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JP2004283078A - 植物における病原菌及びウイルスの感染の防御方法 - Google Patents

植物における病原菌及びウイルスの感染の防御方法 Download PDF

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JP2004283078A
JP2004283078A JP2003079185A JP2003079185A JP2004283078A JP 2004283078 A JP2004283078 A JP 2004283078A JP 2003079185 A JP2003079185 A JP 2003079185A JP 2003079185 A JP2003079185 A JP 2003079185A JP 2004283078 A JP2004283078 A JP 2004283078A
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JP
Japan
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processing enzyme
vacuolar processing
polypeptide
amino acid
seq
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JP2003079185A
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Ikuko Nishimura
いくこ 西村
Mikio Nishimura
幹夫 西村
Noriyuki Hatsuya
紀幸 初谷
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Japan Science and Technology Agency
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Japan Science and Technology Agency
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Abstract

【課題】植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染の防御手段を提供する。
【解決手段】植物内において、液胞プロセシング酵素を過剰発現させることを特徴とする、植物に対する病原菌及び/又はウイルスの感染の防御方法;そのための液胞プロセシング酵素又はそれをコードする核酸の使用;液胞プロセシング酵素をコードする核酸を保持した細胞と、被検物質とを接触させるステップ及び得られた細胞内における液胞プロセシング酵素の発現又は活性を評価するステップを含む、植物における病原菌及び/又はウイルスの感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法;被検物質の存在下、液胞プロセシング酵素の整理活性を測定するステップを含む、該防御剤の候補物質のスクリーニング方法;特定アミノ酸配列からなり、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、並びに該ポリペプチドをコードする核酸。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物に対する病原菌及び/又はウイルスの感染の防御手段に関する。より詳しくは、植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染を防御しうる、病原菌及び/又はウイルスの感染の防御方法及び植物に対する病原菌及び/又はウイルスの感染の防御に関与する酵素又はそれをコードする核酸の植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染の防御のための使用、並びに病原菌及び/又はウイルス感染の防御に有用な候補物質を大量、かつ容易にスクリーニングすることができる、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プログラムされた細胞死は、種々のストレス下や動物及び植物の発生の際に起こる基本的な生理学的プロセスである。動物における前記細胞死は、生体個体の形態形成等に代表される生体制御的な役割、腫瘍細胞等の異常細胞の除去等に代表される生体防御的な役割があると考えられている。
【0003】
一方、植物においては、病原体の侵入に対して感染の拡大を抑制する過敏感反応を引き起し、感染細胞を細胞死に至らしめ、それにより、病原体の増殖を抑制することが知られている。
【0004】
前記過敏感細胞死は、高等植物における細胞死の型である。植物と病原体との間の相互作用は、宿主組織の感染部位での迅速で局在した細胞死に関連して、過敏感反応をしばしば導く(非特許文献1)。
【0005】
例えば、タバコにおいては、タバコモザイクウイルス(TMV)は、N抵抗性遺伝子を保持する品種(NNタバコ)において、過敏感反応を引き起こす(非特許文献2)。N遺伝子が機能的でない28℃を超える温度では、目に見えるいかなる壊死病斑もなく、感染NNタバコ葉で、TMVは、増殖及び全体に拡大する。かかるTMV感染植物を26℃未満に冷却すると、TMV感染領域において、同時病斑を引き起こす(前出非特許文献2、非特許文献3)。
【0006】
しかしながら、過敏感細胞死の活性化を制御するシグナル伝達経路は、よく知られていないのが現状である。
【0007】
【非特許文献1】
グッドマン(Goodman)ら、「病原に対する植物の過敏感応答反応:抵抗現象」 “The Hypersensitive Response Reaction in Plants to Pathogens:A Resistance Phenomenon” American Phytopathological Society Press、 1994
【非特許文献2】
ホルメス(Holmes)、Phytopathology、28、553−561、1938
【非特許文献3】
ウエストスタイン(Weststeijn)、Physiol.Plant Pathol.、18、357−368、1981
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、植物における病原菌及び/又はウイルス感染を防除又は抑制すること、病原菌及び/又はウイルスに感染した植物における感染部位の拡大を抑制すること等を可能にする、植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染の防御方法を提供することを目的とする。また、本発明は、植物における病原菌及び/又はウイルス感染を防除又は抑制すること、病原菌及び/又はウイルスに感染した植物における感染部位の拡大を抑制すること、病原菌及び/又はウイルス感染に対する植物の耐性能を増強すること、植物における病原菌及び/又はウイルス感染部位の拡大に対する抑制能を増強すること等を可能にする、植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染を防御するための液胞プロセシング酵素又はそれをコードする核酸の使用を提供することを目的とする。さらに、本発明は、植物に対する病原菌及び/又はウイルス防除剤等の開発を可能にする物質を容易に、大量にスクリーニングすることができる、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
〔1〕 植物内において、液胞プロセシング酵素を過剰発現させることを特徴とする、植物に対する病原菌及び/又はウイルスの感染の防御方法、
〔2〕 植物に対する病原菌及び/又はウイルスの感染を防御するための液胞プロセシング酵素又はそれをコードする核酸の使用、
〔3〕 (a)液胞プロセシング酵素をコードする核酸を保持した細胞と、被検物質とを接触させるステップ、及び
(b)前記ステップ(a)で得られた細胞内における液胞プロセシング酵素の発現又は活性を評価するステップ、
を含む、植物における病原菌及び/又はウイルスの感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法、
〔4〕 被検物質の存在下、液胞プロセシング酵素の生理活性を測定するステップを含む、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法、
〔5〕 下記(i’)〜(iii’) :
(i’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチド、
(ii’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列において、少なくとも1つの残基の置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、及び
(iii’) 配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有し、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、
