JP2004353037A - 磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な磁気特性と高強度とを両立した無方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】C:0.02%以下、Si:4.5%以下、Mn:3.0%以下、Al:3.0%以下、P:0.50%以下およびNi:5.0%以下を含み、さらにAu、Be、MoおよびWから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.2〜4.0%の範囲にて含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、鋼板内部に存在するAu、Be、MoおよびWのいずれかを含む析出物の平均粒径が20nm以下であり、引張強さが下記式で示されるCTS(MPa)以上とする。
記
CTS=5600[%C]+87[%Si]+15[%Mn]+70[%Al]+430[%P]+37[%Ni]+22d−1/2+230
ただし、d:結晶粒の平均粒径
【選択図】 なし
【解決手段】C:0.02%以下、Si:4.5%以下、Mn:3.0%以下、Al:3.0%以下、P:0.50%以下およびNi:5.0%以下を含み、さらにAu、Be、MoおよびWから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.2〜4.0%の範囲にて含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、鋼板内部に存在するAu、Be、MoおよびWのいずれかを含む析出物の平均粒径が20nm以下であり、引張強さが下記式で示されるCTS(MPa)以上とする。
記
CTS=5600[%C]+87[%Si]+15[%Mn]+70[%Al]+430[%P]+37[%Ni]+22d−1/2+230
ただし、d:結晶粒の平均粒径
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無方向性電磁鋼板、特に高速回転モータのロータを典型例とする、大きな応力がかかる部品に用いて好適な、高強度でかつ低鉄損の特性を有する無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、モータの駆動システムの発達により、駆動電源の周波数制御が可能となり、可変速運転や商用周波数以上で高速回転を行うモータが増加している。このような高速回転を行うモータでは、高速回転に耐え得るロータが必要になる。すなわち、回転体に作用する遠心力は回転半径に比例し、回転速度の2乗に比例して大きくなるため、中・大型の高速モータではロータに作用する応力が600MPaを超える場合もある。従って、こうした高速回転モータでは、ロータの強度が高いことが必要となる。
【0003】
また、近年のモータ効率向上の観点から増加した、ロータに永久磁石を埋め込んだ磁石埋設型DCインバータ制御モータでは、遠心力でロータから磁石が飛び出そうとするが、これを抑える際に、ロータに使用された電磁鋼板には大きな力が掛かる。このためにも、モータ、特にロータに使用される電磁鋼板には、高強度が必要とされている。
【0004】
モータ、発電機などの回転機器は、電磁気現象を利用するため、その素材には磁気特性、すなわち低鉄損、高磁束密度であることが望ましい。通常、ロータコアはプレス打ち抜きした無方向性電磁鋼板を積層して使用するが、高速回転モータにおいてロータ素材が上述の機械強度が満足できない場合は、より高強度の鋳鋼製ロー夕などを使用せざるを得ないのが現状である。しかしながら、鋳物製ロー夕は一体物であるため、ロータに作用するリップル損と呼ばれる高周波磁束による渦電流損が電磁鋼板を積層したロータより大きく、モータ効率が低下してしまう要因となっている。従って、磁気特性に優れ、かつ高強度の電磁鋼板がロータ用素材として要望されているのである。
【0005】
金属学的には、高強度化の手段として、固溶強化、析出強化および結晶粒微細化の3つの方法が知られており、電磁鋼板に適用した例も見られる。例えば、固溶強化を利用したものとしては、特許文献1には、Si含有量を3.5〜7.0%に高めたうえに固溶強化能の大きい元素を添加する方法が開示されている。また、特許文献2には、Si含有量を2.0〜3.5%とし、NiあるいはNiとMnの両方の含有量を高め、650〜850℃という低温焼鈍により製造することで再結晶粒径を制御する方法が開示されている。さらに、析出強化を利用する方法としては、特許文献3に、Si含有量を2.0〜4.0%とし、Nb,Zr,Ti,Vの微細な炭化物、窒化物を析出させる方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−238421号公報
【特許文献2】
特開昭62−256917号公報
【特許文献3】
特開平6−330255号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法により、ある程度の高強度を有する電磁鋼板が得られる。しかしながら、特許文献1に記載されるようなSi量が多い鋼では、冷間圧延性が著しく低下し、安定的な工業生産が困難となる不利がある。さらに、この技術により得られる鋼板は磁束密度B50が1.56〜1.60Tと大幅に低下してしまうという問題もあった。
【0008】
特許文献2における方法では、機械強度を高めるため低温焼鈍による再結晶粒成長の抑制が必要となるため、磁気特性、特に比較的周波数の低い商用周波数から数100Hzでの鉄損が低下するという問題があった。そのため、これらの周波数域での鉄損が重要となるステータ部材には使用することが出来ないため、モータ打ち抜き加工時の歩留まりの大幅な低下が余儀なくされていた。すなわち、ステータおよびロータを打抜く際、通常は同じ1枚の鋼板から、まず円環状のステータを打抜く一方で、その中空部からロータを打抜くことにより無駄を少なくしているが、特許文献2の方法では両者を別々の鋼板から打抜く必要があり、歩留まりが低下してしまうのである。
