JP2004028125A - ダイナミックダンパ - Google Patents
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Abstract
【課題】大きな温度変化に晒された場合でも、目的とする複数の乃至は広い周波数域の振動に対して有効な制振効果を安定して発揮し得る、コンパクトで新規な構造のダイナミックダンパを提供すること。
【解決手段】金属等からなる硬質のバネ部材12を用いて、かかるバネ部材12により梁状の弾性変形部22を構成せしめて、該弾性変形部22の長手方向に相互に離隔して複数のマス部14,15を設けることにより、防振対象部材16に対して2自由度以上の副振動系を構成し、更に、それら複数のマス部14,15の振動変位に際して減衰作用を及ぼす減衰手段28,30を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】金属等からなる硬質のバネ部材12を用いて、かかるバネ部材12により梁状の弾性変形部22を構成せしめて、該弾性変形部22の長手方向に相互に離隔して複数のマス部14,15を設けることにより、防振対象部材16に対して2自由度以上の副振動系を構成し、更に、それら複数のマス部14,15の振動変位に際して減衰作用を及ぼす減衰手段28,30を設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は、制振対象部材に対してマス部材をバネ部材を介して弾性的に支持せしめることにより、主振動系たる制振対象部材に対する副振動系を構成して、制振対象部材の振動を抑えるダイナミックダンパに関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、自動車におけるボデー等の如き振動部材(制振対象部材)において問題となる振動を低減する方法としては、▲1▼振動部材の表面にアスファルトシートやゴムシートを貼着して制振材を構成する方法や、▲2▼振動部材に対してバネ部材を介してマス部材を連結支持せしめてダイナミックダンパを構成する方法等が、知られている。
【0003】
ところが、上記▲1▼の制振材においては、アスファルトシートやゴムシートにおける制振効果の温度依存性が大きく、例えば自動車のボデー等のように内燃機関や日射等の影響で振動部材の温度が60℃以上に達すると制振効果が大幅に低下してしまうという問題があった。しかも、振動部材における1次等の低次の振動モードでは、アスファルトシートに生ぜしめられる剪断歪が小さくなることに起因して、十分な振動低減効果を得ることが難しいという問題があった。
【0004】
また、前記▲2▼のダイナミックダンパにおいては、バネ部材として一般に採用されているゴム弾性体の剛性が小さいことから、剛性を確保するためにゴム弾性体の容積を大きくしなければならず、結果的にダイナミックダンパの大型化を避け難いという問題があった。しかも、ダイナミックダンパは、それ自身のマス−バネ系からなる副振動系の固有振動数を、振動部材において制振すべき特定の振動周波数域に設定することにより特性のチューニングが施されるが、有効な制振効果が比較的に狭い一つのチューニング周波数域だけでしか有効に発揮され難く、それに加えて、ゴム弾性体のばね定数の温度依存性が大きいことから、例えば自動車のボデー等のように季節や環境等の変化で60℃以上の温度差に晒される場合には、チューニング周波数が防振すべき振動周波数から外れてしまって、有効な制振効果を安定して得難いという問題があったのである。
【0005】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、コンパクトで且つ制振効果の温度依存性が小さく、しかも複数の乃至は広い周波数域の振動に対して有効な制振効果を安定して発揮し得ると共に、振動部材における低次モードの振動に対しても優れた制振効果を発揮し得る、新規な構造のダイナミックダンパを提供することにある。
【0006】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することが出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0007】
本発明の第一の態様は、(a)制振対象部材に対して固定的に取り付けられる取付部が端部に設けられて梁状の弾性変形部を形成する硬質のバネ部材と、(b)該バネ部材における梁状の前記弾性変形部において長手方向に相互に離隔して設けられて、該弾性変形部の弾性変形に基づいて変位せしめられる複数のマス部と、(c)前記弾性変形部の弾性変形に基づく前記複数のマス部の振動変位に際して減衰作用を及ぼす減衰手段とを、含んで形成することにより2自由度以上の副振動系を構成せしめたダイナミックダンパを、特徴とする。
【0008】
このような本態様のダイナミックダンパにおいては、副振動系のバネ成分と減衰成分を異なる部材で実質的に略分担させて構成することが可能となる。即ち、バネ成分は、硬質のバネ部材によって主に分担させて構成する一方、減衰成分は、ダンピング材と拘束材によって主に分担させて構成することが出来る。その結果、バネ部材の材料として、例えば金属や硬質樹脂(例えばガラス繊維補強されたポリアミド系樹脂等の繊維補強樹脂)等を採用することにより、ばね定数の温度依存性を十分に小さく抑えることが可能となる。そして、このように副振動系のばね定数の温度変化に伴う変動が抑えられて、ダイナミックダンパのチューニング周波数の安定化が図られることから、環境温度の変動幅が大きい振動部材に装着される場合でも、予めチューニングされた特定周波数域の振動に対して、有効な制振効果を安定して得ることが可能となるのである。
【0009】
また、本態様のダイナミックダンパにおいては、弾性変形部に複数のマス部が設けられることにより、2自由度以上の副振動系が構成されることから、複数のマス部の質量とそれら各マス部を弾性支持せしめる弾性変形部における各ばね特性を適当に調節することによって、複数の周波数域で固有振動数を設定することが出来るのであり、それ故、制振対象部材における複数の周波数域の振動に対して、それぞれ副振動系の固有振動数をチューニングすることにより、それぞれ有効な制振効果を得ることが可能となるのである。
【0010】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記バネ部材の前記弾性変形部に対してダンピング材を被着することによって、前記減衰手段を構成したことを、特徴とする。このような本態様においては、硬質のバネ部材によってもたらされる副振動系のチューニング周波数の安定性を損なうことなく、副振動系における損失係数(ロスファクタ)をコンパクトに得ることが可能となる。なお、ダンピング材としては、例えば減衰係数が大きく且つ温度変化に伴う特定変化が小さいゴム材料が好適に採用され得る。また、ダンピング材は、弾性変形部の長手方向の略全長に亘って広がるように、加硫接着等で固着することが望ましく、それによって、複数のマス部の各ばね部を構成する部分に、それぞれ有効な損失係数が付与され得る。
【0011】
また、本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記ダンピング材における前記弾性変形部と反対の面に拘束材を固着せしめて、それら弾性変形部とダンピング材と拘束材を積層構造とし、且つ該拘束材のばね定数を該弾性変形部のばね定数よりも小さくしたことを、特徴とする。このような本態様においては、バネ部材が硬質材で形成されていることから小さな容積のバネ部材で十分なばね剛性を得ることが出来ると共に、ダンピング材にも拘束材が固着されていることから弾性変形部の変形に際してダンピング材における剪断変形が一層効率的に生ぜしめられて、一層小さな容積のダンピング材で有効な損失係数を得ることが出来るのであり、その結果、全体としてよりコンパクトなダイナミックダンパが実現され得る。
【0012】
しかも、バネ部材のばね定数を拘束材のばね定数よりも大きくしたことにより、バネ部材におけるばね定数が、副振動系のバネ成分として主体的に作用することとなり、それ故、バネ部材に対してダンピング材を介して固着された拘束材のばね定数が副振動系のバネ成分に及ぼす影響の、ダンピング材の温度変化に伴う特性変化に起因する変動も効果的に抑えられ得て、かかる副振動系におけるばね定数の安定化、延いてはチューニング周波数の安定がより有効に実現され得る。
【0013】
なお、本態様において、ダンピング材と拘束材は、弾性変形部の少なくとも一部において積層状態で形成されていれば良く、弾性変形部の全体に亘って設ける必要はない。例えば、弾性変形部の表面の全周に亘ってダンピング材を被覆形成しても良いが、弾性変形部の一つの面だけにダンピング材を被覆したり、或いは弾性変形部の全面をダンピング材で覆い、その一部だけに拘束材を被着しても良い。尤も、ダンピング材は、バネ部材の取付部にまでは至らない領域に固着することが望ましく、それによって、取付部をボルト止めや溶接等により、制振対象部材に対して容易に、しかも大きな強度と耐久性をもって固着せしめることが可能となる。
