JP2004191068A - トルクセンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】検出コイルの自己誘導電圧に起因する励磁コイルのインダクタンスの変化を防止すると共に、温度変化に起因するインダクタンスの変化の影響も解消するようにしたトルクセンサを提供する。
【解決手段】励磁コイル16が励磁されたときの検出コイル20,22の出力に基づいてトルク伝達軸に印加されるトルクを検出するトルクセンサ10において、前記検出コイルを4個備え、その中の2個(第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20b)を負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個(第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22b)を、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個のそれと巻き方向を逆向きにして正電圧側同士の差動結合とし、それぞれの出力に基づいて前記トルク伝達軸に印加されるトルクを検出する。
【選択図】 図5
【解決手段】励磁コイル16が励磁されたときの検出コイル20,22の出力に基づいてトルク伝達軸に印加されるトルクを検出するトルクセンサ10において、前記検出コイルを4個備え、その中の2個(第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20b)を負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個(第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22b)を、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個のそれと巻き方向を逆向きにして正電圧側同士の差動結合とし、それぞれの出力に基づいて前記トルク伝達軸に印加されるトルクを検出する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、トルクセンサに関し、より詳しくは非接触型の磁歪式のトルクセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
非接触型の磁歪式のトルクセンサは、一般に、トルク伝達軸に固定され、一軸磁気異方性を備えた磁性金属薄膜と、それに近接して配置された励磁コイルと検出コイルとを備え、印加トルクによって磁歪膜に生じた透磁率の増減を検出コイルの電位差として取り出して印加トルクを検出する。
【0003】
この種のトルクセンサにあっては、温度変化によって各コイルのインダクタンスが変化する(温度ドリフトが発生する)ため、検出特性が変動するという不具合がある。このため、振幅の正負(上下)が異なる2出力を差動増幅することにより、温度変化に起因するインダクタンスの変化を相殺させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−221941号公報(図5、図9および図10)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
励磁コイルに励磁信号が供給されて電圧が印加されると、相互誘導によって検出コイルに誘導電流が発生する。このとき、検出コイルには、誘導電流に起因した自己誘導電圧が生じる。そのため、励磁コイルと検出コイルの間にさらに相互誘導が生じ、励磁コイルを流れる電流が変化する(励磁コイルの見掛け上のインダクタンスが変化する)。
【0006】
このように、検出コイルの自己誘導電圧によって励磁コイルのインダクタンスが変化するため、検出コイルの出力がトルク伝達軸に印加されたトルクに比例した値を示さず、検出精度が低下するという不具合があったが、従来技術に係るトルクセンサにあっては、温度変化に起因するインダクタンスの変化の影響を解消するに止まり、検出コイルの自己誘導電圧に起因する励磁コイルのインダクタンスの変化については考慮されていなかったため、改良の余地を残していた。
【0007】
従って、この発明の目的は、検出コイルの自己誘導電圧に起因する励磁コイルのインダクタンスの変化を防止して検出コイルの出力と印加されたトルクの関係を比例関係としてトルクの検出精度を向上させるようにしたトルクセンサを提供すると共に、温度変化に起因するインダクタンスの変化の影響も解消して安定した検出特性を得るようにしてトルクの検出精度を一層向上させるようにしたトルクセンサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1項にあっては、トルク伝達軸に固定され、磁気異方性を備えた磁歪膜と、前記磁歪膜に近接して配置された励磁コイルおよび検出コイルと、前記励磁コイルが励磁されたときの前記検出コイルの出力を入力して入力値から前記トルク伝達軸に印加されるトルクを検出する検出部とを備えたトルクセンサにおいて、前記検出コイルを4個備え、その中の2個を負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個を、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個のそれと巻き方向を逆向きにして正電圧側同士の差動結合とし、さらに前記検出部は、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力と前記正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力とに基づいて前記トルク伝達軸に印加されるトルクを検出するように構成した。
【0009】
検出コイルを4個備え、その中の2個の検出コイルを負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個の検出コイルを正電圧側同士の差動結合としたので、温度変化に起因するインダクタンスの変化を相殺してその影響を解消し、よって安定した検出特性を得ることができる。また、負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの巻き方向と正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの巻き方向を逆向きに(背反的に)して各検出コイルの極性を相違させるようにしたので、検出コイルの自己誘導電圧およびそれに起因する励磁コイルの相互誘導電圧が相殺されて励磁コイルのインダクタンスに変化が生じないため、検出コイルの出力と印加されたトルクの関係が比例関係となり、よってトルクの検出精度を一層向上させることができる。
【0010】
また、請求項2項にあっては、前記トルクセンサは、電動機によって車両の操舵トルクを補助する電動パワーステアリング装置の前記操舵トルクを検出するトルクセンサであるように構成した。
【0011】
請求項1項に係るトルクセンサは上記した効果を有するので、車両に搭載される電動パワーステアリング装置に装着されて大きな温度変化に曝されるときも、インダクタンスの変化の影響を解消して安定した検出特性を得ることができるため、運転者からステアリングホイールを介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の一つの実施の形態に係るトルクセンサを説明する。
【0013】
図1は、この発明の一つの実施の形態に係るトルクセンサを模式的に示す原理図である。
【0014】
図示の如く、トルクセンサ10は、トルク伝達軸(回転軸)12に固定され、磁気異方性を備えた磁歪膜(磁性金属薄膜)14と、磁歪膜14に近接して配置された励磁コイル(1次側と示す)16と、同様に磁歪膜14に近接して配置された2次側と3次側の2個の検出コイル20,22とを備える。以下、2次側の検出コイル20を「2次側検出コイル」と呼び、3次側の検出コイル22を「3次側検出コイル」と呼ぶ。
【0015】
トルク伝達軸12は、Niをほとんど含まない、クロムモリブデン鋼材(JIS−G−4105、記号SCM)などからなる。また、磁歪膜14は、磁気異方正が与えられた第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14bから構成される。
【0016】
第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14bは、具体的には、図に矢印で示す如く、トルク伝達軸12の軸線12aに対して±45度の方向に一軸磁気異方性を備えるように構成されると共に、トルク伝達軸12の全周に所定幅にわたって固定(貼付)される。より詳しくは、各磁歪膜14a,14bは歪み応力(圧縮応力および引っ張り応力)に対して透磁率の変化の大きい素材からなる金属膜であり、例えば、トルク伝達軸12の外周に湿式メッキ法で形成した、Ni−Fe系の合金膜からなる。Ni−Fe系の合金膜は、例えば、重量%においてNiが50から60であり、残余がFeである。
【0017】
磁歪膜14は上記したようにトルク伝達軸12の外表面に直接設けても良く、あるいはパイプ状の別部材上に形成した後、別部材ごとトルク伝達軸12上に固定するようにしても良い。また、磁歪膜14およびトルク伝達軸12の素材も上記したものに止まらないことはいうまでもない。
【0018】
励磁コイル16は、第1の励磁コイル16aと第2の励磁コイル16bから構成される。第1の励磁コイル16aと第2の励磁コイル16bは、それぞれ第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14b(およびトルク伝達軸12)に近接して、より詳しくは0.4〜0.6mm程度の間隙をもって配置された磁心(図示せず)に巻かれてなり、励磁電源26から交流電流を通電されて励磁される。
【0019】
2次側検出コイル20は、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bから構成される。第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bは、励磁コイル16と同様に、それぞれ第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14b(およびトルク伝達軸12)に近接して、より詳しくは0.4〜0.6mm程度の間隙をもって配置される。励磁コイル16の磁心と検出コイル20の磁心は、磁歪膜14(およびトルク伝達軸12)に近接しつつ対向して配置される。また、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bは巻き方向が逆向きにされ、差動結合、具体的には負電圧側同士の差動結合とされる。
【0020】
また、3次側検出コイル22も、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bからなると共に、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bは、それぞれ第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14b(およびトルク伝達軸12)に近接して、より詳しくは0.4〜0.6mm程度の間隙をもって配置される。また、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bも巻き方向が逆向きにされ、差動結合、具体的には正電圧側同士の差動結合とされる。
【0021】
尚、第1の3次側検出コイル22aは第1の2次側検出コイル20aと巻き方向が逆向きにされて極性が相違させられると共に、第2の3次側検出コイル22bは第2の2次側検出コイル20bと巻き方向が逆向きにされ、極性が相違させられる。
【0022】
このように、この実施の形態に係るトルクセンサ10にあっては、計4個の検出コイルを備えると共に、接続されるコイル同士、および同一の磁歪膜に近接して配置されるコイル同士は、それぞれ巻き方向が逆向き(背反的)になるように配置される。
【0023】
トルク伝達軸12(および磁歪膜14)と磁心の間には磁気回路が形成され、その磁気回路において、励磁コイル16が励磁されたとき、外部から印加されるトルクに応じてトルク伝達軸12に生じる応力歪みに比例する透磁率の増減が生じ、各検出コイル20,22の出力端にその誘導電圧が微少な電圧値の変化として出力される。
【0024】
2次側検出コイル20と3次側検出コイル22の出力は、処理回路28に入力される。処理回路28は、後述するように印加トルクの方向および大きさを検出し、それらを示す出力を生じる。
【0025】
以下、この実施の形態に係るトルクセンサ10を、車両の操舵トルクを補助する電動パワーステアリング装置に装着し、運転者から入力される操舵トルクを検出するトルクセンサとして利用した場合を例にとって詳説する。
【0026】
図2は、トルクセンサ10を電動パワーステアリング装置の操舵トルクを検出するトルクセンサとして利用した場合を示す説明図である。
【0027】
図示の如く、車両30において運転席に配置されたステアリングホイール34は、ステアリングシャフト36に連結され、ステアリングシャフト36はユニバーサルジョイント38,40を介してコネクティングシャフト42に連結される。
【0028】
コネクティングシャフト42は、ラック・ピニオン型ステアリングギア44のピニオン46に連結される。ピニオン46はラック48に噛み合っており、よってステアリングホイール34から入力された回転運動はピニオン46を介してラック48の往復運動に変換され、フロントアクスルの両端に配置されたタイロッド(ステアリングロッド)50およびキングピン(図示せず)を介して2個の前輪(操舵輪)52を所望の方向に転舵させる。
【0029】
ラック48上には同軸に電動機(電動モータ)54およびボールねじ機構56が配置され、電動機出力はボールねじ機構56を介してラック48の往復運動に変換され、ステアリングホイール34を介して入力された操舵トルク(操舵力)を補助(減少)する方向にラック48を駆動する。
【0030】
ここで、ステアリングシャフト36の適宜位置には前記したトルクセンサ10が設けられ、運転者が入力した操舵力(操舵トルク)の方向と大きさに応じた信号を出力する。
