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JP2005093252A - 光電変換素子モジュール - Google Patents

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哲也 滝
Osamu Ishida
修 石田
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Abstract

【課題】 隣接する光電変換素子の電極間を信頼性の高い導電性材料によって直列接続を可能とし、信頼性の高い光電変換素子モジュールを提供する。
【解決手段】 増感色素を担持した半導体層が被着された第1の電極と、前記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極と、前記第1の電極の半導体層と前記第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールにおいて、隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極とを、オレフィン樹脂からなる絶縁性材料中に導電剤を含んだ導電性材料により電気的に接続することによって、光電変換素子モジュールを構成する。
上記オレフィン樹脂としては、熱硬化性オレフィン樹脂が好ましく、特に一液加熱硬化性オレフィン樹脂が好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、色素増感太陽電池などに用いるのに適した光電変換素子モジュールに関する。
グレッツェルらが提唱した新しいタイプの色素増感太陽電池は、従来の色素増感太陽電池に比べて、飛躍的に高い変換効率(7%台)を示し注目を浴びてきた。色素増感太陽電池は、光を捕集した色素が生成する励起電子を半導体内に注入することによって光電変換を実現している。したがって、光捕集力を高めるために増感色素を半導体に多量に担持させること、さらに増感色素からできるだけ早く半導体へ電子を注入させることが重要である。グレッツェル・セルとも言われるこの新しい色素増感太陽電池は、超微粒子の酸化チタンからなる多孔質膜に増感色素であるルテニウム錯体を担持させることで、この課題を解決している(例えば、非特許文献1参照)。
グレッツェル(Gratzel)、外1名、「ネイチャー(Nature)」、 (英国)、1991年10月24日、第353巻、p.737−740
このグレッツェル・セルは、酸化チタンの超微粒子を分散したペーストを透明電極に塗布し、増感色素を担持させ、対電極との間に電解質を充填するだけで組み立てることができる。したがって、従来の太陽電池と比べて、簡便な装置で製造が可能であり、次世代太陽電池の一つとして注目されているが、このグレッツェル・セルの課題の一つは耐久性であり、特に電解質の漏液対策が重要である。すなわち、酸化チタンが付着された透明電極と対電極との間に配置される電解質を長期にわたり保持しなければならない。そのため、両電極間に電解質を保持するだけではなく、物理的および化学的な刺激をセルに加えても、電解質がセルから液漏れしないような封止にすることが不可欠である。
この封止の要点は、電解質の組成を考慮した封止剤の選定と、その封止構造にある。電解質と接触する封止剤の選定としては、電解質溶媒として多用されているニトリル系溶媒やカーボネート系溶媒と相溶性の低いものが適していて、熱可塑性樹脂としては直鎖状低分子量ポリエチレン(商品名:バイネル)、アイオノマー(商品名:サーリン、ハイミラン)などがよく用いられ、硬化性樹脂としてはシリコーン樹脂などがよく用いられている。これは、それらの樹脂が電解質溶媒としてのニトリル系溶媒やカーボネート系溶媒と相溶性が低いことによるものであるが、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などは、電解質溶媒との相溶性が高く電解質溶媒に溶解してしまうためである。また、封止構造としては、電解質と接する封止剤にシリコーン樹脂を用い、その外側にエポキシ樹脂を配した二重封止構造などが提案されている(特許文献1)。また、耐久性および耐薬品性に優れたガラスフリットを封止剤に使用することも提案されている(特許文献2〜3)。
欧州特許第855726号明細書 特開2000−348783号公報 特開2001−185244号公報
しかしながら、前記直鎖状低分子量ポリエチレンやアイオノマーなどの熱可塑性樹脂は、電解質と接触する部位の封止剤として多用されているが、その使用にあたっては、封止形状に切り出したシートを溶融温度以上で溶融させ、酸化チタン極と対電極との間に配置するだけで封止することができ、ハンドリング性に優れているものの、熱によって軟化や溶融して封止剤として機能を失うため、光電変換素子の耐熱性が低くなるという問題があった。しかも、溶融時の粘度が高いため被着体との密着が完全ではなくミクロなボイドを有しており、これを起点にして樹脂と被着体との界面に電解質が浸透して封止を破壊してしまうという問題があった。
これに対して、熱硬化樹脂であるシリコーン樹脂は、空気中の水分で硬化し、耐熱性や耐寒性に優れているものの、大気中の水分で厚膜硬化することからわかるように、ガス透過性や水分透過性が高い。そのため、電解質に多用されているヨウ素や電解液溶媒を保持するためには前記二重封止によって透過を防ぐ必要がある。また、シリコーン樹脂の硬化は反応速度が遅く、数日〜一週間完全と硬化に時間を要するという問題があった。これを改善した二液混合タイプのものも存在するが、使い勝手の悪いものであった。さらに、光硬化タイプのものも存在するが、光硬化するための官能基が電解質溶媒と反応してしまうため封止剤として使用することができなかった。
近年、これらを解決した樹脂として、アルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物および触媒などからなる一液加熱硬化性オレフィン樹脂が特開2000−328042号公報に提案されている。この一液加熱硬化性オレフィン樹脂は、" Three Bond1152" および" Three Bond1153" の商品名で上市されている(スリーボンドテクニカルニュースNo60)が、この一液加熱硬化性オレフィン樹脂は、オレフィン樹脂が持つ耐溶媒性、低ガス透過性、低水分透過性などの優れた特徴を有しつつ、加熱によって容易に硬化することができる樹脂であって、理想的なシール剤であると考えられる。
最近、この一液加熱硬化性オレフィン樹脂は、その優れた特徴を生かしてグレッツェル・セルの封止剤として使用することがHPで紹介され、広く知られるようになってきた。
一方、現状のグレッツェル・セルは、単体で1V以下の開放端電圧であり、実用的な電気機器をグレッツェル・セルで駆動させるには、複数のセルを直列接続して出力電圧を大きくすることが必須であり、既にグレッツェル・セルを直列接続したモジュール構造がいくつか提案されている(特許文献4〜9)。
特表平11−514787号公報 国際公開第96/29716号パンフレット EP0855726号明細書 特表2002−540559号公報 特表2002−535808号公報 特開2001−357897号公報
すなわち、特許文献4(特表平11−514787号公報)には、1枚の基板上に直列接続したモジュールを構成する構造並びにその製造方法が提案されている。通常のグレッツェル・セルは光電極と対電極との間に電解質を挟んだサンドイッチ構造であり、2枚の基板を必要とするが、この特許文献4に記載の構造であれば、基板を1枚にすることができ、軽量化や低コスト化などの利点がある。
しかしながら、特許文献4のように基板を1枚にする構造は、ドライプロセスで作製するシリコン系太陽電池には適したモジュール構造であるが、ウェットプロセスでグレッツェル・セルを作製する場合、隣接する素子を接続するための電極を塗布するのが非常に難しいという問題があった。
特許文献5(国際公開第96/29716号パンフレット)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの素子の光電極と対電極とを反転させながら直列接続する方法が提案されている。
この特許文献5に記載の方法では、容易に直列接続できる利点を有するものの、光電極を受光面にした素子と対電極を受光面にした素子とを直列接続するため、モジュール全体の出力特性が光電変換効率の悪い対電極を受光面にした素子に制限されてしまうという問題があった。