【0014】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記弾性変形部の弾性変形方向で該弾性変形部に対して隙間を隔てて非接着で独立変位可能に配設された独立マス部材によって、前記マス部を構成し、該独立マス部材が該弾性変形部に対して直接的且つ弾性的に当接されるようにすることにより、前記減衰手段を構成したことを、特徴とする。このような本態様においては、制振対象部材から副振動系に振動が入力されて弾性変形部が加振されることに伴い、独立マス部材が弾性変形部に対して相対的に変位せしめられることとなる。特に、副振動系の固有振動数域の振動入力時には、弾性変形部の振幅が大きくなることにより独立マス部材の相対変位も大きくなって、独立マス部材が弾性変形部に対して飛び跳ね的に変位せしめられて、独立マス部材が弾性変形部に対して直接的且つ弾性的に当接せしめられることとなる。その結果、独立マス部材の当接部への打ち当り(当接)に基づいて、振動部材に対する振動抑制効果が発揮されるのであり、結果的に副振動系において、見掛け上の損失係数(ロスファクタ)が大きくなったのと略同じ状態が発現される。要するに、弾性変形部において、耐熱性等が高いが減衰係数が小さい金属等の硬質の弾性材を採用した場合でも、独立マス部材の弾性変形部への打ち当りによって弾性変形部の振幅が抑えられることにより、共振ピークを含む広い周波数域で良好なる制振効果が実現され得るのである。
【0015】
なお、本態様において、独立マス部材は、その全体をゴム弾性体や合成樹脂材、或いはそれらの発泡材で形成したり、そのようなものに対して補強的に金属等の剛性材を固着することで形成することも可能であるが、その他、独立マス部材を高比重な金属等の剛性材で形成しても良く、その場合には、当接に際しての異音や衝撃の緩和等のために、独立マス部材と弾性変形部との当接面の少なくとも一方が、ゴム弾性体や合成樹脂材等の弾性材によって形成されることが望ましい。また、弾性変形部において独立マス部材が当接せしめられる当接面は、弾性変形部に対して直接に形成しても良いが、例えば、剛性材で別体形成されたハウジングを弾性変形部に溶接等で固着し、かかるハウジングに独立マス部材を収容配置せしめても良い。更に、複数のマス部の幾つかをこのような独立マス部材で構成することは、勿論、可能であり、また、前記第二又は第三の態様に係るダンピング材と組み合わせて、本態様に従う独立マス部材を採用しても良い。
【0016】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記バネ部材の一方の端部に前記取付部を設けることにより前記弾性変形部を片端支持の梁構造をもって構成して、該弾性変形部の長手方向の複数箇所に前記マス部を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、片持ち梁タイプのバネ部材が構成されて、目的とするダイナミックダンパを、例えば振動対象部材に沿って配設することも可能となり、より一層のコンパクト化が図られ得る。
【0017】
また、本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係るダイナミックダンパであって、前記弾性変形部の一方の端部において、前記取付部から立ち上がって該弾性変形部を前記制振対象部材から離隔位置せしめる立上部を設けると共に、該立上部によって該弾性変形部と該制振対象部材の対向面間に形成された空間に位置せしめられるようにして、前記マス部を該弾性変形部から突設したことを、特徴とする。このような本態様においては、制振対象部材と弾性変形部の間に隙間状の空間を巧く形成し、この空間を効率的に利用してマス部を配設することが可能となるのであり、特に平坦な装着面を有するパネル材等を制振対象部材とする場合等において、一層優れたスペース効率をもってダイナミックダンパを装着することが可能となる。
【0018】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記バネ部材の両端部に前記取付部を一対設けると共に、前記弾性変形部の両方の端部にそれぞれ取付部から立ち上がる一対の立上部を設けて該弾性変形部を門形構造とし、該弾性変形部において両立上部間に跨がって延びる天板部の中間位置に前記複数のマス部を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、一対の立上部が有利に弾性変形せしめられる方向と、天板部が有利に弾性変形せしめられる方向が略直交することとなり、それら両方向で、それぞれ副振動系として機能し得ることから、互いに異なる二つの方向で有効な制振効果を発揮し得る。なお、本態様において、好ましくは、門形構造とされたバネ部材の天板部の内周面から中央空所に突出するようにしてマス部が設けられる。また、天板部だけでなく立上部に対してマス部を設けても良い。
【0019】
また、本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係るダイナミックダンパであって、前記制振対象部材がパネル状体であり、前記副振動系における複数の固有振動数を、該パネル状体における一次の振動モードを含む複数の次数モードの振動周波数に対してそれぞれチューニングしたことを、特徴とする。このような本態様においては、従来構造の制振材を用いても有効な振動低減が難しく、ダイナミックダンパの装着スペースも確保し難い、例えば自動車のルーフパネルやフロアパネル、ドアパネル等のパネル状体において、コンパクトな配設スペースをもって有利に適用され得て、一次等の低次の振動モードを含む複数のモードの振動に対して、それぞれ有効な制振効果を発揮し得るダイナミックダンパが提供され得るのである。
【0020】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0021】
先ず、図1〜2には、本発明の一実施形態としてのダイナミックダンパ10の縦断面図と横断面図が示されている。このダイナミックダンパ10は、バネ部材12とマス部としての第一のマス金具14および第二のマス金具15を含んで構成されており、バネ部材12によってマス金具14,15を振動部材(制振対象部材)16に対して連結支持せしめることによって、振動部材16に装着されるようになっている。そして、かかる装着状態下では、バネ部材12とマス金具14,15によって構成される2自由度のマス−バネ振動系が、主振動系たる振動部材16に対する副振動系として機能して、動的吸振器として制振効果を発揮し得るようになっている。
【0022】
より詳細には、バネ部材12は、略一定の肉厚寸法で広がる板形状を有しており、長手方向(図1中の左右方向)の中間部分には、クランク状断面で段差状に屈曲した立上部18が、長手方向一方の側(図1中の左側)に偏倚して形成されている。そして、この立上部18を挟んで一方の端部側が平板形状の取付部20とされている一方、他方の端部側が平板形状で延び出す弾性変形部22とされている。
【0023】
そして、取付部20が、振動部材16に対して、例えば溶接等によって固着されることにより、ダイナミックダンパ10が振動部材16に装着されるようになっている。また、立上部18は、ダイナミックダンパ10の装着状態下でマス金具14が振動部材16に干渉しない程度に、取付部20からの立ち上がり高さを小さく設定することが、ダイナミックダンパ10をコンパクトに構成するために望ましい。
【0024】
また一方、弾性変形部22は、立上部18の立ち上がり高さよりも十分に大きな長さで、立上部18から振動部材16に沿うようにして略水平に延び出して形成されている。そして、ダイナミックダンパ10の装着状態下では、振動部材16と弾性変形部22の対向面間に所定間隔の空間24が形成されるようになっている。また、弾性変形部22には、外側面(振動部材16と反対側の面)26に対して、略全面を覆うようにダンピング材としてのゴムシート28が密着状態で重ね合わされて、加硫接着等で固着されている。更にまた、ゴムシート28の表面には、略全面を覆うようにして、拘束材としての金属プレート30が密着状態で重ねあわされて、加硫接着等で固着されている。
【0025】
要するに、弾性変形部22は、その略全体において、ゴムシート28と金属プレート30が重ね合わされて、三層の積層構造をもって構成されているのである。そして、これらゴムシート28と金属プレート30によって、弾性変形部22の弾性変形に際して減衰作用を及ぼす減衰手段が構成されている。
【0026】