【0009】
一方、特許文献3に記載の方法では、炭、窒化物自体が磁壁移動の障壁となるため、また炭、窒化物が電磁鋼板の結晶粒成長を妨げるため、鉄損に劣るという問題がある。
【0010】
以上のように、従来の方法は、安定的に工業生産可能な電磁鋼板において、高強度と低鉄損とを両立するという観点からは、いずれも満足できるものでは無かった。
【0011】
本発明は、良好な磁気特性と高強度とを両立した無方向性電磁鋼板およびこの鋼板を工業的に安定して生産することを可能とする製造方法について提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決するために、Au、Be、MoおよびWのいずれか1種または2種以上を含んだ鋼の時効硬化現象に着目して種々の検討を行った結果、良好な鉄損と高強度とを両立するための手段を確立するに到った。すなわち、鋼中の析出物は高強度化に寄与すると同時に、磁壁移動を抑制して鉄損を劣化させるという従来の知見に反して、鋼中にAu、Be、MoおよびWを適量添加して時効処理を行うことにより、平均粒径20nm以下の極微細にAu、Be、MoまたはW系析出物を析出させることが可能であること、そして、こうして得られた極微細のAu、Be、MoまたはW系析出物は、高強度化に非常に有効であるが、鉄損(履歴損)はほとんど劣化させないことを新規に知見し、本発明を完成するに到った。
【0013】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)質量%で、
C:0.02%以下、
Si:4.5%以下、
Mn:3.0%以下、
Al:3.0%以下、
P:0.50%以下および
Ni:5.0%以下
を含み、さらにAu、Be、MoおよびWから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.2〜4.0%の範囲にて含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、鋼板内部に存在するAu、Be、MoおよびWのいずれかを含む析出物の平均粒径が20nm以下であり、引張強さが下記式で示されるCTS(MPa)以上であることを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板。
記
CTS=5600[%C]+87[%Si]+15[%Mn]+70[%Al]+430[%P]+37[%Ni]+22d−1/2+230
ただし、d:結晶粒の平均粒径(mm)
【0014】
(2)上記(1)において、成分組成として、さらにZr、V、Sb、Sn、Ge、B、Ca、希土類元素およびCoから選んだ1種または2種以上を、
ZrおよびVについてはそれぞれ0.1〜3.0%、
Sb、SnおよびGeについてはそれぞれ0.002〜0.5%、
B、Caおよび希土類元素についてはそれぞれ0.001〜0.01%、そして
Coについては0.2〜5.0%
の範囲にて含有することを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板。
【0015】
(3)質量%で、
C:0.02%以下、
Si:4.5%以下、
Mn:3.0%以下、
Al:3.0%以下、
P:0.50%以下および
Ni:5.0%以下
を含み、さらにAu、Be、MoおよびWから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.2〜4.0%の範囲にて含有する鋼スラブに、熱間圧延を施し施した後、冷間圧延あるいは温間圧延を施して最終板厚とし、次いで最終到達温度が650〜1150℃かつ最終到達温度〜400℃の温度域での冷却速度が10℃/s以上である、仕上げ焼鈍を施し、その後250℃以上650℃以下の温度にて時効処理を施すことを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0016】
(4)上記(3)において、鋼スラブが、さらにZr、V、Sb、Sn、Ge、B、Ca、希土類元素およびCoから選んだ1種または2種以上を、
ZrおよびVについてはそれぞれ0.1〜3.0%、
Sb、SnおよびGeについてはそれぞれ0.002〜0.5%、
B、Caおよび希土類元素についてはそれぞれ0.001〜0.01%、そして
Coについては0.2〜5.0%
の範囲にて含有することを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の無方向性電磁鋼板における成分組成範囲の限定理由について説明する。なお、本明細書において鋼組成を表す%は、特にことわらない限り質量%を意味するものである。
C:0.02%以下
C量が0.02%を超えると磁気時効により鉄損が著しく劣化するため、0.02%以下に制限する。
【0018】
Si:4.5%以下
Siは、脱酸剤として有用であることに加え、電気抵抗の増加により電磁鋼板の鉄損を低減する効果が大きい。さらに、固溶強化により強度向上に寄与する。脱酸剤としては、0.05%以上の含有で効果が顕著となる。また、鉄損低減および固溶強化のためには0.5%以上、さらに好適には1.2%以上で含有させる。しかし、4.5%を超えると、鋼板の圧延が著しく困難となるため、その含有量は4.5%以下に制限する。
【0019】
Mn:3.0%以下
Mnは、固溶強化による強度向上に有効な元素であることに加え、熱間脆性の改善に有効な元素であり、好ましくは0.05%以上で含有させる。しかし、過剰な添加は鉄損の劣化をもたらすため、その含有量を3.0%以下に制限する。
【0020】
Al:3.0%以下
Alは、Siと同様に電気抵抗を増加させ、電磁鋼板の鉄損を低減する効果が大きいため、好ましくは0.1%以上含有させる。しかし、過剰な添加は圧延性の低下をもたらすので、その添加量を3.0%以下に制限する。
【0021】
P:0.50%以下
