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JP2005041942A - 発光物質及びそれを用いた発光装置、並びに発光装置を用いた照明装置、画像表示装置 - Google Patents

発光物質及びそれを用いた発光装置、並びに発光装置を用いた照明装置、画像表示装置 Download PDF

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JP2005041942A
JP2005041942A JP2003201125A JP2003201125A JP2005041942A JP 2005041942 A JP2005041942 A JP 2005041942A JP 2003201125 A JP2003201125 A JP 2003201125A JP 2003201125 A JP2003201125 A JP 2003201125A JP 2005041942 A JP2005041942 A JP 2005041942A
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秀彦 小原
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Tetsuo Murayama
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Abstract

【課題】発光強度が高く、かつ、演色性が高い、又は、色再現範囲が広い発光物質、及び波長変換材料としての該発光物質と紫外光から可視光の範囲の光を発光する発光体とから構成されてなる発光装置、並びに、該発光装置を光源とする照明装置及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】平均ポアサイズが5〜500nmの多孔質無機粒子に蛍光性錯体を含有することを特徴とする発光物質。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は発光物質及びそれを用いた発光装置に関し、詳しくは、電力源により350−415nmの光から可視光領域の光を発光する第1の発光体と、その紫外光から可視光領域にある光を吸収しその光より長波長の可視光を発する発光物質となる蛍光体を有する波長変換材料としての第2の発光体とを組み合わせることにより、使用環境によらず演色性が良く、色再現範囲が広く、かつ、高強度の発光を発生させることのできる発光物質及びそれを用いた発光装置、及び、それを使用した照明装置と画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
青、赤、緑の混色により、白色その他の様々な色を、むらなくかつ演色性良く色再現範囲の広い状態で発生させるために、LEDやLDの発光色を蛍光体で色変換させた発光装置が提案されている。例えば、特公昭49−1221号公報では、300−530nmの波長の放射ビームを発するレーザーのビームを燐光体(Y3−x−yCeGd5−zGa12(YはY、Lu,またはLa、MはAl、Al−In、またはAl−Scを表す。))に照射させ、これを発光させてディスプレーを形成する方法が示されている。また、近年では、青色発光の半導体発光素子として注目されている発光効率の高い窒化ガリウム(GaN)系LEDやLDと、波長変換材料としての蛍光体とを組み合わせて構成される白色発光の発光装置が、消費電力が小さく長寿命であるという特徴を活かして照明装置や画像表示装置の発光源として提案されている。実際に、特開平10−242513号公報において、この窒化物系半導体のLED又はLDチップを使用し、蛍光体としてイットリウム・アルミニウム・ガーネット系を使用することを特徴とする発光装置が示されている。また、米国特許第6,278,135号明細書においては、蛍光体がLEDからの紫外光を受けて可視光を発する発光装置において、その蛍光体としてBaMgAl1627:Eu2+などの無機蛍光体が示されている。
【0003】
しかしながら、今までのところ、LED等の第1の発光体に対し、特開平10−242513号公報に示されるようなイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を第2の発光体として組み合わせたような発光装置では、発光強度を高くすると同時に演色性を高くするかもしくは色再現範囲を広くすることはできず、その発光装置を使用してなる照明装置やそれをディスプレイ用バックライト光源として使用してなる画像表示装置はさらなる改良が求められている。
【0004】
また、蛍光灯における白色光は、3色の無機蛍光体から放射される蛍光の組み合わせにより実現されている。GaN系LEDから高効率に発せられる400nm付近の励起光で効率良く発光する無機蛍光体としては、ZnS:Cu,Al等の緑色蛍光体とBaMgAl1017:Eu等の青色蛍光体が見出されている。しかし、効率良く赤色発光を示す無機蛍光体は開発されておらず、最も高輝度に発光するYS:Eu蛍光体においても発光強度が不十分である。その結果、青色と緑色と赤色とを合わせた場合に高輝度の白色光が得られないことが問題となっており、効率の高い白色固体照明を実用化する上での妨げとなっている。
【0005】
無機赤色蛍光体の赤色光はEuイオンの発光による。同じ発光スペクトルはEu錯体色素でも観測され、通常の有機色素の蛍光に比べ発光スペクトル幅が狭く発光強度がはるかに高いことが知られており、無機蛍光体と同じ発光スペクトルのEu錯体色素を赤の蛍光体として用いることができれば、固体照明の白色光源が実現できるはずである。
【0006】
しかし、従来のEu錯体色素はバイオ関係を中心とする微量分析用が主な用途であるため、輝度の向上の研究は盛んに行われたものの、耐久性の必要性が低いため、耐光性の改良検討はほとんど行われておらず、既知のEu錯体色素では照明用の蛍光体として実用化することができない。
また、耐久性向上のためEu錯体色素をポアサイズ4.1nm、比表面積が600−800m/gである結晶性シリカ粒子に挿入した例(QinghongXu,Liansheng Li,Xinsheng Liu,Chemistry of Materials.,vol.14,pp549−555,2002)が知られているが、錯体の挿入量としてはたかだか8wt%程度であり十分な輝度が得られなかった。
【0007】
【特許文献1】
特公昭49−1221号公報
【特許文献2】
特開平10−242513号公報
【特許文献3】
米国特許第6,278,135号明細書
【非特許文献1】