【0031】
トルクセンサ10の出力は、電動パワーステアリング装置用のECU(電子制御ユニット)60に入力される。ECU60は、マイクロコンピュータからなり、車載バッテリ(12Vの片電源)62から駆動電源を供給されて所定のクロック周波数(動作周波数)で動作する。
【0032】
ECU60は、トルクセンサ10が検出した操舵トルクの方向と大きさ、および図示しない別のECUから供給される車速を表す信号に基づいて操舵トルクのアシスト量と方向を決定し、指令値(PWM制御のデューティ比)を算出してモータ駆動回路64を介して電動機54を駆動制御する。このため、トルクセンサ10の操舵トルクの検出精度は、電動パワーステアリングの操舵フィーリングに影響することになる。
【0033】
また、ECU60は、トルクセンサ10の出力に基づいてトルクセンサ10の故障を検出し、故障が検出されたときは運転席付近に配置された警告灯66を点灯させて運転者に報告する。
【0034】
図3は、トルクセンサ10の構成を詳細に示すブロック図である。
【0035】
図示の如く、ECU60には、5Vの定電圧レギュレータ68を介して車載バッテリ62が接続され、5Vの動作電圧が供給される。ここで、ECU60のクロック周波数(動作周波数。より詳しくは、マイクロコンピュータを構成するCPUの内部周波数)は、クリスタル(水晶)発振子70の発振周波数(外部周波数)を内部で所定倍して得た周波数とされる。この実施の形態にあっては、クリスタル発振子70の発振周波数を10MHz、ECU60内部での倍率を4倍とし、よってECU60の内部では、供給された5Vの動作電圧から、振幅5V、周波数40MHzの矩形波が生成されるものとする。
【0036】
ECU60は、その内部に分周器(回路)60aを備える。分周器60aは、ECU60のクロック周波数をカウントするカウンタ(図示せず)を備え、外部からのプログラミングによってカウンタの設定値(カウント値)を変更することで、分周比を任意の値に設定することができる。この実施に形態にあっては、カウンタのカウント値を1600に設定することで分周比を1/1600とし、分周器60aから25kHz(振幅5V)の矩形波が出力されるものとする。
【0037】
分周器60aの出力は、リファレンス電圧生成部72に入力される。尚、この明細書で「リファレンス電圧」とは、処理回路28の内部で発生する交流信号の中点(振幅の中点)を示す電圧値を意味する。リファレンス電圧生成部72は、分周器60aから出力された振幅5Vの矩形波のデューティ比50%に相当する電圧、即ち、2.5Vの定電圧をリファレンス電圧として出力する。
【0038】
一方、分周器60aから出力された25kHzの矩形波は帯域2次フィルタ(バンドパスフィルタ)74にも入力され、そこで矩形波を構成する25kHz以外の高調波成分が除去(減衰)されると共に、リファレンス電圧生成部72で生成されたリファレンス電圧が入力され、よって中点を2.5Vとする振幅5V、周波数25kHzの正弦波(sin波)が生成される。
【0039】
帯域2次フィルタ74で生成された正弦波は、反転増幅部(オペアンプ)76で波形の反転と振幅の増幅処理が施された後(処理後の波形の中点も前記したリファレンス電圧とされる)、RCフィルタ(ローパスフィルタ)78を介して励磁コイル16(具体的には、第1の励磁コイル16aおよびそれに接続された第2の励磁コイル16b)に励磁信号として供給される。励磁コイル16に励磁信号が供給されると、2次側検出コイル20と3次側検出コイル22には、ステアリングシャフト36(図3で図示せず)に印加された操舵トルクの方向および大きさに応じた位相の出力(電圧波形)が生じる。
【0040】
この実施の形態では、上記した如く、励磁信号である正弦波はECU60から出力される矩形波を分周して得た波形から生成する、即ち、励磁信号をデジタル信号から生成するようにしたので、温度変化や電源電圧の変動の影響を受け難い安定した励磁信号を供給することができる。従って、2次側検出コイル20と3次側検出コイル22が出力する波形も安定するため、トルクの検出精度を向上させることができる。このため、運転者からステアリングホイール34を介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを向上させることができる。
【0041】
さらに、帯域2次フィルタ74や反転増幅部76、RCフィルタ78といった励磁信号を生成するためのアナログ回路の特性に個体差(製造バラツキ)が生じた場合には、外部からのプログラミングによってカウンタの設定値(カウント値)を変更し、分周器60aの分周比を変更することにより、アナログ回路に入力される矩形波の周波数をアナログ回路の特性、特に帯域2次フィルタ74の時定数に対応した値に設定することができる。このため、アナログ回路の特性に個体差が生じた場合であっても、ノイズを含まない励磁信号(正弦波)を生成することができ、トルクの検出精度を一層向上させることができる。
【0042】
また、正弦波(励磁信号)の中点を示すリファレンス電圧を矩形波のデューティ比50%に相当する電圧としたので、図4に示す如く、励磁電源から供給される電圧Vccに変動が生じて正弦波の振幅が変化しても、それに追従して振幅の中点を示すリファレンス電圧Vrefも変化することになる。例えば、励磁電源の電圧Vccが5.2Vを示すとき、リファレンス電圧Vrefはその50%、即ち、2.6Vとなる。
【0043】
このため、車載バッテリ62のような片電源(単電源)を利用して励磁信号を生成する場合でも、常に上下(具体的には、リファレンス電圧Vrefを中点としたときの上側の振幅と下側の振幅)で差の生じない大きな振幅の励磁信号を生成することができる。換言すれば、励磁電源から供給される最大電圧を利用して励磁信号を生成することができる。尚、図3に示す構成において励磁電源とは、車載バッテリ62から分周器60aに至るまでの各構成、即ち、車載バッテリ62、定電圧レギュレータ68、ECU60および分周器60aを示す。
【0044】
次いで、図5を参照し、2次側検出コイル20と3次側検出コイル22について詳説する。図5は、図3で符合Sで示すセンシング部の拡大図である。尚、センシング部Sは、励磁コイル16と、2次側検出コイル20と、3次側検出コイル22と、図示しないステアリングシャフト36(およびそれに固定された磁歪膜14)とからなる。
【0045】
図5に示すように、第1の励磁コイル16aに近接する位置には、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側コイル22aが配置される。前述したように、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側コイル22aは、巻き方向が逆向きに(背反的に)されて極性が相違させられる。具体的には、第1の励磁コイル16aと第1の2次側検出コイル20aは極性が同一にされると共に、第1の励磁コイル16aと第1の3次側コイル22aは極性が相違させられる。
【0046】
また、第2の励磁コイル16bに近接する位置には、第2の2次側検出コイル20bと第2の3次側コイル22bが設けられる。前述したように、第2の2次側検出コイル20bと第2の3次側コイル22bも、同様に巻き方向が逆向きに(背反的に)されて極性が相違させられる。具体的には、第2の励磁コイル16bと第2の2次側検出コイル20bは極性が相違させられると共に、第2の励磁コイル16bと第1の3次側コイル22bは極性が同一にされる。
【0047】
図示の如く、第1の励磁コイル16aと第2の励磁コイル16bは、それぞれ負電圧側と正電圧側が直列に接続される。他方、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bは、それぞれの負電圧側同士が直列に接続された差動結合とされる。また、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bは、それぞれの正電圧側同士が直列に接続された差動結合とされる。
【0048】
ここで、各コイルに生じる誘導電圧について説明する。同図において、矢印(黒)が自己誘導電圧を示し、矢印(白)が相互誘導電圧を示す。また、各矢印の添字は、1が励磁コイル、2が2次側検出コイル、3が3次側検出コイルの起電力によって生じた誘導電圧であることを示す。
【0049】
符合aが付される第1のコイル(16a,20a,22a)を例にとって説明すると、第1の励磁コイル16aに励磁信号が供給されて電圧が印加されると、第1の励磁コイル16aには電流i1が流れると共に、その流れ方向と逆向きの自己誘導電圧が生じる。このとき、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aには、相互誘導電圧が生じる。
【0050】
第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aに誘導電圧が生じると、各コイルには電流(誘導電流)i2,i3が発生すると共に、発生した電流と逆向きの自己誘導電圧が生じる。第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aに自己誘導電圧が生じると、それに起因して第1の励磁コイル16aに相互誘導電圧が生じるため、第1の励磁コイル16aの見掛け上のインダクタンスが変化する(流れる電流が変化する)。
【0051】
しかしながら、この実施の形態にあっては、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aの巻き方向が逆向きに(背反的に)されていることから、2つのコイルに流れる電流の位相が180度ずれるため、それらに生じる自己誘導電圧も対向する。従って、i2=i3ならば、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aに生じる自己誘導電圧同士が相殺されて零になると共に、それらに起因して生じる第1の励磁コイル16aの相互誘導電圧も相殺されて零になる。
【0052】
よって各コイルにおいて発生する誘導電圧は、符合bが付される第2のコイル(16b,20b,22b)を例にとって示すように、励磁コイル16の自己誘導電圧と、それに起因して生じる2次側検出コイル20と3次側検出コイルの22の相互誘導電圧のみとなる。即ち、検出コイル20,22の自己誘導電圧に起因する励磁コイル16のインダクタンスの変化が生じなくなり、検出コイル20,22の出力が印加されたトルクのみを反映する値となる。
【0053】
このように、2次側検出コイル20と3次側検出コイル22のコイルの巻き方向を逆方向に(背反的に)したため、検出コイル20,22の自己誘導電圧およびそれに起因して発生する励磁コイル16の相互誘導電圧が相殺され、励磁コイル16のインダクタンスは変化しない。このため、検出コイル20,22の出力と印加されたトルクの関係が比例関係となり、よってトルクの検出精度を向上させることができる。
【0054】
次いで、温度変化に起因するインダクタンスの変化について説明する。前述した如く、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bは、負電圧側同士が直列に接続された差動結合とされるため、温度変化に起因するインダクタンスの変化が第1および第2の2次側検出コイル20a,20bのそれぞれで生じたとしても、2次側検出コイル20全体としてはインダクタンスの変化は相殺されて零となる。また、3次側検出コイル22においても、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bが正電圧側同士の差動結合とされるため、同様にインダクタンスの変化は相殺されて零となる。
【0055】
また、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bを負電圧側同士の差動結合とすると共に、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bを正電圧側同士の差動結合としたため、トルクセンサ10を電動パワーステアリング装置に装着して大きな温度変化に曝される場合でも、温度変化に起因するインダクタンスの変化を相殺してその影響を解消することができ、よって安定した検出特性を得ることができる。このため、運転者からステアリングホイール34を介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。
【0056】
図3の説明に戻ると、RCフィルタ78から出力された励磁信号、より具体的には、実際に励磁コイル16に供給される電圧波形は、2次側バイアス電圧生成部80にも入力され、そこで位相が90度進められた2次側cos波が生成される。また、励磁信号(実際に励磁コイル16に入力される電圧波形)は3次側バイアス電圧生成部82にも入力され、そこで位相が90度遅らされた(−90度進められた)3次側cos波が生成される。
【0057】
2次側検出コイル20の出力(電圧波形)は2次側加算部84で前記した2次側cos波が加算され、2次側加算波形が生成される。また、3次側検出コイル22の出力(電圧波形)は3次側加算部86で前記した3次側cos波が加算され、3次側加算波形が生成される。即ち、2次側cos波と3次側cos波は、各検出コイルが出力した電圧波形に加算されるバイアス電圧を意味する。
【0058】
図6は、ステアリングシャフト36にトルクが印加されていないときの2次側加算波形などの各波形を示す説明グラフである。また、図7は、同様にステアリングシャフト36にトルクが印加されていないときの3次側加算波形などの各波形を示す説明グラフである。
【0059】
図6に示すように、ステアリングシャフト36にトルクが印加されていないときは、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bの出力が相殺され、V2で示す2次側検出コイル20全体としての出力(以下、「2次側出力」と呼ぶ)は、リファレンス電圧Vrefと一致する(零となる)。従って、Vplus2で示す2次側加算波形は、Vcos2で示す2次側cos波と一致する。尚、実際に励磁コイル16に供給される励磁信号(正弦波)をVsinで示す。
【0060】