また、上記特許文献5には、隣接する2つの素子の光電極と対電極とを反転させながら直列接続する方法以外にも、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの素子の光電極と対電極とを3次元に直列接続する方法も提案されている。この方法は、電解質の保持と電気的接続を同時に行うことが可能であって、モジュール全体に占める電極面積(有効面積)を大きくできることから高出力できるという利点がある。
しかしながら、特許文献5に示されている方法では、電解質の保持と電気的接続とを同時に行う電気的通電材料の具体性に乏しく耐久性に問題があった。
特許文献6(EP0855726号明細書)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電極と対電極とをセル外部で3次元に直列接続する方法が提案されている。
この特許文献6に記載のものは、特許文献4や特許文献5に記載のものに比べて複雑な工程を必要とせず、容易に直列接続できる利点を有するものの、セル外部に直列接続部分を形成するため、シート抵抗の比較的大きな透明導電膜層を伝達する電子の距離が長くなる。一般に透明導電膜層は、金属の数100倍の比抵抗を有するITO、FTO、ATOなどの抵抗値が10-4〜10-3Ω・cm程度の酸化物から成るため、この特許文献6に記載の方法では、抵抗損失が大きくなり電力を抵抗損失ロスしてしまうという問題があった。
また、特許文献7(特表2002−540559号公報)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電極と対電極とを導電粒子を含む電気的通電材料によって、電解質の保持と電気的接続とを両立させ、3次元的に直列接続する方法が提案されている。
この特許文献7に記載の方法は、電解質の保持と電気的接続とを同時に行うことが可能であって、モジュール全体に占める電極面積を大きくでき、かつ電子の透明導電層の移動距離を短く抵抗損失ロスを最小限にすることが可能であることから、高出力できる利点を有するものの、電気的通電材料のバインダとしてガス透過量や水分透過量の多いシリコーン樹脂を用いているために、電解質中のヨウ素や電解質溶媒と導電剤とが反応しやすく、導電剤が変性してしまって、長期信頼性に欠けるという問題があった。
さらに、特許文献8(特表2002−535808号公報)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電極と対電極とを絶縁性物質で覆われた導電性ワイヤによって、電解質の保持と電気的接続を両立させ、3次元的に直列接続させる方法が提案されている。
この特許文献8に記載の方法は、電解質の保持と電気的接続とを同時に行うことが可能であって、モジュール全体に占める電極面積を大きくでき、かつ電子の透明導電層の移動距離を短く抵抗損失ロスを最小限にすることが可能であることから、高出力できる利点を有するものの、上記導電性ワイヤが金属製ワイヤに熱可塑性樹脂であるアイオノマーをコーティングしたものであるため、耐熱性に問題があり、また、樹脂と金属との密着力が弱く信頼性に欠けるという問題があった。しかも、上記導電性ワイヤは、金属製ワイヤを絶縁性物質であるアイオノマーでコーティングするプロセスを必要とし、さらに均一にアイオノマーをコーティングするには高度な技術が必要であるため、コストアップと生産性の低下が懸念され、また、導電性ワイヤでモジュール化するには、製造時に所望の場所にこの導電性ワイヤを、場合によっては複数本を、精度良く配置する高度な技術が必要であることから、生産性の低下が懸念されるという問題があった。
また、特許文献9(特開2001−357897号公報)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電極と対電極とを異方導電性材料によって、電解質の保持と電気的接続とを両立させ、3次元的に直列接続する方法が提案されている。
この特許文献9に記載の方法は、電解質の保持と電気的接続とを同時に行うことが可能であって、モジュール全体に占める電極面積を大きくでき、かつ電子の透明導電層での移動距離を短く抵抗損失ロスを最小限にすることが可能であることから、低コスト、高電圧化できる利点を有するものの、一般に異方導電フィルムが金メッキした樹脂粒子をエポキシ樹脂中に分散させたもので構成されているため、エポキシ樹脂が電解質溶媒のニトリル系溶媒やカーボネート系溶媒に溶解しやすく、また、金がヨウ素と反応しやすいという問題があった。
グレッツェル・セルに限らず光電変換素子(太陽電池)は、実使用を考えた場合、複数の光電変換素子を接続して面積を拡大させることで光電変換素子モジュールにし、さらに、この光電変換素子モジュールを所要数接続して光電変換素子アレイとなすことによって所望の出力を得る必要がある。しかるに、これまでに提案されてきた光電変換素子モジュールの構造は、高電圧化に有効であるものの、直列接続に用いられる導電性材料中の絶縁性材料の選定に問題があった。
絶縁性材料の選定には、物理的および化学的な刺激に対して高い耐性を有し、特に高い電解質の保持能力を有していることが必要である。まず、電解質溶媒として多用されているニトリル系溶媒やカーボネート系溶媒などの極性の高い溶媒との相溶性の低い、すなわち、電解質に溶けにくく長期間に亘り構造の保持が可能であること、続いて、ガス透過性や水分透過性が低く、電解質中のヨウ素や電解質溶媒と導電剤とが反応しにくく、導電剤の変性を抑制することができることが必要である。これらの条件を満たすものとして、熱可塑性樹脂が多用されているが、熱可塑性樹脂は、熱によって軟化や溶融して封止できなくなってしまうため、光電変換素子の耐熱性が低くなるという問題があった。しかも、熱可塑性樹脂は、溶融時の粘度が高いため被着体との密着が完全ではなくミクロなボイドを有しており、これを起点に樹脂と被着体との界面に電解質が浸透して封止を破壊してしまう問題があった。
一方、熱硬化樹脂であるシリコーン樹脂は、空気中の水分で硬化し、耐熱性や耐寒性に優れているが、シリコーン樹脂は大気中の水分で厚膜硬化することからもわかるように、ガス透過性や水分透過性が高いという問題がある。そのため、電解質中のヨウ素や電解質溶媒を保持するためには、シリコーン樹脂の外側にエポキシ樹脂を配した二重封止によって透過を防ぐ必要がある。さらに、シリコーン樹脂の硬化は反応速度が遅く、硬化に時間を要するという問題があった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、低ガス透過性、低水分透過性を有し、基板との密着性、耐電解質性に優れた樹脂を絶縁性材料として用い、高い信頼性を有する導電性材料によって直列接続を可能とし、信頼性の高い光電変換素子モジュールを提供することを目的とする。
本発明は、光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールにおいて、隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の電極の第2の電極とを、オレフィン樹脂からなる絶縁性材料中に導電剤を含んだ導電性材料により電気的に接続することによって、前記課題を解決したものである。
