JP2004211750A - 摺動部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑油の供給が少ない、或いはない場合でも焼付きを起さない摺動部材を提供する。
【解決手段】半割軸受2の表面に、底面が主軸の摺動方向Aに沿って浅くなるような穴をレーザービームLBを用いて形成する。
【選択図】 図4
【解決手段】半割軸受2の表面に、底面が主軸の摺動方向Aに沿って浅くなるような穴をレーザービームLBを用いて形成する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や一般機械に使用されるエンジン等の摺動部材、特に、摺動面への高い油供給性が要求される摺動部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等からの排気ガスが地球環境悪化の一因であることが明確になってきており、排気ガス対策は無視できない重要な課題と位置づけられ、その一つの解決手段として、例えばハイブリットカーが開発された。ハイブリットカーは周知の通り石油燃料と電気とで走行するため、駆動手段としてエンジンと電気モータとの両者を搭載している。よって、ハイブリットカーはエンジンで走行中は電気モータが停止し、電気モータで走行中はエンジンが停止するといった状態となるため、エンジン及び電気モータが頻繁に始動、停止を繰り返す構造となっている。
【0003】
また、大排気量車両、例えば公共機関のバス等は大気汚染に配慮し、排気ガス排出の削減のため交差点で停車する際にはエンジンを自動的に停車させるようにしたものもあり、こういった車両も上記したようにエンジン等、駆動手段においては始動、停止を頻繁に行わざるを得ない。
【0004】
しかし、このような始動、停止を繰り返すエンジンや電気モータの場合、例えばエンジン始動後には、直ちにアイドリング回転域を超えて高速回転することが求められる。そのため、エンジン始動時においてはオイルポンプから摺動面への潤滑油の供給が時に遅れ、軸受と軸との間に介在する油膜がない、一部金属接触状態で運転される場合が起こり得てしまう。
よって、上記したような、例えばハイブリットカー等に用いられる軸受は、頻繁な始動、停止の使用に耐え得るように非焼付性、耐摩耗性、耐疲労性を向上させるために、摺動面への油供給性の改善が不可欠な要素となる。
【0005】
こういった状況に応じるものとして、従来、軸受合金層をオーバレイ層で被覆し、このオーバレイ層に硬質粒子を直接吹き付けて、摺動面であるオーバレイ層に微細な穴を形成することにより摺動面の保油性を確保した摺動部材がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−147459号公報(段落番号「0010」−「0034」、表4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の摺動部材では、オーバレイ層に平均粒径で20〜100μmの硬質粒子を直接吹き付けることで穴の形成を行うため、穴の間隔等は調節可能であったが、その形状や深さ等は単一なものしか形成できなかった。つまり、穴の形状や深さ、或いは表面形状といったものを考慮して摺動面への油供給性の改善を図るものではなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた摺動面への油供給性を有する摺動部材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の通り、摺動面に穴を形成することによって軸受の保油性を高めて起動直後の摺動面への油供給性を高めることが行われていたが、単に穴を形成するだけでは、摺動面への油供給性の向上に限界があった。そこで、本発明者は、より高い摺動面への油供給性を有する穴の形状等を鋭意研究し本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明の摺動部材は、相手材との摺動面に複数の穴を有し、それらの穴の1以上において、穴の底面が相手材の摺動方向に沿って浅くなるように傾いた構造をなす(請求項1)。
上記構成によれば、穴の深さが摺動方向に沿って浅くなるよう、換言すれば、穴の底面は摺動方向に沿って上り坂の傾斜面となっているから、この穴に保留されている潤滑油は相手材が摺動した際に、この相手材の表面に引き摺られて摺動面間に容易に流入できるようになる。したがって、本発明によって摺動面への油供給性に優れた摺動部材を実現することができる。ひいては、本発明の摺動部材によって、非焼付性、耐摩耗性を高めることができる。
【0011】
また、穴は摺動面における幅を相手材の摺動方向に沿って小さくなるように構成しても良い(請求項2)。
このような構成によれば、請求項1同様、相手材が摺動した際に穴に保留されている潤滑油が、この相手材の表面に引き摺られて摺動面間に容易に流入できるようになり、摺動面への油供給性が向上する。
【0012】
また、摺動面に形成する穴は、第一の穴と、この穴の底面に形成された第二の穴とで構成することが好ましい(請求項3)。
この場合、摺動部材における摺動面の摩耗が進行し、第一の穴が浅くなっても第二の穴に潤滑油を溜めることができる。
また、穴の周縁部の少なくとも一部に摺動面から突出する凸部を形成しても良い(請求項4)。凸部の存在により、相手材との初期なじみ性が向上する。そして、それらの凸部を摺動方向の上流側に形成することが、好ましい(請求項5)。この場合、初期なじみ性が向上するのみならず、穴から摺動面への油供給を妨げる恐れもない。