さらに、弾性変形部22の内側面(振動部材16との対向面)32には、延び出し方向の先端の自由端部分に対して第一のマス金具14が重ね合わされて溶接等で固着されていると共に、延び出し方向の略中央部分に対して第二のマス金具15が重ね合わされて溶接等で固着されている。なお、これら第一及び第二のマス金具14,15は、ダイナミックダンパ10の振動部材16への装着状態下で弾性変形部22が弾性変形せしめられた際に、振動部材16への干渉が回避され得るように、弾性変形部22からの突出高さが設定されている。
【0027】
すなわち、上述の如く構成されたダイナミックダンパ10においては、弾性変形部22が、長手方向一端側に設けられた取付部20において振動部材16に固定された片端支持の梁構造をもって構成されており、その弾性変形可能な自由端と中間部分に対して第一のマス金具14と第二のマス金具15が取り付けられることによって、全体として、主振動系たる振動部材16における板厚方向(図1,2中の略上下方向)の振動に関して、2自由度の副振動系を構成するようになっている。
【0028】
なお、バネ部材12の形成材料としては、低減衰で高動ばねを発揮し得るように硬質の材料が採用され、具体的には鉄鋼等の金属材や繊維強化された合成樹脂材等が好適に採用される。また、ゴムシート28は、樹脂系のエラストマであっても良いが、大きな損失係数が得られるように、且つ温度変化に対する特性の安定性が十分であるゴム材料が採用され、具体的にはIIR(ブチルゴム)等が好適に採用される。更にまた、金属プレート30は、ゴムシート28の表面の変形に対して有効な拘束力を発揮し得るように、アルミニウム合金等の金属材や繊維強化された合成樹脂材等が好適に採用される。また、立上部18の立ち上がり高さを小さくして立上部18の剛性を大きく設定することにより、振動入力時における弾性変形が、弾性変形部22において有効に生ぜしめられるようにすることが望ましい。
【0029】
ここにおいて、ゴムシート28の両面に張り合わせられた弾性変形部22と金属プレート30は、動的ばね定数の値が、金属プレート30よりも弾性変形部22の方が十分に大きいように、材料や部材寸法等が設定されている。それにより、副振動系における動的ばね定数に関して、弾性変形部22が支配的とされており、金属プレート30は、バネ部材12の全面に亘って被着されていないことと相俟って、副振動系の動的ばね定数に対して大きな影響を及ぼさないようにされている。
【0030】
かかる目的を達成するために、具体的には、例えば、弾性変形部22を含むバネ部材12を、厚さ寸法:0.5mm〜4.0mm程度のステンレススチール製等とすると共に、ゴムシート28を、厚さ寸法:0.5mm〜4.0mm程度のIIR系のゴム製等とし、更に、金属プレート30を、厚さ寸法:0.1mm〜2.0mm程度のアルミニウム合金製等とすると共に、第一及び第二のマス金具14,15を、厚さ寸法:2〜20mm程度の鋳鉄製等とする構成が、例えば自動車のルーフパネルやサブフレーム等を振動部材16とする場合において有利に採用され得る。
【0031】
このような構造とされたダイナミックダンパ10においては、その装着状態下、振動部材16に板厚方向の振動が生ぜしめられると、それが加振力として弾性変形部22に及ぼされて図中の上下方向に剪断変形せしめられることにより一つの副振動系として作用する。それ故、かかる副振動系の固有振動数を、弾性変形部22を主体として構成されたバネ系の動的ばね定数と、第一及び第二のマス金具14,15を主体として構成されたマス系の質量とを調節して、振動部材16において防振すべき振動の周波数に対応させてチューニングすることにより、かかる防振すべき振動に対して有効な制振効果が発揮されることとなる。
【0032】
ここにおいて、かかる副振動系は、片持ち梁構造のバネ材としての弾性変形部22の長手方向に第一のマス金具14と第二のマス金具15が直列的に固着されることによって2自由度の振動系を構成している。即ち、本実施形態のダイナミックダンパ10は、第一のマス金具14と第二のマス金具15の二つのマス部を、弾性変形部22における支持端から第二のマス金具15に至る第一のバネ部34と、第二のマス金具15から第一のマス金具14に至る第二のバネ部36とによって、直列的に連結せしめた振動系を構成している。
【0033】
従って、第一のマス金具14の質量をm1 ,第二のマス金具15の質量をm2 とし、第一のバネ部34の自由長をL1 ,第二のバネ部36の自由長をL2 とすると、公知の振動方程式から下式が成立する。
【0034】
(1−α11m1 ω2 )(1−α22m2 ω2 )−α12α21m1 m2 ω4 =0
但し、
α11 = L1 3 / 3E・I
α22 = (L1 +L2 )3 / 3E・I
α12 = α21 = ((2L1 +3L2 )/ 6E・I)・L1 2
なお、
E:弾性変形部22のヤング率
I:弾性変形部22の断面2次モーメント
【0035】
それ故、上式におけるωの二つの実数解が、副振動系の固有振動数を与えるものと解されるから、かかるωの二つの実数解が、振動部材16において制振すべき振動の周波数(一般に、振動部材16の共振周波数):ω1 ,ω2 と略等しくなるようにダイナミックダンパ10をチューニングすることによって、かかるダイナミックダンパ10が、主振動系たる振動部材16に対する副振動系として有効に作用して、それら二つの周波数:ω1 ,ω2 域の振動に対して、それぞれ有効な制振効果を発揮し得ることとなるのである。例えば、かかる副振動系のω1 を振動部材16の一次モードの共振周波数域に合わせると共に、ω2 を振動部材16の二次モードの共振周波数に合わせることにより、例えば自動車のルーフパネル等において制振材等では有効な制振効果を得ることが難しかった低次のモードの振動に対しても、有効な制振効果を得ることが可能となるのである。なお、ダイナミックダンパ10における具体的なチューニングは、上式から明らかなように、第一及び第二のマス金具14の質量:m1 ,m2 や、第一及び第二のバネ部34,36の自由長:L1 ,L2 を調節することによって、有利に行なわれ得る。
【0036】
また、かかる副振動系は、バネ系が、特性の温度依存性の小さい金属材等で形成された弾性変形部22を主体として構成されていることから、数十度以上の大きな温度変化に晒された場合でも、固有振動数の大幅な変化が回避されて、防振を目的とする振動に対して、有効な制振効果が安定して発揮され得るのである。
【0037】
しかも、副振動系が加振された際には、弾性変形部22の弾性変形に伴って、硬質のバネ部材と金属プレート30で両面を拘束されたゴムシート28に有効な剪断変形が生ぜしめられることから、大きな損失係数(ロスファクタ)が発揮されて、チューニング周波数域を挟んだ上下の周波数域においても振動状態の悪化が回避されることとなり、全体として広い周波数域に亘って良好な振動低減が実現され得るのである。
【0038】
また、本実施形態のダイナミックダンパ10は、大きいばね剛性を持つ金属等で形成された弾性変形部22によってバネ系が構成されていることから、従来のゴム弾性体でバネ系を構成する場合に比して、全体をコンパクトに構成することが可能であり、特に振動部材16の表面に沿って延びる形態の梁状のバネ部材を採用したことによって、小さなスペースに極めて効率的に配設することが可能となるのである。
【0039】
次に、図3〜4には、本発明の第二の実施形態としてのダイナミックダンパ40が、示されている。なお、本実施形態において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0040】
すなわち、本実施形態のダイナミックダンパ40は、第一の実施形態とは異なる減衰手段を備えたものの一例を示すものであり、第一の実施形態において減衰手段を構成していたゴムシート(28)と金属プレート(30)の積層構造体に代えて、第一のマス部42および第二のマス部44として、それぞれ、独立マス部材としての独立マス46を備えた特定構造のものが採用されており、これら第一のマス部42と第二のマス部44によって減衰手段が構成されている。
【0041】
なお、第一のマス部42および第二のマス部44は、第一の実施形態における第一のマス金具14および第二のマス金具15と同様に、バネ部材12の弾性変形部22の長手方向の先端部分と中間部分に対して、それぞれ設けられており、全体として2自由度の副振動系からなる制振装置を構成している。
【0042】
そこにおいて、第一及び第二のマス部42,44は、何れも、円筒形状のハウジング本体48が、弾性変形部22の幅方向に延びるようにして内側面32に重ね合わされて溶接等で固着されている。また、このハウジング本体48の軸方向両側開口部には、それぞれ蓋部材50が固着されて覆蓋されており、それによって外部空間から略遮断された収容空所52を有するハウジング54が形成されている。
【0043】