すなわち、本発明の光電変換素子モジュールは、増感色素を担持した半導体層が被着された第1の電極と、前記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極と、前記第1の電極の半導体層と前記第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールであって、隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極とが、オレフィン樹脂からなる絶縁性材料中に導電剤を含んだ導電性材料により電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の光電変換素子モジュールは、低ガス透過性、低水分透過性を有し、基板との密着性、耐電解質性に優れたオレフィン樹脂を絶縁性材料として用い、高い信頼性を有する導電性材料によって電極間を直列に接続しているので、高い信頼性を有している。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の光電変換素子モジュールは、前記のごとく、増感色素を担持した半導体層が被着された第1の電極と、前記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極と、前記第1の電極の半導体層と前記第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールであって、隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極とを、オレフィン樹脂からなる絶縁性材料中に導電剤を含んだ導電性材料により電気的に接続しているが、この導電性材料は、隣接する光電変換素子の電解質を分離している。これによって、電解質の保持と電気的接続とを同時に行うことが可能になりモジュール全体で電極が占める面積(有効面積)を大きくでき、それによって、高出力ができるようになる。
本発明において、前記絶縁性材料としては、オレフィン樹脂を用いるが、このオレフィン樹脂は、電解質溶媒として多用されるニトリル系溶媒やカーボネート系溶媒などの極性の高い溶媒との相溶性が低く、すなわち、電解質に溶けにくく長期間にわたり構造の保持が可能であって、光電変換素子モジュールの長期信頼性を向上させることができる。しかも、オレフィン樹脂はガス透過性や水分透過性が低く、そのため、電解質中のヨウ素や電解質溶媒と導電剤とが反応しにくく、導電剤が変性するのを抑制することができ、この点からも、光電変換素子モジュールの長期信頼性を高めることができる。
上記のようなオレフィン樹脂の中でも、特に好ましいのは、熱硬化性オレフィン樹脂である。この熱硬化性オレフィン樹脂は、熱可塑性オレフィン樹脂と同様に、低ガス透過性、低水分透過性、電解質との低相溶性などの長所を有する上に、熱可塑性オレフィン樹脂の欠点である耐熱性の低さや樹脂と被着面との密着力の弱さを改善できる特性を有している。すなわち、熱硬化性オレフィン樹脂は、絶縁性材料として高い信頼性を有しており、信頼性の高い光電変換素子モジュールとすることができる。
この絶縁性材料として適した熱硬化性オレフィン樹脂の好適な市販品を例示すると、スリーボンド社から上市されている" Three Bond1152" 、" Three Bond1153" (いずれも、商品名)などが挙げられる。これらの" Three Bond1152" や" Three Bond1153" (いずれも、商品名)は、前記のように、アルケニル基を有するポリイソブチレン化合物、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物および触媒などからなる一液加熱硬化性オレフィン樹脂であるといわれていて、オレフィン樹脂が持つ耐溶媒性、低ガス透過性、低水分透過性などの優れた特徴を有しつつ、加熱によって容易に硬化することができるという特性を有している。
前記導電性材料を構成するために絶縁性材料中に含有させる導電剤としては、粒子状のものが好ましく、そのような導電剤粒子としては、少なくとも金属導体を含む微粒子であることが好ましい。これは金属粒子または金属メッキした樹脂粒子などの金属導体の体積抵抗率の低い粒子によって確実な電気接続を行うことができるからである。
また、前記導電剤としては、少なくともPt、Ni、Ti、Wのいずれかを含む微粒子であることが好ましい。これはそれらの金属が電解質に多用されているヨウ素と反応しにくく、電気的接続の信頼性を向上させることができるからである。それらの金属はそれぞれ単独で使用してもよく、また任意の種類、任意の粒径の導電剤粒子と併用してもよい。
前記導電剤粒子としては、金属粒子、金属メッキ処理された樹脂粒子、ガラスビーズやガラスファイバーやゴム粒子などの金属メッキ処理品の中から、適宜選択採用することができる。また、金属メッキ処理品では別種類の金属を多重メッキしたものでもよい。
前記絶縁性材料中への導電剤の混合は、絶縁性材料が熱硬化性オレフィン樹脂の場合、硬化する前であれば任意のタイミングで混入することが可能であるが、あらかじめ導電剤を絶縁性材料中に混入して混錬、真空脱泡を所定回数繰り返して分散、脱泡しておくことが好ましく、そのようにして調製した導電性材料はディスペンサーやスクリーン印刷などの既知の手法を利用して前記電極間の接続に使用することが好ましい。また、絶縁性材料が熱可塑性オレフィン樹脂の場合も、任意のタイミングで混入することが可能であるが、あらかじめ導電性材料を絶縁性材料中に混入して混錬、真空脱泡を所定回数繰り返して分散、脱泡しておくことが好ましく、そのようにして調製した導電性材料はシート状に成形し、パターニングしてリング状にしたものを前記電極の間の接続に使用することが好ましい。
前記導電剤粒子は、ウエット洗浄、ケミカル洗浄、CVD処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理などを行って粒子表面の洗浄や酸化膜の除去を行うことによって導電性を向上させることができる。また、導電性粒子と第1の電極(透明電極)と第2の電極(対電極)との密着性を高めるために粒子表面をシランカップリング剤やチタネートカップリング剤の表面処理剤で処理してもよい。また、それらの処理を複合して行ってもよい。
前記導電剤粒子の平均粒径は、0.1〜300μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。上記導電剤粒子は、篩い分けなどで粒度分布をコントロールすることもできるが、粒度分布の広く粒径が均一でない導電剤粒子も適宜選択採用することができる。
また、絶縁性材料には、被着面との接着力を高めるるためにシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などを添加してもよい。また、あらかじめ被着面にウエット洗浄、ケミカル洗浄、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理などを行って表面の洗浄や活性化を行っておいてもよい。
また、絶縁性材料には、それらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤などを適宜混合して使用することができる。
導電性材料は、透明性を有することが好ましい。これは、導電性材料が透明性を有していると、任意の色調に調整することが容易に行うことができるからである。このような色調の調整は顔料や染料などの色素や色素によって着色された微粒子などを混入したり、有色フィルムなどを張り合わせることなどによって実現できる。
導電性材料を調製するにあたって、絶縁性材料中に分散させる導電剤の量は、導電剤の種類や導電性材料に要求される導電性によっても異なるが、通常、導電性材料の全量中において導電剤が5〜80質量%になるようにすることが好ましく、特に10〜40質量%になるようにすることが好ましい。
次に、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の光電変換素子モジュールの一実施形態を示す断面図である。この図1に示す実施形態の光電変換素子モジュールは、光電変換素子を2個直列に接続したものであるが、図1において、この実施形態の光電変換素子モジュール1を構成する各光電変換素子2.1〜2.2は、それぞれ、基板3の一方の表面に形成された第1の電極(透明電極)5.1〜5.2を備えている。そして、この第1の電極5.1〜5.2の一方の面には、それぞれ、増感色素が担持された半導体層7.1〜7.2が被着されている。さらに、この増感色素が担持された半導体層7.1〜7.2に対峙して第2の電極(対電極)11.1〜11.2が配置されている。そして、この第2の電極11.1〜11.2は、別の基板21の一方の面に形成されている。半導体層7.1〜7.2と第2の電極11.1〜11.2との間にはそれぞれ電解質9.1〜9.2が配置されている。第1の電極5.2の外側の先端部には電気的接続部5.2aが形成されており、第2の電極11.1の外側の先端部には電気的接続部11.1aが形成されている。なお、複数設けられている部材に関する参照符号は、その複数設けられている部材を総称的に示す場合は、単に整数位の数字だけで示し、それらの部材を個別に示す必要があるときは、その整数位の数字の後にその部材間における識別のための数字をピリオドを介して付記した態様で示す。例えば、第1の電極を総称的に示す場合は「5」のみで示し、それらの第1の電極について個別に示す必要があるときは、「5.1」、「5.2」のように示す。そして、これは他の複数設けられている部材に関しても同様である。
