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JP2005099421A - 低透過率透明導電性基材とその製造方法、この基材の製造に用いられる低透過率透明導電層形成用塗布液、およびこの基材が適用された表示装置 - Google Patents

低透過率透明導電性基材とその製造方法、この基材の製造に用いられる低透過率透明導電層形成用塗布液、およびこの基材が適用された表示装置 Download PDF

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JP2005099421A JP2003332993A JP2003332993A JP2005099421A JP 2005099421 A JP2005099421 A JP 2005099421A JP 2003332993 A JP2003332993 A JP 2003332993A JP 2003332993 A JP2003332993 A JP 2003332993A JP 2005099421 A JP2005099421 A JP 2005099421A
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JP2003332993A
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English (en)
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Yoshihiro Otsuka
良広 大塚
Masaya Yukinobu
雅也 行延
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Abstract

【課題】 良好なボディカラー(膜の色、透過スペクトル)と高い膜強度を有し、低反射率と帯電防止、電界シールド機能、コントラスト改善効果も付加することができ、しかも製造コストの低減が図れる低透過率透明導電性基材とその製造方法等を提供する。
【解決手段】 透明基板上に順次形成されたカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と透明コート層から成る低透過率2層膜を備える低透過率透明導電性基材であって、低透過率透明導電層が比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子、比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子およびバインダーマトリックスを主成分とし、透明コート層が青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする着色透明コート層で構成されることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明基板とこの上に順次形成された低透過率透明導電層並びに透明コート層から成る低透過率2層膜とを有し、例えばブラウン管(CRT)等表示装置の前面板等に使用される低透過率透明導電性基材に係り、特に、良好なボディカラー(膜の色、透過スペクトル)と高い膜強度を有し、更には低反射率と帯電防止、電界シールド機能、コントラスト改善効果も付加することができ、しかも製造コストの低減が図れる低透過率透明導電性基材とその製造方法、この基材の製造に用いられる低透過率透明導電層形成用塗布液、およびこの低透過率透明導電性基材が適用された表示装置に関するものである。
近年のオフィスのOA化に伴い、コンピュータディスプレイである陰極線管(ブラウン管とも称する:CRT)等に接して仕事を行う機会が増加している。このディスプレイには表示画面が見易く、視覚疲労を感じさせないこと等が要求され、また、家庭のカラーテレビにおいても同様に表示画面の見易さが要求されている。
そして、これ等の要求を満たすため、CRTにおける前面ガラスの透過率を下げてコントラストを向上させる処理が行われることがある。この場合、透過率の低いフェースパネル(CRTの前面ガラス)を用いる方法と、比較的透過率の高いフェースパネルに低透過率のコーティング膜を施す方法が考えられるが、CRTの透過率を自由に制御できるという点で後者の方法が有利である。
また、近年、CRT画面の平面化に伴いその透過率を100%より低い所定範囲(40〜95%、好ましくは65〜75%)に調整して画像のコントラストを向上させる手法が採られており、この場合にも上記低透過率のコーティング膜を施す方法が広く用いられている。尚、平面CRTにおいて低透過率のコーティング膜を施す理由は、フェースパネル(前面ガラス)の厚みが画面中央部と周辺部で異なっており(パネル外表面が平面で、内面は曲率を有する)、フェースパネルに従来の着色ガラス(例えば、セミティントガラス、透過率:約53%)を用いた場合に輝度の面内不均一が生じるため、高透過率パネルガラスと上記低透過率のコーティング膜を組合わせることで輝度の面内均一性とコントラスト向上(透過率を低下させるとコントラストは向上する)を両立させる必要があるためである。
一方、表示画面を見易くする試みとして、フェースパネル表面に防眩処理を施して、画面の反射を抑えることも行われている。例えば、この防眩処理は微細な凹凸を設けて表面の拡散反射を増加させる方法によってもなされるが、この方法を用いた場合、解像度が低下して画質が落ちるためあまり好ましいとはいえない。
従って、むしろ反射光が入射光に対して破壊的干渉を生ずるように、透明皮膜の屈折率と膜厚とを制御する干渉法によって防眩処理を行うことが好ましい。このような干渉法により低反射効果を得るため、一般的には高屈折率膜と低屈折率膜の光学膜厚を(1/4)λと(1/4)λ、(1/2)λと(1/4)λ(λ:波長)に設定した2層構造膜が一般的に採用されている。
ところで、CRT等のディスプレイに接して仕事を行う場合、前述の表示画面が見易く視覚疲労を感じさせないことのほかに、CRT表面の帯電による埃りの付着や電撃ショックがないこと等も要求される場合がある。更にこれ等に加えて、最近では、CRTから発生する低周波電磁波の人体に対する悪影響が懸念され、このような電磁波が外部に漏洩しないこともCRTに対し望まれている。
このような帯電防止、電磁波漏洩防止の対策として、CRTの前面ガラス表面に透明導電層を形成する方法が採られているが、これ等透明導電層の表面抵抗として、帯電防止用には107〜1010Ω/□程度、また、電磁波漏洩防止用には少なくとも106Ω/□以下が望まれる。
そこで、上述した各種の要求に対応するため、黒色顔料微粒子として1次粒径10〜100nmのカーボンブラック微粒子を用い、このカーボンブラック微粒子が溶媒中に分散した塗布液をCRTの前面ガラスに塗布し、乾燥させた後、シリカゾル等を主成分とする塗布液をオーバーコートし、200℃程度の温度で焼成して、カーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と透明コート層から成る低透過率2層膜(2層構造膜)とし、導電性でかつ低反射率の膜を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