からなる群より選ばれたポリペプチドからなる液胞プロセシング酵素、並びに
〔6〕 (I’)前記〔5〕に記載されたポリペプチドをコードする核酸、又は(II’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、コードされるポリペプチドが、液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチドである核酸
を含有してなる、液胞プロセシング酵素をコードする核酸、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、植物、例えば、タバコ植物において、液胞プロセシング酵素が、驚くべく、動物におけるカスパーゼと類似したカスパーゼ様活性を呈するという本発明者らの知見、カスパーゼインヒビター及び液胞プロセシング酵素特異的インヒビターのそれぞれにより、阻害されることで、タバコモザイクウイルスにより誘導された過敏感細胞死が妨げられる、すなわち、液胞プロセシング酵素が、該過敏感細胞死を制御するという本発明者らの驚くべき知見に基づく。
【0011】
なお、本明細書において、「感染の防御」とは、例えば、外部からの病原菌及び/又はウイルスの感染、例えば、侵入の防御、感染部位の拡大の抑制等を意図するものとする。
【0012】
本発明の植物に対する病原菌及び/又はウイルスの感染の防御方法は、植物内において、液胞プロセシング酵素を過剰発現させることに1つの大きな特徴がある。本発明においては、液胞プロセシング酵素を植物体内で過剰発現させるため、病原菌及び/又はウイルスの感染を防御することができ、病原菌及び/又はウイルス感染部位の感染細胞に対して、実質的に特異的に作用して、過敏感細胞死を引き起こすという優れた効果を発揮する。また、前記過敏感細胞死を引き起こされることにより、感染細胞から、その周辺に存在する非感染細胞(正常細胞)への病原菌及び/又はウイルスの伝播(拡大)を抑制することができるという優れた効果を発揮する。
【0013】
本発明の防御方法において、液胞プロセシング酵素を過剰発現させるには、例えば、該液胞プロセシング酵素の生理活性を増強する物質又は液胞プロセシング酵素をコードする遺伝子の発現を誘導しうる物質を感染部位又は感染植物に供給(例えば、該物質を含有した溶液を浸潤させること等)すること
等が挙げられる。
【0014】
なお、前記液胞プロセシング酵素又はそれをコードする核酸は、植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染を防御、具体的には、感染拡大を抑制するために使用することができる。前記液胞プロセシング酵素又は核酸の使用も本発明に含まれる。
【0015】
前記「対象となる植物」としては、例えば、アブラナ科植物、ウリ科植物、ナス科植物、マメ科植物、ゴマ科植物、イネ科植物、ミカン科植物、ヒルガオ科植物等が挙げられ、具体的には、タバコ、シロイヌナズナ、アブラナ、ナズナ、ダイコン、キャベツ、カボチャ、キュウリ、メロン、スイカ、タバコ、トマト、ジャガイモ、ピーマン、ナス, ダイズ、エンドウ、アズキ、ラッカセイ、インゲンマメ、ソラマメ、ゴマ、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、ミカン、ユズ、サツマイモ等が挙げられる。
【0016】
前記液胞プロセシング酵素としては、(i)配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチドが挙げられる。前記アミノ酸配列について、配列番号:1は、タバコ植物の液胞プロセシング酵素NtVPE−1a、配列番号:2は、タバコ植物の液胞プロセシング酵素NtVPE−1b、配列番号:3は、タバコ植物の液胞プロセシング酵素NtVPE−2、配列番号:4は、タバコ植物の液胞プロセシング酵素NtVPE−3であり、本発明者らにより見出された液胞プロセシング酵素である。なお、配列番号:23〜46は、本発明者らにより見出されたタバコ植物の液胞プロセシング酵素と同様の機能を有することが、下記の「液胞プロセシング酵素の生理活性」の測定方法により確認されうるホモログであり、その由来となる生物及びGenBankアクセッション番号は、下記表1の通りである。
【0017】
【表1】
Figure 2004283078
【0018】
なお、本発明においては、液胞プロセシング酵素は、液胞プロセシング酵素の生理活性を有するものであれば、前記アミノ酸配列を有する液胞プロセシング酵素の他、
(ii)配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列において、少なくとも1つの残基の置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、又は
(iii) 配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有し、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、
であってもよい。
【0019】
前記(ii)のポリペプチドにおいて、配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列における置換、欠失、付加、挿入等の変異の数は、液胞プロセシング酵素の生理活性を呈する範囲であればよく、例えば、少なくとも1つ、具体的には、1個若しくは数個、又はそれ以上であればよい。
【0020】
特に、前記配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列について、配列番号:1を参照配列として、適切にアライメントした場合、
− 配列番号:1のアミノ酸番号:77のCys(例えば、配列番号:2のアミノ酸番号:76、配列番号:3のアミノ酸番号:70、配列番号:4のアミノ酸番号:67);
− 配列番号:1のアミノ酸番号:174のHis(例えば、配列番号:2のアミノ酸番号:173、配列番号:3のアミノ酸番号:167、配列番号:4のアミノ酸番号:164);
− 配列番号:1のアミノ酸番号:263のCys(例えば、配列番号:2のアミノ酸番号:262、配列番号:3のアミノ酸番号:256、配列番号:4のアミノ酸番号:253)
のそれぞれに対応する残基は、グリシン残基等と置換されうる残基である。なお、
− 配列番号:1のアミノ酸番号:216のCys(例えば、配列番号:2のアミノ酸番号:215、配列番号:3のアミノ酸番号:209、配列番号:4のアミノ酸番号:206);
− 配列番号:1のアミノ酸番号:249のCys(例えば、配列番号:2のアミノ酸番号:248、配列番号:3のアミノ酸番号:232、配列番号:4のアミノ酸番号:239)
のそれぞれに対応する残基は、保存されていることが望ましい。
【0021】
前記「液胞プロセシング酵素の生理活性」は、例えば、0.5mM EDTAと0.5Mジチオトレイトールとを含有した100mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中、測定対象のタンパク質等に、蛍光性基質であるAc−ESEN−α−(4−メチル−クマリル−7−アミド)(MCA)、Ac−ESED−MCA、Ac−YVAD−MCA及びAc−AAN−MCA(ペプチド・インスティテュート社製)のいずれかを、終濃度200〜500μMとなるように添加することにより、30℃で反応を開始し、反応混合物の蛍光の増加を、蛍光分光測光器を用いて、460nmで測定することにより評価されうる。
【0022】
また、液胞プロセシング酵素の生理活性は、下記のように測定することもできる。カボチャ種子貯蔵タンパク質11Sグロブリンのプロセシング部位を含む10アミノ酸残基〔SESENGLEET(配列番号:47)〕からなる合成ペプチド(NG10)を基質として用いる。4.5nmol 基質NG10を、被検ポリペプチドと反応溶液(20mM 酢酸ナトリウム、pH5.5、0.1M DTT及び0.1M EDTA)中で37℃で0.5−3.0時間インキュベートして、反応させる。ここで、液胞プロセシング酵素は、前記基質NG10を2つのペプチド、すなわち、P1ペプチド〔SESEN (配列番号:48)〕とP2ペプチド〔GLEET (配列番号:49))とに切断する。基質と、P1ペプチドとP2ペプチドは、キャピラリー電気泳動装置(3D−CE、アジレントテクノロジー社製)で、緩衝液(10mM ホウ酸ナトリウム、pH8.2)中で30℃、20kVの条件下で分離し、波長200nmの吸収を測定することにより検出することができる。なお、活性は、1分間に1mmolのP2ペプチドを生成する酵素量を1ユニットとして定義される。
【0023】
また、前記「液胞プロセシング酵素の生理活性」は、植物体内における過敏感細胞死の発生を指標としても評価されうる。かかる過敏感細胞死は、例えば、病班、細胞収縮、クロマチン凝集、核DNA断片化、デオキシリボヌクレアーゼの活性増加等を指標として評価されうる。過敏感細胞死の発生を指標とする評価は、特に、後述の植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染の防御効果の評価にも用いられうる。