一方の光電変換素子2.1の第1の電極5.1と他方の光電変換素子2.2の第1の電極5.2との間は、基板3上のギャップ15で分離され、同様に、一方の光電変換素子2.1の第2の電極11.1と他方の光電変換素子2.2の第2の電極11.2との間は、基板21上のギャップ17で分離されている。一方の光電変換素子2.1の電解質9.1と他方の光電変換素子2.2の電解質9.2との間は、オレフィン樹脂からなる絶縁性材料中に導電剤を含んだ導電性材料13によって分離されている。そして、第1の電極5.1〜5.2を備えた基板3と第2の電極11.1〜11.2を備えた基板21との間の両端部は封止材19によって封止されている。なお、基板3は透明基板であって、光電変換素子モジュール1は、この透明な基板3から入射光27を受ける。なお、ギャップ15に関しても、ギャップ17に関しても、それぞれ、基板3上とか、基板21上とか表現しているが、これは、光電変換素子モジュールの内面側を「上」と表現したことに基づいている。
この実施形態1の光電変換素子モジュール1の構造は、隣接する光電変換素子2.1と2.2との分離と一方の光電変換素子2.1の第1の電極5.1と他方の光電変換素子2.2の第2の電極11.2との電気的接続とを同時に行うことによって光電変換素子モジュール内に占める導電性材料13の面積割合を下げ、光電変換素子の有効面積の割合を高くすることができるので、光電変換素子モジュールの面積あたりの出力を高くすることができる。上記のように、この実施形態1の光電変換素子モジュールは、隣接する光電変換素子間の電解質の分離と電極間の電気的接続とを同時に行うために高度な作製技術が必要になるものの、工程数を少なくすることができ、大量生産しやすい。また、熱硬化性オレフィン樹脂からなる絶縁性材料に導電剤粒子を分散させた導電性材料を用いれば、スクリーン印刷やディスペンサー塗布が可能となるので、さらに工程数を少なくすることができ、より大量生産しやすくなる。
本実施形態1の光電変換素子において、基板3は透明材料、すなわち、透光性を有する材料から形成されているが、この基板3には、通常、ガラスやフィルムが使用される。また、透明樹脂板の使用も可能である。基板3の光透過率は高いほどよく、好ましい光透過率は50%以上であり、より好ましくは80%以上である。また、可撓性のある透明フィルムを基板に用いると、さらに電極の大量生産が容易となり製造コストの低減を図ることができる。
基板3には、ガラス、透明フィルム、透明樹脂板などが用いられるが、その透明フィルムや透明樹脂板としては、例えば、再生セルロースフィルム、ジアセテートセルロースフィルム、トリアセテートセルロースフィルム、テトラアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、塩酸ゴムフィルム、ナイロンフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム、ポリ四フッ化エチレンフィルムなどが挙げられる。それらの中でも、特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルムなどは、強靭でかつ耐熱性に優れているので特に好ましい。
基板3の一方の面に形成される第1の電極5.1〜5.2は、それぞれの光電変換素子の負極として機能し、基板3上に導電材層を積層することによって形成される。好ましい導電材としては、透明導電性の金属酸化物、例えば、インジウム−錫複合酸化物、アンチモンをドープした酸化錫、フッ素をドープした酸化錫などが挙げられる。第1の電極5.1〜5.2は基板3の一方の面に形成されており、パターニングされたギャップ15.2によって仕切られている。このギャップ15.2の形成は、パターンに沿って、表面掘削、レーザスクライビング、エッチングなどにより、前記透明導電膜を取り除くことによって行うことができるが、特にエッチングを採用することが好ましい。このエッチングとしては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング、電解エッチング、レーザーエッチング、フォトエッチングなどが挙げられるが、特にレーザーエッチングが好ましい。このレーザーエッチングは、ドライでエッチングすることが可能で、ウエットエッチングの場合に必要な、パターンのマスク形成、薬液処理、洗浄、乾燥などの工程を簡素化することができる。さらに、レーザーエッチングは前記半導体層7.1〜7.2の形成前でも、形成後でも行うことができ、任意のタイミングでエッチングすることが可能である。
第1の電極5.1〜5.2は、表面抵抗が低いほど好ましい。好ましい表面抵抗値としては、50Ω/□以下であり、より好ましくは30Ω/□以下である。下限値に特に制限はないが、通常、0.1Ω/□以上である。
第1の電極5.1〜5.2は、光透過率が高いほど好ましい。好ましい光透過率としては、50%以上であり、より好ましくは80%以上である。第1の電極5.1〜5.2の厚みは、0.1〜10μmの範囲内にあることが好ましい。この範囲内であれば、均一な厚みの電極を形成することが容易となり、また、光透過性が低下せず、充分な光を半導体層7.1〜7.2に入射させることができるからである。この第1の電極5.1〜5.2が透明な場合は、基板3側から光を入射させることが好ましい。
前記第1の電極5.1〜5.2の対電極となる第2の電極11.1〜11.2は光電変換素子モジュール1の正極として機能し、前記増感色素が担持された半導体層7.1〜7.2が被着される側の第1の電極5.1〜5.2と同様に形成できる。第2の電極11.1〜11.2を光電変換素子モジュール1の正極として効率よく作用させるためには、電解質の還元体に電子を与える触媒作用を有する素材を使用することが好ましい。このような素材としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウムなどの金属、またはグラファイト、白金を担持したカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどのカーボン材料、またはポリチオフェン誘導体(PEDOT)、N、 N−ジ(ナフタレン−1−ニル)−N、 N−ジフェニル−ベンジデン誘導体(NPB)、ポリ[ 2−メトキシ−5−(2' −エチルヘキシルオキシ)−1、 4−フェニレンビニレン] (MEH−PPV)などの導電性高分子材料、またはインジウム−錫複合酸化物、アンチモンをドープした酸化錫、フッ素をドープした酸化錫などの導電性の金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも、白金、カーボン材料、ポリチオフェン誘導体などが特に好ましい。この第2の電極11.1〜11.2が形成される基板21は、第2の電極11.1〜11.2の形成面側に透明導電膜(図示せず)を有することもできる。この透明導電膜は、例えば、第1の電極5.1〜5.2の場合と同じ材料から形成することができる。このとき、第2の電極11.1〜11.2は、光電変換素子モジュールの透光性を失わないように、できるかぎり薄層化し、透明にすることが好ましい。
第2の電極11.1〜11.2のギャップ17.1は、パターンに沿って、表面掘削、レーザスクライビング、エッチングなどにより、前記透明導電膜を取り除くことによって形成することができるが、特にエッチングを採用することが好ましい。エッチングとしては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング、電解エッチング、レーザーエッチング、フォトエッチングなどが挙げられるが、レーザーエッチングがより好ましい。レーザーエッチングは、ドライでエッチングすることが可能で、ウェットエッチングの場合に必要な、パターンのマスク形成、薬液処理、洗浄、乾燥などの工程を簡素化することが可能である。また、レーザーエッチングは、パターン化されていない第2の電極と前記透明導電膜とを同時にエッチングすることが可能であって、さらなる工程の簡素化が可能である。例えば、ウェットエッチングは、パターニングされた前記透明導電膜上に、第2の電極11.1〜11.2として白金を被着するには、前記透明導電膜と同一のパターンのマスクを用いて真空成膜により白金を堆積させたり、塩化白金酸の熱処理で白金粒子を被着したり、めっきする方法を採用することになるが、レーザーエッチングは、前記透明導電膜の一面に白金を被着したのち、これを同時にエッチングしパターンを形成して第2の電極11.1〜11.2とすることが可能である。
