JP2004353034A - 低Ca含有Al合金製ピストン - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで確実にCaを低減させた低Ca含有Al合金製ピストンを提供すること。
【解決手段】Ca含有量が0.002mass%以下である低Ca含有Al合金よりなるピストンである。ピストンは,重量比にて,Ca:0.003mass%以上,Si:4〜25mass%,Cu:7mass%以下,Fe:1.5mass%以下,Ni:7mass%以下を含有すると共に,Mg:0.2mass%以下であるAl合金地金を用い,Al合金地金を溶解する地金溶解工程と,溶湯中の酸化物等の非金属介在物を除去する脱酸処理工程と,溶湯の表面を20分以上大気に露呈することによりCa含有量を低減する溶湯保持工程とを行い,その後,所望量のMgを溶湯に添加するMg添加工程と,溶湯を所望形状の鋳型に注湯する注湯工程とを行うことにより製造したものである。
【選択図】 図1
【解決手段】Ca含有量が0.002mass%以下である低Ca含有Al合金よりなるピストンである。ピストンは,重量比にて,Ca:0.003mass%以上,Si:4〜25mass%,Cu:7mass%以下,Fe:1.5mass%以下,Ni:7mass%以下を含有すると共に,Mg:0.2mass%以下であるAl合金地金を用い,Al合金地金を溶解する地金溶解工程と,溶湯中の酸化物等の非金属介在物を除去する脱酸処理工程と,溶湯の表面を20分以上大気に露呈することによりCa含有量を低減する溶湯保持工程とを行い,その後,所望量のMgを溶湯に添加するMg添加工程と,溶湯を所望形状の鋳型に注湯する注湯工程とを行うことにより製造したものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は,Ca含有量が低い低Ca含有Al合金よりなるピストンに関する。
【0002】
【従来技術】
Al合金においては,不純物としてのCaが合金特性に様々な悪影響を与えるため,様々な手法により不要なCaを極力低減させていた。そして,Al合金の鋳造メーカにおいては,高価なCa含有量が低い金属Si等を原料にした低Ca含有Al合金地金を用いていたので,製品の低コスト化が困難であった。
【0003】
また,従来のCa低減方法としては,特許文献1に記載の「アルミニムまたはその合金の脱カルシウム方法」がある。特許文献1には,アルミニウムまたはその合金の溶湯にその中において遊離の硼素を発生する硼素源を添加して,上記アルミニウムまたはその合金の溶湯内に含まれるカルシウムをカルシウム−硼素化合物として除去することを特徴とするアルミニウムまたはその合金の脱カルシウム法が開示されている。
【0004】
また,特許文献2の「Al−Cu−Si−Mg系合金の製造方法」においては,必須元素として,Cu:0.5〜5%,Si:6〜20%,Mg:0.3〜4%を含み,任意元素としてNiまたは/およびMnを含有するAl−Cu−Si−Mg系合金を溶製するにあたり,少なくとも一種以上の上記の元素を含む溶湯に弗化アルミニウムカリウムもしくは弗化アルミニウムカリウムと弗化アルミウムを反応させて,上記溶湯中のCa含有量を低減することを特徴とするAl−Cu−Si−Mg系合金の製造方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭61−28005号公報
【特許文献2】
特公昭61−51616号公報
【0006】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記の特許文献1に記載の方法は,Caを低減できる効果が期待できるが,「硼素を添加し静置した後除滓する」という処理プロセスの追加が新たに必要になり,コスト高になる。そのため,このCa低減方法を適用できる範囲は限られていた。また,残存する硼素が介在物となって鋳造品に混入し性能や加工性を阻害することが懸念された。
また,上記の特許文献2に記載の方法も,同様にCaを低減できる効果が期待できるが,新たな処理プロセスが必要なことには変わりがなく,コスト高となる問題がある。
【0007】
そこで,従来より,需要が高いエンジン用のピストンにおいて,Ca含有量が低く,高品質である一方,製造が容易で低コストなものの開発が望まれていた。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,低コストで確実にCaを低減させた低Ca含有Al合金製ピストンを提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
本発明は,Ca含有量が0.002mass%以下である低Ca含有Al合金よりなるピストンであって,
該ピストンは,重量比にて,Ca:0.003mass%以上,Si:4〜25mass%,Cu:7mass%以下,Fe:1.5mass%以下,Ni:7mass%以下を含有すると共に,Mg:0.2mass%以下であるAl合金地金を用い,
