図1は、ガラス基板、プラスチック基板、Si等の半導体基板、ガラス・エポキシ基板、フレキシブル基板等に本発明の手法によってパターンを形成する例を示している。図1(A)は、このような基板10上に端子2,3が形成されている状態を示し、図の点線部1′は後述のような配線パターン1が生成される領域である。図1(B)は、微細な導電性微粒子を含有する溶液を、液滴噴射原理によって、噴射、描画して、配線パターン1を形成した例である。
ここで、微細な導電性微粒子を含有した溶液を付与する手段として本発明では、インクジェットの技術が適用される。以下にその具体的方法を説明する。
図2は、本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置の一実施例を説明するための図で、図中、11は噴射ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12はキャリッジ、13は基板保持台、14は配線基板や機能性素子基板等の基板、あるいは機能デバイスを形成する基板、15は微細な導電性微粒子を含有する溶液の供給チューブ、16は信号供給ケーブル、17は噴射ヘッドコントロールボックス(溶液タンク含む)、18はキャリッジ12のX方向スキャンモータ、19はキャリッジ12のY方向スキャンモータ、20はコンピュータ、21はコントロールボックス、22(22X1、22Y1、22X2、22Y2)は基板位置決め/保持手段である。この場合は、基板保持台13に置かれた基板14の前面を噴射ヘッド11がキャリッジ走査により移動し、微細な導電性微粒子を含有する溶液を噴射付与する例である。
図3は本発明のパターン配線基板の製造、あるいは機能デバイス形成に適用される液滴付与装置の構成を示す概略図で、図4は図3の液滴付与装置の噴射ヘッドユニットの要部概略構成図である。
図3の構成は図2の構成と異なり、基板14側を移動させて配線パターン、あるいは機能デバイスを基板に形成するものである。図3及び図4において、31はヘッドアライメント制御機構、32は検出光学系、33は噴射ヘッド、34はヘッドアライメント微動機構、36は画像識別機構、37はXY方向走査機構、38は位置検出機構、39は位置補正制御機構、40は噴射ヘッド駆動・制御機構、41は光軸、42は素子電極、43は液滴、44は液滴着弾位置である。
噴射ヘッドユニット11の液滴付与装置(噴射ヘッド33)としては、任意の液滴を定量吐出できるものであればいかなる機構でも良く、特に0.1pl〜数100pl程度の液滴を形成できるインクジェット原理の機構が望ましい。
インクジェット方式としては、たとえば米国特許第3683212号明細書に開示されている方式(Zoltan方式)、米国特許第3747120号明細書に開示されている方式(Stemme方式)、米国特許第3946398号明細書に開示されている方式(Kyser方式)のようにピエゾ振動素子に、電気的信号を印加し、この電気的信号をピエゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って微細なノズルから液滴を吐出飛翔させるものがあり、通常、総称してドロップオンデマンド方式と呼ばれている。
他の方式として、米国特許第3596275号明細書、米国特許第3298030号明細書等に開示されている方式(Sweet方式)がある。これは連続振動発生法によって帯電量の制御された記録液体の小滴を発生させ、この発生された帯電量の制御された小滴を、一様の電界が掛けられている偏向電極間を飛翔させることで、記録部材上に記録を行うものであり、通常、連続流方式、あるいは荷電制御方式と呼ばれている。
さらに他の方式として、特公昭56−9429号公報に開示されている方式がある。これは液体中で気泡を発生せしめ、その気泡の作用力により微細なノズルから液滴を吐出飛翔させるものであり、サーマルインクジェット方式、あるいはバブルジェット(R)方式と呼ばれている。
このように液滴を噴射する方式は、ドロップオンデマンド方式、連続流方式、サーマルインクジェット方式等あるが、必要に応じて適宜その方式を選べばよい。
本発明ではこのようなパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置(図2)において、基板14はこの装置の基板位置決め/保持手段22によってその保持位置を調整して決められる。図2では簡略化しているが、基板位置決め/保持手段22は基板14の各辺に当接されるとともに、X方向およびそれに直交するY方向にサブミクロンオーダーで微調整できるようになっているとともに、噴射ヘッドコントロールボックス17、コンピュータ20、コントロールボックス21等と接続され、その位置決め情報および微調整変位情報等と、液滴付与の位置情報、タイミング等は、たえずフィードバックできるようになっている。
さらに本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置では、X、Y方向の位置調整機構の他に図示しない(基板14の下に位置するために見えない)、回転位置調整機構を有している。これに関連して先に本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板の形状および形成される機能デバイス群の配列等に関して説明する。
本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板は、その目的、用途に応じて、ガラス基板、セラミックス基板、PETを始めとする各種プラスチック基板、Si等の半導体基板、ガラス・エポキシ基板、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の高分子フィルムよりなるフレキシブル基板等が好適に用いられる。たとえば各種プラスチック基板や高分子フィルムは軽量化が要求されるパターン配線基板、あるいは機能デバイスに効果的である。
しかしながら本発明では、微粒子含有溶液の付与にインクジェット原理を利用しているが、本発明に適用されるこれらの基板は、紙のようにインクの溶媒を吸収するといった吸液作用はない。ここがインクジェット記録装置と本発明のように、インクジェット原理を利用した溶液噴射型製造装置の違いである。
本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板に使用する各種プラスチック基板や高分子フィルの形状は、このような基板を経済的に生産、供給する、あるいは最終的に製作される機能デバイス形成基板の用途から、矩形である。つまり、その矩形形状を構成する縦2辺、横2辺はそれぞれ、縦2辺が互いに平行、横2辺が互いに平行であり、かつ縦横の辺は直角をなすような基板である。
このような基板に対して本発明では、形成される機能デバイス群をマトリックス状に配列し、このマトリックスの互いに直交する2方向が、この基板の縦方向の辺あるいは横方向の辺の方向と平行であるように機能デバイス群を配列する。このように機能デバイス群をマトリックス状に配列する理由および、基板の縦横の辺をそのマトリックスの直交する2方向と平行になるようにする理由を以下に述べる。
図2あるいは図3に示したように、本発明では、最初に基板14と噴射ヘッドユニット11の溶液噴射口面の位置関係が決められた後は、特に位置制御を行うことはない。つまり、噴射ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながら機能デバイス群の形成面に対して平行にX、Y方向の相対移動を行いつつ、上記溶液の噴射を行う。つまりこのX方向及びY方向は互いに直交する2方向であり、基板の位置決めを行う際に、基板の縦辺あるいは横辺をそのY方向あるいはX方向と平行になるようにしておけば、形成される機能デバイス群もそのマトリックス状配列の2方向がそれぞれ平行であるため、相対移動を行いつつ噴射する機構のみで高精度のデバイス群形成を行うことができる。言い換えるならば、本発明のような基板形状、機能デバイス群のマトリックス状配列、直交するX、Yの2方向の相対移動装置にすれば、デバイス形成の液滴噴射を行う前の基板の位置決めを正確に行えば、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列が得られるということである。
ここで、先ほどの回転位置調整機構に戻って説明する。前述のように本発明では、デバイス形成の液滴噴射を行う前の基板の位置決めを正確に行い、XおよびY方向の相対移動のみを行い、他の制御を行わず、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列を得ようというものである。その際問題となるのは、最初に基板の位置決めを行う際の回転方向(X、Yの2方向で決定される平面に対して垂直方向の軸に対する回転方向)のズレである。
この回転方向のズレを補正するために本発明では、前述のように図示しない(基板14の下に位置して見えない)、回転位置調整機構を有している。これにより回転方向のズレも補正し、基板の辺を位置決めすると、本発明の装置では、XおよびY方向のみの相対移動で、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列が得られる。
以上はこの回転位置調整機構を、図2の基板位置決め/保持手段で22(22X1、22Y1、22X2、22Y2)とは別物の機構として説明した(基板14の下に位置して見えない)が、基板位置決め/保持手段22に回転位置調整機構を持たせることも可能である。例えば、基板位置決め/保持手段22は、基板14の辺に当接され、基板位置決め/保持手段22全体が、X方向あるいはY方向に位置を調整できるようになっているが、基板位置決め/保持手段22の基板14の辺に当接される部分において、距離をおいて設けられた2本のネジが独立に動くようにしておけば、角度調整が可能である。なお、この回転位置制御情報も上記のX、Y方向の位置決め情報および微調整変位情報等と同様に噴射ヘッドコントロールボックス17、コンピュータ20、コントロールボックス21等と接続され、液滴付与の位置情報、タイミング等が、たえずフィードバックできるようになっている。
