによって加熱する。耐摩耗部材2の欠陥3にろう材4を浸透させるためには、欠陥3の最奥部までろう材4の融点以上に加熱してろう材4の浸透性を向上させる必要がある。しかし、ろう材4の表面を加熱すると、ろう材4の表面から欠陥3の最奥部までゆっくりと熱伝導されるため、欠陥3の最奥部が十分に加熱されるまで長時間を要する。
【0018】
溶融されたときの浸透性の高い金属材料にて基材または耐摩耗部材に形成された欠陥を補修しようとすると、溶融された金属材料が欠陥にて凝固されたときの硬度、肉盛り性に乏しい。
【0019】
一方、発電プラントを構成する弁の弁座表面の基材または耐摩耗部材は、長期使用に耐えうる硬度(耐摩耗性)を必要とする。すなわち、弁を長期間使用した結果、基材または耐摩耗部材には摩耗や欠陥が発生する。よって、基材または耐摩耗部材に形成された欠陥を高硬度を有する金属材料にて補修しようとすると、溶融された金属材料の浸透性が乏しく、溶融された金属材料が十分に欠陥に浸透されず、欠陥不良が十分に解消されない恐れがある。
【0020】
弁の弁座表面の基材または耐摩耗部材に形成される欠陥を補修する金属材料としては、溶融されたときの浸透性と、溶融後に凝固されたときの硬度とが共に優れたものを選択する必要がある。しかし、現実には、補修後の弁座の長期使用を可能にする程度の浸透性と硬度とを共に満足する金属材料は存在しない。
【0021】
本発明は、上述したような事情を考慮してなされたものであり、融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の性質を異にする複数のろう材層によって、肉盛り部を含む欠陥全体を効果的に補修することができる多層積層型ろう材およびろう付補修方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る多層積層型ろう材は、上述した課題を解決するために請求項1に記載したように、基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面に発生した欠陥を補修するために、前記基材または耐摩耗部材より融点が低く、かつ、前記基材または耐摩耗部材の表面に被着されるろう材において、前記ろう材は、複数のろう材層からなる多層積層構造を有し、前記ろう材は、前記基材または耐摩耗部材の表面の欠陥を含む領域に直接被着される内側ろう材層と、前記内側ろう材層上に積層され、前記内側ろう材層の外側に設けられる外側ろう材層とを備えると共に、前記内側ろう材層から外側ろう材層にかけて融点が順に高くなるような純金属材料または混合金属材料にて構成されたことを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項2に記載したように、前記基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面が平面部を有さない場合、前記基材または耐摩耗部材の表面形状に沿って前記ろう材を配置させることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項3に記載したように、前記ろう材層を構成する材料として混合金属材料を採用し、前記混合金属材料の主成分材料として金を採用する場合、前記混合金属材料の副成分材料は、銅,コバルト,鉄,ゲルマニウム,ニッケルおよびケイ素の少なくとも一方から構成されたことを特徴とする。
【0025】
加えて、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項4に記載したように、前記混合金属材料の副成分材料の含有量が、1重量%〜40重量%であることを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項5に記載したように、前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融・凝固によって硬度の高い析出物を形成させる添加材料を含むことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項6に記載したように、前記ろう材層を構成する純金属材料、または、混合金属材料の主成分材料として金を採用する場合、前記添加材料は、アルミニウム,クロム,チタンおよびジルコニウムの少なくとも一方から構成されたことを特徴とする。
【0028】
加えて、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項7に記載したように、前記添加材料の含有量が、1重量%〜40重量%であることを特徴とする。
【0029】
さらに、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項8に記載したように、前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融・凝固によって状態変化しない硬質材料を含むことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項9に記載したように、前記硬質材料は、コバルト基合金,ニッケル基合金,耐火金属,炭化物,ホウ化物および窒化物の少なくとも一方から構成されたことを特徴とする。
【0031】
加えて、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項10に記載したように、前記硬質材料の含有量が、1体積%〜40体積%であることを特徴とする。
【0032】
さらに、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項11に記載したように、前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融時に純金属材料または混合金属材料を構成する液相の浸透を助長する浸透性促進材料を含むことを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項12に記載したように、前記浸透性促進材料は、銀およびリチウムの少なくとも一方から構成されたことを特徴とする。
【0034】
加えて、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項13に記載したように、前記浸透性促進材料の含有量が、0.01重量%〜20重量%であることを特徴とする。
【0035】
さらに、本発明に係るろう付補修方法は、請求項14に記載したように、基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面に欠陥が発生した際、前記基材または耐摩耗部材にろう材を被着させて、ろう材部分を局部的に不活性なガス雰囲気または真空中に維持させながら前記ろう材を前記欠陥に浸透させるろう付補修方法において、前記ろう材として、内側ろう材層の材料を前記基材または耐摩耗部材に被着し、前記内側ろう材層の材料より融点が高い材料からなる外側ろう材層を前記内側ろう材層の最外側に多層積層構造を形成するように被着させる工程と、前記ろう材を所要の温度に加熱して、融点の低い材料からなる内側ろう材層にて外側ろう材層より多くの液相を生成させる工程と、前記基材または耐摩耗部材表面に形成される欠陥の奥部に、多くの液相を有する内側ろう材層の材料を優先的に溶融・浸透させる一方、前記欠陥の入口部付近に、多くの固相を有する外側ろう材層の材料を溶融・浸透させる工程とを有することを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材を示す概略図である。
【0038】
図1は、基材11と、この基材11の表面に被着された耐摩耗部材としてのコバルト基合金(0.25重量%C,2.5重量%Ni,27重量%Cr,1重量%Fe,5重量%Mo,1重量%W,残部Co)12とが備えられる。基材11およびコバルト基合金12は、火力,原子力等の発電プラントを構成する弁の弁座表面を模擬したものである。
【0039】
コバルト基合金12の表面には、欠陥16である幅0.1mm、深さ0.1〜2mmの溝状欠陥16aが設けられ、コバルト基合金12の表面であって、溝状欠陥16aを含む領域には、レーザ光を照射して被着させた多層積層型ろう材14を備える。
【0040】
ここで、多層積層型ろう材14は、複数のろう材層からなり、複数のろう材層の最内側であって溝状欠陥16aを含む領域に被着される内側ろう材層14aと、複数のろう材層の最外側に被着される外側ろう材層14bとによって多層積層型が形成される。多層積層型ろう材14、例えば、2層積層型ろう材14Xでは、溝状欠陥16aを含む領域に被着される内側ろう材層14aと、内側ろう材層14aに接するように被着される外側ろう材層14bとによって構成される。
【0041】
2層積層型ろう材14Xは、内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとの厚さを共に、例えば、0.3mmとして積層される。なお、内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとの厚さを共に0.3mmとしたが、この寸法に限定されるものではなく、また、内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとが異なった厚さ寸法でもよい。また、図1に示された2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとは、一つの平面を形成させて積層されているが、平面状に限定するものではなく、例えば、曲面等を形成させてもよい。
【0042】
図1に示された2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとは、それぞれ、主成分材料と副成分材料とからなる混合金属材料(合金,粒状,粉末状等)にて構成される。混合金属材料の選択方法としてはコバルト基合金12の融点より低融点のものをそれぞれ選択する。
【0043】
加えて、多層積層型ろう材14を形成する複数のろう材層を構成する混合金属材料は、内側ろう材層14aから外側ろう材層14bにかけて順に融点が高くなるようなものを選択する。すなわち、2層積層型ろう材14Xにおいては、内側ろう材層14aを構成する混合金属材料より外側ろう材層14bを構成する金属材料が高融点になるようなものを選択する。
【0044】
表1の多層積層型ろう材14(A)は、本発明に係る多層積層型ろう材の第1の実施形態を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
図1に示されたろう材層14Xを形成する内側ろう材層14aは、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された混合金属材料で構成される。内側ろう材層14aとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を18重量%とするAu−18重量%Ni混合粉末(粒径5μm〜100μm)を用いる。
【0047】
一方、外側ろう材層14bは、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された混合金属材料で構成される。外側ろう材層14bとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を15重量%とするAu−15重量%Ni混合粉末(粒径5μm〜100μm)を用いる。
【0048】
続いて、2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法について説明する。
【0049】
まず、図1に示された欠陥16としての溝状欠陥16aを含むコバルト基合金12の表面をアセトン、トリクレン等によって脱脂して洗浄する。この洗浄によって、コバルト基合金12と2層積層型ろう材14Xとの接触面や接触面近傍の酸化皮膜、油、その他汚れ等を除去できる。洗浄は、2層積層型ろう材14Xとコバルト基合金12とが十分なじむように行われ、コバルト基合金12のぬれ性を向上させる。
【0050】
また、洗浄は、ワイヤブラシ、サンドペーパ等を用いて行なう機械的な洗浄、あるいは、酸・アルカリ中和による化学的な洗浄でもよい。
【0051】
次いで、図1に示されたコバルト基合金12の表面であって、溝状欠陥16aを含む領域に波長約1μm、出力500W〜700W、移動速度毎分0.1m〜0.5mの条件にてレーザ光を照射して2層積層型ろう材14Xを被着させる。
【0052】
2層積層型ろう材14Xの被着プロセスにおいて、例えば、コバルト基合金12の溝状欠陥16aがコバルト基合金12の表面に対して垂直方向の場合、2層積層型ろう材14Xの粘度不足による充填不良が起きる場合がある。その場合、2層積層型ろう材14Xに適度な浸透性を付与するため、有機物バインダー(担持体)を添加してもよい。
【0053】