また、図7に示すように、ステアリングシャフト36にトルクが印加されていないときは、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bの出力も相殺され、V3で示す3次側検出コイル22全体としての出力(以下、「3次側出力」と呼ぶ)はリファレンス電圧Vrefと一致する(零となる)。従って、Vplus3で示す3次側加算波形は、Vcos3で示す3次側cos波と一致する。
【0061】
他方、ステアリングシャフト36に右回転方向のトルクが印加されると、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bのインダクタンスのバランスが崩れ、図8に示すように、励磁信号Vsinと同位相の2次側出力V2が生じる。このため、2次側加算波形Vplus2は、2次側cos波Vcos2より位相が遅れ方向にずれる。ステアリングシャフト36に右回転方向のトルクが印加されたときの2次側cos波Vcos2に対する2次側加算波形Vplus2の位相差(共にリファレンス電圧Vrefを示すときの位相差)を「R2」で示す。
【0062】
また、3次側検出コイル22においても、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bのインダクタンスのバランスが崩れることから、図9に示すように、励磁信号Vsinと同位相の3次側出力V3が生じる。このため、3次側加算波形Vplus3は、3次側cos波Vcos3より位相が進み方向にずれる。ステアリングシャフト36に右回転方向のトルクが印加されたときの3次側cos波Vcos3に対する3次側加算波形Vplus3の位相差(共にリファレンス電圧Vrefを示すときの位相差)を「R3」で示す。
【0063】
ステアリングシャフト36に左回転方向のトルクが印加されたときの2次側加算波形などの各波形を図10に示すと共に、3次側加算波形などの各波形を図11に示す。
【0064】
2次側出力V2は、図10に示すように、右回転方向のトルクが印加されたときのそれに対して180度位相がずれた波形となる。従って、2次側cos波Vcos2と2次側加算波形Vplus2の位相差(共にリファレンス電圧Vrefを示すときの位相差。「L2」で示す)も180度反対となり、2次側cos波Vcos2より位相が進み方向にずれる。また、3次側出力V3も、図11に示すように、右回転方向のトルクが印加されたときのそれに対して180度位相がずれた波形となり、3次側cos波Vcos3と3次側加算波形Vplus3の位相差(共にリファレンス電圧Vrefを示すときの位相差。「L3」で示す)も180度反対となる。即ち、3次側cos波Vcos3より位相が遅れ方向にずれる。
【0065】
図12に、印加されるトルクに対する2次側出力V2と3次側出力V3の関係を示す。前述の如く、2次側検出コイル20を負電圧側同士の差動結合としたのに対し、3次側検出コイル22を正電圧側同士の差動結合としたため、2次側出力V2と3次側出力V3は印加されるトルクに対して相反する特性を有する。
【0066】
このため、2次側出力V2と3次側出力V3のそれぞれにバイアス電圧を印加し、よって得た波形(即ち、2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3)とバイアス電圧(即ち、2次側cos波Vcos2と3次側cos波Vcos3)の位相差の方向と大きさを検出することで、印加されたトルクの方向と大きさを正確に検出することができる。
【0067】
ここで、励磁コイル16に発生する自己誘導電圧は、印加される電圧に対して逆向きの起電力となるため、実際に励磁コイル16に供給される励磁信号Vsinと90度の位相差を有する。従って、励磁信号Vsinの位相を90度ずらした波形をバイアス電圧とすることで前記位相差が最大となり、かつ左右のトルクに対して同一の位相差を得ることができる。換言すれば、トルクの検出感度が最大となると共に、左右のトルクに対して同一の感度を得ることができる。
【0068】
これについて、図13および図14を参照して説明する。図13は、2次側出力V2に2次側cos波Vcos2を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。また、図14は、2次側出力V2に、励磁信号Vsinに対して60度位相ずれしたバイアス電圧を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。両図において、V2(+)はステアリングシャフト36に右回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示し、V2(−)は左回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示す。
【0069】
図13および図14において、θRは励磁信号が生成されてから実際に励磁コイル16に供給されるまでの間に直流抵抗成分によって生じる位相差である。このθRが生じることから、前述の2次側および3次側バイアス電圧生成部80,82では、実際に励磁コイル16に供給される励磁信号Vsinの位相を所定量ずらして2次側および3次側cos波Vcos2,Vcos3を得るようにした。
【0070】
図13に示すように、右回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示すベクトルに、2次側cos波Vcos2を示すベクトルを加算して合成することで、2次側加算波形Vplus2を示すベクトル(Vplus2(+))と2次側cos波Vcos2を示すベクトルのなす角度、即ち、位相差を最大とすることができる。また、同図から、2次側出力V2の電圧値が大きくなってそのベクトルが大きくなるに従って、2次側加算波形Vplus2を示すベクトルと2次側cos波Vcos2を示すベクトルのなす角度が大きくなり、位相差が大きくなることが分かる。即ち、トルクが印加されることによって発生する透磁率の増減を電圧値で検出し、さらにその電圧値の変化を位相の変化で記述することができる。
【0071】
尚、図14に示すように、右回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示すベクトルに90度以外のバイアス電圧、例えば60度のバイアス電圧を加えることによっても、2次側加算波形Vplus2を示すベクトルとバイアス電圧を示すベクトルのなす角度、即ち、位相差は増大するが、90度の2次側cos波Vcos2を加えた場合に比して、その増加量は小さくなる。
【0072】
また、同じ60度のバイアス電圧を、左回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示すベクトル(V2(−))に加算すると、2次側加算波形Vplus2を示すベクトル(Vplus2(−))と2次側cos波Vcos2を示すベクトルとのなす角度が、右回転方向のトルクが印加されたときのそれと相違するという不具合がある。即ち、入力されるトルクの大きさが同じでも、入力方向によって位相の変化量(ずれ量)が相違するため、右回転方向のトルクと左回転方向のトルクで検出感度が一致しないという不都合がある。
【0073】
これに対し、図13に示すように、+90度の2次側cos波Vcos2を加算することで、左右の角度の変化量(位相の変化量(ずれ量)の絶対値)を一致させることができ、よって右回転方向のトルクと左回転方向のトルクの検出感度を一致させることができる。
【0074】
尚、3次側出力V3と3次側cos波Vcos3のベクトル合成については、図13および図14において括弧内に記載した+と−が逆になると共に、+90度を示すベクトルの代わりに、それと逆向きの−90度を示すベクトルが使用される以外、上記の説明がそのまま妥当する。
【0075】
このように、励磁コイル16に供給される励磁信号Vsinの位相を所定量ずらして得たバイアス電圧と2次側および3次側検出コイル20,22の出力V2,V3を加算するようにしたので、加算値である2次側および3次側加算波形Vplus2,Vplus3と、その比較対象であるバイアス電圧(即ち、2次側および3次側cos波Vcos2,Vcos3)との位相のずれを大きくして検出感度を向上させることができるため、トルクの検出精度を向上させることができる。
【0076】
さらに、前記バイアス電圧を、励磁信号Vsinの位相を90度進めて生成した2次側cos波Vcos2と、励磁信号Vsinの位相を90度遅せて生成した3次側cos波Vcos3とすることで、2次側および3次側加算波形Vplus2,Vplus3と2次側および3次側cos波Vcos2,Vcos3との位相ずれが最大となって検出感度を一層向上させることができると共に、左右のトルクに対しても検出感度が同一となるため、より一層検出精度を向上させることができる。このため、運転者からステアリングホイール34を介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。
【0077】
尚、2次側cos波Vcos2と3次側cos波Vcos3の位相を180度ずらして(90度と−90度に)設定したのは、図15に示すように、例えば処理回路28が温度変化などの影響を受けて2次側cos波Vcos2と3次側cos波Vcos3のそれぞれの位相にバラツキが生じても、それぞれのべクトルは同じ回転方向に動くことから、2次側と3次側でその影響が相殺されるためである。
【0078】
図3の説明に戻ると、位相比較部90は、上記した2次側加算波形Vplus2と2次側cos波Vcos2の位相差(ずれ)を検出する。具体的には、論理積回路(素子)、より具体的にはAND回路(2次側AND回路。図示せず)に励磁信号Vsinと2次側加算波形Vplus2を入力し、印加トルクの大きさと方向(換言すれば、2次側加算波形Vplus2と2次側cos波Vcos2の位相差)に対応した矩形波を得る。これを2次側検出トルクVt2とする。
【0079】
さらに、位相比較部90は、3次側加算波形Vplus3を図示しないインバータで反転させて得た波形(以下、「反転後3次側加算波形Vplus3inv」という)と3次側cos波Vcos3の位相差(ずれ)を検出する。具体的には、論理積回路(素子)、より具体的にはAND回路(3次側AND回路。図示せず)に励磁信号Vsinと反転後3次側加算波形Vplus3invを入力し、印加トルクの大きさと方向(換言すれば、反転後3次側加算波形Vplus3invと3次側cos波Vcos3の位相差)に対応した矩形波を得る。これを3次側検出トルクVt3とする。図6から図11の下部に、反転後3次側加算波形Vplus3inv、2次側検出トルクVt2および3次側検出トルクVt3などを示す各矩形波を示す。
【0080】
図6から図11に示す如く、2次側検出トルクVt2は、2次側加算波形Vplus2と励磁信号Vsinの両方がリファレンス電圧Vref以上となったときにH(High)信号(レベル)とされ、いずれか一方がリファレンス電圧Vrefを下回るときはL(Low)信号(レベル)とされる。また、3次側検出トルクVt3は、反転後3次側加算波形Vplus3invと励磁信号Vsinの両方がリファレンス電圧Vref以上となったときにH信号とされ、いずれか一方がリファレンス電圧Vrefを下回るときにL信号とされる。尚、理解の便宜のため、図6から図11において、H信号の出力期間をハッチングで示す。
【0081】
図6と図7を比較して分かるように、印加されるトルクが零のときは、2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3は常に同一の出力を示す。他方、図8と図9に示すように右回転方向のトルクが印加されると、印加トルクの大きさに比例して2次側検出トルクVt2のH信号の出力時間が延長される一方、3次側検出トルクVt3のH信号の出力時間が短縮される。また、図10と図11に示すように、左回転方向のトルクの印加されると、印加トルクの大きさに比例して2次側検出トルクVt2のH信号の出力時間が短縮される一方、3次側検出トルクVt3のH信号の出力時間が延長される。
【0082】
このように、2次側検出トルクVt2は、2次側加算波形Vplus2と2次側cos波Vcos2の位相差、即ち、印加トルクの大きさと方向に応じてH信号の出力時間が増減する。また、3次側検出トルクVt3も、反転後3次側加算波形Vplus3invと3次側cos波Vcos3の位相差、即ち、印加トルクの大きさと方向に応じてH信号の出力時間が増減する。そして、2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3は、印加トルクの方向に対して相反する出力を示すので、それらの差分をとることで、ステアリングシャフト36に印加されたトルクの方向と大きさを感度良く検出することができる。
【0083】
尚、図6から図11において、リファレンス電圧Vrefは前記したように励磁信号の中点を正確に示していることから、励磁信号Vsinを所定量位相させて得た2次側cos波Vcos2や3次側cos波Vcos3の中点、さらには2次側出力V2や3次側出力V3の中点も正確に示される。従って、2次側加算波形Vplus2や3次側加算波形Vplus3(および反転後3次側加算波形Vplus3inv)の中点も正確に示される。
【0084】
そのため、2次側cos波Vcos2と2次側加算波形Vplus2の位相差、および3次側cos波Vcos3と反転後3次側加算波形Vplus3invの位相差を正確に検出することができ、トルクの検出精度を向上させることができる。従って、運転者からステアリングホイール34を介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。尚、この実施の形態にあって、検出波形の振幅の大きさは検出していないが、上記の如く、この実施の形態に係るトルクセンサ10は検出波形の振幅の中点を正確に知ることができるため、振幅の大きさを精度良く検出することも可能である。
【0085】
図3の説明に戻ると、位相比較部90から出力された2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3は、それぞれCRフィルタ(平滑回路)92,94を介して平滑化された後、ECU60に入力されると共に、差動増幅部96に入力されて前記した差分が増幅される。差動増幅部96の出力は、最終的な検出トルクVtfとしてECU60に入力される。