【0013】
上記したそれぞれの穴の摺動面における平均径は1〜100μm、最深部での深さは1〜10μmが好ましく(請求項6、7)、また、前記凸部の高さは5μm以下が好ましい(請求項8)。
そして、これらの摺動部材の穴は、パワー密度が106〜107W/cm2のレーザービームを摺動面に対し、10−6〜10−3secのパルス幅で間欠的に照射して形成することができる(請求項9)。
【0014】
上記したレーザービームを、摺動面に対し10〜90度傾斜させて照射することが好ましい(請求項10)。これにより、摺動面への油供給性に特に優れた穴を形成することができる。この場合40度以上傾斜させて照射することがより好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車用エンジンの主軸受に適用した第一の実施例について図1ないし図5を用いて説明する。
まず、図5に示すように、自動車用エンジンの主軸受1は、2個の半割軸受2、3を突き合わせて円筒状に形成され、シリンダブロック4にベアリングキャップ5をボルト6で固定することにより構成されたハウジング部7に取り付けられている。そして、主軸受1には相手材として主軸8(クランク軸)が回転可能に嵌合支持されている。
なお、この主軸受1を構成する2個の半割軸受2、3は、同一構成のもので、以下の説明では半割軸受2について説明し、半割軸受3についてはその説明を省略する。
【0016】
さて、半割軸受2は、図示しない鋼裏金上に軸受合金層を設けて構成された周知のもので、その摺動面としての軸受合金層の表面には半割軸受2を展開して示す図2のように、その全体に亘って微細な穴9が縦横に整列状態にして複数、この実施例では無数に形成してある。なお、軸受合金層の表面に複数の穴9が連結しないようにしてオーバレイ層を被覆してもよい。
【0017】
上記の穴9は、主軸8の回転方向、つまり半割軸受2の摺動面に対する主軸8の摺動方向を図1の矢印A方向とすると、その深さが図1(a)に示すように、主軸8の摺動方向Aに沿って次第に浅くなるように形成され、その底面は摺動方向Aに沿って上り坂の傾斜面となっている。また、穴9の平面形状は、図1(b)に示すように、主軸8の摺動方向Aに沿って次第に幅狭となるような雫(雨滴)状となっている。
【0018】
ここで、穴9のそれぞれは摺動面での平均径が1〜100μm、最深部での深さが1〜10μm程度のものであるが、平均径を上記のように1〜100μmとすることにより、摺動面への潤滑油の供給性、保油性或いは摺動特性において良い結果を得られる。この範囲より小さい穴の場合、始動直後に必要な保油性が十分に得られず、大きい穴の場合は、穴の面積の拡大と相対的に軸受面積が縮小し摺動面の面圧が上昇してしまうので、くさび油膜の形成が損なわれ、非焼付性が低下する。より望ましい穴9の平均径は5〜20μmである。ここで、平均径とは、摺動面におけるそれぞれの穴9の面積を真円にそれぞれ換算した場合の、その真円の径を言う。
【0019】
また、それぞれの穴9の最深部での深さは、その範囲を1〜10μmとしたが、この範囲より浅い穴の場合、潤滑油の保油性が得られず、非焼付性が低下し、深い穴の場合は、耐荷重性が低下して穴の周りから疲労が発生しやすくなる。したがって、非焼付性と耐疲労性を考慮すると、1〜10μmが良い。より望ましい穴9の最深部での深さは2〜5μmである。
【0020】
この微細な穴9は、図3に示す加工装置、例えばレーザー加工装置10にて形成する。このレーザー加工装置10は、伝送管11を介して図示しないレーザー発振器、例えばYAGレーザー発振器に接続された加工ノズル12を備え、伝送管11と加工ノズル12との間には保護ガラス13、その上(加工ノズル12がない側)に集光レンズ14が設けられている。伝送管11は、途中が何箇所かで屈曲可能となっており、前後、左右、上下に移動、傾斜させることが可能な図示しない回転ヘッドを介して加工ノズル12が装着されている。
【0021】
そして、YAGレーザー発振器から放射されたレーザービームLBは、集光レンズ14で集光され、保護ガラス13を通過して加工ノズル12から半割軸受2の摺動面に向けて照射される。加工ノズル12にはガス導入管15が設けられ、このガス導入管15は図示しないガス供給源に接続されている。そして、ガス導入管15から加工ノズル12内に供給されたガスAGは、加工ノズル12の先端の放射口16から放射されると共に加工対象部に向かって噴出される。
【0022】
なお、本発明において上記YAGレーザー発振器からのレーザービームLBは、間欠的に放射されるものとし、そのパワー密度は106〜107W/cm2、パルス幅は10−6〜10−3secとしている。
【0023】
ここで、前記パワー密度及びパルス幅の範囲内ではレーザービームLBに照射された部分は瞬間的に蒸発する。上記のパワー密度およびパルス幅の範囲を超えると、プラズマを生じてしまい、レーザービームLBが必要深さまで届かない。逆に下回ると蒸発しない。本実施例では、レーザービームLBのパワー密度およびパルス幅を所望の穴が半割軸受2に形成する程度に定め、放射口16から噴出されるガスAGの噴出圧力(噴出強さ)は蒸発物を吹き飛ばす程度に強くして穴9の加工を行う。
【0024】
