JP2004230680A - 液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置 - Google Patents
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- Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
Abstract
【課題】固有振動周期を短くして液滴の高周波吐出に対応可能とすると共に、クロストークの発生を構造的に防止して液滴の吐出特性を安定化する。
【解決手段】流路形成基板7を、圧力室空部21をプレス加工による貫通口として設けた金属製の圧力室形成プレート24と、第1連通口空部25及びリザーバ空部26をプレス加工による貫通口として設けた金属製のリザーバプレート27と、第2連通口空部28及びインク供給口15を板厚方向を貫通する貫通口として設けた供給口プレート30とに分けて構成する。リザーバ空部26の少なくとも一部が圧力室空部21のインク供給側の先端よりも圧力室長手方向の内側に配置されるように圧力室形成プレート24とリザーバプレート27を配置すると共に、これらのプレートの間に供給口プレート30を挟んで各プレートを接着し、圧力室空部21とリザーバ空部26とをインク供給口15で連通する。
【選択図】 図4
【解決手段】流路形成基板7を、圧力室空部21をプレス加工による貫通口として設けた金属製の圧力室形成プレート24と、第1連通口空部25及びリザーバ空部26をプレス加工による貫通口として設けた金属製のリザーバプレート27と、第2連通口空部28及びインク供給口15を板厚方向を貫通する貫通口として設けた供給口プレート30とに分けて構成する。リザーバ空部26の少なくとも一部が圧力室空部21のインク供給側の先端よりも圧力室長手方向の内側に配置されるように圧力室形成プレート24とリザーバプレート27を配置すると共に、これらのプレートの間に供給口プレート30を挟んで各プレートを接着し、圧力室空部21とリザーバ空部26とをインク供給口15で連通する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の液体を吐出可能な液体噴射ヘッド、及びこの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関し、特に、圧力室となる圧力室空部やノズル連通口となる連通口空部等が形成された流路形成基板を有するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を液滴の状態で吐出可能な液体噴射ヘッドとしては、種々のものが提案されている。例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドが提案されている。
【0003】
この様な液体噴射ヘッドでは、pl(ピコリットル)レベルの極く少量の液体を吐出可能であるため、圧力室やノズル連通口には極めて高い寸法精度が要求される。この観点から、圧力室となる圧力室空部やノズル連通口となる連通口空部等を有する流路形成基板にはシリコンウェハーが用いられ、異方性エッチングによって圧力室空部や連通口空部等が設けられている。しかしながら、1枚のシリコンウェハーから作製できる流路形成基板の数は限られ、流路形成基板を大量に生産しようとするとコストの面及び作業効率の面で不利となってしまう。また、シリコンウェハーは定型であるため、流路形成基板を大型化することが難しいという問題があった。
【0004】
このような問題を解決すべく、流路形成基板を金属製プレートに対するプレス加工で作製する試みがなされている。例えば、板厚方向の途中までポンチを押し込んで圧力室空部を作製し、その後、レーザー加工等によって連通口空部を作製する等の方法が採られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−263799号公報(第6−8頁,第12−14図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に記載された液体噴射ヘッドでは、圧力室となる圧力室空部が凹状溝部として流路形成基板の表面に形成され、液体供給口となる供給溝部が凹状溝部として流路形成基板の表面に形成されている。さらに、リザーバとなるリザーバ空部は、板厚方向を貫通する貫通口として形成され、一方の開口面が弾性板に、他方の開口面がノズルプレートによってそれぞれ封止されている。そして、弾性板におけるリザーバ空部の封止部分は、弾性体膜によるコンプライアンス部(薄肉部)として構成され、リザーバに貯留された液体の圧力変動を吸収している。
【0007】
ところで、この種の液体噴射ヘッドでは、液滴の高周波吐出に対する要求が強い。これは、液滴を高い周波数で吐出できれば、単位時間あたりに吐出可能な液滴の量を増やすことができ、処理の短縮化が図れるからである。ここで、液滴の高周波吐出を実現するためには、圧力室内における液体圧力の固有振動周期を可及的に短くすることが肝要である。これは、液滴の吐出タイミングがこの固有振動周期に依存して定まることによる。即ち、固有振動周期で規定されるタイミング毎に液滴を吐出させることで、一定量の液滴を一定速度で吐出させることができるからである。
【0008】
この固有振動周期は圧力室の長さによって変動し、断面積が同じであれば圧力室の長さが短いほど固有振動周期が短くなる。そして、液滴を吐出させる目的から断面積の大きさは自ずと規定されるので、固有振動周期を短くするためには圧力室の長さを短くすることが求められる。
しかしながら、上記の液体噴射ヘッドでは、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで凹部を形成するので、ポンチに掛かる負荷が過剰に大きくなってしまう。このため、圧力室の大きさを小さくするには製造技術上限界があり、固有振動周期を短くすることが困難であった。
【0009】
また、この種の液体噴射ヘッドでは、液滴の吐出特性(例えば、液滴の量や飛行速度等)を安定化することも肝要である。特に、所謂クロストークの発生を防止し、複数のノズル開口の全てから液滴を吐出させた場合と、一部のノズル開口から液滴を吐出させた場合とで液滴の吐出特性を揃えることが求められる。
しかしながら、上記の液体噴射ヘッドは、リザーバ空部が貫通口として形成されており、このリザーバ空部の一面を弾性板で封止する構成である。このため、ケースと流路ユニットの接着面積が少なくなり、加えて流路形成基板がシリコンウェハーよりも柔らかい金属で作製されていることから、接着部分における剛性が不足してしまう。そして、この接着部分は圧力発生素子の変形時に発生する力の作用点になるので、接着面積が不足すると流路形成基板に変形が生じることとなり、クロストークが発生してしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液滴をより高い周波数で安定的に吐出可能にすること、及び、クロストークの発生を構造的に防止し、液滴の吐出特性を安定化することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、流路形成基板の一方の面に弾性板を、他方の面にノズルプレートをそれぞれ接合することで、リザーバから液体供給口、圧力室及びノズル連通口を通ってノズル開口に至る一連の液体流路を設けた流路ユニットと、該流路ユニットが先端面に接合されると共に、圧力発生素子を内部に収納したケースとを備え、
前記圧力発生素子により前記弾性板を部分的に変位させることで前記圧力室の容積を変化させる液体噴射ヘッドにおいて、
前記流路形成基板は、前記圧力室となる細長い圧力室空部をプレス加工による貫通口として設けた金属製の第1プレートと、前記ノズル連通口の一部となる第1連通口空部及び前記リザーバとなるリザーバ空部をプレス加工による貫通口として設けた金属製の第2プレートと、前記ノズル連通口の一部となる第2連通口空部及び前記液体供給口を板厚方向を貫通する貫通口として設けた第3プレートと、からなり、
前記リザーバ空部の少なくとも一部が前記圧力室空部の液体供給側先端よりも前記圧力室長手方向の内側に配置されるように前記第1プレートと前記第2プレートを配置すると共に、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に第3プレートを挟んで各プレートを接着し、前記圧力室空部における液体供給側の端部と前記リザーバ空部とを前記液体供給口によって連通したことを特徴とする。
なお、「先端」とは最も端の位置を意味し、「端部」とは端側の領域を意味する。
【0012】
この発明によれば、ポンチを板厚方向に打ち抜くことによって圧力室空部が作製される。このため、ポンチに掛かる負荷に関し、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで加工する場合よりも軽減される。即ち、ポンチを押し込んで加工する場合、このポンチには素材プレートからの反力が比較的長時間に亘って加わる。一方、ポンチを板厚方向に打ち抜いた場合、ポンチには瞬間的に大きな荷重が加わるが、素材プレートの破断(ブレークスルー)によって極く短時間で解放される。従って、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで加工するよりも小さい形状の圧力室空部を形成できる。このため、圧力室内部に生じる固有周期の圧力振動に関し、その振動周期を可及的に短くすることができる。これにより、液滴を高い周波数で吐出させても、液滴の量や飛行速度等を安定化することができる。