【0086】
ECU60は、入力された最終的な検出トルクVtf(および2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3)に基づき、ステアリングシャフト36に入力されたトルク(操舵トルク)の方向と大きさを検出する。
【0087】
このように、励磁信号の位相を所定量ずらして得たバイアス電圧を2次側出力V2および3次側出力V3のそれぞれに加算し、よって得た2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3(具体的には、それを反転させて得た反転後3次側加算波形Vplus3inv)のそれぞれをバイアス電圧と位相で比較し、その位相差に基づいてトルクを検出する、即ち、トルクの印加によって発生する透磁率の増減を電圧値の変化で検出し、その電圧値の変化を位相で検出するようにしたので、電圧値の変化のみでトルクを検出する場合に比して検出感度が高くなると共に、検出電圧が微弱であっても電動機54などの通電電流からのノイズの影響を受け難くなり、よってトルクの検出精度を向上させることができる。
【0088】
さらには、相反する特性を有する2次側出力V2と3次側出力V3(具体的には、それらから求められる2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3)のそれぞれに基づいて前記位相差を検出し、それらの差分を増幅してトルクを検出するようにしたので、検出感度がより向上し、差動増幅部96による増幅率を小さくすることができ、他の電気機器からのノイズの影響を受け難くなり(即ち、ノイズが増幅されないため、S/N比を大きくすることができ)、よってトルクの検出精度を一層向上させることができる。また、温度変化に起因するインダクタンスの変化および差動増幅部96の増幅率の変化を2つの出力(位相差)で相殺することができるため、その影響を解消して安定した検出特性を得ることができる。
【0089】
また、2次側出力V2と3次側出力V3に加算されるバイアス電圧を、それぞれ励磁信号の位相を90度または−90度ずらすことによって生成したので、バイアス電圧(2次側cos波Vcos2と3次側cos波Vcos3)に対する加算波形(2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3(具体的には、それを反転させて得た反転後3次側加算波形Vplus3inv))の位相差が最大となって検出感度を一層向上させることができると共に、トルクの入力方向が異なっても検出感度が一致するため、より一層検出精度を向上させることができる。
【0090】
図3の説明を続けると、2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3(インバータで反転させる前の波形)は、さらに故障検出部98に入力される。
【0091】
ここで、トルクセンサ10が正常な状態にある場合、2次側加算波形Vplus2は、図6、図8および図10に示すように、トルクの印加の有無に関わらず、励磁信号Vsinの電圧値がリファレンス電圧Vrefを上回る瞬間(下側の振幅から上側の振幅に移行する瞬間)において常にH信号を示すと共に、励磁信号Vsinの電圧値がリファレンス電圧Vrefを下回る瞬間(上側の振幅から下側の振幅に移行する瞬間)において常にL信号を示す。また、3次側加算波形Vplus3は、図7、図9および図11に示すように、トルクの印加の有無に関わらず、励磁信号Vsinの電圧値がリファレンス電圧Vrefを上回る瞬間において常にL信号を示すと共に、励磁信号Vsinの電圧値がリファレンス電圧Vrefを下回る瞬間において常にH信号を示す。しかしながら、トルクセンサ10に故障が発生すると、上記した出力の関係が崩れる場合がある。
【0092】
そこで、故障検出部98は、2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3の出力を励磁信号Vsinの立ち上がりと立ち下がりのタイミングで検出し、検出値が上記した関係にないとき、トルクセンサ10の故障を示す信号を生成してECU60に出力するようにした。
【0093】
ECU60は、故障検出部98からトルクセンサ10の故障を示す信号が出力されたとき、前記した警告灯66を点灯させて運転者に警報する。
【0094】
ここで、前述の如く、励磁信号VsinをECU60のクロック周波数(動作周波数)に基づいて生成するようにしたので、励磁信号Vsinの立ち上がりと立ち下がりのタイミングにおける2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3の検出を、ECU60の処理に同期して行うことができる。即ち、トルクセンサ10が出力を生じてからECU60で故障検出が行なわれるまでの時間的な遅れを解消することができる。このため、この実施の形態に係るトルクセンサ10にあっては、故障検出をできる限り早く(タイムリーに)行なう必要があるという、車両に搭載されるセンサに対する要求を十分に満足することができる。
【0095】
また、検出コイルを2系統(2次側と3次側)備え、それらの出力に基づいてトルクセンサ10の故障を検出するようにしたので、トルクセンサ10の故障をより正確に検出することができる。
【0096】
以上のように、この実施の形態に係るトルクセンサにあっては、トルク伝達軸12(およびステアリングシャフト36)に固定され、磁気異方性を備えた磁歪膜14と、前記磁歪膜14に近接して配置された励磁コイル16および検出コイル(2次側検出コイル20と3次側検出コイル22)と、前記励磁コイル16が励磁されたときの前記検出コイルの出力(2次側出力V2と3次側出力V3)を入力して入力値から前記トルク伝達軸12に印加されるトルク(2次側検出トルクVt2、3次側検出トルクVt3、最終的な検出トルクVtf)を検出する検出部(処理回路28)とを備えたトルクセンサ10において、前記検出コイルを4個(具体的には、2次側検出コイル20を2個(第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20b)、3次側検出コイル22を2個(第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22b)の計4個)備え、その中の2個(第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20b)を負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個(第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22b)を、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個のそれと巻き方向を逆向き(背反的)にして正電圧側同士の差動結合とし、さらに前記検出部は、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力(2次側出力V2)と前記正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力(3次側出力V3)とに基づいて前記トルク伝達軸12に印加されるトルクVt2,Vt3,Vtfを検出するように構成した。
【0097】
また、前記トルクセンサ10は、電動機(電動モータ)54によって車両30の操舵トルクを補助する電動パワーステアリング装置の前記操舵トルクを検出するトルクセンサであるように構成した。
【0098】
尚、上記において、2個の検出コイルを2組設け、それぞれを負電圧側同士および正電圧側同士の差動結合としたが、検出コイルの個数はそれに限られるものではなく、偶数個の検出コイルを2組設け、それぞれを負電圧側同士および正電圧側同士の差動結合とすることにより、同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、この発明に係るトルクセンサ10を、電動パワーステアリング装置に入力される操舵トルクを検出する場合を例にとって説明したが、トルクセンサ10の用途はそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0100】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、検出コイルを4個備え、その中の2個の検出コイルを負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個の検出コイルを正電圧側同士の差動結合としたので、温度変化に起因するインダクタンスの変化を相殺してその影響を解消し、よって安定した検出特性を得ることができる。また、負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの巻き方向と正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの巻き方向を逆向きに(背反的に)して各検出コイルの極性を相違させるようにしたので、検出コイルの自己誘導電圧およびそれに起因する励磁コイルの相互誘導電圧が相殺されて励磁コイルのインダクタンスに変化が生じないため、検出コイルの出力と印加されたトルクの関係が比例関係となり、よってトルクの検出精度を一層向上させることができる。
【0101】
請求項2項にあっては、請求項1項に係るトルクセンサは上記した効果を有するので、車両に搭載される電動パワーステアリング装置に装着されて大きな温度変化に曝されるときも、インダクタンスの変化の影響を解消して安定した検出特性を得ることができるため、運転者からステアリングホイールを介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一つの実施の形態に係るトルクセンサを模式的に示す原理図である。
【図2】図1に示すトルクセンサを電動パワーステアリング装置の操舵トルクを検出するトルクセンサとして利用した場合を示す説明図である。
【図3】図1に示すトルクセンサの構造をより詳細に示すブロック図である。
【図4】図1に示すトルクセンサのリファレンス電圧を示す説明図である。
【図5】図1に示すトルクセンサのうち、センシング部を拡大して示す説明図である。
【図6】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸にトルクが印加されていないときの2次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図7】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸にトルクが印加されていないときの3次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図8】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸に右回転方向の印加トルクが入力されたときの2次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図9】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸に右回転方向の印加トルクが入力されたときの3次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図10】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸に左回転方向の印加トルクが入力されたときの2次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図11】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸に左回転方向の印加トルクが入力されたときの3次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図12】図1に示すトルクセンサの2次側検出コイルと3次側検出コイルの、印加トルクに対する出力特性を示すグラフである。
【図13】図1に示すトルクセンサの2次側検出コイルの出力に2次側cos波を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。
【図14】図1に示すトルクセンサの2次側検出コイルの出力に励磁信号に対して60度位相ずれしたバイアス電圧を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。
【図15】図1に示すトルクセンサの2次側検出コイルの出力に2次側cos波と3次側cos波を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。
【符号の説明】
10 トルクセンサ
12 トルク伝達軸
14 磁歪膜(1次側コイル)
14a 第1の磁歪膜
14b 第2の磁歪膜
16 励磁コイル
16a 第1の励磁コイル
16b 第2の励磁コイル
20 2次側検出コイル(2次側コイル)(検出コイル)
20a 第1の2次側検出コイル(検出コイル)
20b 第2の2次側検出コイル(検出コイル)
22 3次側検出コイル(3次側コイル)(検出コイル)
22a 第1の3次側検出コイル(検出コイル)
22b 第2の3次側検出コイル(検出コイル)
28 処理回路(検出部)
30 車両
36 ステアリングシャフト(トルク伝達軸)
【発明の属する技術分野】
この発明は、トルクセンサに関し、より詳しくは非接触型の磁歪式のトルクセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
非接触型の磁歪式のトルクセンサは、一般に、トルク伝達軸に固定され、一軸磁気異方性を備えた磁性金属薄膜と、それに近接して配置された励磁コイルと検出コイルとを備え、印加トルクによって磁歪膜に生じた透磁率の増減を検出コイルの電位差として取り出して印加トルクを検出する。
【0003】