更に、比表面積500m2/g以上で平均1次粒径5〜200nmのカーボンブラック微粒子が分散した塗布液を用いて、104台の低抵抗と低反射率を有する上記低透過率2層膜(2層構造膜)を得る方法も提案されている(特許文献2参照)。
そして、これ等いずれの方法を適用しても、目的とする良好な反射・導電特性を得ることは可能であった。
但し、カーボンブラック微粒子を単独で適用した上記低透過率2層膜(2層構造膜)については、その透過スペクトルが可視光線の短波長側で低下し茶色っぽい透過色となる弊害があるため、上記いずれの場合においても膜の透過色をニュートラルにする方法として、カーボンブラック微粒子が分散した上記塗布液に酸窒化チタン微粒子(青黒系顔料)を添加する対策が採られている。
しかし、カーボンブラック微粒子が分散した上記塗布液に酸窒化チタン微粒子(青黒系顔料)等着色微粒子を添加する方法を採った場合、添加される着色微粒子を原因とする導電性の低下を補うため、塗布液中にカーボンブラック微粒子を余分に分散させる必要が生じ好ましい方法とはいえなかった。
更に、比表面積500m2/g以上で平均1次粒径5〜200nmのカーボンブラック微粒子が分散した塗布液を用いる後者の方法では、カーボンブラックの高い比表面積に起因すると考えられる成膜性の悪化が起こり易い問題もあった。
特開平7−281004号公報(請求項1〜10) 特開平8−54502号公報(請求項1〜10)
本発明はこの様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、良好なボディカラー(膜の色、透過スペクトル)と高い膜強度を有し、更に、低反射率と帯電防止、電界シールド機能、コントラスト改善効果も付加することができ、しかも製造コストの低減が図れる低透過率透明導電性基材とその製造方法を提供し、かつ、この基材の製造に用いられる低透過率透明導電層形成用塗布液を提供すると共に、低透過率透明導電性基材が適用された表示装置を提供することにある。
そこで、上記課題を解決するため、特許文献1、2に記載された上記低透過率2層膜(2層構造膜)について、カーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と、青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子を含有する着色透明コート層とで構成し、上記低透過率透明導電層には導電性の機能のみを負担させ、着色透明コート層には着色(色補正)の機能のみを負担させる構造を採ったところ、少量の導電性成分(カーボンブラック微粒子)の使用で透過色がニュートラルで、かつ、高い膜透過率と優れた導電性を実現できることを見出すに至った。
更に、上記カーボンブラック微粒子について、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子と、比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子とを併用する構成を採ったところ、上記低透過率透明導電層の透過率が高い(膜厚が薄い)領域においても低抵抗の導電膜が得られることが確認され、これに伴い塗布性の悪化を招くことなく自由に透過色の調整が可能になることを見出すに至った。本発明はこの様な技術的発見に基づき完成されたものである。
すなわち、請求項1に係る発明は、
透明基板と、この透明基板上に順次形成されたカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と透明コート層から成る低透過率2層膜を備える低透過率透明導電性基材を前提とし、
上記低透過率透明導電層が、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子、比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子およびバインダーマトリックスを主成分とし、上記透明コート層が、青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする着色透明コート層で構成されると共に、可視光線領域の反射スペクトルにおいて極小となる反射率が2%以下であり、上記低透過率2層膜の表面抵抗と可視光線透過率が、それぞれ105〜1010Ω/□と40〜95%であることを特徴とするものである。
また、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る低透過率透明導電性基材を前提とし、
上記比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子が、ケッチェンブラック微粒子であることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1または2記載の発明に係る低透過率透明導電性基材を前提とし、
上記比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子と比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子の混合割合が、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に対し高比表面積カーボンブラック微粒子が5〜200重量部であることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の発明に係る低透過率透明導電性基材を前提とし、
上記青系顔料微粒子または赤系顔料微粒子が、複合酸化物顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン系顔料、コバルトバイオレット、群青、紺青および窒化チタンから選定された少なくとも1種類以上の有色顔料微粒子であることを特徴とし、
請求項5に係る発明は、
請求項4記載の発明に係る低透過率透明導電性基材を前提とし、
上記赤系顔料微粒子が、570〜585nmの波長域に最大吸収を有するキナクリドン系顔料であることを特徴とし、
請求項6に係る発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の発明に係る低透過率透明導電性基材を前提とし、
上記低透過率透明導電層のバインダーマトリックスと着色透明コート層のバインダーマトリックスが、酸化ケイ素を主成分としていることを特徴とするものである。
次に、請求項7に係る発明は、
上記低透過率透明導電性基材の製造方法を前提とし、
溶媒と、この溶媒中に分散された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を主成分とする低透過率透明導電層形成用塗布液を透明基板上に塗布し、次いで青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子と無機バインダーを含む着色透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することを特徴とする。
また、請求項8に係る発明は、
請求項7記載の発明に係る低透過率透明導電性基材の製造方法を前提とし、
上記比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子が、ケッチェンブラック微粒子であることを特徴とし、