【0013】
また、この発明によれば、リザーバ空部が第2プレートに設けられ、このリザーバ空部の開口面を第3プレートとノズルプレートによって封止するので、第1プレートにおける圧力室空部よりも外側の部分(即ち、圧力室長手方向の外側部分)は、溝部や貫通口を形成しない厚肉部とすることができる。そして、弾性板はこの厚肉部の表面に接合されるので、ケース先端面、弾性板及び厚肉部の接着面積を広げることができる。これにより、各部を強固に接着できると共に、流路ユニット側の接着部分について剛性を高めることができる。その結果、流路ユニットが変形し難くなり、クロストークの発生を防止できると共に、液滴の吐出特性を安定化することができる。
【0014】
上記発明において、前記第3プレートに関し、前記リザーバ空部の封止部分を、他の部分よりも薄肉なコンプライアンス部として構成することが好ましい。
この発明によれば、コンプライアンス部が設けられているので、リザーバへの流入に伴う液体の圧力変動を効率よく吸収することができる。また、このコンプライアンス部が流路ユニットの内部に設けられており、流路ユニットの表面に露出していないので、コンプライアンス部を極めて薄く構成しても破損し難い。
【0015】
上記発明において、前記第3プレートを金属製の板材によって作製し、前記第2連通口空部及び前記液体供給口をプレス加工による貫通口として設ける構成が好ましい。さらに、前記第1プレート及び前記第2プレートを少なくともニッケル製の板材によって構成し、前記第3プレートを少なくともステンレス製の板材によって構成することが好ましい。
これらの発明によれば、プレス加工で各部が構成されるので、生産性が向上し量産に適する。また、第1プレート及び第2プレートを展性の良いニッケル製の板材によって作製するので、比較的大きな開口部であっても寸法精度良く作製することができる。加えて、線膨張係数等の物性がニッケルに近いステンレス製の板材を用いて第3プレートを構成しているので、各プレートの接合時に加熱しても反り等の変形が生じ難い。このため、ヘッドの信頼性を高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドと略記する)を例に挙げて行うこととする。
【0017】
この記録ヘッドは、液体状のインク(本発明の液体の一種)を吐出することにより、記録紙(着弾対象物の一種)の表面に文字や画像等を記録するものである。図1に例示した記録ヘッド1は、ケース2と、このケース2内に収納される振動子ユニット3と、ケース2の先端面に接合される流路ユニット4等から概略構成されている。
【0018】
上記のケース2は、例えば、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂で成型されたブロック状部材である。ここで、ケース2を熱硬化性樹脂で成型しているのは、この熱硬化性樹脂は、一般的な樹脂よりも高い機械的強度を有しており、線膨張係数が一般的な樹脂よりも小さく、周囲の温度変化による変形が小さいからである。そして、このケース2には、振動子ユニット3を収納可能な収納空部5と、ヘッド外部から供給されるインクを案内するインク供給路6(液体供給路の一種)とを、ケース2の高さ方向を貫通させた状態で設けている。また、このケース2の先端面2aは、流路ユニット4を接着するための接着面として機能する。
【0019】
上記の振動子ユニット3は、複数の圧電振動子7によって構成される振動子群と、この振動子群が接合される固定板8と、振動子群に駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル(図示せず)とから概略構成される。上記の圧電振動子7は、圧力発生素子の一種であって電気機械変換素子の一種であり、振動子電位に応じて変形する。本実施形態における圧電振動子7は、例えば、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型(縦振動モード)の圧電振動子である。各圧電振動子7は、固定板8に対して所謂片持ち梁の状態で接合されている。そして、各圧電振動子7において、固定板8の縁よりも外側に突出した自由端部が、振動子電位に応じて積層方向とほぼ直交する方向に伸縮する。上記の固定板8は、厚さが1ミリ程度の板状部材であり、伸縮時において生じる圧電振動子7からの反力を受け止める部材である。本実施形態では、この固定板8を、金属材料の一種であるステンレスによって作製している。また、この固定板8の背面、即ち、振動子接合面とは反対側の表面は、収納空部5を区画するケース2の内壁面2bに接着されている。従って、圧電振動子7からの反力は、固定板8を介してケース2に作用する。
【0020】
次に、上記の流路ユニット4について説明する。この流路ユニット4は、流路形成基板11の一方の面にノズルプレート12を、流路形成基板11の他方の面に弾性板13を接合した構成である。そして、この流路ユニット4には、リザーバ14と、インク供給口15(本発明の液体供給口の一種)と、圧力室16と、ノズル連通口17と、ノズル開口18とが設けられている。そして、これらの各部により、リザーバ14からインク供給口15、圧力室16及びノズル連通口17を経てノズル開口18に至る一連の個別インク流路が、ノズル開口18に対応する複数形成されている。
【0021】
上記の流路形成基板11は、圧力室16となる圧力室空部21、及び、供給連通路22の一部となる第1供給連通空部23(図3(b)参照)が形成された圧力室形成プレート24と、ノズル連通口17の一部となる第1連通口空部25、及び、リザーバ14となるリザーバ空部26が形成されたリザーバプレート27と、ノズル連通口17の一部となる第2連通口空部28、インク供給口15、及び、供給連通路22の一部となる第2供給連通空部29(図3(c)参照)が形成された供給口プレート30とからなる3枚構成である。ここで、上記の圧力室形成プレート24は本発明における第1プレートの一種であり、リザーバプレート27は本発明における第2プレートの一種である。また、供給口プレート30は本発明における第3プレートの一種である。
【0022】
そして、これらのプレート同士を厚さ方向に積層して接着することで、流路形成基板11が作製されている。本実施形態では、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27を金属板の一種である純ニッケルの薄板(以下、単にニッケル板という。)によって構成している。また、供給口プレート30を金属板の一種であるステンレス製の薄板によって構成している。なお、この流路形成基板11については、後で詳細に説明する。
【0023】
上記の弾性板13は、図3(a)にも示すように、圧力室空部21の開口面を封止するダイヤフラム部33と、供給連通路22の一部となる第3供給連通空部34が形成された板状部材である。本実施形態の弾性板13は、支持板35と弾性体膜36の積層構造である。具体的には、支持板35として厚さ約30μmのステンレス板を用い、弾性体膜36として厚さ約7μmのPPS(ポリフェニレンサルファイド)を用いている。そして、支持板35と弾性体膜36との間にポリオレフィン等の接着層(AD層)を挟んで一体化して板状基板とし、エッチング処理を施す等によってダイヤフラム部33を作製する。また、プレス加工(打ち抜き加工)等により、上記の第3供給連通空部34を形成する。この第3供給連通空部34は、その直径が上記インク供給路6の直径に揃えられると共に、このインク供給路6と連通する位置に設けられた円形の貫通口である。
【0024】
上記のダイヤフラム部33は、圧力室空部21における開口面を封止する部分であり、圧力室16の一部を区画している。このダイヤフラム部33には、圧電振動子7の先端面が接合される島部37と、この島部37を囲うように設けられた薄肉弾性部38とを設ける。そして、このダイヤフラム部33は、島部37となる部分が残るように支持板35を部分的に除去することで作製される。
また、島部37は、圧力室空部21の開口形状よりも一回り小さいブロック状に作製される。例えば、島部37の幅は圧力室空部21の幅の約半分に、島部37の長さは圧力室空部21の長さの約半分に設定される。このような島部37をダイヤフラム部33の略中央に設けることで、弾性体膜36からなる薄肉弾性部38が島部37を囲うように形成される。
【0025】
次に、上記のノズルプレート12について説明する。ノズルプレート12は、複数のノズル開口18を穿設した金属製の板状部材であり、本実施形態では薄手のステンレス板を用いている。このノズルプレート12に穿設されたノズル開口18は、図2にその一部を示すように、ドット形成密度に対応したピッチで複数列設されている。そして、1列に属する複数のノズル開口18でノズル列(図示せず)を構成すると共に、このノズル列を横並びに複数列設けている。このノズルプレート12は、流路形成基板11の一方の表面、即ち、弾性板13とは反対側の表面に接合される。この接合状態において、各ノズル開口18は対応するノズル連通口17に臨む。
【0026】