そして、このハウジング54の収容空所52に、独立マス46が収容配置されている。かかる独立マス46は、中軸の円形ロッド形状を有する剛性の質量体で構成されており、その全表面には、略一定の肉厚寸法を有する緩衝体としての被覆ゴム層56が被着形成されている。また、独立マス46の大きさは、被覆ゴム層56の外周面が、ハウジング54の収容空所52よりも僅かに小さくされており、それによって、収容空所52内で、独立マス46がハウジング54から独立して相対変位可能とされており、独立マス46が独立変位することにより、独立マス46がハウジング54に対して打ち当って当接せしめられるようになっている。要するに、独立マス46を収容空所52内の中央に位置せしめた状態下では、独立マス46の外周面と収容空所52の壁面との間には、独立マス46の全周囲に亘って隙間が形成されるようになっている。
【0044】
なお、ハウジング54の材料としては、十分な剛性を有する鉄鋼等の金属材が好適に採用される。また、独立マス46の材料は、特に限定されるものでないが、質量を有利に確保するために高比重な鋳鉄等の金属材が好適に採用される。更にまた、独立マス46を被覆する被覆ゴム層56は、ASTM規格D2240のショアD硬さが、好ましくは80以下、より好ましくは20〜40となるように、肉厚寸法や材料が設定されることとなる。また、被覆ゴム層56は、圧縮弾性率が1〜104 MPaとされると共に、損失正接(tanδ)が10−3以上とされることが望ましい。更に、独立マス46の質量は、制振対象である振動部材16の質量の数%〜数十%に設定することが望ましい。
【0045】
また、独立マス46とハウジング54の間に形成される隙間の大きさは、独立マス46を収容空所52内の中央に位置せしめた状態下において、それら独立マス46とハウジング54の当接面間に形成される半径方向の隙間:δが、0.05〜0.8mmとされることが望ましく、より望ましくはδ=0.05〜0.5mmとされる。
【0046】
このような本実施形態のダイナミックダンパ40においては、振動部材16から振動が及ぼされて弾性変形部22が弾性変形せしめられて第一及び第二のマス部42,44が加振変位せしめられると、独立マス46がハウジング54(弾性変形部22)に対して収容空所52内で相対変位せしめられて、独立マス46がハウジング54に対して、略飛び跳ね状態となって繰り返し打ち当り(当接)せしめられることとなる。また、前述の如く、独立マス46とハウジング54の当接面間における隙間寸法:δが特定の大きさに設定されていると共に、それら独立マス46とハウジング54の当接面が所定硬度に設定されていることにより、そのような特別な条件下で独立マス46がハウジング54に対して直接的且つ弾性的に打ち当たるようにされる。
【0047】
その結果、独立マス46のハウジング54に対する相対的な位相や、当接衝撃特性が調節されることによって、独立マス46のハウジング54に対する当接によって生ぜしめられる力が、副振動系に対してあたかも弾性変形部22によって構成された第一及び第二のバネ部34,36における損失係数が増大したものと見做し得る、見掛け上の高減衰作用が発揮されるのである。
【0048】
従って、本実施形態のダイナミックダンパ40においても、第一の実施形態と同様に、振動部材16において問題となっている二つの異なる周波数域の振動を含む広い周波数域の振動に対して有効な制振効果を得ることが出来るのであり、特に、ゴム材料等に比して損失係数が小さい金属性等のバネ部材12を採用したことにより、温度変化に伴う特性変化が軽減乃至は回避されて、特定構造の第一及び第二のマス部42,44の作用によって発揮される大きなロスファクタのもとで、目的とする制振効果を安定して高精度に得ることが可能となるのである。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって何等限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を施した態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0050】
例えば、第一及び第二の実施形態における弾性変形部22の長さ等の具体的寸法、更に第一及び第二のマス金具14,15や第一及び第二のマス部42,44の大きさ(質量)や形状等は、防振すべき振動周波数や振動レベル,或いは配設スペース等に応じて適宜に変更されるものであって、限定されるものでない。具体的には、例えば振動部材16の取付面が湾曲形状等の異形状であれば、それに対応して弾性変形部22も、湾曲形状等と為し得る。また、第二の実施形態におけるハウジング54や独立マス46として、例示の如き円筒形状乃至は円形ロッド形状の他、球状や、矩形ブロック形状等、各種の形状が採用され得る。
【0051】
また、第一の実施形態において、立上部18にもゴムシート28や金属プレート30を被着しても良く、また、第二の実施形態においても、弾性変形部22に対して、ゴムシート28、更に金属プレート30を固着することが可能である。更にまた、第二の実施形態においては、独立マス46とハウジング54が弾性的に当接されるようになっていれば良く、被覆ゴム層56に代えて、例えば独立マス46の全体を弾性材で形成したり、或いはハウジング54における収容空所52の内面をゴム弾性体層で被覆したり、或いはまた独立マス46から部分的に弾性突起を突設せしめるようにしても良い。
【0052】
更にまた、ダイナミックダンパ10,40によって構成される副振動系の固有振動数は、振動部材16において制振すべき振動周波数に応じて決定されるものであり、必ずしも振動部材16の1次や2次の振動モード等の低次の振動モードにチューニングする必要はない。
【0053】
また、前記実施形態では、2自由度の副振動系について示したが、本発明は、3自由度以上の副振動系を除くものでなく、要求特性に応じて適宜に多自由度の副振動系が構成され得る。
【0054】
更にまた、前記実施形態では、片持ち梁構造のバネ部材12が採用されていたが、その他、例えば門形状とすることにより、実質的に両端で支持された梁構造のバネ部材を採用することも可能である。
【0055】
加えて、本発明に従う構造とされたダイナミックダンパは、自動車用のパネル部材やサブフレームの他、振動が問題となる各種の装置等における各種の部材に対して装着され得る。
【0056】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたダイナミックダンパにおいては、副振動系を構成するバネ系が、特性の温度依存性が小さい硬質のバネ材で主体的に構成されていることから、大きな温度変化に晒された場合でも、目的とする振動に対して有効な制振効果を安定して得ることが出来ると共に、減衰手段によって大きな損失係数(ロスファクタ)が発揮されて、全体として広い周波数域に亘って良好な振動低減が実現され得るのである。
【0057】
しかも、かかるダイナミックダンパは、大きいばね剛性を持つ硬質のバネ部材が採用され得ることから、従来のゴム弾性体でバネ系を構成するダイナミックダンパに比して、全体をコンパクトに構成することが可能となり、加えて、梁状の弾性変形部を採用したことによって、例えば制振対象部材の表面に沿って延びる形態のバネ部材を採用することが可能で、小さなスペースに極めて効率的に配設することが可能となるのである。
【0058】
加えて、かかるダイナミックダンパにおいては、2以上の自由度を有する副振動系が構成されることから、振動部材において問題となる2以上の異なる周波数域、或いは広い周波数域の振動に対しても、極めて有効な制振効果が発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのダイナミックダンパを示す縦断面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態としてのダイナミックダンパを示す縦断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【符号の説明】
10 ダイナミックダンパ
12 バネ部材
14 第一のマス金具
15 第二のマス金具
16 振動部材
22 弾性変形部
28 ゴムシート
30 金属プレート
34 第一のバネ部
36 第二のバネ部
40 ダイナミックダンパ
42 第一のマス部
44 第二のマス部
46 独立マス
52 収容空所
54 ハウジング
56 被覆ゴム層
【技術分野】
本発明は、制振対象部材に対してマス部材をバネ部材を介して弾性的に支持せしめることにより、主振動系たる制振対象部材に対する副振動系を構成して、制振対象部材の振動を抑えるダイナミックダンパに関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、自動車におけるボデー等の如き振動部材(制振対象部材)において問題となる振動を低減する方法としては、▲1▼振動部材の表面にアスファルトシートやゴムシートを貼着して制振材を構成する方法や、▲2▼振動部材に対してバネ部材を介してマス部材を連結支持せしめてダイナミックダンパを構成する方法等が、知られている。