Qinghong Xu,Liansheng Li,Xinsheng Liu,Chemistry of Materials.,vol.14,pp549−555,2002
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑み、発光強度が高く、かつ、演色性が高い、又は、色再現範囲が広い発光物質及びそれを用いた発光装置、及び、それを使用した照明装置または画像表示装置を得ることを目的になされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の細孔径を有する多孔質無機粒子に蛍光性錯体を含有する発光物質が、前記目的を達成できることを見出し、本発明に到達したもので、従って、本発明は、平均ポアサイズが5〜500nmの多孔質無機粒子に蛍光性錯体を含有してなる発光物質、及び、波長変換材料としての該発光物質と、紫外光から可視光の範囲の光を発光する発光体とから構成されてなる発光装置、並びに、該発光装置を光源とする照明装置及び画像表示装置、を要旨とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、平均ポアサイズが5〜500nmの多孔質無機粒子に蛍光性錯体を含有することを特徴とする発光物質及びそれを用いた発光装置、及び、該発光装置を有する照明装置、画像表示装置である。
本発明で使用する多孔質無機粒子の材質としては、SiO、TiO、Al、ZrO等の無機酸化物やそれらの混合物を用いることができるが、シリカを好適に用いることができる。
【0011】
本発明で使用する多孔質無機粒子は、平均ポアサイズとして5〜500nmであり、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜50nmである。平均ポアサイズが小さすぎる場合には蛍光性錯体を多量に多孔質無機粒子内に挿入するのが困難となる傾向にある。逆に大きすぎると、溶媒や水分等の侵入による蛍光性錯体の劣化により耐久性が低下する傾向にある。また、蛍光性錯体を樹脂等に分散しようとした場合、溶媒により一旦挿入された蛍光性錯体が外部にでてくる可能性がある。
【0012】
そこで、蛍光性錯体を多孔質無機粒子の内部につなぎとめるため、蛍光性錯体が多孔質無機粒子と結合していることが好ましく、例えば、多孔質無機粒子としてメソポーラスシリカを用いた場合、メソポーラスシリカのメソポア内部につなぎとめるため、Eu錯体等の金属イオンに配位可能なアミノ基をメソポーラスシリカ表面に形成させ、蛍光性錯体がシリカ粒子と結合していることが好ましい。
すなわち、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を用いてメソポーラスシリカの表面処理を行ない、シリカ粒子表面にアミノプロキル基などの官能基を導入した多孔質無機粒子を本発明では好ましく採用する。ここでシランカップリング剤は、組成式:(R)−Si−(R)(R)(R)で表され、Rは、アミノ基やカルボキシル基などの金属陽イオンに配位可能な官能基を少なくとも一つ以上含有する有機鎖であり、R、R、Rは組成式OCHで表されるメトキシ基、組成式OCHCHで表されるエトキシ基などである。
【0013】
本発明の多孔質無機粒子は、平均粒子径が1〜300μmの範囲にあり、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜20μmの範囲にある。小さすぎるとハンドリングが難しく、大きすぎると塗工した際に塗工面が凹凸となり均一な発光が得られにくくなる。
また、本発明の多孔質無機粒子がシリカ粒子の場合は、ポア体積と比表面積が通常のものより大きい範囲のものであり、ポア体積は、窒素ガス吸・脱着法で測定して0.6〜1.6ml/g、好ましくは0.8〜1.6ml/gである。ポア体積が小さい場合には蛍光性錯体の挿入量が少なく本発明の要求を満たさず、また、逆に大きすぎる場合には水分などがシリカ粒子中に入り込み易く蛍光性錯体の劣化につながる。また、比表面積は、50m/g以上、好ましくは200m/g以上、特に好ましくは300m/gである。上限としては、800m/g以下程度である。比表面積が小さい場合にはポアが十分に発達しておらず蛍光性錯体の挿入量が少なくなり、逆に大きい場合にはポアが多く水分が吸着しやすく、蛍光性錯体の劣化の原因となる。これら細孔容積と比表面積は窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0014】
更に、シリカ粒子では、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.H.Haklenda,J.Amer.Chem.Soc.,vol.73,373(1951)に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図上での最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、下限は特に制限はないが、好ましくは2nm以上である。このことは、本発明で用いられるシリカ粒子の最頻直径(Dmax)が、通常のシリカ粒子より小さい範囲のものであることを意味する。
【0015】
本発明で好適に用いられるシリカ粒子では、上記の最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の容積が、全細孔容積の通常50%以上、好ましくは60%以上であることが好ましい。また、上記の最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の容積は、全細孔容積の通常90%以下である。このことは、シリカ粒子が、最頻直径(Dmax)付近の細孔で揃っていることを意味する。
【0016】
かかる特徴に関連して、シリカ粒子は、上記のBJH法により算出された最頻直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常2.0〜20.0ml/g、特に5.0〜12.0ml/gであることが好ましい(なお、上式において、dは細孔直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である。
)。微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれるものは、最頻直径(Dmax)の付近に揃っている細孔の絶対量が極めて多いものと言える。
【0017】