請求項9に係る発明は、
請求項7または8記載の発明に係る低透過率透明導電性基材の製造方法を前提とし、
上記比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子と比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子の混合割合が、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に対し高比表面積カーボンブラック微粒子が5〜200重量部であることを特徴とし、
請求項10に係る発明は、
請求項7〜9のいずれかに記載の発明に係る低透過率透明導電性基材の製造方法を前提とし、
上記低透過率透明導電層形成用塗布液にバインダーマトリックスを構成する無機バインダーが含まれていることを特徴とし、
請求項11に係る発明は、
請求項7〜10のいずれかに記載の発明に係る低透過率透明導電性基材の製造方法を前提とし、
上記低透過率透明導電層形成用塗布液および着色透明コート層形成用塗布液の無機バインダーがシリカゾルを主成分としていることを特徴とするものである。
次に、請求項12に係る発明は、
上記低透過率透明導電層形成用塗布液を前提とし、
溶媒と、この溶媒中に分散された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を主成分とし、上記低比表面積カーボンブラック微粒子と高比表面積カーボンブラック微粒子の混合割合が、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に対し高比表面積カーボンブラック微粒子が5〜200重量部であることを特徴とするものである。
また、請求項13に係る発明は、
請求項12に記載の発明に係る低透過率透明導電層形成用塗布液を前提とし、
上記比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子が、ケッチェンブラック微粒子であることを特徴とし、
請求項14に係る発明は、
請求項12または13に記載の発明に係る低透過率透明導電層形成用塗布液を前提とし、
バインダーマトリックスを構成する無機バインダーが含まれていることを特徴とするものである。
また、請求項15に係る発明は、
装置本体とこの前面側に配置された前面板とを備えた表示装置を前提とし、
上記前面板として請求項1〜6のいずれかに記載の低透過率透明導電性基材がその低透過率2層膜側を外面にして組込まれていることを特徴とするものである。
請求項1〜6記載の発明に係る低透過率透明導電層と透明コート層から成る低透過率2層膜を備える低透過率透明導電性基材によれば、
低透過率透明導電層が、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子、比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子およびバインダーマトリックスを主成分とし、透明コート層が、青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする着色透明コート層で構成されると共に、可視光線領域の反射スペクトルにおいて極小となる反射率が2%以下であり、上記低透過率2層膜の表面抵抗と可視光線透過率が、それぞれ105〜1010Ω/□と40〜95%であることを特徴とする。
従って、良好なボディカラー(膜の色、透過スペクトル)と高い膜強度を有し、しかも、低反射率と帯電防止、電界シールド機能およびコントラストの改善を図ることが可能となる効果を有する。
また、請求項7〜11記載の発明に係る低透過率透明導電性基材の製造方法によれば、
溶媒と、この溶媒中に分散された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を主成分とする低透過率透明導電層形成用塗布液を透明基板上に塗布し、次いで青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子と無機バインダーを含む着色透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することを特徴とする。
従って、請求項1〜6記載の低透過率透明導電性基材を確実にかつ低コストで製造することができる効果を有する。
次に、請求項12〜14記載の発明に係る低透過率透明導電層形成用塗布液によれば、
溶媒と、この溶媒中に分散された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を主成分とし、上記低比表面積カーボンブラック微粒子と高比表面積カーボンブラック微粒子の混合割合が、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に対し高比表面積カーボンブラック微粒子が5〜200重量部であることを特徴とする。
従って、本発明に係る低透過率透明導電性基材の製造方法に提供できる効果を有する。
また、請求項15記載の発明に係る表示装置によれば、
前面板として請求項1〜6のいずれかに記載の低透過率透明導電性基材がその低透過率2層膜側を外面にして組込まれていることを特徴とする。
従って、良好なボディカラー(膜の色、透過スペクトル)とコントラストの改善が図られ、しかも、低反射率と帯電防止、電界シールド機能を具備すると共に、耐候性にも優れた表示装置を提供できる効果を有する。
以下、本発明をより詳細に説明する。
まず、低透過率透明導電層と透明コート層から成る低透過率2層膜を備える本発明に係る低透過率透明導電性基材は、上記低透過率透明導電層が、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子、比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子およびバインダーマトリックスを主成分とし、上記透明コート層が、青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする着色透明コート層で構成されると共に、可視光線領域の反射スペクトルにおいて極小となる反射率が2%以下であり、上記低透過率2層膜の表面抵抗と可視光線透過率が、それぞれ105〜1010Ω/□と40〜95%であることを特徴としている。
そして、上述したようにカーボンブラック微粒子が単独で用いられた低透過率2層膜は茶色っぽい透過色を示す問題があり、従来はカーボンブラック微粒子と着色微粒子を併用した低透過率透明導電層で対応していたが、本発明に係る低透過率透明導電性基材では、低透過率透明導電層に導電性の機能のみを、着色透明コート層に着色(色補正)の機能のみにそれぞれ分担させることにより、少量の導電性成分(カーボンブラック微粒子)の適用で、透過色がニュートラルで、かつ、高い膜透過率と優れた導電性を実現している。
「カーボンブラック微粒子」
以下、本発明で適用される導電性微粒子としてのカーボンブラック微粒子について詳細に説明する。