上記構成の記録ヘッド1は、インク供給針(液体供給針の一種,図示せず。)からインク供給路6及び供給連通路22を通ってリザーバ14に至る共通インク流路(共通液体流路の一種)と、インク供給口15から各ノズル開口18に至る個別インク流路(本発明の液体流路の一種)とを有する。そして、インクカートリッジに貯留されたインクは、インク供給針から導入され、共通インク流路を通った後にリザーバ14に貯留される。また、リザーバ14に貯留されたインクは、個別インク流路を通じてノズル開口18から液滴として吐出される。
【0027】
例えば、圧電振動子7を素子長手方向に収縮させると、ダイヤフラム部33が振動子ユニット3側に引っ張られて圧力室16が膨張する。この膨張により圧力室16内が負圧化されるので、リザーバ14に貯留されているインクがインク供給口15を通って圧力室16内に流入する。その後、圧電振動子7を素子長手方向に伸張させると、ダイヤフラム部33が流路形成基板11側に押されて圧力室16が収縮する。この収縮により、圧力室16内のインク圧力が上昇し、対応するノズル開口18からインク滴が吐出される。
【0028】
次に、上記の流路形成基板11について詳細に説明する。上記したように、流路形成基板11は、圧力室形成プレート24(本発明の第1プレートの一種)と、リザーバプレート27(本発明の第2プレートの一種)と、供給口プレート30(本発明の第3プレートの一種)とからなる3枚構成であり、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27との間に供給口プレート30を挟み、各プレートを積層状態で接着することで作製されている。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、圧力室形成プレート24をニッケル板によって構成すると共に、符号t24で示す厚さを80μm程度としている。また、リザーバプレート27についてもニッケル板によって構成すると共に、符号t27で示す厚さを200μm程度としている。一方、供給口プレート30については、ステンレス板によって構成すると共に、符号t30で示す厚さを60μm程度としている。
【0030】
圧力室形成プレート24に設けられた圧力室空部21は、図3(b)に示すように、ノズル列方向とは直交する方向に細長い矩形状(つまり、長方形状)の貫通口であり、プレス加工(打ち抜き加工)によって作製されている。本実施形態では、符号L21で示す長さが800μmであり、符号W21で示す幅が115μmの矩形状開口によって構成されている。そして、この圧力室空部21を幅方向、即ち、ノズル列方向に並べて設けている。また、この圧力室形成プレート24に設けられた第1供給連通空部23は、上記の第3供給連通空部34と同様に、プレス加工等により開設された円形の貫通口である。そして、この第1供給連通空部23もまた、その直径が上記インク供給路6の直径に揃えられており、その形成位置は第3供給連通空部34と連通可能な位置とされている。
【0031】
リザーバプレート27に設けられた第1連通口空部25もまた、プレス加工(打ち抜き加工)によって作製されている。この第1連通口空部25は、図3(d)に示すように、ノズル列方向とは直交する方向に細長い矩形状(つまり、長方形状)の貫通口である。本実施形態では、符号L25で示す長さが150μmであり、符号W25で示す幅が85μmの矩形状開口によって構成されている。そして、上記のノズル開口18は、流路ユニット4に組み立てられた状態で、対応する第1連通口空部25内に臨む。
また、このリザーバプレート27に設けられたリザーバ空部26もまた、プレス加工(打ち抜き加工)によって作製され、ノズル列方向に延設された貫通口である。このリザーバ空部26は、例えば略台形状に形成される。本実施形態では、この台形状の圧力室空部21における下底側の辺(圧力室空部21側の辺)から上底側の辺(供給連通路22側の辺)までの間隔L26を、インク供給口15の外側端部から供給連通路22の外側端部までの間隔L30よりも長く設定し、流路ユニット4に組み立てた状態で、これらのインク供給口15と供給連通路22とがリザーバ14内に臨むようにしている。
【0032】
供給口プレート30に設けられた第2連通口空部28もまた、プレス加工(打ち抜き加工)によって作製されており、図3(c)に示すように矩形状(つまり、長方形状)の貫通口である。本実施形態では、符号L28で示す長さが150μmであり、符号W28で示す幅が100μmの矩形状開口によって構成されている。即ち、圧力室空部21、第1連通口空部25、及び、第2連通口空部28の幅W21,W25,W28に関し、圧力室空部21の幅W21が一番広く、第2連通口空部28の幅W28が2番目に広い。そして、第1連通口空部25の幅W25が最も狭く設定されている。換言すれば、インク流路の下流側に向かう程に流路の開口が狭くなっている。このように構成すると、インクを円滑に流すことができる。また、各プレート同士を接着する際において、多少の位置ズレであればそれを吸収することができる。即ち、インク滴の吐出特性に悪影響を与えずに済む。
【0033】
また、この供給口プレート30に設けられたインク供給口15は、プレス加工等によって開設された円形の貫通口である。そして、このインク供給口15は、リザーバ14側の下半部分がストレート部として構成され、圧力室16側の上半部分が圧力室16側に向けて拡開するテーパー部として構成されている。このインク供給口15は、圧力室16内におけるインクの固有振動周期に影響を与えるので、高い寸法精度が要求される。このため、インク供給口15を作製するにあたっては、ポンチを素材プレートの厚さ方向の途中まで押し込んで凹部を形成し、その後、素材プレートにおけるストレート部側の面を研磨することで凹部を貫通させている。この方法によれば、インク供給口15を高い寸法精度で容易に作成することができる。
【0034】
さらに、この供給口プレート30に設けられた第2供給連通空部29は、上記の第1供給連通空部23や第3供給連通空部34と同様に、プレス加工等により開設された円形の貫通口である。そして、この第2供給連通空部29もまた、その直径が上記インク供給路6の直径に揃えられており、その形成位置は第1供給連通空部23と連通可能な位置とされる。
【0035】
この他に、供給口プレート30には、リザーバ空部26の一面を封止するコンプライアンス部39を設けている。このコンプライアンス部39は、供給口プレート30における他の部分よりも薄肉に構成されており、リザーバ14に貯留されたインクの圧力変動に応じて変形する部分である。また、このコンプライアンス部39(薄肉部)の面積、即ち変形量は、圧力室の長さに関係なくリザーバ幅を大きく設定することで、十分に確保できる。その結果、このコンプライアンス部39の変形によって、リザーバ14に貯留されたインクの圧力変動を吸収することができる。
なお、流路ユニット4に組み立てられた状態では、図4に示すように、コンプライアンス部39と圧力室形成プレート24との間に、コンプライアンス部39の変形を許容するための逃げ空間が形成される。この逃げ空間は、プレートの面方向に沿って連続的に形成され、端部で大気開放されている。
【0036】
このように、流路形成基板11を圧力室形成プレート24とリザーバプレート27と供給口プレート30の3枚構成にしたのは、圧力室空部21、連通口空部25,28、インク供給口15、及び、供給連通路23,29を凹凸のない素材プレートに対する打ち抜き加工によって容易に作製するためである。
【0037】
即ち、ポンチを板厚方向に打ち抜くことによって圧力室空部21等が作製される。このため、ポンチに掛かる負荷に関しては、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで加工する場合よりも軽減される。即ち、ポンチを押し込んで加工する場合、このポンチには素材プレートからの反力が比較的長時間に亘って加わる。一方、ポンチを板厚方向に打ち抜いた場合、ポンチには瞬間的に大きな荷重が加わるが、素材プレートの破断によって極く短時間で解放される。従って、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで加工するよりも小さい形状の圧力室空部21等を形成できる。さらに、圧力室空部21とリザーバ空部26とをインク供給口15によって連通する構成としているので、圧力室空部21(圧力室16)は、インク滴の吐出量に応じた最小限の容積で足りる。
【0038】
このため、圧力室内に生じる固有周期の圧力振動に関し、その振動周期を可及的に短くすることができる。これにより、インク滴の吐出周波数を高めても、圧力振動に同期させて吐出させることができ、インク滴の量や飛行速度等を安定化することができる。
【0039】
例えば、圧力室16における長手方向の長さを変化させ、この圧力室長さ以外の条件を揃えた記録ヘッド1同士を比較すると、図6に示す様な結果が得られる。この例では、圧力室長さ(圧力室空部21の長さ)が1.0mmの記録ヘッド1において、駆動周波数が40kHzを越えた領域に固有振動Tc(インク量変動曲線)のボトムが現れる。このため、当該領域においては、圧力室16内のインクの圧力変動に対するメニスカスの応答が不十分となり、インク滴の吐出量が減少してしまう。従って、この場合には、最大駆動周波数としては38kHz程度となってしまう。一方、圧力室長さが0.8mmの記録ヘッド1においては、駆動周波数を圧電振動子7の許容上限である42kHzに設定しても固有振動Tcのボトムにはあたらない。このため、最大駆動周波数として42kHzを設定することができる。