本発明で好適に用いられるシリカ粒子は、以上の細孔構造の特徴に加えて、その三次元構造を見るに、非結晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないという特徴を有する。このことは、シリカ粒子をX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。本発明において非結晶質ではないシリカ粒子とは、X線回折パターンで6オングストローム(Å Units d−spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの結晶構造のピークを示すものを指す。非結晶質のシリカ粒子は、結晶性のシリカ粒子に較べて、極めて耐水性に優れている。
【0018】
その他、本発明で好適に用いられるシリカ粒子の構造に関しては、固体Si−NMRによる分析でも特徴ある結果が得られる。即ち、固体Si−NMRでは、本発明のシリカ粒子の、−OSiが3個結合したSi(Q3)と−OSiが4個結合したSi(Q4)とのモル比を示す「Q4/Q3」 の値が通常1.3以上、好ましくは1.5以上である。一般的に、「Q4/Q3」の値が大きいほど、その熱安定性が高いものと言われている。「Q4/Q3」の値は、通常10以下である。
【0019】
本発明で用いられるシリカ粒子は、シリカゲルの骨格を構成するケイ素を除いた、また挿入された蛍光性錯体を構成する金属原子を除いた金属不純物の合計含有量が通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、最も好ましくは1ppm以下というように、極めて高純度であるが、このように不純物の影響が少ないことは、シリカ粒子における耐熱性、耐水性などの優れた性質を発現させることができ、その結果発光物質として高輝度のものが得られる大きな要因の一つである。
【0020】
シリカ粒子の原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリまたはテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマーである。以上のシリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し得るので、高純度のシリカ粒子の原料として好適である。シリコンアルコキシド中の金属不純物の総含有量は、通常好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。金属不純物の含有量は、シリカ粒子中の不純物の測定法と同じ方法で測定できる。
【0021】
シリコンアルコキシドの加水分解は、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2〜20モル、好ましくは3〜10モル、特に好ましくは4〜8モルの水を用いて行う。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールが生成する。この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であるが、加圧下で液相を維持することでより高い温度で行うことも可能である。反応時間は反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。なお、反応系に、触媒として、酸、アルカリ、塩類などを添加することで加水分解を促進させることができる。
【0022】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。加水分解により生成したシリカのヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行う。この水熱処理の条件としては、水の状態が液体、気体のいずれでもよく、溶媒や他の気体によって希釈されていてもよいが、好ましくは液体の水が使われる。シリカのヒドロゲルに対して、通常0.1〜10重量倍、好ましくは0.5〜5重量倍、特に好ましくは1〜3重量倍の水を加えてスラリー状とし、通常40〜250℃、好ましくは50〜200℃の温度で、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜10時間実施される。水熱処理に使用される水には低級アルコール類、メタノール、エタノール、プロパノールなどが含まれてもよい。
【0023】
多孔質無機粒子に挿入される蛍光性錯体の挿入量としては、9wt%以上であり、好ましくは10wt%以上であり、上限としては、100wt%以下、好ましくは75wt%以下である。蛍光性錯体の挿入量が少ない場合には十分な輝度が得られにくく、逆に多すぎても挿入量の増加とともに輝度はほぼ飽和値に近づくため、挿入量に対応した輝度が得られるわけではない。
【0024】
蛍光性錯体としては希土類イオン錯体系蛍光体を用いることが好ましく、希土類元素としてはCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどの元素が使用できるが、Euが好適に用いられる。
また、希土類イオン錯体系蛍光体としては特に制限はないが、希土類イオン錯体の中でも、特に、無機蛍光体では困難である近紫外光照射において高輝度に発光する赤色蛍光体として、ユーロピウム錯体が好ましい。また、希土類イオン錯体は、芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンのアニオン、あるいは芳香族基を含む置換基を有するカルボン酸イオンを配位子とする錯体であることが好ましい。
【0025】
芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンのアニオンを配位子とする錯体としては、例えば、下記一般式(1)、(2)及び(3)のいずれか1つの式で表されるユーロピウム錯体が挙げられる。
【0026】
【化1】
(REu (1)
(REu(R (2)
〔(REu〕 (3)
【0027】
(式(1)、(2)及び(3)中、Rは芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンのアニオンであり、Rはルイス塩基からなる補助配位子であり、R は4級アンモニウムイオンである。)
式(1)、(2)及び(3)における芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンとしては、少なくとも1つの芳香族基を有することが好ましく、さらに、この芳香族基としては、置換基を有することがある芳香族炭化水素化合物又は芳香族複素環化合物が挙げられる。芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタリン、フェナントレン等が挙げられる。芳香族複素環化合物としては、フラン、チオフェン、ピラゾリン、ピリジン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン等の酸素、窒素、硫黄原子を含む複素環化合物が挙げられる。