【0003】
ところが、上記▲1▼の制振材においては、アスファルトシートやゴムシートにおける制振効果の温度依存性が大きく、例えば自動車のボデー等のように内燃機関や日射等の影響で振動部材の温度が60℃以上に達すると制振効果が大幅に低下してしまうという問題があった。しかも、振動部材における1次等の低次の振動モードでは、アスファルトシートに生ぜしめられる剪断歪が小さくなることに起因して、十分な振動低減効果を得ることが難しいという問題があった。
【0004】
また、前記▲2▼のダイナミックダンパにおいては、バネ部材として一般に採用されているゴム弾性体の剛性が小さいことから、剛性を確保するためにゴム弾性体の容積を大きくしなければならず、結果的にダイナミックダンパの大型化を避け難いという問題があった。しかも、ダイナミックダンパは、それ自身のマス−バネ系からなる副振動系の固有振動数を、振動部材において制振すべき特定の振動周波数域に設定することにより特性のチューニングが施されるが、有効な制振効果が比較的に狭い一つのチューニング周波数域だけでしか有効に発揮され難く、それに加えて、ゴム弾性体のばね定数の温度依存性が大きいことから、例えば自動車のボデー等のように季節や環境等の変化で60℃以上の温度差に晒される場合には、チューニング周波数が防振すべき振動周波数から外れてしまって、有効な制振効果を安定して得難いという問題があったのである。
【0005】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、コンパクトで且つ制振効果の温度依存性が小さく、しかも複数の乃至は広い周波数域の振動に対して有効な制振効果を安定して発揮し得ると共に、振動部材における低次モードの振動に対しても優れた制振効果を発揮し得る、新規な構造のダイナミックダンパを提供することにある。
【0006】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することが出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0007】
本発明の第一の態様は、(a)制振対象部材に対して固定的に取り付けられる取付部が端部に設けられて梁状の弾性変形部を形成する硬質のバネ部材と、(b)該バネ部材における梁状の前記弾性変形部において長手方向に相互に離隔して設けられて、該弾性変形部の弾性変形に基づいて変位せしめられる複数のマス部と、(c)前記弾性変形部の弾性変形に基づく前記複数のマス部の振動変位に際して減衰作用を及ぼす減衰手段とを、含んで形成することにより2自由度以上の副振動系を構成せしめたダイナミックダンパを、特徴とする。
【0008】
このような本態様のダイナミックダンパにおいては、副振動系のバネ成分と減衰成分を異なる部材で実質的に略分担させて構成することが可能となる。即ち、バネ成分は、硬質のバネ部材によって主に分担させて構成する一方、減衰成分は、ダンピング材と拘束材によって主に分担させて構成することが出来る。その結果、バネ部材の材料として、例えば金属や硬質樹脂(例えばガラス繊維補強されたポリアミド系樹脂等の繊維補強樹脂)等を採用することにより、ばね定数の温度依存性を十分に小さく抑えることが可能となる。そして、このように副振動系のばね定数の温度変化に伴う変動が抑えられて、ダイナミックダンパのチューニング周波数の安定化が図られることから、環境温度の変動幅が大きい振動部材に装着される場合でも、予めチューニングされた特定周波数域の振動に対して、有効な制振効果を安定して得ることが可能となるのである。
【0009】
また、本態様のダイナミックダンパにおいては、弾性変形部に複数のマス部が設けられることにより、2自由度以上の副振動系が構成されることから、複数のマス部の質量とそれら各マス部を弾性支持せしめる弾性変形部における各ばね特性を適当に調節することによって、複数の周波数域で固有振動数を設定することが出来るのであり、それ故、制振対象部材における複数の周波数域の振動に対して、それぞれ副振動系の固有振動数をチューニングすることにより、それぞれ有効な制振効果を得ることが可能となるのである。
【0010】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記バネ部材の前記弾性変形部に対してダンピング材を被着することによって、前記減衰手段を構成したことを、特徴とする。このような本態様においては、硬質のバネ部材によってもたらされる副振動系のチューニング周波数の安定性を損なうことなく、副振動系における損失係数(ロスファクタ)をコンパクトに得ることが可能となる。なお、ダンピング材としては、例えば減衰係数が大きく且つ温度変化に伴う特定変化が小さいゴム材料が好適に採用され得る。また、ダンピング材は、弾性変形部の長手方向の略全長に亘って広がるように、加硫接着等で固着することが望ましく、それによって、複数のマス部の各ばね部を構成する部分に、それぞれ有効な損失係数が付与され得る。
【0011】
また、本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記ダンピング材における前記弾性変形部と反対の面に拘束材を固着せしめて、それら弾性変形部とダンピング材と拘束材を積層構造とし、且つ該拘束材のばね定数を該弾性変形部のばね定数よりも小さくしたことを、特徴とする。このような本態様においては、バネ部材が硬質材で形成されていることから小さな容積のバネ部材で十分なばね剛性を得ることが出来ると共に、ダンピング材にも拘束材が固着されていることから弾性変形部の変形に際してダンピング材における剪断変形が一層効率的に生ぜしめられて、一層小さな容積のダンピング材で有効な損失係数を得ることが出来るのであり、その結果、全体としてよりコンパクトなダイナミックダンパが実現され得る。
【0012】
しかも、バネ部材のばね定数を拘束材のばね定数よりも大きくしたことにより、バネ部材におけるばね定数が、副振動系のバネ成分として主体的に作用することとなり、それ故、バネ部材に対してダンピング材を介して固着された拘束材のばね定数が副振動系のバネ成分に及ぼす影響の、ダンピング材の温度変化に伴う特性変化に起因する変動も効果的に抑えられ得て、かかる副振動系におけるばね定数の安定化、延いてはチューニング周波数の安定がより有効に実現され得る。
【0013】
なお、本態様において、ダンピング材と拘束材は、弾性変形部の少なくとも一部において積層状態で形成されていれば良く、弾性変形部の全体に亘って設ける必要はない。例えば、弾性変形部の表面の全周に亘ってダンピング材を被覆形成しても良いが、弾性変形部の一つの面だけにダンピング材を被覆したり、或いは弾性変形部の全面をダンピング材で覆い、その一部だけに拘束材を被着しても良い。尤も、ダンピング材は、バネ部材の取付部にまでは至らない領域に固着することが望ましく、それによって、取付部をボルト止めや溶接等により、制振対象部材に対して容易に、しかも大きな強度と耐久性をもって固着せしめることが可能となる。
【0014】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記弾性変形部の弾性変形方向で該弾性変形部に対して隙間を隔てて非接着で独立変位可能に配設された独立マス部材によって、前記マス部を構成し、該独立マス部材が該弾性変形部に対して直接的且つ弾性的に当接されるようにすることにより、前記減衰手段を構成したことを、特徴とする。このような本態様においては、制振対象部材から副振動系に振動が入力されて弾性変形部が加振されることに伴い、独立マス部材が弾性変形部に対して相対的に変位せしめられることとなる。特に、副振動系の固有振動数域の振動入力時には、弾性変形部の振幅が大きくなることにより独立マス部材の相対変位も大きくなって、独立マス部材が弾性変形部に対して飛び跳ね的に変位せしめられて、独立マス部材が弾性変形部に対して直接的且つ弾性的に当接せしめられることとなる。その結果、独立マス部材の当接部への打ち当り(当接)に基づいて、振動部材に対する振動抑制効果が発揮されるのであり、結果的に副振動系において、見掛け上の損失係数(ロスファクタ)が大きくなったのと略同じ状態が発現される。要するに、弾性変形部において、耐熱性等が高いが減衰係数が小さい金属等の硬質の弾性材を採用した場合でも、独立マス部材の弾性変形部への打ち当りによって弾性変形部の振幅が抑えられることにより、共振ピークを含む広い周波数域で良好なる制振効果が実現され得るのである。
【0015】