以上の説明は、本発明に好適に使用される基板が、基本的に矩形形状であるということを前提としたものであるが、例外としてSi等の半導体基板は丸いウエハとして供給されるので、その場合は、結晶方位軸の方向を示すオリフラ(オリエンテーションフラット)と呼ばれる直線状の1辺を上記基板位置決め/保持手段22に当接させればよい。
次に本発明の位置決めの他の手段、構成について説明する。上記の説明は基板位置決め/保持手段22は、基板14の辺に当接され、基板位置決め/保持手段22全体が、X方向あるいはY方向に位置を調整できるようにしたものであるが、ここでは、基板14の辺ではなく、基板上に互いに直交する2方向に帯状パターンを設けるようにした例について説明する。前述のように本発明では基板上に機能デバイス群をマトリックス状に配列して形成されるが、ここでは、前記のような互いに直交する2方向の帯状パターンをこのマトリックスの互いに直交する2方向と平行になるように形成しておく。このようなパターンは、基板上にフォトファブリケーション技術によって容易に形成できる。
本発明は、マトリックス状に配列された多数の機能デバイス群を形成する場合の他に、図1に示したような配線パターンを形成する場合にも適用されるが、このような配線パターンも、この例のように直交する2方向に形成し、それが、それぞれ基板の縦、横方向(X方向、Y方向)に平行になるように形成する。この配線パターンは、本発明の基板の本来の機能を阻害しない位置に、このような位置決めの目的のためのパターンとして形成してもよいし、また、素子電極42(図4)や、各デバイスのX方向配線やY方向配線等の配線パターンを本発明の互いに直交する2方向の帯状パターンとみなしてもよい。このような帯状パターンを設けておけば、図4で後述するような、CCDカメラとレンズとを用いた検出光学系32によってパターン検出ができ、位置調整にフィードバックできる。
次に上記X、Y方向に対して垂直方向であるZ方向であるが、本発明では、最初に基板14と噴射ヘッドユニット11の溶液噴射口面の位置関係が決められた後は、特に位置制御を行うことはない。つまり、噴射ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離(1〜3mm)を保ちながらX、Y方向の相対移動を行いつつ、微細な導電性微粒子を含有する溶液の噴射を行うが、その噴射時には、噴射ヘッドユニット11のZ方向の位置制御は特に行わない。その理由は、噴射時にその制御を行うと、機構、制御システム等が複雑になるだけではなく、基板14への液滴付与による機能デバイスの形成が遅くなり、生産性が著しく低下するからである。
かわりに本発明では基板14の平面度やその基板14を保持する部分の装置の平面度、さらに噴射ヘッドユニット11をX、Y方向に相対移動を行わせるキャリッジ機構等の精度を高めるようにすることで、噴射時のZ方向制御を行わず、噴射ヘッドユニット11と基板14のX、Y方向の相対移動を高速で行い、生産性を高めている。一例をあげると、本発明の溶液付与時(噴射時)における基板14と噴射ヘッドユニット11の溶液噴射口面の距離の変動は2mm以下におさえられている(基板14のサイズが100mm×100mm以上、4000mm×4000mm以下の場合で)。
なお、通常X、Y方向の2方向で決まる平面は水平(鉛直方向に対して垂直な面)に維持されるように装置構成されるが、基板14が小さい場合(例えば500mm×500mm以下の場合)には必ずしもX、Y方向の2方向で決まる平面を水平にする必要はなく、その装置にとってもっとも効率的な基板14の配置の位置関係になるようにすればよい。
次に図4により噴射ヘッドユニット11の構成を説明する。図4において、32は基板14上の画像情報を取り込む検出光学系であり、液滴43を吐出させる噴射ヘッド33に近接し、検出光学系32の光軸41および焦点位置と、噴射ヘッド33による液滴43の着弾位置44とが一致するよう配置されている。
この場合、図3に示す検出光学系32と噴射ヘッド33との位置関係はヘッドアライメント微動機構34とヘッドアライメント制御機構31により精密に調整できるようになっている。また、検出光学系32には、CCDカメラとレンズとを用いている。
図3において、36は先の検出光学系32で取り込まれた画像情報を識別する画像識別機構であり、画像のコントラストを2値化し、2値化した特定コントラスト部分の重心位置を算出する機能を有したものである。具体的には(株)キーエンス製の高精度画像認識装置、VX−4210を用いることができる。これによって得られた画像情報に機能性素子基板14上における位置情報を与える手段が位置検出機構38である。これには、XY方向走査機構37に設けられたリニアエンコーダ等の測長器を利用することができる。また、これらの画像情報と機能性素子基板14上での位置情報をもとに、位置補正を行うのが位置補正制御機構39であり、この機構によりXY方向走査機構37の動きに補正が加えられる。また、噴射ヘッド制御・駆動機構40によって噴射ヘッド33が駆動され、液滴が機能性素子基板14上に付与される。これまで述べた各制御機構は、制御用コンピュータ35により集中制御される。
ところで、図4で液滴が基板面に斜めに噴射する図を示したが、これは検出光学系32と、噴射ヘッド33を併せて図示するためにこのように液滴が斜めに飛翔している図としたが、実際には基板に対してほぼ垂直に当たるように噴射付与するようにする。
なお、以上の説明は、噴射ヘッドユニット11は固定で、機能性素子基板14がXY方向走査機構37により任意の位置に移動することで噴射ヘッドユニット11と機能性素子基板14との相対移動を実現しているが、図2のように、機能性素子基板14を固定とし、噴射ヘッドユニット11がXY方向に走査するような構成としてもよいことはいうまでもない。特に200mm×200mm程度の中型基板〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上の大型基板の製作に適用する場合には、後者のように機能性素子基板14を固定とし、噴射ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
また、基板サイズが200mm×200mm程度以下の場合には、液滴付与のための噴射ヘッドユニットを200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプとし、噴射ヘッドユニットと基板の相対移動を直交する2方向(X方向、Y方向)に行うことなく、1方向のみ(例えばX方向のみ)に相対移動させて行うことも可能であり、量産性も高くすることができるが、基板サイズが200mm×200mm以上の場合には、そのような200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプの噴射ヘッドユニットを製作することは技術的/コスト的に実現困難であり、本発明のように噴射ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
特に最終的な基板としては、200mm×200mmより小さいものを製作する場合であっても、大きな基板から複数個取りして製作するような場合には、その元の基板は、400mm×400mm〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上のものを使用することになるので、噴射ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
液滴43の材料には、微細な導電性微粒子を含有した溶液が使用され、たとえば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属微粒子を含有した溶液が好適に使用される。
特に、Au、Ag、Cuのような金属微粒子を用いると、電気抵抗が低く、かつ腐食に強い微細回路パターンを形成することができる。
本発明において、このような微細な導電性微粒子を含有した溶液は、水性系溶液と油性系溶液がある。
このような微細な導電性微粒子を、水を主体とする分散媒に分散せしめてなる水性系溶液は、例えば、次のような方法で調整することができる。
すなわち、塩化金酸や硝酸銀のような金属イオンソース水溶液に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながらジメチルアミノエタノールのようなアルカノールアミンを添加する。数10秒〜数分で金属イオンが還元され、平均粒径0.5μm(500nm)以下の金属微粒子が析出する。塩素イオンや硝酸イオンを限外ろ過などの方法で除去した後、濃縮・乾燥することにより濃厚な導電性微粒子含有溶液が得られる。この導電性微粒子含有溶液は、水やアルコール系溶媒、テトラエトキシシランやトリエトキシシランのようなゾルゲルプロセス用バインダーに安定に溶解・混合することが可能である。
微細な導電性微粒子を油を主体とする分散媒に分散せしめてなる油性系溶液は、例えば、次のような方法で調整することができる。
すなわち、油溶解性のポリマーをアセトンのような水混和性有機溶媒に溶解させ、この溶液を金属イオンソース水溶液と混合する。混合物は不均一系であるが、これを撹拌しながらアルカノールアミンを添加すると金属微粒子は重合体中に分散した形で油相側に析出してくる。これを濃縮・乾燥させると水性系と同様の濃厚な導電性微粒子含有溶液が得られる。この導電性微粒子含有溶液は、芳香族系、ケトン系、エステル系などの溶媒やポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等に安定に溶解・混合することが可能である。
導電性微粒子含有溶液の分散媒中における導電性微粒子の濃度は、最大80重量%とすることが可能であるが、用途に応じて適宜稀釈して使用する。
通常、導電性微粒子含有溶液における導電性微粒子の含有量は2〜50重量%、界面活性剤および樹脂の含有量は0.3〜30重量%、粘度は3〜30センチポイズが適当である。
いずれの材料においても、本発明は溶液中の揮発成分を揮発させ、固形分を基板上に残留させることによってパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行うものである。この固形物がそれぞれのパターンあるいはデバイスの機能を発生させるものであり、溶媒(揮発成分)はインクジェット原理で液滴を噴射付与するための手段(vehicle)である。