Pは、比較的少量の添加でも大幅な固溶強化能が得られるため、高強度化に極めて有効であり、好ましくは0.01%以上で含有させる。一方、過剰な含有は偏析による脆化を引き起し、粒界割れや圧延性の低下をもたらすため、その含有量は0.50%以下に制限する。
【0022】
Ni:5.0%以下
Niは、固溶強化による高強度化に有効な元素であり、好ましくは0.5%以上で含有させる。しかし、5.0%を超えると、その効果は飽和しコスト高をまねくため、その上限を5.0%とする。
【0023】
Au、Be、MoおよびWのいずれか1種または2種以上のそれぞれを0.2〜4.0%
Au、Be、MoおよびWは、本発明において非常に重要な元素である。すなわち、時効処理を施して極微細なAu、Be、MoまたはW系析出物を形成することによって、鉄損(履歴損)をほとんど損なうことなしに、大幅な強度上昇が可能となる。その効果を得るには、それぞれ0.2%以上の添加が必要である。一方、それぞれ4.0%を超えると、Au、Be、MoまたはW系析出物の平均粒径が大きくなり、鉄損の劣化が大きくなると共に、強度上昇代も低下する。従って、Au、Be、MoおよびWの添加量は、それぞれ0.2〜4.0%の範囲に規制する。
【0024】
上記元素の他は、Fe(鉄)および不可避的不純物である。不可避的不純物としてのSおよびNは、硫化物や窒化物形成による鉄損劣化を防止する観点から、それぞれ0.01%以下とすることが望ましい。
【0025】
本発明に係わる無方向性電磁鋼板の基本組成は以上の通りであるが、上記成分に加えて、磁気特性の改善元素として知られるZr,V,Sb,Sn,Ge,B,Ca,希土類元素およびCoを単独または複合で添加することが出来る。しかし、その添加量は本発明の目的を害さない程度にすべきである。具体的には、
Zr,Vについては0.1〜3.0%
Sb,Sn,Geについては0.002〜0.5%
B,Ca,および希土類元素(合計)については0.001〜0.01%
Coについては0.2〜5.0%
である。
【0026】
また、本発明の電磁鋼板においては、鋼板中にAu、Be、MoおよびW系いずれかの析出物を極微細に析出させる必要がある。なぜなら、未析出状態では高強度化されないからである。そして、Au、Be、MoおよびW系いずれかの析出物を析出させるに際し、これらの平均粒径を20nm以下とする必要がある。すなわち、平均粒径が20nmを超えるものは、鉄損を劣化させるだけでなく高強度化に寄与しないため、鉄損を劣化させずに高強度化に寄与する、径が20nm以下の極微細にAu、Be、MoおよびW系いずれかの析出物を存在させることが重要である。
【0027】
ここで、Au、Be、MoおよびW系いずれかの析出物の粒径は、鋼板をTEMあるいはSEMといった電子顕微鏡を用いて観察する際、108nm2の範囲に存在するAu、Be、MoおよびW系析出物の径を円相当径として求め、求めた値を平均したものである。
【0028】
本発明では、上記の成分範囲の下に、Au、Be、MoおよびW系析出物の平均粒径を適正化することにより、製品の引張強さTS(MPa)は、下記式で表されるCTS以上となる。
記
CTS=5600[%C]+87[%Si]+15[%Mn]+70[%Al]+430[%P]+37[%Ni]+22d−1/2+230
【0029】
ここで、各元素の係数は、各元素1%当たりの固溶あるいは析出強化量に相当する項、dは製品の平均結晶粒径(直径:mm)であり、ナイタール腐食液などでエッチングされた試料を光学顕微鏡により観察し、観察視野面積と視野内の結晶粒数より結晶粒の円相当径として求められるものである。この平均結晶粒径dが小さいほど、結晶粒微細化により高強度化されるが、鉄損が劣化する。そのため、求められる強度、鉄損特性に応じて結晶粒径dを調整する。
【0030】
(製造方法)
本発明に係わる鉄損に優れた高強度無方向性電磁鋼板を製造するためには、まず、転炉あるいは電気炉などにて、前記した所定成分に溶製された鋼を、連続鋳造あるいは造塊後の分塊圧延により鋼スラブとする。次いで、得られたスラブを熱間圧延し、必要に応じて熱延坂焼鈍を施し、一回あるいは中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延あるいは温間圧延を施して製品板厚とし、仕上げ焼鈍を施し、その後時効処理を施す。さらに、仕上げ焼鈍後のいずれかの段階において、必要に応じて絶縁被膜の塗布および焼き付け処理を行う。
【0031】
本発明では、素材のSi量を高めることなく後工程で高強度化するので、冷間圧延により製造することが可能である。なお、温間圧延は、集合組織を改善し鉄損および磁束密度を向上させる効果を有するため、温間圧延を採用することもできる。
【0032】
上記の仕上げ焼鈍は、圧延による歪を除去するとともに、必要な鉄損特性を得るため再結晶により適切な結晶粒径を得ることを目的とする。すなわち、適性な結晶粒径は求められる鉄損レベルにもよるが、一般に20〜200μmであり、そのためには仕上げ焼鈍の最終到達温度は700℃以上が必要である。一方、1150℃を超える焼鈍を行うと、粗大粒となり粒界割れを起こしやすくなるとともに、鋼板表面の酸化窒化に伴う鉄損の劣化が大きくなるため、その上限は1150℃とする。
【0033】
次に、発明者らは、Au、Be、MoおよびW系析出物の極微細析出を活用する場合、仕上げ焼鈍の冷却条件が重要であることを新たに見出した。すなわち、仕上げ焼鈍の冷却過程において、最終到達温度〜400℃までの冷却速度が十分に速くないと、Au、Be、MoおよびW系析出物の一部が冷却中に粗大に析出するため、鉄損の劣化要因となり、またその後の時効焼鈍によっても粗大な析出物の量が増加し十分な強度が得られない場合がある。かような点を考慮した時、Au、Be、MoおよびW系析出物を極微細に析出させる為には、最終到達温度〜400℃の温度域のおける、冷却速度を10℃/s以上とすることが必要である。
【0034】