該Al合金地金を溶解する地金溶解工程と,溶湯中の酸化物等の非金属介在物を除去する脱酸処理工程と,上記溶湯の表面を20分以上大気に露呈することによりCa含有量を低減する溶湯保持工程とを行い,その後,所望量のMgを上記溶湯に添加するMg添加工程と,上記溶湯を所望形状の鋳型に注湯する注湯工程とを行うことにより製造したことを特徴とする低Ca含有Al合金製ピストンにある(請求項1)。
【0010】
本発明の低Ca含有Al合金製ピストンは,上記のごとく,従来にない独特な優れた製造方法によって作製したことに大きな特徴があり,これによって高品質化と低コスト化とを両立させたピストンとなっている。
即ち,上記ピストンは,上記のごとく,Ca含有量が0.002mass%と比較的高い濃度のCaを含有する一方,Mg含有量が1mass%以下と比較的Mg含有量が低いAl合金地金を用いた上で,上記地金溶解工程,脱酸処理工程,溶湯保持工程とを行い,その後,上記Mg添加工程と,上記注湯工程とを行って製造する。
【0011】
なお,ここでいうAl合金地金とは,いわゆる地金として流通している素材のみならず,溶解可能なあらゆる素材を含む概念であり,1種類でも,複数種類の素材の混合物でも良い。
【0012】
上記溶湯保持工程においては,上記のごとく,溶湯の表面を20分以上大気に露呈する。これにより,上記溶湯中に含有されているCaが溶湯表面において優先的に酸化されてCaを含有する酸化物被膜となり,溶湯保持工程の後,溶湯上の表面被膜を除去することによってCaが溶湯中から除去される。そのため,上記溶湯保持工程を行うことによって,溶湯中のCa含有量を十分に低減することができる。なお,上記の溶湯を大気に露呈する時間は,60分以上とすることによってより効果的にCa含有量を低減することができ,さらに120分以上とすることによってさらにその効果を確実に高めることができる。
【0013】
さらに,本発明では,上記溶湯保持工程の前に,上記脱酸処理工程を行う。脱酸処理においてもCa含有量の低減を図ることができ,上記溶湯保持工程との相乗効果で優れた脱Ca効果を得ることができる。また,脱酸処理工程の後に溶湯保持工程を行う方が,逆の順序の場合に比べてより効果的に脱Caを行うことができる。
【0014】
上記脱酸処理としては,公知の様々な方法をとることができる。通常は,ハロゲン化物を含有するフラックスを用いて行われることが多い。例えばフラックス粉末を溶湯に添加し,撹拌して,10分間ほど静置した後除滓することによって行われる。この脱酸処理によりCaはフラックスと反応して滓を生成し溶湯から取り除かれる。脱酸用フラックスとしては主にNa系のものとK系のものがあるが,いずれでも同様に脱Ca効果が得られる。
【0015】
そして,上記地金溶解工程の後に行う上記脱酸処理工程および溶湯保持工程によってCaの低減が可能であるので,上記Al合金地金としては,Ca含有量が0.003mass%以上という比較的高い濃度のCaを含有する安価な地金を積極的に採用することができる。そのため,原料コストの低減により,得られる低Ca含有Al合金製ピストンを安価なものとすることができる。上記Al合金地金のCa含有量が0.003mass%未満の場合には,地金コストが高くなるという問題がある。
【0016】
さらに,上記Al合金地金としては,Mg含有量が0.2mass%以下のものを用いる。これにより,上記溶湯保持工程におけるCa低減効果を実現可能な保持時間の範囲で十分に得ることができる。これは,Mgを多く含有する溶湯では,Mgが優先的に酸化するため,Caが酸化しにくいという理由によると考えられる。したがって,上記Al合金地金のMg含有量が0.2mass%を超える場合には,上記溶湯保持工程におけるCa低減効果が低くなるという問題がある。なお,Mg含有量は少ないほど好ましく,その下限値は,不可避的不純物となり得る値とすることが好ましい。
なお,再生地金の使用などにより,上記Al合金地金中のMg含有量が0.2mass%より多い場合には,Mg含有量を0.2mass%以下に減ずる脱Mg処理を行った後,上記の脱Ca工程を行うことが好ましい。
【0017】
また,上記溶湯保持工程の後には,所望量のMgを上記溶湯に添加するMg添加工程を行う。Mgを含有する低Ca含有Al合金製ピストンを低コストで,かつ,効率良く製造することができる。即ち,上記のごとく,Al合金地金としては,Ca含有量が比較的高い低価格の地金を採用し,上記溶湯保持工程においては上記のごとく効率よくCa含有量の低減を行う。その後に所望量のMgを添加する。これによって,上記溶湯保持工程におけるCa低減効果を低下させることなく所望量のMgを含有する低Ca含有Al合金製ピストンを低コストで,かつ効率良く製造することができる。
【0018】
また,上記Al合金地金は,Ca,Mg以外の成分についても,上記のごとく所定の範囲に規制する。この限定理由について説明する。
Cu:7mass%以下,
Cu含有量が7mass%を超えると,Cuを含有する化合物が多量に晶出し,延性が著しく低下する。また気孔(ポロシティ)欠陥も多くなり,疲労特性の低下が懸念されるという問題がある。
【0019】
Si:4〜25mass%,