有機物バインダーは、例えば、C,H,Oから構成されるポリマー状化合物と溶剤とから構成される。C,H,Oから構成されるポリマー状化合物は、2層積層型ろう材14Xに与える化学的な影響が少ない。有機物バインダーを混練した2層積層型ろう材14Xは、粘度や固着性が向上され、溝状欠陥16aへの2層積層型ろう材14Xの浸透を良好にする。
【0054】
続いて、不活性ガス雰囲気または真空もしくは真空に近い減圧下にて、高周波誘導加熱、レーザ加熱、アーク放電等の加熱源を用いて、2層積層型ろう材14X付近を加熱する。2層積層型ろう材14X付近を加熱すると、2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとでは、融点の違いによる状態変化の差異が現れる。すなわち、2層積層型ろう材14Xを、2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとが溶融する温度、例えば、約960℃に加熱した場合、融点の低い内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末は、一部は混合粉末状(固相)のままであるが、大部分は液相(以下、「多液相Au−18重量%Ni」という。)に状態変化する。
【0055】
そして、多液相Au−18重量%Niは、生成された液相により粘性が少なく、溝状欠陥16aへの浸透性やぬれ性に優れる。浸透性やぬれ性に優れる多液相Au−18重量%Niはコバルト基合金12の溝状欠陥16aの壁面を表面張力によって伝って溝状欠陥16aの奥部まで浸透する。
【0056】
一方、融点の高い外側ろう材層14bを構成するAu−15重量%Ni混合粉末は、約960℃に加熱した場合、大部分は混合粉末状(固相)であるが、相対的に少量の液相(以下、「多固相Au−15重量%Ni」という。)に状態変化する。そして、多固相Au−15重量%Niは、浸透性に乏しい一方、凝固したときの硬度,肉盛り性が大きい。浸透性に乏しい多固相Au−15重量%Niはコバルト基合金12の溝状欠陥16aの入口部付近まで表面張力によって浸透する。
【0057】
加熱を停止して、2層積層型ろう材14Xの温度が冷却されると、まず、融点の高い多固相Au−15重量%Niが溝状欠陥16a入口部付近にて凝固する。溝状欠陥16aの入口部付近にろう材としてのAu−15重量%Ni合金(Au,Niの単体もしくは合金)がろう付される。
【0058】
さらに冷却が進むと、融点の低い多液相Au−18重量%Niが溝状欠陥16a奥部にて凝固し、溝状欠陥16aの奥部にろう材としてのAu−18重量%Ni合金(Au,Niの単体もしくは合金)がろう付される。
【0059】
図1に示された2層積層ろう材層14Xをそれぞれ構成するAu−18重量%Ni混合粉末とAu−15重量%Ni混合粉末との融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の差異を利用して溝状欠陥16aにろう付を行なった結果、溝状欠陥16aの奥部に浸透され、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末に相当する多液相Au−18重量%Niの浸透性は良好であった。
【0060】
また、溝状欠陥16aの入口部付近に形成され、外側ろう材層14bを構成するAu−15重量%Ni混合粉末に相当するAu−15重量%Ni合金は高硬度であり、ビッカース硬度で250〜350Hv以上が測定された。さらに、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−15重量%Ni合金は、プラントにおける弁座として十分な高さの肉盛り部を形成した。
【0061】
図1に示された多層積層型ろう材14として、表1に示された多層積層型ろう材14(A)に示す混合金属材料による2層積層型を採用して溝状欠陥16aにろう付を行なう。内側ろう材層14aに相当し、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な多液相Au−18重量%Niを溝状欠陥16aの奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、Au−18重量%Ni合金としてろう付できる。次いで、外側ろう材層14bに相当し、相対的に融点が高く硬度・肉盛り性に優れた多固相Au−15重量%Niを溝状欠陥16aの入口部付近に凝固させ、Au−15重量%Ni合金としてろう付できる。よって、肉盛り部を含む溝状欠陥16a全体を効果的に補修することができる。
【0062】
なお、基材11に直接に溝状欠陥16aが形成され、基材11に形成される溝状欠陥16aにろう付を行なった場合にも、コバルト基合金12に形成された溝状欠陥16aにろう付を行なった場合と同様のろう付結果が得られる。
【0063】
表1の多層積層型ろう材14(B)は、本発明に係る多層積層型ろう材の第2の実施形態を示す。
【0064】
図1に示された2層積層型ろう材14Xは、表1の多層積層型ろう材14(B)に示された混合金属材料で構成される。2層積層型ろう材14Xを形成し、外側ろう材層14bより低融点の内側ろう材層14aとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を18重量%とするAu−18重量%Ni混合粉末(粒径5μm〜100μm)を用いる。
【0065】
一方、2層積層型ろう材14Xを形成し、内側ろう材層14aよりより高融点の外側ろう材層14bとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を15重量%とするAu−15重量%Ni混合粉末を用いる。さらに、Au−15重量%Ni混合粉末に添加材料を添加する。
【0066】
ここで、Au−15重量%Ni混合粉末に添加される添加材料は、Au−15重量%Ni混合粉末の溶融の際に溶融され、凝固することによってAuまたはNiと合金化する。合金化された析出物は高硬度の合金を形成する。Au−15重量%Ni混合粉末に添加材料、例えば、Ti粉末を1〜40重量%添加して、Au−Ni−Ti混合粉末(粒径5μm〜100μm)を作製する。
【0067】
表1の多層積層型ろう材14(B)に示されたAu−18重量%Ni混合粉末と、Au−Ni−Ti混合粉末とによって構成される2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法は、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様により、溝状欠陥16aにろう付を行なう。
【0068】
図1に示された2層積層ろう材層14Xをそれぞれ構成するAu−18重量%Ni混合粉末とAu−Ni−Ti混合粉末との融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の差異を利用して溝状欠陥16aにろう付を行なった結果、溝状欠陥16aの奥部に浸透される多液相Au−18重量%Niの浸透性は良好であった。
【0069】
また、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti合金(Au,Ni,Tiの単体もしくはそれぞれの組合せによる合金)は高硬度であり、ビッカース硬度で250〜350Hv以上が測定された。さらに、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti合金は、プラントにおける弁座として十分な高さの肉盛り部を形成した。
【0070】
図1に示された多層積層型ろう材14として、多層積層型ろう材14(B)に示す混合金属材料による2層積層型を採用して溝状欠陥16aにろう付を行なう。内側ろう材層14aに相当し、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な多液相Au−18重量%Niを溝状欠陥16aの奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、Au−18重量%Ni合金としてろう付できる。次いで、外側ろう材層14bに相当し、相対的に融点が高く硬度・肉盛り性に優れた多固相Au−Ni−Tiを溝状欠陥16aの入口部付近に凝固させ、Au−Ni−Ti合金としてろう付できる。よって、肉盛り部を含む溝状欠陥16a全体を効果的に補修することができる。
【0071】
なお、添加材料として、表1の多層積層型ろう材14(B)に示された添加材料を用いたが、特に、表1に示された添加材料に限らない。例えば、2層積層型ろう材14Xを構成する混合金属材料の主成分材料としてAuを用いた場合、添加材料として、Ti以外に1〜40重量%の含有量のAl,Cr,Zr等をそれぞれ用いることができる。
【0072】
また、外側ろう材層14bを構成するAu−15重量%Ni混合粉末に添加材料であるTi粉末を添加したが、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末に所要の量を添加してもよい。その場合、内側ろう材層14aを構成するAu−Ni−Ti混合粉末の生成する液相が所要の浸透性をもち、凝固したときに所要の硬度をもつように添加量が設計される。
【0073】
表1の多層積層型ろう材14(C)は、本発明に係る多層積層型ろう材の第3の実施形態を示す。
【0074】
図1に示された2層積層型ろう材14Xは、表1の多層積層型ろう材14(C)に示された混合金属材料で構成される。2層積層型ろう材14Xを形成し、外側ろう材層14bより低融点の内側ろう材層14aとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を18重量%とするAu−18重量%Ni混合粉末(粒径5μm〜100μm)を用いる。
【0075】
一方、2層積層型ろう材14Xを形成し、内側ろう材層14aより高融点の外側ろう材層14bとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を15重量%とするAu−15重量%Ni混合粉末を用いる。さらに、Au−15重量%Ni混合粉末に添加材料であるTiを添加してAu−Ni−Ti混合粉末とし、Au−Ni−Ti混合粉末に、融点が極端に大きく、加熱(約960℃)では溶融しない硬質材料を添加する。
【0076】
ここで、加熱によって溶融されるAu−Ni−Ti混合粉末は、大部分は混合粉末状(固相)であるが、相対的に少量の液相に状態変化する。大部分の固相は高硬度を有するが、液相は、凝固後に低硬度を有するので、液相部分が欠陥全体の硬度を低下させる。よって、液相部分に混入させ、凝固後の液相部分を硬化させる目的で硬質材料を添加する。
【0077】
Au−Ni−Ti混合粉末に添加される硬質材料として、粒径が1μmより小さいオーダーが小さい場合、硬質材料の粉末同士の距離が小さく、ろう付した際にほぼ均質した合金層を得ることができる。しかし、粒径が所要より小さい硬質材料を使用すると、硬質材料と混合金属材料とが化学反応し、硬質材料の硬度低下や、混合金属材料の溝状欠陥16aへの浸透性の低下等の不具合を生じる場合がある。硬質材料の粉末の粒径が1μmより小さいと2層積層型ろう材14Xの肉盛り性が低下する。
【0078】
また、硬質材料の粉末の粒径が数百μmよりも大きいオーダーの場合、硬質材料の粉末の粒子間の距離が大きくなり、ろう付した際の硬度の均質性が損なわれる。硬質材料の粉末の粒径としては、1μm〜数百μmが好適であることが分かっている。
【0079】
また、Au−Ni−Ti混合粉末に対する硬質材料の添加割合は、1体積%〜40体積%が好適であることが分かっている。さらに、硬質材料の含有量が5体積%〜30体積%であると、2層積層型ろう材14Xの肉盛り性が良好となり、硬度が特に向上する。
【0080】
なお、硬質材料の含有量が1体積%より少ない場合、2層積層型ろう材14Xの硬度および肉盛り性に乏しい。一方、硬質材料の含有量が40体積%を超えると、2層積層型ろう材14Xの浸透性が低下する。
【0081】
すなわち、Au−Ni−Ti混合粉末に、粒径5μm〜100μmの硬質材料、例えば、コバルト基合金の基合金粉末を添加する。コバルト基合金粉末の添加量は、Au−Ni−Ti混合粉末に対して含有量が5〜30体積%になるように実施して、Au−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末(粒径5μm〜100μm)を作製する。
【0082】
表1の多層積層型ろう材14(C)に示されたAu−18重量%Ni混合粉末と、Au−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末とによって構成される2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法は、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様により、溝状欠陥16aにろう付を行なう。
【0083】