上述したように、特許文献1に記載されているファーネスブラック等1次粒径10〜100nmのカーボンブラック微粒子はその比表面積が50〜200m2/gと比較的小さいため、このカーボンブラック微粒子(以下、低比表面積カーボンブラック微粒子と称する)が溶媒中に分散した塗布液(すなわち、低透過率透明導電層形成用塗布液)の製造過程において、カーボンブラック微粒子の分散が容易でかつ分散安定性も高い。
従って、低透過率透明導電層形成用塗布液を成膜する場合、塗布欠陥、例えば、凝集ブツ(カーボンブラック微粒子が凝集して形成される突起物)、筋(低透過率透明導電層形成用塗布液を塗布した時の液流れの跡)、白化(ヘイズの高い膜)等が発生し難いという利点がある。
しかし、低比表面積カーボンブラック微粒子におけるストラクチャー構造(例えば、数珠状構造のような立体的構造)が発達していないため、得られる低透過率透明導電層の抵抗値が高くなる欠点があった。
他方、特許文献2に記載されている比表面積が500〜2000m2/gと比較的大きいケッチェンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製の商品名)等のカーボンブラック微粒子(以下、高比表面積カーボンブラック微粒子と称する)は、上述したストラクチャー構造が発達しているため、低透過率透明導電層の抵抗値は低くできるものの、上記低比表面積カーボンブラック微粒子と較べて分散が困難でかつ分散安定性も悪いことから上述した塗布欠陥が発生し易いという問題があった。
尚、上記カーボンブラック微粒子において、比表面積が2000m2/gを超えると、塗料化において分散が容易でなくなるため実用的でない。一方、比表面積50m2/g未満であると、形成された低透過率透明導電層における可視光線の散乱が大きくなる(つまり膜のヘイズ値が高くなる)ため実用的でない。
そこで、本発明は以下の各知見に基づきこれ等の問題を解決している。
まず、低透過率透明導電層の導電性微粒子として低比表面積カーボンブラック微粒子(比表面積=137m2/g)を用いた場合、膜厚を薄くしていくに従い膜抵抗値が急激に上昇する膜透過率(以下、臨界透過率と称する)が75%程度(図1のA曲線参照)であるのに対し、高比表面積カーボンブラック微粒子(ケッチェンブラック微粒子、比表面積=800m2/g)を用いた場合には、臨界透過率を90%程度まで高めることが可能(図1の曲線C参照)であるという知見である。
更に、高比表面積カーボンブラック微粒子を低比表面積カーボンブラック微粒子にごく少量添加した場合でも、その系の臨界透過率を大幅に高めることができるという知見である。例えば、図1の(B)曲線から理解されるように、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に、高比表面積カーボンブラック微粒子(ケッチェンブラック微粒子)を10重量部程度添加するだけで、臨界透過率を約75%から約80%まで上昇させることができる。
つまり、導電性微粒子として、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子に比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を少量混ぜることで、低透過率透明導電層の透過率が高い(膜厚が薄い)領域においても低抵抗の導電膜が得られるため、塗布性の悪化を招くことなく、自由に透過色の調整が可能となる。
そして、低透過率透明導電層の透過率が高い(膜厚が薄い)領域で必要とする抵抗値を設定できれば、当然のことながらカーボンブラック微粒子に起因する茶色の着色も少なく、着色透明コート層中の着色微粒子の含有量も少なくでき透過色の調整自体が簡単になる。反対に、低透過率透明導電層の透過率が低い(膜厚が厚い)領域でしか必要とする抵抗値が得られない場合は、カーボンブラック微粒子による着色が強くなるため、着色透明コート層中の着色微粒子含有量を多くして透過色の調整を行う必要が生じ、低透過率2層膜中のカーボンブラック微粒子と着色微粒子の量が多くなる分、低透過率透明導電層と着色透明コート層から成る低透過率2層膜の透過率が低くなってしまい、所望の透過率が得られないという問題が生ずる。
ここで、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子と比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子の混合割合は、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に対して高比表面積カーボンブラック微粒子を5〜200重量部、好ましくは8〜100重量部の範囲にするとよい。5重量部未満だと比表面積500〜2000m2/gである高比表面積カーボンブラック微粒子の添加効果が十分に得られない場合があり、反対に200重量部を超えると得られる低透過率透明導電層の導電性は向上するものの、高比表面積カーボンブラック微粒子の高いストラクチャー構造に起因する成膜性の悪化や塗布液のろ過性低下が生じる場合があるからである。
「低透過率2層膜」
次に、上記低透過率透明導電層と着色透明コート層とで構成される低透過率2層膜の表面抵抗と可視光線透過率は、それぞれ105〜1010Ω/□と40〜95%に設定されることを要する(請求項1)。そして、低透過率2層膜の表面抵抗は、上記低透過率透明導電層形成用塗布液に配合するカーボンブラック微粒子の量、および、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子と比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子との配合比の調整で制御可能である。また、低透過率2層膜の可視光線透過率が、40%未満だとCRTの輝度が低くなり過ぎ、反対に95%を超えるとCRTのコントラストが悪化するため好ましくない。
ところで、上記低透過率透明導電性基材において、カーボンブラック微粒子の光学定数(n−ik、n:屈折率、i2=−1、k:消衰係数)は明らかでないが、比較的大きな消衰係数を有すると思われるカーボンブラック微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする低透過率透明導電層、および、酸化ケイ素と有色顔料微粒子を主成分としている着色透明コート層とで構成される低透過率2層膜構造により良好な低反射特性を得ることが可能である。すなわち、所定の膜厚(透過率:40〜95%)の低透過率透明導電層に対し、着色透明コート層の膜厚を適正に設定(およそ40〜100nmの範囲内)すれば、上記低透過率透明導電性基材における可視光線領域の反射スペクトルにおいて極小となる反射率(ボトム反射率)を2%以下にすることができる(請求項1)。
「着色透明コート層、顔料」
次に、上記低透過率2層膜の着色透明コート層に用いる青系顔料微粒子または赤系顔料微粒子には、複合酸化物顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン系顔料、コバルトバイオレット、群青、紺青および窒化チタンから選定された少なくとも1種類以上の有色顔料微粒子を用いることができる。上記有色顔料微粒子は、その平均粒径を10〜150nmの範囲にすることが好ましい。平均粒径が10nm未満の場合、この微粒子の製造が困難であると同時に塗料化において分散も容易でない場合があるからである。一方、150nmを超えると、形成された低透過率透明導電層の可視光線の散乱が大きくなり膜のヘイズ値が高くなって実用的でない場合があるからである。尚、ここでいう平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される微粒子の平均粒径を示している。