Si含有量が4%未満の場合,湯流れ性が悪くなるとともに気孔(ポロシティ)が生じ易いという問題がある。一方,Si含有量が25%を超えると,粗大な初晶Siが多量に生成して,低温での延性や靭性が著しく低下するおそれがある。また,被削性が著しく低下するおそれがある。また,溶解温度が著しく高くなり,溶湯の酸化や水素の含有量が多くなる問題が生じる。
また,過共晶組織を得るためには,少なくとも10mass%以上のSiの含有が必要である。過共晶凝固しやすくするため,および初晶Siの微細化のためにPを添加することが望ましい。
【0020】
また,Al合金地金がSiを含有する場合には,不純物としてCaを含有している場合が多い。特に安価な低純度Si原料を用いている場合には,Ca含有量が多い。そのため,Si含有原料をより安価なものを選択した場合には,上記製造方法が特に有効であり,実用上の意義がきわめて大きい。
上記安価な低純度Si原料としては,Caを300ppm以上含有する高Ca含有金属Siがある。そして,この高Ca含有金属Siを他の成分と共に溶解して凝固させて得たAl合金地金は,Ca含有量が0.003mass%以上となりうるので,このAl合金地金を溶解(再溶解)させて用いる場合には,上記製造法が非常に有効である。
【0021】
Fe:1.5mass%以下,
Fe含有により,Fe化合物が晶出物として生成する。この晶出物の分散強化により高温耐力が向上する。1.5mass%を越えると,粗大なFe化合物が生成し,延性や靭性が低下するおそれがある。なお,Fe化合物とはFeを含む化合物の総称とする。
【0022】
Ni:7mass%以下,
Ni含有により,Niを含有する化合物が晶出物として生成する。この晶出物の分散強化により高温耐力が向上する。7mass%を超えると粗大なNiを含有する化合物が多量に晶出し,延性や靭性が低下する。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明においては,上記脱酸処理工程と上記溶湯保持工程との間,または上記溶湯保持工程後に,上記溶湯中の水素を除去する脱ガス工程を行うことが好ましい。この場合には,さらに一層Ca含有量の低減効果を向上させることができる。また,ポロシティが発生しにくく,かつ低Caの合金を効率よく比較的安価に得ることができる。
上記脱ガス処理の具体的方法としては,例えば,真空中で溶湯を保持する真空脱ガス法,ArやN2ガスを溶湯中に吹き込むガスバブリング法などがある。
【0024】
また,上記脱酸工程の後に,所望量の微量Caを上記溶湯に添加するCa添加工程を行うことが好ましい(請求項2)。この場合には,微量のCaを含有する低Ca含有Al合金製ピストンを低コストで,かつ,精度良く製造することができる。即ち,上記のごとく,Al合金地金としては,所望のCa量よりも著しく多いCaを含有する低価格の地金を採用し,上記溶湯保持工程を行うことによって,いったんCa含有量を所望量よりも低減させる。その後に所望量に達するように微量のCaを添加する。これによって,安価な地金を用いても,微量のCaを積極的に含有する低Ca含有Al合金製ピストンを,低コストで,かつ,精度良く製造することができる。
【0025】
また,上記ピストンは,Si:10〜25mass%含有し,かつ,初晶Siが存在する過共晶組織を有していることが好ましい(請求項3)。この場合には,特に,高い強度と耐熱性に優れたピストンが得られる。
なお,Si含有量が10mass%未満の場合には,上記のごとく過共晶組織が得られにくく,一方,25mass%を超えると,上記のごとく,粗大な初晶Siが多量に生成して,低温での延性や靭性の低下,被削性の低下,あるいは溶湯の酸化や水素量が多くなる等の問題が生じる。
【0026】
また,上記低Ca含有Al合金製ピストンは,その製品における成分組成として,Mg:7mass%以下,Si:4〜25mass%,Cu:7mass%以下,Fe:1.5mass%以下,Ni:7mass%以下を含有することが好ましい。この場合には,上記ピストンが,高強度,耐熱性に優れたものとなる。
Mg含有量が7mass%を超えると,Mgを含有する化合物が多量に晶出し,延性が著しく低下するという問題がある。その他の成分の限定理由は上記のAl合金地金成分の限定理由と同様である。
【0027】
さらに,Ti,Zr,Vを各々0.05〜0.5mass%含有することがより好ましい。これらの成分の含有により,合金の耐熱性がさらに高まる。各成分の含有量が0.05mass%未満ではその効果は小さく0.5mass%を超えると粗大化合物が生成し,延性や靱性が低下するおそれがある。
【0028】
【実施例】
実施例1
本発明の実施例に係る低Ca含有Al合金製ピストンにつき,図1〜図4を用いて説明する。
本例のピストン5は,図2に示すごとく,Ca含有量が0.002mass%以下である低Ca含有Al合金よりなるピストンであり,略円筒形状の本体部50と,本体部50の一端を閉塞するように配設された頂面部530と,本体部50を径方向に貫通するように設けられたピン穴520を設けたピンボス部52を有している。各ピン穴520は,図示しないコンロッドを固定するためのピストンピンを挿入するように構成されている。なお,この形状を一例であって,細かい部分を他の形状に変更することは可能である。