なお、本態様において、独立マス部材は、その全体をゴム弾性体や合成樹脂材、或いはそれらの発泡材で形成したり、そのようなものに対して補強的に金属等の剛性材を固着することで形成することも可能であるが、その他、独立マス部材を高比重な金属等の剛性材で形成しても良く、その場合には、当接に際しての異音や衝撃の緩和等のために、独立マス部材と弾性変形部との当接面の少なくとも一方が、ゴム弾性体や合成樹脂材等の弾性材によって形成されることが望ましい。また、弾性変形部において独立マス部材が当接せしめられる当接面は、弾性変形部に対して直接に形成しても良いが、例えば、剛性材で別体形成されたハウジングを弾性変形部に溶接等で固着し、かかるハウジングに独立マス部材を収容配置せしめても良い。更に、複数のマス部の幾つかをこのような独立マス部材で構成することは、勿論、可能であり、また、前記第二又は第三の態様に係るダンピング材と組み合わせて、本態様に従う独立マス部材を採用しても良い。
【0016】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記バネ部材の一方の端部に前記取付部を設けることにより前記弾性変形部を片端支持の梁構造をもって構成して、該弾性変形部の長手方向の複数箇所に前記マス部を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、片持ち梁タイプのバネ部材が構成されて、目的とするダイナミックダンパを、例えば振動対象部材に沿って配設することも可能となり、より一層のコンパクト化が図られ得る。
【0017】
また、本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係るダイナミックダンパであって、前記弾性変形部の一方の端部において、前記取付部から立ち上がって該弾性変形部を前記制振対象部材から離隔位置せしめる立上部を設けると共に、該立上部によって該弾性変形部と該制振対象部材の対向面間に形成された空間に位置せしめられるようにして、前記マス部を該弾性変形部から突設したことを、特徴とする。このような本態様においては、制振対象部材と弾性変形部の間に隙間状の空間を巧く形成し、この空間を効率的に利用してマス部を配設することが可能となるのであり、特に平坦な装着面を有するパネル材等を制振対象部材とする場合等において、一層優れたスペース効率をもってダイナミックダンパを装着することが可能となる。
【0018】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係るダイナミックダンパにおいて、前記バネ部材の両端部に前記取付部を一対設けると共に、前記弾性変形部の両方の端部にそれぞれ取付部から立ち上がる一対の立上部を設けて該弾性変形部を門形構造とし、該弾性変形部において両立上部間に跨がって延びる天板部の中間位置に前記複数のマス部を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、一対の立上部が有利に弾性変形せしめられる方向と、天板部が有利に弾性変形せしめられる方向が略直交することとなり、それら両方向で、それぞれ副振動系として機能し得ることから、互いに異なる二つの方向で有効な制振効果を発揮し得る。なお、本態様において、好ましくは、門形構造とされたバネ部材の天板部の内周面から中央空所に突出するようにしてマス部が設けられる。また、天板部だけでなく立上部に対してマス部を設けても良い。
【0019】
また、本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係るダイナミックダンパであって、前記制振対象部材がパネル状体であり、前記副振動系における複数の固有振動数を、該パネル状体における一次の振動モードを含む複数の次数モードの振動周波数に対してそれぞれチューニングしたことを、特徴とする。このような本態様においては、従来構造の制振材を用いても有効な振動低減が難しく、ダイナミックダンパの装着スペースも確保し難い、例えば自動車のルーフパネルやフロアパネル、ドアパネル等のパネル状体において、コンパクトな配設スペースをもって有利に適用され得て、一次等の低次の振動モードを含む複数のモードの振動に対して、それぞれ有効な制振効果を発揮し得るダイナミックダンパが提供され得るのである。
【0020】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0021】
先ず、図1〜2には、本発明の一実施形態としてのダイナミックダンパ10の縦断面図と横断面図が示されている。このダイナミックダンパ10は、バネ部材12とマス部としての第一のマス金具14および第二のマス金具15を含んで構成されており、バネ部材12によってマス金具14,15を振動部材(制振対象部材)16に対して連結支持せしめることによって、振動部材16に装着されるようになっている。そして、かかる装着状態下では、バネ部材12とマス金具14,15によって構成される2自由度のマス−バネ振動系が、主振動系たる振動部材16に対する副振動系として機能して、動的吸振器として制振効果を発揮し得るようになっている。
【0022】
より詳細には、バネ部材12は、略一定の肉厚寸法で広がる板形状を有しており、長手方向(図1中の左右方向)の中間部分には、クランク状断面で段差状に屈曲した立上部18が、長手方向一方の側(図1中の左側)に偏倚して形成されている。そして、この立上部18を挟んで一方の端部側が平板形状の取付部20とされている一方、他方の端部側が平板形状で延び出す弾性変形部22とされている。
【0023】
そして、取付部20が、振動部材16に対して、例えば溶接等によって固着されることにより、ダイナミックダンパ10が振動部材16に装着されるようになっている。また、立上部18は、ダイナミックダンパ10の装着状態下でマス金具14が振動部材16に干渉しない程度に、取付部20からの立ち上がり高さを小さく設定することが、ダイナミックダンパ10をコンパクトに構成するために望ましい。
【0024】
また一方、弾性変形部22は、立上部18の立ち上がり高さよりも十分に大きな長さで、立上部18から振動部材16に沿うようにして略水平に延び出して形成されている。そして、ダイナミックダンパ10の装着状態下では、振動部材16と弾性変形部22の対向面間に所定間隔の空間24が形成されるようになっている。また、弾性変形部22には、外側面(振動部材16と反対側の面)26に対して、略全面を覆うようにダンピング材としてのゴムシート28が密着状態で重ね合わされて、加硫接着等で固着されている。更にまた、ゴムシート28の表面には、略全面を覆うようにして、拘束材としての金属プレート30が密着状態で重ねあわされて、加硫接着等で固着されている。
【0025】
要するに、弾性変形部22は、その略全体において、ゴムシート28と金属プレート30が重ね合わされて、三層の積層構造をもって構成されているのである。そして、これらゴムシート28と金属プレート30によって、弾性変形部22の弾性変形に際して減衰作用を及ぼす減衰手段が構成されている。
【0026】
さらに、弾性変形部22の内側面(振動部材16との対向面)32には、延び出し方向の先端の自由端部分に対して第一のマス金具14が重ね合わされて溶接等で固着されていると共に、延び出し方向の略中央部分に対して第二のマス金具15が重ね合わされて溶接等で固着されている。なお、これら第一及び第二のマス金具14,15は、ダイナミックダンパ10の振動部材16への装着状態下で弾性変形部22が弾性変形せしめられた際に、振動部材16への干渉が回避され得るように、弾性変形部22からの突出高さが設定されている。
【0027】
すなわち、上述の如く構成されたダイナミックダンパ10においては、弾性変形部22が、長手方向一端側に設けられた取付部20において振動部材16に固定された片端支持の梁構造をもって構成されており、その弾性変形可能な自由端と中間部分に対して第一のマス金具14と第二のマス金具15が取り付けられることによって、全体として、主振動系たる振動部材16における板厚方向(図1,2中の略上下方向)の振動に関して、2自由度の副振動系を構成するようになっている。
【0028】
なお、バネ部材12の形成材料としては、低減衰で高動ばねを発揮し得るように硬質の材料が採用され、具体的には鉄鋼等の金属材や繊維強化された合成樹脂材等が好適に採用される。また、ゴムシート28は、樹脂系のエラストマであっても良いが、大きな損失係数が得られるように、且つ温度変化に対する特性の安定性が十分であるゴム材料が採用され、具体的にはIIR(ブチルゴム)等が好適に採用される。更にまた、金属プレート30は、ゴムシート28の表面の変形に対して有効な拘束力を発揮し得るように、アルミニウム合金等の金属材や繊維強化された合成樹脂材等が好適に採用される。また、立上部18の立ち上がり高さを小さくして立上部18の剛性を大きく設定することにより、振動入力時における弾性変形が、弾性変形部22において有効に生ぜしめられるようにすることが望ましい。
【0029】
