(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の断面構成を示している。
図1に示すように、サファイア(結晶性Al2O3)からなる基板11上には、窒化ガリウム(GaN)からなる低温バッファ層(図示せず)を介して、ELOG用のGaNからなるシード層12が形成されている。
シード層12の上部には、基板面方向に互いに間隔をおいて延びるストライプ状の凸部12aが形成され、凸部12a同士に挟まれてなる各凹部(溝部)12bの底面及び壁面上には窒化シリコン(SiNx )からなるマスク膜13がそれぞれ形成されている。
シード層12の上には、各凸部12aと接するようにGaNからなる選択成長層14がその下面と溝部12bの底面との間に空隙部12cが設けられるように形成されている。
ここで、シード層12及び選択成長層14のIII 族元素には、ガリウムに限らず、アルミニウム又はインジウムを含んでいてもよい。すなわち、シード層12及び選択成長層14は、Alu Gav Inw N(但し、u,v,wは、0≦u,v,w≦1、u+v+w=1である。)を満たせばよい。
選択成長層14上には、レーザ素子を構成するダブルへテロ接合を含む複数の窒化物半導体層からなる積層体30が形成されている。
すなわち、積層体30は、選択成長層14の上に順次形成され、n型GaNからなるn型コンタクト層15、n型Al0.07Ga0.93Nからなるn型クラッド層16、n型GaNからなるn型光ガイド層17、厚さが約3nmのGa0.8In0.2Nからなる井戸層と厚さが約6nmのGaNからなるバリア層により構成された多重量子井戸(MQW)活性層18、p型GaNからなるp型光ガイド層19、p型Al0.07Ga0.93Nからなるp型クラッド層20、及びp型GaNからなるp型コンタクト層21を有している。
知られているように、ダブルへテロ接合型のレーザ構造は、MQW活性層18におけるインジウムを含む井戸層のエネルギーギャップが、アルミニウムを含むn型及びp型クラッド層16、20のエネルギーギャップよりも小さい。一方、光の屈折率は、MQW活性層18の井戸層が最も大きく、以下、光ガイド層17、19、クラッド層16、20の順に小さくなる。
p型クラッド層20の上部及びp型コンタクト層21は、幅が3μm〜5μm程度の電流注入領域で、電流狭窄部となるリッジ部31が形成されている。
MQW活性層18を含む積層体30は、n型コンタクト層15の一部を露出するようにエッチングされており、エッチングされた積層体30の上面及び側面は酸化シリコンからなる絶縁膜22により覆われている。
絶縁膜22におけるp型コンタクト層21の上側には凸部12aと平行な開口部が設けられ、絶縁膜22上のリッジ部31の上側及び側方の領域には、開口部を通してp型コンタクト層21とオーミック接触するニッケル(Ni)と金(Au)との積層体からなるp側電極23が形成されている。
n型コンタクト層15の絶縁膜22からの露出部分の上にはn型コンタクト層15とオーミック接触するチタン(Ti)とアルミニウム(Al)との積層体からなるn側電極24が形成されている。
ここで、リッジ部31は空隙部12cの上方に位置する、結晶転位が少ない低転位密度領域に形成されている。
以下、前記のように構成された半導体レーザ素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図2(a)、図2(b)〜図4は本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図2(a)に示すように、例えば、MOVPE法を用いて、基板温度を約500℃〜530℃に設定した後、C面(=(0001)面)を主面とする基板11上に、III 族源のトリメチルガリウム(TMG)と、窒素源のアンモニア(NH3 )とを供給して、GaNからなる低温バッファ層(図示せず)を堆積する。続いて、基板温度を約1020℃〜1030℃にまで昇温した後、TMGとNH3 とを基板11上に供給することにより、GaNからなるシード層12を成長する。
次に、図2(b)に示すように、シード層12の上面にレジスト膜を塗布した後、塗布したレジスト膜をフォトリソグラフィ法によりストライプ状にパターニングを行なって、レジストパターン40を形成する。続いて、レジストパターン40をマスクとして、シード層12に対してドライエッチングを行なうことにより、シード層12の上部に、断面幅が約3μmの凸部12aと断面幅が約12μmの溝部(リセス部)12bとを1周期とする周期構造体を形成する。