次に、時効処理は、250℃以上650℃以下の温度で行う。すなわち、250℃未満の場合には、極微細Au、Be、MoおよびW系析出物の析出が不十分となり、高強度が得られない。一方、650℃を越えると、Au、Be、MoおよびW系析出物が粗大化して鉄損が劣化し、強度上昇量も減少するため、良好な強度−鉄損バランスを有する電磁鋼板が得られない。
【0035】
なお、適切な時効時間は処理温度にも依存するが、10min〜1000hが好適である。また、この時効処理の実施時期は、絶縁被膜の塗布焼付け前、焼付け後、プレス打ち抜きなどの加工後、などのいずれでもよい。
【0036】
【実施例】
実施例1
表1に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物になる鋼を溶製し、熱間圧延により板厚2.0mmとした。この熱延板を冷間圧延により最終板厚0.45mmの冷延板とし、表1に示す焼鈍条件で仕上げ焼鈍を実施した。その際、冷却過程は、最終到達温度〜400℃までの温度域で20℃/sとした。その後、仕上げ焼鈍板に500℃×10hの時効処理を施した。なお、製品の成分組成は表1に示す鋼組成と同じであった。
【0037】
かくして得られた製品板について、製品板の平均結晶粒径dとAu、Be、MoまたはW系析出物の平均粒径とを測定するとともに、鉄損特性および機械特性を評価した。製品板の平均結晶粒径は、ナイタール腐食液などでエッチングされた試料を光学顕微鏡により観察し、観察視野面積と視野内の結晶粒数より結晶粒の円相当径として求め、Au、Be、MoまたはW系析出物の平均粒径は鋼板を電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する際、108nm2の範囲に存在するAu、Be、MoまたはW系析出物の径を円相当径として求めたものである。
【0038】
また、鉄損は圧延方向と圧延直角方向とから切り出した試料を等量用いて、エプスタイン法により評価した。機械的特性は、圧延方向と圧延直角方向とから切り出した試料の平均をもって評価した。これらの評価結果を表1に併記する。
【0039】
表1に示すように、鋼組成を本発明内に制御したものは、いずれの製品板においても高強度を有し、かつ鉄損にも優れるものであった。
これに対し、Au、Be、MoまたはWのいずれの添加量も本発明の下限より少ない鋼1、5、9および12による製品板は、良好な鉄損を示すが、引張強さが本発明範囲外となり不十分である。Au、Be、MoまたはWいずれかの添加量が本発明の上限を超える鋼4、8、12および16による鋼板では、Au、Be、MoまたはW系析出物径が20nm以上であるため、鉄損および強度ともに不十分である。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例2
表2に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物になる鋼を溶製し、熱間圧延により板厚2.0mmとした。この熱延板を冷間圧延により最終板厚0.45mmの冷延板とし、表3に示す焼鈍条件で仕上げ焼鈍を実施した。その後、表3に示す条件にて仕上げ焼鈍板に時効処理を施した。なお、製品の成分組成は表2に示す鋼組成と同じであった。
【0042】
かくして得られた製品板について、実施例1と同様の評価を行った。その評価結果を、表3に示す。仕上げ焼鈍条件および時効処理条件を本発明範囲内に制御したものは、製品板において優れた鉄損と高強度とを得ることができた。
一方、仕上げ焼鈍過程における冷却速度が遅い場合や時効温度が高すぎる場合は、Au、Be、MoまたはW系析出物が粗大化し、鉄損が劣化するばかりでなく、高強度も得ることができなかった。また、時効温度が低すぎる場合は、良好な鉄損を示すが、引張強さが本発明範囲外となり十分な強度を得ることができなかった。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、磁気特性に優れ、しかも高い強度を有する電磁鋼板を安定して提供することできる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、無方向性電磁鋼板、特に高速回転モータのロータを典型例とする、大きな応力がかかる部品に用いて好適な、高強度でかつ低鉄損の特性を有する無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、モータの駆動システムの発達により、駆動電源の周波数制御が可能となり、可変速運転や商用周波数以上で高速回転を行うモータが増加している。このような高速回転を行うモータでは、高速回転に耐え得るロータが必要になる。すなわち、回転体に作用する遠心力は回転半径に比例し、回転速度の2乗に比例して大きくなるため、中・大型の高速モータではロータに作用する応力が600MPaを超える場合もある。従って、こうした高速回転モータでは、ロータの強度が高いことが必要となる。
【0003】
また、近年のモータ効率向上の観点から増加した、ロータに永久磁石を埋め込んだ磁石埋設型DCインバータ制御モータでは、遠心力でロータから磁石が飛び出そうとするが、これを抑える際に、ロータに使用された電磁鋼板には大きな力が掛かる。このためにも、モータ、特にロータに使用される電磁鋼板には、高強度が必要とされている。
【0004】
モータ、発電機などの回転機器は、電磁気現象を利用するため、その素材には磁気特性、すなわち低鉄損、高磁束密度であることが望ましい。通常、ロータコアはプレス打ち抜きした無方向性電磁鋼板を積層して使用するが、高速回転モータにおいてロータ素材が上述の機械強度が満足できない場合は、より高強度の鋳鋼製ロー夕などを使用せざるを得ないのが現状である。しかしながら、鋳物製ロー夕は一体物であるため、ロータに作用するリップル損と呼ばれる高周波磁束による渦電流損が電磁鋼板を積層したロータより大きく、モータ効率が低下してしまう要因となっている。従って、磁気特性に優れ、かつ高強度の電磁鋼板がロータ用素材として要望されているのである。
【0005】