【0028】
また、これらの芳香族炭化水素化合物又は芳香族複素環化合物の置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロメチル等のフルオロアルキル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;ベンジル、フェネチル等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられる。これらの置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0029】
β−ジケトンを構成する芳香族基以外の置換基としては、前述した芳香族炭化水素化合物又は芳香族複素環化合物の置換基と同様な置換基(但し、ハロゲン基は除く)が挙げられる。芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンの具体例(1〜19)を以下に示す。なお、本実施の形態においてはこれらに限定されるものではない。
【0030】
【化2】
Figure 2005041942
【0031】
一般式(1)で表されるユーロピウム錯体の具体例(1〜7)を以下に示す。
なお、本実施の形態においてはこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化3】
Figure 2005041942
【0033】
次に、一般式(2)で表されるユーロピウム錯体について説明する。一般式(2)におけるルイス塩基からなる補助配位子(R)としては特に限定されないが、通常、ユーロピウムイオンに配位可能な窒素原子又は酸素原子を有するルイス塩基化合物から選択される。それらの例としては、置換基を有することがあるアミン、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシド等が挙げられる。
補助配位子として使用される2個のルイス塩基化合物は、それぞれ異なる化合物でもよく、又、2個の化合物で1つの化合物を形成していてもよい。
【0034】
具体的には、例えば、アミンとしては、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等が挙げられる。アミンオキシドとしては、ピリジン−N−オキシド、2,2’−ビピリジン−N,N’−ジオキシド等の上記アミンのN−オキシドが挙げられる。ホスフィンオキシドとしては、トリフェニルホスフィンオキシド、トリメチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。
スルホキシドとしては、ジフェニルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等が挙げられる。これらに置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。
中でも、特に、アルキル基、アリール基、アルコシキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン基等が好ましい。
【0035】
これらのルイス塩基化合物の中でも、ビピリジンやフェナントロリン等のように、分子内に配位する原子、例えば窒素原子等の2個存在する場合は、1つのルイス塩基化合物で2個の補助配位子と同様な働きをさせてもよい。なお、これらのルイス塩基化合物に置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。
中でも、特に、アルキル基、アリール基、アルコシキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン基等が好ましい。
【0036】
補助配位子として使用するルイス塩基化合物(R)の具体例(1〜23)を以下に例示する。なお、本実施の形態において使用するルイス塩基化合物は、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化4】
Figure 2005041942
【0038】
一般式(2)で表されるユーロピウム錯体の具体例(1〜13)を以下に示す。なお、本実施の形態においてはこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化5】
Figure 2005041942
【0040】
次に、一般式(3)で表されるユーロピウム錯体について説明する。一般式(3)におけるアンモニウムイオンとしては、アルキルアミン、アリールアミン、アラルキルイオンから誘導される4級アンモニウム塩が挙げられる。アミンの置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル等のアルキル基;ヒドロキシエチル、メトキシエチル等の置換アルキル基;フェニル、トリル等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0041】
一般式(3)で表されるユーロピウム錯体の具体例(1〜5)を以下に示す。なお、本実施の形態においてはこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化6】
Figure 2005041942
【0043】
希土類イオン錯体のもう一つの化合物である、芳香族基を含む置換基を有するカルボン酸イオンを配位子とする錯体としては、例えば、下記一般式(4)で表されるユーロピウム錯体が挙げられる。
【0044】
【化7】
(R−(X)−COO)Eu(R (4)
(式中、Rは、置換基を有することがある芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を少なくとも1つ含む基であり、Xは、2価の連結基であり、nは、0又は1であり、Rは、ルイス塩基からなる補助配位子である。)
一般式(4)で表される配位子は、芳香族環を少なくとも1つ含み、π電子を8個以上有し、π電子共役系を構成するカルボン酸イオンを配位子として用いることが、吸収波長域の点から好ましい。又、芳香族環の個数は、カルボン酸イオンの母体化合物の三重項エネルギーが、ユーロピウムイオン励起状態エネルギーレベルよりも高いものであれば特に制限されないが、通常、3環式以下の芳香族又は芳香族複素環を用いることが好ましい。芳香族環の個数が4環以上の場合は、例えば、芳香族環を4環以上有するピレン等の化合物は、第1の発光体からの光を吸収して励起された三重項エネルギーが低くなり、ユーロピウム錯体が発光しなくなるおそれがある。