液滴43の材料として他には、たとえば、CuCl等のI−VII族化合物半導体、CdS、CdSe等のII−VI族化合物半導体、InAs等のIII−V族化合物半導体、及びIV族半導体のような半導体結晶、TiO2、SiO、SiO2等の金属酸化物、蛍光体、フラーレン、デンドリマー等の無機化合物、フタロシアニン、アゾ化合物等の有機化合物からなるもの、またはそれらの複合材料等のナノ粒子を含有した溶液があげられる。
本発明において対象となるナノ粒子としては、通常、粒径が0.0005〜0.2μm(0.5〜200nm)、好ましくは0.0005〜0.05μm(0.5〜50nm)の微粒子があげられるが、より厳密には、溶液製造上の微粒子分散安定性や、後述する噴射時の目詰まり発生、さらにはパターン形成される基板の表面粗さなどを考慮して決められる。
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、これらナノ粒子の表面を化学的あるいは物理的に修飾しても良く、また界面活性剤や分散安定剤や酸化防止剤などの添加剤を加えても良い。このようなナノ粒子はコロイド化学的な手法、例えば逆ミセル法(Lianos, P.et al., Chem. Phys. Lett., 125, 299 (1986))やホットソープ法(Peng, X. et al., J. Am. Chem. Soc., 119, 7019 (1997))によって合成することができる。
本発明に好適に使用できるナノ粒子含有溶液は、上記ナノ粒子を連続相が水相であり分散相が油相であるエマルション(O/Wエマルション)に分散させた分散液である。
上記水相は水を主体とするが、水に水溶性有機溶剤を添加して用いてもよい。水溶性有機溶剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200、#400)、グリセリン、前記グリコール類のアルキルエーテル類、N−メチルピロリドン、1、3−ジメチルイミダゾリノン、チオジグリコール、2−ピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。水性分散媒体中の水溶性有機溶剤の使用量は、通常30重量%以下が好ましく、さらには20重量%とするのがより好ましい。
分散液中のナノ粒子の含有量は、所望の膜(層)構造または粒子配列構造及び膜(層)厚により異なるが分散液の全重量に対し、通常0.01〜15重量%の範囲で用いられるが、0.05〜10重量%の範囲とするのがより好ましい。ナノ粒子の含有量が少な過ぎるとデバイス機能を充分に発現することが出来なくなる可能性があり、逆に多過ぎるとインクジェット原理で液滴を噴射する際の吐出安定性が損なわれる。
また本発明に好適に使用され、インクジェット原理で噴射されるナノ粒子含有溶液は、分散液中に、界面活性剤、及びナノ粒子の分散用溶媒を共存させるのが好ましい。界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤(ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)があげられ、これらを単独または二種以上混合して用いることができる。
界面活性剤の量は溶液の全重量に対し、通常、0.1〜30重量%の範囲で用いられるが、5〜20重量%の範囲とするのがより好ましい。界面活性剤がこの範囲よりも少な過ぎると水性分散体中で油水分離が生じ、液滴噴射付与による均一なパターンのコーティングができない場合がある。逆にこの範囲より多過ぎると水性分散媒体の粘度が高くなりすぎる傾向がある。
ナノ粒子の分散用溶媒としては、通常トルエン、ヘキサン、ピリジン、クロロホルムなどの液体であり、揮発性であることが望ましい。分散用溶媒の量は通常、0.1〜20重量%程度の範囲で用いられるが、1〜10重量%の範囲がより好ましい。分散用溶媒がこの範囲よりも少な過ぎると水性媒体中に含有させることのできる超微粒子の量が少なくなる。逆にこの範囲より多過ぎると水性分散媒体中で油水分離が生じる場合がある。
さらに、分散液中に有機化合物を溶解させておくこともできる。このような有機化合物としては、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、チオフェノール、フォトクロミック化合物(スピロピラン、フルギド等)、電荷移動型錯体、電子受容性化合物等があげられ、常温で固体であるものが好ましい。この場合、分散液中の前記有機化合物の量は、ナノ粒子の重量に対し、1/10000以上、好ましくは1/1000〜10倍程度である。
なお本発明の目的を損なわない範囲で、懸濁液に界面活性剤や分散安定剤や酸化防止剤などの添加剤、またはポリマー、塗布・乾燥過程でゲル化する材料などのバインダーを加えても良い。
このようなナノ粒子含有溶液をインクジェット原理によって基板上に液滴付与し、乾燥させてパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行う。本発明においては、たとえば、先ず大気圧中において、−20〜200℃、好ましくは0〜100℃程度で1時間以上、好ましくは3時間以上風乾し、その後必要に応じて減圧乾燥を行っても良い。この際の減圧度は1×105Pa以下であればよいが、好ましくは1×104Pa以下程度であり、温度は通常−20〜200℃、好ましくは0〜100℃である。また、減圧時間は1〜24時間程度である。
上記の方法により得られるナノ粒子薄膜の厚さは特に限定されるものではないが、通常、ナノ粒子の直径〜1mm、好ましくはナノ粒子の直径〜100μm程度である。また、ナノ粒子薄膜内において、ナノ粒子はある程度以上の密度で存在するのが好ましい。その意味からナノ粒子の集合体における個々のナノ粒子間の平均粒子間距離は、通常粒子直径の10倍以内の範囲であり、さらには粒子直径の2倍以内の範囲であることが好ましい。この平均粒子間距離が大き過ぎるとナノ粒子は集団的機能を示さなくなる。
次に本発明に好適に適用される液体噴射ヘッドについて、図5、図6を用いて説明する。この例は7ノズルの例である。
この液体噴射ヘッドは、溶液47が導入される流路45内にエネルギー作用部としてピエゾ素子46を設けたものである。ピエゾ素子46にパルス状の信号電圧を印加して図5(A)に示すようにピエゾ素子46を歪ませると、流路45の容積が減少すると共に圧力波が発生し、その圧力波によってノズル48から液滴43が吐出する。図5(B)はピエゾ素子46の歪がなくなって流路45の容積が増大した状態である。
ここでノズル48直前の流路45に導入される溶液47は、フィルター49を通過してきたものである。本発明ではこのように、フィルター49を噴射ヘッド内に設け、ノズル48の最近傍にフィルター除去機能を持たせている。こうすることにより、本発明の溶液中の導電性微粒子あるいはナノ粒子とは別のそれらよりもっと大きな異物粒子をトラップし、基板上に形成されるパターンあるいはデバイスの性能低下を起こさないようにしている。このようなフィルター49は小型の簡易フィルターとすることによって、図6に示したように噴射ヘッド11内に組み込むことが可能となっている。そして噴射ヘッド11そのものもコンパクト化を実現できている。
このようなフィルター49は、たとえばステンレスメッシュフィルターが好適に用いられる。あるいは、テフロン(R)(4フッ化エチレン)、ポリプロピレン等の樹脂材料も好適に用いられる。要するに本発明の溶液に対して腐食したり、溶解したりしない材料が適宜選ばれる。そしてその孔径(フィルターメッシュサイズ)は、溶液中の微粒子粒径の30倍以上の大きさの異物はトラップできるように選定される。
より具体的には、前述のように本発明においては、通常、粒径が0.0005〜0.2μm(0.5〜200nm)、好ましくは0.0005〜0.05μm(0.5〜50nm)の微粒子を含有した溶液が使用されるので、0.015〜0.6μm、好ましくは0.015〜1.5μm以上の大きさの異物がトラップできるようなフィルターとすれば、その異物が吐出口(ノズル)を詰まらせるという問題は回避できる。なお、フィルターのメッシュサイズ(トラップできる異物の大きさ)に関しては、厳密にはその除去率が絶対除去率をさすのか、平均除去率をさすのかの定義があるが、ここでは絶対除去率の考え方で上記メッシュサイズにしている。
またフィルター49の位置であるが、図6では、噴射ヘッド11内に組み込んだ例で示したが、噴射ヘッド11内に組み込むことは必須ではない。フィルターは複数箇所に設けられることもあるので、本発明においては、吐出口(ノズル)48の上流部であって、吐出口(ノズル)48に最も近い位置のフィルターのメッシュサイズを上記範囲とすることがポイントである。なお、このフィルター49に関しては、上記構成の噴射ヘッドだけに設けられるのではなく、後述のサーマル方式(バブル方式)の液体噴射ヘッド、あるいは他の構成の噴射ヘッドにおいても同様に適用される。
次に本発明に好適に適用される液体噴射ヘッドの他の例について、図7を用いて説明する。この例はサーマル方式(バブル方式)の液体噴射ヘッドの例であり、液滴噴射の原動力は、溶液中で瞬時に発生する膜沸騰気泡の成長作用力である。
ここで示した液体噴射ヘッドは、溶液が流れる流路短部から液滴が噴射するタイプのものであり、エッジシューター型と呼ばれるものである。
ここでは、液体噴射ヘッドのノズル数を4個とした例を示している。この液体噴射ヘッドは、発熱体基板66と蓋基板67とを接合させることにより形成されており、発熱体基板66は、シリコン基板68上にウエハプロセスによって個別電極69と共通電極70とエネルギー作用部である発熱体71とを形成することによって構成されている。
一方前記蓋基板67には、機能性材料を含有する溶液が導入される流路を形成するための溝74と、流路に導入される前記溶液を収容する共通液室を形成するための凹部領域75とが形成されており、これらの発熱体基板66と蓋基板67とを図7に示すように接合させることにより、前記流路及び前記共通液室が形成される。なお、発熱体基板66と蓋基板67とを接合させた状態においては、前記流路の底面部に前記発熱体71が位置し、流路の端部にはこれらの流路に導入された溶液の一部を液滴として吐出させるための前記ノズル65が形成されている。なおここでは、ノズル形状は矩形であるが、これは丸形状であってもよい。