【0040】
さらに、この打ち抜き加工は容易であるため大量生産に適する。さらに、打ち抜き時においてポンチに偏加重などの無用な応力がかかり難くなるので、ポンチ折れ等の不具合を防止することもできる。さらに、各部の開口形状を矩形や円形等の単純な形状とできるので、この点でもポンチ折れ等の不具合を防止できる。
【0041】
また、流路形成基板11を上記の3枚構成にしたことにより、圧力室空部21の深さは圧力室形成プレート24の厚みt24で規定される。このため、圧力室空部21に関し、深さ方向の寸法精度を向上させることができる。さらに、素材プレート毎に打ち抜き加工(プレス加工)し、その後に接着するので、流路形成基板11の厚さを、従来よりも厚くすることができる。これにより、流路ユニット4の剛性を高めることができ、インク滴の吐出特性を安定化することができる。これにより、圧力室16からの押圧力に起因する流路ユニット4全体の変形を防止することができ、所謂クロストークを防止することができる。
【0042】
また、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27の素材としてニッケル板を選定した理由は、次の通りである。第1の理由は、展性に富んでいるからである。これは、圧力室形成プレート24及びリザーバプレート27を作製するにあたって打ち抜き加工を採用していることによる。即ち、これらのプレートに形成される圧力室空部21や第1連通口空部25等は、極めて微細な形状であり、且つ、高い寸法精度が要求される。そして、基板にニッケルを用いると、展性に富んでいることから打ち抜き加工であってもこれらの各部を高い寸法精度で形成することができる。
【0043】
第2の理由は、防錆性に優れているからである。即ち、この種の記録ヘッド111では水性インクが好適に用いられているので、長期間に亘って水が接触しても錆び等の変質が生じないことが肝要である。その点、ニッケルは、ステンレスと同様に防錆性に優れており、錆び等の変質が生じ難い。
【0044】
また、この流路ユニット4において、上記の供給口プレート30、ノズルプレート12、弾性板13(支持板35)がステンレス製であり、圧力室形成プレート24及びリザーバプレート27がニッケル製である。このように、ステンレスとニッケルの組み合わせを選んだのは、ステンレスとニッケルは、その線膨張係数がほぼ等しいからである。即ち、これらの各プレートを加熱接着した際において、各プレートは均等に膨張するため、線膨張係数の違いに起因する反り等の機械的ストレスが発生し難い。その結果、高温で接着したとしても各部材を支障なく接着することができる。
【0045】
なお、本願実施形態では、流路形成基板11に関し、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27に純ニッケルを、供給口プレート30にステンレスを用いたが、この種の金属に限られず、上記した各要件、即ち、線膨張係数の要件、防錆性の要件、及び、展性の要件を満たすならば、ニッケルやステンレス以外の金属で構成してもよい。
【0046】
そして、これらの圧力室形成プレート24、リザーバプレート27、及び、供給口プレート30は、上記したように、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27との間に供給口プレート30を挟んだ状態で接着される。このとき、図4に符号Sで示すように、リザーバ空部26の一部分が圧力室空部21のインク供給側の先端(即ち、最も端の位置)よりも圧力室長手方向の内側に配置されるように、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27を配置する。そして、圧力室空部21におけるインク供給側の端部(即ち、先端から少し手前までの範囲)とリザーバ空部26とを供給口プレート30のインク供給口15によって連通する。
【0047】
このように構成すると、リザーバ空部26の開口面の一方がノズルプレート12によって封止され、他方が供給口プレート30によって封止される。このため、圧力室形成プレート24における圧力室空部21よりも外側の部分、即ち、圧力室長手方向の外側部分については、溝部や貫通口を形成しない厚肉部とすることができる。そして、弾性板13はこの厚肉部の表面に接着されるので、ケース先端面2aと弾性板13の接着面積を広げることができ、ケース2と流路ユニット4とを強固に接着できる。また、流路ユニット4におけるケース2との接着部分について、剛性を高めることができる。その結果、流路ユニット4が変形し難くなってクロストークの発生を防止でき、インク滴の量や飛行速度といった吐出特性を安定化させることができる。
【0048】
また、圧力室空部21とリザーバ空部26とが圧力室長手方向に対して部分的に重畳しているので、流路ユニット4に関し、圧力室長手方向の長さを従来よりも短くすることができる。これにより、記録ヘッド1の小型化も図れる。
【0049】
また、この構成では、図5にも示すように、上記のコンプライアンス部39が流路ユニット4の内部、即ち、厚さ方向の途中に設けられる。言い換えれば、コンプライアンス部39を、圧力室形成プレート24の厚肉部分で覆って保護している。また、コンプライアンス部(薄肉部)39は、圧力室の長さに拘わらず、リザーバ14の幅(例えば、ノズル列方向の幅)を必要十分な大きさに設定することで十分な面積が確保できる。このように、薄肉のコンプライアンス部39が流路ユニット4の表面に露出していないので、このコンプライアンス部39が破損し難い。その結果、コンプライアンス部39を極めて薄く構成できると共に十分な変形量が確保できる。
【0050】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に基づいて種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、圧力発生素子に関し、上記実施形態では、所謂縦振動モードの圧電振動子7を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、所謂撓み振動モードの圧電振動子を用いてもよいし、静電アクチュエータを用いてもよい。
【0052】
また、リザーバ空部26の配置に関し、リザーバ空部26の開口全体を圧力室空部21の長さ範囲内(図3(b)に符号L21で示す範囲内)に収めてもよい。このように構成すると、記録ヘッド1の小型化の面で有利である。
【0053】
なお、本発明は、プリンタに限らず、プロッタ、ファクシミリ装置、コピー機等、各種の記録装置に用いる記録ヘッドにも適用可能である。
また、本発明は、記録装置以外の液体噴射装置に用いる液体噴射ヘッドにも適用できる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタを製造するディスプレー製造装置,有機ELディスプレーやFED等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップを製造するチップ製造装置,極く少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペット用の液体噴射ヘッドにも適用することができる。
そして、ディスプレー製造装置では、色材噴射ヘッドから少なくともR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を吐出する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を吐出する。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録ヘッドの構造を説明する断面図である。
【図2】圧力室とノズル連通口の関係を説明する部分拡大断面図である。
【図3】(a)は弾性板の構成を説明する部分拡大図、(b)は圧力室形成プレートの構成を説明する部分拡大図、(c)は供給口プレートの構成を説明する部分拡大図、(d)はリザーバプレートの構成を説明する部分拡大図である。
【図4】リザーバ近傍を説明する部分拡大断面図である。
【図5】コンプライアンス部近傍を説明する部分拡大図である。
【図6】圧力室長さとインク量の関係を説明する図である。
【符号の説明】
1…記録ヘッド,2…ケース,3…振動子ユニット,4…流路ユニット,5…収納空部,6…インク供給路,7…圧電振動子,8…固定板,11…流路形成基板,12…ノズルプレート,13…弾性板,14…リザーバ,15…インク供給口,16…圧力室,17…ノズル連通口,18…ノズル開口,21…圧力室空部,22…供給連通路,23…第1供給連通空部,24…圧力室形成プレート,25…第1連通口空部,26…リザーバ空部,27…リザーバプレート,28…第2連通口空部,29…第2供給連通空部,30…供給口プレート,33…ダイヤフラム部,34…第3供給連通空部,35…支持板,36…弾性体膜,37…島部,38…薄肉弾性部,39…コンプライアンス部