基板21は、基板3と同じ材料を使用することができる。また、不透明な金属材料なども用いることができるが、透明フィルムや透明ガラスを用いることが好ましい。
半導体層7.1〜7.2は、半導体粒子の分散塗料を公知慣用の方法、例えば、ドクターブレードやバーコータなどを使う塗布方法、スプレー法、ディップコーティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、電着法などにより、第1の電極5.1〜5.2の表面に成膜し、その後、必要に応じて半導体層7.1〜7.2の固定化処理を行うことが好ましい。固定化処理の方法としては、加熱処理や加圧処理などが挙げられる。加熱処理条件としては、電気炉やホットプレート、マイクロ波などによる加熱方式が好ましく、ガラス基板の場合400〜600℃程度、フィルム基板の場合80℃〜250℃程度が好ましい。また、加圧処理としては、プレス機やカレンダなどによる加圧が挙げられ、圧力としては1MPa〜200MPa程度が好ましい。また、半導体層7.1〜7.2のパターンは、半導体層7.1〜7.2を第1の電極5.1〜5.2の表面に形成できるパターンであればよい。
半導体層7.1〜7.2の厚みは0.1〜100μmの範囲内であることが好ましい。この範囲内の厚みであれば、充分な光電変換効果が得られ、また、可視光および近赤外光に対する透過性が悪化することもないからである。半導体層7.1〜7.2の厚みの一層好ましい範囲は1〜50μmであり、特に好ましい範囲は5〜30μmであり、最も好ましい範囲は10〜20μmである。
半導体層を形成するための半導体材料としては、例えば、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Crなどの金属元素の酸化物、SrTiO3 、CaTiO3 などのペロブスカイト、またはCdS、ZnS、In2 3 、PbS、Mo2 S、WS2 、Sb2 3 、Bi2 3 、ZnCdS2 、Cu2 Sなどの硫化物、CdSe、In2 Se3 、WSe2 、HgS、PbSe、CdTeなどの金属カルコゲナイド、その他GaAs、Si、Se、Cd2 3 、Zn2 3 、InP、AgBr、PbI2 、HgI2 、BiI3 など、または前記半導体材料から選ばれる少なくとも1種類を含む複合体、例えば、CdS/TiO2 、CdS/AgI、Ag2 S/AgI、CdS/ZnO、CdS/HgS、CdS/PbS、ZnO/ZnS、ZnO/ZnSe、CdS/HgS、CdSx /CdSe1-x 、CdSx /Te1-x 、CdSex /Te1-x 、ZnS/CdSe、ZnSe/CdSe、CdS/ZnS、TiO2 /Cd3 2 、CdS/CdSeCdy Zn1-y S、CdS/HgS/CdSなどが挙げられる。それらの中でも、TiO2 が、グレッツェル・セルにおいて、電解液中への光溶解の回避と高い光電変換特性を実現できる点で好ましい。
半導体材料は、微粒子状で用いることが好ましく、その半導体粒子の粒径は、一般的に5〜1000nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内の粒径であれば、半導体層7.1〜7.2の細孔径が適切な孔径になり、電解質が半導体層7.1〜7.2の中に充分に浸透して、優れた光電変換特性を得ることができるからである。特に好ましい半導体粒子の粒径は、10〜100nmの範囲である。
半導体層7の厚みまたは半導体粒子の粒径を制御することにより、半導体層7のラフネスファクター(基板面積に対する半導体層内部の実面積の割合)を決定することができる。ラフネスファクターは20以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましい。この範囲内のラフネスファクターであれば、増感色素の担持量が充分となり、光電変換特性を向上できる。ラフネスファクターの上限値は一般的に5000程度である。ラフネスファクターは半導体層7の厚みを厚くすると大きくなって、半導体層7の表面積が広がり、増感色素の担持量の増加が期待できる。しかし、半導体層7の厚みが厚くなりすぎると、半導体層7の光透過率および抵抗損失への影響が現れはじめる。
また、半導体層7に界面活性剤、ポリエチレングリコール、セルロース系材料などを添加し、半導体層7の加熱処理時にそれらを燃焼することによって半導体層7を多孔質にしたり、半導体粒子の粒径を変更したりすることで半導体層7のポロシティーを高くすれば、半導体層7の厚みを厚くしなくてもラフネスファクターを大きくすることが可能である。しかしながら、ポロシティーが高すぎると、半導体粒子間の接触面積が減少して抵抗損失の影響を考慮しなくてはならなくなる。このようなことから、半導体層7のポロシティーは50%以上が好ましく、その上限値は一般的に約80%程度である。半導体層7のポロシティーは液体窒素温度下で窒素ガスまたはクリプトンガスの吸着−脱離等温曲線の測定結果から算出することができる。
増感色素としては、従来の色素増感性光電変換素子で常用されている色素であればすべて使用できる。このような色素としては、例えば、RuL2 (H2 O)2 タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体またはルテニウム−トリス(RuL3 )、ルテニウム−ビス(RuL2 )、オスニウム−トリス(OsL3 )、オスニウム−ビス(OsL2 )タイプの遷移金属錯体、または亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニンなどが挙げられる。有機色素としては、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素などが挙げられる。これらの中でも、ルテニウム−ビス(RuL2 )誘導体は、可視光域で広い吸収スペクトルを有することから、特に好ましい。
半導体層7.1〜7.2へ増感色素を担持させる方法は、例えば、増感色素を溶解させた溶液に、半導体層7.1〜7.2を被着させた第1の電極5.1〜5.2を備えた基板3を浸漬させる方法が挙げられる。この溶液の溶媒としては、例えば、水、アルコール、トルエン、ジメチルホルムアミドなどの増感色素を溶解可能なものであればすべて使用できる。また、浸漬方法として、増感色素溶液に半導体層7.1〜7.2を被着させた第1の電極5.1〜5.2を備えた基板3を一定時間浸漬させている時に、加熱還流や超音波を印加する方法を採用することもできる。半導体層7.1〜7.2への色素担持後、担持せずに半導体層7.1〜7.2に残ってしまった増感色素を取り除くために、アルコールで洗浄または加熱還流することが好ましい。さらに、増感色素が担持されてない半導体粒子の表面を被覆するために、アルコール中にt−ブチルピリジンを溶かしておいてもよい。アルコール中にt−ブチルピリジンが存在すると、半導体粒子と電解質との界面では、増感色素およびt−ブチルピリジンによって半導体粒子の表面と電解質とをセパレートすることができ、漏れ電流を抑制することが可能なため、光電変換素子の特性を著しく向上させることができる。
半導体層7への増感色素の担持量としては、1×10-8〜1×10-6mol/cm2 の範囲が好ましく、特に0.1×10-7〜9.0×10-7mol/cm2 の範囲が好ましい。増感色素の担持量がこの範囲内であれば、経済的かつ充分に光電変換効率の向上効果を得ることができる。