金属学的には、高強度化の手段として、固溶強化、析出強化および結晶粒微細化の3つの方法が知られており、電磁鋼板に適用した例も見られる。例えば、固溶強化を利用したものとしては、特許文献1には、Si含有量を3.5〜7.0%に高めたうえに固溶強化能の大きい元素を添加する方法が開示されている。また、特許文献2には、Si含有量を2.0〜3.5%とし、NiあるいはNiとMnの両方の含有量を高め、650〜850℃という低温焼鈍により製造することで再結晶粒径を制御する方法が開示されている。さらに、析出強化を利用する方法としては、特許文献3に、Si含有量を2.0〜4.0%とし、Nb,Zr,Ti,Vの微細な炭化物、窒化物を析出させる方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−238421号公報
【特許文献2】
特開昭62−256917号公報
【特許文献3】
特開平6−330255号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法により、ある程度の高強度を有する電磁鋼板が得られる。しかしながら、特許文献1に記載されるようなSi量が多い鋼では、冷間圧延性が著しく低下し、安定的な工業生産が困難となる不利がある。さらに、この技術により得られる鋼板は磁束密度B50が1.56〜1.60Tと大幅に低下してしまうという問題もあった。
【0008】
特許文献2における方法では、機械強度を高めるため低温焼鈍による再結晶粒成長の抑制が必要となるため、磁気特性、特に比較的周波数の低い商用周波数から数100Hzでの鉄損が低下するという問題があった。そのため、これらの周波数域での鉄損が重要となるステータ部材には使用することが出来ないため、モータ打ち抜き加工時の歩留まりの大幅な低下が余儀なくされていた。すなわち、ステータおよびロータを打抜く際、通常は同じ1枚の鋼板から、まず円環状のステータを打抜く一方で、その中空部からロータを打抜くことにより無駄を少なくしているが、特許文献2の方法では両者を別々の鋼板から打抜く必要があり、歩留まりが低下してしまうのである。
【0009】
一方、特許文献3に記載の方法では、炭、窒化物自体が磁壁移動の障壁となるため、また炭、窒化物が電磁鋼板の結晶粒成長を妨げるため、鉄損に劣るという問題がある。
【0010】
以上のように、従来の方法は、安定的に工業生産可能な電磁鋼板において、高強度と低鉄損とを両立するという観点からは、いずれも満足できるものでは無かった。
【0011】
本発明は、良好な磁気特性と高強度とを両立した無方向性電磁鋼板およびこの鋼板を工業的に安定して生産することを可能とする製造方法について提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決するために、Au、Be、MoおよびWのいずれか1種または2種以上を含んだ鋼の時効硬化現象に着目して種々の検討を行った結果、良好な鉄損と高強度とを両立するための手段を確立するに到った。すなわち、鋼中の析出物は高強度化に寄与すると同時に、磁壁移動を抑制して鉄損を劣化させるという従来の知見に反して、鋼中にAu、Be、MoおよびWを適量添加して時効処理を行うことにより、平均粒径20nm以下の極微細にAu、Be、MoまたはW系析出物を析出させることが可能であること、そして、こうして得られた極微細のAu、Be、MoまたはW系析出物は、高強度化に非常に有効であるが、鉄損(履歴損)はほとんど劣化させないことを新規に知見し、本発明を完成するに到った。
【0013】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)質量%で、
C:0.02%以下、
Si:4.5%以下、
Mn:3.0%以下、
Al:3.0%以下、
P:0.50%以下および
Ni:5.0%以下
を含み、さらにAu、Be、MoおよびWから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.2〜4.0%の範囲にて含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、鋼板内部に存在するAu、Be、MoおよびWのいずれかを含む析出物の平均粒径が20nm以下であり、引張強さが下記式で示されるCTS(MPa)以上であることを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板。
記
CTS=5600[%C]+87[%Si]+15[%Mn]+70[%Al]+430[%P]+37[%Ni]+22d−1/2+230
ただし、d:結晶粒の平均粒径(mm)
【0014】
(2)上記(1)において、成分組成として、さらにZr、V、Sb、Sn、Ge、B、Ca、希土類元素およびCoから選んだ1種または2種以上を、
ZrおよびVについてはそれぞれ0.1〜3.0%、
Sb、SnおよびGeについてはそれぞれ0.002〜0.5%、
B、Caおよび希土類元素についてはそれぞれ0.001〜0.01%、そして
Coについては0.2〜5.0%
の範囲にて含有することを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板。
【0015】
(3)質量%で、
C:0.02%以下、
Si:4.5%以下、
Mn:3.0%以下、
Al:3.0%以下、
P:0.50%以下および
Ni:5.0%以下
を含み、さらにAu、Be、MoおよびWから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.2〜4.0%の範囲にて含有する鋼スラブに、熱間圧延を施し施した後、冷間圧延あるいは温間圧延を施して最終板厚とし、次いで最終到達温度が650〜1150℃かつ最終到達温度〜400℃の温度域での冷却速度が10℃/s以上である、仕上げ焼鈍を施し、その後250℃以上650℃以下の温度にて時効処理を施すことを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0016】