【0024】
前記「置換」としては、本来のアミノ酸残基と生理的に同等な物理化学的性質を与えるアミノ酸との保存的置換が挙げられる。前記「生理的に同等な物理化学的性質を与えるアミノ酸」とは、ポリペプチドの有する生理活性を維持し、かつ生体において、立体構造における形状の特徴、疎水性、電荷、pK等に関して同等の物理化学的性質を示しうるアミノ酸をいう。前記「保存的置換」としては、下記グループI〜VI:
I グリシン、アラニン;
II バリン、イソロイシン、ロイシン;
III アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;
IV セリン、スレオニン;
V リジン、アルギニン;
VI フェニルアラニン、チロシン;
のいずれかのグループ内における他のアミノ酸との置換が挙げられる。
【0025】
前記(iii) のポリペプチドにおいて、配列同一性は、液胞プロセシング酵素の生理活性を呈する範囲であればよく、配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは、60%以上、より好ましくは、70%以上であればよい。
【0026】
本明細書においては、配列同一性とは、比較対象の配列の領域にわたって、例えば、HigginsらによるClustalW法によるマルチプルアライメントにより、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較し、算出された値をいう。ここで、比較対象のポリペプチド又は核酸は、2つの配列の最適なアラインメントのための参考配列(例えば、コンセンサス配列等)と比べて、付加又は欠失(例えば、ギャップ等)を有していてもよい。かかる配列同一性は、例えば、日立製作所社製のDNASISプログラム(Gap penalty 5、Fixed Gap penalty 10、windowssize 5、Floating Gap 10) 等により求められうる。
【0027】
前記「液胞プロセシング酵素をコードする核酸」としては、(I)前記(i)〜(iii) のポリペプチドをコードする核酸、(II)配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、コードされるポリペプチドが、液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチドである核酸が挙げられる。
【0028】
本明細書において、前記「ストリンジェントな条件」とは、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版〔ザンブルーク(Sambrook)ら編、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス刊、1989〕等に記載の条件が挙げられる。具体的には、例えば、
▲1▼ 6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)と0.5% SDSと5×デンハルトと100μg/mL 変性断片化サケ精子DNAと50% ホルムアミドを含む溶液中、プローブとともに42℃で一晩保温するステップ、
▲2▼ 非特異的にハイブリダイズしたプローブを洗浄により除去するステップ、ここで、より精度を高める観点から、より低イオン強度、例えば、2×SSC、よりストリンジェントには、0.1×SSC等の条件及び/又はより高温、例えば、用いられる核酸のTm値の40℃下、よりストリンジェントには、30℃下、さらにストリンジェントには、25℃下、よりさらにストリンジェントには、10℃下、具体的には、用いられる核酸のTm値により異なるが、25℃以上、よりストリンジェントには、37℃以上、さらにストリンジェントには、42℃以上、よりさらにストリンジェントには、50℃以上、より一層ストリンジェントには、60℃以上等の条件下での洗浄を行なうことにより、例えば、配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列と少なくとも約50%、よりストリンジェントには、60%以上、さらにストリンジェントには、70%以上の配列同一性を有する核酸を得ることができる。なお、Tmは、例えば、下記式:
Tm==81.5−16.6 (log10[Na])+0.41 (%G+C)−(600/N)
(式中、Nはオリゴヌクレオチドの鎖長であり、%G+Cはオリゴヌクレオチド中のグアニン及びシトシン残基の含有量である)
により求められる。
【0029】
本発明の防御方法及び液胞プロセシング酵素又はその核酸の使用では、液胞プロセシング酵素は、例えば、配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列を有する液胞プロセシング酵素と同レベル又はそれ以上の比活性を有する液胞プロセシング酵素であることが望ましい。
【0030】
液胞プロセシング酵素をコードする核酸の使用においては、該液胞プロセシング酵素をコードする遺伝子を、対象となる植物に適した転写制御エレメントの制御下に配置して得られた核酸(例えば、発現ベクターなどに組み込み得られた組換えベクター等の細胞導入用担体等)を対象となる植物の細胞に導入することにより、該液胞プロセシング酵素を過剰発現させることができる、例えば、植物体よりカルスを得、得られたカルス又は該カルスから得られるプロトプラストに、前記液胞プロセシング酵素をコードする核酸を対象となる植物に適した転写制御エレメントの制御下に配置して得られた核酸を導入することにより行なわれる。
【0031】
転写制御エレメントとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35S等のプロモーター、ターミネーター等が挙げられる。本発明の防御方法においては、前記転写制御エレメントを保持する発現ベクター、例えば、pBI121等を用いてもよい。
【0032】
植物への核酸の導入は、プロトプラストへのエレクトロポレーション、アグロバクテリウム法、ウイルスベクターの感染、金粒子を用いた遺伝子銃による導入等により行なわれうる。
【0033】
なお、本発明には、液胞プロセシング酵素をコードする核酸を含有した細胞導入用担体も含まれる。
【0034】
本発明の防御方法及び液胞プロセシング酵素の使用においては、液胞プロセシング酵素の生理活性を増強する物質又は液胞プロセシング酵素をコードする遺伝子の発現を誘導しうる物質の感染部位又は感染植物への供給は、例えば、該物質を含有した溶液を感染部位に浸潤させること、該物質を含有した溶液を感染部位に塗布すること、該物質を含有した溶液を感染部位に噴霧すること等により行なわれる。
【0035】
本発明の防御方法及び液胞プロセシング酵素の使用における「液胞プロセシング酵素の生理活性を増強する物質」及び「液胞プロセシング酵素をコードする遺伝子の発現を誘導しうる物質」としては、例えば、サリチル酸又はその誘導体、エチレン又はその誘導体、具体的には、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル等が挙げられる。前記「液胞プロセシング酵素の生理活性を増強する物質」及び「液胞プロセシング酵素をコードする遺伝子の発現を誘導しうる物質」は、植物体全体に供給してもよく、局所に投与してもよい。
【0036】
また、液胞プロセシング酵素の生理活性は、人為的に植物体の一部に物理的な傷を付けることによって、植物体全体において、増強されうる。
【0037】
また、前記「液胞プロセシング酵素の生理活性を増強する物質」及び「液胞プロセシング酵素をコードする遺伝子の発現を誘導しうる物質」は、
(a)液胞プロセシング酵素をコードする核酸を保持した細胞と、被検物質とを接触させるステップ、及び
(b)前記ステップ(a)で得られた細胞内における液胞プロセシング酵素の発現若しくは活性を評価するステップ、
を含む、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法(スクリーニング方法1)、又は
被検物質の存在下、液胞プロセシング酵素の生理活性を測定するステップを含む、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法(スクリーニング方法2)を行なうことにより得ることができる。本発明には、前記スクリーニング方法も含まれる。
【0038】
被検物質としては、核酸、ポリペプチド、オリゴペプチド、その他の高分子有機化合物、低分子化合物等が挙げられる。
【0039】
前記スクリーニング方法1のステップ(a)において、液胞プロセシング酵素をコードする核酸を保持した細胞は、液胞プロセシング酵素をコードする核酸を含有した組換えベクター等を宿主細胞に導入することにより得られうる。
【0040】
前記宿主細胞としては、植物細胞、酵母細胞、大腸菌、昆虫細胞、動物細胞等が挙げられる。なかでも、好ましくは、植物細胞が望ましい。
【0041】
また、組換えベクターに用いられるベクターは、前記宿主細胞に応じて適宜選択されうる。具体的には、植物細胞の場合、例えば、pBI121等、大腸菌の場合、例えば、PET系のベクター等、昆虫細胞の場合、バキュロウイルス等が挙げられる。
【0042】