ここにおいて、ゴムシート28の両面に張り合わせられた弾性変形部22と金属プレート30は、動的ばね定数の値が、金属プレート30よりも弾性変形部22の方が十分に大きいように、材料や部材寸法等が設定されている。それにより、副振動系における動的ばね定数に関して、弾性変形部22が支配的とされており、金属プレート30は、バネ部材12の全面に亘って被着されていないことと相俟って、副振動系の動的ばね定数に対して大きな影響を及ぼさないようにされている。
【0030】
かかる目的を達成するために、具体的には、例えば、弾性変形部22を含むバネ部材12を、厚さ寸法:0.5mm〜4.0mm程度のステンレススチール製等とすると共に、ゴムシート28を、厚さ寸法:0.5mm〜4.0mm程度のIIR系のゴム製等とし、更に、金属プレート30を、厚さ寸法:0.1mm〜2.0mm程度のアルミニウム合金製等とすると共に、第一及び第二のマス金具14,15を、厚さ寸法:2〜20mm程度の鋳鉄製等とする構成が、例えば自動車のルーフパネルやサブフレーム等を振動部材16とする場合において有利に採用され得る。
【0031】
このような構造とされたダイナミックダンパ10においては、その装着状態下、振動部材16に板厚方向の振動が生ぜしめられると、それが加振力として弾性変形部22に及ぼされて図中の上下方向に剪断変形せしめられることにより一つの副振動系として作用する。それ故、かかる副振動系の固有振動数を、弾性変形部22を主体として構成されたバネ系の動的ばね定数と、第一及び第二のマス金具14,15を主体として構成されたマス系の質量とを調節して、振動部材16において防振すべき振動の周波数に対応させてチューニングすることにより、かかる防振すべき振動に対して有効な制振効果が発揮されることとなる。
【0032】
ここにおいて、かかる副振動系は、片持ち梁構造のバネ材としての弾性変形部22の長手方向に第一のマス金具14と第二のマス金具15が直列的に固着されることによって2自由度の振動系を構成している。即ち、本実施形態のダイナミックダンパ10は、第一のマス金具14と第二のマス金具15の二つのマス部を、弾性変形部22における支持端から第二のマス金具15に至る第一のバネ部34と、第二のマス金具15から第一のマス金具14に至る第二のバネ部36とによって、直列的に連結せしめた振動系を構成している。
【0033】
従って、第一のマス金具14の質量をm1 ,第二のマス金具15の質量をm2 とし、第一のバネ部34の自由長をL1 ,第二のバネ部36の自由長をL2 とすると、公知の振動方程式から下式が成立する。
【0034】
(1−α11m1 ω2 )(1−α22m2 ω2 )−α12α21m1 m2 ω4 =0
但し、
α11 = L1 3 / 3E・I
α22 = (L1 +L2 )3 / 3E・I
α12 = α21 = ((2L1 +3L2 )/ 6E・I)・L1 2
なお、
E:弾性変形部22のヤング率
I:弾性変形部22の断面2次モーメント
【0035】
それ故、上式におけるωの二つの実数解が、副振動系の固有振動数を与えるものと解されるから、かかるωの二つの実数解が、振動部材16において制振すべき振動の周波数(一般に、振動部材16の共振周波数):ω1 ,ω2 と略等しくなるようにダイナミックダンパ10をチューニングすることによって、かかるダイナミックダンパ10が、主振動系たる振動部材16に対する副振動系として有効に作用して、それら二つの周波数:ω1 ,ω2 域の振動に対して、それぞれ有効な制振効果を発揮し得ることとなるのである。例えば、かかる副振動系のω1 を振動部材16の一次モードの共振周波数域に合わせると共に、ω2 を振動部材16の二次モードの共振周波数に合わせることにより、例えば自動車のルーフパネル等において制振材等では有効な制振効果を得ることが難しかった低次のモードの振動に対しても、有効な制振効果を得ることが可能となるのである。なお、ダイナミックダンパ10における具体的なチューニングは、上式から明らかなように、第一及び第二のマス金具14の質量:m1 ,m2 や、第一及び第二のバネ部34,36の自由長:L1 ,L2 を調節することによって、有利に行なわれ得る。
【0036】
また、かかる副振動系は、バネ系が、特性の温度依存性の小さい金属材等で形成された弾性変形部22を主体として構成されていることから、数十度以上の大きな温度変化に晒された場合でも、固有振動数の大幅な変化が回避されて、防振を目的とする振動に対して、有効な制振効果が安定して発揮され得るのである。
【0037】
しかも、副振動系が加振された際には、弾性変形部22の弾性変形に伴って、硬質のバネ部材と金属プレート30で両面を拘束されたゴムシート28に有効な剪断変形が生ぜしめられることから、大きな損失係数(ロスファクタ)が発揮されて、チューニング周波数域を挟んだ上下の周波数域においても振動状態の悪化が回避されることとなり、全体として広い周波数域に亘って良好な振動低減が実現され得るのである。
【0038】
また、本実施形態のダイナミックダンパ10は、大きいばね剛性を持つ金属等で形成された弾性変形部22によってバネ系が構成されていることから、従来のゴム弾性体でバネ系を構成する場合に比して、全体をコンパクトに構成することが可能であり、特に振動部材16の表面に沿って延びる形態の梁状のバネ部材を採用したことによって、小さなスペースに極めて効率的に配設することが可能となるのである。
【0039】
次に、図3〜4には、本発明の第二の実施形態としてのダイナミックダンパ40が、示されている。なお、本実施形態において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0040】
すなわち、本実施形態のダイナミックダンパ40は、第一の実施形態とは異なる減衰手段を備えたものの一例を示すものであり、第一の実施形態において減衰手段を構成していたゴムシート(28)と金属プレート(30)の積層構造体に代えて、第一のマス部42および第二のマス部44として、それぞれ、独立マス部材としての独立マス46を備えた特定構造のものが採用されており、これら第一のマス部42と第二のマス部44によって減衰手段が構成されている。
【0041】
なお、第一のマス部42および第二のマス部44は、第一の実施形態における第一のマス金具14および第二のマス金具15と同様に、バネ部材12の弾性変形部22の長手方向の先端部分と中間部分に対して、それぞれ設けられており、全体として2自由度の副振動系からなる制振装置を構成している。
【0042】
そこにおいて、第一及び第二のマス部42,44は、何れも、円筒形状のハウジング本体48が、弾性変形部22の幅方向に延びるようにして内側面32に重ね合わされて溶接等で固着されている。また、このハウジング本体48の軸方向両側開口部には、それぞれ蓋部材50が固着されて覆蓋されており、それによって外部空間から略遮断された収容空所52を有するハウジング54が形成されている。
【0043】
そして、このハウジング54の収容空所52に、独立マス46が収容配置されている。かかる独立マス46は、中軸の円形ロッド形状を有する剛性の質量体で構成されており、その全表面には、略一定の肉厚寸法を有する緩衝体としての被覆ゴム層56が被着形成されている。また、独立マス46の大きさは、被覆ゴム層56の外周面が、ハウジング54の収容空所52よりも僅かに小さくされており、それによって、収容空所52内で、独立マス46がハウジング54から独立して相対変位可能とされており、独立マス46が独立変位することにより、独立マス46がハウジング54に対して打ち当って当接せしめられるようになっている。要するに、独立マス46を収容空所52内の中央に位置せしめた状態下では、独立マス46の外周面と収容空所52の壁面との間には、独立マス46の全周囲に亘って隙間が形成されるようになっている。
【0044】
なお、ハウジング54の材料としては、十分な剛性を有する鉄鋼等の金属材が好適に採用される。また、独立マス46の材料は、特に限定されるものでないが、質量を有利に確保するために高比重な鋳鉄等の金属材が好適に採用される。更にまた、独立マス46を被覆する被覆ゴム層56は、ASTM規格D2240のショアD硬さが、好ましくは80以下、より好ましくは20〜40となるように、肉厚寸法や材料が設定されることとなる。また、被覆ゴム層56は、圧縮弾性率が1〜104 MPaとされると共に、損失正接(tanδ)が10−3以上とされることが望ましい。更に、独立マス46の質量は、制振対象である振動部材16の質量の数%〜数十%に設定することが望ましい。
【0045】
また、独立マス46とハウジング54の間に形成される隙間の大きさは、独立マス46を収容空所52内の中央に位置せしめた状態下において、それら独立マス46とハウジング54の当接面間に形成される半径方向の隙間:δが、0.05〜0.8mmとされることが望ましく、より望ましくはδ=0.05〜0.5mmとされる。
【0046】