【0045】
一般式(4)中のRは、置換基を有することがある3環式以下の芳香族環、又は複素芳香族環から誘導される1価の基であることが好ましい。芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタリン、インデン、ビフェニレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、テトラリン、インダン、インデン等の芳香族単環式炭化水素又は芳香族縮合多環式炭化水素;ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン等の芳香族炭化水素から誘導される化合物等が挙げられる。複素芳香族環としては、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、クマリン、ベンゾピラン、カルバゾール、キサンテン、キノリン、トリアジン等の芳香族単環式複素環又は芳香族縮合多環式複素環等が挙げられる。
【0046】
また、Rが有することがある置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等のフルオロアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;エチニル基;フェニルエチニル、ピリジルエチニル、チエニルエチニル等のアリールエチニル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;フェニル、ナフチル等のアリール基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基;フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、トルオイル、ビフェニルカルボニル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル基等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルキル基、アリールオキシ基、アラルキル基、エチニル基、ハロゲン基が好ましい。尚、Rは、これらの置換基に限定するものではない。また、これらの置換基はさらに置換基を有することがある。
【0047】
次に、一般式(4)におけるカルボン酸イオンは、2価の連結基であるXを有さない場合(n=0)と有する場合(n=1)とに分けられる。更に、2価の連結基であるXを有する場合(n=1)、Xは、カルボニル基を有する場合及び有さない場合の2種類の形態に分けられる。このため一般式(4)におけるカルボン酸イオンは、さらに、カルボニル基を有さない下記一般式(5)とカルボニル基を有する一般式(6)とで表される。ユーロピウム錯体は、これらのカルボン酸イオンを配位子とする錯体構造のいずれもが使用することができる。
【0048】
【化8】
Figure 2005041942
【0049】
一般式(5)及び一般式(6)中、R10は、2価の連結基となるものであればよいが、例えば、アルキレン基、環集合炭化水素から誘導される2価の連結基、脂肪族環、芳香族環、複素環から誘導される2価の連結基等が挙げられる。また、一般式(6)中、mは0又は1である。R10の、アルキレン基としては、メチレン、エチレン等が挙げられる。環集合炭化水素としては、ビフェニル、テルフェニル、ビナフチル、シクロヘキシルベンゼン、フェニルナフタレン等が挙げられる。脂肪族環としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナン、ビシクロヘキシル等が挙げられる。芳香族環としては、前述した芳香族環の具体例と同様な化合物が挙げられる。複素環としては、前述した芳香族複素環の他に、ピラゾリン、ピペラジン、イミダゾリジン、モルホリン等の脂肪族複素環が挙げられる。その他、−SCH−等のチオアルキレン;−OCH−等のオキシアルキレン;ビニレン(−C=C−)等が挙げられる。尚、R10は、これらの2価の置換基に限定するものではない。また、これらの2価の置換基はさらに置換基を有することがある。
【0050】
一般式(4)におけるカルボン酸イオンが誘導されるカルボン酸の具体例を以下に例示する。なお、本実施の形態において使用するカルボン酸は、これらに限定されるものではない。一般式(4)においてnが0の場合の化合物は、以下のカルボン酸(1〜10)が挙げられる。
【0051】
【化9】
Figure 2005041942
【0052】
次に、一般式(4)においてnが1であり、XがR10である場合(一般式(5))の化合物は、以下のカルボン酸(11〜15)が挙げられる。
【0053】
【化10】
Figure 2005041942
【0054】
次に、一般式(6)において、mが0の場合の化合物は、以下のカルボン酸(16及び17)が挙げられる。
【0055】
【化11】
Figure 2005041942
【0056】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rがフェニル基、R10がフェニル基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(18〜30)が挙げられる。
【0057】
【化12】
Figure 2005041942
【0058】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rがフェニル基、R10がナフチル基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(31〜34)が挙げられる。
【0059】
【化13】
Figure 2005041942
【0060】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rがフェニル基、R10がその他の基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(35〜37)が挙げられる。
【0061】
【化14】
Figure 2005041942
【0062】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rがナフチル基、R10が芳香族環の場合の化合物は、以下のカルボン酸(38〜41)が挙げられる。
【0063】
【化15】
Figure 2005041942