この種のトルクセンサにあっては、温度変化によって各コイルのインダクタンスが変化する(温度ドリフトが発生する)ため、検出特性が変動するという不具合がある。このため、振幅の正負(上下)が異なる2出力を差動増幅することにより、温度変化に起因するインダクタンスの変化を相殺させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−221941号公報(図5、図9および図10)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
励磁コイルに励磁信号が供給されて電圧が印加されると、相互誘導によって検出コイルに誘導電流が発生する。このとき、検出コイルには、誘導電流に起因した自己誘導電圧が生じる。そのため、励磁コイルと検出コイルの間にさらに相互誘導が生じ、励磁コイルを流れる電流が変化する(励磁コイルの見掛け上のインダクタンスが変化する)。
【0006】
このように、検出コイルの自己誘導電圧によって励磁コイルのインダクタンスが変化するため、検出コイルの出力がトルク伝達軸に印加されたトルクに比例した値を示さず、検出精度が低下するという不具合があったが、従来技術に係るトルクセンサにあっては、温度変化に起因するインダクタンスの変化の影響を解消するに止まり、検出コイルの自己誘導電圧に起因する励磁コイルのインダクタンスの変化については考慮されていなかったため、改良の余地を残していた。
【0007】
従って、この発明の目的は、検出コイルの自己誘導電圧に起因する励磁コイルのインダクタンスの変化を防止して検出コイルの出力と印加されたトルクの関係を比例関係としてトルクの検出精度を向上させるようにしたトルクセンサを提供すると共に、温度変化に起因するインダクタンスの変化の影響も解消して安定した検出特性を得るようにしてトルクの検出精度を一層向上させるようにしたトルクセンサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1項にあっては、トルク伝達軸に固定され、磁気異方性を備えた磁歪膜と、前記磁歪膜に近接して配置された励磁コイルおよび検出コイルと、前記励磁コイルが励磁されたときの前記検出コイルの出力を入力して入力値から前記トルク伝達軸に印加されるトルクを検出する検出部とを備えたトルクセンサにおいて、前記検出コイルを4個備え、その中の2個を負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個を、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個のそれと巻き方向を逆向きにして正電圧側同士の差動結合とし、さらに前記検出部は、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力と前記正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力とに基づいて前記トルク伝達軸に印加されるトルクを検出するように構成した。
【0009】
検出コイルを4個備え、その中の2個の検出コイルを負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個の検出コイルを正電圧側同士の差動結合としたので、温度変化に起因するインダクタンスの変化を相殺してその影響を解消し、よって安定した検出特性を得ることができる。また、負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの巻き方向と正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの巻き方向を逆向きに(背反的に)して各検出コイルの極性を相違させるようにしたので、検出コイルの自己誘導電圧およびそれに起因する励磁コイルの相互誘導電圧が相殺されて励磁コイルのインダクタンスに変化が生じないため、検出コイルの出力と印加されたトルクの関係が比例関係となり、よってトルクの検出精度を一層向上させることができる。
【0010】
また、請求項2項にあっては、前記トルクセンサは、電動機によって車両の操舵トルクを補助する電動パワーステアリング装置の前記操舵トルクを検出するトルクセンサであるように構成した。
【0011】
請求項1項に係るトルクセンサは上記した効果を有するので、車両に搭載される電動パワーステアリング装置に装着されて大きな温度変化に曝されるときも、インダクタンスの変化の影響を解消して安定した検出特性を得ることができるため、運転者からステアリングホイールを介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の一つの実施の形態に係るトルクセンサを説明する。
【0013】
図1は、この発明の一つの実施の形態に係るトルクセンサを模式的に示す原理図である。
【0014】
図示の如く、トルクセンサ10は、トルク伝達軸(回転軸)12に固定され、磁気異方性を備えた磁歪膜(磁性金属薄膜)14と、磁歪膜14に近接して配置された励磁コイル(1次側と示す)16と、同様に磁歪膜14に近接して配置された2次側と3次側の2個の検出コイル20,22とを備える。以下、2次側の検出コイル20を「2次側検出コイル」と呼び、3次側の検出コイル22を「3次側検出コイル」と呼ぶ。
【0015】
トルク伝達軸12は、Niをほとんど含まない、クロムモリブデン鋼材(JIS−G−4105、記号SCM)などからなる。また、磁歪膜14は、磁気異方正が与えられた第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14bから構成される。
【0016】
第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14bは、具体的には、図に矢印で示す如く、トルク伝達軸12の軸線12aに対して±45度の方向に一軸磁気異方性を備えるように構成されると共に、トルク伝達軸12の全周に所定幅にわたって固定(貼付)される。より詳しくは、各磁歪膜14a,14bは歪み応力(圧縮応力および引っ張り応力)に対して透磁率の変化の大きい素材からなる金属膜であり、例えば、トルク伝達軸12の外周に湿式メッキ法で形成した、Ni−Fe系の合金膜からなる。Ni−Fe系の合金膜は、例えば、重量%においてNiが50から60であり、残余がFeである。
【0017】
磁歪膜14は上記したようにトルク伝達軸12の外表面に直接設けても良く、あるいはパイプ状の別部材上に形成した後、別部材ごとトルク伝達軸12上に固定するようにしても良い。また、磁歪膜14およびトルク伝達軸12の素材も上記したものに止まらないことはいうまでもない。
【0018】
励磁コイル16は、第1の励磁コイル16aと第2の励磁コイル16bから構成される。第1の励磁コイル16aと第2の励磁コイル16bは、それぞれ第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14b(およびトルク伝達軸12)に近接して、より詳しくは0.4〜0.6mm程度の間隙をもって配置された磁心(図示せず)に巻かれてなり、励磁電源26から交流電流を通電されて励磁される。
【0019】
2次側検出コイル20は、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bから構成される。第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bは、励磁コイル16と同様に、それぞれ第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14b(およびトルク伝達軸12)に近接して、より詳しくは0.4〜0.6mm程度の間隙をもって配置される。励磁コイル16の磁心と検出コイル20の磁心は、磁歪膜14(およびトルク伝達軸12)に近接しつつ対向して配置される。また、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bは巻き方向が逆向きにされ、差動結合、具体的には負電圧側同士の差動結合とされる。
【0020】
また、3次側検出コイル22も、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bからなると共に、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bは、それぞれ第1の磁歪膜14aと第2の磁歪膜14b(およびトルク伝達軸12)に近接して、より詳しくは0.4〜0.6mm程度の間隙をもって配置される。また、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bも巻き方向が逆向きにされ、差動結合、具体的には正電圧側同士の差動結合とされる。
【0021】
尚、第1の3次側検出コイル22aは第1の2次側検出コイル20aと巻き方向が逆向きにされて極性が相違させられると共に、第2の3次側検出コイル22bは第2の2次側検出コイル20bと巻き方向が逆向きにされ、極性が相違させられる。
【0022】
このように、この実施の形態に係るトルクセンサ10にあっては、計4個の検出コイルを備えると共に、接続されるコイル同士、および同一の磁歪膜に近接して配置されるコイル同士は、それぞれ巻き方向が逆向き(背反的)になるように配置される。
【0023】
トルク伝達軸12(および磁歪膜14)と磁心の間には磁気回路が形成され、その磁気回路において、励磁コイル16が励磁されたとき、外部から印加されるトルクに応じてトルク伝達軸12に生じる応力歪みに比例する透磁率の増減が生じ、各検出コイル20,22の出力端にその誘導電圧が微少な電圧値の変化として出力される。
【0024】
2次側検出コイル20と3次側検出コイル22の出力は、処理回路28に入力される。処理回路28は、後述するように印加トルクの方向および大きさを検出し、それらを示す出力を生じる。
【0025】
以下、この実施の形態に係るトルクセンサ10を、車両の操舵トルクを補助する電動パワーステアリング装置に装着し、運転者から入力される操舵トルクを検出するトルクセンサとして利用した場合を例にとって詳説する。
【0026】
図2は、トルクセンサ10を電動パワーステアリング装置の操舵トルクを検出するトルクセンサとして利用した場合を示す説明図である。
【0027】
図示の如く、車両30において運転席に配置されたステアリングホイール34は、ステアリングシャフト36に連結され、ステアリングシャフト36はユニバーサルジョイント38,40を介してコネクティングシャフト42に連結される。
【0028】
コネクティングシャフト42は、ラック・ピニオン型ステアリングギア44のピニオン46に連結される。ピニオン46はラック48に噛み合っており、よってステアリングホイール34から入力された回転運動はピニオン46を介してラック48の往復運動に変換され、フロントアクスルの両端に配置されたタイロッド(ステアリングロッド)50およびキングピン(図示せず)を介して2個の前輪(操舵輪)52を所望の方向に転舵させる。
【0029】
ラック48上には同軸に電動機(電動モータ)54およびボールねじ機構56が配置され、電動機出力はボールねじ機構56を介してラック48の往復運動に変換され、ステアリングホイール34を介して入力された操舵トルク(操舵力)を補助(減少)する方向にラック48を駆動する。
【0030】
ここで、ステアリングシャフト36の適宜位置には前記したトルクセンサ10が設けられ、運転者が入力した操舵力(操舵トルク)の方向と大きさに応じた信号を出力する。
【0031】
トルクセンサ10の出力は、電動パワーステアリング装置用のECU(電子制御ユニット)60に入力される。ECU60は、マイクロコンピュータからなり、車載バッテリ(12Vの片電源)62から駆動電源を供給されて所定のクロック周波数(動作周波数)で動作する。
【0032】
ECU60は、トルクセンサ10が検出した操舵トルクの方向と大きさ、および図示しない別のECUから供給される車速を表す信号に基づいて操舵トルクのアシスト量と方向を決定し、指令値(PWM制御のデューティ比)を算出してモータ駆動回路64を介して電動機54を駆動制御する。このため、トルクセンサ10の操舵トルクの検出精度は、電動パワーステアリングの操舵フィーリングに影響することになる。
【0033】
また、ECU60は、トルクセンサ10の出力に基づいてトルクセンサ10の故障を検出し、故障が検出されたときは運転席付近に配置された警告灯66を点灯させて運転者に報告する。
【0034】
図3は、トルクセンサ10の構成を詳細に示すブロック図である。
【0035】
図示の如く、ECU60には、5Vの定電圧レギュレータ68を介して車載バッテリ62が接続され、5Vの動作電圧が供給される。ここで、ECU60のクロック周波数(動作周波数。より詳しくは、マイクロコンピュータを構成するCPUの内部周波数)は、クリスタル(水晶)発振子70の発振周波数(外部周波数)を内部で所定倍して得た周波数とされる。この実施の形態にあっては、クリスタル発振子70の発振周波数を10MHz、ECU60内部での倍率を4倍とし、よってECU60の内部では、供給された5Vの動作電圧から、振幅5V、周波数40MHzの矩形波が生成されるものとする。
【0036】
ECU60は、その内部に分周器(回路)60aを備える。分周器60aは、ECU60のクロック周波数をカウントするカウンタ(図示せず)を備え、外部からのプログラミングによってカウンタの設定値(カウント値)を変更することで、分周比を任意の値に設定することができる。この実施に形態にあっては、カウンタのカウント値を1600に設定することで分周比を1/1600とし、分周器60aから25kHz(振幅5V)の矩形波が出力されるものとする。
【0037】
分周器60aの出力は、リファレンス電圧生成部72に入力される。尚、この明細書で「リファレンス電圧」とは、処理回路28の内部で発生する交流信号の中点(振幅の中点)を示す電圧値を意味する。リファレンス電圧生成部72は、分周器60aから出力された振幅5Vの矩形波のデューティ比50%に相当する電圧、即ち、2.5Vの定電圧をリファレンス電圧として出力する。
【0038】
一方、分周器60aから出力された25kHzの矩形波は帯域2次フィルタ(バンドパスフィルタ)74にも入力され、そこで矩形波を構成する25kHz以外の高調波成分が除去(減衰)されると共に、リファレンス電圧生成部72で生成されたリファレンス電圧が入力され、よって中点を2.5Vとする振幅5V、周波数25kHzの正弦波(sin波)が生成される。
【0039】