【0029】
このピストン5を,図1に示すステップで製造する。
そして,本例では,この製造方法を想定して,Ca含有量の変化を測定する実験を行った。
即ち,Al−14Si−3.2Cu−2.6Ni−0.4Fe−0.4Mn(mass%)のAl合金地金を黒鉛るつぽで溶解する地金溶解工程S1を行った後,溶湯中の酸化物等の非金属介在物を除去する脱酸処理工程S2を行い,その後溶湯の表面を大気に露呈する溶湯保持工程S3を行うと共にその時間の経過とCa低減量との関係を調べた。
【0030】
なお,上記Al合金地金として用いたものは低純度Siを原料にして溶製したAl−25mass%Si合金地金(Ca含有量150ppm)を配合して,溶製時に脱酸処理を実施して作製したものである。
また,上記地金溶解工程S1およびその後の温度条件は,保持温度750℃±20℃という条件とした。
【0031】
また,上記脱酸処理工程S2は,市販のK系ハロゲン化物フラックスを用い,これを溶湯に添加し,撹拌後,10min間静置した後,除滓して行った。
上記溶湯の成分分析は,φ40mm×高さ25mmの金型に注湯して作製した成分分析試料を用いて行った。Caの分析は,蛍光X線分析にて,Ca量が既知の標準試料により作成した検量線を用いて行った。
【0032】
Ca含有量の分析結果を図3に示す。同図は,横軸にCa分析時期を,縦軸にCa分析値(ppm)をとったものである。
同図に示すごとく,溶湯保持工程S3における保持時間が長くなると共にCa含有量が低減した。すなわち,溶解初期のCa含有量は20〜30ppmであったが,脱酸処理によってCa量は著しく低下して10ppm以下になり,その後も極めて低いレベルを維持した。
【0033】
このように低純度の金属Siを原料として用いても,Al合金地金作製時の脱酸処理と,上記地金溶解工程S1における再溶解およぴ脱酸処理工程S2,ならびに溶湯保持工程S3により極めて低Caの高純度実用合金が容易に安定して得られる。そのため,図1に示すその後の工程,即ち,Mg添加工程S4と注湯工程S5を行うことにより,所望の成分組成の低Ca含有Al合金よりなるピストン5を容易に作製することができる。
【0034】
そして,通常は,地金メーカーで作製したAl合金地金を再溶解して鋳造を行うので,地金メーカから入手する地金のMg量を低くしておいて,ピストン鋳造の最終工程で脱Caが十分に行われたあとMgを添加すれば,容易に高純度のMg含有ピストンが製造できる。
また,材料の組織改良のために微量Caを含有させたい場合には,やはり最終工程,即ち,上記Mg添加工程S4と注湯工程S5の間にCa添加工程を追加してCaの調整を行えば良い。
【0035】
なお,Mgを最初から含有した合金では溶解,保持工程においてガス吸収を起こし易いので,本例のようにMgを含有しない合金で最終工程まで持って行き,鋳造直前にMgを添加すれば,鋳造欠陥の少ない高品質なピストンを容易に得ることができる。
【0036】
実施例2
本例では,実施例1と同様に溶解したAl合金溶湯に純Mgを加えてMgを0.1mass%含有させた溶湯についての実験結果を示す。
図4にその結果を示す。同図より知られるごとく,Al合金地金に最初からMgを0.1mass%含有しても,その程度であれば,含有しない場合の実施例1と同様に著しい脱Ca効果が得られた。
【0037】
実施例3
本例では,実施例1と同様に溶解したAl合金溶湯に純Mgを加えてMgを0.2mass%含有させた溶湯についての実験結果を示す。
図5にその結果を示す。同図より知られるごとく,この場合にも,Al合金地金に最初からMgを0.2mass%含有しても,含有しない場合の実施例1と同様に著しい脱Ca効果が得られた。
【0038】
比較例1
本例は,実施例1と同様に溶解したAl合金地金にMgを5mass%含有させ,これを上記のAl合金地金として想定した場合の結果である。脱酸処理工程およぴその後の溶湯保持工程の実施により脱Ca効果は認められるが,Mg量が0.2mass%以下の実施例1〜3の結果に比べてその効果は極めて緩やかである。
【0039】
したがって,実用的な脱Ca効果を得るためにはMg量が0.2mass%以下の合金について処理することがより望ましいことがわかる。
Mgの含有が必要な場合には,上記の脱酸工程S2および溶湯保持工程S3による脱Caを行った後の工程でMgを添加することにより,低CaのMg含有合金よりなるピストンも容易に製造することができる。また,材料組織の改良などの目的で微量Caを含有させたい場合には,脱Caの後に必要に応じてCaを添加することにより容易に微量Ca含有合金のピストンも製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,低Ca含有Al合金を製造する工程を示す説明図。
【図2】実施例1における,ピストンの一部切り欠き断面図。
【図3】実施例1における,Ca分析値の推移を示す説明図。
【図4】実施例2における,Ca分析値の推移を示す説明図。
【図5】実施例3における,Ca分析値の推移を示す説明図。
【図6】比較例1における,Ca分析値の推移を示す説明図。