次に、図3(a)に示すように、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法を用いて、シード層12における溝部12bの底面及び壁面とレジストパターン40上に、窒化シリコンからなるマスク膜13を堆積する。ここで、シリコンの原料には、固体シリコンを用い、反応性ガスには窒素を用い、プラズマガスにはアルゴンを用いている。このように、マスク膜13の堆積にECRスパッタ法を用いることにより、低温で良質のマスク膜13を得ることができる。
次に、図3(b)に示すように、レジスタパターン40に対してリフトオフを行なって、レジストパターン40及び該レジストパターン40上のマスク膜13を除去する。なお、マスク膜13は、溝部12bの壁面の全面を覆っていてもよく、壁面の一部を覆っていてもよい。
次に、図4に示すように、再度MOVPE法を用いて、シード層12の上に、マスク膜13から露出する凸部12aの頂面に現われるC面を種結晶として、GaNからなる選択成長層14を成長する。このとき、選択成長層14は、各凸部12aの頂面から上方に成長すると共に、基板面に平行な方向にも成長(ラテラル成長)して、各溝部12bの両側から成長してきた結晶体同士の互いに対向する側面が溝部12bのほぼ中央部で接合して接合部14aを形成する。これにより、複数の凸部12aの頂面から成長する各結晶体は一体化され、且つ、その上面はC面となる。続いて、一体化された選択成長層14の上に、n型コンタクト層15、n型クラッド層16、n型光ガイド層17、MQW活性層18、p型光ガイド層19、p型クラッド層20及びp型コンタクト層21を順次成長して積層体30を形成する。
その後、図1に示すように、p型クラッド層20の上部及びp型コンタクト層21に対して、MWQ活性層18に選択的に電流を注入するリッジ部31を、空隙部12cの上方で且つ接合部14aと重ならない領域からなる低転位密度領域に形成する。
続いて、積層体30におけるリッジ部31を含まない領域に対してドライエッチングを行なって、n型コンタクト層15を露出した後、積層体30の露出面に絶縁膜22を堆積する。その後、絶縁膜22における、リッジ部31の上側部分及びn型コンタクト層15の上側部分にそれぞれ開口部を選択的に設けた後、蒸着法又はスパッタ法等により、リッジ部31における絶縁膜22の開口部からの露出領域及びその側方上にp側電極23を形成し、n型コンタクト層15における絶縁膜22の開口部からの露出領域上にn側電極24を形成する。
このようにして得られた半導体レーザ素子に対して、p側電極23とn側電極24との間に順方向の所定電圧を印加すると、MQW活性層18に向かって、p側電極23から正孔が注入されると共にn側電極24から電子が注入され、MQW活性層18において光学利得を生じて、発振波長が約404nmのレーザ発振を起こす。
図5に示すように、選択成長層14における種結晶の上側の領域、すなわち、凸部12aの上側の領域は、転位密度が約1x109 cm-2と高転位密度領域14bが形成される。一方、ラテラル成長した領域は転位密度が1x107 cm-2程度の低転位密度領域14cとなる。従って、積層体30における低転位密度領域14cの上方に、リッジ部31、すなわちレーザ光の共振器となる電流注入領域を形成することにより、レーザ素子の信頼性を向上することができる。
本実施形態の特徴であるシード層12の溝部12bの効果について図6(a)〜図6(d)を参照しながら説明する。
図6(a)に示すように、シード層12の上部にストライプ状の溝部12bを形成し、続いて、溝部の少なくとも底面上にマスク膜13を形成する。
次に、図6(b)及び図6(c)に示すように、溝部12b同士に挟まれてなる凸部12aの頂面を種結晶として選択成長層14を成長させると、マスク膜13の上にGaNからなる多結晶体41が析出する場合がある。
次に、図6(d)に示すように、多結晶体41が析出したままELO成長を続けて、選択成長層14が一体化されたとしても、種結晶である凸部12aの頂面と、多結晶体41が析出した溝部12bの底面との間には段差部が形成されているため、多結晶体41は選択成長層14及び積層体30の結晶性に何ら影響を及ぼすことがない。その結果、積層体30の結晶性のばらつきを大きく低減でき、半導体レーザ素子の製造の歩留まりを大きく向上することができる。