帯域2次フィルタ74で生成された正弦波は、反転増幅部(オペアンプ)76で波形の反転と振幅の増幅処理が施された後(処理後の波形の中点も前記したリファレンス電圧とされる)、RCフィルタ(ローパスフィルタ)78を介して励磁コイル16(具体的には、第1の励磁コイル16aおよびそれに接続された第2の励磁コイル16b)に励磁信号として供給される。励磁コイル16に励磁信号が供給されると、2次側検出コイル20と3次側検出コイル22には、ステアリングシャフト36(図3で図示せず)に印加された操舵トルクの方向および大きさに応じた位相の出力(電圧波形)が生じる。
【0040】
この実施の形態では、上記した如く、励磁信号である正弦波はECU60から出力される矩形波を分周して得た波形から生成する、即ち、励磁信号をデジタル信号から生成するようにしたので、温度変化や電源電圧の変動の影響を受け難い安定した励磁信号を供給することができる。従って、2次側検出コイル20と3次側検出コイル22が出力する波形も安定するため、トルクの検出精度を向上させることができる。このため、運転者からステアリングホイール34を介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを向上させることができる。
【0041】
さらに、帯域2次フィルタ74や反転増幅部76、RCフィルタ78といった励磁信号を生成するためのアナログ回路の特性に個体差(製造バラツキ)が生じた場合には、外部からのプログラミングによってカウンタの設定値(カウント値)を変更し、分周器60aの分周比を変更することにより、アナログ回路に入力される矩形波の周波数をアナログ回路の特性、特に帯域2次フィルタ74の時定数に対応した値に設定することができる。このため、アナログ回路の特性に個体差が生じた場合であっても、ノイズを含まない励磁信号(正弦波)を生成することができ、トルクの検出精度を一層向上させることができる。
【0042】
また、正弦波(励磁信号)の中点を示すリファレンス電圧を矩形波のデューティ比50%に相当する電圧としたので、図4に示す如く、励磁電源から供給される電圧Vccに変動が生じて正弦波の振幅が変化しても、それに追従して振幅の中点を示すリファレンス電圧Vrefも変化することになる。例えば、励磁電源の電圧Vccが5.2Vを示すとき、リファレンス電圧Vrefはその50%、即ち、2.6Vとなる。
【0043】
このため、車載バッテリ62のような片電源(単電源)を利用して励磁信号を生成する場合でも、常に上下(具体的には、リファレンス電圧Vrefを中点としたときの上側の振幅と下側の振幅)で差の生じない大きな振幅の励磁信号を生成することができる。換言すれば、励磁電源から供給される最大電圧を利用して励磁信号を生成することができる。尚、図3に示す構成において励磁電源とは、車載バッテリ62から分周器60aに至るまでの各構成、即ち、車載バッテリ62、定電圧レギュレータ68、ECU60および分周器60aを示す。
【0044】
次いで、図5を参照し、2次側検出コイル20と3次側検出コイル22について詳説する。図5は、図3で符合Sで示すセンシング部の拡大図である。尚、センシング部Sは、励磁コイル16と、2次側検出コイル20と、3次側検出コイル22と、図示しないステアリングシャフト36(およびそれに固定された磁歪膜14)とからなる。
【0045】
図5に示すように、第1の励磁コイル16aに近接する位置には、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側コイル22aが配置される。前述したように、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側コイル22aは、巻き方向が逆向きに(背反的に)されて極性が相違させられる。具体的には、第1の励磁コイル16aと第1の2次側検出コイル20aは極性が同一にされると共に、第1の励磁コイル16aと第1の3次側コイル22aは極性が相違させられる。
【0046】
また、第2の励磁コイル16bに近接する位置には、第2の2次側検出コイル20bと第2の3次側コイル22bが設けられる。前述したように、第2の2次側検出コイル20bと第2の3次側コイル22bも、同様に巻き方向が逆向きに(背反的に)されて極性が相違させられる。具体的には、第2の励磁コイル16bと第2の2次側検出コイル20bは極性が相違させられると共に、第2の励磁コイル16bと第1の3次側コイル22bは極性が同一にされる。
【0047】
図示の如く、第1の励磁コイル16aと第2の励磁コイル16bは、それぞれ負電圧側と正電圧側が直列に接続される。他方、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bは、それぞれの負電圧側同士が直列に接続された差動結合とされる。また、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bは、それぞれの正電圧側同士が直列に接続された差動結合とされる。
【0048】
ここで、各コイルに生じる誘導電圧について説明する。同図において、矢印(黒)が自己誘導電圧を示し、矢印(白)が相互誘導電圧を示す。また、各矢印の添字は、1が励磁コイル、2が2次側検出コイル、3が3次側検出コイルの起電力によって生じた誘導電圧であることを示す。
【0049】
符合aが付される第1のコイル(16a,20a,22a)を例にとって説明すると、第1の励磁コイル16aに励磁信号が供給されて電圧が印加されると、第1の励磁コイル16aには電流i1が流れると共に、その流れ方向と逆向きの自己誘導電圧が生じる。このとき、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aには、相互誘導電圧が生じる。
【0050】
第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aに誘導電圧が生じると、各コイルには電流(誘導電流)i2,i3が発生すると共に、発生した電流と逆向きの自己誘導電圧が生じる。第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aに自己誘導電圧が生じると、それに起因して第1の励磁コイル16aに相互誘導電圧が生じるため、第1の励磁コイル16aの見掛け上のインダクタンスが変化する(流れる電流が変化する)。
【0051】
しかしながら、この実施の形態にあっては、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aの巻き方向が逆向きに(背反的に)されていることから、2つのコイルに流れる電流の位相が180度ずれるため、それらに生じる自己誘導電圧も対向する。従って、i2=i3ならば、第1の2次側検出コイル20aと第1の3次側検出コイル22aに生じる自己誘導電圧同士が相殺されて零になると共に、それらに起因して生じる第1の励磁コイル16aの相互誘導電圧も相殺されて零になる。
【0052】
よって各コイルにおいて発生する誘導電圧は、符合bが付される第2のコイル(16b,20b,22b)を例にとって示すように、励磁コイル16の自己誘導電圧と、それに起因して生じる2次側検出コイル20と3次側検出コイルの22の相互誘導電圧のみとなる。即ち、検出コイル20,22の自己誘導電圧に起因する励磁コイル16のインダクタンスの変化が生じなくなり、検出コイル20,22の出力が印加されたトルクのみを反映する値となる。
【0053】
このように、2次側検出コイル20と3次側検出コイル22のコイルの巻き方向を逆方向に(背反的に)したため、検出コイル20,22の自己誘導電圧およびそれに起因して発生する励磁コイル16の相互誘導電圧が相殺され、励磁コイル16のインダクタンスは変化しない。このため、検出コイル20,22の出力と印加されたトルクの関係が比例関係となり、よってトルクの検出精度を向上させることができる。
【0054】
次いで、温度変化に起因するインダクタンスの変化について説明する。前述した如く、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bは、負電圧側同士が直列に接続された差動結合とされるため、温度変化に起因するインダクタンスの変化が第1および第2の2次側検出コイル20a,20bのそれぞれで生じたとしても、2次側検出コイル20全体としてはインダクタンスの変化は相殺されて零となる。また、3次側検出コイル22においても、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bが正電圧側同士の差動結合とされるため、同様にインダクタンスの変化は相殺されて零となる。
【0055】
また、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bを負電圧側同士の差動結合とすると共に、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bを正電圧側同士の差動結合としたため、トルクセンサ10を電動パワーステアリング装置に装着して大きな温度変化に曝される場合でも、温度変化に起因するインダクタンスの変化を相殺してその影響を解消することができ、よって安定した検出特性を得ることができる。このため、運転者からステアリングホイール34を介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。
【0056】
図3の説明に戻ると、RCフィルタ78から出力された励磁信号、より具体的には、実際に励磁コイル16に供給される電圧波形は、2次側バイアス電圧生成部80にも入力され、そこで位相が90度進められた2次側cos波が生成される。また、励磁信号(実際に励磁コイル16に入力される電圧波形)は3次側バイアス電圧生成部82にも入力され、そこで位相が90度遅らされた(−90度進められた)3次側cos波が生成される。
【0057】
2次側検出コイル20の出力(電圧波形)は2次側加算部84で前記した2次側cos波が加算され、2次側加算波形が生成される。また、3次側検出コイル22の出力(電圧波形)は3次側加算部86で前記した3次側cos波が加算され、3次側加算波形が生成される。即ち、2次側cos波と3次側cos波は、各検出コイルが出力した電圧波形に加算されるバイアス電圧を意味する。
【0058】
図6は、ステアリングシャフト36にトルクが印加されていないときの2次側加算波形などの各波形を示す説明グラフである。また、図7は、同様にステアリングシャフト36にトルクが印加されていないときの3次側加算波形などの各波形を示す説明グラフである。
【0059】
図6に示すように、ステアリングシャフト36にトルクが印加されていないときは、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bの出力が相殺され、V2で示す2次側検出コイル20全体としての出力(以下、「2次側出力」と呼ぶ)は、リファレンス電圧Vrefと一致する(零となる)。従って、Vplus2で示す2次側加算波形は、Vcos2で示す2次側cos波と一致する。尚、実際に励磁コイル16に供給される励磁信号(正弦波)をVsinで示す。
【0060】
また、図7に示すように、ステアリングシャフト36にトルクが印加されていないときは、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bの出力も相殺され、V3で示す3次側検出コイル22全体としての出力(以下、「3次側出力」と呼ぶ)はリファレンス電圧Vrefと一致する(零となる)。従って、Vplus3で示す3次側加算波形は、Vcos3で示す3次側cos波と一致する。
【0061】
他方、ステアリングシャフト36に右回転方向のトルクが印加されると、第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20bのインダクタンスのバランスが崩れ、図8に示すように、励磁信号Vsinと同位相の2次側出力V2が生じる。このため、2次側加算波形Vplus2は、2次側cos波Vcos2より位相が遅れ方向にずれる。ステアリングシャフト36に右回転方向のトルクが印加されたときの2次側cos波Vcos2に対する2次側加算波形Vplus2の位相差(共にリファレンス電圧Vrefを示すときの位相差)を「R2」で示す。
【0062】
また、3次側検出コイル22においても、第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22bのインダクタンスのバランスが崩れることから、図9に示すように、励磁信号Vsinと同位相の3次側出力V3が生じる。このため、3次側加算波形Vplus3は、3次側cos波Vcos3より位相が進み方向にずれる。ステアリングシャフト36に右回転方向のトルクが印加されたときの3次側cos波Vcos3に対する3次側加算波形Vplus3の位相差(共にリファレンス電圧Vrefを示すときの位相差)を「R3」で示す。
【0063】
ステアリングシャフト36に左回転方向のトルクが印加されたときの2次側加算波形などの各波形を図10に示すと共に、3次側加算波形などの各波形を図11に示す。
【0064】
2次側出力V2は、図10に示すように、右回転方向のトルクが印加されたときのそれに対して180度位相がずれた波形となる。従って、2次側cos波Vcos2と2次側加算波形Vplus2の位相差(共にリファレンス電圧Vrefを示すときの位相差。「L2」で示す)も180度反対となり、2次側cos波Vcos2より位相が進み方向にずれる。また、3次側出力V3も、図11に示すように、右回転方向のトルクが印加されたときのそれに対して180度位相がずれた波形となり、3次側cos波Vcos3と3次側加算波形Vplus3の位相差(共にリファレンス電圧Vrefを示すときの位相差。「L3」で示す)も180度反対となる。即ち、3次側cos波Vcos3より位相が遅れ方向にずれる。
【0065】
図12に、印加されるトルクに対する2次側出力V2と3次側出力V3の関係を示す。前述の如く、2次側検出コイル20を負電圧側同士の差動結合としたのに対し、3次側検出コイル22を正電圧側同士の差動結合としたため、2次側出力V2と3次側出力V3は印加されるトルクに対して相反する特性を有する。
【0066】