液胞プロセシング酵素をコードする核酸を保持した細胞と、被検物質との接触は、例えば、細胞に適した培地に、種々の希釈率となるように被検物質を添加し、得られた培地で、該細胞を生育させること等により行なわれうる。
【0043】
前記ステップ(b)において、細胞内における液胞プロセシング酵素の発現は、例えば、細胞から無細胞抽出液を調製し、該無細胞抽出液を、該液胞プロセシング酵素に対する抗体を用いたイムノブロット解析に供すること;細胞からmRNAを得、該液胞プロセシング酵素をコードする核酸を用いて、ノーザンブロット解析に供すること等により評価される。ここで、液胞プロセシング酵素の発現が、被検物質非存在下に比べ、増加した場合、被検物質が、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質であることの指標となる。
【0044】
前記ステップ(b)において、細胞内における液胞プロセシング酵素の生理活性は、例えば、細胞から無細胞抽出液を調製し、該無細胞抽出液について、前記液胞プロセシング酵素の生理活性の評価法により生理活性を測定すること等により評価されうる。ここで、液胞プロセシング酵素の生理活性が、被検物質非存在下に比べ、増加した場合、被検物質が、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質であることの指標となる。
【0045】
なお、前記スクリーニング方法1においては、前記工程(a)において、被検物質を用いずに同様の操作を行なって得られた細胞における液胞プロセシング酵素の発現若しくは活性を対照として用いればよい。
【0046】
スクリーニング方法2において、被検物質の存在下における液胞プロセシング酵素の生理活性の測定は、前記液胞プロセシング酵素の生理活性の評価法に用いられる反応液に、種々の希釈率となるように被検物質を添加し、得られた反応液を用いて、前記液胞プロセシング酵素の生理活性の評価法と同様に生理活性を測定すること等により評価されうる。
【0047】
なお、前記スクリーニング方法2において、被検物質の非存在下における液胞プロセシング酵素の生理活性を対照として用いればよい。
【0048】
さらに、液胞プロセシング酵素のプロモーター領域の下流に発現可能に植物体内で発現可能なレポーター遺伝子を導入し、得られた構築物を導入した形質転換植物細胞又は植物と、被検物質とを接触させ、被検物質存在下におけるレポーター遺伝子の発現又はその増大を指標として、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質をスクリーニングすることもできる。かかるスクリーニング方法も本発明に含まれる。
【0049】
ここで、前記レポーター遺伝子としては、β−グルクロニダーゼ等に代表される慣用のレポーター遺伝子が用いられうる。
【0050】
また、本発明のスクリーニング方法により得られた候補物質は、さらに、病原菌及び/又はウイルス感染植物又は植物における病原菌及び/又はウイルス感染部位に供給し、過敏感細胞死の誘導、増強等を評価してもよい。ここで、候補物質存在下における病原菌及び/又はウイルス感染部位の過敏感細胞死が、該候補物質非存在下における過敏感細胞死に比べて、より早期に起こった場合及び肉眼観察下により明確に観察された場合、候補物質が、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御能を発揮することを示唆する指標となる。
【0051】
なお、前記したように、配列番号:1、2、3及び4は、それぞれ、本発明者らにより見出されたタバコ植物の液胞プロセシング酵素である。かかる液胞プロセシング酵素及びそれをコードする核酸も本発明に含まれる。
【0052】
本発明のタバコ植物の液胞プロセシング酵素は、具体的には、下記(i’)〜(iii’) :
(i’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチド、
(ii’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列において、少なくとも1つの残基の置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、及び
(iii’) 配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有し、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、
からなる群より選ばれたポリペプチドからなる液胞プロセシング酵素である。
【0053】
また、本発明の液胞プロセシング酵素をコードする核酸は、(I’)前記(i’)〜(iii’) からなる群より選ばれたポリペプチドをコードする核酸、又は
(II’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、コードされるポリペプチドが、液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチドである核酸
を含有した核酸である。
【0054】
ここで、「置換、欠失、付加又は挿入」、「配列同一性」及び「ストリンジェントな条件」については、前記と同様である。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【0056】
実施例1
N抵抗性遺伝子を保持するタバコ植物(Nicotiana tabacumL.cv.Samsun)(NNタバコ)及びN抵抗性遺伝子欠損タバコ植物(nnタバコ)を、26℃で6〜8週間、16時間照光サイクル下で生育させた。充分に生育し、広がった葉に、10mM リン酸緩衝液(pH7.0)に加えたタバコモザイク病ウイルス(TMV−OM、25μg/mL)を、カーボランダム(600メッシュ)で葉の表面を擦ることにより接種した。TMV感染の後、該植物を30℃で40時間維持し、ついで、23℃で同調壊死病班形成を誘導した。様々な時点で回収した感染葉由来の円盤状組織を液体窒素中で急速凍結し、−80℃で保存した。
【0057】
得られた感染タバコ葉について、種々の物質に対する応答を調べた。以下に、その例を示す。
【0058】
TMV感染NNタバコ葉を30℃で40時間インキュベートし、その後、分離した。各種プロテイナーゼインヒビター、具体的には、1mM ペプスタチンAの1%(v/v) ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液、1mM E−64の1%(v/v) ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液、1mM Ac−ESEN−CHOの1%(v/v) ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液、1mM Ac−YVAD−CHOの1%(v/v) ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液、1mM Ac−DEVD−CHOの1%(v/v) ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液、1mM PMSFの1%(v/v) メタノール溶液及び5mM PMSFの5%(v/v)メタノール溶液のそれぞれを、葉に浸潤させた。ついで、1時間後、温度を23℃にシフトした。
【0059】
その結果、図1に示されるように、過敏感細胞死を示す特徴的な壊死病斑が、対照では、温度シフト24時間後での葉で見られるのに対し、NNタバコ葉中のTMV誘導過敏感細胞死は、カスパーゼ−1インヒビターとして知られているAc−YVAD−CHOにより、強く阻害されることがわかった。この結果は、植物における細胞死の機構において、動物と同様に、カスパーゼ−1様活性を有する成分が存在することを示唆する。
【0060】
また、図1に示されるように、液胞プロセシング酵素特異的インヒビターであるAc−ESEN−CHOにより、壊死病斑形成が阻害されることがわかる。なお、前記Ac−ESEN−CHOは、不安定であり、CHO基が、分子のアスパラギン残基のアミド基と容易に反応するため、Ac−YVAD−CHOよりも、より低い阻害作用を示した。一方、カスパーゼ−3インヒビターであるAc−DEVD−CHOは、壊死病斑形成を阻害しなかった。他のプロテイナーゼのインヒビターであるペプスタチンA(アスパラギン酸プロテイナーゼインヒビター) 及びPMSF (セリンプロテイナーゼインヒビター) は、壊死病斑形成に対する影響を示さず、E−64(パパイン型プロテイナーゼインヒビター) は、わずかな阻害作用を示した。
【0061】
これらの結果により、植物においては、カスパーゼ−1様プロテイナーゼ及び液胞プロセシング酵素の両方が、タバコ葉におけるTMV誘導敏感細胞死に寄与することが示唆される。
【0062】
実施例2
カスパーゼ−1様活性を有するタンパク質を同定するため、非可逆的カスパーゼインヒビターであるビオチン−xVAD−fmktを用いたビオチン化インヒビターブロット解析方法を開発した。なお、図2Aの左パネルにおける「Biotin−xVAD−fmk」に示されるように、インヒビター非存在下においても、ビオチン−xVAD−fmkは、Ac−YVAD−CHOと同様に、温度シフト24時間後に、TMV感染NNタバコ葉において過敏感細胞死を示す壊死病斑の形成を強く阻害する。