ところで、上記赤系顔料微粒子として、570〜585nmの波長域に最大吸収を有するキナクリドン系顔料を用いた場合、着色透明コート層に配合されたキナクリドン系顔料がCRTの緑(G:540nm)と赤(R:630nm)の各発光波長間における波長域部分の光を選択的に吸収するため、輝度の低下を伴うことなくコントラストを向上させることが可能となる利点を有する。
「低透過率透明導電層形成用塗布液の製造方法」
次に、本発明において上記低透過率透明導電層の形成に用いられる低透過率透明導電層形成用塗布液は、以下の方法でこれを製造することができる。
まず、導電性微粒子として、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を分散剤、溶剤と混合し、ペイントシェーカー、サンドミル、超音波分散機等の分散装置を用いて、均一なカーボンブラック微粒子の分散液を得る。尚、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子と比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子については、予め混合してから上記分散処理を行ってもよいし、それぞれ別々に分散処理してから任意の割合で混合してもよい。
次いで、上記カーボンブラック微粒子の分散液を溶剤と所定の割合で混合し、本発明の低透過率透明導電層の形成に用いられる低透過率透明導電層形成用塗布液を調製することができる。尚、バインダーマトリックス成分である無機バインダーがこの低透過率透明導電層形成用塗布液に含まれていてもよく、その無機バインダーは上記分散処理時に添加することもできる。
ここで、上記無機バインダーにはシリカゾルを主成分とする材料が適用でき、上記シリカゾルとしては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで加水分解縮重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を、更に加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等を利用することができる。尚、脱水縮重合が進行すると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合については、ガラス基板やプラスチック基板等の透明基板上に塗布可能な上限粘度以下のところに調製する。但し、脱水縮重合の度合いは透明基板上に塗布可能な上限粘度以下のレベルであれば特に特定されないが、膜強度、耐候性等を考慮すると重量平均分子量で500〜3000程度が好ましい。
「低透過率2層膜の形成」
次に、上記低透過率2層膜を形成するには以下の方法でこれを行うことができる。
まず、溶媒と、この溶媒中に分散された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を主成分とする低透過率透明導電層形成用塗布液を、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板上に、スプレーコート、スピンコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート等の手法にて塗布し、必要に応じて乾燥した後、青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子の有色顔料微粒子とシリカゾル等を含む着色透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートする。尚、シリカゾルは、上述した無機バインダーに適用されたシリカゾルと同様のものを用いることができる。
そして、着色透明コート層形成用塗布液をオーバーコートした後、例えば、50〜500℃程度の温度で加熱処理を施し、オーバーコートした着色透明コート層形成用塗布液の硬化を行って上記低透過率2層膜が形成される。
ここで、有色顔料微粒子とシリカゾル等を含む上記着色透明コート層形成用塗布液を上述した手法によりオーバーコートした際、予め塗布された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を主成分とする低透過率透明導電層形成用塗布液により形成されたカーボンブラック微粒子層の間隙に、オーバーコートした有色顔料微粒子を含むシリカゾル液(このシリカゾル液は上記加熱処理により有色顔料微粒子と酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックスとなる)がしみ込むことにより、膜強度の向上、耐候性の向上が同時に達成される。
そして、青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子の上記有色顔料微粒子を含むシリカゾル液は、低透過率2層膜の加熱焼成時に脱水縮重合反応がほぼ完結して、有色顔料微粒子を含有する硬いシリケート膜(有色顔料微粒子と酸化ケイ素を主成分とする膜)になる。
尚、上記シリカゾルに、弗化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を加え、着色透明コート層の屈折率を調節して低透過率2層膜の反射率を変えることも可能である。
「低透過率透明導電性基材」
このように本発明に係る低透過率透明導電性基材は、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板と、この透明基板上に順次形成された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子、比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子およびバインダーマトリックスを主成分とする低透過率透明導電層の下層と、この低透過率透明導電層上に形成され青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子の有色顔料微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする着色透明コート層の上層から成る低透過率2層膜とでその主要部が構成されている。
そして、上記低透過率2層膜を備える低透過率透明導電性基材によれば、低透過率2層膜の可視光線透過率が40〜95%であり、かつ、上記低透過率透明導電層の表面抵抗を105〜1010Ω/□とすることができると共に、低透過率透明導電性基材における可視光線領域の反射スペクトルにおいて極小となる反射率を2%以下とすることも可能となる。
従って、本発明に係る低透過率透明導電性基材は、良好なボディカラー(膜の色、透過スペクトル)と高い膜強度を有し、しかも、低反射率と帯電防止、電界シールド機能およびコントラストの改善効果も付加することができるため、例えば、ブラウン管(CRT)等表示装置における前面板等に用いることができる。