本実施形態1の光電変換素子モジュール1における電解質9.1〜9.2を構成するために使用される電解物質としては、酸化体と還元体とからなる一対の酸化還元系構成物質が含まれていれば、特にその種類は限定されないが、酸化体と還元体とが同一電荷を持つ酸化還元系構成物質が好ましい。この明細書における酸化還元系構成物質とは、酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体の形で存在する一対の物質を意味する。本実施形態1で使用できる酸化還元系構成物質としては、例えば、塩素化合物−塩素、ヨウ素化合物−ヨウ素、臭素化合物−臭素、タリウムイオン(III) −タリウムイオン(I) 、水銀イオン(II)−水銀イオン(I) 、ルテニウムイオン(III) −ルテニウムイオン(II)、銅イオン(II)−銅イオン(I) 、鉄イオン(III) −鉄イオン(II)、バナジウムイオン(III) −バナジウムイオン(II)、マンガン酸イオン−過マンガン酸イオン、フェリシアン化物−フェロシアン化物、キノン−ヒドロキノン、フマル酸−コハク酸などが挙げられる。それらの中でも、ヨウ素化合物−ヨウ素が好ましく、ヨウ素化合物としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウムなどの金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージドなどのヨウ化4級アンモニウム塩化合物、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムなどのヨウ化イミダゾリウム化合物が特に好ましい。
電解質は、通常、電解物質を溶媒中に溶解させることによって調製されるが、その電解物質を溶解するための溶媒としては、水性溶媒、有機溶媒のいずれも使用できるが、酸化還元系構成物質などの電解物質をより安定化させるため、有機溶媒が好ましい。この有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル化合物、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドラフランなどのエーテル化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドンなどの複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル化合物、スルフォラン、ジジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミドなどの非プロトン性極性化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いることもできるし、また、2種類以上を併用することもできる。それらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネ−ト化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドンなどの複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル化合物が特に好ましい。電解質は、液状のものに限られることなく、他の形態のものも用いることができるが、例えば、液状の電解質を高分子マトリックスに保持させてゲル状にした状態で用いてもよい。そのような高分子マトリックスとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレンなどの重合性モノマーを単独で重合させた単独重合体またはそれらのモノマーを2種以上共重合させた共重合体などを用いることができる。
封止材19を構成する基材物質としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ブチルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、低密度ポリエチレン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アイオノマー樹脂のほか、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。それらの中でも、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、ブチルゴム、フッ素を含む樹脂が好ましい。また、電解質溶媒としてニトリル系溶媒、カーボネート系溶媒を使用する場合には、それらの溶媒と相溶性の低い、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、オレフィン樹脂、熱硬化オレフィン樹脂などが好ましい。
また、封止材19には、それらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤などを適宜混合することができる。
また、封止材19には、基板3、基板21、第1の電極(透明電極)5.1〜5.2および第2の電極(対電極)11.1〜11.2との接着力を高めるるためにシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などを添加してもよい。また、あらかじめ基板3、基板21、第1の電極(透明電極)5.1〜5.2および第2の電極(対電極)11.1〜11.2に、ウエット洗浄、ケミカル洗浄、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理などを行って、それら表面の洗浄や活性化を行ってもよい。
また、封止材19中には、第1の電極(透明電極)5.1〜5.2と第2の電極(対電極)11.1〜11.2との電極間距離を規制するためのスペーサーを存在させることが好ましい。そのような目的で用いられるスペーサーは、一般にスペーサーとして用いられる公知の絶縁性樹脂ボール、ガラスビーズ、ガラスファイバーなどから適宜選択することができる。また、その粒径は、0.1〜300μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。
封止材19のパターンは、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂を使用する場合、ディスペンサーやスクリーン印刷などの既知の手法によって形成することができる。また、ホットメルト樹脂を使用する場合は、シート状のホットメルト樹脂にパターニングした孔を穿けて、環状などの所望の封止パターンにすることができる。
さらに、封止材19の周囲を、樹脂、金属、ガラスなどで補強することによって、二重封止とすることで、光電変換素子モジュールの強度と長期信頼性を向上させることが可能である。そのような樹脂としては、アクリレートスチレンアクリロニトリル共重合体(AAS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、塩素化ポリエチレンアクリロニトリルスチレン共重合体(ACS)、アクリル酸エステル共重合体、オレフィンビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT)、セルロース、塩素化ポリエーテル、クマロン樹脂、塩素化ポリエチレン、アリル樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢ビ- 塩ビ共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、線状低密度ポリエチレン、ケトン樹脂、メタクリル酸ブタジエンスチレン共重合体(MBS)、メタクリル−スチレン共重合体(MS)、ニトリル樹脂、オキシベンイルポリエステル、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂(PF)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(ナイロン)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリレート(PAR)、ポリアリルスルホン(PASF)、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン(PESF)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、アイオノマー樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン(PSF)、ポリスチレン(PS)、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)、スチレン共重合体、ブタジエン−スチレン樹脂、ポリウレタン(PUR)、ビニルアセテート系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、シリコーン樹脂(SI)、熱硬化オレフィン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、アラミドアラミド系強化繊維、ポリアミノアミド系樹脂、フッ素を含む樹脂、またはそれらの変成物やガラス強化物など、この他にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどを使用することができ、これらの中から被着面の材質に応じて適宜選択して使用することができる。特に、経済性、強度、耐衝撃性、被着面との接着力、取り扱いの容易さから、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂、オレフィン樹脂、フッ素を含む樹脂を用いることが好ましい。