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の液体を吐出可能な液体噴射ヘッド、及びこの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関し、特に、圧力室となる圧力室空部やノズル連通口となる連通口空部等が形成された流路形成基板を有するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を液滴の状態で吐出可能な液体噴射ヘッドとしては、種々のものが提案されている。例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドが提案されている。
【0003】
この様な液体噴射ヘッドでは、pl(ピコリットル)レベルの極く少量の液体を吐出可能であるため、圧力室やノズル連通口には極めて高い寸法精度が要求される。この観点から、圧力室となる圧力室空部やノズル連通口となる連通口空部等を有する流路形成基板にはシリコンウェハーが用いられ、異方性エッチングによって圧力室空部や連通口空部等が設けられている。しかしながら、1枚のシリコンウェハーから作製できる流路形成基板の数は限られ、流路形成基板を大量に生産しようとするとコストの面及び作業効率の面で不利となってしまう。また、シリコンウェハーは定型であるため、流路形成基板を大型化することが難しいという問題があった。
【0004】
このような問題を解決すべく、流路形成基板を金属製プレートに対するプレス加工で作製する試みがなされている。例えば、板厚方向の途中までポンチを押し込んで圧力室空部を作製し、その後、レーザー加工等によって連通口空部を作製する等の方法が採られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−263799号公報(第6−8頁,第12−14図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に記載された液体噴射ヘッドでは、圧力室となる圧力室空部が凹状溝部として流路形成基板の表面に形成され、液体供給口となる供給溝部が凹状溝部として流路形成基板の表面に形成されている。さらに、リザーバとなるリザーバ空部は、板厚方向を貫通する貫通口として形成され、一方の開口面が弾性板に、他方の開口面がノズルプレートによってそれぞれ封止されている。そして、弾性板におけるリザーバ空部の封止部分は、弾性体膜によるコンプライアンス部(薄肉部)として構成され、リザーバに貯留された液体の圧力変動を吸収している。
【0007】
ところで、この種の液体噴射ヘッドでは、液滴の高周波吐出に対する要求が強い。これは、液滴を高い周波数で吐出できれば、単位時間あたりに吐出可能な液滴の量を増やすことができ、処理の短縮化が図れるからである。ここで、液滴の高周波吐出を実現するためには、圧力室内における液体圧力の固有振動周期を可及的に短くすることが肝要である。これは、液滴の吐出タイミングがこの固有振動周期に依存して定まることによる。即ち、固有振動周期で規定されるタイミング毎に液滴を吐出させることで、一定量の液滴を一定速度で吐出させることができるからである。
【0008】
この固有振動周期は圧力室の長さによって変動し、断面積が同じであれば圧力室の長さが短いほど固有振動周期が短くなる。そして、液滴を吐出させる目的から断面積の大きさは自ずと規定されるので、固有振動周期を短くするためには圧力室の長さを短くすることが求められる。
しかしながら、上記の液体噴射ヘッドでは、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで凹部を形成するので、ポンチに掛かる負荷が過剰に大きくなってしまう。このため、圧力室の大きさを小さくするには製造技術上限界があり、固有振動周期を短くすることが困難であった。
【0009】
また、この種の液体噴射ヘッドでは、液滴の吐出特性(例えば、液滴の量や飛行速度等)を安定化することも肝要である。特に、所謂クロストークの発生を防止し、複数のノズル開口の全てから液滴を吐出させた場合と、一部のノズル開口から液滴を吐出させた場合とで液滴の吐出特性を揃えることが求められる。
しかしながら、上記の液体噴射ヘッドは、リザーバ空部が貫通口として形成されており、このリザーバ空部の一面を弾性板で封止する構成である。このため、ケースと流路ユニットの接着面積が少なくなり、加えて流路形成基板がシリコンウェハーよりも柔らかい金属で作製されていることから、接着部分における剛性が不足してしまう。そして、この接着部分は圧力発生素子の変形時に発生する力の作用点になるので、接着面積が不足すると流路形成基板に変形が生じることとなり、クロストークが発生してしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液滴をより高い周波数で安定的に吐出可能にすること、及び、クロストークの発生を構造的に防止し、液滴の吐出特性を安定化することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、流路形成基板の一方の面に弾性板を、他方の面にノズルプレートをそれぞれ接合することで、リザーバから液体供給口、圧力室及びノズル連通口を通ってノズル開口に至る一連の液体流路を設けた流路ユニットと、該流路ユニットが先端面に接合されると共に、圧力発生素子を内部に収納したケースとを備え、
前記圧力発生素子により前記弾性板を部分的に変位させることで前記圧力室の容積を変化させる液体噴射ヘッドにおいて、
前記流路形成基板は、前記圧力室となる細長い圧力室空部をプレス加工による貫通口として設けた金属製の第1プレートと、前記ノズル連通口の一部となる第1連通口空部及び前記リザーバとなるリザーバ空部をプレス加工による貫通口として設けた金属製の第2プレートと、前記ノズル連通口の一部となる第2連通口空部及び前記液体供給口を板厚方向を貫通する貫通口として設けた第3プレートと、からなり、
前記リザーバ空部の少なくとも一部が前記圧力室空部の液体供給側先端よりも前記圧力室長手方向の内側に配置されるように前記第1プレートと前記第2プレートを配置すると共に、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に第3プレートを挟んで各プレートを接着し、前記圧力室空部における液体供給側の端部と前記リザーバ空部とを前記液体供給口によって連通したことを特徴とする。
なお、「先端」とは最も端の位置を意味し、「端部」とは端側の領域を意味する。
【0012】
この発明によれば、ポンチを板厚方向に打ち抜くことによって圧力室空部が作製される。このため、ポンチに掛かる負荷に関し、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで加工する場合よりも軽減される。即ち、ポンチを押し込んで加工する場合、このポンチには素材プレートからの反力が比較的長時間に亘って加わる。一方、ポンチを板厚方向に打ち抜いた場合、ポンチには瞬間的に大きな荷重が加わるが、素材プレートの破断(ブレークスルー)によって極く短時間で解放される。従って、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで加工するよりも小さい形状の圧力室空部を形成できる。このため、圧力室内部に生じる固有周期の圧力振動に関し、その振動周期を可及的に短くすることができる。これにより、液滴を高い周波数で吐出させても、液滴の量や飛行速度等を安定化することができる。
【0013】
また、この発明によれば、リザーバ空部が第2プレートに設けられ、このリザーバ空部の開口面を第3プレートとノズルプレートによって封止するので、第1プレートにおける圧力室空部よりも外側の部分(即ち、圧力室長手方向の外側部分)は、溝部や貫通口を形成しない厚肉部とすることができる。そして、弾性板はこの厚肉部の表面に接合されるので、ケース先端面、弾性板及び厚肉部の接着面積を広げることができる。これにより、各部を強固に接着できると共に、流路ユニット側の接着部分について剛性を高めることができる。その結果、流路ユニットが変形し難くなり、クロストークの発生を防止できると共に、液滴の吐出特性を安定化することができる。
【0014】
上記発明において、前記第3プレートに関し、前記リザーバ空部の封止部分を、他の部分よりも薄肉なコンプライアンス部として構成することが好ましい。
この発明によれば、コンプライアンス部が設けられているので、リザーバへの流入に伴う液体の圧力変動を効率よく吸収することができる。また、このコンプライアンス部が流路ユニットの内部に設けられており、流路ユニットの表面に露出していないので、コンプライアンス部を極めて薄く構成しても破損し難い。
【0015】
上記発明において、前記第3プレートを金属製の板材によって作製し、前記第2連通口空部及び前記液体供給口をプレス加工による貫通口として設ける構成が好ましい。さらに、前記第1プレート及び前記第2プレートを少なくともニッケル製の板材によって構成し、前記第3プレートを少なくともステンレス製の板材によって構成することが好ましい。
これらの発明によれば、プレス加工で各部が構成されるので、生産性が向上し量産に適する。また、第1プレート及び第2プレートを展性の良いニッケル製の板材によって作製するので、比較的大きな開口部であっても寸法精度良く作製することができる。加えて、線膨張係数等の物性がニッケルに近いステンレス製の板材を用いて第3プレートを構成しているので、各プレートの接合時に加熱しても反り等の変形が生じ難い。このため、ヘッドの信頼性を高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドと略記する)を例に挙げて行うこととする。