この場合、例えば図1の(a)に示すような主軸8の摺動方向Aに沿って、その底面が浅くなるように傾いた底面(断面形状)をなす穴9を形成するには、図4に示すようにレーザービームLBを半割軸受2の摺動面に対して垂直ではなく傾斜させ、主軸8の摺動方向Aとは反対方向に向けて照射する。レーザービームLBを摺動面に対し、10〜90度、好ましくは40度以上傾けることが好ましい。
【0025】
このように、レーザービームLBを傾斜させて照射することにより、前記穴9の底面は、図1(a)のようになり、その表面形状は図1(b)に示すとおり摺動面における幅が主軸8の摺動方向Aに向かって小さくなる、いわゆる雫状をなす。そして、半割軸受2の摺動面に一つの穴を形成した後は、次の穴の形成位置まで加工ノズル12を回転ヘッドにより移動させ、レーザービームLBを照射して次の穴の形成をする、というようにして順次穴を形成してゆく。
【0026】
次に、半割軸受2、3を突合せて、図5に示す自動車用エンジンの主軸受1として使用した場合の作用を説明する。
エンジン作動時には、図示しない潤滑油ポンプから圧送されてくる潤滑油が、主軸受1と主軸8との摺動面間に供給され、これにより摺動面間の潤滑が図られる。
【0027】
エンジンが停止すると、潤滑ポンプも停止するため、摺動面間に存在していた潤滑油は当該摺動面間から流出して図示しないオイルパンへと戻される。このとき、半割軸受2、3の摺動面には無数の穴9が形成されているので、潤滑油の一部はこの穴9内に溜められて半割軸受2、3の摺動面に存在する。
【0028】
そして、エンジンが再起動されると、潤滑油ポンプも起動するが、潤滑油は直ぐには主軸受1と主軸8との摺動面間には供給されない。しかしながら、半割軸受2、3の摺動面に形成された無数の穴9内には潤滑油が溜められているため、主軸8が回転し始めると、穴9内の潤滑油は主軸8に付着して、主軸受1と主軸8との摺動面間へと供給されるようになる。このため、エンジンの起動時に主軸受1と主軸8とが一部金属接触状態になるという不具合を解消することができる。
【0029】
この場合、穴9の深さが主軸8の摺動方向Aに向かって次第に浅くなるように形成されているから、穴9内の潤滑油は主軸8に付着して摺動面間に引きずり出され易くなる。更に本実施例では、穴9の平面形状が主軸8の摺動方向Aに対して幅狭となる滴状となっているので、主軸8に付着した潤滑油が穴9の端で掻き落とされる事態の発生が少なく、穴9から摺動面間へ供給し易くなる。このため、主軸8の回転開始に伴って摺動面間に潤滑油が良好に供給されるようになり、非焼付性、耐摩耗性を向上させることができる。
【0030】
次に、図6及び図7は本発明の第二の実施例を示すもので、第一の実施例と異なる箇所は、穴の底面形状である。なお、図6及び図7には第一の実施例と同一部分について、同一符号を付して示し、その詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図6(a)に示すように、この実施例の穴17は、前記第一の実施例と同様の第一の穴17aと、この穴17aの最下底部である深底側の図示右端部に形成した第二の穴17bとから構成されている。
【0031】
このような穴17を形成するには、図7に示すように、先ずレーザービームLBを半割軸受2の摺動面に対して垂直に照射して第二の穴17bの底部に至るまでの深穴を形成し、その後、レーザービームLBを摺動面に対して傾けて第一の穴17a相当部分における部分を形成する。または、逆に、最初に第一の穴17a相当部分を形成し、その後、第二の穴17bを形成するようにしても良い。
【0032】
このような穴17であれば、主軸8の摺動により主軸受1の摺動面が摩耗し、第一の穴17aの容量が減って、その保油量が減少したとしても、第二の穴17bが潤滑油を十分に保持するため長期に渡り摺動面の油切れを防止して、主軸受1としての高い非焼付性及び耐摩耗性を呈するものとなる。
【0033】
次に、図8、図9は本発明の第三の実施例を示すもので、第二の実施例と異なる所は、穴17の周縁部に凸部18を形成しているところである。なお、図8及び図9には第二の実施例と同一部分について、同一符号を付して示し、その詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図8(a)に示すように、この実施例の穴19は、第二の実施例の第一の穴17aと同様の第一の穴19aと、第二の穴17bと同様の第二の穴19bから成り、その周縁部の主軸8の摺動方向Aの上流側の端部に(以下、穴19の上流部と称し、これとは反対側の端部を下流部と称する。)に凸部18を有している。穴19の平面形状は図8(b)に示すように形成される。
【0034】
このような穴19の形成は、図9に示すようにレーザービームLBを半割軸受2の摺動面に対して傾斜させ、主軸8の摺動方向とは反対方向に向けて照射する。このとき、放射口16からのガスAGの噴出圧力を第一の実施例での噴出圧力より少し弱めておく。このようにガスAGの噴出圧力を弱めておくことにより、第一の穴19aを形成する際、半割軸受2の摺動面におけるレーザービームLBによる照射部が蒸発するとき、蒸発しきらずに溶融状態となった液状の金属、いわゆるドロス(溶融物)は吹き飛ばされることなく、穴19の周縁部に吹き上げられ、凸部18となるものである。
【0035】
このように凸部(軸受合金製)18が設けられていると、主軸8の摺動によって凸部18が潰れて摺動面に展延されるようになるので、初期なじみ性が向上する。本実施例では、特に凸部18が穴19の周縁部のうち上流部にあるので、主軸8の回転に伴って穴19内の潤滑油が穴19から摺動面間に供給される場合、凸部18がその障害となる恐れがない。