(4)上記(3)において、鋼スラブが、さらにZr、V、Sb、Sn、Ge、B、Ca、希土類元素およびCoから選んだ1種または2種以上を、
ZrおよびVについてはそれぞれ0.1〜3.0%、
Sb、SnおよびGeについてはそれぞれ0.002〜0.5%、
B、Caおよび希土類元素についてはそれぞれ0.001〜0.01%、そして
Coについては0.2〜5.0%
の範囲にて含有することを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の無方向性電磁鋼板における成分組成範囲の限定理由について説明する。なお、本明細書において鋼組成を表す%は、特にことわらない限り質量%を意味するものである。
C:0.02%以下
C量が0.02%を超えると磁気時効により鉄損が著しく劣化するため、0.02%以下に制限する。
【0018】
Si:4.5%以下
Siは、脱酸剤として有用であることに加え、電気抵抗の増加により電磁鋼板の鉄損を低減する効果が大きい。さらに、固溶強化により強度向上に寄与する。脱酸剤としては、0.05%以上の含有で効果が顕著となる。また、鉄損低減および固溶強化のためには0.5%以上、さらに好適には1.2%以上で含有させる。しかし、4.5%を超えると、鋼板の圧延が著しく困難となるため、その含有量は4.5%以下に制限する。
【0019】
Mn:3.0%以下
Mnは、固溶強化による強度向上に有効な元素であることに加え、熱間脆性の改善に有効な元素であり、好ましくは0.05%以上で含有させる。しかし、過剰な添加は鉄損の劣化をもたらすため、その含有量を3.0%以下に制限する。
【0020】
Al:3.0%以下
Alは、Siと同様に電気抵抗を増加させ、電磁鋼板の鉄損を低減する効果が大きいため、好ましくは0.1%以上含有させる。しかし、過剰な添加は圧延性の低下をもたらすので、その添加量を3.0%以下に制限する。
【0021】
P:0.50%以下
Pは、比較的少量の添加でも大幅な固溶強化能が得られるため、高強度化に極めて有効であり、好ましくは0.01%以上で含有させる。一方、過剰な含有は偏析による脆化を引き起し、粒界割れや圧延性の低下をもたらすため、その含有量は0.50%以下に制限する。
【0022】
Ni:5.0%以下
Niは、固溶強化による高強度化に有効な元素であり、好ましくは0.5%以上で含有させる。しかし、5.0%を超えると、その効果は飽和しコスト高をまねくため、その上限を5.0%とする。
【0023】
Au、Be、MoおよびWのいずれか1種または2種以上のそれぞれを0.2〜4.0%
Au、Be、MoおよびWは、本発明において非常に重要な元素である。すなわち、時効処理を施して極微細なAu、Be、MoまたはW系析出物を形成することによって、鉄損(履歴損)をほとんど損なうことなしに、大幅な強度上昇が可能となる。その効果を得るには、それぞれ0.2%以上の添加が必要である。一方、それぞれ4.0%を超えると、Au、Be、MoまたはW系析出物の平均粒径が大きくなり、鉄損の劣化が大きくなると共に、強度上昇代も低下する。従って、Au、Be、MoおよびWの添加量は、それぞれ0.2〜4.0%の範囲に規制する。
【0024】
上記元素の他は、Fe(鉄)および不可避的不純物である。不可避的不純物としてのSおよびNは、硫化物や窒化物形成による鉄損劣化を防止する観点から、それぞれ0.01%以下とすることが望ましい。
【0025】
本発明に係わる無方向性電磁鋼板の基本組成は以上の通りであるが、上記成分に加えて、磁気特性の改善元素として知られるZr,V,Sb,Sn,Ge,B,Ca,希土類元素およびCoを単独または複合で添加することが出来る。しかし、その添加量は本発明の目的を害さない程度にすべきである。具体的には、
Zr,Vについては0.1〜3.0%
Sb,Sn,Geについては0.002〜0.5%
B,Ca,および希土類元素(合計)については0.001〜0.01%
Coについては0.2〜5.0%
である。
【0026】
また、本発明の電磁鋼板においては、鋼板中にAu、Be、MoおよびW系いずれかの析出物を極微細に析出させる必要がある。なぜなら、未析出状態では高強度化されないからである。そして、Au、Be、MoおよびW系いずれかの析出物を析出させるに際し、これらの平均粒径を20nm以下とする必要がある。すなわち、平均粒径が20nmを超えるものは、鉄損を劣化させるだけでなく高強度化に寄与しないため、鉄損を劣化させずに高強度化に寄与する、径が20nm以下の極微細にAu、Be、MoおよびW系いずれかの析出物を存在させることが重要である。
【0027】
ここで、Au、Be、MoおよびW系いずれかの析出物の粒径は、鋼板をTEMあるいはSEMといった電子顕微鏡を用いて観察する際、108nm2の範囲に存在するAu、Be、MoおよびW系析出物の径を円相当径として求め、求めた値を平均したものである。
【0028】
本発明では、上記の成分範囲の下に、Au、Be、MoおよびW系析出物の平均粒径を適正化することにより、製品の引張強さTS(MPa)は、下記式で表されるCTS以上となる。
記
CTS=5600[%C]+87[%Si]+15[%Mn]+70[%Al]+430[%P]+37[%Ni]+22d−1/2+230
【0029】
ここで、各元素の係数は、各元素1%当たりの固溶あるいは析出強化量に相当する項、dは製品の平均結晶粒径(直径:mm)であり、ナイタール腐食液などでエッチングされた試料を光学顕微鏡により観察し、観察視野面積と視野内の結晶粒数より結晶粒の円相当径として求められるものである。この平均結晶粒径dが小さいほど、結晶粒微細化により高強度化されるが、鉄損が劣化する。そのため、求められる強度、鉄損特性に応じて結晶粒径dを調整する。
【0030】
(製造方法)