図1に示された2層積層ろう材層14Xをそれぞれ構成するAu−18重量%Ni混合粉末とAu−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末との融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の差異を利用して溝状欠陥16aにろう付を行なった結果、溝状欠陥16aの奥部に浸透される多液相Au−18重量%Niの浸透性は良好であった。
【0084】
また、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti/コバルト基合金の合金(Au,Ni,Tiの単体もしくはそれぞれの組合せによる合金およびコバルト基合金)は高硬度であり、ビッカース硬度で250〜350Hv以上が測定された。さらに、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti/コバルト基合金の合金は、プラントにおける弁座として十分な高さの肉盛り部を形成した。
【0085】
図1に示された2層積層型ろう材14Xとして、多層積層型ろう材14(C)に示された混合金属材料による2層積層型を採用して溝状欠陥16aにろう付を行なう。内側ろう材層14aに相当し、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な多液相Au−18重量%Niを溝状欠陥16aの奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、Au−18重量%Ni合金としてろう付できる。次いで、外側ろう材層14bに相当し、相対的に融点が高く硬度・肉盛り性に優れた多固相Au−Ni−Ti/コバルト基合金を溝状欠陥16aの入口部付近に凝固させ、Au−Ni−Ti/コバルト基合金の合金としてろう付できる。よって、肉盛り部を含む溝状欠陥16a全体を効果的に補修することができる。
【0086】
なお、硬質材料として、表1に示された硬質材料を用いたが、特に、表1に示された硬質材料に限らない。例えば、硬質材料として、コバルト基合金以外に1〜40体積%の含有量のニッケル基合金,耐火金属,炭化物,ホウ化物,窒化物等をそれぞれ用いることができる。
【0087】
また、外側ろう材層14bを構成するAu−Ni−Ti混合粉末に硬質材料であるコバルト基合金粉末を添加したが、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末に所要の量を添加してもよい。その場合、内側ろう材層14aを構成するAu−Ni/コバルト基合金混合粉末の生成する液相が所要の浸透性をもち、凝固したときに所要の硬度をもつように添加量が設計される。
【0088】
表1の多層積層型ろう材14(D)は、本発明に係る多層積層型ろう材の第4の実施形態を示す。
【0089】
図1に示された多層積層型ろう材14は、表1の多層積層型ろう材14(D)に示された混合金属材料で構成される。2層積層型ろう材14Xを形成し、外側ろう材層より低融点の内側ろう材層14aとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を18重量%とするAu−18重量%Ni混合粉末を用いる。
【0090】
ここで、補修しようとする溝状欠陥16aが深く、細い形状を有する場合、2層積層型ろう材14Xが溝状欠陥16aの細部に浸透せず、良好な補修が為されない場合がある。2層積層型ろう材14Xに浸透性促進材料を添加することにより、溝状欠陥16aへのAu−18重量%Ni混合粉末の浸透性を促進させる。
【0091】
Au−18重量%Ni混合粉末に対する浸透性促進材料の添加量は、0.01重量%〜20重量%が好適であることが分かっている。Au−18重量%Ni混合粉末に対して添加量が0.01重量%より小さいと、浸透性を向上する効果が小さく、また、添加量が20重量%より大きい場合、補修用材料の機械的強度に影響を及ぼす等の不具合がある。
【0092】
すなわち、Au−18重量%Ni混合粉末に浸透性促進材料、例えば、Ag粉末を添加する。Ag粉末の添加量は、Au−18重量%Ni混合粉末に対して0.01重量%〜20重量%になるように実施して、Au−Ni−Ag混合粉末(粒径5μm〜100μm)を作製する。
【0093】
一方、2層積層型ろう材14Xを形成し、内側ろう材層14aより高融点の外側ろう材層14bとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を採用する。また、副成分材料であるNi粉末を15重量%とするAu−15重量%Ni混合粉末を用いる。さらに、Au−15重量%Ni混合粉末に添加材料であるTi、硬質材料であるコバルト基合金粉末を添加して、Au−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末(粒径5μm〜100μm)を作製する。
【0094】
表1の多層積層型ろう材14(D)に示されたAu−Ni−Ag混合粉末と、Au−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末とによって構成される2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法は、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様により、溝状欠陥16aにろう付を行なう。
【0095】
図1に示された2層積層ろう材層14Xをそれぞれ構成するAu−Ni−Ag混合粉末とAu−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末との融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の差異を利用して溝状欠陥16aにろう付を行なった結果、溝状欠陥16aの奥部に浸透される多液相Au−Ni−Agの浸透性は、浸透性促進材料であるAgが付加されない多液相Au−18%Niより良好であった。
【0096】
また、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti/コバルト基合金の合金(Au,Ni,Tiの単体もしくはそれぞれの組合せによる合金およびコバルト基合金)は高硬度であり、ビッカース硬度で250〜350Hv以上が測定された。さらに、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti/コバルト基合金の合金は、プラントにおける弁座として十分な高さの肉盛り部を形成した。
【0097】
図1に示された多層積層型ろう材14として、多層積層型ろう材14(D)に示された混合金属材料による2層積層型を採用して溝状欠陥16aにろう付を行なう。内側ろう材層14aに相当し、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な多液相Au−Ni−Agを溝状欠陥16aの奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、Au−Ni−Ag合金としてろう付できる。次いで、外側ろう材層14bに相当し、相対的に融点が高く硬度・肉盛り性に優れた多固相Au−Ni−Ti/コバルト基合金を溝状欠陥16aの入口部付近に凝固させ、Au−Ni−Ti/コバルト基合金の合金としてろう付できる。よって、肉盛り部を含む溝状欠陥16a全体を効果的に補修することができる。
【0098】
なお、浸透性促進材料として、表1に示された浸透性促進材料を用いたが、特に、表1に示された浸透性促進材料に限らない。例えば、浸透性促進材料として、Ag以外に0.01〜20重量%の含有量のLi等を用いることができる。
【0099】
また、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末に浸透促進材料であるAg粉末を添加したが、外側ろう材層14bを構成するAu−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末に所要の量を添加してもよい。その場合、外側ろう材層14bを構成するAu−Ni−Ti−Ag/コバルト基合金混合粉末の生成する液相が所要の浸透性をもち、凝固したときに所要の硬度をもつように添加量が設計される。
【0100】
図2は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第1変形例を示す概略図である。
【0101】
図2に示された2層積層型ろう材14Xは、図1に示された2層積層型ろう材14Xの変形例を示すもので、2層積層型ろう材14Xを形成する外側ろう材層14bが、内側ろう材層14a全体を被覆するように設置される。なお、図2において、図1と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0102】
2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bには、表1に示された多層積層型ろう材14(A)の混合金属材料がそれぞれ適用される。すなわち、内側ろう材層14aはAu−18重量%Ni混合粉末、外側ろう材層14bはAu−15重量%Ni混合粉末によって構成される。
【0103】
図2に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法では、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作が行なわれる。図2に示された2層積層型ろう材14Xによって溝状欠陥16aにろう付を行なうと、溝状欠陥16aの奥部にはAu−18重量%Ni合金が、入口部付近にはAu−15重量%Ni合金がそれぞれろう付される。
【0104】
図2に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法によると、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0105】
また、図2に示された2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用して、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作を行なわせる。図2に示された内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用してろう付を行なうと、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0106】
図3は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第2変形例を示す概略図である。
【0107】
図3に示された2層積層型ろう材14Xは、図1に示された2層積層型ろう材14Xの変形例を示すもので、図1に示されたコバルト基合金12の表面に形成される溝状欠陥16aを含む領域にろう溜り部18が形成される。コバルト基合金12の表面の溝状欠陥16aの深さ、あるいは幅が比較的大きく、2層積層型ろう材14Xの成分を多く溝状欠陥16aに浸透させるときに有効である。なお、図3において、図1と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0108】
2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bには、表1に示された多層積層型ろう材14(A)の混合金属材料がそれぞれ適用される。すなわち、内側ろう材層14aはAu−18重量%Ni混合粉末、外側ろう材層14bはAu−15重量%Ni混合粉末によって構成される。
【0109】
図3に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法では、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作が行なわれる。図3に示された2層積層型ろう材14Xによって溝状欠陥16aにろう付を行なうと、溝状欠陥16aの奥部にはAu−18重量%Ni合金が、入口部付近にはAu−15重量%Ni合金がそれぞれろう付される。
【0110】
図3に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法によると、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0111】
また、図3に示された2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用して、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作を行なわせる。図3に示された内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用してろう付を行なうと、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0112】