さらにより噴射安定性を考慮して、端面(ノズル65の領域)に、別途ノズルプレートを設け、所望のノズル径、ノズル形状(たとえば丸形状)としてもよい。その場合のノズルプレートとしては、たとえばNiなどが用いられ、エレクトロフォーミング等の手法によって高精度な物が形成できる。あるいは、樹脂フィルム(基板)にエキシマレーザー加工によってノズル孔を穿孔したものを用いるのも良い方法である。
なお前記蓋基板67には、供給手段(図示せず)によって前記供給液室内に溶液を供給するための溶液流入口76が形成されている。
本発明では複数の液滴により1つの機能性素子を形成する、あるいは、複数滴によって、機能性素子などを形成するパターンをドットを重ね打ちしたり接触させたりして形成する。よって、このようなマルチノズル型の液体噴射ヘッドを用いると大変効率的に機能性素子を形成することができる。なおこの例では4ノズルの液体噴射ヘッドを示しているが、必ずしも4ノズルに限定されるものではなく、ノズル数が多ければ多いほど機能性素子の形成が効率的になることは言うまでもない。ただし、単純に多くすればよいということではなく、多くすれば液体噴射ヘッドも高価になり、また噴射ノズルの目詰まりによる確率も高くなるので、それらも考慮し装置全体のバランス(装置コストと機能性素子の製作効率のバランス)を考えて決められる。
図8はこのようにして製作されたマルチノズル型の液体噴射ヘッドをノズル側から見た図を示している。本発明では、このようなマルチノズル型の液体噴射ヘッドを図9に示すように、噴射する溶液ごとに設け、キャリッジ搭載される。図10はその斜視図である。
図9、図10にはそれぞれのマルチノズル型の液体噴射ヘッドをA、B、C、Dと符号をつけているが、それぞれ各液体噴射ヘッドA、B、C、Dはノズル部分が各液体噴射ヘッドごとに離間して構成されるとともに各液体噴射ヘッドごとに異なる種類の導電性微粒子含有溶液あるいはナノ粒子含有溶液を噴射することができる。
本発明は、導電性微粒子含有溶液あるいはナノ粒子含有溶液などを噴射付与して、機能デバイスを製作するものであるが、単一の溶液のみを噴射するのみならず、この例のように、複数種類の溶液を噴射することができるので、たとえば、電極パターンを形成する溶液と機能デバイス形成する溶液を組み合わせたデバイス構造体を簡単に形成することができる。
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように本発明は、パターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行うものであるが、それらの形成に使用する溶液は、ナノ粒子含有溶液である。そして、いわゆるインクジェット噴射原理と同等の技術でその溶液を微細な吐出口から噴射して、基板上にパターン形成する技術に関するものである。しかしながら従来インクジェット記録分野で使用しているインクでは染料が溶液中に溶解しているのに対して、本発明で使用する溶液はナノ粒子が溶液中に分散しているだけなので、目詰まりが起こりやすい。
さらに本発明では、必要とされるパターンあるいはデバイスの用途から、従来にはない微細な吐出口径、例えば、吐出口径がΦ20μm以下(面積でいうならば約300μm2以下)であるような噴射ヘッドを使用しなければならず、この目詰まりは大変深刻な問題である。
ところで目詰まりとは、微細な吐出口から溶液が噴射するという原理そのものに由来するものである。つまり、吐出口が微細であるがゆえに生じるものである。よってその吐出口の大きさと、いわば溶液中の異物とでもいうべきナノ粒子の大きさには密接な関係がある。
本発明はこの点に鑑み、吐出口の大きさとナノ粒子の大きさに着目し、目詰まりの生じにくさとそれらの関係を見い出したものである。前述のように本発明においては、通常、粒径が0.0005〜0.2μm(0.5〜200nm)、好ましくは0.0005〜0.05μm(0.5〜50nm)の微粒子を含有した溶液が使用される。
微粒子はこのように微細であるが、一般に最終的な微粒子含有溶液として処方するプロセスを経た場合、この微粒子は凝集を起こし、0.05〜5μmの大きさのクラスター状(別の表現をするならば葡萄の房状)になる。もともと1個で独立して存在していた微粒子が、上記プロセスを経た後に100個ないし1000個が単純に直線状(一列)につながったと考えると、その長さは、0.05〜5μm、ないし0.5〜50μmとなり、ノズル目詰まりに影響を及ぼしかねない大きさとなる。
実際には、そのように直線状(異方的)につながるだけではなく、クラスター状凝集体になり、数的には、数100個〜数1000個の顔料が等方的に集まるものと考えられる。これらが、微細な吐出口(ノズル)を通過する際、そのようにクラスター状凝集体になった微粒子凝集体はその大きさにもよるが、本発明のような溶液噴射型製造装置に適用した場合、溶液中の微粒子凝集体が吐出口の目詰まりを生じせしめることが予測される。
では実際には、何個の微粒子が集まって凝集し、吐出口の目詰まりを生じせしめるのであろうか。本発明ではこれを実験的に調べることにした。
本発明者はこの点について、0.05μmの微粒子が400個が一列につながった場合を想定した。この場合は最大20μmの長さとなり、そのような大きさのものが吐出口近傍に存在したら、吐出口の目詰まりを生じせしめる可能性があると考え、吐出口径がΦ20μm以下の場合に、目詰まりがどのような条件において生じるかを実験によって見出した。
具体的にはナノ粒子径を変えた溶液を調合し、吐出口の大きさがわかっている噴射ヘッドを使用し、一定時間液滴噴射を行った後、一定時間放置し、液滴噴射を再開し、吐出口の目詰まりの有無を調べた。その場合、吐出口の完全閉塞だけではなく、部分的な目詰まりおよびそれに至る事前の兆候(わずかな目詰まり)も目詰まりとみなしてテストした。
使用した噴射ヘッドは、図5、図6に示したようなピエゾ素子を液滴吐出の原動力とするものである。すなわち電気−機械変換素子であるピエゾ素子の機械的変位を液室の振動板の変位とし、その変位作用力で、微細な吐出口から液滴を噴射するものである。
なお、図には示していないが、ノズル1面に別途ノズル孔を穿孔したノズルプレートを設けた構造とした噴射ヘッドを使用した。またそのノズル数も、図では簡略化した7ノズルの例を示しているが、実際に使用したのはノズル(吐出口)の数が64個で、その配列密度が100dpiのものである。液滴噴射の駆動電圧は20V、駆動周波数は10kHzとした。なお、噴射ヘッドはH1〜H4まで用意した(それぞれの吐出口径をH1=Φ20μm、H2=Φ15μm、H3=Φ10μm、H4=Φ5μmとした)。また、そのノズルプレートはNiのエレクトロフォーミングによって形成したものであり、吐出口部分の板厚は、全て25μmとした。
使用した溶液は、以下のようにして製作した。すなわち、硝酸銀に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながらジメチルアミノエタノールを添加し、3分で金属イオンを還元し、平均粒径0.5μm(500nm)以下のAg微粒子を析出させた。その後、限外ろ過膜により、塩素イオンや硝酸イオンなどを除去し、濃縮・乾燥することにより濃厚なAg微粒子含有溶液を得た。
さらにこのAg微粒子含有溶液をアセトンに溶解させ、さらに撹拌しながらアルカノールアミンを添加し、Ag微粒子を重合体中に分散した形で油相側に析出させた。これを濃縮・乾燥させた濃厚なAg微粒子含有溶液を水、アルコールならびにエチレングリコールの混合溶媒に溶解・混合させて噴射溶液とした。なお、Ag微粒子を大きさを変えた溶液を製作するために、遠心分離機を使用し、Ag微粒子の平均粒子径が0.0001μm〜0.5μmのものまで用意した。ただし平均粒子径が0.0003μm以下のものは、作ってはみたものの、安定したものはできなかったので評価はできなかった。なお各溶液のAg微粒子の含有量は10重量%、溶液中の樹脂分含有量は20重量%とした。またエチレングリコール添加量を調整し、各溶液の粘度は20センチポイズに統一した。
テストはAg微粒子径の異なる各溶液を吐出口径の異なるH1〜H4と組み合わせて、10分間連続して液滴噴射を行った後、温度40℃、湿度30%の雰囲気中で10時間放置し、その後噴射を再開し、目詰まりの発生状況を調べたものである。結果を表1〜表4に記す。
表1はヘッドH1(吐出口径Do=Φ20μm)の場合、表2はヘッドH2(吐出口径Do=Φ15μm)の場合、表3はヘッドH3(吐出口径Do=Φ10μm)の場合、表4はヘッドH4(吐出口径Do=Φ5μm)の場合を示す。判定の○は実用的に良好に使用できる場合、△は使うことは可能であるがあまり好ましくない場合、×は全く実用的ではない場合を示している。
以上の結果より、吐出口径がΦ5μm〜Φ20μmの噴射ヘッドを用いた場合、Ag微粒子径Dpと吐出口径Doとは、Dp/Do≦0.01の関係を満足するようにすれば目詰まりのない安定した液滴噴射が得られることがわかる。なお、Dp/Doの下限値であるが、このように大変微細な微粒子を安定して、溶液中に分散することを考えると、Ag微粒子径Dpが0.0003μm以下は困難である。また、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッド全てに安定して液滴噴射させられるようにするには、余裕をみてDp/Doの下限値を0.0001にすればよい。すなわち、Ag微粒子径Dpと吐出口径Doとは、0.0001≦Dp/Do≦0.01の関係を満足するようにすれば、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドを使用した液滴噴射によるパターン形成、あるいはデバイス形成を行うことができる安定した分散液を製造でき、吐出口(ノズル)の目詰まりも生じないようにすることができることがわかる。