本発明に係わる鉄損に優れた高強度無方向性電磁鋼板を製造するためには、まず、転炉あるいは電気炉などにて、前記した所定成分に溶製された鋼を、連続鋳造あるいは造塊後の分塊圧延により鋼スラブとする。次いで、得られたスラブを熱間圧延し、必要に応じて熱延坂焼鈍を施し、一回あるいは中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延あるいは温間圧延を施して製品板厚とし、仕上げ焼鈍を施し、その後時効処理を施す。さらに、仕上げ焼鈍後のいずれかの段階において、必要に応じて絶縁被膜の塗布および焼き付け処理を行う。
【0031】
本発明では、素材のSi量を高めることなく後工程で高強度化するので、冷間圧延により製造することが可能である。なお、温間圧延は、集合組織を改善し鉄損および磁束密度を向上させる効果を有するため、温間圧延を採用することもできる。
【0032】
上記の仕上げ焼鈍は、圧延による歪を除去するとともに、必要な鉄損特性を得るため再結晶により適切な結晶粒径を得ることを目的とする。すなわち、適性な結晶粒径は求められる鉄損レベルにもよるが、一般に20〜200μmであり、そのためには仕上げ焼鈍の最終到達温度は700℃以上が必要である。一方、1150℃を超える焼鈍を行うと、粗大粒となり粒界割れを起こしやすくなるとともに、鋼板表面の酸化窒化に伴う鉄損の劣化が大きくなるため、その上限は1150℃とする。
【0033】
次に、発明者らは、Au、Be、MoおよびW系析出物の極微細析出を活用する場合、仕上げ焼鈍の冷却条件が重要であることを新たに見出した。すなわち、仕上げ焼鈍の冷却過程において、最終到達温度〜400℃までの冷却速度が十分に速くないと、Au、Be、MoおよびW系析出物の一部が冷却中に粗大に析出するため、鉄損の劣化要因となり、またその後の時効焼鈍によっても粗大な析出物の量が増加し十分な強度が得られない場合がある。かような点を考慮した時、Au、Be、MoおよびW系析出物を極微細に析出させる為には、最終到達温度〜400℃の温度域のおける、冷却速度を10℃/s以上とすることが必要である。
【0034】
次に、時効処理は、250℃以上650℃以下の温度で行う。すなわち、250℃未満の場合には、極微細Au、Be、MoおよびW系析出物の析出が不十分となり、高強度が得られない。一方、650℃を越えると、Au、Be、MoおよびW系析出物が粗大化して鉄損が劣化し、強度上昇量も減少するため、良好な強度−鉄損バランスを有する電磁鋼板が得られない。
【0035】
なお、適切な時効時間は処理温度にも依存するが、10min〜1000hが好適である。また、この時効処理の実施時期は、絶縁被膜の塗布焼付け前、焼付け後、プレス打ち抜きなどの加工後、などのいずれでもよい。
【0036】
【実施例】
実施例1
表1に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物になる鋼を溶製し、熱間圧延により板厚2.0mmとした。この熱延板を冷間圧延により最終板厚0.45mmの冷延板とし、表1に示す焼鈍条件で仕上げ焼鈍を実施した。その際、冷却過程は、最終到達温度〜400℃までの温度域で20℃/sとした。その後、仕上げ焼鈍板に500℃×10hの時効処理を施した。なお、製品の成分組成は表1に示す鋼組成と同じであった。
【0037】
かくして得られた製品板について、製品板の平均結晶粒径dとAu、Be、MoまたはW系析出物の平均粒径とを測定するとともに、鉄損特性および機械特性を評価した。製品板の平均結晶粒径は、ナイタール腐食液などでエッチングされた試料を光学顕微鏡により観察し、観察視野面積と視野内の結晶粒数より結晶粒の円相当径として求め、Au、Be、MoまたはW系析出物の平均粒径は鋼板を電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する際、108nm2の範囲に存在するAu、Be、MoまたはW系析出物の径を円相当径として求めたものである。
【0038】
また、鉄損は圧延方向と圧延直角方向とから切り出した試料を等量用いて、エプスタイン法により評価した。機械的特性は、圧延方向と圧延直角方向とから切り出した試料の平均をもって評価した。これらの評価結果を表1に併記する。
【0039】
表1に示すように、鋼組成を本発明内に制御したものは、いずれの製品板においても高強度を有し、かつ鉄損にも優れるものであった。
これに対し、Au、Be、MoまたはWのいずれの添加量も本発明の下限より少ない鋼1、5、9および12による製品板は、良好な鉄損を示すが、引張強さが本発明範囲外となり不十分である。Au、Be、MoまたはWいずれかの添加量が本発明の上限を超える鋼4、8、12および16による鋼板では、Au、Be、MoまたはW系析出物径が20nm以上であるため、鉄損および強度ともに不十分である。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例2
表2に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物になる鋼を溶製し、熱間圧延により板厚2.0mmとした。この熱延板を冷間圧延により最終板厚0.45mmの冷延板とし、表3に示す焼鈍条件で仕上げ焼鈍を実施した。その後、表3に示す条件にて仕上げ焼鈍板に時効処理を施した。なお、製品の成分組成は表2に示す鋼組成と同じであった。
【0042】
かくして得られた製品板について、実施例1と同様の評価を行った。その評価結果を、表3に示す。仕上げ焼鈍条件および時効処理条件を本発明範囲内に制御したものは、製品板において優れた鉄損と高強度とを得ることができた。
一方、仕上げ焼鈍過程における冷却速度が遅い場合や時効温度が高すぎる場合は、Au、Be、MoまたはW系析出物が粗大化し、鉄損が劣化するばかりでなく、高強度も得ることができなかった。また、時効温度が低すぎる場合は、良好な鉄損を示すが、引張強さが本発明範囲外となり十分な強度を得ることができなかった。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、磁気特性に優れ、しかも高い強度を有する電磁鋼板を安定して提供することできる。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.02%以下、