電解質注入孔(図示せず)は、第2の電極11.1〜11.2部分に、穿孔するなどによって、それぞれ設けられる。この電解質注入孔は電解質を半導体層7.1〜7.2と第2の電極11.1〜11.2との間に注入するために設けられる。電解質注入孔は、少なくとも1つ形成されていればよいが、注入量が多い場合などは、適宜その数を増やしてもよい。電解質注入孔は、基板21などの水平面上に設けてあっても、封止材19などの垂直面上に設けてあってもよい。
電解質注入孔は封止材によって封止される。そのような封止材としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ホットメルト樹脂、ガラスなどを用いることが好ましいが、電解質注入孔は電解質の注入後すぐに封止しなければならないので、短時間で封止できるようなシリコーン粘着テープやアイオノマー樹脂の熱融着による封止が好ましい。さらに、電解質注入孔の封止強度を高めるために、シリコーン粘着テープや熱融着されたアイオノマー樹脂を覆うように、エポキシ樹脂や紫外線硬化樹脂、ガラスを配置することがより好ましい。
光電変換素子モジュールから電力を取り出すためには外部端子が設けられる。この外部端子は任意に接続可能であり、光電変換素子や光電変換素子モジュール同士の直列または並列接続や外部回路と接続することができる。この外部端子は、導電箔、導線、導電テープ、導電メッシュおよび導電塗料から選択された少なくとも1種で形成されていることが好ましく、この外部端子と第1の電極5.1〜5.2や第2の電極11.1〜11.2との接続は、金属導体とそれらをカバーする異方導電材料、導電塗料、真空成膜、はんだ付けなどによって行われる。
本実施形態1における光電変換素子モジュールは、フッ素を含む樹脂で覆うことができる(図示せず)。これにより、光電変換素子モジュールの強度や耐衝撃性を向上させることができる。このフッ素を含む樹脂は、光電変換素子モジュールの最外層に使用することから、水蒸気などのガスバリヤー性、透明性、強度、耐候性に優れていることが好ましい。
前記フッ素を含む樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)などが挙げられる。これらは通常フィルムにして使用される。その際、いずれかの樹脂からなる単独フィルムとして用いてもよく、また、2種以上を積層した積層フィルムとして用いてもよい。また、2種以上を積層した積層フィルムは、耐候性透明フィルムにフッ素樹脂塗料を塗布することによって積層されたフィルムであってもよい。また、これらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤、カップリング剤などを前記樹脂に適宜混合して使用することができる。
前記2種以上を積層した積層フィルムに用いられる耐候性透明フィルムとしては、例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、セルロースアセテートフィルム、アクリル樹脂フィルム、耐候性ポリエチレンテレフタレートフィルム、耐候性ポリプロピレンフィルム、ガラス繊維強化ポリエステルフィルム、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネートフィルムなどを使用することができる。
前記2種以上を積層した積層フィルムに用いられる耐候性透明フィルムとしては、接着性、透明性、耐候性などのほか、充填材としての機能も備えたアクリル系接着剤、エポキシ樹脂、ホットメルト樹脂などの接着剤をフィルム状にして用いることも可能である。それらの中でも、熱流動性に優れたホットメルト樹脂を必要な厚さで用いることが、性能、生産性、経済性などの点で好ましい。
このようなホットメルト樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、線状低密度ポリエチレン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アイオノマー樹脂のほか、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどを使用することができ、それらの中から、被着面の材質に応じて適宜選択して使用すればよい。
また、前記フッ素を含む樹脂の耐候性を更に向上させるために、光酸化安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤を添加することができる。例えば、紫外線吸収剤としては無機微粒子が好適であり、例えば、TiO2 などの微粒子を用いることができる。さらに、水蒸気その他のガスバリヤー性を向上させたい場合は、それらの樹脂からなるフィルムに酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物の蒸着層を設けることもできる。
光電変換素子モジュールをフッ素を含む樹脂で覆う方法としては、性能、生産性、経済性などの点で真空ラミネート法が好ましい。真空ラミネート法の使用によって光電変換素子モジュール内に空気を含ませることなく樹脂で覆うことができる。
前記フッ素を含む樹脂フィルムは、その表面またはその内面側に、光反射防止のための微細な凹凸加工、あるいは、金属化合物または金属の薄膜形成加工をすることができる。これにより、フィルムで反射される光を少なくすることができるので、外部から入射する光を有効に利用することができ、太陽電池モジュールの発電効率のアップに寄与できる。前記微細な凹凸加工は、エンボス加工や紫外線硬化性樹脂によるコーティングなどによって行う。また、金属化合物の薄膜形成加工は、MgF2 、ZnS、SnO2 、Cr2 3 などの微粒子を用いた薄膜コートによって行う。さらに、金属を用いる場合は、Alなど透明性を損なわない程度に薄く蒸着することによって加工できる。
なお、前記第1の電極および前記第2の電極から選ばれる少なくとも1つは、合成樹脂フィルムからなる基板の上に形成されていてもよい。これは基板が可撓性を有するため電極の大量生産が容易となり、製造コストの低減を図ることができるからである。
〔実施例〕
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
絶縁性材料100質量部に対して上記導電剤25質量部を投入し、混練と真空脱法を繰り返し行うことにより均一分散と気泡の除去を行って導電性材料を調製した。上記絶縁性材料としては、スリーボンド社製の一液加熱硬化性オレフィン樹脂" Three Bond1152" (商品名)を使用し、上記導電剤としては、東邦チタニウム社製のTi粒子" TC450" (商品名、平均粒径45μm)を使用した。そして、上記導電性材料中における導電剤の量は導電性材料全量中の20質量%である。
縦41mm、横30mmに切り出した旭硝子社製の導電性ガラス板" F−SnO2"(商品名、フッ素がドープされたSnO2 を表面にコーティングして導電性を付与した透明導電膜付きガラス板、表面抵抗10Ω/□、厚さ1mm)の横側片端から11.75mm間隔、1.75mm幅で透明導電膜を除去しパターンニングした。この透明導電膜の除去にあたっては、除去する部分を除いてマスキングテープによりマスクした後、酸化亜鉛粉末と濃度が10質量%の塩酸水溶液とを作用させてマスクされていない透明導電膜をエッチング処理して透明導電膜を部分的に除去し、残りの透明導電膜を電極として利用できるようにした。これを図1にあわせて説明すると、ガラス板からなる基板3上に透明導電膜からなる第1の電極5.1〜5.2を形成したことになる。