図4は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第3変形例を示す斜視図である。
【0113】
図4は、基材11と、基材11の表面に被着された耐摩耗部材としてのコバルト基合金12とが備えられる。コバルト基合金12はコバルト基合金12の断面が台形形状を有するように被着される。コバルト基合金12の多層積層型ろう材14被着面側は、15mm×15mmの面を有する。基材11およびコバルト基合金12は、火力,原子力等の発電プラントを構成する弁の弁座表面を模擬したものである。
【0114】
コバルト基合金12の表面には、欠陥16である幅0.1mm、深さ1mmの亀裂状欠陥16bを設けられ、コバルト基合金12の表面であって、亀裂状欠陥16bを含むすべての領域には、レーザ光を照射して被着させた多層積層型ろう材14を備える。すなわち、コバルト基合金12の斜面であって、亀裂状欠陥16bを含む領域に、斜面に沿って多層積層型ろう材14を密着させる。なお、図4において、図1と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0115】
2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bには、表1に示された多層積層型ろう材14(A)の混合金属材料がそれぞれ適用される。
【0116】
図4に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法では、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作が行なわれる。図4に示された2層積層型ろう材14Xによって亀裂状欠陥16bにろう付を行なうと、亀裂状欠陥16bの奥部にはAu−18重量%Ni合金が、入口部付近にはAu−15重量%Ni合金がそれぞれろう付される。
【0117】
図4に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法によると、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0118】
また、2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用して、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作を行なわせる。図4に示された内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用してろう付を行なうと、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0119】
図5は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第4変形例を示す概略図である。
【0120】
図5に示された3層積層型ろう材14Yは、図1に示された2層積層型ろう材14Xの変形例を示すもので、多層積層型ろう材14としての3層積層型ろう材14Yを示す。この3層積層型ろう材14Yは、3層のろう材層の最内側であって溝状欠陥16aを含む領域に被着される内側ろう材層14aと、3層のろう材層の中間であって内側ろう材層14aに被着される中間ろう材層14cと、3層のろう材層の最外側であって中間ろう材層14cに被着される外側ろう材層14bとによって構成される。
【0121】
図5ではコバルト基合金12の表面であって、コバルト基合金12に形成された溝状欠陥16aを含む領域に被着させた3層積層型ろう材14Yを示したが、特に3層積層構造に限定するものではなく、4層以上の積層構造でもよい。なお、図5において、図1と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0122】
3層積層型ろう材14Yを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bには、表1に示された多層積層型ろう材14(A)の混合金属材料がそれぞれ適用される。
【0123】
3層積層型ろう材14Yを形成する中間ろう材層14cには、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末より高融点であり、かつ、外側ろう材層14bを構成するAu−15重量%Ni混合粉末より低融点である混合金属材料を選択する。なお、多層積層型ろう材14が、4層以上の積層構造にて構成されるときは、内側ろう材層14aから外側ろう材層14bにかけて融点が順に高くなるような混合金属材料をそれぞれ選択する。
【0124】
図5に示された3層積層型ろう材14Yのろう付補修方法では、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作が行なわれる。図5に示された3層積層型ろう材14Yによって溝状欠陥16aにろう付を行なうと、溝状欠陥16aの奥部にはAu−18重量%Ni合金が、入口部付近にはAu−15重量%Ni合金がそれぞれろう付される。
【0125】
図5に示された3層積層型ろう材14Yのろう付補修方法によると、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0126】
また、3層積層型ろう材14Yを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用してもよい。
【0127】
なお、図1〜5に示された多層積層型ろう材14を形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(A)〜(D)を用いたが、表1に示された多層積層型ろう材14(A)〜(D)に限定されるものではない。図1〜5に示された多層積層型ろう材14を形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、例えば、純金属材料、または、表2に示された多層積層型ろう材14を構成する混合金属材料(合金,粒状,粉末状等)を用いてもよい。ここで、純金属材料とは、一般的に析出できない不純物を含む金属材料であり、純度100%を必要とするものではない。
【0128】
【表2】
【0129】
表2によると、図1〜5に示された多層積層型ろう材14を形成し、内側ろう材層14a,外側ろう材層14bを構成する混合金属材料として、主成分材料にAuを用いる。副成分材料として、Ni以外に1〜40重量%の含有量のCu,Co,Fe,Ge,Si等をそれぞれ用いることができる。また、混合金属材料の主成分材料にAgを用いると、副成分材料として、Cu等を用いることができる。さらに、混合金属材料の主成分材料としてCuを用いると、副成分材料として、Mn,P等をそれぞれ用いることができる。加えて、混合金属材料の主成分材料としてNiを用いると、副成分材料として、Bi,C,P,Si等をそれぞれ用いることができる。
【0130】
【発明の効果】
本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法によれば、融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の性質を異にする複数のろう材層のうち、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な純金属材料または混合金属材料を欠陥の奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、相対的に融点が高く硬度の大きい純金属材料または混合金属材料を欠陥の入口部付近にて凝固させることができ、肉盛り部を含む欠陥全体を効果的に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材を示す概略図。
【図2】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第1変形例を示す概略図。
【図3】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第2変形例を示す概略図。
【図4】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第3変形例を示す斜視図。
【図5】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第4変形例を示す概略図。
【図6】従来のろう材およびろう付補修方法を示すもので、欠陥を補修するろう材を示す概略図。
【符号の説明】
11 基材
12 コバルト基合金
14 多層積層型ろう材
14X 2層積層型ろう材
14Y 3層積層型ろう材
14a 内側ろう材層
14b 外側ろう材層
16 欠陥
【発明の属する技術分野】
本発明は、弁の摩耗や欠陥に効果的な補修を施工し、弁を高品質に維持させる多層積層型ろう材およびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属材料により製造される基材において、特に圧力負荷の高い部分や、硬度(耐摩耗性)を必要とされる部分には、機械的性質の向上のため高硬度の材質を有する金属材料を耐摩耗部材として肉盛り施工される場合がある。
【0003】
火力,原子力等の発電プラントを構成する弁の弁座表面を肉盛り施工させると、閉弁の際、弁体と弁座表面の肉盛り施工部とが水密的に当接されるので、弁のシール効果を向上させる。ただし、弁の長期使用の結果、基材に肉盛り施工された耐摩耗部材には摩耗や欠陥(溝)等が形成され、弁体と弁座とのシール性が劣化する。
【0004】
耐摩耗部材に形成される摩耗や欠陥の補修方法として、耐摩耗部材を構成する金属材料と同質の金属材料を用いて耐摩耗部材の摩耗や欠陥に溶接補修施工を行なうものがある。この方法では、弁体と弁座とのシール性を再び維持させることができる。
【0005】
しかし、耐摩耗部材を構成する金属材料と同質の金属材料を用いて溶接補修施工を実施すると、加熱によって溶接用の金属材料の溶融を行なうため、溶接用の金属材料だけでなく、耐摩耗部材を構成する金属材料自体が部分的に溶融する。そして、耐摩耗部材の溶融部分と非溶融部分との境界面に発生する残留応力が要因になって、欠陥近傍に再度、摩耗や欠陥が発生する。よって、弁の補修効率が悪く、長期間シール効果を維持できない。
【0006】
また、耐摩耗部材に形成される欠陥の補修方法として、肉盛り施工部分を全面補修することも行われる。全面補修では、残留応力は局部的に残らないが、一旦肉盛り施工部分を機械加工により除去した後、再び肉盛り施工をする必要がある。よって、限られた作業空間内での補修作業に困難性を有し、労力的、時間的な問題がある。
【0007】
そこで、耐摩耗部材に形成される欠陥の補修方法として、溶接補修施工に代わり、耐摩耗部材を構成する金属材料より融点の低い金属材料を肉盛り施工部の欠陥にろう付させる補修方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
耐摩耗部材を構成する金属材料より融点の低い金属材料を欠陥にろう付させる補修方法にて、耐摩耗部材の表面を覆い、ぬれ性の低下原因である酸化皮膜を除去するために、還元ガス・フラックスを使用する。しかし、大気中で肉盛り施工するため、フラックスの残渣や、還元ガス・フラックスが酸化皮膜と反応した結果生成される反応生成物(金属塩)が、肉盛り部に堆積する等の不具合を十分に避けることができず、補修部の品質が劣化してしまう。
【0009】
そこで、肉盛り施工の際、補修部を真空あるいは不活性ガス雰囲気にて行ない、酸化皮膜の蒸発・熱解離を促進させ、不具合を防止する加熱方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
図6は、従来のろう材およびろう付補修方法であって、欠陥を補修するろう材を示す概略図である。
【0011】
図6(a)は、Cr−Mo鋼の基材1と、基材1にプラズマアーク溶接によって肉盛り施工して被着させた耐摩耗部材2とを示す。そして、耐摩耗部材2には、長期間の使用により、所要の深さをもつ複数の欠陥3が発生して成長する。
【0012】
図6(b)に示されたように、欠陥3を備えた耐摩耗部材2の表面であって、欠陥3を含む領域にろう材4を被着させる。このろう材4の材料として、耐摩耗部材2より融点が低く、主成分材料をAu、副成分材料をCuとする混合金属材料(合金,粒状,粉末状等)を用いる。
【0013】
さらに、不活性ガス雰囲気中または真空中において、図6(c)に示されたように、ろう材4を所要の温度に加熱してろう材4を溶融させ、溶融されたろう材4を欠陥3の内部に浸透させる。ろう材4の加熱方法としては、欠陥3を局部的に加熱する方法が望ましく、加熱方法として、高周波誘導加熱・高エネルギビームを照射する方法等が挙げられる。
【0014】
そして、所要時間加熱後、加熱を停止してろう材4を冷却し、ろう材4の温度が融点以下になると、欠陥3の内部に浸透したろう材4が凝固される。
【0015】
【特許文献1】
特開平11−123617号公報(第4頁、図1−図5)