【0036】
凸部18の高さは5μm以下が望ましく、これより高いと、摺動面への給油性が損なわれ非焼付性が低下する。なお、凸部18は、レーザービームLBのパワー密度、照射方向、或いはガスAGの噴出勢力を変化させることにより、その位置や高さを自在に変化させることが可能である。
【0037】
ところで、上記第一ないし第三の実施例では、半割軸受2、3の摺動面の全体に穴9、17、19を形成することを前提にして説明したが、必ずしも全体に形成する必要はなく、大きな荷重が作用する箇所に形成してあればよい。主軸受1の場合は、大きな荷重が作用する箇所は、シリンダ内での燃料の爆発力を受ける下側の半割軸受3の周方向のほぼ中央部分であるから、穴9、17、19の形成箇所を、本発明の第四の実施例を示す図10のように半割軸受3の周方向のほぼ中央部分(網かけを施した部分)とすれば良い。
【0038】
上述のように保油用の穴9、17、19は、少なくとも大きな荷重が作用する箇所に形成してあれば良いが、その箇所は対象とする軸によって異なる。軸が軸受の軸線方向両端部に片当たりする等の理由で、軸受の軸線方向両端部が大荷重の作用箇所である場合には、本発明の第五の実施例を示す図11のように半割軸受2、3の軸線方向両側(網かけを施した部分)に保油用の穴を形成する。半割軸受2、3のうち一方の半割軸受の一部分に大きな荷重が作用するものに対しては、本発明の第六の実施例を示す図12のように半割軸受2または3の軸線方向両側の内、大きな荷重が作用する箇所(網かけを施した部分)に穴を形成する。
【0039】
なお、本発明は上記し、且つ図面に示す実施例に限定されるものでなく、以下のような拡張、或いは変更が可能である。
穴の底面は、相手材の摺動方向に沿った方向と異なる方向に浅くなるように傾いている部分を有しても良い。例えば、摺動方向に平行な面と穴の底面との交線が、円弧状であっても良く、要は主軸8の摺動方向Aに沿って浅くなるものであれば良い。
軸受は半割軸受を2個突き合わせて構成するものに限られず、当初から円筒状に形成されたブッシュであっても良い。
また、軸受が支持する相手材はエンジンの主軸8に限られず、一般の産業機械、電気機器などの軸受であってもよい。更に、本発明の摺動部材は、直線移動する相手材を支持するものであっても良い。
また、1の摺動部材において、複数種の形状の穴を有するものであってもよい。例えば、半割軸受2又は3において、穴9,17,19を混在させたものであってもよい。更には、相手材の摺動方向に沿って浅くなるように傾いていない底面を有する穴を混在させたものであってもよい。
凸部18は穴19の周縁部に形成されるなら、その形成位置は特に限定せず、周縁部の全周に設けてもよい。
前述したガスAGは、レーザービームLBと並行に噴射するのではなく、専用のノズルを設け、傾けて噴射するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例を示すもので、(a)は穴の断面図、(b)は穴の平面図
【図2】摺動部材の表面における穴の形成領域を表す平面図
【図3】加工装置を示す斜視図
【図4】穴の形成方法を示す断面図
【図5】エンジンの主軸受部分の断面図
【図6】本発明の第二の実施例を示す図1相当図
【図7】図4相当図
【図8】本発明の第三の実施例を示す図1相当図
【図9】図4相当図
【図10】本発明の第四の実施例を示す図2相当図
【図11】本発明の第五の実施例を示す図2相当図
【図12】本発明の第六の実施例を示す図2相当図
【符号の説明】図中、1は主軸受(摺動部材)、2、3は半割軸受(摺動部材)、8は主軸(相手材)、9は穴、17は穴、17aは第一の穴、17bは第二の穴、18は凸部、19は穴、LBはレーザービームである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や一般機械に使用されるエンジン等の摺動部材、特に、摺動面への高い油供給性が要求される摺動部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等からの排気ガスが地球環境悪化の一因であることが明確になってきており、排気ガス対策は無視できない重要な課題と位置づけられ、その一つの解決手段として、例えばハイブリットカーが開発された。ハイブリットカーは周知の通り石油燃料と電気とで走行するため、駆動手段としてエンジンと電気モータとの両者を搭載している。よって、ハイブリットカーはエンジンで走行中は電気モータが停止し、電気モータで走行中はエンジンが停止するといった状態となるため、エンジン及び電気モータが頻繁に始動、停止を繰り返す構造となっている。
【0003】
また、大排気量車両、例えば公共機関のバス等は大気汚染に配慮し、排気ガス排出の削減のため交差点で停車する際にはエンジンを自動的に停車させるようにしたものもあり、こういった車両も上記したようにエンジン等、駆動手段においては始動、停止を頻繁に行わざるを得ない。
【0004】
しかし、このような始動、停止を繰り返すエンジンや電気モータの場合、例えばエンジン始動後には、直ちにアイドリング回転域を超えて高速回転することが求められる。そのため、エンジン始動時においてはオイルポンプから摺動面への潤滑油の供給が時に遅れ、軸受と軸との間に介在する油膜がない、一部金属接触状態で運転される場合が起こり得てしまう。