以下、本発明に係る実施例を比較例と共に具体的に説明するが、本発明はこれ等実施例に限定されるものではない。
また、本文中の「%」は、透過率、反射率、ヘイズ値の(%)を除いて「重量%」を示し、かつ「部」は「重量部」を示している。
尚、以下の表1や図面の可視光線波長域(380〜780nm)における透明基板(ガラス基板)を含まない低透過率透明導電層と着色透明コート層とで構成される低透過率2層膜だけの透過率は、下記(式1)のようにして求められている。
すなわち、
透明基板を含まない低透過率2層膜だけの透過率(%)
=[(透明基板ごと測定した透過率)/(透明基板の透過率)]×100 (式1)
また、特に言及しない限り、透過率および透過スペクトルとしては低透過率透明導電層と着色透明コート層とで構成された低透過率2層膜だけの透過率および透過スペクトルを用いている。
更に、ヘイズ値と可視光線透過率は、透明基板ごと村上色彩技術研究所製ヘイズメーター(HR−200)を用いて測定し、反射率および反射・透過スペクトルは、日立製作所(株)社製分光光度計(U−4000)を用いて測定し、また、分散液中の有色顔料微粒子の分散粒径は、大塚電子(株)社製のレーザー散乱式粒度分析計(ELS−800)で評価し、更に、低透過率透明導電層の表面抵抗は、三菱化学(株)社製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)およびハレスタIP(MCT−HT260)を用いて測定した。
比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子[MA7、三菱化学(株)社製]5gと分散剤0.5gをジアセトンアルコール(DAA)94.5gと混合した後、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行い、分散粒径124nmのカーボンブラック微粒子分散液(A液)を得た。
また、比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子[ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックインターナショナル(株)社製]5gと分散剤5gを純水90gと混合した後、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行い、分散粒径160nmのカーボンブラック微粒子分散液(B液)を得た。
次に、青系顔料微粒子[フタロシアニンブルー#5203、大日精化工業(株)社製]5gと分散剤0.5gをジアセトンアルコール(DAA)94.5gと混合した後、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行い、分散粒径120nmの青系顔料微粒子分散液(C液)を得た。
また、赤系顔料微粒子[キナクリドン#44、大日精化工業(株)社製]5gと分散剤0.5gをジアセトンアルコール(DAA)94.5gと混合した後、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行い、分散粒径135nmの赤系顔料微粒子分散液(D液)を得た。
更に、メチルシリケート51(コルコート社製:商品名)を19.6部、エタノール70.3部、1%硝酸水溶液7.9部、純水2.2部を用いて、SiO2(酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が2200のシリカゾル液(E液)を得た。
そして、上記A液2.16g、B液0.18gに、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)を加え、比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子(以下、CB−1微粒子と称する場合がある)並びに比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子(以下、CB−2微粒子と称する場合がある)を含有する低透過率透明導電層形成用塗布液(CB−1:0.108%、CB−2:0.009%、水:0.16%、IPA:77.6%、PGM:15%、DAA:7.0%)を調製した。
得られた低透過率透明導電層形成用塗布液を透過電子顕微鏡で観察した結果、比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子の平均粒径は24nm、比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子は10〜50nmの粒子が連鎖状につながった形状であった。
次に、上記C液0.32g、D液0.94g、E液10.7gに、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)を加え、青系顔料微粒子、赤系顔料微粒子および無機バインダーを含有する着色透明コート層形成用塗布液(酸化ケイ素:1.07%、青系顔料微粒子:0.016%、赤系顔料微粒子:0.047%、水:2.09%、EA:60.0%、PGM:24.3%、DAA:10.9%)を調製した。
得られた着色透明コート層形成用塗布液を透過電子顕微鏡で観察した結果、青系顔料微粒子の粒子径は10〜60nm、赤系顔料微粒子の粒子径は10〜90nmであった。
そして、比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子と比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層形成用塗布液を、40℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上に、スピンコート(150rpm、60秒間)した後、続けて青系顔料微粒子、赤系顔料微粒子および無機バインダーを含有する着色透明コート層形成用塗布液をスピンコート(150rpm、70秒間)し、更に180℃で30分間硬化させて、比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子と比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と、青系顔料微粒子、赤系顔料微粒子および酸化ケイ素を主成分とする着色透明コート層とで構成された低透過率2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例1に係る低透過率透明導電性基材を得た。
上記ガラス基板上に形成された低透過率2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘイズ値、透過色の色指数、ボトム反射率/ボトム波長)を以下の表1に示す。
尚、表1においてボトム反射率とは低透過率透明導電性基材の反射スペクトルにおいて極小の反射率をいい、ボトム波長とは反射率が極小における波長を意味している。また、実施例1に係る低透過率透明導電性基材の反射スペクトルを図2に、透過スペクトルを図3に示す。