【符号の説明】
5...ピストン,
S1...地金溶解工程,
S2...脱酸処理工程,
S3...溶湯保持工程,
S4...Mg添加工程,
S5...注湯工程,
【技術分野】
本発明は,Ca含有量が低い低Ca含有Al合金よりなるピストンに関する。
【0002】
【従来技術】
Al合金においては,不純物としてのCaが合金特性に様々な悪影響を与えるため,様々な手法により不要なCaを極力低減させていた。そして,Al合金の鋳造メーカにおいては,高価なCa含有量が低い金属Si等を原料にした低Ca含有Al合金地金を用いていたので,製品の低コスト化が困難であった。
【0003】
また,従来のCa低減方法としては,特許文献1に記載の「アルミニムまたはその合金の脱カルシウム方法」がある。特許文献1には,アルミニウムまたはその合金の溶湯にその中において遊離の硼素を発生する硼素源を添加して,上記アルミニウムまたはその合金の溶湯内に含まれるカルシウムをカルシウム−硼素化合物として除去することを特徴とするアルミニウムまたはその合金の脱カルシウム法が開示されている。
【0004】
また,特許文献2の「Al−Cu−Si−Mg系合金の製造方法」においては,必須元素として,Cu:0.5〜5%,Si:6〜20%,Mg:0.3〜4%を含み,任意元素としてNiまたは/およびMnを含有するAl−Cu−Si−Mg系合金を溶製するにあたり,少なくとも一種以上の上記の元素を含む溶湯に弗化アルミニウムカリウムもしくは弗化アルミニウムカリウムと弗化アルミウムを反応させて,上記溶湯中のCa含有量を低減することを特徴とするAl−Cu−Si−Mg系合金の製造方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭61−28005号公報
【特許文献2】
特公昭61−51616号公報
【0006】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記の特許文献1に記載の方法は,Caを低減できる効果が期待できるが,「硼素を添加し静置した後除滓する」という処理プロセスの追加が新たに必要になり,コスト高になる。そのため,このCa低減方法を適用できる範囲は限られていた。また,残存する硼素が介在物となって鋳造品に混入し性能や加工性を阻害することが懸念された。
また,上記の特許文献2に記載の方法も,同様にCaを低減できる効果が期待できるが,新たな処理プロセスが必要なことには変わりがなく,コスト高となる問題がある。
【0007】
そこで,従来より,需要が高いエンジン用のピストンにおいて,Ca含有量が低く,高品質である一方,製造が容易で低コストなものの開発が望まれていた。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,低コストで確実にCaを低減させた低Ca含有Al合金製ピストンを提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
本発明は,Ca含有量が0.002mass%以下である低Ca含有Al合金よりなるピストンであって,
該ピストンは,重量比にて,Ca:0.003mass%以上,Si:4〜25mass%,Cu:7mass%以下,Fe:1.5mass%以下,Ni:7mass%以下を含有すると共に,Mg:0.2mass%以下であるAl合金地金を用い,
該Al合金地金を溶解する地金溶解工程と,溶湯中の酸化物等の非金属介在物を除去する脱酸処理工程と,上記溶湯の表面を20分以上大気に露呈することによりCa含有量を低減する溶湯保持工程とを行い,その後,所望量のMgを上記溶湯に添加するMg添加工程と,上記溶湯を所望形状の鋳型に注湯する注湯工程とを行うことにより製造したことを特徴とする低Ca含有Al合金製ピストンにある(請求項1)。
【0010】
本発明の低Ca含有Al合金製ピストンは,上記のごとく,従来にない独特な優れた製造方法によって作製したことに大きな特徴があり,これによって高品質化と低コスト化とを両立させたピストンとなっている。
即ち,上記ピストンは,上記のごとく,Ca含有量が0.002mass%と比較的高い濃度のCaを含有する一方,Mg含有量が1mass%以下と比較的Mg含有量が低いAl合金地金を用いた上で,上記地金溶解工程,脱酸処理工程,溶湯保持工程とを行い,その後,上記Mg添加工程と,上記注湯工程とを行って製造する。
【0011】
なお,ここでいうAl合金地金とは,いわゆる地金として流通している素材のみならず,溶解可能なあらゆる素材を含む概念であり,1種類でも,複数種類の素材の混合物でも良い。
【0012】
上記溶湯保持工程においては,上記のごとく,溶湯の表面を20分以上大気に露呈する。これにより,上記溶湯中に含有されているCaが溶湯表面において優先的に酸化されてCaを含有する酸化物被膜となり,溶湯保持工程の後,溶湯上の表面被膜を除去することによってCaが溶湯中から除去される。そのため,上記溶湯保持工程を行うことによって,溶湯中のCa含有量を十分に低減することができる。なお,上記の溶湯を大気に露呈する時間は,60分以上とすることによってより効果的にCa含有量を低減することができ,さらに120分以上とすることによってさらにその効果を確実に高めることができる。