【0016】
【特許文献2】
特開2003−1402号公報(第3頁−第5頁、図1,2)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
図6に示された従来の耐摩耗部材2の補修手順によると、耐摩耗部材2に被着されたろう材4を高周波誘導加熱・高エネルギビームを照射することによって加熱する。耐摩耗部材2の欠陥3にろう材4を浸透させるためには、欠陥3の最奥部までろう材4の融点以上に加熱してろう材4の浸透性を向上させる必要がある。しかし、ろう材4の表面を加熱すると、ろう材4の表面から欠陥3の最奥部までゆっくりと熱伝導されるため、欠陥3の最奥部が十分に加熱されるまで長時間を要する。
【0018】
溶融されたときの浸透性の高い金属材料にて基材または耐摩耗部材に形成された欠陥を補修しようとすると、溶融された金属材料が欠陥にて凝固されたときの硬度、肉盛り性に乏しい。
【0019】
一方、発電プラントを構成する弁の弁座表面の基材または耐摩耗部材は、長期使用に耐えうる硬度(耐摩耗性)を必要とする。すなわち、弁を長期間使用した結果、基材または耐摩耗部材には摩耗や欠陥が発生する。よって、基材または耐摩耗部材に形成された欠陥を高硬度を有する金属材料にて補修しようとすると、溶融された金属材料の浸透性が乏しく、溶融された金属材料が十分に欠陥に浸透されず、欠陥不良が十分に解消されない恐れがある。
【0020】
弁の弁座表面の基材または耐摩耗部材に形成される欠陥を補修する金属材料としては、溶融されたときの浸透性と、溶融後に凝固されたときの硬度とが共に優れたものを選択する必要がある。しかし、現実には、補修後の弁座の長期使用を可能にする程度の浸透性と硬度とを共に満足する金属材料は存在しない。
【0021】
本発明は、上述したような事情を考慮してなされたものであり、融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の性質を異にする複数のろう材層によって、肉盛り部を含む欠陥全体を効果的に補修することができる多層積層型ろう材およびろう付補修方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る多層積層型ろう材は、上述した課題を解決するために請求項1に記載したように、基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面に発生した欠陥を補修するために、前記基材または耐摩耗部材より融点が低く、かつ、前記基材または耐摩耗部材の表面に被着されるろう材において、前記ろう材は、複数のろう材層からなる多層積層構造を有し、前記ろう材は、前記基材または耐摩耗部材の表面の欠陥を含む領域に直接被着される内側ろう材層と、前記内側ろう材層上に積層され、前記内側ろう材層の外側に設けられる外側ろう材層とを備えると共に、前記内側ろう材層から外側ろう材層にかけて融点が順に高くなるような純金属材料または混合金属材料にて構成されたことを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項2に記載したように、前記基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面が平面部を有さない場合、前記基材または耐摩耗部材の表面形状に沿って前記ろう材を配置させることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項3に記載したように、前記ろう材層を構成する材料として混合金属材料を採用し、前記混合金属材料の主成分材料として金を採用する場合、前記混合金属材料の副成分材料は、銅,コバルト,鉄,ゲルマニウム,ニッケルおよびケイ素の少なくとも一方から構成されたことを特徴とする。
【0025】
加えて、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項4に記載したように、前記混合金属材料の副成分材料の含有量が、1重量%〜40重量%であることを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項5に記載したように、前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融・凝固によって硬度の高い析出物を形成させる添加材料を含むことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項6に記載したように、前記ろう材層を構成する純金属材料、または、混合金属材料の主成分材料として金を採用する場合、前記添加材料は、アルミニウム,クロム,チタンおよびジルコニウムの少なくとも一方から構成されたことを特徴とする。
【0028】
加えて、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項7に記載したように、前記添加材料の含有量が、1重量%〜40重量%であることを特徴とする。
【0029】
さらに、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項8に記載したように、前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融・凝固によって状態変化しない硬質材料を含むことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項9に記載したように、前記硬質材料は、コバルト基合金,ニッケル基合金,耐火金属,炭化物,ホウ化物および窒化物の少なくとも一方から構成されたことを特徴とする。
【0031】
加えて、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項10に記載したように、前記硬質材料の含有量が、1体積%〜40体積%であることを特徴とする。
【0032】
さらに、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項11に記載したように、前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融時に純金属材料または混合金属材料を構成する液相の浸透を助長する浸透性促進材料を含むことを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項12に記載したように、前記浸透性促進材料は、銀およびリチウムの少なくとも一方から構成されたことを特徴とする。
【0034】
加えて、本発明に係る多層積層型ろう材は、請求項13に記載したように、前記浸透性促進材料の含有量が、0.01重量%〜20重量%であることを特徴とする。
【0035】
さらに、本発明に係るろう付補修方法は、請求項14に記載したように、基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面に欠陥が発生した際、前記基材または耐摩耗部材にろう材を被着させて、ろう材部分を局部的に不活性なガス雰囲気または真空中に維持させながら前記ろう材を前記欠陥に浸透させるろう付補修方法において、前記ろう材として、内側ろう材層の材料を前記基材または耐摩耗部材に被着し、前記内側ろう材層の材料より融点が高い材料からなる外側ろう材層を前記内側ろう材層の最外側に多層積層構造を形成するように被着させる工程と、前記ろう材を所要の温度に加熱して、融点の低い材料からなる内側ろう材層にて外側ろう材層より多くの液相を生成させる工程と、前記基材または耐摩耗部材表面に形成される欠陥の奥部に、多くの液相を有する内側ろう材層の材料を優先的に溶融・浸透させる一方、前記欠陥の入口部付近に、多くの固相を有する外側ろう材層の材料を溶融・浸透させる工程とを有することを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材を示す概略図である。
【0038】
図1は、基材11と、この基材11の表面に被着された耐摩耗部材としてのコバルト基合金(0.25重量%C,2.5重量%Ni,27重量%Cr,1重量%Fe,5重量%Mo,1重量%W,残部Co)12とが備えられる。基材11およびコバルト基合金12は、火力,原子力等の発電プラントを構成する弁の弁座表面を模擬したものである。
【0039】
コバルト基合金12の表面には、欠陥16である幅0.1mm、深さ0.1〜2mmの溝状欠陥16aが設けられ、コバルト基合金12の表面であって、溝状欠陥16aを含む領域には、レーザ光を照射して被着させた多層積層型ろう材14を備える。
【0040】
ここで、多層積層型ろう材14は、複数のろう材層からなり、複数のろう材層の最内側であって溝状欠陥16aを含む領域に被着される内側ろう材層14aと、複数のろう材層の最外側に被着される外側ろう材層14bとによって多層積層型が形成される。多層積層型ろう材14、例えば、2層積層型ろう材14Xでは、溝状欠陥16aを含む領域に被着される内側ろう材層14aと、内側ろう材層14aに接するように被着される外側ろう材層14bとによって構成される。
【0041】
2層積層型ろう材14Xは、内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとの厚さを共に、例えば、0.3mmとして積層される。なお、内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとの厚さを共に0.3mmとしたが、この寸法に限定されるものではなく、また、内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとが異なった厚さ寸法でもよい。また、図1に示された2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとは、一つの平面を形成させて積層されているが、平面状に限定するものではなく、例えば、曲面等を形成させてもよい。
【0042】
図1に示された2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとは、それぞれ、主成分材料と副成分材料とからなる混合金属材料(合金,粒状,粉末状等)にて構成される。混合金属材料の選択方法としてはコバルト基合金12の融点より低融点のものをそれぞれ選択する。
【0043】
加えて、多層積層型ろう材14を形成する複数のろう材層を構成する混合金属材料は、内側ろう材層14aから外側ろう材層14bにかけて順に融点が高くなるようなものを選択する。すなわち、2層積層型ろう材14Xにおいては、内側ろう材層14aを構成する混合金属材料より外側ろう材層14bを構成する金属材料が高融点になるようなものを選択する。
【0044】
表1の多層積層型ろう材14(A)は、本発明に係る多層積層型ろう材の第1の実施形態を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
図1に示されたろう材層14Xを形成する内側ろう材層14aは、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された混合金属材料で構成される。内側ろう材層14aとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を18重量%とするAu−18重量%Ni混合粉末(粒径5μm〜100μm)を用いる。
【0047】
一方、外側ろう材層14bは、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された混合金属材料で構成される。外側ろう材層14bとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を15重量%とするAu−15重量%Ni混合粉末(粒径5μm〜100μm)を用いる。
【0048】
続いて、2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法について説明する。
【0049】
まず、図1に示された欠陥16としての溝状欠陥16aを含むコバルト基合金12の表面をアセトン、トリクレン等によって脱脂して洗浄する。この洗浄によって、コバルト基合金12と2層積層型ろう材14Xとの接触面や接触面近傍の酸化皮膜、油、その他汚れ等を除去できる。洗浄は、2層積層型ろう材14Xとコバルト基合金12とが十分なじむように行われ、コバルト基合金12のぬれ性を向上させる。
【0050】
また、洗浄は、ワイヤブラシ、サンドペーパ等を用いて行なう機械的な洗浄、あるいは、酸・アルカリ中和による化学的な洗浄でもよい。
【0051】
次いで、図1に示されたコバルト基合金12の表面であって、溝状欠陥16aを含む領域に波長約1μm、出力500W〜700W、移動速度毎分0.1m〜0.5mの条件にてレーザ光を照射して2層積層型ろう材14Xを被着させる。
【0052】
2層積層型ろう材14Xの被着プロセスにおいて、例えば、コバルト基合金12の溝状欠陥16aがコバルト基合金12の表面に対して垂直方向の場合、2層積層型ろう材14Xの粘度不足による充填不良が起きる場合がある。その場合、2層積層型ろう材14Xに適度な浸透性を付与するため、有機物バインダー(担持体)を添加してもよい。