このため、2次側出力V2と3次側出力V3のそれぞれにバイアス電圧を印加し、よって得た波形(即ち、2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3)とバイアス電圧(即ち、2次側cos波Vcos2と3次側cos波Vcos3)の位相差の方向と大きさを検出することで、印加されたトルクの方向と大きさを正確に検出することができる。
【0067】
ここで、励磁コイル16に発生する自己誘導電圧は、印加される電圧に対して逆向きの起電力となるため、実際に励磁コイル16に供給される励磁信号Vsinと90度の位相差を有する。従って、励磁信号Vsinの位相を90度ずらした波形をバイアス電圧とすることで前記位相差が最大となり、かつ左右のトルクに対して同一の位相差を得ることができる。換言すれば、トルクの検出感度が最大となると共に、左右のトルクに対して同一の感度を得ることができる。
【0068】
これについて、図13および図14を参照して説明する。図13は、2次側出力V2に2次側cos波Vcos2を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。また、図14は、2次側出力V2に、励磁信号Vsinに対して60度位相ずれしたバイアス電圧を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。両図において、V2(+)はステアリングシャフト36に右回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示し、V2(−)は左回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示す。
【0069】
図13および図14において、θRは励磁信号が生成されてから実際に励磁コイル16に供給されるまでの間に直流抵抗成分によって生じる位相差である。このθRが生じることから、前述の2次側および3次側バイアス電圧生成部80,82では、実際に励磁コイル16に供給される励磁信号Vsinの位相を所定量ずらして2次側および3次側cos波Vcos2,Vcos3を得るようにした。
【0070】
図13に示すように、右回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示すベクトルに、2次側cos波Vcos2を示すベクトルを加算して合成することで、2次側加算波形Vplus2を示すベクトル(Vplus2(+))と2次側cos波Vcos2を示すベクトルのなす角度、即ち、位相差を最大とすることができる。また、同図から、2次側出力V2の電圧値が大きくなってそのベクトルが大きくなるに従って、2次側加算波形Vplus2を示すベクトルと2次側cos波Vcos2を示すベクトルのなす角度が大きくなり、位相差が大きくなることが分かる。即ち、トルクが印加されることによって発生する透磁率の増減を電圧値で検出し、さらにその電圧値の変化を位相の変化で記述することができる。
【0071】
尚、図14に示すように、右回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示すベクトルに90度以外のバイアス電圧、例えば60度のバイアス電圧を加えることによっても、2次側加算波形Vplus2を示すベクトルとバイアス電圧を示すベクトルのなす角度、即ち、位相差は増大するが、90度の2次側cos波Vcos2を加えた場合に比して、その増加量は小さくなる。
【0072】
また、同じ60度のバイアス電圧を、左回転方向のトルクが印加されたときの2次側出力V2を示すベクトル(V2(−))に加算すると、2次側加算波形Vplus2を示すベクトル(Vplus2(−))と2次側cos波Vcos2を示すベクトルとのなす角度が、右回転方向のトルクが印加されたときのそれと相違するという不具合がある。即ち、入力されるトルクの大きさが同じでも、入力方向によって位相の変化量(ずれ量)が相違するため、右回転方向のトルクと左回転方向のトルクで検出感度が一致しないという不都合がある。
【0073】
これに対し、図13に示すように、+90度の2次側cos波Vcos2を加算することで、左右の角度の変化量(位相の変化量(ずれ量)の絶対値)を一致させることができ、よって右回転方向のトルクと左回転方向のトルクの検出感度を一致させることができる。
【0074】
尚、3次側出力V3と3次側cos波Vcos3のベクトル合成については、図13および図14において括弧内に記載した+と−が逆になると共に、+90度を示すベクトルの代わりに、それと逆向きの−90度を示すベクトルが使用される以外、上記の説明がそのまま妥当する。
【0075】
このように、励磁コイル16に供給される励磁信号Vsinの位相を所定量ずらして得たバイアス電圧と2次側および3次側検出コイル20,22の出力V2,V3を加算するようにしたので、加算値である2次側および3次側加算波形Vplus2,Vplus3と、その比較対象であるバイアス電圧(即ち、2次側および3次側cos波Vcos2,Vcos3)との位相のずれを大きくして検出感度を向上させることができるため、トルクの検出精度を向上させることができる。
【0076】
さらに、前記バイアス電圧を、励磁信号Vsinの位相を90度進めて生成した2次側cos波Vcos2と、励磁信号Vsinの位相を90度遅せて生成した3次側cos波Vcos3とすることで、2次側および3次側加算波形Vplus2,Vplus3と2次側および3次側cos波Vcos2,Vcos3との位相ずれが最大となって検出感度を一層向上させることができると共に、左右のトルクに対しても検出感度が同一となるため、より一層検出精度を向上させることができる。このため、運転者からステアリングホイール34を介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。
【0077】
尚、2次側cos波Vcos2と3次側cos波Vcos3の位相を180度ずらして(90度と−90度に)設定したのは、図15に示すように、例えば処理回路28が温度変化などの影響を受けて2次側cos波Vcos2と3次側cos波Vcos3のそれぞれの位相にバラツキが生じても、それぞれのべクトルは同じ回転方向に動くことから、2次側と3次側でその影響が相殺されるためである。
【0078】
図3の説明に戻ると、位相比較部90は、上記した2次側加算波形Vplus2と2次側cos波Vcos2の位相差(ずれ)を検出する。具体的には、論理積回路(素子)、より具体的にはAND回路(2次側AND回路。図示せず)に励磁信号Vsinと2次側加算波形Vplus2を入力し、印加トルクの大きさと方向(換言すれば、2次側加算波形Vplus2と2次側cos波Vcos2の位相差)に対応した矩形波を得る。これを2次側検出トルクVt2とする。
【0079】
さらに、位相比較部90は、3次側加算波形Vplus3を図示しないインバータで反転させて得た波形(以下、「反転後3次側加算波形Vplus3inv」という)と3次側cos波Vcos3の位相差(ずれ)を検出する。具体的には、論理積回路(素子)、より具体的にはAND回路(3次側AND回路。図示せず)に励磁信号Vsinと反転後3次側加算波形Vplus3invを入力し、印加トルクの大きさと方向(換言すれば、反転後3次側加算波形Vplus3invと3次側cos波Vcos3の位相差)に対応した矩形波を得る。これを3次側検出トルクVt3とする。図6から図11の下部に、反転後3次側加算波形Vplus3inv、2次側検出トルクVt2および3次側検出トルクVt3などを示す各矩形波を示す。
【0080】
図6から図11に示す如く、2次側検出トルクVt2は、2次側加算波形Vplus2と励磁信号Vsinの両方がリファレンス電圧Vref以上となったときにH(High)信号(レベル)とされ、いずれか一方がリファレンス電圧Vrefを下回るときはL(Low)信号(レベル)とされる。また、3次側検出トルクVt3は、反転後3次側加算波形Vplus3invと励磁信号Vsinの両方がリファレンス電圧Vref以上となったときにH信号とされ、いずれか一方がリファレンス電圧Vrefを下回るときにL信号とされる。尚、理解の便宜のため、図6から図11において、H信号の出力期間をハッチングで示す。
【0081】
図6と図7を比較して分かるように、印加されるトルクが零のときは、2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3は常に同一の出力を示す。他方、図8と図9に示すように右回転方向のトルクが印加されると、印加トルクの大きさに比例して2次側検出トルクVt2のH信号の出力時間が延長される一方、3次側検出トルクVt3のH信号の出力時間が短縮される。また、図10と図11に示すように、左回転方向のトルクの印加されると、印加トルクの大きさに比例して2次側検出トルクVt2のH信号の出力時間が短縮される一方、3次側検出トルクVt3のH信号の出力時間が延長される。
【0082】
このように、2次側検出トルクVt2は、2次側加算波形Vplus2と2次側cos波Vcos2の位相差、即ち、印加トルクの大きさと方向に応じてH信号の出力時間が増減する。また、3次側検出トルクVt3も、反転後3次側加算波形Vplus3invと3次側cos波Vcos3の位相差、即ち、印加トルクの大きさと方向に応じてH信号の出力時間が増減する。そして、2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3は、印加トルクの方向に対して相反する出力を示すので、それらの差分をとることで、ステアリングシャフト36に印加されたトルクの方向と大きさを感度良く検出することができる。
【0083】
尚、図6から図11において、リファレンス電圧Vrefは前記したように励磁信号の中点を正確に示していることから、励磁信号Vsinを所定量位相させて得た2次側cos波Vcos2や3次側cos波Vcos3の中点、さらには2次側出力V2や3次側出力V3の中点も正確に示される。従って、2次側加算波形Vplus2や3次側加算波形Vplus3(および反転後3次側加算波形Vplus3inv)の中点も正確に示される。
【0084】
そのため、2次側cos波Vcos2と2次側加算波形Vplus2の位相差、および3次側cos波Vcos3と反転後3次側加算波形Vplus3invの位相差を正確に検出することができ、トルクの検出精度を向上させることができる。従って、運転者からステアリングホイール34を介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。尚、この実施の形態にあって、検出波形の振幅の大きさは検出していないが、上記の如く、この実施の形態に係るトルクセンサ10は検出波形の振幅の中点を正確に知ることができるため、振幅の大きさを精度良く検出することも可能である。
【0085】
図3の説明に戻ると、位相比較部90から出力された2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3は、それぞれCRフィルタ(平滑回路)92,94を介して平滑化された後、ECU60に入力されると共に、差動増幅部96に入力されて前記した差分が増幅される。差動増幅部96の出力は、最終的な検出トルクVtfとしてECU60に入力される。
【0086】
ECU60は、入力された最終的な検出トルクVtf(および2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3)に基づき、ステアリングシャフト36に入力されたトルク(操舵トルク)の方向と大きさを検出する。
【0087】
このように、励磁信号の位相を所定量ずらして得たバイアス電圧を2次側出力V2および3次側出力V3のそれぞれに加算し、よって得た2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3(具体的には、それを反転させて得た反転後3次側加算波形Vplus3inv)のそれぞれをバイアス電圧と位相で比較し、その位相差に基づいてトルクを検出する、即ち、トルクの印加によって発生する透磁率の増減を電圧値の変化で検出し、その電圧値の変化を位相で検出するようにしたので、電圧値の変化のみでトルクを検出する場合に比して検出感度が高くなると共に、検出電圧が微弱であっても電動機54などの通電電流からのノイズの影響を受け難くなり、よってトルクの検出精度を向上させることができる。
【0088】
さらには、相反する特性を有する2次側出力V2と3次側出力V3(具体的には、それらから求められる2次側検出トルクVt2と3次側検出トルクVt3)のそれぞれに基づいて前記位相差を検出し、それらの差分を増幅してトルクを検出するようにしたので、検出感度がより向上し、差動増幅部96による増幅率を小さくすることができ、他の電気機器からのノイズの影響を受け難くなり(即ち、ノイズが増幅されないため、S/N比を大きくすることができ)、よってトルクの検出精度を一層向上させることができる。また、温度変化に起因するインダクタンスの変化および差動増幅部96の増幅率の変化を2つの出力(位相差)で相殺することができるため、その影響を解消して安定した検出特性を得ることができる。
【0089】
また、2次側出力V2と3次側出力V3に加算されるバイアス電圧を、それぞれ励磁信号の位相を90度または−90度ずらすことによって生成したので、バイアス電圧(2次側cos波Vcos2と3次側cos波Vcos3)に対する加算波形(2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3(具体的には、それを反転させて得た反転後3次側加算波形Vplus3inv))の位相差が最大となって検出感度を一層向上させることができると共に、トルクの入力方向が異なっても検出感度が一致するため、より一層検出精度を向上させることができる。
【0090】
図3の説明を続けると、2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3(インバータで反転させる前の波形)は、さらに故障検出部98に入力される。
【0091】