【0064】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rがナフチル基、R10がその他の基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(42〜44)が挙げられる。
【0065】
【化16】
Figure 2005041942
【0066】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rがアセナフチル基、R10がフェニル基その他の場合の化合物は、以下のカルボン酸(45〜48)が挙げられる。
【0067】
【化17】
Figure 2005041942
【0068】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rがフルオレニル基、R10がフェニル基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(49〜55)が挙げられる。
【0069】
【化18】
Figure 2005041942
【0070】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rがフェナントレニル基、R10がフェニル基その他の場合の化合物は、以下のカルボン酸(56〜59)が挙げられる。
【0071】
【化19】
Figure 2005041942
【0072】
一般式(6)において、mが1の場合であって、Rが複素環基、R10がフェニル基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(60及び61)が挙げられる。
【0073】
【化20】
Figure 2005041942
【0074】
一般式(4)における配位子としてのカルボン酸イオンが誘導されるカルボン酸は、公知の合成方法により合成することが出来る。合成法については、例えば、新実験化学講座第14巻「有機化合物の合成と反応(II)」第921頁(1977)日本化学会編、又は、第4版実験化学講座第22巻「有機合成IV」第1頁(1992)日本化学会編等に記載されている。代表的な合成法としては、対応する第1アルコールやアルデヒドの酸化反応、エステルやニトリルの加水分解反応、酸無水物によるフリーデル・クラフツ反応等が挙げられる。
【0075】
特に、無水フタル酸、ナフタル酸無水物、無水こはく酸、ジフェン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、2,3−ピリダジンジカルボン酸無水物等のジカルボン酸の環状無水物を用いたフリーデル・クラフツ反応では、分子内にカルボニル基を有するカルボン酸が合成できる。例えば、芳香族炭化水素又は芳香族複素環と無水フタル酸とを用いたフリーデル・クラフツ反応によれば、下記反応式に示すように、ベンゼン環のオルト位にカルボニル基が結合したカルボン酸が容易に合成できる。ベンゼン環のオルト位にカルボニル基が結合したカルボン酸は、パラ位置換体に比べ輝度が高い錯体が得られやすいことから好ましい。尚、式中、Arは、芳香族炭化水素又は芳香族複素環を表す。
【0076】
【化21】
Figure 2005041942
【0077】
一般式(4)におけるルイス塩基からなる補助配位子(R)としては、前述した一般式(2)におけるルイス塩基からなる補助配位子(R)と同様な化合物が挙げられる。
また、本発明において発光物質は第2の発光体として、第1の発光体からの350−415nmの光によって励起され、可視光を発生する。上記発光物質は、350−415nmの光の励起によって演色性がよく、かつ、強い発光強度の可視光を発生する。特に、第1の発光体としてのGaN系半導体から発せられる400nm励起光により演色性が高く、かつ輝度が高い蛍光を発することを発見したものである。
【0078】
本発明において、前記蛍光体を照明装置や画像表示装置などの発光装置に好適に用いることができる。光を照射する第1の発光体は、波長350−415nmの光を発生する。好ましくは波長350−415nmの範囲にピーク波長を有する光を発生する発光体を使用する。第1の発光体の具体例としては、発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)等を挙げることができる。消費電力が良く少ない点でより好ましくはレーザーダイオードである。その中で、GaN系化合物半導体を使用した、GaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系はSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層、またはInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInGaN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、および基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、またはInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0079】
本発明においては、面発光型の発光体、特に面発光型GaN系レーザーダイオードを第1の発光体として使用することは、発光装置全体の発光効率を高めることになるので、特に好ましい。面発光型の発光体とは、膜の面方向に強い発光を有する発光体であり、面発光型GaN系レーザーダイオードにおいては、発光層等の結晶成長を制御し、かつ、反射層等をうまく工夫することにより、発光層の縁方向よりも面方向の発光を強くすることができる。面発光型のものを使用することによって、発光層の縁から発光するタイプに比べ、単位発光量あたりの発光断面積が大きくとれる結果、第2の発光体の蛍光体にその光を照射する場合、同じ光量で照射面積を非常に大きくすることができ、照射効率を良くすることができるので、第2の発光体である蛍光体からより強い発光を得ることができる。
【0080】
第1の発光体として面発光型のものを使用する場合、第2の発光体を膜状とするのが好ましい。その結果、面発光型の発光体からの光は断面積が十分大きいので、第2の発光体をその断面の方向に膜状とすると、第1の発光体からの蛍光体への照射断面積が蛍光体単位量あたり大きくなるので、蛍光体からの発光の強度をより大きくすることができる。
【0081】