よって、上記したような、例えばハイブリットカー等に用いられる軸受は、頻繁な始動、停止の使用に耐え得るように非焼付性、耐摩耗性、耐疲労性を向上させるために、摺動面への油供給性の改善が不可欠な要素となる。
【0005】
こういった状況に応じるものとして、従来、軸受合金層をオーバレイ層で被覆し、このオーバレイ層に硬質粒子を直接吹き付けて、摺動面であるオーバレイ層に微細な穴を形成することにより摺動面の保油性を確保した摺動部材がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−147459号公報(段落番号「0010」−「0034」、表4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の摺動部材では、オーバレイ層に平均粒径で20〜100μmの硬質粒子を直接吹き付けることで穴の形成を行うため、穴の間隔等は調節可能であったが、その形状や深さ等は単一なものしか形成できなかった。つまり、穴の形状や深さ、或いは表面形状といったものを考慮して摺動面への油供給性の改善を図るものではなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた摺動面への油供給性を有する摺動部材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の通り、摺動面に穴を形成することによって軸受の保油性を高めて起動直後の摺動面への油供給性を高めることが行われていたが、単に穴を形成するだけでは、摺動面への油供給性の向上に限界があった。そこで、本発明者は、より高い摺動面への油供給性を有する穴の形状等を鋭意研究し本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明の摺動部材は、相手材との摺動面に複数の穴を有し、それらの穴の1以上において、穴の底面が相手材の摺動方向に沿って浅くなるように傾いた構造をなす(請求項1)。
上記構成によれば、穴の深さが摺動方向に沿って浅くなるよう、換言すれば、穴の底面は摺動方向に沿って上り坂の傾斜面となっているから、この穴に保留されている潤滑油は相手材が摺動した際に、この相手材の表面に引き摺られて摺動面間に容易に流入できるようになる。したがって、本発明によって摺動面への油供給性に優れた摺動部材を実現することができる。ひいては、本発明の摺動部材によって、非焼付性、耐摩耗性を高めることができる。
【0011】
また、穴は摺動面における幅を相手材の摺動方向に沿って小さくなるように構成しても良い(請求項2)。
このような構成によれば、請求項1同様、相手材が摺動した際に穴に保留されている潤滑油が、この相手材の表面に引き摺られて摺動面間に容易に流入できるようになり、摺動面への油供給性が向上する。
【0012】
また、摺動面に形成する穴は、第一の穴と、この穴の底面に形成された第二の穴とで構成することが好ましい(請求項3)。
この場合、摺動部材における摺動面の摩耗が進行し、第一の穴が浅くなっても第二の穴に潤滑油を溜めることができる。
また、穴の周縁部の少なくとも一部に摺動面から突出する凸部を形成しても良い(請求項4)。凸部の存在により、相手材との初期なじみ性が向上する。そして、それらの凸部を摺動方向の上流側に形成することが、好ましい(請求項5)。この場合、初期なじみ性が向上するのみならず、穴から摺動面への油供給を妨げる恐れもない。
【0013】
上記したそれぞれの穴の摺動面における平均径は1〜100μm、最深部での深さは1〜10μmが好ましく(請求項6、7)、また、前記凸部の高さは5μm以下が好ましい(請求項8)。
そして、これらの摺動部材の穴は、パワー密度が106〜107W/cm2のレーザービームを摺動面に対し、10−6〜10−3secのパルス幅で間欠的に照射して形成することができる(請求項9)。
【0014】
上記したレーザービームを、摺動面に対し10〜90度傾斜させて照射することが好ましい(請求項10)。これにより、摺動面への油供給性に特に優れた穴を形成することができる。この場合40度以上傾斜させて照射することがより好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車用エンジンの主軸受に適用した第一の実施例について図1ないし図5を用いて説明する。
まず、図5に示すように、自動車用エンジンの主軸受1は、2個の半割軸受2、3を突き合わせて円筒状に形成され、シリンダブロック4にベアリングキャップ5をボルト6で固定することにより構成されたハウジング部7に取り付けられている。そして、主軸受1には相手材として主軸8(クランク軸)が回転可能に嵌合支持されている。
なお、この主軸受1を構成する2個の半割軸受2、3は、同一構成のもので、以下の説明では半割軸受2について説明し、半割軸受3についてはその説明を省略する。
【0016】
さて、半割軸受2は、図示しない鋼裏金上に軸受合金層を設けて構成された周知のもので、その摺動面としての軸受合金層の表面には半割軸受2を展開して示す図2のように、その全体に亘って微細な穴9が縦横に整列状態にして複数、この実施例では無数に形成してある。なお、軸受合金層の表面に複数の穴9が連結しないようにしてオーバレイ層を被覆してもよい。
【0017】