【0053】
有機物バインダーは、例えば、C,H,Oから構成されるポリマー状化合物と溶剤とから構成される。C,H,Oから構成されるポリマー状化合物は、2層積層型ろう材14Xに与える化学的な影響が少ない。有機物バインダーを混練した2層積層型ろう材14Xは、粘度や固着性が向上され、溝状欠陥16aへの2層積層型ろう材14Xの浸透を良好にする。
【0054】
続いて、不活性ガス雰囲気または真空もしくは真空に近い減圧下にて、高周波誘導加熱、レーザ加熱、アーク放電等の加熱源を用いて、2層積層型ろう材14X付近を加熱する。2層積層型ろう材14X付近を加熱すると、2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとでは、融点の違いによる状態変化の差異が現れる。すなわち、2層積層型ろう材14Xを、2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14aと外側ろう材層14bとが溶融する温度、例えば、約960℃に加熱した場合、融点の低い内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末は、一部は混合粉末状(固相)のままであるが、大部分は液相(以下、「多液相Au−18重量%Ni」という。)に状態変化する。
【0055】
そして、多液相Au−18重量%Niは、生成された液相により粘性が少なく、溝状欠陥16aへの浸透性やぬれ性に優れる。浸透性やぬれ性に優れる多液相Au−18重量%Niはコバルト基合金12の溝状欠陥16aの壁面を表面張力によって伝って溝状欠陥16aの奥部まで浸透する。
【0056】
一方、融点の高い外側ろう材層14bを構成するAu−15重量%Ni混合粉末は、約960℃に加熱した場合、大部分は混合粉末状(固相)であるが、相対的に少量の液相(以下、「多固相Au−15重量%Ni」という。)に状態変化する。そして、多固相Au−15重量%Niは、浸透性に乏しい一方、凝固したときの硬度,肉盛り性が大きい。浸透性に乏しい多固相Au−15重量%Niはコバルト基合金12の溝状欠陥16aの入口部付近まで表面張力によって浸透する。
【0057】
加熱を停止して、2層積層型ろう材14Xの温度が冷却されると、まず、融点の高い多固相Au−15重量%Niが溝状欠陥16a入口部付近にて凝固する。溝状欠陥16aの入口部付近にろう材としてのAu−15重量%Ni合金(Au,Niの単体もしくは合金)がろう付される。
【0058】
さらに冷却が進むと、融点の低い多液相Au−18重量%Niが溝状欠陥16a奥部にて凝固し、溝状欠陥16aの奥部にろう材としてのAu−18重量%Ni合金(Au,Niの単体もしくは合金)がろう付される。
【0059】
図1に示された2層積層ろう材層14Xをそれぞれ構成するAu−18重量%Ni混合粉末とAu−15重量%Ni混合粉末との融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の差異を利用して溝状欠陥16aにろう付を行なった結果、溝状欠陥16aの奥部に浸透され、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末に相当する多液相Au−18重量%Niの浸透性は良好であった。
【0060】
また、溝状欠陥16aの入口部付近に形成され、外側ろう材層14bを構成するAu−15重量%Ni混合粉末に相当するAu−15重量%Ni合金は高硬度であり、ビッカース硬度で250〜350Hv以上が測定された。さらに、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−15重量%Ni合金は、プラントにおける弁座として十分な高さの肉盛り部を形成した。
【0061】
図1に示された多層積層型ろう材14として、表1に示された多層積層型ろう材14(A)に示す混合金属材料による2層積層型を採用して溝状欠陥16aにろう付を行なう。内側ろう材層14aに相当し、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な多液相Au−18重量%Niを溝状欠陥16aの奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、Au−18重量%Ni合金としてろう付できる。次いで、外側ろう材層14bに相当し、相対的に融点が高く硬度・肉盛り性に優れた多固相Au−15重量%Niを溝状欠陥16aの入口部付近に凝固させ、Au−15重量%Ni合金としてろう付できる。よって、肉盛り部を含む溝状欠陥16a全体を効果的に補修することができる。
【0062】
なお、基材11に直接に溝状欠陥16aが形成され、基材11に形成される溝状欠陥16aにろう付を行なった場合にも、コバルト基合金12に形成された溝状欠陥16aにろう付を行なった場合と同様のろう付結果が得られる。
【0063】
表1の多層積層型ろう材14(B)は、本発明に係る多層積層型ろう材の第2の実施形態を示す。
【0064】
図1に示された2層積層型ろう材14Xは、表1の多層積層型ろう材14(B)に示された混合金属材料で構成される。2層積層型ろう材14Xを形成し、外側ろう材層14bより低融点の内側ろう材層14aとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を18重量%とするAu−18重量%Ni混合粉末(粒径5μm〜100μm)を用いる。
【0065】
一方、2層積層型ろう材14Xを形成し、内側ろう材層14aよりより高融点の外側ろう材層14bとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を15重量%とするAu−15重量%Ni混合粉末を用いる。さらに、Au−15重量%Ni混合粉末に添加材料を添加する。
【0066】
ここで、Au−15重量%Ni混合粉末に添加される添加材料は、Au−15重量%Ni混合粉末の溶融の際に溶融され、凝固することによってAuまたはNiと合金化する。合金化された析出物は高硬度の合金を形成する。Au−15重量%Ni混合粉末に添加材料、例えば、Ti粉末を1〜40重量%添加して、Au−Ni−Ti混合粉末(粒径5μm〜100μm)を作製する。
【0067】
表1の多層積層型ろう材14(B)に示されたAu−18重量%Ni混合粉末と、Au−Ni−Ti混合粉末とによって構成される2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法は、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様により、溝状欠陥16aにろう付を行なう。
【0068】
図1に示された2層積層ろう材層14Xをそれぞれ構成するAu−18重量%Ni混合粉末とAu−Ni−Ti混合粉末との融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の差異を利用して溝状欠陥16aにろう付を行なった結果、溝状欠陥16aの奥部に浸透される多液相Au−18重量%Niの浸透性は良好であった。
【0069】
また、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti合金(Au,Ni,Tiの単体もしくはそれぞれの組合せによる合金)は高硬度であり、ビッカース硬度で250〜350Hv以上が測定された。さらに、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti合金は、プラントにおける弁座として十分な高さの肉盛り部を形成した。
【0070】
図1に示された多層積層型ろう材14として、多層積層型ろう材14(B)に示す混合金属材料による2層積層型を採用して溝状欠陥16aにろう付を行なう。内側ろう材層14aに相当し、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な多液相Au−18重量%Niを溝状欠陥16aの奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、Au−18重量%Ni合金としてろう付できる。次いで、外側ろう材層14bに相当し、相対的に融点が高く硬度・肉盛り性に優れた多固相Au−Ni−Tiを溝状欠陥16aの入口部付近に凝固させ、Au−Ni−Ti合金としてろう付できる。よって、肉盛り部を含む溝状欠陥16a全体を効果的に補修することができる。
【0071】
なお、添加材料として、表1の多層積層型ろう材14(B)に示された添加材料を用いたが、特に、表1に示された添加材料に限らない。例えば、2層積層型ろう材14Xを構成する混合金属材料の主成分材料としてAuを用いた場合、添加材料として、Ti以外に1〜40重量%の含有量のAl,Cr,Zr等をそれぞれ用いることができる。
【0072】
また、外側ろう材層14bを構成するAu−15重量%Ni混合粉末に添加材料であるTi粉末を添加したが、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末に所要の量を添加してもよい。その場合、内側ろう材層14aを構成するAu−Ni−Ti混合粉末の生成する液相が所要の浸透性をもち、凝固したときに所要の硬度をもつように添加量が設計される。
【0073】
表1の多層積層型ろう材14(C)は、本発明に係る多層積層型ろう材の第3の実施形態を示す。
【0074】
図1に示された2層積層型ろう材14Xは、表1の多層積層型ろう材14(C)に示された混合金属材料で構成される。2層積層型ろう材14Xを形成し、外側ろう材層14bより低融点の内側ろう材層14aとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を18重量%とするAu−18重量%Ni混合粉末(粒径5μm〜100μm)を用いる。
【0075】
一方、2層積層型ろう材14Xを形成し、内側ろう材層14aより高融点の外側ろう材層14bとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を15重量%とするAu−15重量%Ni混合粉末を用いる。さらに、Au−15重量%Ni混合粉末に添加材料であるTiを添加してAu−Ni−Ti混合粉末とし、Au−Ni−Ti混合粉末に、融点が極端に大きく、加熱(約960℃)では溶融しない硬質材料を添加する。
【0076】
ここで、加熱によって溶融されるAu−Ni−Ti混合粉末は、大部分は混合粉末状(固相)であるが、相対的に少量の液相に状態変化する。大部分の固相は高硬度を有するが、液相は、凝固後に低硬度を有するので、液相部分が欠陥全体の硬度を低下させる。よって、液相部分に混入させ、凝固後の液相部分を硬化させる目的で硬質材料を添加する。
【0077】
Au−Ni−Ti混合粉末に添加される硬質材料として、粒径が1μmより小さいオーダーが小さい場合、硬質材料の粉末同士の距離が小さく、ろう付した際にほぼ均質した合金層を得ることができる。しかし、粒径が所要より小さい硬質材料を使用すると、硬質材料と混合金属材料とが化学反応し、硬質材料の硬度低下や、混合金属材料の溝状欠陥16aへの浸透性の低下等の不具合を生じる場合がある。硬質材料の粉末の粒径が1μmより小さいと2層積層型ろう材14Xの肉盛り性が低下する。
【0078】
また、硬質材料の粉末の粒径が数百μmよりも大きいオーダーの場合、硬質材料の粉末の粒子間の距離が大きくなり、ろう付した際の硬度の均質性が損なわれる。硬質材料の粉末の粒径としては、1μm〜数百μmが好適であることが分かっている。
【0079】
また、Au−Ni−Ti混合粉末に対する硬質材料の添加割合は、1体積%〜40体積%が好適であることが分かっている。さらに、硬質材料の含有量が5体積%〜30体積%であると、2層積層型ろう材14Xの肉盛り性が良好となり、硬度が特に向上する。
【0080】
なお、硬質材料の含有量が1体積%より少ない場合、2層積層型ろう材14Xの硬度および肉盛り性に乏しい。一方、硬質材料の含有量が40体積%を超えると、2層積層型ろう材14Xの浸透性が低下する。
【0081】
すなわち、Au−Ni−Ti混合粉末に、粒径5μm〜100μmの硬質材料、例えば、コバルト基合金の基合金粉末を添加する。コバルト基合金粉末の添加量は、Au−Ni−Ti混合粉末に対して含有量が5〜30体積%になるように実施して、Au−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末(粒径5μm〜100μm)を作製する。
【0082】
表1の多層積層型ろう材14(C)に示されたAu−18重量%Ni混合粉末と、Au−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末とによって構成される2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法は、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様により、溝状欠陥16aにろう付を行なう。