また、第1の発光体として面発光型のものを使用し、第2の発光体として膜状のものを用いる場合、第1の発光体の発光面に、直接膜状の第2の発光体を接触させた形状とするのが好ましい。ここでいう接触とは、第1の発光体とと第2の発光体とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、第1の発光体からの光が第2の発光体の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0082】
第1の発光体からの光や第2の発光体からの光は通常四方八方に向いているが、第2の発光体の蛍光体の粉を樹脂中に分散させると、光が樹脂の外に出る時にその一部が反射されるので、ある程度光の向きを揃えられる。従って、効率の良い向きに光をある程度誘導できるので、第2の発光体として、前記蛍光体の粉を樹脂中へ分散したものを使用するのが好ましい。また、蛍光体を樹脂中に分散させると、第1の発光体からの光の第2の発光体への全照射面積が大きくなるので、第2の発光体からの発光強度を大きくすることができるという利点も有する。この場合に使用できる樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等各種のものが挙げられるが、蛍光体粉の分散性が良い点で好ましくはエポキシ樹脂である。第2の発光体の粉を樹脂中に分散させる場合、当該第2の発光体の粉と樹脂の全体に対するその粉の重量比は、通常10〜95%、好ましくは20〜90%、さらに好ましくは30〜80%である。蛍光体が多すぎると粉の凝集により発光効率が低下することがあり、少なすぎると今度は樹脂による光の吸収や散乱のため発光効率が低下することがある。
【0083】
本発明が適用される発光装置において使用する第2の発光体である発光物質が、第1の発光体からの光に対して実質的に350nm以下の光から遮蔽されることが好ましく、例えば、▲1▼発光体と発光物質の間に、実質的に350nm以下の紫外光を吸収する紫外線吸収物質を含有する紫外線吸収層を設け、350nm以下の光を遮断する方法、▲2▼350nm以下の波長光を実質的に発光しない、LEDやLDからなる半導体発光体を光源として用いる方法が挙げられる。
【0084】
また、外光からの紫外光に対しては、発光物質と外光との間に紫外線吸収層を設け外光の紫外線を遮断する方法が挙げられる。この場合には、発光物質に対して発光体からの光を遮蔽しないように配置することが必要である。また、外光からの紫外光は、蛍光性錯体以外に共存する樹脂などの有機化合物の光劣化対策も考慮すると、400nm以下の紫外光を遮蔽することが望ましい。
【0085】
本発明が適用される発光装置において、発光体としてLED、LDを使用する場合は、発光体素子の上側に、蛍光性錯体を含有する発光物質を樹脂に混合又は分散させた樹脂組成物による被膜の蛍光体層を形成するか、LED、LDを覆うエポキシ樹脂等の封止樹脂中に蛍光体を混合又は分散させて配置する。前者の場合は、発光物質層の上部に紫外線吸収層を積層するか、発光物質層上部に設けられる封止樹脂中に紫外線吸収物質を含有させることにより、外光からの紫外線を遮断できる。又、後者の場合は、例えば、発光体及び発光物質を内部に備えた封止樹脂体の外側を覆うように、紫外線吸収層を形成する。いずれも、発光物質や樹脂が劣化を受けるおそれがある400nm以下の波長域の外光からの紫外光が遮蔽され、極めて良好な耐光堅牢度を得ることが出来る。
【0086】
さらに、ガラス又は樹脂ガラス等の光透過性材料を用いたランプ型の発光装置の場合、ランプ容器に用いる光透過性材料に紫外線吸収剤を混合する、ランプ容器の外側又は内側に紫外線吸収層を設ける等の紫外線吸収処理を施すことにより、蛍光体に350nm以下、好ましくは400nm以下の波長の紫外線をカットすることが出来る。ランプ型発光装置の場合、さらに、ランプ内部を真空又は不活性ガス置換により低酸素濃度雰囲気にすることで、耐光性は飛躍的に向上させることが可能となる。酸素濃度としては、1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは20ppm以下である。
【0087】
本発明の発光装置は、波長変換材料としての前記発光物質と、350−415nmの光を発生する発光素子とから構成されてなり、前記発光物質が発光素子の発する350−415nmの光を吸収して、使用環境によらず演色性が良く、かつ、高強度の可視光を発生させることのできる発光装置であり、バックライト光源、信号機などの発光源、又、カラー液晶ディスプレイ等の画像表示装置や面発光等の照明装置等の光源に適している。
【0088】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
シリカ粒子の分析方法及びアミン処理方法、ならびに蛍光体とした場合の特性評価方法を以下に記す。
1)シリカ粒子の平均ポアサイズ
窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.H.Haklenda,J.Amer.Chem.Soc.,vol.73,373(1951)に記載のBJH法により算出。
2)シリカ粒子の平均粒子径
HORIBA製粒度分布計LA−920を用いて測定した。
【0089】
3)シリカ粒子のポア体積、比表面積
カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線を測定し、ポア体積、比表面積を求めた。具体的にはポア体積は相対圧P/P=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。また、BJH法で細孔分布曲線及び最頻直径(Dmax)における微分細孔容積を求めた。測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
【0090】
4)シリカ粒子の金属不純物の含有量
シリカ粒子2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾涸させたのち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてICP発光分析を行った。なお、ナトリウム及びカリウムはフレーム炎光法で分析した。
5)粉末X線回折
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として測定を行った。発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
【0091】
6)アミン処理
50mlナスフラスコに、アミノプロピルトリエトキシシラン0.15gおよびエタノール10gを仕込み、室温にて15分撹拌後、メソポーラスシリカ3gを添加した。室温にて30時間撹拌後、シリカ粒子を濾別し、エタノールにて充分に洗浄した。得られたシリカ粒子を、50℃にて6時間加熱し、その後、室温にて3日間放置し、硬化を行った。その後、減圧乾燥を行い、表面にアミノプロピル基が導入されたシリカ粒子を得た。−NH呈色試薬であるニンヒドリンで呈色(アミノ基の存在確認)を確認した。