上記の穴9は、主軸8の回転方向、つまり半割軸受2の摺動面に対する主軸8の摺動方向を図1の矢印A方向とすると、その深さが図1(a)に示すように、主軸8の摺動方向Aに沿って次第に浅くなるように形成され、その底面は摺動方向Aに沿って上り坂の傾斜面となっている。また、穴9の平面形状は、図1(b)に示すように、主軸8の摺動方向Aに沿って次第に幅狭となるような雫(雨滴)状となっている。
【0018】
ここで、穴9のそれぞれは摺動面での平均径が1〜100μm、最深部での深さが1〜10μm程度のものであるが、平均径を上記のように1〜100μmとすることにより、摺動面への潤滑油の供給性、保油性或いは摺動特性において良い結果を得られる。この範囲より小さい穴の場合、始動直後に必要な保油性が十分に得られず、大きい穴の場合は、穴の面積の拡大と相対的に軸受面積が縮小し摺動面の面圧が上昇してしまうので、くさび油膜の形成が損なわれ、非焼付性が低下する。より望ましい穴9の平均径は5〜20μmである。ここで、平均径とは、摺動面におけるそれぞれの穴9の面積を真円にそれぞれ換算した場合の、その真円の径を言う。
【0019】
また、それぞれの穴9の最深部での深さは、その範囲を1〜10μmとしたが、この範囲より浅い穴の場合、潤滑油の保油性が得られず、非焼付性が低下し、深い穴の場合は、耐荷重性が低下して穴の周りから疲労が発生しやすくなる。したがって、非焼付性と耐疲労性を考慮すると、1〜10μmが良い。より望ましい穴9の最深部での深さは2〜5μmである。
【0020】
この微細な穴9は、図3に示す加工装置、例えばレーザー加工装置10にて形成する。このレーザー加工装置10は、伝送管11を介して図示しないレーザー発振器、例えばYAGレーザー発振器に接続された加工ノズル12を備え、伝送管11と加工ノズル12との間には保護ガラス13、その上(加工ノズル12がない側)に集光レンズ14が設けられている。伝送管11は、途中が何箇所かで屈曲可能となっており、前後、左右、上下に移動、傾斜させることが可能な図示しない回転ヘッドを介して加工ノズル12が装着されている。
【0021】
そして、YAGレーザー発振器から放射されたレーザービームLBは、集光レンズ14で集光され、保護ガラス13を通過して加工ノズル12から半割軸受2の摺動面に向けて照射される。加工ノズル12にはガス導入管15が設けられ、このガス導入管15は図示しないガス供給源に接続されている。そして、ガス導入管15から加工ノズル12内に供給されたガスAGは、加工ノズル12の先端の放射口16から放射されると共に加工対象部に向かって噴出される。
【0022】
なお、本発明において上記YAGレーザー発振器からのレーザービームLBは、間欠的に放射されるものとし、そのパワー密度は106〜107W/cm2、パルス幅は10−6〜10−3secとしている。
【0023】
ここで、前記パワー密度及びパルス幅の範囲内ではレーザービームLBに照射された部分は瞬間的に蒸発する。上記のパワー密度およびパルス幅の範囲を超えると、プラズマを生じてしまい、レーザービームLBが必要深さまで届かない。逆に下回ると蒸発しない。本実施例では、レーザービームLBのパワー密度およびパルス幅を所望の穴が半割軸受2に形成する程度に定め、放射口16から噴出されるガスAGの噴出圧力(噴出強さ)は蒸発物を吹き飛ばす程度に強くして穴9の加工を行う。
【0024】
この場合、例えば図1の(a)に示すような主軸8の摺動方向Aに沿って、その底面が浅くなるように傾いた底面(断面形状)をなす穴9を形成するには、図4に示すようにレーザービームLBを半割軸受2の摺動面に対して垂直ではなく傾斜させ、主軸8の摺動方向Aとは反対方向に向けて照射する。レーザービームLBを摺動面に対し、10〜90度、好ましくは40度以上傾けることが好ましい。
【0025】
このように、レーザービームLBを傾斜させて照射することにより、前記穴9の底面は、図1(a)のようになり、その表面形状は図1(b)に示すとおり摺動面における幅が主軸8の摺動方向Aに向かって小さくなる、いわゆる雫状をなす。そして、半割軸受2の摺動面に一つの穴を形成した後は、次の穴の形成位置まで加工ノズル12を回転ヘッドにより移動させ、レーザービームLBを照射して次の穴の形成をする、というようにして順次穴を形成してゆく。
【0026】
次に、半割軸受2、3を突合せて、図5に示す自動車用エンジンの主軸受1として使用した場合の作用を説明する。
エンジン作動時には、図示しない潤滑油ポンプから圧送されてくる潤滑油が、主軸受1と主軸8との摺動面間に供給され、これにより摺動面間の潤滑が図られる。
【0027】
エンジンが停止すると、潤滑ポンプも停止するため、摺動面間に存在していた潤滑油は当該摺動面間から流出して図示しないオイルパンへと戻される。このとき、半割軸受2、3の摺動面には無数の穴9が形成されているので、潤滑油の一部はこの穴9内に溜められて半割軸受2、3の摺動面に存在する。
【0028】
そして、エンジンが再起動されると、潤滑油ポンプも起動するが、潤滑油は直ぐには主軸受1と主軸8との摺動面間には供給されない。しかしながら、半割軸受2、3の摺動面に形成された無数の穴9内には潤滑油が溜められているため、主軸8が回転し始めると、穴9内の潤滑油は主軸8に付着して、主軸受1と主軸8との摺動面間へと供給されるようになる。このため、エンジンの起動時に主軸受1と主軸8とが一部金属接触状態になるという不具合を解消することができる。
【0029】