なお、吐出口径がΦ20μmより大きい場合、例えばΦ100μmというような場合については、微粒子が凝集しても吐出口が充分に大きいため問題は生じない。事実ここでは、データを掲載しないが、吐出口径がΦ100μmの場合においては、0.0005〜0.05μmの微粒子含有溶液を使用した場合、目詰まりの問題は生じなかった。
実験では、丸形状の吐出口(ノズル)を使用したが、他の形状の場合は、その面積比較をすればよく、たとえば18μm×18μmの矩形吐出口の場合は、本発明の丸形状のΦ20μmノズルとほぼ同等である。言い換えるならば、本発明は面積がほぼ300μm2以下のノズルを使用した噴射ヘッド、またその下限値はほぼ20μm2のノズル(吐出口径がΦ5μm)で、このような溶液を噴射してパターン形成、あるいはデバイス形成を行う場合に適用されるものである。
また実験はピエゾ素子を液滴吐出の原動力とした噴射ヘッドを使用したが、本発明の製造装置に使用される噴射ヘッドはこれに限定されることなく、2枚の電極間の静電力を原動力とし、液室の振動板の機械的変位を発生させる静電方式なども、良好に使用できる。これらは、液体に機械的作用力を付与するものであるため、使用する液体が制限を受けることが少ないという利点がある。また、この機械的変位は、アナログ的に変位させることができるので、駆動波形をコントロールすることにより、飛翔滴の形状も丸い形状とすることができる。たとえば本発明では、駆動波形を制御し、丸い形状に近い飛翔滴を形成し、良好なドットパターンを得ているが、これについては後述する。
さらにこの微粒子含有溶液を微小吐出口から噴射するという原理そのものに起因する目詰まりの課題は、後述するようなサーマルヘッド等を利用して溶液中に熱によって瞬時に発生させた膜沸騰気泡の成長作用力を利用して微粒子含有溶液を微小吐出口から噴射するという原理にもとづく噴射ヘッドにも共通の課題であり、膜沸騰気泡利用の噴射ヘッドにも上記結果はそのまま適用することができる。あるいは連続的に噴射する液滴に電荷を付与し、その電荷量に応じて液滴を偏向させる荷電制御方式(連続流方式)等も使用できる。
なおサーマルヘッド等を用いて膜沸騰気泡を発生させる方式は熱を利用するため、使用する溶液が熱劣化することがあるので、ある程度使用できる溶液に制限を受ける。
一方で、サーマルヘッド等を用いて膜沸騰気泡を発生させる方式はその構造上、発熱体部や、吐出口部の高密度、高集積配列が可能で、600dpi〜1200dpiあるいはそれ以上の配列密度で、かつ吐出口(ノズル)数も500〜10000個というものが容易に実現でき、生産効率の高い製造装置に適している。
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように本発明は微粒子含有溶液が微小な吐出口から目詰まりを起こすことなく安定した液滴噴射するようにしたものであるが、ここでは液滴噴射後に基板上に液滴が付着し、良好なパターン、あるいはデバイスを形成するにはどのようにしたらよいのかを検討した結果を示す。
前述のように本発明では、噴射ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながらパターン、あるいは機能デバイス群の形成面に対して平行にX、Y方向の相対移動を行いつつ、パターン、あるいは機能デバイス群を形成する。すなわち、基板14に対して、噴射ヘッドユニット11が基板面に対して平行移動する、もしくは噴射ヘッドユニット11に対して基板14が平行移動する。
その際、パターン、あるいは機能デバイス群を形成するための微粒子含有溶液の噴射を行う毎に相対移動を止めて噴射を行うと高精度なパターン、あるいは機能デバイス群を形成することが可能である。しかし生産性が著しく低下するので、その相対移動を止めることなく、順次溶液の噴射を行うようにしている。その場合、その相対移動速度(例えば図2のキャリッジ12のX方向移動速度)は、単に生産性向上だけで決定されるべきではなく、高精度なパターン、あるいは機能デバイス群を形成するという観点からも検討されなければならない。
本発明ではこの点に関して鋭意検討した結果、このような微粒子含有溶液の噴射を行う場合、その噴射飛翔速度と前記相対移動速度との関係を最適化することが必要であることに気がついた。このように噴射ヘッドユニット11を基板14に対して一定の距離を保ちながらX、Y方向の相対移動を行いつつ、微粒子含有溶液の噴射を行い、パターン、あるいは機能デバイス群を形成する場合には、溶液の液滴は前記相対速度と噴射飛翔速度の合成ベクトルの速度で基板14上に付着、形成される。そしてその位置精度については、基板14と噴射ヘッドユニット11の溶液噴射口面の距離と、前記合成ベクトルの速度を考慮し、噴射のタイミングを適宜選ぶことにより、その狙いの位置に液滴を付着させることができる。
しかしながら、たとえ狙いの位置に付着させることができたとしても、もし、前記相対速度が速すぎる場合には、その相対速度に引きずられて付着液滴が基板14上で流れ、良好な形状でパターン、あるいは機能デバイス群を形成できなくなる。本発明はこの点について検討したものである。以下に検討結果の1例を示す。この例は、図2のような装置を用い、キャリッジ12のX方向移動速度、ならびに噴射ヘッドユニット11の噴射速度を変えて、基板14上で良好な液滴付着ができ、良好なパターン形成ができるかどうか調べたものである。
図11にテストに使用したパターンの例を示す。ここでは、Ag微粒子含有溶液を噴射させ、2列の近接した素子電極間(ITO透明電極82間)に、前記溶液によるドットパターン83をつなぎ合わせた配線パターンを形成し、そのパターンの形成状況を評価したものである。評価は、形成後のパターンを顕微鏡下で観察し、良/不良(○/×)を判断した。図11(A)は良(○)であり、図11(B)のように、個々のドットパターンが良好な丸い形状にならず、長円形になったり、基板上における着弾位置も本来の狙いの位置から外れたりして、隣のドットパターンと接触したりするようなものは不良(×)である。
また、これは目詰まりの初期段階や吐出口へのキズ発生等に起因する噴射性能の劣化によって生ずることが多いが、微小滴が周囲に飛散したりするものも不良(×)である。
このような形状の評価とあわせて、上下のITO透明電極82間の抵抗値を測定し、ドット位置精度不良による断線あるいは隣(左右)のドットとの接触による抵抗値変動などを評価した(○:狙い通りの抵抗値、×:狙いから外れた抵抗値)。
実験条件の詳細を以下に示す。使用した基板はITO透明電極82付きガラス基板であり、前述のAg微粒子含有溶液(ここでは、微粒子径が0.01μmのものを使用)を前述のH4噴射ヘッド(ノズル径Φ5μm)と組み合わせて、図11のようなドットパターン83を形成した。なお、図11は簡略化のため、1対のITO透明電極82間を4ドットで埋めるように形成した図を示しているが、実際には、縦方向に1列で、約Φ8μmのドットを約4μmピッチで約1000個打ち込み、上下のITO透明電極82間(電極間距離4mm)をつないでいる。また隣に中心間距離を12μmとして、同様のITO透明電極82およびITO透明電極82間をつなぐ同様のパターンを形成している。
使用した噴射ヘッドはH4噴射ヘッドであり、ノズル(吐出口)の数が64個で、その配列密度が100dpiのものである。噴射ヘッドと基板は相対運動(ここでは、基板固定、噴射ヘッドをキャリッジ走査)を行い、その制御をμオーダーで制御し、また噴射のタイミングをコントロールし、上記のように約4μmピッチによるドット付着、ならびに12μmの中心間距離を維持したパターン形成を行った。
液滴噴射の駆動電圧は噴射速度を変えるためにピエゾ素子への入力電圧を14Vから21Vまで変化させている。また駆動周波数は10kHzとした。なおこのようなピエゾ素子を利用した噴射ヘッドでは、ピエゾ素子への入力電圧を変えて噴射速度が変えられるが、同時に噴射滴の質量も変化するので、駆動波形(引き打ちも含めた立ち上がり波形ならびに立下がり波形)を制御して、噴射滴の体積がいつもほぼ一定(1plにした)になるようにし、噴射速度のみを変えるようにした。
また滴飛翔時の滴の形状を、素子形成と同じ条件で別途噴射、観察し、その形状が、基板面に付着する直前(今本発明例では3mm)ではほぼ丸い滴になるように駆動波形を制御して噴射させた(図12)。なお完全に丸い球状が得られず、飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形を制御するだけで容易にその直径の3倍以内の長さにはなる(l≦3d)ようにできた(図13)。またその際、後述する(図14)ように、熱を利用して気泡を発生させ、その気泡の成長作用力で溶液を噴射飛翔させた場合によく見られるような飛翔滴後方に複数の微小な滴(サテライト微小滴81)を伴うことのない駆動条件(駆動波形)を選んだ。以下に結果を示す。
以上の結果より、キャリッジのX方向移動速度が、噴射速度以上であると、良好なパターン形成できず、また、電極間の抵抗値も狙いからはずれたものになることがわかる。言い換えるならば、本発明のように、ピエゾ素子を利用した噴射ヘッドを利用した装置でナノ粒子含有溶液を基板上に液滴付与し、乾燥させてパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行う場合、噴射ヘッドから噴射される液滴の速度は、キャリッジのX方向移動速度より速くしなければならないことがわかる。
なおこの例は、噴射ヘッドをキャリッジ走査した例であるが、図3のように噴射ヘッド(噴射ヘッドユニット11)を固定し、基板を移動させる場合にも適用される。すなわち、噴射される液滴の速度は、噴射ヘッドと基板の相対移動速度より速くしなければならないということである。
さらに付言すると、今回の滴飛翔条件は、前述のように飛翔滴後方に複数の微小な滴(サテライト微小滴81)を伴う(図14)ことのない駆動条件(駆動波形)とした。その結果、これら複数の微小な滴が、不必要なところに付着するということが全くなく、大変良好なパターン形成を行うことができた。
また飛翔滴が飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形制御により、飛翔滴の長さをその直径の3倍以内の長さになる(l≦3d)ようにした(図13)ので、形成されたドットも真円に近い形状となり、良好なパターン形成を行うことができた。