【0063】
前記ビオチン化インヒビターブロット解析方法は、以下のように行なった。
【0064】
液体窒素中で凍結したタバコ葉を乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、50mM NaClと1mM EDTAとを含有した50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)でホモジナイズした。得られたホモジネートを15,000×gで4℃にて20分間遠心分離し、得られた上清をプロテイナーゼインヒビター存在下又は該プロテイナーゼインヒビター非存在下で、0.5mM EDTAと0.5M ジチオトレイトールとを含有した100mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中、30℃で1時間プレインキュベートした。
【0065】
ついで、100mM ジチオトレイトールを含有した100mM 酢酸ナトリウム(pH5.5)中、終濃度20μMのビオチンxVAD−フルオロメチルケトン(ビオチン−xVAD−fmk;カルビオケム社製)とともに30分間インキュベートした。
【0066】
生成した酵素とビオチンxVAD−fmkとの複合体を、SDS−PAGEに供し、PVDF膜(0.22μm;日本ミリポア社製)に転写した。転写後の膜を、ブロック溶液(組成:5% スキムミルク)で処理し、次いで、ストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ(3,000倍希釈;アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で30分間処理した。その後、エンハンスドケミルミネセンスキット〔ECLシステム、アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製〕を用いて検出を行なった。
【0067】
その結果、図2Aの右パネルのレーン1に示されるように、分子量40kDa、38kDa及び23kDaの3つのバンドが、処理葉のブロット上で特異的に検出された)が、図2Aの右パネルのレーン2に示されるように、未処理葉のブロット上では、検出されなかった。
【0068】
どの成分がビオチンxVAD−fmkとの標準的なパートナーであるかを明らかにするため、酵素−インヒビター複合体の形成における種々のプロテイナーゼインヒビターの競合作用を同様に調べた。結果を図2Bに示す。
【0069】
その結果、図2Bのレーン1に示されるように、プロテイナーゼインヒビター非存在下の場合、40kDaバンド、38kDaバンド及び23kDaバンドが、ブロット上で検出された。また、図2Bのレーン5、8及び11に示されるように、Ac−YVAD−CHO(1.0〜5.0mM)を、ビオチンxVAD−fmkとのコンペティターとした場合、40kDaバンド及び38kDaバンドのみが、完全に消失した。また、2つのバンドは、より低い濃度のAc−YVAD−CHO(0.5mM)により消失した。前記23kDaバンドは、図2Bのレーン5、8及び11に示されるように、Ac−YVAD−CHOにより消失しなかったが、図2Bのレーン4に示されるように、E−64により消失した。したがって、前記23kDa成分は、ビオチンxVAD−fmkのフルオロメチルケトン基とは反応するが、VAD配列とは反応しないことが示唆される。
【0070】
これらの結果により、40kDa及び38kDa成分が、VAD配列を認識し、ビオチンxVAD−fmkに結合する能力を持つことがわかる。
【0071】
また、図2Bのレーン7 、10及び13に示されるように、40kDaバンド及び38kDaバンドのシグナル強度は、ビオチンxVAD−fmkとのコンペティターとしてAc−ESEN−CHOである液胞プロセシング酵素特異的インヒビターを添加した場合、Ac−YVAD−CHOよりも複合体形成を排除する低い能力を示すが、Ac−ESEN−CHOの場合、該シグナル強度は、濃度依存的な様式で低減することがわかる。これは、Ac−YVAD−CHOが、Ac−ESEN−CHOよりも強く壊死病斑形成を阻害するという前記実施例1における結果と一致した。
【0072】
また、ペプタスタチンA、PMSF、E−64又はAc−DEVD−CHOのいずれもが、ブロット上での40kDa及び38kDaタンパク質複合体形成を阻害しなかった。この結果より、40kDaタンパク質及び38kDaタンパク質は、液胞プロセシング酵素に対応することを示唆される。
【0073】
そこで、40kDa及び38kDaタンパク質が、液胞プロセシング酵素自体であるかどうかを決定するため、抗液胞プロセシング酵素抗体を用いて、TMV感染NNタバコ葉のイムノブロット解析を行なった。イムノブロット解析は、以下のように行なった。
【0074】
SDS試料用緩衝液(組成:0.1M Tris−HCl(pH6.8)、4% SDS、12% メルカプトエタノール)を用い、タバコ葉をホモジナイズし、得られたホモジネートを15,000×gで4℃にて20分間遠心分離した。得られた上清をSDS−PAGEに供し、ミツハシら〔Plant Cell13、2361−2372、2001〕の手法を参照し、イムノブロット解析を行なった。
【0075】
なお、イムノブロット解析に用いた抗体は、タバコ液胞プロセシング酵素の検出に用いるための黒ヒヨコマメの液胞プロセシング酵素ホモログに対する抗体(1,000倍希釈)(トヨオカら、J.Cell Biol.、148、453−463、2000)、PR−1タンパク質に対する抗体、PR−2タンパク質に対する抗体及びPR−3タンパク質に対する抗体(5,000倍希釈)(ヤマカワら、Plant Physiol.、118、1213−1222、
1998)に対する抗体である。
【0076】
図2Cの左パネルに示されるように、抗液胞プロセシング酵素抗体を用いた場合、SDS−PAGE上のゲル上に、40kDaバンド及び38kDaバンドが検出された。
【0077】
また、タバコ葉抽出物を、抗液胞プロセシング酵素抗体との免疫沈降に供し、ついで、上清を、前記と同様の手法により、ビオチニル化−インヒビターブロット解析に供した。
【0078】
免疫沈降においては、図2Cの右パネルに示されるように、40kDaバンド及び38kDaバンド両方のシグナル強度が低減した。
【0079】
これらの結果により、TMV感染NNタバコ葉において、カスパーゼ−1様活性を有するプロテイナーゼは、40kDaの液胞プロセシング酵素及び38kDaの液胞プロセシング酵素であることが示唆される。また、これらの結果により、液胞プロセシング酵素が、主に、過敏感細胞死により引き起こされる壊死病斑形成に関与することが示唆される。
【0080】
実施例3
タバコ葉における両方のプロテイナーゼ活性:Ac−YVAD−MCAに対するカスパーゼ−1様活性及びAc−ESEN−MCAに対する液胞プロセシング酵素活性を測定した。
【0081】
液体窒素中で凍結したタバコ葉を乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、50mM NaClと1mM EDTAとを含有した50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を用いてホモジナイズした。得られたホモジネートを、15,000×gで4℃にて20分間遠心分離し、得られた上清を、0.5mM EDTAと0.5M ジチオトレイトールとを含有した100mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中、30℃で1時間プレインキュベートした。
【0082】
プレインキュベート後に得られた産物に、Ac−YVAD−MCA(500μM)又はAc−ESEN−MCA(500μM)を添加することにより、反応を開始し、蛍光分光測光器(マイクロプレートリーダー、GENios;TECAN社製)を用いて、反応混合物の蛍光の増加を465nmにて測定した。
【0083】
その結果、図3のパネルAに示されるように、カスパーゼ−1様活性は、TMV感染NNタバコ葉において、温度シフト3時間後、最大レベルまで急速に増加し、ついで、徐々に対照レベルまで下降した。一方、図3のパネルBに示されるように、液胞プロセシング酵素活性の変動は、カスパーゼ−1様活性の変動と平行していた。また、カスパーゼ−1様活性及び液胞プロセシング酵素活性の両方の活性は、mock感染NNタバコ葉においては、非常にゆっくりと増えたが、TMV感染nnタバコ葉では、全く増えなかった。
【0084】
この結果により、カスパーゼ−1様活性を有するプロテイナーゼが、液胞プロセシング酵素自体であるという仮説が裏付けられた。また、カスパーゼ−1様活性を有する液胞プロセシング酵素は、タバコ葉の過敏感反応の初期で速やかに誘導されることが示唆された。
【0085】
実施例4
温度シフト3時間後でのTMV感染NNタバコ葉におけるカスパーゼ−1基質及び液胞プロセシング酵素特異的基質に対する活性における種々のインヒビターの作用を調べた。
【0086】
インヒビターとして、0.5mM ペプスタチンA、1mM及び5mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド)、0.5mM E−64[(L−3−トランス−カルボキシオキシラン−2−カルボニル)−L−ロイシルアグマチニン]、1mM Ac−ESEN−CHO、1mM Ac−YVAD−CHO並びに1mM Ac−DEVD−CHO(ペプチド・インスティテュート社製)を用いた。