【0083】
図1に示された2層積層ろう材層14Xをそれぞれ構成するAu−18重量%Ni混合粉末とAu−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末との融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の差異を利用して溝状欠陥16aにろう付を行なった結果、溝状欠陥16aの奥部に浸透される多液相Au−18重量%Niの浸透性は良好であった。
【0084】
また、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti/コバルト基合金の合金(Au,Ni,Tiの単体もしくはそれぞれの組合せによる合金およびコバルト基合金)は高硬度であり、ビッカース硬度で250〜350Hv以上が測定された。さらに、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti/コバルト基合金の合金は、プラントにおける弁座として十分な高さの肉盛り部を形成した。
【0085】
図1に示された2層積層型ろう材14Xとして、多層積層型ろう材14(C)に示された混合金属材料による2層積層型を採用して溝状欠陥16aにろう付を行なう。内側ろう材層14aに相当し、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な多液相Au−18重量%Niを溝状欠陥16aの奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、Au−18重量%Ni合金としてろう付できる。次いで、外側ろう材層14bに相当し、相対的に融点が高く硬度・肉盛り性に優れた多固相Au−Ni−Ti/コバルト基合金を溝状欠陥16aの入口部付近に凝固させ、Au−Ni−Ti/コバルト基合金の合金としてろう付できる。よって、肉盛り部を含む溝状欠陥16a全体を効果的に補修することができる。
【0086】
なお、硬質材料として、表1に示された硬質材料を用いたが、特に、表1に示された硬質材料に限らない。例えば、硬質材料として、コバルト基合金以外に1〜40体積%の含有量のニッケル基合金,耐火金属,炭化物,ホウ化物,窒化物等をそれぞれ用いることができる。
【0087】
また、外側ろう材層14bを構成するAu−Ni−Ti混合粉末に硬質材料であるコバルト基合金粉末を添加したが、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末に所要の量を添加してもよい。その場合、内側ろう材層14aを構成するAu−Ni/コバルト基合金混合粉末の生成する液相が所要の浸透性をもち、凝固したときに所要の硬度をもつように添加量が設計される。
【0088】
表1の多層積層型ろう材14(D)は、本発明に係る多層積層型ろう材の第4の実施形態を示す。
【0089】
図1に示された多層積層型ろう材14は、表1の多層積層型ろう材14(D)に示された混合金属材料で構成される。2層積層型ろう材14Xを形成し、外側ろう材層より低融点の内側ろう材層14aとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を選択する。また、副成分材料であるNi粉末の含有量を18重量%とするAu−18重量%Ni混合粉末を用いる。
【0090】
ここで、補修しようとする溝状欠陥16aが深く、細い形状を有する場合、2層積層型ろう材14Xが溝状欠陥16aの細部に浸透せず、良好な補修が為されない場合がある。2層積層型ろう材14Xに浸透性促進材料を添加することにより、溝状欠陥16aへのAu−18重量%Ni混合粉末の浸透性を促進させる。
【0091】
Au−18重量%Ni混合粉末に対する浸透性促進材料の添加量は、0.01重量%〜20重量%が好適であることが分かっている。Au−18重量%Ni混合粉末に対して添加量が0.01重量%より小さいと、浸透性を向上する効果が小さく、また、添加量が20重量%より大きい場合、補修用材料の機械的強度に影響を及ぼす等の不具合がある。
【0092】
すなわち、Au−18重量%Ni混合粉末に浸透性促進材料、例えば、Ag粉末を添加する。Ag粉末の添加量は、Au−18重量%Ni混合粉末に対して0.01重量%〜20重量%になるように実施して、Au−Ni−Ag混合粉末(粒径5μm〜100μm)を作製する。
【0093】
一方、2層積層型ろう材14Xを形成し、内側ろう材層14aより高融点の外側ろう材層14bとして、混合金属材料の主成分材料をAu粉末、副成分材料をNi粉末とするAu−Ni混合粉末を採用する。また、副成分材料であるNi粉末を15重量%とするAu−15重量%Ni混合粉末を用いる。さらに、Au−15重量%Ni混合粉末に添加材料であるTi、硬質材料であるコバルト基合金粉末を添加して、Au−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末(粒径5μm〜100μm)を作製する。
【0094】
表1の多層積層型ろう材14(D)に示されたAu−Ni−Ag混合粉末と、Au−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末とによって構成される2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法は、表1の多層積層型ろう材14(A)に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様により、溝状欠陥16aにろう付を行なう。
【0095】
図1に示された2層積層ろう材層14Xをそれぞれ構成するAu−Ni−Ag混合粉末とAu−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末との融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の差異を利用して溝状欠陥16aにろう付を行なった結果、溝状欠陥16aの奥部に浸透される多液相Au−Ni−Agの浸透性は、浸透性促進材料であるAgが付加されない多液相Au−18%Niより良好であった。
【0096】
また、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti/コバルト基合金の合金(Au,Ni,Tiの単体もしくはそれぞれの組合せによる合金およびコバルト基合金)は高硬度であり、ビッカース硬度で250〜350Hv以上が測定された。さらに、溝状欠陥16aの入口部付近に形成されるAu−Ni−Ti/コバルト基合金の合金は、プラントにおける弁座として十分な高さの肉盛り部を形成した。
【0097】
図1に示された多層積層型ろう材14として、多層積層型ろう材14(D)に示された混合金属材料による2層積層型を採用して溝状欠陥16aにろう付を行なう。内側ろう材層14aに相当し、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な多液相Au−Ni−Agを溝状欠陥16aの奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、Au−Ni−Ag合金としてろう付できる。次いで、外側ろう材層14bに相当し、相対的に融点が高く硬度・肉盛り性に優れた多固相Au−Ni−Ti/コバルト基合金を溝状欠陥16aの入口部付近に凝固させ、Au−Ni−Ti/コバルト基合金の合金としてろう付できる。よって、肉盛り部を含む溝状欠陥16a全体を効果的に補修することができる。
【0098】
なお、浸透性促進材料として、表1に示された浸透性促進材料を用いたが、特に、表1に示された浸透性促進材料に限らない。例えば、浸透性促進材料として、Ag以外に0.01〜20重量%の含有量のLi等を用いることができる。
【0099】
また、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末に浸透促進材料であるAg粉末を添加したが、外側ろう材層14bを構成するAu−Ni−Ti/コバルト基合金混合粉末に所要の量を添加してもよい。その場合、外側ろう材層14bを構成するAu−Ni−Ti−Ag/コバルト基合金混合粉末の生成する液相が所要の浸透性をもち、凝固したときに所要の硬度をもつように添加量が設計される。
【0100】
図2は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第1変形例を示す概略図である。
【0101】
図2に示された2層積層型ろう材14Xは、図1に示された2層積層型ろう材14Xの変形例を示すもので、2層積層型ろう材14Xを形成する外側ろう材層14bが、内側ろう材層14a全体を被覆するように設置される。なお、図2において、図1と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0102】
2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bには、表1に示された多層積層型ろう材14(A)の混合金属材料がそれぞれ適用される。すなわち、内側ろう材層14aはAu−18重量%Ni混合粉末、外側ろう材層14bはAu−15重量%Ni混合粉末によって構成される。
【0103】
図2に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法では、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作が行なわれる。図2に示された2層積層型ろう材14Xによって溝状欠陥16aにろう付を行なうと、溝状欠陥16aの奥部にはAu−18重量%Ni合金が、入口部付近にはAu−15重量%Ni合金がそれぞれろう付される。
【0104】
図2に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法によると、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0105】
また、図2に示された2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用して、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作を行なわせる。図2に示された内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用してろう付を行なうと、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0106】
図3は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第2変形例を示す概略図である。
【0107】
図3に示された2層積層型ろう材14Xは、図1に示された2層積層型ろう材14Xの変形例を示すもので、図1に示されたコバルト基合金12の表面に形成される溝状欠陥16aを含む領域にろう溜り部18が形成される。コバルト基合金12の表面の溝状欠陥16aの深さ、あるいは幅が比較的大きく、2層積層型ろう材14Xの成分を多く溝状欠陥16aに浸透させるときに有効である。なお、図3において、図1と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0108】
2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bには、表1に示された多層積層型ろう材14(A)の混合金属材料がそれぞれ適用される。すなわち、内側ろう材層14aはAu−18重量%Ni混合粉末、外側ろう材層14bはAu−15重量%Ni混合粉末によって構成される。
【0109】
図3に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法では、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作が行なわれる。図3に示された2層積層型ろう材14Xによって溝状欠陥16aにろう付を行なうと、溝状欠陥16aの奥部にはAu−18重量%Ni合金が、入口部付近にはAu−15重量%Ni合金がそれぞれろう付される。
【0110】
図3に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法によると、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0111】
また、図3に示された2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用して、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作を行なわせる。図3に示された内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用してろう付を行なうと、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0112】