なお、インクジェット噴射原理はこの例のようにピエゾ素子を液滴吐出の原動力とし、機械的作用力によるものの他に、熱を利用して気泡を発生させ、その気泡の成長作用力で溶液を噴射飛翔させるものがある。図14はそのような場合に見られる飛翔時の溶液の形状を示したものである。
図14と前述のようなピエゾ素子を液滴吐出の原動力とし、機械的作用力によって噴射飛翔させた場合に見られる図12および図13のような飛翔形態の違いは以下の通りである。すなわち図14の場合が、溶液の一部を瞬時(数μsの間)に300〜400℃に加熱させ、膜沸騰気泡を発生させ、その気泡の瞬時(数μsの間)の成長、圧力上昇(作用力)を利用して溶液を噴射するために、ピエゾ素子を液滴吐出の原動力とし、機械的作用力で噴射させた場合(図12および図13の場合)よりも噴射圧力が高く、噴射飛翔速度も速いという点である。
その結果、図14に示すように、飛翔時に、溶液の飛翔形状が飛翔方向に細長柱状に伸び、後方に複数の微小な滴(サテライト微小滴81)を伴って高速で飛翔するという特徴を持っている。たとえば、溶液飛翔時の形状は、通常安定した膜沸騰気泡を発生させて飛翔させた場合、飛翔方向に伸びた細長柱状の長さlは、その直径dの5倍以上の長さとなり、またその速度は、ほぼ5m/s〜20m/sとなって飛翔する。
その結果、噴射が安定し噴射された溶液の基板上への着弾精度が高いという利点があるが、一方で、噴射ヘッドと基板の相対移動速度を適切に選ばないと、飛翔方向に細長柱状に伸びた後方部の溶液や、後方に連なった複数の微小な滴(サテライト微小滴81)が、良好な丸いドット形成を妨げることにもなる。
本発明ではこの点に関しても、前述のピエゾ素子を液滴吐出の原動力とし、機械的作用力による噴射ヘッドで検討した結果と同様の検討を行った。その結果、このような熱を利用して気泡を発生させ、その気泡の成長作用力で溶液を噴射飛翔させる噴射ヘッドを使用した場合には、その噴射速度と前記相対移動速度との間に特有の最適化すべき関係があることを見出した。
このような熱を利用して気泡を発生させ、その気泡の成長作用力で溶液を噴射飛翔させる噴射ヘッドを使用した場合には、またその噴射飛翔速度は、ほぼ5m/s〜20m/sという具合に高速となって飛翔するため、安定した飛翔となる。すなわち、安定飛翔の結果、着弾の精度は高いと考えられる。
しかしながら、着弾の精度は高いと考えられるが、飛翔時に溶液が飛翔方向に伸びた細長柱状となっているため、噴射ヘッドと基板との相対移動速度が速すぎる場合には、その相対速度に引きずられて付着溶液が基板14上で流れ、良好な丸いドット形状とならず、良好なパターン、あるいは機能デバイス群を形成できなくなる。また、後方に連なった複数の微小な滴(サテライト微小滴81)が、本来付着すべき位置から外れた位置に、ランダムに散らばった状態で付着し、良好な丸いドット形成の妨げ、機能デバイス性能の低下を引き起こす場合がある。本発明はこの点について検討したものである。
以下に検討結果の1例を示す。噴射ヘッドを、熱を利用して気泡を発生させ、その気泡の成長作用力で溶液を噴射飛翔させるものとした以外は、前述のピエゾ素子を液滴吐出の原動力とした噴射ヘッドを用いて検討した装置、条件等と同じである。すなわち、図2のような装置を用い、キャリッジ12のX方向移動速度、ならびに噴射ヘッドユニット11の噴射速度を変えて、基板14上で良好な溶液付着ができ、良好なパターン形成ができるかどうか調べたものである。
評価も同様に、形成後のパターンを顕微鏡下で観察し、良/不良(○/×)を判断したものであり、図11(A)の場合は良(○)、図11(B)のように個々のドットパターンが良好な丸い形状にならず長円形になったり、基板上における着弾位置も本来の狙いの位置から外れたりして、隣のドットパターンと接触したりするようなものは不良(×)である。さらに、サテライト滴に起因する微小な滴84が散在しているようなものも不良(×)とした。
このような形状の評価とあわせて、上下のITO透明電極82間の抵抗値を測定し、ドット位置精度不良による断線あるいは隣(左右)のドットとの接触による抵抗値変動なども同様な評価をした(○:狙い通りの抵抗値、×:狙いから外れた抵抗値)。
実験条件の詳細を以下に示す。使用した基板はITO透明電極82付きガラス基板であり、前述のAg微粒子含有溶液(ここでは、微粒子径が0.01μmのものを使用)を図7に示した噴射ヘッド(ただし、Φ5μmのノズルを設けたNiエレクトロフォーミング形成のマルチノズルプレートを別途設けたもの)と組み合わせて、図11のようなドットパターン83を形成した。なお、図11は簡略化のため、1対のITO透明電極82間を4ドットで埋めるように形成した図を示しているが、実際には、縦方向に1列で、約Φ8μmのドットを約4μmピッチで約1000個打ち込み、上下のITO透明電極82間(電極間距離4mm)をつないでいる。また隣に中心間距離を12μmとして、同様のITO透明電極82およびITO透明電極82間をつなぐ同様のパターンを形成している。
使用した噴射ヘッドは前述のような噴射ヘッド(図7は、簡略化した4個のノズルを示している)であるが、ノズル(吐出口)数を64個としている。またその配列密度が400dpiのものである。発熱体サイズは10μm×40μmであり、その抵抗値は102Ωである。ヘッドの駆動電圧は11V、パルス幅は2μs、駆動周波数は14kHzとした。噴射滴の体積はほぼ1plである。
このような条件で、ガラス基板上に前述のようなパターン(図11)を形成し、形成後のパターン評価を行うとともに、それと同じ条件で、別途噴射実験を行い、吐出口から3mm先の溶液の噴射状況を観察した。これは図11のテストパターンを基板と吐出口間距離を3mmとして製作したからである。飛翔形態は図14に示したように、飛翔方向に非常に細長く伸びた柱状(l=5d〜20d)であった。また飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴ったような状態であった。以下に検討結果を示す。
以上の結果より、キャリッジのX方向移動速度が、噴射速度の1/3を超えると、良好な素子が形成できないことがわかる。なおこの例は、噴射ヘッドをキャリッジ走査した例であるが、図3のように噴射ヘッドを固定し、基板を移動させる場合にも適用される。すなわち、噴射ヘッドと基板の相対移動速度は、噴射される溶液の噴射飛翔速度の1/3以下にしなければならないということである。
次に本発明のさらに別の特徴について説明する。図15は、本発明の原理によって形成されるパターン配線基板のパターン配線の1例である。基板上に先に形成されている矩形あるいは矩形の組み合わせによって構成された端子パターン(電極パターン)91に、あとから微粒子含有溶液を噴射し、配線パターン92を形成した例である。なおこの例では、図が複雑になるのを避けるために、配線パターン92のドットが隣接斜め方向においてちょうど互いに接触するように配置しているが、実施には互いにもう少し高密度に配置し(=互いのドットの重なり部分を多くとるように配置し)、配線パターン部分に非被覆部が生じないようにする。
図16は、本発明の原理によって形成されるデバイス基板の1デバイスの例である。基板上に先に形成されている矩形あるいは矩形の組み合わせによって構成された1対の素子電極(電極パターン)93に、あとから微粒子含有溶液を噴射し、デバイスを形成した例である。
しかしながらここで1つ問題がある。それは、回路パターンあるいは各種デバイスとして完成した後に使用する際に発生する端子パターン91や素子電極(電極パターン)93部における異常放電である。図15、図16を用いて説明する。
本発明では、図15、図16のように複数(この例は2)個の端子パターン(電極パターン)91間に金属微粒子材料を含有する溶液のドットパターンによって配線パターン92を形成したり、対向する素子電極93間に金属微粒子材料を含有する溶液のドットパターン94によって各種電子デバイスを形成するが、通常、これらの端子パターン91や素子電極(電極パターン)93はAl、Au、Cu等の薄膜やITO薄膜で形成され、フォトリソグラフィー、エッチング等によって、所望のパターン形状にされる。通常は矩形パターンもしくは矩形パターンの組み合わせによって構成されることが多い。
これはこのような電極パターン91,93をフォトリソグラフィー技術によって形成する際のフォトマスクの形状に依存して、矩形形状にされる(矩形が最もコスト的に製作しやすい)わけであるが、図15、図16に示すように電極パターン91,93のコーナー部91C,93Cが尖っているために、その部分で電界集中が生じる。その結果、両電極間に印加して使用する際に、この電界集中部において異常な放電が生じ、良好な素子性能が得られない、あるいはその部分において破損を生じたりするという不具合がある。
本発明ではこの点に鑑み、例えば図17、図18のように電極パターン91,93のコーナー部を面取り形状としている。この例は、機械図面で表示する際のc形状の面取りとしているが、r形状の面取りであってもいいのは言うまでもない。
このような形状は、電極パターン91,93をフォトリソグラフィー技術によって形成する際にフォトマスクの形状をそのようなコーナー部が尖った形状にならないようにすればよい。
なおその面取り部分の大きさであるが、通常はドットパターン径の1/2〜1/5程度、すなわちc2μm〜c5μm、あるいはr2μm〜r5μmとすれば、電界集中が生じない良好な電極パターンとすることができる。
本発明では、このように電極パターンの尖った部分をなくし、電界集中をなくすようにすることにより、回路パターンあるいは各種デバイスとして使用する場合に、異常放電がなく、また長期に使用しても安定した品質が得られるようになった。
次に本発明のさらに他の特徴について説明する。図19、図20は、前述の図15〜図18で説明した配線パターンあるいは電子デバイスと同等のものである。図15〜図18で説明したものは、電極パターン(端子パターン91、素子電極93)を形成するのに、基板上にあらかじめAl、Au、Cu等の薄膜を形成し、フォトリソグラフィー、エッチング等によって、所望のパターン形状にしたものであるが、図19、図20に示したものは、この電極パターン91,93を本発明の溶液噴射原理によって形成したものである。