【0087】
液体窒素中で凍結したタバコ葉を乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、50mM NaClと1mM EDTAとを含有した50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を用いてホモジナイズした。得られたホモジネートを、15,000×gで4℃にて20分間遠心分離し、得られた上清を、前記インヒビター存在下又はインヒビター非存在下に、0.5mM EDTAと0.5M ジチオトレイトールとを含有した100mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中、30℃で1時間プレインキュベートした。
【0088】
プレインキュベート後に得られた産物に、各蛍光性基質(終濃度200μM)を添加することにより、反応を開始し、蛍光分光測光器(マイクロプレートリーダー、GENios;TECAN社製)を用いて、反応混合物の蛍光の増加を465nmにて測定した。
【0089】
その結果、図3のパネルCに示されるように、Ac−YVAD−MCAに対するカスパーゼ−1様活性は、カスパーゼ−1インヒビターであるAc−YVAD−CHOにより、インヒビター非存在下の活性の79%まで競合的に阻害され、カスパーゼ−3インヒビターであるAc−DEVD−CHOにより、インヒビター非存在下の活性の47%まで阻害された。
【0090】
一方、図3のパネルDに示されるように、液胞プロセシング酵素活性は、液胞プロセシング酵素特異的インヒビターであるAc−ESEN−CHOにより、インヒビター非存在下の活性の65%まで競合的に阻害された。
【0091】
また、図3のパネルCに示されるように、カスパーゼ−1様活性が、液胞プロセシング酵素特異的インヒビターにより63%まで阻害されたこと及び図3のパネルDに示されるように、液胞プロセシング酵素活性が、カスパーゼ−1インヒビターにより72%まで阻害された。
【0092】
ペプタスタチンA、PMSF及びE−64のいずれも、いかなる活性におけるいかなる作用も示さなかった。各活性における交差阻害様式は、液胞プロセシング酵素が、TMV感染NNタバコ葉で誘導されたカスパーゼ−1様活性に応答しうることを示唆した。
【0093】
実施例5
昆虫細胞においてアラビドプシス(Arabidopsis)の液胞プロセシング酵素γVPEを発現させ、液胞プロセシング酵素及びカスパーゼの基質を用いて、精製液胞プロセシング酵素の活性を測定した。
【0094】
アラビドプシス(Arabidopsis) γVPEは、バキュロウイルス発現系(インビトロゲン社製)を用い、既報(クロヤナギら、Plant Cell Physiol.、43、143−151、2002)に記載の方法に準じ、作製した。
【0095】
組換えアラビドプシス(Arabidopsis) γVPE(1.6〜4.0μg相当量)を0.5mM EDTAと0.5M ジチオトレイトールとを含有した100mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中、30℃で1時間プレインキュベートした。
【0096】
プレインキュベート後に得られた産物に、蛍光基質であるAc−YVAD−MCA又はAc−ESEN−MCAを添加することにより、反応を開始し、蛍光分光測光器(マイクロプレートリーダー、GENios;TECAN社製)を用いて、反応混合物の蛍光の増加を465nmにて測定した。なお、活性測定時において、80〜400μMの各蛍光基質を用いることによりK値を求めた。
【0097】
その結果、図3Eに示されるように、液胞プロセシング酵素は、カスパーゼ−1基質(Ac−YVAD−MCA)に対する活性を示し、K値は、44.2μMであり、標準カスパーゼ−1のK値(11−23μM)よりもわずかに高く、液胞プロセシング酵素特異的基質(Ac−ESEN−MCA)に対するK値(30.3μM)に匹敵した。対照的に、前記液胞プロセシング酵素は、カスパーゼ−3基質(Ac−DEVD−MCA)又は液胞プロセシング酵素特異的基質の誘導体(Ac−ESED−MCA)のいずれに対しても活性を示さなかった。また、液胞プロセシング酵素は、Ac−ESEN−MCAにおけるアスパラギン残基だけでなく、Ac−YVAD−MCAにおけるアスパラギン酸をも認識した。これらの結果により、液胞プロセシング酵素は、カスパーゼ−1様活性を有することがわかる。
【0098】
実施例6
RT−PCRにより、タバコ葉から、液胞プロセシング酵素をコードするcDNAのクローニングを行なった。
【0099】
クローニングには、温度を30℃から23℃にシフトした後の異なる時点におけるTMV感染NNタバコ葉を使用した。タバコ葉(100mg)を液体窒素中で凍結し、乳鉢と乳棒で磨砕した。
【0100】
ついで、商品名:RNeasy Plant Miniキット(キアゲン社製製)を用いて全RNAを単離し、得られた全RNAを、5U RNアーゼ無含有DNアーゼ Iにより37℃で30分間処理した。ついで、処理後の産物について、フェノール/クロロホルム抽出を行ない、精製RNAを得た。
【0101】
前記精製RNA(1μg相当量)を70℃で10分間加熱し、50pmolのオリゴd(T)18プライマーを含有した反応液 50μL中において、商品名:Ready−To−Go RT−PCRビーズ(タカラバイオ社製)を用い、42℃で30分間の逆転写反応を行なった。ついで、得られた反応産物(1μL)と、1UのTaKaRa Ex Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)と100pmolの各プライマーとを含むPCR反応液(Ex Taq緩衝液、0.2mM dNTP Mix) 50μLを用い、PCRを行なった。
【0102】
前記プライマーは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の液胞プロセシング酵素の保存配列[WAVLVAG (配列番号:5)、HQAD(V/I)CHA(配列番号:6)、PLVDDW(配列番号:7)及びNQRD(A/V)(D/H)L (配列番号:8)]に基づいて設計した。具体的には、プライマーは、
Fwd1:5’−tgggcirtiytibtigcigg−3’ (配列番号:9)、
Fwd2:5’−caycargcigayrtitgycaygc−3’ (配列番号:10)、
Rev3:5’−ccartcrtciaciarigg−3’ (配列番号:11)、
Rev4:5’−arrtsircrtcickytgrtt−3’ (配列番号:12)、
(前記配列中、i:イノシン、b:シトシン、グアニン及びチミンの混合物、k:グアニン及びチミンの混合物、r:アデニン及びグアニンの混合物、s:シトシン及びグアニンの混合物、y:シトシン及びチミン)である。前記Fwd1プライマーとRev4プライマーとの組み合わせを、1次PCRで用い、Fwd2プライマーとRev3プライマーとの組み合わせをnested PCRで用いた。反応条件は、95℃で5分間インキュベートした後、95℃で40秒と50℃で60秒と72℃で90秒とを1サイクルとする反応を35サイクル行い、最後に72℃で7分間インキュベートする条件である。
【0103】
得られた増幅産物を、pT7Blue T−ベクター(ノバジェン社製)に連結し、該増幅産物の配列を決定した。タバコVPEの上流配列及び下流配列を決定するため、5’ −Full RACE Core Set及び3’ −FullRACE Core Set(タカラバイオ社製)を使用した。
【0104】
その結果、4つの液胞プロセシング酵素をコードするcDNAが単離された。得られた4つの液胞プロセシング酵素を、それぞれ、NtVPE−1a、NtVPE−1b、NtVPE−2及びNtVPE−3と称する。
【0105】
4つのNtVPEの予想アミノ酸配列とアラビドプシス(Arabidopsis) γVPEのアミノ酸配列とを比較した結果を、図4Aに示す。その結果、NtVPEアミノ酸配列とγVPEアミノ酸配列間の同一性は、約64.3%以上であった。
【0106】
また、液胞プロセシング酵素には、ヒトカスパーゼ−1における触媒2分子のHis−237及びCys−285に相当する触媒2分子の2残基(His及びCys)がよく保存されていることがわかった。液胞プロセシング酵素の活性部位のペンタペプチドE(A/G)CES(配列番号:13)は、カスパーゼ−1の活性部位のペンタペプチドQACRG(配列番号:14)に類似することがわかった。
【0107】
また、カスパーゼ−1のAspポケットを形成する3つの必須アミノ酸Arg−179、Arg−341及びSer−347のそれぞれは、液胞プロセシング酵素に保存されていた。
【0108】
この結果により、液胞プロセシング酵素の基質ポケットが、カスパーゼ−1のAspポケットと類似することを示唆する。また、これは、タバコ液胞プロセシング酵素が、カスパーゼインヒビターAc−xVAD−fmk及びAc−YVAD−CHOと結合したという結果と一致した。
【0109】