この場合、穴9の深さが主軸8の摺動方向Aに向かって次第に浅くなるように形成されているから、穴9内の潤滑油は主軸8に付着して摺動面間に引きずり出され易くなる。更に本実施例では、穴9の平面形状が主軸8の摺動方向Aに対して幅狭となる滴状となっているので、主軸8に付着した潤滑油が穴9の端で掻き落とされる事態の発生が少なく、穴9から摺動面間へ供給し易くなる。このため、主軸8の回転開始に伴って摺動面間に潤滑油が良好に供給されるようになり、非焼付性、耐摩耗性を向上させることができる。
【0030】
次に、図6及び図7は本発明の第二の実施例を示すもので、第一の実施例と異なる箇所は、穴の底面形状である。なお、図6及び図7には第一の実施例と同一部分について、同一符号を付して示し、その詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図6(a)に示すように、この実施例の穴17は、前記第一の実施例と同様の第一の穴17aと、この穴17aの最下底部である深底側の図示右端部に形成した第二の穴17bとから構成されている。
【0031】
このような穴17を形成するには、図7に示すように、先ずレーザービームLBを半割軸受2の摺動面に対して垂直に照射して第二の穴17bの底部に至るまでの深穴を形成し、その後、レーザービームLBを摺動面に対して傾けて第一の穴17a相当部分における部分を形成する。または、逆に、最初に第一の穴17a相当部分を形成し、その後、第二の穴17bを形成するようにしても良い。
【0032】
このような穴17であれば、主軸8の摺動により主軸受1の摺動面が摩耗し、第一の穴17aの容量が減って、その保油量が減少したとしても、第二の穴17bが潤滑油を十分に保持するため長期に渡り摺動面の油切れを防止して、主軸受1としての高い非焼付性及び耐摩耗性を呈するものとなる。
【0033】
次に、図8、図9は本発明の第三の実施例を示すもので、第二の実施例と異なる所は、穴17の周縁部に凸部18を形成しているところである。なお、図8及び図9には第二の実施例と同一部分について、同一符号を付して示し、その詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図8(a)に示すように、この実施例の穴19は、第二の実施例の第一の穴17aと同様の第一の穴19aと、第二の穴17bと同様の第二の穴19bから成り、その周縁部の主軸8の摺動方向Aの上流側の端部に(以下、穴19の上流部と称し、これとは反対側の端部を下流部と称する。)に凸部18を有している。穴19の平面形状は図8(b)に示すように形成される。
【0034】
このような穴19の形成は、図9に示すようにレーザービームLBを半割軸受2の摺動面に対して傾斜させ、主軸8の摺動方向とは反対方向に向けて照射する。このとき、放射口16からのガスAGの噴出圧力を第一の実施例での噴出圧力より少し弱めておく。このようにガスAGの噴出圧力を弱めておくことにより、第一の穴19aを形成する際、半割軸受2の摺動面におけるレーザービームLBによる照射部が蒸発するとき、蒸発しきらずに溶融状態となった液状の金属、いわゆるドロス(溶融物)は吹き飛ばされることなく、穴19の周縁部に吹き上げられ、凸部18となるものである。
【0035】
このように凸部(軸受合金製)18が設けられていると、主軸8の摺動によって凸部18が潰れて摺動面に展延されるようになるので、初期なじみ性が向上する。本実施例では、特に凸部18が穴19の周縁部のうち上流部にあるので、主軸8の回転に伴って穴19内の潤滑油が穴19から摺動面間に供給される場合、凸部18がその障害となる恐れがない。
【0036】
凸部18の高さは5μm以下が望ましく、これより高いと、摺動面への給油性が損なわれ非焼付性が低下する。なお、凸部18は、レーザービームLBのパワー密度、照射方向、或いはガスAGの噴出勢力を変化させることにより、その位置や高さを自在に変化させることが可能である。
【0037】
ところで、上記第一ないし第三の実施例では、半割軸受2、3の摺動面の全体に穴9、17、19を形成することを前提にして説明したが、必ずしも全体に形成する必要はなく、大きな荷重が作用する箇所に形成してあればよい。主軸受1の場合は、大きな荷重が作用する箇所は、シリンダ内での燃料の爆発力を受ける下側の半割軸受3の周方向のほぼ中央部分であるから、穴9、17、19の形成箇所を、本発明の第四の実施例を示す図10のように半割軸受3の周方向のほぼ中央部分(網かけを施した部分)とすれば良い。
【0038】
上述のように保油用の穴9、17、19は、少なくとも大きな荷重が作用する箇所に形成してあれば良いが、その箇所は対象とする軸によって異なる。軸が軸受の軸線方向両端部に片当たりする等の理由で、軸受の軸線方向両端部が大荷重の作用箇所である場合には、本発明の第五の実施例を示す図11のように半割軸受2、3の軸線方向両側(網かけを施した部分)に保油用の穴を形成する。半割軸受2、3のうち一方の半割軸受の一部分に大きな荷重が作用するものに対しては、本発明の第六の実施例を示す図12のように半割軸受2または3の軸線方向両側の内、大きな荷重が作用する箇所(網かけを施した部分)に穴を形成する。
【0039】
なお、本発明は上記し、且つ図面に示す実施例に限定されるものでなく、以下のような拡張、或いは変更が可能である。
穴の底面は、相手材の摺動方向に沿った方向と異なる方向に浅くなるように傾いている部分を有しても良い。例えば、摺動方向に平行な面と穴の底面との交線が、円弧状であっても良く、要は主軸8の摺動方向Aに沿って浅くなるものであれば良い。
軸受は半割軸受を2個突き合わせて構成するものに限られず、当初から円筒状に形成されたブッシュであっても良い。