【0017】
この記録ヘッドは、液体状のインク(本発明の液体の一種)を吐出することにより、記録紙(着弾対象物の一種)の表面に文字や画像等を記録するものである。図1に例示した記録ヘッド1は、ケース2と、このケース2内に収納される振動子ユニット3と、ケース2の先端面に接合される流路ユニット4等から概略構成されている。
【0018】
上記のケース2は、例えば、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂で成型されたブロック状部材である。ここで、ケース2を熱硬化性樹脂で成型しているのは、この熱硬化性樹脂は、一般的な樹脂よりも高い機械的強度を有しており、線膨張係数が一般的な樹脂よりも小さく、周囲の温度変化による変形が小さいからである。そして、このケース2には、振動子ユニット3を収納可能な収納空部5と、ヘッド外部から供給されるインクを案内するインク供給路6(液体供給路の一種)とを、ケース2の高さ方向を貫通させた状態で設けている。また、このケース2の先端面2aは、流路ユニット4を接着するための接着面として機能する。
【0019】
上記の振動子ユニット3は、複数の圧電振動子7によって構成される振動子群と、この振動子群が接合される固定板8と、振動子群に駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル(図示せず)とから概略構成される。上記の圧電振動子7は、圧力発生素子の一種であって電気機械変換素子の一種であり、振動子電位に応じて変形する。本実施形態における圧電振動子7は、例えば、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型(縦振動モード)の圧電振動子である。各圧電振動子7は、固定板8に対して所謂片持ち梁の状態で接合されている。そして、各圧電振動子7において、固定板8の縁よりも外側に突出した自由端部が、振動子電位に応じて積層方向とほぼ直交する方向に伸縮する。上記の固定板8は、厚さが1ミリ程度の板状部材であり、伸縮時において生じる圧電振動子7からの反力を受け止める部材である。本実施形態では、この固定板8を、金属材料の一種であるステンレスによって作製している。また、この固定板8の背面、即ち、振動子接合面とは反対側の表面は、収納空部5を区画するケース2の内壁面2bに接着されている。従って、圧電振動子7からの反力は、固定板8を介してケース2に作用する。
【0020】
次に、上記の流路ユニット4について説明する。この流路ユニット4は、流路形成基板11の一方の面にノズルプレート12を、流路形成基板11の他方の面に弾性板13を接合した構成である。そして、この流路ユニット4には、リザーバ14と、インク供給口15(本発明の液体供給口の一種)と、圧力室16と、ノズル連通口17と、ノズル開口18とが設けられている。そして、これらの各部により、リザーバ14からインク供給口15、圧力室16及びノズル連通口17を経てノズル開口18に至る一連の個別インク流路が、ノズル開口18に対応する複数形成されている。
【0021】
上記の流路形成基板11は、圧力室16となる圧力室空部21、及び、供給連通路22の一部となる第1供給連通空部23(図3(b)参照)が形成された圧力室形成プレート24と、ノズル連通口17の一部となる第1連通口空部25、及び、リザーバ14となるリザーバ空部26が形成されたリザーバプレート27と、ノズル連通口17の一部となる第2連通口空部28、インク供給口15、及び、供給連通路22の一部となる第2供給連通空部29(図3(c)参照)が形成された供給口プレート30とからなる3枚構成である。ここで、上記の圧力室形成プレート24は本発明における第1プレートの一種であり、リザーバプレート27は本発明における第2プレートの一種である。また、供給口プレート30は本発明における第3プレートの一種である。
【0022】
そして、これらのプレート同士を厚さ方向に積層して接着することで、流路形成基板11が作製されている。本実施形態では、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27を金属板の一種である純ニッケルの薄板(以下、単にニッケル板という。)によって構成している。また、供給口プレート30を金属板の一種であるステンレス製の薄板によって構成している。なお、この流路形成基板11については、後で詳細に説明する。
【0023】
上記の弾性板13は、図3(a)にも示すように、圧力室空部21の開口面を封止するダイヤフラム部33と、供給連通路22の一部となる第3供給連通空部34が形成された板状部材である。本実施形態の弾性板13は、支持板35と弾性体膜36の積層構造である。具体的には、支持板35として厚さ約30μmのステンレス板を用い、弾性体膜36として厚さ約7μmのPPS(ポリフェニレンサルファイド)を用いている。そして、支持板35と弾性体膜36との間にポリオレフィン等の接着層(AD層)を挟んで一体化して板状基板とし、エッチング処理を施す等によってダイヤフラム部33を作製する。また、プレス加工(打ち抜き加工)等により、上記の第3供給連通空部34を形成する。この第3供給連通空部34は、その直径が上記インク供給路6の直径に揃えられると共に、このインク供給路6と連通する位置に設けられた円形の貫通口である。
【0024】
上記のダイヤフラム部33は、圧力室空部21における開口面を封止する部分であり、圧力室16の一部を区画している。このダイヤフラム部33には、圧電振動子7の先端面が接合される島部37と、この島部37を囲うように設けられた薄肉弾性部38とを設ける。そして、このダイヤフラム部33は、島部37となる部分が残るように支持板35を部分的に除去することで作製される。
また、島部37は、圧力室空部21の開口形状よりも一回り小さいブロック状に作製される。例えば、島部37の幅は圧力室空部21の幅の約半分に、島部37の長さは圧力室空部21の長さの約半分に設定される。このような島部37をダイヤフラム部33の略中央に設けることで、弾性体膜36からなる薄肉弾性部38が島部37を囲うように形成される。
【0025】
次に、上記のノズルプレート12について説明する。ノズルプレート12は、複数のノズル開口18を穿設した金属製の板状部材であり、本実施形態では薄手のステンレス板を用いている。このノズルプレート12に穿設されたノズル開口18は、図2にその一部を示すように、ドット形成密度に対応したピッチで複数列設されている。そして、1列に属する複数のノズル開口18でノズル列(図示せず)を構成すると共に、このノズル列を横並びに複数列設けている。このノズルプレート12は、流路形成基板11の一方の表面、即ち、弾性板13とは反対側の表面に接合される。この接合状態において、各ノズル開口18は対応するノズル連通口17に臨む。
【0026】
上記構成の記録ヘッド1は、インク供給針(液体供給針の一種,図示せず。)からインク供給路6及び供給連通路22を通ってリザーバ14に至る共通インク流路(共通液体流路の一種)と、インク供給口15から各ノズル開口18に至る個別インク流路(本発明の液体流路の一種)とを有する。そして、インクカートリッジに貯留されたインクは、インク供給針から導入され、共通インク流路を通った後にリザーバ14に貯留される。また、リザーバ14に貯留されたインクは、個別インク流路を通じてノズル開口18から液滴として吐出される。
【0027】
例えば、圧電振動子7を素子長手方向に収縮させると、ダイヤフラム部33が振動子ユニット3側に引っ張られて圧力室16が膨張する。この膨張により圧力室16内が負圧化されるので、リザーバ14に貯留されているインクがインク供給口15を通って圧力室16内に流入する。その後、圧電振動子7を素子長手方向に伸張させると、ダイヤフラム部33が流路形成基板11側に押されて圧力室16が収縮する。この収縮により、圧力室16内のインク圧力が上昇し、対応するノズル開口18からインク滴が吐出される。
【0028】
次に、上記の流路形成基板11について詳細に説明する。上記したように、流路形成基板11は、圧力室形成プレート24(本発明の第1プレートの一種)と、リザーバプレート27(本発明の第2プレートの一種)と、供給口プレート30(本発明の第3プレートの一種)とからなる3枚構成であり、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27との間に供給口プレート30を挟み、各プレートを積層状態で接着することで作製されている。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、圧力室形成プレート24をニッケル板によって構成すると共に、符号t24で示す厚さを80μm程度としている。また、リザーバプレート27についてもニッケル板によって構成すると共に、符号t27で示す厚さを200μm程度としている。一方、供給口プレート30については、ステンレス板によって構成すると共に、符号t30で示す厚さを60μm程度としている。
【0030】