すなわち、Ag等の導電性材料の微粒子を含有した溶液を使用し、前述のようなパターン配線あるいはデバイスパターン形成と同じように、電極パターン91,93をドットの組み合わせとして形成したものである。このようにすることのメリットは、電極形成においても、図2〜図4で説明した本発明の製造装置が使用できる点の他に、前述の異常放電の問題を解決できる点にある。図19、図20に示すように、電極パターン91,93を本発明の金属微粒子を分散させた溶液噴射によるドットパターンによって形成したものであれば、ドットパターンの外形そのものが丸い形状になっていて尖った部分がないので、自動的に面取り形状とすることができる。
なお、図19、図20に示したものは、電極パターン部91,93のドット径が配線パターン92あるいは、デバイスパターン(ドットパターン94)のドット径より大きなものとしたが、これは同じ吐出口径をもつ同じ噴射ヘッドを使用して、ドットパターンが同じ大きさになるようにしてもよい。
ところで、図15に示したドットの組み合わせによる配線パターン92は、縦長方向に伸びた帯状パターンとして形成されるかあるいは、図16のデバイスにおいても、ドットパターン94は帯状パターンとして形成されるが、このような帯状パターンが伸びている方向は、前述の図2〜図4で説明したX方向あるいはY方向、すなわち基板14と噴射ヘッド11との相対移動方向(噴射ヘッドを搭載したキャリッジ12の移動方向、あるいは基板14の移動方向)と平行にすることにより、溶液を噴射制御するためのパターン情報およびその制御を単純化でき、高精度な各パターン形成を低コストで実現できる。
また同様にこれらの方向、すなわちパターンが伸びている方向は、使用する矩形基板の各辺の方向、あるいは形成されるデバイス群のマトリックス配列の方向と平行にすることにより、位置決め、あるいは各パターン形成を高精度にできる。
次に上記不具合を解決する他の例について説明する。
本発明ではこの点に鑑み、例えば図21、図22のように電極パターン91,93のコーナー部が露出しないように、配線パターン92あるいはデバイスパターンを形成するドットパターン94によって被覆するようにしている。なお図21の配線パターン92の例は、ドットパターン列が縦に4列とした例を示したが、図23のように、1列であってもいいのは言うまでもない。また、図22のデバイスの場合も同様で、図24のように、1ドットだけであってもよい。
要するに、電極パターン91,93の尖った部分をドットパターンによって被覆し、その部分が表面に露出しないようにすれば、電界集中による異常放電を防止でき、あるいは破損を防止でき、回路パターンあるいは各種デバイスとして長期に使用しても安定した品質が得られる。
次に本発明のさらに他の特徴について説明する。図25は図1(B)の配線パターン1の一部(角部)を拡大したものである。本発明では上記課題に関連し、このように配線パターン1の角部(パターンが直角に曲がる領域の外側領域)1Cが尖らないようにしている。
図26〜図29を用いてより具体的に説明する。図26は、本発明の原理によって形成されるパターン配線基板のパターン配線の1例である。この例では、ドットパターンを組み合わせて、形成される配線パターン92が途中で、90度曲げられるようにして形成されている。すなわち、このような配線パターン92が直交する2方向(図中矢印)のそれぞれに平行方向に帯状のパターンとされ、かつ配線パターン92の配置の都合によって、その方向を曲げて配置されている。その場合、図中のA部のように、配線パターン92が直交する2方向に曲がる領域の外側領域を曲線形状となるようにしている。このようにして配線パターン92の曲がった角部をドットパターンを形成することにより尖らないようにすることができ、電界の集中を避けることができる。
図27は、配線パターン92をドットパターンを1列にして形成した場合であるが、この場合も、図中のA部のように、配線パターン92が曲げられる角部をドットパターンによって尖らないようにすることができ、電界の集中を避けることができる。
図28は、本発明の原理によって形成されるデバイス基板の1デバイスの例である。基板上に先に形成されている矩形あるいは矩形の組み合わせによって構成された1対の素子電極(電極パターン)93に、あとから微粒子含有溶液を噴射し、デバイスを形成した例である。この場合も所望のデバイス形状とするために、ドットパターン94(デバイスパターン部)のパターンが帯状に形成されるとともに、その帯状パターンを途中で、90度曲げられたようなパターンとしている。そして、図中のB部のように、ドットパターン94が直交する2方向(図中の矢印方向)に曲がる領域の外側領域を曲線形状となるようにしているが、このようにしてパターンの曲がった角部をドットパターンを形成することにより尖らないようにすることができ、電界の集中を避けることができる。
図29は、デバイスパターンをドットパターン94を1列にして形成した場合であるが、この場合も、図中のB部のように、パターンが曲げられる角部をドットパターンによって尖らないようにすることができ、電界の集中を避けることができる。
ところで、図15、図21、図23、図26、図27に示したドットの組み合わせによる配線パターン92は、縦長方向に伸びた帯状パターンとして形成される、あるいは図16、図22、図28、図29のデバイスにおいても、ドットパターン94は帯状パターンとして形成されるが、このような帯状パターンが伸びている方向は、前述の図2〜図4で説明したX方向あるいはY方向、すなわち基板14と噴射ヘッド11との相対移動方向(噴射ヘッドを搭載したキャリッジ12の移動方向、あるいは基板14の移動方向)と平行にすることにより、溶液を噴射制御するためのパターン情報およびその制御を単純化でき、高精度な各パターン形成を低コストで実現できる。
また同様にこれらの方向、すなわちパターンが伸びている方向は、使用する矩形基板の各辺の方向、あるいは形成されるデバイス群のマトリックス配列の方向と平行にすることにより、位置決め、あるいは各パターン形成を高精度にできる。
次に本発明のさらに他の特徴について説明する。本発明の機能を付与された基板は、無数の微細微粒子、ナノ微粒子を溶液中に分散させてなる微粒子含有溶液をインクジェットの原理で空中を飛翔させ、基板上に液滴として付与して製作されるものであるが、高精度かつ高品位な機能を付与された基板を製作するためには、基板上にナノ微粒子含有溶液を噴射、付与して、微細なパターン形成を行う際の基板の表面粗さとナノ微粒子の大きさを最適化しておく必要がある。
とりわけ本発明では前述のように、微粒子含有溶液の付与にインクジェット原理を利用しているが、本発明に適用される基板は、紙のようにインクの溶媒を吸収するといった吸液作用がない基板であるため、インクジェット記録装置と同じ考えが通用しない。
具体的には本発明においては、噴射付与された微粒子含有溶液は、基板上にメニスカス状に残留する。そして一定時間経過後溶液分が蒸発、乾燥して、固形分が基板上に残る。この場合、本発明の基板はインクジェットの紙の繊維のような吸液作用がないため、良好なドットパターン形成において、紙にインクが付着する原理をそのまま踏襲して考えることはあまり意味がない。
本発明ではこれらを考慮して、良好なパターンを形成するために基板の表面粗さについて検討するべきであると考えた。
たとえば、基板の表面粗さというのは、その表面の凹凸であるが、図30のように、この凹凸からはみ出すような大きさの粒子85が、基板の表面86に付着すると、良好なパターンあるいはデバイスが得られないであろう。一方で、図31のように、粒子85が基板表面86の凹凸以下の大きさの粒子であれば、良好なパターンあるいはデバイスが得られるであろう。本発明ではこの点に鑑み、あらかじめ表面粗さのわかっている基板上に、サイズの異なる微粒子を含有させた溶液によって、パターンを形成し、その形成されたパターンの良否を評価した。
実験は、パイレックス(R)ガラスを研摩し、その表面粗さが0.01s〜0.02sとなるようにし、その研摩された基板上に前述のAg微粒子含有溶液(ここでは、微粒子径が0.0005μm〜0.2μmのものを使用)を前述のH4噴射ヘッド(ノズル径Φ5μm)と組み合わせて噴射させ、ドットをつなぎあわせたパターンを形成し、そのパターンの滑らかさを顕微鏡下で観察し、官能評価し、良〜可〜不良(○〜△〜×)を判断した。
実験条件の詳細を以下に示す。パターンは縦方向に1列で、約Φ8μmのドットを約4μmピッチで約100個打ち込んだものである。
使用した噴射ヘッドはH4噴射ヘッドであり、ノズル(吐出口)の数が64個で、その配列密度が100dpiのものである。噴射ヘッドと基板は相対運動(ここでは、基板固定、噴射ヘッドをキャリッジ走査)を行い、その制御をμオーダーで制御し、また噴射のタイミングをコントロールし、上記のように約4μmピッチによるドット付着を行った。
液滴噴射の駆動電圧はピエゾ素子への入力電圧を15Vとし、また駆動周波数は10kHzとした。噴射滴の体積がいつもほぼ1plである。また滴飛翔時の滴の形状を、パターン形成と同じ条件で別途噴射、観察し、その形状が、基板面に付着する直前(今本発明例では3mm)にほぼ丸い滴になるように駆動波形を制御して噴射させた(図12)。なお完全に丸い球状が得られず、飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形を制御するだけで容易にその直径の3倍以内の長さにはなる(l≦3d)ようにできた(図13)。またその際、飛翔滴後方に複数の微小な滴(サテライト微小滴81)を伴うことのない駆動条件(駆動波形)を選んだ。
前述のようにAg微粒子含有溶液は、微粒子径が0.0005μm〜0.2μmまで異なるものをそれぞれ準備して使用した(溶液No.は共通である)が、微粒子径が0.02μm以上の場合には、ノズル目詰まりが発生し始めるので、形成したパターンのうち、目詰まりが生じなくて、良好にパターン形成されたもののみを選別して評価を行った。以下に結果を示す。
以上の結果より、溶液に含有される微粒子は、基板のパターンが形成される面の表面粗さ以下の大きさとすることにより、滑らかな良好なパターンが形成できることがわかる。一方で、微粒子の大きさをそれより大きくすると、パターン形状の滑らかさが損なわれることがわかる。