Si:4.5%以下、
Mn:3.0%以下、
Al:3.0%以下、
P:0.50%以下および
Ni:5.0%以下
を含み、さらにAu、Be、MoおよびWから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.2〜4.0%の範囲にて含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、鋼板内部に存在するAu、Be、MoおよびWのいずれかを含む析出物の平均粒径が20nm以下であり、引張強さが下記式で示されるCTS(MPa)以上であることを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板。
記
CTS=5600[%C]+87[%Si]+15[%Mn]+70[%Al]+430[%P]+37[%Ni]+22d−1/2+230
ただし、d:結晶粒の平均粒径(mm) - 請求項1において、成分組成として、さらにZr、V、Sb、Sn、Ge、B、Ca、希土類元素およびCoから選んだ1種または2種以上を、
ZrおよびVについてはそれぞれ0.1〜3.0%、
Sb、SnおよびGeについてはそれぞれ0.002〜0.5%、
B、Caおよび希土類元素についてはそれぞれ0.001〜0.01%、そして
Coについては0.2〜5.0%
の範囲にて含有することを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板。 - 質量%で、
C:0.02%以下、
Si:4.5%以下、
Mn:3.0%以下、
Al:3.0%以下、
P:0.50%以下および
Ni:5.0%以下
を含み、さらにAu、Be、MoおよびWから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.2〜4.0%の範囲にて含有する鋼スラブに、熱間圧延を施した後、冷間圧延あるいは温間圧延を施して最終板厚とし、次いで最終到達温度が650〜1150℃かつ最終到達温度〜400℃の温度域での冷却速度が10℃/s以上である、仕上げ焼鈍を施し、その後250℃以上650℃以下の温度にて時効処理を施すことを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項3において、鋼スラブが、さらにZr、V、Sb、Sn、Ge、B、Ca、希土類元素およびCoから選んだ1種または2種以上を、
ZrおよびVについてはそれぞれ0.1〜3.0%、
Sb、SnおよびGeについてはそれぞれ0.002〜0.5%、
B、Caおよび希土類元素についてはそれぞれ0.001〜0.01%、そして
Coについては0.2〜5.0%
の範囲にて含有することを特徴とする磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板の製造方法。
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| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003152635A JP2004353037A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
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| JP2003152635A JP2004353037A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
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| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2004353037A true JP2004353037A (ja) | 2004-12-16 |
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| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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| JP2003152635A Pending JP2004353037A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 磁気特性に優れた高強度無方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
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Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2010150667A (ja) * | 2004-02-17 | 2010-07-08 | Nippon Steel Corp | 電磁鋼板とその製造方法 |
| JP2011114331A (ja) * | 2009-11-30 | 2011-06-09 | Kobe Steel Ltd | 圧粉磁心の製造方法およびこの製造方法によって得られた圧粉磁心 |
| KR101980289B1 (ko) * | 2017-12-26 | 2019-05-20 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 및 그의 제조방법 |
-
2003
- 2003-05-29 JP JP2003152635A patent/JP2004353037A/ja active Pending
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