圧力室形成プレート24に設けられた圧力室空部21は、図3(b)に示すように、ノズル列方向とは直交する方向に細長い矩形状(つまり、長方形状)の貫通口であり、プレス加工(打ち抜き加工)によって作製されている。本実施形態では、符号L21で示す長さが800μmであり、符号W21で示す幅が115μmの矩形状開口によって構成されている。そして、この圧力室空部21を幅方向、即ち、ノズル列方向に並べて設けている。また、この圧力室形成プレート24に設けられた第1供給連通空部23は、上記の第3供給連通空部34と同様に、プレス加工等により開設された円形の貫通口である。そして、この第1供給連通空部23もまた、その直径が上記インク供給路6の直径に揃えられており、その形成位置は第3供給連通空部34と連通可能な位置とされている。
【0031】
リザーバプレート27に設けられた第1連通口空部25もまた、プレス加工(打ち抜き加工)によって作製されている。この第1連通口空部25は、図3(d)に示すように、ノズル列方向とは直交する方向に細長い矩形状(つまり、長方形状)の貫通口である。本実施形態では、符号L25で示す長さが150μmであり、符号W25で示す幅が85μmの矩形状開口によって構成されている。そして、上記のノズル開口18は、流路ユニット4に組み立てられた状態で、対応する第1連通口空部25内に臨む。
また、このリザーバプレート27に設けられたリザーバ空部26もまた、プレス加工(打ち抜き加工)によって作製され、ノズル列方向に延設された貫通口である。このリザーバ空部26は、例えば略台形状に形成される。本実施形態では、この台形状の圧力室空部21における下底側の辺(圧力室空部21側の辺)から上底側の辺(供給連通路22側の辺)までの間隔L26を、インク供給口15の外側端部から供給連通路22の外側端部までの間隔L30よりも長く設定し、流路ユニット4に組み立てた状態で、これらのインク供給口15と供給連通路22とがリザーバ14内に臨むようにしている。
【0032】
供給口プレート30に設けられた第2連通口空部28もまた、プレス加工(打ち抜き加工)によって作製されており、図3(c)に示すように矩形状(つまり、長方形状)の貫通口である。本実施形態では、符号L28で示す長さが150μmであり、符号W28で示す幅が100μmの矩形状開口によって構成されている。即ち、圧力室空部21、第1連通口空部25、及び、第2連通口空部28の幅W21,W25,W28に関し、圧力室空部21の幅W21が一番広く、第2連通口空部28の幅W28が2番目に広い。そして、第1連通口空部25の幅W25が最も狭く設定されている。換言すれば、インク流路の下流側に向かう程に流路の開口が狭くなっている。このように構成すると、インクを円滑に流すことができる。また、各プレート同士を接着する際において、多少の位置ズレであればそれを吸収することができる。即ち、インク滴の吐出特性に悪影響を与えずに済む。
【0033】
また、この供給口プレート30に設けられたインク供給口15は、プレス加工等によって開設された円形の貫通口である。そして、このインク供給口15は、リザーバ14側の下半部分がストレート部として構成され、圧力室16側の上半部分が圧力室16側に向けて拡開するテーパー部として構成されている。このインク供給口15は、圧力室16内におけるインクの固有振動周期に影響を与えるので、高い寸法精度が要求される。このため、インク供給口15を作製するにあたっては、ポンチを素材プレートの厚さ方向の途中まで押し込んで凹部を形成し、その後、素材プレートにおけるストレート部側の面を研磨することで凹部を貫通させている。この方法によれば、インク供給口15を高い寸法精度で容易に作成することができる。
【0034】
さらに、この供給口プレート30に設けられた第2供給連通空部29は、上記の第1供給連通空部23や第3供給連通空部34と同様に、プレス加工等により開設された円形の貫通口である。そして、この第2供給連通空部29もまた、その直径が上記インク供給路6の直径に揃えられており、その形成位置は第1供給連通空部23と連通可能な位置とされる。
【0035】
この他に、供給口プレート30には、リザーバ空部26の一面を封止するコンプライアンス部39を設けている。このコンプライアンス部39は、供給口プレート30における他の部分よりも薄肉に構成されており、リザーバ14に貯留されたインクの圧力変動に応じて変形する部分である。また、このコンプライアンス部39(薄肉部)の面積、即ち変形量は、圧力室の長さに関係なくリザーバ幅を大きく設定することで、十分に確保できる。その結果、このコンプライアンス部39の変形によって、リザーバ14に貯留されたインクの圧力変動を吸収することができる。
なお、流路ユニット4に組み立てられた状態では、図4に示すように、コンプライアンス部39と圧力室形成プレート24との間に、コンプライアンス部39の変形を許容するための逃げ空間が形成される。この逃げ空間は、プレートの面方向に沿って連続的に形成され、端部で大気開放されている。
【0036】
このように、流路形成基板11を圧力室形成プレート24とリザーバプレート27と供給口プレート30の3枚構成にしたのは、圧力室空部21、連通口空部25,28、インク供給口15、及び、供給連通路23,29を凹凸のない素材プレートに対する打ち抜き加工によって容易に作製するためである。
【0037】
即ち、ポンチを板厚方向に打ち抜くことによって圧力室空部21等が作製される。このため、ポンチに掛かる負荷に関しては、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで加工する場合よりも軽減される。即ち、ポンチを押し込んで加工する場合、このポンチには素材プレートからの反力が比較的長時間に亘って加わる。一方、ポンチを板厚方向に打ち抜いた場合、ポンチには瞬間的に大きな荷重が加わるが、素材プレートの破断によって極く短時間で解放される。従って、ポンチを板厚方向の途中まで押し込んで加工するよりも小さい形状の圧力室空部21等を形成できる。さらに、圧力室空部21とリザーバ空部26とをインク供給口15によって連通する構成としているので、圧力室空部21(圧力室16)は、インク滴の吐出量に応じた最小限の容積で足りる。
【0038】
このため、圧力室内に生じる固有周期の圧力振動に関し、その振動周期を可及的に短くすることができる。これにより、インク滴の吐出周波数を高めても、圧力振動に同期させて吐出させることができ、インク滴の量や飛行速度等を安定化することができる。
【0039】
例えば、圧力室16における長手方向の長さを変化させ、この圧力室長さ以外の条件を揃えた記録ヘッド1同士を比較すると、図6に示す様な結果が得られる。この例では、圧力室長さ(圧力室空部21の長さ)が1.0mmの記録ヘッド1において、駆動周波数が40kHzを越えた領域に固有振動Tc(インク量変動曲線)のボトムが現れる。このため、当該領域においては、圧力室16内のインクの圧力変動に対するメニスカスの応答が不十分となり、インク滴の吐出量が減少してしまう。従って、この場合には、最大駆動周波数としては38kHz程度となってしまう。一方、圧力室長さが0.8mmの記録ヘッド1においては、駆動周波数を圧電振動子7の許容上限である42kHzに設定しても固有振動Tcのボトムにはあたらない。このため、最大駆動周波数として42kHzを設定することができる。
【0040】
さらに、この打ち抜き加工は容易であるため大量生産に適する。さらに、打ち抜き時においてポンチに偏加重などの無用な応力がかかり難くなるので、ポンチ折れ等の不具合を防止することもできる。さらに、各部の開口形状を矩形や円形等の単純な形状とできるので、この点でもポンチ折れ等の不具合を防止できる。
【0041】
また、流路形成基板11を上記の3枚構成にしたことにより、圧力室空部21の深さは圧力室形成プレート24の厚みt24で規定される。このため、圧力室空部21に関し、深さ方向の寸法精度を向上させることができる。さらに、素材プレート毎に打ち抜き加工(プレス加工)し、その後に接着するので、流路形成基板11の厚さを、従来よりも厚くすることができる。これにより、流路ユニット4の剛性を高めることができ、インク滴の吐出特性を安定化することができる。これにより、圧力室16からの押圧力に起因する流路ユニット4全体の変形を防止することができ、所謂クロストークを防止することができる。
【0042】
また、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27の素材としてニッケル板を選定した理由は、次の通りである。第1の理由は、展性に富んでいるからである。これは、圧力室形成プレート24及びリザーバプレート27を作製するにあたって打ち抜き加工を採用していることによる。即ち、これらのプレートに形成される圧力室空部21や第1連通口空部25等は、極めて微細な形状であり、且つ、高い寸法精度が要求される。そして、基板にニッケルを用いると、展性に富んでいることから打ち抜き加工であってもこれらの各部を高い寸法精度で形成することができる。
【0043】
第2の理由は、防錆性に優れているからである。即ち、この種の記録ヘッド111では水性インクが好適に用いられているので、長期間に亘って水が接触しても錆び等の変質が生じないことが肝要である。その点、ニッケルは、ステンレスと同様に防錆性に優れており、錆び等の変質が生じ難い。
【0044】