【0013】
さらに,本発明では,上記溶湯保持工程の前に,上記脱酸処理工程を行う。脱酸処理においてもCa含有量の低減を図ることができ,上記溶湯保持工程との相乗効果で優れた脱Ca効果を得ることができる。また,脱酸処理工程の後に溶湯保持工程を行う方が,逆の順序の場合に比べてより効果的に脱Caを行うことができる。
【0014】
上記脱酸処理としては,公知の様々な方法をとることができる。通常は,ハロゲン化物を含有するフラックスを用いて行われることが多い。例えばフラックス粉末を溶湯に添加し,撹拌して,10分間ほど静置した後除滓することによって行われる。この脱酸処理によりCaはフラックスと反応して滓を生成し溶湯から取り除かれる。脱酸用フラックスとしては主にNa系のものとK系のものがあるが,いずれでも同様に脱Ca効果が得られる。
【0015】
そして,上記地金溶解工程の後に行う上記脱酸処理工程および溶湯保持工程によってCaの低減が可能であるので,上記Al合金地金としては,Ca含有量が0.003mass%以上という比較的高い濃度のCaを含有する安価な地金を積極的に採用することができる。そのため,原料コストの低減により,得られる低Ca含有Al合金製ピストンを安価なものとすることができる。上記Al合金地金のCa含有量が0.003mass%未満の場合には,地金コストが高くなるという問題がある。
【0016】
さらに,上記Al合金地金としては,Mg含有量が0.2mass%以下のものを用いる。これにより,上記溶湯保持工程におけるCa低減効果を実現可能な保持時間の範囲で十分に得ることができる。これは,Mgを多く含有する溶湯では,Mgが優先的に酸化するため,Caが酸化しにくいという理由によると考えられる。したがって,上記Al合金地金のMg含有量が0.2mass%を超える場合には,上記溶湯保持工程におけるCa低減効果が低くなるという問題がある。なお,Mg含有量は少ないほど好ましく,その下限値は,不可避的不純物となり得る値とすることが好ましい。
なお,再生地金の使用などにより,上記Al合金地金中のMg含有量が0.2mass%より多い場合には,Mg含有量を0.2mass%以下に減ずる脱Mg処理を行った後,上記の脱Ca工程を行うことが好ましい。
【0017】
また,上記溶湯保持工程の後には,所望量のMgを上記溶湯に添加するMg添加工程を行う。Mgを含有する低Ca含有Al合金製ピストンを低コストで,かつ,効率良く製造することができる。即ち,上記のごとく,Al合金地金としては,Ca含有量が比較的高い低価格の地金を採用し,上記溶湯保持工程においては上記のごとく効率よくCa含有量の低減を行う。その後に所望量のMgを添加する。これによって,上記溶湯保持工程におけるCa低減効果を低下させることなく所望量のMgを含有する低Ca含有Al合金製ピストンを低コストで,かつ効率良く製造することができる。
【0018】
また,上記Al合金地金は,Ca,Mg以外の成分についても,上記のごとく所定の範囲に規制する。この限定理由について説明する。
Cu:7mass%以下,
Cu含有量が7mass%を超えると,Cuを含有する化合物が多量に晶出し,延性が著しく低下する。また気孔(ポロシティ)欠陥も多くなり,疲労特性の低下が懸念されるという問題がある。
【0019】
Si:4〜25mass%,
Si含有量が4%未満の場合,湯流れ性が悪くなるとともに気孔(ポロシティ)が生じ易いという問題がある。一方,Si含有量が25%を超えると,粗大な初晶Siが多量に生成して,低温での延性や靭性が著しく低下するおそれがある。また,被削性が著しく低下するおそれがある。また,溶解温度が著しく高くなり,溶湯の酸化や水素の含有量が多くなる問題が生じる。
また,過共晶組織を得るためには,少なくとも10mass%以上のSiの含有が必要である。過共晶凝固しやすくするため,および初晶Siの微細化のためにPを添加することが望ましい。
【0020】
また,Al合金地金がSiを含有する場合には,不純物としてCaを含有している場合が多い。特に安価な低純度Si原料を用いている場合には,Ca含有量が多い。そのため,Si含有原料をより安価なものを選択した場合には,上記製造方法が特に有効であり,実用上の意義がきわめて大きい。
上記安価な低純度Si原料としては,Caを300ppm以上含有する高Ca含有金属Siがある。そして,この高Ca含有金属Siを他の成分と共に溶解して凝固させて得たAl合金地金は,Ca含有量が0.003mass%以上となりうるので,このAl合金地金を溶解(再溶解)させて用いる場合には,上記製造法が非常に有効である。
【0021】
Fe:1.5mass%以下,
Fe含有により,Fe化合物が晶出物として生成する。この晶出物の分散強化により高温耐力が向上する。1.5mass%を越えると,粗大なFe化合物が生成し,延性や靭性が低下するおそれがある。なお,Fe化合物とはFeを含む化合物の総称とする。
【0022】
Ni:7mass%以下,