次に本発明のさらに他の特徴について説明する。本発明の機能を付与された基板は、無数の微細微粒子、ナノ微粒子を溶液中に分散させてなる微粒子含有溶液をインクジェットの原理で空中を飛翔させ、基板上に液滴として付与して製作されるものであるが、高品位な機能を付与された基板を長期にわたって安定して製作するためには、その製造装置が安定して一定の性能を維持するものでなくてはならない。ここで一番重要な点は噴射ヘッドの長期性能安定性である。
前述のように本発明に使用する微粒子含有溶液は、液体に微粒子を分散させた溶液であるが、この微粒子は溶液中に分散している砥粒のような存在であり、この溶液を大量使用した場合、噴射ヘッドの溶液の通り道を損傷させたり、摩耗させたりするという問題がある。通り道の中でもとりわけ吐出口部(ノズル部)のキズや、摩耗は溶液の液滴噴射性能に影響を及ぼすため問題となる。
ところでこのキズや、摩耗は、2つの物体が互いにぶつかり合う、あるいはこすれあう際に生ずるものであるから、互いの物体の硬さを適切に選ぶことにより、解決できるものと考えられる。またキズについても、これが噴射ヘッドの液滴噴射性能に影響を及ぼすのは事実ではあるが、どのくらい影響を及ぼすのかは、キズの大きさと溶液の通り道の大きさとによって決まると考えられる。たとえば、内径Φ15mm〜Φ20mmの放水用のホースにナノメーターオーダーのキズがあったとしても、放水流量に多大な影響を及ぼすことはあり得ない。
本発明ではこれらの点を考慮しながら、吐出口部の材質の硬さと、微粒子の材質の硬さならびに吐出口部の大きさを鋭意検討したものである。
使用した噴射ヘッドは、前述のH1噴射ヘッド〜H3噴射ヘッドと同じものである。すなわち図5、図6に示したようなピエゾ素子46を液滴吐出の原動力とし、電気−機械変換素子であるピエゾ素子46の機械的変位を液室の振動板の変位として、その変位作用力で、微細な吐出口から液滴を噴射するものである。
なお、図には示していないが、ノズル一面に別途ノズル孔を穿孔したノズルプレートを設けた構造とした噴射ヘッドを使用している。またそのノズル数は64個であり、配列密度は100dpiである。
このような噴射ヘッドを使用し、一定時間溶液噴射を行うことにより、吐出口部(ノズル孔部)にキズが生じるかどうか、また、溶液滴吐出性能の劣化により、形成されるパターン形状(ドットパターンの形状良否)、パターン性能の劣化(抵抗値変化)が生じるかどうかを調べた。マルチノズルプレートは、材料およびノズル径(ここでは丸形状とした)を変えたものを準備した。パターン性能は、噴射初期に形成したパターンと一定時間噴射を行った後に形成したパターンの抵抗値の違いを調べた。
噴射ヘッドの駆動電圧は20V、駆動周波数は10kHzとし、100時間連続噴射を行い、噴射後の吐出口部分をSEM観察して、キズの有無を調べた。
吐出口径は、それぞれΦ20μm(H1噴射ヘッド)、Φ15μm(H2噴射ヘッド)、Φ10μm(H3噴射ヘッド)のものを用意した。
比較参考例として、吐出口径がΦ36μmのもの(参考ヘッド)も用意した。この場合は、吐出口の数が48個で、その配列密度が60dpiのものである。噴射ヘッドの駆動電圧は30V、駆動周波数は3.8kHzとし、260時間連続噴射を行った。
ノズルプレートの厚さは、H1噴射ヘッド、H2噴射ヘッドは30μmとし、H3噴射ヘッドは20μm、参考ヘッドは40μmとした。噴射時の液滴の速度は、いずれの噴射ヘッドの場合も約7m/sとした。
ノズルプレート材質はNiとオーステナイト系ステンレスSUS304とし、Ni材質のものはエレクトロフォーミング法でマルチノズルプレートを製作し、SUS304材質のものは、ステンレス箔に放電加工によってノズル孔を穿孔した。それぞれ硬度をビッカース硬度計で測定したところ、Ni材質の場合はビッカース硬度Hvが58〜63、SUS304材質のものはビッカース硬度Hvが170〜190であった。
使用した液体は、前述のように微粒子を水を主体とする分散媒に分散せしめてなる水性系溶液である。微粒子は以下の7種類(S1〜S7)である。それぞれ含有微粒子の元素名と、そのバルク状態におけるビッカース硬度Hvを示した。なおこのビッカース硬度Hvは、金属データブック(日本金属学会編、改定3版、出版:丸善)の値を掲載した。それぞれの溶液における微粒子含有量は約8%とし、また微粒子径は0.01μm〜0.02μmであった。
これらのサンプル溶液および噴射ヘッドを使用して評価した結果を以下に示す。表中、キズの○は100時間噴射後に、目立ったキズが確認できなかったもの、×はノズル形状、あるいは寸法にまでも影響をおよぼすような多数のすりキズが存在したものである。パターン形状の○は100時間噴射後に、パターンを作製した際の、ドットパターンが狙いの位置(一対の電極間)に良好な丸い形状で形成されたもの(図11(A))であり、×は位置がやや狙いの場所から外れていたり、形状がいびつであったり、微小滴が周囲に飛散していたりしたもの(図11(B))である。パターン性能の○×は、噴射初期に形成したパターンと一定時間噴射を行った後に形成したパターンの抵抗値の違いであり、○は100時間噴射後にパターンを作製した際の抵抗値が、噴射初期に形成したパターンとほとんど同じであったもの(実用レベル)であり、×は100時間噴射後にパターンを作製した際の抵抗値が異常に大きかったり、あるいは短絡していた場合(非実用レベル)である。なお、参考ヘッドの場合の噴射時間は260時間である。
以上の結果より、含有微粒子の硬度が、吐出口材質より大であるもの(S3、S6)の場合、吐出口に傷がつくことがわかる。またそれによって形成されたパターン形状は悪く、パターン性能も悪いことがわかる。よって、本発明のような製造装置によって、このようなパターンを形成する場合には、微粒子は吐出口を構成する部材よりやわらかい材料を選ぶ必要があることがわかる。
なおそのキズに関しては、吐出口の大きさとの関係で、パターン形状が悪くならないものもある。参考ヘッドのように、吐出口径がΦ36μmもある(=面積が約1000μm2)ような場合には、キズはついても吐出口径が大きいために、噴射性能を劣化に至らしめるほどのキズではなく、十分に使用可能なパターン形状が得られている。
一方、吐出口径がΦ20μm以下(=面積が314μm2以下)の場合のように、面積比較で参考ヘッドの1/3以下のような場合には、同じようにキズがついても、吐出口径との比較において与える影響は大であり、良好なパターン形状、パターン性能が得られないことがわかる。これは前述の放水用のホースの論理で説明できる。
つまり、それほど微細なパターンを形成しないのであれば、キズの問題はパターン性能に影響を与えないので気にすることはないが、本発明の実験によれば、吐出口径Φ20μm以下の液滴噴射ヘッドにより、目詰まりが生じないように微粒子含有溶液の微粒子径を0.0005〜0.2μm(0.5〜200nm)、好ましくは0.0005〜0.05μm(0.5〜50nm)として噴射付与し、パターン形成を行うような場合には、吐出口部のキズは、良好なパターン性能を得るのに致命的となる。そしてその致命的となるノズルの大きさの限界値はΦ20μm付近にある。つまりΦ20μm以下のノズルを有する噴射ヘッドによってこのような溶液噴射によるパターン形成を行う場合には、ノズル部にキズができないような溶液および吐出口部材の組み合わせを選ぶ必要がある。すなわち、上記実験結果より明らかなように、微細微粒子は吐出口を構成する部材よりやわらかい材料とする必要がある。
なお実験では、丸形状のΦ20μmノズル(面積が約314μm2)、Φ15μmノズル(面積が約177μm2)、Φ10μmノズル(面積が約79μm2)を使用したが、噴射ヘッドのノズルとして他の形状(たとえば矩形等)のものを使用する場合には、その面積比較をすればよく、たとえば、18μm×18μmのノズルが、本発明の丸形状のΦ20μmノズルと同等となる。
すなわち本発明で、吐出口径がΦ20μm以下という場合、必ずしも丸い形状のノズルだけに適用されるのではなく、ノズル形状が丸形状ではない場合には、その面積比較で相当な値として考えるべきであり、ノズル開口の面積が314μm2以下であれば、丸以外の他の形状のノズルであっても本発明の範囲に含まれるものである。そしてこれは、前述の微粒子径Dpと吐出口径Doとの関係を最適化した目詰まりのない安定した液滴噴射が得られる条件にも適用されることは言うまでもない。
以上の説明から明らかなように、本発明は、パターン配線基板あるいはデバイス基板を製作する技術であるが、数10μm〜数μmという非常に微細なパターンを従来のようなフォトリソ技術によるのではなく、従来にはない微小な吐出口を有する噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を基板に直接噴射付与するという簡単な装置で、パターンやデバイスをダイレクト製作するようにしている。したがって、いわゆる半導体製造プロセスで使用されている高価な製造装置を必要とせず、低コストでかつ安定して製作できるようになった。
1…配線パターン、2,3…端子、10…基板、11…噴射ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12…キャリッジ、13…基板保持台、14…基板、15…供給チューブ、16…信号供給ケーブル、17,21…コントロールボックス、18…X方向スキャンモータ、19…Y方向スキャンモータ、20…コンピュータ、22…基板位置決め/保持手段、31…ヘッドアライメント制御機構、32…検出光学系、33…噴射ヘッド、34…ヘッドアライメント微動機構、35…制御用コンピュータ、36…画像識別機構、37…XY方向走査機構、38…位置検出機構、39…位置補正制御機構、40…噴射ヘッド駆動・制御機構、41…光軸、42…素子電極、43…液滴、44…液滴着弾位置、45…流路、46…ピエゾ素子、47…溶液、48…ノズル、49…フィルター、65…ノズル、66…発熱体基板、67…蓋基板、68…シリコン基板、69…個別電極、70…共通電極、71…発熱体、74…溝、75…凹部領域、76…溶液流入口、81…サテライト微小滴、82…素子電極(ITO透明電極)、83…ドットパターン、84…微小滴、85…粒子、86…基板表面。