平均一次粒子径が20nmの高純度酸化チタン粉末をエチルセルロース中に分散させ、スクリーン印刷用のペーストを調製した。続いて、スクリーン印刷用のペーストをパターンニング済みの上記導電性ガラス板上に塗布し、乾燥し、得られた乾燥物を500℃で30分間空気中で焼成し、基板上に厚さ10μmの多孔質酸化チタン膜を形成した。得られた酸化チタン膜は、除去されていない透明導電膜上に37mm×8mmサイズに各2箇所設置した。次に、この酸化チタン膜を備えた導電性ガラス板をRu(4,4' −ジカルボキシル−2,2' −ビピリジン)2 (NCS)2 で表される増感色素溶液中に浸漬し、25℃で2日間かけて増感色素の担持処理を行った。これを図1にあわせて説明すると、第1の電極5.1〜5.2上に酸化チタン膜からなる半導体層7.1〜7.2が形成され、その半導体層7.1〜7.2に増感色素が担持されている。つまり、これによって、増感色素を担持した半導体層7.1〜7.2が被着された第1の電極が得られた。
次に、前記と同様の導電性ガラス板に前記第1の電極の場合と同様のパターンを形成し、除去面をマスキングテープでマスクし濃度が5質量%の塩化白金酸/エタノール溶液を塗布、乾燥した後、400℃で15分間加熱処理することによってガラス板からなる基板21上に白金を堆積させて対電極としての第2の電極を形成した。電解質注入孔は、光電変換素子モジュールを組み立てたときに、第2の電極11.1〜11.2と向かい合う半導体層7.1〜7.2の角近傍の位置に配置するように設置した。
次に得られた第1の電極の半導体層7.1〜7.2全体の周囲を、積水化学工業社製の樹脂ボール" ミクロパール" (商品名、30μm)を1質量%添加したスリーボンド社製の一液加熱可塑性オレフィン樹脂" Three Bond1152" (商品名)を封止材19として用いて塗布した。次に半導体層(酸化チタン膜)7.1〜7.2間の第2の電極11.1〜11.2との電気的接続部分に、前記のように調製した導電性材料を自動ディスペンサーで塗布した。次に、この半導体層7.1〜7.2を有する第1の電極5.1〜5.2を備えた基板3と第2の電極11.1〜11.2を備えた基板21とを図1の構造となるように張り合わせて封止と直列接続とを行った。すなわち、一方の光電変換素子2.1の第1の電極5.1と他方の光電変換素子2.2の第2の電極11.2とを前記導電性材料13によって直列に接続した。上記導電性材料13と封止材19の基材樹脂の硬化は、100℃で60分間加熱することによって行い、この間、第1の電極5と第2の電極11とがずれないようにバチ型クリップを使い加圧静置した。上記のように導電性材料13と封止材19に同じ樹脂を用いているので、同一条件で同時に硬化させることができる。
硬化後、各光電変換素子の電解質注入孔から電解質を減圧注入法により第1の電極5.1〜5.2の半導体層7.1〜7.2と第2の電極11.1〜11.2との間に注入した。電解質としては、0.5mol/Lのテトラプロピルアンモニウムアイオダイド、0.01mol/Lのヨウ化リチウム、0.01mol/Lのヨウ素、0.9mol/Lの4−tert−ブチルピリジンを含むγ−ブチロラクトン溶液を用いた。電解質注入後、電解質注入孔の周囲に付着した電解質をアルコールでよく拭き取り、シリコーン粘着付きイミドテープで電解質注入孔を封止した後、厚み0.3mmのカバーガラスをコニシ社製の熱硬化性エポキシ樹脂" Eセット" (二液混合型)を用いてシリコーン粘着テープに被覆接着した。以上のようにして、本実施例1の2直列光電変換素子モジュールを作製した。
このようにして得られた2直列光電変換素子モジュールには、基板3側から入射光27を入射させる。そして、図1中の5.2aは第1の電極側の電気的接続部であり、11.1aは第2の電極側の電気的接続部であり、これらはそれぞれ基板3上の透明導電膜と基板21上の透明導電膜で構成されている。そして、これらの電気的接続部5.2aや11.1aは、この光電変換素子モジュールを外部端子と接続したり、または他の光電変換素子や光電変換素子モジュールと接続する場合の電気的な接続部として使用される。
このようにして得られた2直列光電変換素子モジュールにソーラーシミュレータで擬似太陽光(10mW/cm2 、AM1.5)を照射し、光電流−電圧特性を測定した。その結果、開放端電圧1270mV、短絡電流1.42mA、形状因子0.582、最大出力1.05mWの特性を得た。
この光電変換素子モジュールを、60℃、3日間の恒温貯蔵試験を行った後、光電流−電圧特性を測定したが、特に目立った変化は見られなかった。
比較例1
実施例1と同様の手順で2直列光電変換素子モジュールを作製した。ただし、導電性材料には、実施例1の" Three Bond1152" (商品名、前出)にTi粒子を添加したものに代えて、エポキシ樹脂" Eセット" (前出)にTi粒子を添加したものを用いた。" Eセット" の硬化には、一晩室温で放置した。
このように作製した2直列光電変換素子モジュールは、実施例1と同様に光電流−電圧特性を測定したところ、開放端電圧1249mV、短絡電流1.40mA、形状因子0.573、最大出力1.00mWの特性が得られた。
しかしながら、この比較例1の光電変換素子モジュールを、60℃、3日間の恒温貯蔵試験を行ったところ、導電性材料のエポキシ樹脂が電解質に溶解したため光電流−電圧特性を測定することができなかった。
比較例2
実施例1と同様の手順で2直列光電変換素子モジュールを作製した。ただし、導電性材料には、実施例1の" Three Bond1152" (商品名、前出)にTi粒子を添加したものに代えて、スリーボンド社製の導電ペースト" Three Bond3301" (商品名、導電粒子:Ag、バインダ:シリコーン樹脂)を用いた。この" Three Bond3301" の硬化には、150℃で60分間加熱した。
このようにして作製した2直列光電変換素子モジュールは、電解質注入と同時に電解質中のヨウ素とAgとが反応したために光電流−電圧特性を測定することができなかった。
本発明の光電変換素子モジュールの一実施形態を概略的に示す断面図である。
符号の説明
1 光電変換素子モジュール
2(2.1〜2.2) 光電変換素子
3 基板
5(5.1〜5.2) 第1の電極
5.2a 電気的接続部
7(7.1〜7.2) 半導体層
9(9.1〜9.2) 電解質
11(11.1〜11.2) 第2の電極
11.1a 電気的接続部
13 導電性材料
15 ギャップ
17 ギャップ
19 封止材
21 基板
27 入射光

Claims (6)

  1. 増感色素を担持した半導体層が被着された第1の電極と、前記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極と、前記第1の電極の半導体層と前記第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールであって、隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極とが、オレフィン樹脂からなる絶縁性材料中に導電剤を含んだ導電性材料により電気的に接続されていることを特徴とする光電変換素子モジュール。
  2. 前記導電性材料が、隣接する光電変換素子の電解質間を分離していることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子モジュール
  3. 前記絶縁性材料を構成するオレフィン樹脂が、熱硬化性オレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子モジュール。
  4. 前記熱硬化性オレフィン樹脂が、一液加熱硬化性オレフィン樹脂であることを特徴とする請求項3記載の光電変換素子モジュール
  5. 前記導電剤が、少なくとも金属導体を含む微粒子であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子モジュール。
  6. 前記導電剤が、少なくともPt、Ni、Ti、Wのいずれかを含む微粒子であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子モジュール。
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