Ni含有により,Niを含有する化合物が晶出物として生成する。この晶出物の分散強化により高温耐力が向上する。7mass%を超えると粗大なNiを含有する化合物が多量に晶出し,延性や靭性が低下する。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明においては,上記脱酸処理工程と上記溶湯保持工程との間,または上記溶湯保持工程後に,上記溶湯中の水素を除去する脱ガス工程を行うことが好ましい。この場合には,さらに一層Ca含有量の低減効果を向上させることができる。また,ポロシティが発生しにくく,かつ低Caの合金を効率よく比較的安価に得ることができる。
上記脱ガス処理の具体的方法としては,例えば,真空中で溶湯を保持する真空脱ガス法,ArやN2ガスを溶湯中に吹き込むガスバブリング法などがある。
【0024】
また,上記脱酸工程の後に,所望量の微量Caを上記溶湯に添加するCa添加工程を行うことが好ましい(請求項2)。この場合には,微量のCaを含有する低Ca含有Al合金製ピストンを低コストで,かつ,精度良く製造することができる。即ち,上記のごとく,Al合金地金としては,所望のCa量よりも著しく多いCaを含有する低価格の地金を採用し,上記溶湯保持工程を行うことによって,いったんCa含有量を所望量よりも低減させる。その後に所望量に達するように微量のCaを添加する。これによって,安価な地金を用いても,微量のCaを積極的に含有する低Ca含有Al合金製ピストンを,低コストで,かつ,精度良く製造することができる。
【0025】
また,上記ピストンは,Si:10〜25mass%含有し,かつ,初晶Siが存在する過共晶組織を有していることが好ましい(請求項3)。この場合には,特に,高い強度と耐熱性に優れたピストンが得られる。
なお,Si含有量が10mass%未満の場合には,上記のごとく過共晶組織が得られにくく,一方,25mass%を超えると,上記のごとく,粗大な初晶Siが多量に生成して,低温での延性や靭性の低下,被削性の低下,あるいは溶湯の酸化や水素量が多くなる等の問題が生じる。
【0026】
また,上記低Ca含有Al合金製ピストンは,その製品における成分組成として,Mg:7mass%以下,Si:4〜25mass%,Cu:7mass%以下,Fe:1.5mass%以下,Ni:7mass%以下を含有することが好ましい。この場合には,上記ピストンが,高強度,耐熱性に優れたものとなる。
Mg含有量が7mass%を超えると,Mgを含有する化合物が多量に晶出し,延性が著しく低下するという問題がある。その他の成分の限定理由は上記のAl合金地金成分の限定理由と同様である。
【0027】
さらに,Ti,Zr,Vを各々0.05〜0.5mass%含有することがより好ましい。これらの成分の含有により,合金の耐熱性がさらに高まる。各成分の含有量が0.05mass%未満ではその効果は小さく0.5mass%を超えると粗大化合物が生成し,延性や靱性が低下するおそれがある。
【0028】
【実施例】
実施例1
本発明の実施例に係る低Ca含有Al合金製ピストンにつき,図1〜図4を用いて説明する。
本例のピストン5は,図2に示すごとく,Ca含有量が0.002mass%以下である低Ca含有Al合金よりなるピストンであり,略円筒形状の本体部50と,本体部50の一端を閉塞するように配設された頂面部530と,本体部50を径方向に貫通するように設けられたピン穴520を設けたピンボス部52を有している。各ピン穴520は,図示しないコンロッドを固定するためのピストンピンを挿入するように構成されている。なお,この形状を一例であって,細かい部分を他の形状に変更することは可能である。
【0029】
このピストン5を,図1に示すステップで製造する。
そして,本例では,この製造方法を想定して,Ca含有量の変化を測定する実験を行った。
即ち,Al−14Si−3.2Cu−2.6Ni−0.4Fe−0.4Mn(mass%)のAl合金地金を黒鉛るつぽで溶解する地金溶解工程S1を行った後,溶湯中の酸化物等の非金属介在物を除去する脱酸処理工程S2を行い,その後溶湯の表面を大気に露呈する溶湯保持工程S3を行うと共にその時間の経過とCa低減量との関係を調べた。
【0030】
なお,上記Al合金地金として用いたものは低純度Siを原料にして溶製したAl−25mass%Si合金地金(Ca含有量150ppm)を配合して,溶製時に脱酸処理を実施して作製したものである。
また,上記地金溶解工程S1およびその後の温度条件は,保持温度750℃±20℃という条件とした。
【0031】
また,上記脱酸処理工程S2は,市販のK系ハロゲン化物フラックスを用い,これを溶湯に添加し,撹拌後,10min間静置した後,除滓して行った。
上記溶湯の成分分析は,φ40mm×高さ25mmの金型に注湯して作製した成分分析試料を用いて行った。Caの分析は,蛍光X線分析にて,Ca量が既知の標準試料により作成した検量線を用いて行った。
【0032】
Ca含有量の分析結果を図3に示す。同図は,横軸にCa分析時期を,縦軸にCa分析値(ppm)をとったものである。
同図に示すごとく,溶湯保持工程S3における保持時間が長くなると共にCa含有量が低減した。すなわち,溶解初期のCa含有量は20〜30ppmであったが,脱酸処理によってCa量は著しく低下して10ppm以下になり,その後も極めて低いレベルを維持した。