【0092】
7)蛍光性錯体含有量
蛍光性錯体挿入後の重量増加より算出した。
8)輝度測定
日立の蛍光分光測定装置F−4500を用いた。粉体用ホルダー(日立計測器サービス社製粉末セル(蛍光))に約200mgの粉を詰め、励起波長としては400nmを用い、蛍光輝度は発光ピークの610nmでのピーク強度の値を無機赤色蛍光物質YS;Euの値を100として示した。
【0093】
(実施例1)
シリカ粒子として、三菱化学製のメソポーラスシリカ(平均ポアサイズ;7nm、平均粒子径;3μm、比表面積;685m/g、ポア体積;1.0cc/g、)を用いた。シリカ粒子の不純物濃度は、ナトリウム0.2ppm、カリウム0.1ppm、カルシウム0.2ppmで、マグネシウム、アルミニウム、チタン及びジルコニウムは検出されなかった。また、粉末X線回折測定を行ったところ、粉末X線回折図には結晶性のピークは出現しておらず、また周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークも認められなかった。このメソポーラスシリカを上述の通り、アミン処理した。下記構造式で表されるEu錯体(Eu(TTA)Phen錯体)0.2gをTHF40ccに溶解させ、アミン処理したシリカ粒子1.0gを混合して一昼夜攪拌した。40℃に加温して溶媒を揮散させ、更に、室温で5hr真空脱気して発光物質を得た。
【0094】
Eu錯体の挿入量としては、16.5wt%であり、蛍光分光測定による400nm励起時の発光輝度は無機赤色蛍光物質YS:Euの値を100として900であった。
【0095】
【化22】
Figure 2005041942
【0096】
(実施例2)
Eu(TTA)Phen錯体の量を0.4gとしたこと以外は実施例1と同様にして発光物質を得た。Eu錯体の挿入量としては、28.5wt%であり、蛍光分光測定による400nm励起時の発光輝度は無機赤色蛍光物質YS:Euの値を100として1100であった。
(実施例3)
Eu(TTA)Phen錯体の量を1.0gとしたこと以外は実施例1と同様にして発光物質を得た。Eu錯体の挿入量としては、50.0wt%であり、蛍光分光測定による400nm励起時の発光輝度は無機赤色蛍光物質YS:Euの値を100として2100であった。
(実施例4)
Eu(TTA)Phen錯体の代わりに、下記構造式で表されるEu(DBM)Phen錯体0.1gを用いたこと以外は実施例1と同様にして発光物質を得た。
【0097】
Eu錯体の挿入量としては、10.0wt%であり、蛍光分光測定による400nm励起時の発光輝度は無機赤色蛍光物質YS:Euの値を100として1000であった。
【0098】
【化23】
Figure 2005041942
【0099】
(比較例1)
シリカ粒子として、三菱化学製のメソポーラスシリカ(平均ポアサイズ;4nm、平均粒子径;300μm、比表面積;850m/g、ポア体積;0.88cc/g)を用いた。シリカ粒子の不純物濃度は、ナトリウム0.2ppm、カリウム0.1ppm、カルシウム0.2ppmで、マグネシウム、アルミニウム、チタン及びジルコニウムは検出されなかった。また、粉末X線回折測定を行ったところ、粉末X線回折図には結晶性のピークは出現しておらず、また周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークも認められなかった。このメソポーラスシリカを上述の通り、アミン処理した。Eu(DBM)Phen錯体0.1gをTHF40ccに溶解させ、アミン処理した上記シリカ粒子1.0gを混合して一昼夜攪拌した。40℃に加温して溶媒を揮散させ、更に、室温で5hr真空脱気して目的物を得た。Eu錯体の挿入量としては、10wt%であり、蛍光分光測定による400nm励起時の発光輝度は無機赤色蛍光物質YS:Euの値を100として700であった。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、演色性が高く、かつ発光強度の高い発光物質およびそれを用いた発光装置、照明装置、画像表示装置を提供することができる。

Claims (12)

  1. 平均ポアサイズが5〜500nmの多孔質無機粒子に蛍光性錯体を含有することを特徴とする発光物質。
  2. 蛍光性錯体を9wt%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の発光物質。
  3. 蛍光性錯体が多孔質無機粒子と結合していることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光物質。
  4. 蛍光性錯体が希土類イオン錯体系蛍光体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光物質。
  5. 多孔質無機粒子がシリカ粒子であることを特徴とする請求項1または1〜4のいずれか1項に記載の発光物質。
  6. シリカ粒子の平均粒子径が1〜300μmの範囲にあり、かつ比表面積が50〜800m/gであることを特徴とする請求項5に記載の発光物質。
  7. シリカ粒子のポア体積が0.6〜1.6ml/gであり、かつ非晶質であることを特徴とする請求項5又は6に記載の発光物質。
  8. 蛍光性錯体を構成する金属以外の金属不純物の含有量が500ppm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光物質。
  9. 蛍光性錯体が、芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンまたは芳香族環を含む置換基を有するカルボン酸から誘導されるアニオンを配位子とする錯体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光物質。
  10. 350−415nmの光を発生する第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発生する第2の発光体とを有する発光装置において、第2の発光体として、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光物質を用いることを特徴とする発光装置。
  11. 請求項10の発光装置を有する照明装置。
  12. 請求項10の発光装置を有する画像表示装置。
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