このような本実施形態のダイナミックダンパ40においては、振動部材16から振動が及ぼされて弾性変形部22が弾性変形せしめられて第一及び第二のマス部42,44が加振変位せしめられると、独立マス46がハウジング54(弾性変形部22)に対して収容空所52内で相対変位せしめられて、独立マス46がハウジング54に対して、略飛び跳ね状態となって繰り返し打ち当り(当接)せしめられることとなる。また、前述の如く、独立マス46とハウジング54の当接面間における隙間寸法:δが特定の大きさに設定されていると共に、それら独立マス46とハウジング54の当接面が所定硬度に設定されていることにより、そのような特別な条件下で独立マス46がハウジング54に対して直接的且つ弾性的に打ち当たるようにされる。
【0047】
その結果、独立マス46のハウジング54に対する相対的な位相や、当接衝撃特性が調節されることによって、独立マス46のハウジング54に対する当接によって生ぜしめられる力が、副振動系に対してあたかも弾性変形部22によって構成された第一及び第二のバネ部34,36における損失係数が増大したものと見做し得る、見掛け上の高減衰作用が発揮されるのである。
【0048】
従って、本実施形態のダイナミックダンパ40においても、第一の実施形態と同様に、振動部材16において問題となっている二つの異なる周波数域の振動を含む広い周波数域の振動に対して有効な制振効果を得ることが出来るのであり、特に、ゴム材料等に比して損失係数が小さい金属性等のバネ部材12を採用したことにより、温度変化に伴う特性変化が軽減乃至は回避されて、特定構造の第一及び第二のマス部42,44の作用によって発揮される大きなロスファクタのもとで、目的とする制振効果を安定して高精度に得ることが可能となるのである。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって何等限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を施した態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0050】
例えば、第一及び第二の実施形態における弾性変形部22の長さ等の具体的寸法、更に第一及び第二のマス金具14,15や第一及び第二のマス部42,44の大きさ(質量)や形状等は、防振すべき振動周波数や振動レベル,或いは配設スペース等に応じて適宜に変更されるものであって、限定されるものでない。具体的には、例えば振動部材16の取付面が湾曲形状等の異形状であれば、それに対応して弾性変形部22も、湾曲形状等と為し得る。また、第二の実施形態におけるハウジング54や独立マス46として、例示の如き円筒形状乃至は円形ロッド形状の他、球状や、矩形ブロック形状等、各種の形状が採用され得る。
【0051】
また、第一の実施形態において、立上部18にもゴムシート28や金属プレート30を被着しても良く、また、第二の実施形態においても、弾性変形部22に対して、ゴムシート28、更に金属プレート30を固着することが可能である。更にまた、第二の実施形態においては、独立マス46とハウジング54が弾性的に当接されるようになっていれば良く、被覆ゴム層56に代えて、例えば独立マス46の全体を弾性材で形成したり、或いはハウジング54における収容空所52の内面をゴム弾性体層で被覆したり、或いはまた独立マス46から部分的に弾性突起を突設せしめるようにしても良い。
【0052】
更にまた、ダイナミックダンパ10,40によって構成される副振動系の固有振動数は、振動部材16において制振すべき振動周波数に応じて決定されるものであり、必ずしも振動部材16の1次や2次の振動モード等の低次の振動モードにチューニングする必要はない。
【0053】
また、前記実施形態では、2自由度の副振動系について示したが、本発明は、3自由度以上の副振動系を除くものでなく、要求特性に応じて適宜に多自由度の副振動系が構成され得る。
【0054】
更にまた、前記実施形態では、片持ち梁構造のバネ部材12が採用されていたが、その他、例えば門形状とすることにより、実質的に両端で支持された梁構造のバネ部材を採用することも可能である。
【0055】
加えて、本発明に従う構造とされたダイナミックダンパは、自動車用のパネル部材やサブフレームの他、振動が問題となる各種の装置等における各種の部材に対して装着され得る。
【0056】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたダイナミックダンパにおいては、副振動系を構成するバネ系が、特性の温度依存性が小さい硬質のバネ材で主体的に構成されていることから、大きな温度変化に晒された場合でも、目的とする振動に対して有効な制振効果を安定して得ることが出来ると共に、減衰手段によって大きな損失係数(ロスファクタ)が発揮されて、全体として広い周波数域に亘って良好な振動低減が実現され得るのである。
【0057】
しかも、かかるダイナミックダンパは、大きいばね剛性を持つ硬質のバネ部材が採用され得ることから、従来のゴム弾性体でバネ系を構成するダイナミックダンパに比して、全体をコンパクトに構成することが可能となり、加えて、梁状の弾性変形部を採用したことによって、例えば制振対象部材の表面に沿って延びる形態のバネ部材を採用することが可能で、小さなスペースに極めて効率的に配設することが可能となるのである。
【0058】
加えて、かかるダイナミックダンパにおいては、2以上の自由度を有する副振動系が構成されることから、振動部材において問題となる2以上の異なる周波数域、或いは広い周波数域の振動に対しても、極めて有効な制振効果が発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのダイナミックダンパを示す縦断面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態としてのダイナミックダンパを示す縦断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【符号の説明】
10 ダイナミックダンパ
12 バネ部材
14 第一のマス金具
15 第二のマス金具
16 振動部材
22 弾性変形部
28 ゴムシート
30 金属プレート
34 第一のバネ部
36 第二のバネ部
40 ダイナミックダンパ
42 第一のマス部
44 第二のマス部
46 独立マス
52 収容空所
54 ハウジング
56 被覆ゴム層
Claims (8)
- 制振対象部材に対して固定的に取り付けられる取付部が端部に設けられて梁状の弾性変形部を形成する硬質のバネ部材と、
該バネ部材における梁状の前記弾性変形部において長手方向に相互に離隔して設けられて、該弾性変形部の弾性変形に基づいて変位せしめられる複数のマス部と、
前記弾性変形部の弾性変形に基づく前記複数のマス部の振動変位に際して減衰作用を及ぼす減衰手段とを、
含んで形成することにより2自由度以上の副振動系を構成せしめたことを特徴とするダイナミックダンパ。 - 前記バネ部材の前記弾性変形部に対してダンピング材を被着することによって、前記減衰手段を構成した請求項1に記載のダイナミックダンパ。
- 前記ダンピング材における前記弾性変形部と反対の面に拘束材を固着せしめて、それら弾性変形部とダンピング材と拘束材を積層構造とし、且つ該拘束材のばね定数を該弾性変形部のばね定数よりも小さくした請求項2に記載のダイナミックダンパ。
- 前記弾性変形部の弾性変形方向で該弾性変形部に対して隙間を隔てて非接着で独立変位可能に配設された独立マス部材によって、前記マス部を構成し、該独立マス部材が該弾性変形部に対して直接的且つ弾性的に当接されるようにすることにより、前記減衰手段を構成した請求項1乃至3の何れかに記載のダイナミックダンパ。
- 前記バネ部材の一方の端部に前記取付部を設けることにより前記弾性変形部を片端支持の梁構造をもって構成して、該弾性変形部の長手方向の複数箇所に前記マス部を設けた請求項1乃至4の何れかに記載のダイナミックダンパ。
- 前記弾性変形部の一方の端部において、前記取付部から立ち上がって該弾性変形部を前記制振対象部材から離隔位置せしめる立上部を設けると共に、該立上部によって該弾性変形部と該制振対象部材の対向面間に形成された空間に位置せしめられるようにして、前記マス部を該弾性変形部から突設した請求項5に記載のダイナミックダンパ。
- 前記バネ部材の両端部に前記取付部を一対設けると共に、前記弾性変形部の両方の端部にそれぞれ取付部から立ち上がる一対の立上部を設けて該弾性変形部を門形構造とし、該弾性変形部において両立上部間に跨がって延びる天板部の中間位置に前記複数のマス部を設けた請求項1乃至4の何れかに記載のダイナミックダンパ。
- 前記制振対象部材がパネル状体であり、前記副振動系における複数の固有振動数を、該パネル状体における一次の振動モードを含む複数の次数モードの振動周波数に対してそれぞれチューニングした請求項1乃至7の何れかに記載のダイナミックダンパ。
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