また、軸受が支持する相手材はエンジンの主軸8に限られず、一般の産業機械、電気機器などの軸受であってもよい。更に、本発明の摺動部材は、直線移動する相手材を支持するものであっても良い。
また、1の摺動部材において、複数種の形状の穴を有するものであってもよい。例えば、半割軸受2又は3において、穴9,17,19を混在させたものであってもよい。更には、相手材の摺動方向に沿って浅くなるように傾いていない底面を有する穴を混在させたものであってもよい。
凸部18は穴19の周縁部に形成されるなら、その形成位置は特に限定せず、周縁部の全周に設けてもよい。
前述したガスAGは、レーザービームLBと並行に噴射するのではなく、専用のノズルを設け、傾けて噴射するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例を示すもので、(a)は穴の断面図、(b)は穴の平面図
【図2】摺動部材の表面における穴の形成領域を表す平面図
【図3】加工装置を示す斜視図
【図4】穴の形成方法を示す断面図
【図5】エンジンの主軸受部分の断面図
【図6】本発明の第二の実施例を示す図1相当図
【図7】図4相当図
【図8】本発明の第三の実施例を示す図1相当図
【図9】図4相当図
【図10】本発明の第四の実施例を示す図2相当図
【図11】本発明の第五の実施例を示す図2相当図
【図12】本発明の第六の実施例を示す図2相当図
【符号の説明】図中、1は主軸受(摺動部材)、2、3は半割軸受(摺動部材)、8は主軸(相手材)、9は穴、17は穴、17aは第一の穴、17bは第二の穴、18は凸部、19は穴、LBはレーザービームである。
Claims (10)
- 相手材との摺動面に複数の穴を有し、それらの穴の1以上において、底面が相手材の摺動方向に沿って浅くなるように傾いていることを特徴とする摺動部材。
- 前記穴のうちの1以上において、それぞれの穴の摺動面における幅が相手材の摺動方向に沿って小さくなるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
- 前記の複数の穴を第一の穴とし、該第一の穴のうちの1以上において、底面に第ニの穴を1以上設けた構成としいることを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動部材。
- 前記穴のうちの1以上において、穴の摺動面における周縁部の少なくとも一部には摺動面から突出する凸部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の摺動部材。
- 前記凸部が、摺動方向の上流側に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の摺動部材。
- 摺動面における前記穴のそれぞれの平均径は1〜100μmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の摺動部材。
- 前記穴の最深部での深さは1〜10μmであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の摺動部材。
- 前記凸部の高さは5μm以下であることを特徴とする請求項4又は5記載の摺動部材。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の摺動部材を製造する方法において、パワー密度が106〜107W/cm2のレーザービームを摺動面に対し10−6〜10−3secのパルス幅で間欠的に照射させて前記穴を形成することを特徴とする摺動部材の製造方法。
- 前記レーザービームを摺動面に対し10〜90度傾斜させて照射することを特徴とする請求項9に記載の摺動部材の製造方法。
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Cited By (5)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2007192206A (ja) * | 2006-01-23 | 2007-08-02 | Toyota Industries Corp | 摺動部材 |
| JP2008051018A (ja) * | 2006-08-25 | 2008-03-06 | Denso Corp | スクロール型圧縮機 |
| DE102010052734A1 (de) * | 2010-11-26 | 2011-12-08 | Daimler Ag | Gleitfläche und Verfahren zu dessen Herstellung sowie Kurbelwellenlager, das die Gleitfläche aufweist |
| JP2017148829A (ja) * | 2016-02-24 | 2017-08-31 | サイバーレーザー株式会社 | 超短パルスレーザー加工装置 |
| US11408465B2 (en) * | 2018-06-04 | 2022-08-09 | Taiho Kogyo Co., Ltd. | Sliding bearing |
-
2002
- 2002-12-27 JP JP2002379969A patent/JP2004211750A/ja active Pending
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