【0033】
このように低純度の金属Siを原料として用いても,Al合金地金作製時の脱酸処理と,上記地金溶解工程S1における再溶解およぴ脱酸処理工程S2,ならびに溶湯保持工程S3により極めて低Caの高純度実用合金が容易に安定して得られる。そのため,図1に示すその後の工程,即ち,Mg添加工程S4と注湯工程S5を行うことにより,所望の成分組成の低Ca含有Al合金よりなるピストン5を容易に作製することができる。
【0034】
そして,通常は,地金メーカーで作製したAl合金地金を再溶解して鋳造を行うので,地金メーカから入手する地金のMg量を低くしておいて,ピストン鋳造の最終工程で脱Caが十分に行われたあとMgを添加すれば,容易に高純度のMg含有ピストンが製造できる。
また,材料の組織改良のために微量Caを含有させたい場合には,やはり最終工程,即ち,上記Mg添加工程S4と注湯工程S5の間にCa添加工程を追加してCaの調整を行えば良い。
【0035】
なお,Mgを最初から含有した合金では溶解,保持工程においてガス吸収を起こし易いので,本例のようにMgを含有しない合金で最終工程まで持って行き,鋳造直前にMgを添加すれば,鋳造欠陥の少ない高品質なピストンを容易に得ることができる。
【0036】
実施例2
本例では,実施例1と同様に溶解したAl合金溶湯に純Mgを加えてMgを0.1mass%含有させた溶湯についての実験結果を示す。
図4にその結果を示す。同図より知られるごとく,Al合金地金に最初からMgを0.1mass%含有しても,その程度であれば,含有しない場合の実施例1と同様に著しい脱Ca効果が得られた。
【0037】
実施例3
本例では,実施例1と同様に溶解したAl合金溶湯に純Mgを加えてMgを0.2mass%含有させた溶湯についての実験結果を示す。
図5にその結果を示す。同図より知られるごとく,この場合にも,Al合金地金に最初からMgを0.2mass%含有しても,含有しない場合の実施例1と同様に著しい脱Ca効果が得られた。
【0038】
比較例1
本例は,実施例1と同様に溶解したAl合金地金にMgを5mass%含有させ,これを上記のAl合金地金として想定した場合の結果である。脱酸処理工程およぴその後の溶湯保持工程の実施により脱Ca効果は認められるが,Mg量が0.2mass%以下の実施例1〜3の結果に比べてその効果は極めて緩やかである。
【0039】
したがって,実用的な脱Ca効果を得るためにはMg量が0.2mass%以下の合金について処理することがより望ましいことがわかる。
Mgの含有が必要な場合には,上記の脱酸工程S2および溶湯保持工程S3による脱Caを行った後の工程でMgを添加することにより,低CaのMg含有合金よりなるピストンも容易に製造することができる。また,材料組織の改良などの目的で微量Caを含有させたい場合には,脱Caの後に必要に応じてCaを添加することにより容易に微量Ca含有合金のピストンも製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,低Ca含有Al合金を製造する工程を示す説明図。
【図2】実施例1における,ピストンの一部切り欠き断面図。
【図3】実施例1における,Ca分析値の推移を示す説明図。
【図4】実施例2における,Ca分析値の推移を示す説明図。
【図5】実施例3における,Ca分析値の推移を示す説明図。
【図6】比較例1における,Ca分析値の推移を示す説明図。
【符号の説明】
5...ピストン,
S1...地金溶解工程,
S2...脱酸処理工程,
S3...溶湯保持工程,
S4...Mg添加工程,
S5...注湯工程,
Claims (3)
- Ca含有量が0.002mass%以下である低Ca含有Al合金よりなるピストンであって,
該ピストンは,重量比にて,Ca:0.003mass%以上,Si:4〜25mass%,Cu:7mass%以下,Fe:1.5mass%以下,Ni:7mass%以下を含有すると共に,Mg:0.2mass%以下であるAl合金地金を用い,
該Al合金地金を溶解する地金溶解工程と,溶湯中の酸化物等の非金属介在物を除去する脱酸処理工程と,上記溶湯の表面を20分以上大気に露呈することによりCa含有量を低減する溶湯保持工程とを行い,その後,所望量のMgを上記溶湯に添加するMg添加工程と,上記溶湯を所望形状の鋳型に注湯する注湯工程とを行うことにより製造したことを特徴とする低Ca含有Al合金製ピストン。 - 請求項1において,上記脱酸工程の後に,所望量の微量Caを上記溶湯に添加するCa添加工程を行うことを特徴とする低Ca含有Al合金製ピストン。
- 請求項1又は2において,上記ピストンは,Si:10〜25mass%含有し,かつ,初晶Siが存在する過共晶組織を有していることを特徴とする低Ca含有Al合金製ピストン。
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-
2003
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