ここで、トルクセンサ10が正常な状態にある場合、2次側加算波形Vplus2は、図6、図8および図10に示すように、トルクの印加の有無に関わらず、励磁信号Vsinの電圧値がリファレンス電圧Vrefを上回る瞬間(下側の振幅から上側の振幅に移行する瞬間)において常にH信号を示すと共に、励磁信号Vsinの電圧値がリファレンス電圧Vrefを下回る瞬間(上側の振幅から下側の振幅に移行する瞬間)において常にL信号を示す。また、3次側加算波形Vplus3は、図7、図9および図11に示すように、トルクの印加の有無に関わらず、励磁信号Vsinの電圧値がリファレンス電圧Vrefを上回る瞬間において常にL信号を示すと共に、励磁信号Vsinの電圧値がリファレンス電圧Vrefを下回る瞬間において常にH信号を示す。しかしながら、トルクセンサ10に故障が発生すると、上記した出力の関係が崩れる場合がある。
【0092】
そこで、故障検出部98は、2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3の出力を励磁信号Vsinの立ち上がりと立ち下がりのタイミングで検出し、検出値が上記した関係にないとき、トルクセンサ10の故障を示す信号を生成してECU60に出力するようにした。
【0093】
ECU60は、故障検出部98からトルクセンサ10の故障を示す信号が出力されたとき、前記した警告灯66を点灯させて運転者に警報する。
【0094】
ここで、前述の如く、励磁信号VsinをECU60のクロック周波数(動作周波数)に基づいて生成するようにしたので、励磁信号Vsinの立ち上がりと立ち下がりのタイミングにおける2次側加算波形Vplus2と3次側加算波形Vplus3の検出を、ECU60の処理に同期して行うことができる。即ち、トルクセンサ10が出力を生じてからECU60で故障検出が行なわれるまでの時間的な遅れを解消することができる。このため、この実施の形態に係るトルクセンサ10にあっては、故障検出をできる限り早く(タイムリーに)行なう必要があるという、車両に搭載されるセンサに対する要求を十分に満足することができる。
【0095】
また、検出コイルを2系統(2次側と3次側)備え、それらの出力に基づいてトルクセンサ10の故障を検出するようにしたので、トルクセンサ10の故障をより正確に検出することができる。
【0096】
以上のように、この実施の形態に係るトルクセンサにあっては、トルク伝達軸12(およびステアリングシャフト36)に固定され、磁気異方性を備えた磁歪膜14と、前記磁歪膜14に近接して配置された励磁コイル16および検出コイル(2次側検出コイル20と3次側検出コイル22)と、前記励磁コイル16が励磁されたときの前記検出コイルの出力(2次側出力V2と3次側出力V3)を入力して入力値から前記トルク伝達軸12に印加されるトルク(2次側検出トルクVt2、3次側検出トルクVt3、最終的な検出トルクVtf)を検出する検出部(処理回路28)とを備えたトルクセンサ10において、前記検出コイルを4個(具体的には、2次側検出コイル20を2個(第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20b)、3次側検出コイル22を2個(第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22b)の計4個)備え、その中の2個(第1の2次側検出コイル20aと第2の2次側検出コイル20b)を負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個(第1の3次側検出コイル22aと第2の3次側検出コイル22b)を、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個のそれと巻き方向を逆向き(背反的)にして正電圧側同士の差動結合とし、さらに前記検出部は、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力(2次側出力V2)と前記正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力(3次側出力V3)とに基づいて前記トルク伝達軸12に印加されるトルクVt2,Vt3,Vtfを検出するように構成した。
【0097】
また、前記トルクセンサ10は、電動機(電動モータ)54によって車両30の操舵トルクを補助する電動パワーステアリング装置の前記操舵トルクを検出するトルクセンサであるように構成した。
【0098】
尚、上記において、2個の検出コイルを2組設け、それぞれを負電圧側同士および正電圧側同士の差動結合としたが、検出コイルの個数はそれに限られるものではなく、偶数個の検出コイルを2組設け、それぞれを負電圧側同士および正電圧側同士の差動結合とすることにより、同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、この発明に係るトルクセンサ10を、電動パワーステアリング装置に入力される操舵トルクを検出する場合を例にとって説明したが、トルクセンサ10の用途はそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0100】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、検出コイルを4個備え、その中の2個の検出コイルを負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個の検出コイルを正電圧側同士の差動結合としたので、温度変化に起因するインダクタンスの変化を相殺してその影響を解消し、よって安定した検出特性を得ることができる。また、負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの巻き方向と正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの巻き方向を逆向きに(背反的に)して各検出コイルの極性を相違させるようにしたので、検出コイルの自己誘導電圧およびそれに起因する励磁コイルの相互誘導電圧が相殺されて励磁コイルのインダクタンスに変化が生じないため、検出コイルの出力と印加されたトルクの関係が比例関係となり、よってトルクの検出精度を一層向上させることができる。
【0101】
請求項2項にあっては、請求項1項に係るトルクセンサは上記した効果を有するので、車両に搭載される電動パワーステアリング装置に装着されて大きな温度変化に曝されるときも、インダクタンスの変化の影響を解消して安定した検出特性を得ることができるため、運転者からステアリングホイールを介して印加される操舵トルクを精度良く検出することができ、よって電動パワーステアリングの操舵フィーリングを一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一つの実施の形態に係るトルクセンサを模式的に示す原理図である。
【図2】図1に示すトルクセンサを電動パワーステアリング装置の操舵トルクを検出するトルクセンサとして利用した場合を示す説明図である。
【図3】図1に示すトルクセンサの構造をより詳細に示すブロック図である。
【図4】図1に示すトルクセンサのリファレンス電圧を示す説明図である。
【図5】図1に示すトルクセンサのうち、センシング部を拡大して示す説明図である。
【図6】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸にトルクが印加されていないときの2次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図7】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸にトルクが印加されていないときの3次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図8】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸に右回転方向の印加トルクが入力されたときの2次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図9】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸に右回転方向の印加トルクが入力されたときの3次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図10】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸に左回転方向の印加トルクが入力されたときの2次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図11】図1に示すトルクセンサにおいてトルク伝達軸に左回転方向の印加トルクが入力されたときの3次側検出コイルなどの出力(電圧波形)を示す説明グラフである。
【図12】図1に示すトルクセンサの2次側検出コイルと3次側検出コイルの、印加トルクに対する出力特性を示すグラフである。
【図13】図1に示すトルクセンサの2次側検出コイルの出力に2次側cos波を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。
【図14】図1に示すトルクセンサの2次側検出コイルの出力に励磁信号に対して60度位相ずれしたバイアス電圧を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。
【図15】図1に示すトルクセンサの2次側検出コイルの出力に2次側cos波と3次側cos波を加えたときのベクトル合成を示す説明図(フェーザ図)である。
【符号の説明】
10 トルクセンサ
12 トルク伝達軸
14 磁歪膜(1次側コイル)
14a 第1の磁歪膜
14b 第2の磁歪膜
16 励磁コイル
16a 第1の励磁コイル
16b 第2の励磁コイル
20 2次側検出コイル(2次側コイル)(検出コイル)
20a 第1の2次側検出コイル(検出コイル)
20b 第2の2次側検出コイル(検出コイル)
22 3次側検出コイル(3次側コイル)(検出コイル)
22a 第1の3次側検出コイル(検出コイル)
22b 第2の3次側検出コイル(検出コイル)
28 処理回路(検出部)
30 車両
36 ステアリングシャフト(トルク伝達軸)
Claims (2)
- トルク伝達軸に固定され、磁気異方性を備えた磁歪膜と、前記磁歪膜に近接して配置された励磁コイルおよび検出コイルと、前記励磁コイルが励磁されたときの前記検出コイルの出力を入力して入力値から前記トルク伝達軸に印加されるトルクを検出する検出部とを備えたトルクセンサにおいて、前記検出コイルを4個備え、その中の2個を負電圧側同士の差動結合とすると共に、残余の2個を、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個のそれと巻き方向を逆向きにして正電圧側同士の差動結合とし、さらに前記検出部は、前記負電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力と前記正電圧側同士の差動結合とされた2個の検出コイルの出力とに基づいて前記トルク伝達軸に印加されるトルクを検出するように構成したことを特徴とするトルクセンサ。
- 前記トルクセンサは、電動機によって車両の操舵トルクを補助する電動パワーステアリング装置の前記操舵トルクを検出するトルクセンサであることを特徴とする請求項1項記載のトルクセンサ。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002355734A JP2004191068A (ja) | 2002-12-06 | 2002-12-06 | トルクセンサ |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002355734A JP2004191068A (ja) | 2002-12-06 | 2002-12-06 | トルクセンサ |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2004191068A true JP2004191068A (ja) | 2004-07-08 |
Family
ID=32756337
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2002355734A Withdrawn JP2004191068A (ja) | 2002-12-06 | 2002-12-06 | トルクセンサ |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2004191068A (ja) |
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| US7506554B2 (en) | 2004-08-25 | 2009-03-24 | Honda Motor Co., Ltd. | Magnetostrictive torque sensor system and electric steering system |
| US7661324B2 (en) | 2007-06-22 | 2010-02-16 | Honda Motor Co., Ltd. | Magnetostrictive torque sensor and electric power steering apparatus |
-
2002
- 2002-12-06 JP JP2002355734A patent/JP2004191068A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| US7506554B2 (en) | 2004-08-25 | 2009-03-24 | Honda Motor Co., Ltd. | Magnetostrictive torque sensor system and electric steering system |
| US7661324B2 (en) | 2007-06-22 | 2010-02-16 | Honda Motor Co., Ltd. | Magnetostrictive torque sensor and electric power steering apparatus |
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Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060207 |