アラビドプシス(Arabidopsis)の液胞プロセシング酵素及びトウゴマの液胞プロセシング酵素は、プレプロタンパク質前駆体として、合成され、翻訳に伴って、N末端プロペプチド及びC末端プロペプチドを有するプロタンパク質前駆体に変換されることを示している(図4B)。不活性プロタンパク質前駆体は、C末端プロペプチド及びN末端プロペプチドの逐次除去により自己触媒的に活性化される。同様に、カスパーゼ−1は、不活性前駆体として合成され、ついで、液胞プロセシング酵素で起こるように、自己触媒的に活性成熟酵素に変換される。カスパーゼ前駆体は、C末端プロペプチドをもたないが、除去されるリンカーペプチドを有する(図4B)。
【0110】
実施例7
タバコ植物におけるNtVPE−1a、NtVPE−1b、NtVPE−2及びNtVPE−3それぞれのmRNA発現レベルを調べるため、前記実施例6と同様に、RT−PCRを行なった。
【0111】
前記実施例6と同様にして得られたDNアーゼI処理RNA(2μg)を用い、42℃で30分間の逆転写反応を行なった。
【0112】
ついで、得られた反応液(2μL)と、NtVPE−1特異的プライマー対として
5’−gggtggtctcaaagatgagaacattg−3’ (配列番号:15)及び
5’−gtatagagcatccttgctg−3’ (配列番号:16)、
NtVPE−2特異的プライマー対として、
5’−agggcatcatgttacagcc−3’ (配列番号:17)及び
5’−gggaaagaggatcatccattagcttc−3’ (配列番号:18)、
NtVPE−3特異的プライマー対として、
5’−aaggagttatcatcaatagtcctgc−3’ (配列番号:19)
5’−gtacatgaacagagaatccataccc−3 (配列番号:20)
のそれぞれの特異的プライマー対 50pmolを含むPCR反応液(Ex Taq緩衝液、0.2mM dNTP Mix) 20μLを用い、PCRを行なった。なお、アクチンに対するプライマー対〔5’−atggcagacggtgaggatattca−3’ (配列番号:21)及び5’−gcctttgcaatccacatctgttg−3’ (配列番号:22)〕を対照実験として使用した。
【0113】
PCR条件は、95℃で5分間インキュベートした後、95℃で40秒と52−60℃で60秒と72℃で60秒とを1サイクルとする反応を25−28サイクル行い、最後に72℃で7分間インキュベートする条件である。
【0114】
その結果、図5Aに示されるように、NtVPE mRNAは、NNタバコ葉におけるTMV誘導過敏感反応のごく初期段階で、1時間で最大レベルに達し、NtVPE mRNAのレベルの速やかでかつ一過的に増加することがわかった。
【0115】
図5Aに示されるように、NtVPE mRNAの一過性発現は、酸性及び塩基性病原関連タンパク質(PR−1)両方のmRNAの発現に先立っていた。
【0116】
また、図5A及び図5Cに示されるように、発現は、はるかに壊死病斑形成に先んじ、NtVPE mRNAは、約8時間の時点で消失し、葉で、壊死病斑を形成しはじめた。
【0117】
NtVPE mRNAのレベルは、mock感染NNタバコ葉での温度シフト後、わずかに、ゆるやかに誘導された。葉の左半分における誘導は、葉の右半分におけるTMV感染による全体的な作用によると思われる。一方、NtVPE mRNAは、TMV感染nnタバコ葉において、ほんのわずかに増加した。
【0118】
また、図5Bに示されるように、NNタバコ葉でのTMV誘導過敏感反応の際の液胞プロセシング酵素レベルは、3時間で速やかに最大レベルに増加し、6時間まで高いままであり、その後、基底レベルに減少した。
【0119】
図5A及び図5Bに示されるように、生育中における液胞プロセシング酵素のレベルの変動は、対応のmRNAレベルの変動に類似していた。一方、mock感染NNタバコ葉において、液胞プロセシング酵素の量は、温度シフト後、わずかに、増加した。液胞プロセシング酵素は、TMV感染nnタバコ葉で誘導されなかった。
【0120】
ついで、ビオチンxVAD−fmkを用い、前記実施例2と同様のビオチニル化インヒビターブロットにより、カスパーゼ−1インヒビターに結合する活性型の液胞プロセシング酵素のレベルの変動を決定した。
【0121】
図6に示されるように、温度シフト後0時間から12時間後のTMV感染NNタバコ葉のビオチニル化インヒビターブロットの結果、ビオチンxVAD−fmkに結合する40kDa液胞プロセシング酵素及び38kDa液胞プロセシング酵素のレベルは、3時間で最大に達し、ついで、対照レベルに徐々に下降した。また、40kDa液胞プロセシング酵素及び38kDa液胞プロセシング酵素のレベルは、TMV誘導過敏感反応が起こらないTMV感染nnタバコ葉で増加せず、mock感染NNタバコ葉でわずかに増加した。40kDa及び38kDa活性VPEのレベルは、TMV誘導過敏感反応増加した。
【0122】
このらの結果により、NtVPE mRNAの発現、液胞プロセシング酵素の発現及び液胞プロセシング酵素活性の全てが、TMV誘導過敏感反応の初期段階で、迅速、かつ一過的に誘導されることが示唆される。
【0123】
実施例8
N抵抗性遺伝子を保持するタバコ植物(Nicotiana tabacumL.cv.Samsun)(NNタバコ)を、26℃で6〜8週間、12時間照光サイクル下で生育させた。充分に生育し、広がった葉に、10mM リン酸緩衝液(pH7.0)に加えたタバコモザイク病ウイルス(TMV−OM、25μg/mL)を、カーボランダム(600メッシュ)で葉の表面を擦ることにより接種した。TMV感染の後、前記植物を30℃で40時間維持し、分離した。ついで、前記植物を、23℃での温度シフト1時間前、温度シフト1時間後、3時間後、6時間後、9時間後及び12時間後、インヒビターを浸潤させ、NNタバコ葉における壊死病斑形成におけるインヒビターの作用を調べた。
【0124】
その結果、図7に示されるように、過敏感細胞死を示す壊死病斑の形成は、温度シフト1時間後まで浸潤させた場合、インヒビターにより強く阻害された。また、温度シフト3時間後、浸潤させた場合、壊死病斑形成は、わずかに阻害された。さらに、温度シフト6時間後、浸潤させた場合、壊死病斑形成は阻害されなかった。
【0125】
これらの結果により、液胞プロセシング酵素が、NNタバコ葉におけるTMV誘導過敏感細胞死のシグナル伝達経路の初期プロセスに機能することが示唆される。
【0126】
実施例9
シロイヌナズナの液胞プロセシング酵素(γVPE;アクセッションナンバーD61395)のプロモータを含む領域(開始コドンを起点として−2036から+11の上流部分)にβ−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を繋いだキメラ遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナを作製した。この植物体に種々の化合物を与えた後にGUS染色を行なったところ、サリチル酸(2.5mM)とエチレン(100μL/L)処理によって植物体が明らかに青く染まり、顕著なGUS遺伝子の発現を示した。したがって、サリチル酸が、病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質として選別された。
【0127】
【発明の効果】
本発明の植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染の防御方法によれば、植物における病原菌及び/又はウイルス感染を防除又は抑制し、病原菌及び/又はウイルスに感染した植物における感染部位の拡大を抑制することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染を防御するための液胞プロセシング酵素又はそれをコードする核酸の使用によれば、植物における病原菌及び/又はウイルス感染を防除又は抑制し、病原菌及び/又はウイルスに感染した植物における感染部位の拡大を抑制し、病原菌及び/又はウイルス感染に対する植物の耐性能を増強し、植物における病原菌及び/又はウイルス感染部位の拡大に対する抑制能を増強することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法によれば、植物に対する病原菌及び/又はウイルス防除剤等の開発を可能にする物質を容易に、大量にスクリーニングすることができるという優れた効果を奏する。
【0128】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】NNタバコ葉のTMV感染部位に、温度シフト前に各種物質を浸潤させた24時間後の葉を観察した結果を示す。
【図2】図2は、植物におけるカスパーゼ−1様活性を有するタンパク質を同定を行なった結果を示す。パネルAにおいて、左パネルは、温度シフト前に1mM ビオチン−xVAD−fmkの浸潤の有無によるTMV感染NNタバコ葉の温度シフト24時間後における結果であり、右パネルは、ビオチン化インヒビターブロット解析の結果を示す。前記右パネルにおいて、レーン1は、温度シフト24時間後のビオチン−xVAD−fmk処理葉、レーン2は、温度シフト6時間後の未処理葉を示す。また、パネルBは、プロテアーゼインヒビターの存在下又は非存在下の場合のビオチン化インヒビターブロット解析の結果を示す。パネルCにおいて、左パネルは、葉抽出物をSDS−PAGEに供した後、抗VPE抗体を用いてイムノブロットに供した結果を示し、右パネルは、葉抽出物を、抗VPE抗体を用いて免疫沈降させ、上清をビオチン化インヒビターブロットに供した結果を示す。分子量をkDaで示す。