実施例1において、A液を1.8g、B液を0.46gとした以外は実施例1と同様な手順により比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子と比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層形成用塗布液(CB−1:0.09%、CB−2:0.023%、水:0.41%、IPA:77.7%、PGM:15%、DAA:6.7%)を調製し、比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子と比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と、青系顔料微粒子、赤系顔料微粒子および酸化ケイ素を主成分とする着色透明コート層とで構成された低透過率2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例2に係る低透過率透明導電性基材を得た。
尚、ガラス基板上に形成された低透過率透明導電層の膜特性を表1に示す。
実施例1において、A液を1.2g、B液を0.9gとした以外は実施例1と同様な手順により比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子と比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層形成用塗布液(CB−1:0.06%、CB−2:0.045%、水:0.81%、IPA:77.8%、PGM:15%、DAA:6.1%)を調製し、比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子と比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と、青系顔料微粒子、赤系顔料微粒子および酸化ケイ素を主成分とする着色透明コート層とで構成された低透過率2層膜付きのガラス基板、すなわち、実施例3に係る低透過率透明導電性基材を得た。
尚、ガラス基板上に形成された低透過率透明導電層の膜特性を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、A液を2.4gを用いかつB液を適用しない点を除き実施例1と同様な手順により比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層形成用塗布液(CB−1:0.12%、IPA:77.5%、PGM:15%、DAA:7.3%)を調製し、比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と、青系顔料微粒子、赤系顔料微粒子および酸化ケイ素を主成分とする着色透明コート層とで構成された低透過率2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例1に係る低透過率透明導電性基材を得た。
尚、ガラス基板上に形成された低透過率透明導電層の膜特性を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、A液を適用せずかつB液を2.4gを用いた点を除き実施例1と同様な手順により比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層形成用塗布液(CB−2:0.091%、水:1.64%、IPA:78.1%、PGM:15%、DAA:5%)を調製し、比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と、青系顔料微粒子、赤系顔料微粒子および酸化ケイ素を主成分とする着色透明コート層とで構成された低透過率2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例2に係る低透過率透明導電性基材を得た。
但し、比較例2に係る低透過率透明導電層形成用塗布液を適用した場合、塗布面に細かい黒点が多く見られ、更に、ガラス基板の周辺部にはスパイラル状の欠陥(その部分は透過率が低い)が見られた。
また、ガラス基板上に形成された低透過率透明導電層の膜特性を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、E液11gに、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を加え、青系顔料微粒子と赤系顔料微粒子を含まず無機バインダーを含有する透明コート層形成用塗布液(酸化ケイ素:1.1%、水:2.15%、EA:36.7%、PGM:25%、DAA:10%)を調製し、実施例1の着色透明コート層形成用塗布液に代えて上記透明コート層形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様な手順により、比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子と比表面積800m2/gのカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とする透明コート層とで構成された低透過率2層膜付きのガラス基板、すなわち、比較例3に係る低透過率透明導電性基材を得た。
そして、ガラス基板上に形成された低透過率透明導電層の膜特性を表1に示す。
また、比較例3に係る低透過率透明導電性基材の反射スペクトルを図4に、また、透過スペクトルを図5に示す。
Figure 2005099421
注1:[比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子の重量]/[比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子の重量]を示す。
注2:「着色透明コート層」の有色顔料微粒子の種類を示し、Bは青系顔料、Vは赤紫系顔料を示す。
[耐候性試験]
実施例1〜3に係る低透過率透明導電性基材を、10%食塩水溶液、50%酢酸水溶液、5%アンモニア水溶液に24時間浸漬し、透明基板(ガラス基板)上に設けた膜の透過率、および外観を調べたが変化は観察されなかった。
[膜強度試験]
実施例1〜3と比較例1〜3に係る低透過率透明導電性基材を、鉛筆硬度試験(荷重1Kg)により評価したが、全て8H以上であった。
[評 価]
(1)表1に示された「透過色の色指数」「ヘイズ値」「可視光線透過率」欄の各データから実施例1〜3と比較例1〜2に係る低透過率透明導電性基材においてはそれぞれ良好なボディカラー(膜の色、透過スペクトル)とコントラスト改善効果を有することが確認され、また、表1に示された「表面抵抗」欄のデータから実施例1〜3と比較例2〜3に係る低透過率透明導電性基材においては帯電防止、電界シールド機能を有することが確認される。
また、表1の「ボトム反射率/ボトム波長」の欄と「膜強度試験」の結果から、実施例1〜3と比較例1〜3に係る低透過率透明導電性基材においては低反射率と高い膜強度を有していることも確認され、更に「耐候性試験」の結果から実施例1〜3に係る低透過率透明導電性基材においては充分な耐候性を有していることも確認される。
(2)他方、着色透明コート層が形成されない比較例3に係る低透過率透明導電性基材においては、「透過色の色指数」欄の「b*」が+5.24と高い数値になっており、ボディカラー(膜の色、透過スペクトル)が劣っていることが確認される。