図4は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第3変形例を示す斜視図である。
【0113】
図4は、基材11と、基材11の表面に被着された耐摩耗部材としてのコバルト基合金12とが備えられる。コバルト基合金12はコバルト基合金12の断面が台形形状を有するように被着される。コバルト基合金12の多層積層型ろう材14被着面側は、15mm×15mmの面を有する。基材11およびコバルト基合金12は、火力,原子力等の発電プラントを構成する弁の弁座表面を模擬したものである。
【0114】
コバルト基合金12の表面には、欠陥16である幅0.1mm、深さ1mmの亀裂状欠陥16bを設けられ、コバルト基合金12の表面であって、亀裂状欠陥16bを含むすべての領域には、レーザ光を照射して被着させた多層積層型ろう材14を備える。すなわち、コバルト基合金12の斜面であって、亀裂状欠陥16bを含む領域に、斜面に沿って多層積層型ろう材14を密着させる。なお、図4において、図1と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0115】
2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bには、表1に示された多層積層型ろう材14(A)の混合金属材料がそれぞれ適用される。
【0116】
図4に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法では、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作が行なわれる。図4に示された2層積層型ろう材14Xによって亀裂状欠陥16bにろう付を行なうと、亀裂状欠陥16bの奥部にはAu−18重量%Ni合金が、入口部付近にはAu−15重量%Ni合金がそれぞれろう付される。
【0117】
図4に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法によると、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0118】
また、2層積層型ろう材14Xを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用して、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作を行なわせる。図4に示された内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用してろう付を行なうと、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0119】
図5は、本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第4変形例を示す概略図である。
【0120】
図5に示された3層積層型ろう材14Yは、図1に示された2層積層型ろう材14Xの変形例を示すもので、多層積層型ろう材14としての3層積層型ろう材14Yを示す。この3層積層型ろう材14Yは、3層のろう材層の最内側であって溝状欠陥16aを含む領域に被着される内側ろう材層14aと、3層のろう材層の中間であって内側ろう材層14aに被着される中間ろう材層14cと、3層のろう材層の最外側であって中間ろう材層14cに被着される外側ろう材層14bとによって構成される。
【0121】
図5ではコバルト基合金12の表面であって、コバルト基合金12に形成された溝状欠陥16aを含む領域に被着させた3層積層型ろう材14Yを示したが、特に3層積層構造に限定するものではなく、4層以上の積層構造でもよい。なお、図5において、図1と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0122】
3層積層型ろう材14Yを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bには、表1に示された多層積層型ろう材14(A)の混合金属材料がそれぞれ適用される。
【0123】
3層積層型ろう材14Yを形成する中間ろう材層14cには、内側ろう材層14aを構成するAu−18重量%Ni混合粉末より高融点であり、かつ、外側ろう材層14bを構成するAu−15重量%Ni混合粉末より低融点である混合金属材料を選択する。なお、多層積層型ろう材14が、4層以上の積層構造にて構成されるときは、内側ろう材層14aから外側ろう材層14bにかけて融点が順に高くなるような混合金属材料をそれぞれ選択する。
【0124】
図5に示された3層積層型ろう材14Yのろう付補修方法では、図1に示された2層積層型ろう材14Xのろう付補修方法と同様の動作が行なわれる。図5に示された3層積層型ろう材14Yによって溝状欠陥16aにろう付を行なうと、溝状欠陥16aの奥部にはAu−18重量%Ni合金が、入口部付近にはAu−15重量%Ni合金がそれぞれろう付される。
【0125】
図5に示された3層積層型ろう材14Yのろう付補修方法によると、図1に示されたろう付結果と類似し、浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性に優れたろう付結果が得られる。
【0126】
また、3層積層型ろう材14Yを形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(B)〜(D)の混合金属材料を適用してもよい。
【0127】
なお、図1〜5に示された多層積層型ろう材14を形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、表1に示された多層積層型ろう材14(A)〜(D)を用いたが、表1に示された多層積層型ろう材14(A)〜(D)に限定されるものではない。図1〜5に示された多層積層型ろう材14を形成する内側ろう材層14a,外側ろう材層14bとして、例えば、純金属材料、または、表2に示された多層積層型ろう材14を構成する混合金属材料(合金,粒状,粉末状等)を用いてもよい。ここで、純金属材料とは、一般的に析出できない不純物を含む金属材料であり、純度100%を必要とするものではない。
【0128】
【表2】
【0129】
表2によると、図1〜5に示された多層積層型ろう材14を形成し、内側ろう材層14a,外側ろう材層14bを構成する混合金属材料として、主成分材料にAuを用いる。副成分材料として、Ni以外に1〜40重量%の含有量のCu,Co,Fe,Ge,Si等をそれぞれ用いることができる。また、混合金属材料の主成分材料にAgを用いると、副成分材料として、Cu等を用いることができる。さらに、混合金属材料の主成分材料としてCuを用いると、副成分材料として、Mn,P等をそれぞれ用いることができる。加えて、混合金属材料の主成分材料としてNiを用いると、副成分材料として、Bi,C,P,Si等をそれぞれ用いることができる。
【0130】
【発明の効果】
本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法によれば、融点,浸透性,硬度(耐摩耗性),肉盛り性の性質を異にする複数のろう材層のうち、相対的に融点が低く液相の浸透性の良好な純金属材料または混合金属材料を欠陥の奥部に十分に溶融・浸透・凝固させ、相対的に融点が高く硬度の大きい純金属材料または混合金属材料を欠陥の入口部付近にて凝固させることができ、肉盛り部を含む欠陥全体を効果的に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材を示す概略図。
【図2】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第1変形例を示す概略図。
【図3】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第2変形例を示す概略図。
【図4】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第3変形例を示す斜視図。
【図5】本発明に係る多層積層型ろう材およびろう付補修方法の第1の実施形態を示すもので、欠陥を補修する多層積層型ろう材の第4変形例を示す概略図。
【図6】従来のろう材およびろう付補修方法を示すもので、欠陥を補修するろう材を示す概略図。
【符号の説明】
11 基材
12 コバルト基合金
14 多層積層型ろう材
14X 2層積層型ろう材
14Y 3層積層型ろう材
14a 内側ろう材層
14b 外側ろう材層
16 欠陥
Claims (14)
- 基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面に発生した欠陥を補修するために、前記基材または耐摩耗部材より融点が低く、かつ、前記基材または耐摩耗部材の表面に被着されるろう材において、
前記ろう材は、複数のろう材層からなる多層積層構造を有し、
前記ろう材は、前記基材または耐摩耗部材の表面の欠陥を含む領域に直接被着される内側ろう材層と、
前記内側ろう材層上に積層され、前記内側ろう材層の外側に設けられる外側ろう材層とを備えると共に、
前記内側ろう材層から外側ろう材層にかけて融点が順に高くなるような純金属材料または混合金属材料にて構成されたことを特徴とする多層積層型ろう材。 - 前記基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面が平面部を有さない場合、前記基材または耐摩耗部材の表面形状に沿って前記ろう材を配置させることを特徴とする請求項1記載の多層積層型ろう材。
- 前記ろう材層を構成する材料として混合金属材料を採用し、前記混合金属材料の主成分材料として金を採用する場合、前記混合金属材料の副成分材料は、銅,コバルト,鉄,ゲルマニウム,ニッケルおよびケイ素の少なくとも一方から構成されたことを特徴とする請求項1記載の多層積層型ろう材。
- 前記混合金属材料の副成分材料の含有量が、1重量%〜40重量%であることを特徴とする請求項1記載の多層積層型ろう材。
- 前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融・凝固によって硬度の高い析出物を形成させる添加材料を含むことを特徴とする請求項1記載の多層積層型ろう材。
- 前記ろう材層を構成する材料として純金属材料、または、混合金属材料の主成分材料として金を採用する場合、前記添加材料は、アルミニウム,クロム,チタンおよびジルコニウムの少なくとも一方から構成されたことを特徴とする請求項5記載の多層積層型ろう材。
- 前記添加材料の含有量が、1重量%〜40重量%であることを特徴とする請求項5記載の多層積層型ろう材。
- 前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融・凝固によって状態変化しない硬質材料を含むことを特徴とする請求項1記載の多層積層型ろう材。
- 前記硬質材料は、コバルト基合金,ニッケル基合金,耐火金属,炭化物,ホウ化物および窒化物の少なくとも一方から構成されたことを特徴とする請求項8記載の多層積層型ろう材。
- 前記硬質材料の含有量が、1体積%〜40体積%であることを特徴とする請求項8記載の多層積層型ろう材。
- 前記ろう材層を構成する純金属材料または混合金属材料は、前記純金属材料または混合金属材料の溶融時に純金属材料または混合金属材料を構成する液相の浸透を助長する浸透性促進材料を含むことを特徴とする請求項1記載の多層積層型ろう材。
- 前記浸透性促進材料は、銀およびリチウムの少なくとも一方から構成されたことを特徴とする請求項11記載の多層積層型ろう材。
- 前記浸透性促進材料の含有量が、0.01重量%〜20重量%であることを特徴とする請求項11記載の多層積層型ろう材。
- 基材またはこの基材に被着された耐摩耗部材の表面に欠陥が発生した際、前記基材または耐摩耗部材にろう材を被着させて、ろう材部分を局部的に不活性なガス雰囲気または真空中に維持させながら前記ろう材を前記欠陥に浸透させるろう付補修方法において、
前記ろう材として、内側ろう材層の材料を前記基材または耐摩耗部材に被着し、前記内側ろう材層の材料より融点が高い材料からなる外側ろう材層を前記内側ろう材層の最外側に多層積層構造を形成するように被着させる工程と、
前記ろう材を所要の温度に加熱して、融点の低い材料からなる内側ろう材層にて外側ろう材層より多くの液相を生成させる工程と、
前記基材または耐摩耗部材表面に形成される欠陥の奥部に、多くの液相を有する内側ろう材層の材料を優先的に溶融・浸透させる一方、前記欠陥の入口部付近に、多くの固相を有する外側ろう材層の材料を溶融・浸透させる工程とを有することを特徴とするろう付補修方法。
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