【図3】図3は、カスパーゼ−1様活性と液胞プロセシング酵素活性との比較の結果を示す。パネルAは、タバコ葉における、Ac−YVAD−MCAに対するカスパーゼ−1様活性レベルの成長過程での変化を示し、パネルBは、タバコ葉におけるAc−ESEN−MCAに対するVPE活性の成長過程での変化を示す。パネルCは、タバコ葉における、Ac−YVAD−MCAに対するカスパーゼ−1様活性に対する種々のインヒビターの作用を示し、パネルDは、タバコ葉における、Ac−ESEN−MCAに対するVPE活性に対する種々のインヒビターの作用を示す。パネルEは、VPE基質(Ac−ESEN−MCA)、VPE基質(Ac−ESED−MCA)の誘導体、カスパーゼ−1基質(Ac−YVAD−MCA)及びカスパーゼ−3基質(Ac−DEVD−MCA)に対するアラビドプシス(Arabidopsis)液胞プロセシング酵素γVPEのK値を示す。パネルEにおいて、n.d.は未検出を示す。
【図4】図4は、タバコ植物の4種類の液胞プロセシング酵素(NtVPE−1a、NtVPE−1b、NtVPE−2及びNtVPE−3)の構造解析の結果を示す。パネルAは、アラビドプシス(Arabidopsis)液胞プロセシング酵素γVPEと、タバコ植物の4種類の液胞プロセシング酵素との間のアミノ酸配列の配列同一性を示す。数値は、プログラムDNASIS(日立製作所社製)にて算出したアミノ酸配列同一性(%)を示す。パネルBは、ヒトカスパーゼ−1及び植物VPEの構造の模式図を示す。ヒトカスパーゼ−1及び植物VPEは、プロタンパク質前駆体として合成され、次いで、プロペプチド(白四角)及びリンカーペプチド(灰色四角)の除去後に、それぞれの成熟形態(黒四角)に変換される。hカスパーゼ−1の必須アミノ酸及びタバコVPEの対応するアミノ酸(NtVPE−1a)を黒四角で示す。
【図5】図5は、NNタバコ葉におけるTMV誘導性過敏感反応中の、NtVPEのmRNA及びタンパク質の両方の初期発現及び一過性発現を調べた結果を示す。パネルAは、NtVPE mRNAレベルの成長過程での変化を示し、左パネルは、RT−PCRの結果であり、右パネルは、TMV感染NNタバコ葉におけるNtVPE−1及び塩基性PR−1のmRNAレベルを光学濃度的に検出し、相対量を、NtVPE−1では温度シフトの1時間後、塩基性PR−1では温度シフトの12時間後での最大値に対する割合で示した結果である。パネルBは、NtVPEタンパク質レベルの成長過程での変化を示し、左パネルは、イムノブロットの結果であり、右パネルは、TMV感染NNタバコ葉におけるNtVPEタンパク質、PR−1、PR−2及びPR−3のレベルを光学濃度的に測定し、TMV感染NNタバコ葉における相対量を、NtVPEでは温度シフトの3時間後、PR−1では温度シフトの12時間後での最大値に対する割合で示した結果である。パネルCは、温度シフト後、表示された時間におけるNNタバコ葉の形態学的変化を示す。
【図6】図6は、NNタバコ葉のTMV誘導性過敏感反応の際のNtVPEのに関するビオチン化インヒビターブロットの結果を示す。パネルAは、ビオチン化インヒビターブロットであり、パネルBは、パネルAにおけるビオチン化インヒビターに結合したNtVPEの量を光学濃度的に測定した結果である。パネルBにおいて、相対量を、TMV感染NNタバコ葉において温度シフトの3時間後の最大値に対する割合で示す。
【図7】図7は、1mM Ac−YVAD−CHO(VPE/カスパーゼ−1インヒビター)をTMV感染NNタバコ葉に浸潤させ、温度シフト24時間後に観察した結果を示す。

Claims (11)

  1. 植物内において、液胞プロセシング酵素を過剰発現させることを特徴とする、植物に対する病原菌及び/又はウイルスの感染の防御方法。
  2. 植物が、アブラナ科植物、ウリ科植物、ナス科植物、マメ科植物、ゴマ科植物、イネ科植物、ミカン科植物及びヒルガオ科植物からなる群より選ばれた植物に由来するものである、請求項1記載の防御方法。
  3. 植物に対する病原菌及び/又はウイルス感染拡大を抑制する、請求項1又は2記載の防御方法。
  4. 液胞プロセシング酵素が、タバコ、シロイヌナズナ、アブラナ、ナズナ、ダイコン、キャベツ、カボチャ、キュウリ、メロン、スイカ、タバコ、トマト、ジャガイモ、ピーマン、ナス, ダイズ、エンドウ、アズキ、ラッカセイ、インゲンマメ、ソラマメ、ゴマ、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、ミカン、ユズ及びサツマイモからなる群より選ばれた植物に由来するものである、請求項1〜3いずれか1項に記載の防御方法。
  5. 植物に対する病原菌及び/又はウイルスの感染を防御するための液胞プロセシング酵素又はそれをコードする核酸の使用。
  6. 液胞プロセシング酵素が、
    (i)配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチド、
    (ii)配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列において、少なくとも1つの残基の置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、及び
    (iii) 配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有し、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、
    からなる群より選ばれたポリペプチドである、請求項5記載の使用。
  7. 液胞プロセシング酵素をコードする核酸が、
    (I)下記(i)〜(iii) :
    (i)配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチド、
    (ii)配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列において、少なくとも1つの残基の置換、欠失、付加若しくは挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、及び
    (iii) 配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有し、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、
    のいずれかのポリペプチドをコードする核酸、又は
    (II)配列番号:1、2、3、4、23〜46からなる群より選ばれたアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、コードされるポリペプチドが、液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチドである核酸、
    である、請求項5記載の使用。
  8. (a)液胞プロセシング酵素をコードする核酸を保持した細胞と、被検物質とを接触させるステップ、及び
    (b)前記ステップ(a)で得られた細胞内における液胞プロセシング酵素の発現又は活性を評価するステップ、
    を含む、植物における病原菌及び/又はウイルスの感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法。
  9. 被検物質の存在下、液胞プロセシング酵素の生理活性を測定するステップを含む、植物における病原菌及び/又はウイルス感染の防御剤の候補物質のスクリーニング方法。
  10. 下記(i’)〜(iii’) :
    (i’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチド、
    (ii’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列において、少なくとも1つの残基の置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、及び
    (iii’) 配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有し、かつ液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチド、
    からなる群より選ばれたポリペプチドからなる液胞プロセシング酵素。
  11. (I’)請求項10に記載されたポリペプチドをコードする核酸、又は
    (II’)配列番号:1、2、3及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、コードされるポリペプチドが、液胞プロセシング酵素の生理活性を有するポリペプチドである核酸
    を含有してなる、液胞プロセシング酵素をコードする核酸。
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