また、低比表面積カーボンブラック微粒子のみが適用された比較例1に係る低透過率透明導電性基材においては、表面抵抗が3100MΩ/□で帯電防止、電界シールド機能が不十分であり、この機能を具備させるためにカーボンブラックの配合割合を高くする必要性が存在することが確認される。
更に、高比表面積カーボンブラック微粒子のみが適用された比較例2に係る低透過率透明導電性基材においては、塗布面に細かい黒点が多く見られかつガラス基板の周辺部にはスパイラル状の欠陥(その部分は透過率が低い)が見られるように塗布欠陥が生ずることが確認される。
本発明に係る低透過率透明導電性基材は、上述したように良好なボディカラー(膜の色、透過スペクトル)と高い膜強度を有し、しかも、低反射率と帯電防止、電界シールド機能およびコントラストの改善効果も付加することができるため、例えば、ブラウン管(CRT)等表示装置における前面板等に好適に利用することができる。
低比表面積カーボンブラック微粒子および高比表面積カーボンブラック微粒子が適用された透明導電膜における膜透過率と膜抵抗値との関係を示すグラフ図。 実施例1に係る低透過率透明導電性基材の反射スペクトルを示すグラフ図。 実施例1に係る低透過率透明導電性基材の透過スペクトルを示すグラフ図。 比較例3に係る低透過率透明導電性基材の反射スペクトルを示すグラフ図。 比較例3に係る低透過率透明導電性基材の透過スペクトルを示すグラフ図。

Claims (15)

  1. 透明基板と、この透明基板上に順次形成されたカーボンブラック微粒子を含有する低透過率透明導電層と透明コート層から成る低透過率2層膜を備える低透過率透明導電性基材において、
    上記低透過率透明導電層が、比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子、比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子およびバインダーマトリックスを主成分とし、上記透明コート層が、青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする着色透明コート層で構成されると共に、可視光線領域の反射スペクトルにおいて極小となる反射率が2%以下であり、上記低透過率2層膜の表面抵抗と可視光線透過率が、それぞれ105〜1010Ω/□と40〜95%であることを特徴とする低透過率透明導電性基材。
  2. 上記比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子が、ケッチェンブラック微粒子であることを特徴とする請求項1記載の低透過率透明導電性基材。
  3. 上記比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子と比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子の混合割合が、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に対し高比表面積カーボンブラック微粒子が5〜200重量部であることを特徴とする請求項1または2記載の低透過率透明導電性基材。
  4. 上記青系顔料微粒子または赤系顔料微粒子が、複合酸化物顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン系顔料、コバルトバイオレット、群青、紺青および窒化チタンから選定された少なくとも1種類以上の有色顔料微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低透過率透明導電性基材。
  5. 上記赤系顔料微粒子が、570〜585nmの波長域に最大吸収を有するキナクリドン系顔料であることを特徴とする請求項4に記載の低透過率透明導電性基材。
  6. 上記低透過率透明導電層のバインダーマトリックスと着色透明コート層のバインダーマトリックスが、酸化ケイ素を主成分としていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低透過率透明導電性基材。
  7. 溶媒と、この溶媒中に分散された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を主成分とする低透過率透明導電層形成用塗布液を透明基板上に塗布し、次いで青系顔料微粒子および/または赤系顔料微粒子と無機バインダーを含む着色透明コート層形成用塗布液を塗布した後、加熱処理することを特徴とする低透過率透明導電性基材の製造方法。
  8. 上記比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子が、ケッチェンブラック微粒子であることを特徴とする請求項7記載の低透過率透明導電性基材の製造方法。
  9. 上記比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子と比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子の混合割合が、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に対し高比表面積カーボンブラック微粒子が5〜200重量部であることを特徴とする請求項7または8記載の低透過率透明導電性基材の製造方法。
  10. 上記低透過率透明導電層形成用塗布液にバインダーマトリックスを構成する無機バインダーが含まれていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の低透過率透明導電性基材の製造方法。
  11. 上記低透過率透明導電層形成用塗布液および着色透明コート層形成用塗布液の無機バインダーがシリカゾルを主成分としていることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の低透過率透明導電性基材の製造方法。
  12. 溶媒と、この溶媒中に分散された比表面積50〜200m2/gの低比表面積カーボンブラック微粒子および比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子を主成分とし、上記低比表面積カーボンブラック微粒子と高比表面積カーボンブラック微粒子の混合割合が、低比表面積カーボンブラック微粒子100重量部に対し高比表面積カーボンブラック微粒子が5〜200重量部であることを特徴とする低透過率透明導電層形成用塗布液。
  13. 上記比表面積500〜2000m2/gの高比表面積カーボンブラック微粒子が、ケッチェンブラック微粒子であることを特徴とする請求項12に記載の低透過率透明導電層形成用塗布液。
  14. バインダーマトリックスを構成する無機バインダーが含まれていることを特徴とする請求項12または13に記載の低透過率透明導電層形成用塗布液。
  15. 装置本体とこの前面側に配置された前面板とを備えた表示装置において、
    上記前面板として請求項1〜6のいずれかに記載の低透過率透明導電性基材がその低透過率2層膜側を外面にして組込まれていることを特徴とする表示装置。
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