また、この流路ユニット4において、上記の供給口プレート30、ノズルプレート12、弾性板13(支持板35)がステンレス製であり、圧力室形成プレート24及びリザーバプレート27がニッケル製である。このように、ステンレスとニッケルの組み合わせを選んだのは、ステンレスとニッケルは、その線膨張係数がほぼ等しいからである。即ち、これらの各プレートを加熱接着した際において、各プレートは均等に膨張するため、線膨張係数の違いに起因する反り等の機械的ストレスが発生し難い。その結果、高温で接着したとしても各部材を支障なく接着することができる。
【0045】
なお、本願実施形態では、流路形成基板11に関し、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27に純ニッケルを、供給口プレート30にステンレスを用いたが、この種の金属に限られず、上記した各要件、即ち、線膨張係数の要件、防錆性の要件、及び、展性の要件を満たすならば、ニッケルやステンレス以外の金属で構成してもよい。
【0046】
そして、これらの圧力室形成プレート24、リザーバプレート27、及び、供給口プレート30は、上記したように、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27との間に供給口プレート30を挟んだ状態で接着される。このとき、図4に符号Sで示すように、リザーバ空部26の一部分が圧力室空部21のインク供給側の先端(即ち、最も端の位置)よりも圧力室長手方向の内側に配置されるように、圧力室形成プレート24とリザーバプレート27を配置する。そして、圧力室空部21におけるインク供給側の端部(即ち、先端から少し手前までの範囲)とリザーバ空部26とを供給口プレート30のインク供給口15によって連通する。
【0047】
このように構成すると、リザーバ空部26の開口面の一方がノズルプレート12によって封止され、他方が供給口プレート30によって封止される。このため、圧力室形成プレート24における圧力室空部21よりも外側の部分、即ち、圧力室長手方向の外側部分については、溝部や貫通口を形成しない厚肉部とすることができる。そして、弾性板13はこの厚肉部の表面に接着されるので、ケース先端面2aと弾性板13の接着面積を広げることができ、ケース2と流路ユニット4とを強固に接着できる。また、流路ユニット4におけるケース2との接着部分について、剛性を高めることができる。その結果、流路ユニット4が変形し難くなってクロストークの発生を防止でき、インク滴の量や飛行速度といった吐出特性を安定化させることができる。
【0048】
また、圧力室空部21とリザーバ空部26とが圧力室長手方向に対して部分的に重畳しているので、流路ユニット4に関し、圧力室長手方向の長さを従来よりも短くすることができる。これにより、記録ヘッド1の小型化も図れる。
【0049】
また、この構成では、図5にも示すように、上記のコンプライアンス部39が流路ユニット4の内部、即ち、厚さ方向の途中に設けられる。言い換えれば、コンプライアンス部39を、圧力室形成プレート24の厚肉部分で覆って保護している。また、コンプライアンス部(薄肉部)39は、圧力室の長さに拘わらず、リザーバ14の幅(例えば、ノズル列方向の幅)を必要十分な大きさに設定することで十分な面積が確保できる。このように、薄肉のコンプライアンス部39が流路ユニット4の表面に露出していないので、このコンプライアンス部39が破損し難い。その結果、コンプライアンス部39を極めて薄く構成できると共に十分な変形量が確保できる。
【0050】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に基づいて種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、圧力発生素子に関し、上記実施形態では、所謂縦振動モードの圧電振動子7を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、所謂撓み振動モードの圧電振動子を用いてもよいし、静電アクチュエータを用いてもよい。
【0052】
また、リザーバ空部26の配置に関し、リザーバ空部26の開口全体を圧力室空部21の長さ範囲内(図3(b)に符号L21で示す範囲内)に収めてもよい。このように構成すると、記録ヘッド1の小型化の面で有利である。
【0053】
なお、本発明は、プリンタに限らず、プロッタ、ファクシミリ装置、コピー機等、各種の記録装置に用いる記録ヘッドにも適用可能である。
また、本発明は、記録装置以外の液体噴射装置に用いる液体噴射ヘッドにも適用できる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタを製造するディスプレー製造装置,有機ELディスプレーやFED等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップを製造するチップ製造装置,極く少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペット用の液体噴射ヘッドにも適用することができる。
そして、ディスプレー製造装置では、色材噴射ヘッドから少なくともR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を吐出する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を吐出する。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録ヘッドの構造を説明する断面図である。
【図2】圧力室とノズル連通口の関係を説明する部分拡大断面図である。
【図3】(a)は弾性板の構成を説明する部分拡大図、(b)は圧力室形成プレートの構成を説明する部分拡大図、(c)は供給口プレートの構成を説明する部分拡大図、(d)はリザーバプレートの構成を説明する部分拡大図である。
【図4】リザーバ近傍を説明する部分拡大断面図である。
【図5】コンプライアンス部近傍を説明する部分拡大図である。
【図6】圧力室長さとインク量の関係を説明する図である。
【符号の説明】
1…記録ヘッド,2…ケース,3…振動子ユニット,4…流路ユニット,5…収納空部,6…インク供給路,7…圧電振動子,8…固定板,11…流路形成基板,12…ノズルプレート,13…弾性板,14…リザーバ,15…インク供給口,16…圧力室,17…ノズル連通口,18…ノズル開口,21…圧力室空部,22…供給連通路,23…第1供給連通空部,24…圧力室形成プレート,25…第1連通口空部,26…リザーバ空部,27…リザーバプレート,28…第2連通口空部,29…第2供給連通空部,30…供給口プレート,33…ダイヤフラム部,34…第3供給連通空部,35…支持板,36…弾性体膜,37…島部,38…薄肉弾性部,39…コンプライアンス部
Claims (5)
- 流路形成基板の一方の面に弾性板を、他方の面にノズルプレートをそれぞれ接合することで、リザーバから液体供給口、圧力室及びノズル連通口を通ってノズル開口に至る一連の液体流路を設けた流路ユニットと、該流路ユニットが先端面に接合されると共に、圧力発生素子を内部に収納したケースとを備え、
前記圧力発生素子により前記弾性板を部分的に変位させることで前記圧力室の容積を変化させる液体噴射ヘッドにおいて、
前記流路形成基板は、前記圧力室となる細長い圧力室空部をプレス加工による貫通口として設けた金属製の第1プレートと、前記ノズル連通口の一部となる第1連通口空部及び前記リザーバとなるリザーバ空部をプレス加工による貫通口として設けた金属製の第2プレートと、前記ノズル連通口の一部となる第2連通口空部及び前記液体供給口を板厚方向を貫通する貫通口として設けた第3プレートと、からなり、
前記リザーバ空部の少なくとも一部が前記圧力室空部の液体供給側先端よりも前記圧力室長手方向の内側に配置されるように前記第1プレートと前記第2プレートを配置すると共に、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に第3プレートを挟んで各プレートを接着し、前記圧力室空部における液体供給側の端部と前記リザーバ空部とを前記液体供給口によって連通したことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 前記第3プレートは、前記リザーバ空部の封止部分を、他の部分よりも薄肉なコンプライアンス部として構成したことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
- 前記第3プレートを金属製の板材によって作製し、前記第2連通口空部及び前記液体供給口をプレス加工による貫通口として設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
- 前記第1プレート及び前記第2プレートを少なくともニッケル製の板材によって構成し、前記第3プレートを少なくともステンレス製の板材によって構成したことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
- 請求項1から請求項4の何れかに記載された液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
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2003
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