ところで、図1に示した選択成長層14及び積層体30を基板面に垂直な方向に貫く接合部14aは、刃状転位が集中して小傾角粒界を形成している。従って、n側電極24から注入された電子は複数の接合部14aを横切ってMQW活性層18に到達することになるが、接合部14aに集中した転位が電子の注入を妨げることはない。
また、半導体レーザ素子をチップ状に形成する際には、共振器のミラー面となる共振器端面を形成する必要がある。一般に、半導体レーザ素子の共振器端面は基板11をへき開することによって形成するが、へき開時には基板11に傷やクラックが生じることがある。
図39に示した第2の従来例に係る製造方法は、基板401と最下層の半導体層404とが接触しているために、基板401に生じた傷はMQW活性層306を含む積層体にまで達し、レーザ素子の動作及び光学特性を大きく損ねるといった不具合を生じる。
一方、本実施形態においては、基板11と積層体30との間に空隙部12cを設けているため、基板11に生じた傷を空隙部12cでとどめることができる。このため、基板11に生じた傷によって積層体30が不具合を被る虞を著しく低減できる。
また、図37に示した第1の従来例に係る製造方法は、サファイアや炭化ケイ素からなる基板301上に窒化物半導体層を成長させると、結晶の転位密度が約109 cm-2と多くなる。このような高転位密度を有する半導体結晶は、ステップフロー成長する際に、高密度の転位、特にらせん転位によって結晶表面のステップが終端され、結晶表面にマイクロファセットが形成される。このため、結晶表面の凹凸が大きくなって平坦性が悪い結晶となってしまう。その結果、インジウムを含むMQW活性層306を成長する際に、原料のインジウムが成長中の結晶内に取り込まれる量にばらつきが生じてしまい、レーザ素子のしきい値電流が増大する等の悪影響が生じる。
本実施形態に係る製造方法によると、図5に示した、ラテラル成長領域、すなわち低転位密度領域14cにおいて、一様なステップフロー成長を観察しており、結晶表面の平坦性が良好である。その結果、MQW活性層18を成長する際にも、インジウムの局所的な偏析が生じないので、しきい値電流の低減を図ることができる。
なお、本実施形態においては、窒化物半導体の成長方法にMOVPE法を用いたが、これに限定されない。MOVPE法に代えて、ハイドライド気相成長(HVPE)法又は分子線エピタキシ(MBE)法等の、窒化物半導体を成長可能な方法であればよい。後述の各実施形態においても同様である。
また、基板11にサファイアを用いたが、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素、ネオジムガレート(NGO)又は窒化ガリウム等を用いてもよい。
また、シード層12は、基板11との間に低温バッファ層を介した2段階成長によって形成したが、シード層12に単結晶を得られる方法であれば、低温バッファ層は必ずしも必要ではない。
また、シード層12の上部の凸部12aの形成にリフトオフ法を用いたが、凸部12a及び溝部12bが形成でき、該溝部12bの少なくとも底面にマスク膜13が残る方法であれば、他の方法を用いてもよい。すなわち、凸部12aにおけるマスク13により覆われていない領域のうちのC面を種結晶として、空隙部12cが形成される方法であれば良い。さらには、凸部12aをシード層12の上部を掘り込むリセスエッチによって形成する代わりに、シード層12の平坦な上面に、ストライプ状の開口パターンを持つ選択成長用のマスク膜を形成し、そのマスク膜の開口パターンから突出して成長した凸部を用いてもよい。
また、マスク膜13は、空隙部12cが形成されればよく、溝部12bの底面上にのみ形成してもよい。
また、マスク膜13の材料に窒化シリコンを用いたが、窒化シリコンに代えて、他の誘電体膜又は非晶質の絶縁膜を用いてもよい。具体的には、酸化シリコン(SiO2 )、酸化窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化酸化アルミニウム(AlNO)、酸化チタン(TiO2 )、酸化ジルコニウム(ZrO2 )又は酸化ニオブ(Nb2O3)を用いてもよい。これらの膜はECRスパッタ法を用いることにより、比較的容易に形成することができる。
(第1の実施形態の第1変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1変形例として、マスク膜に高融点金属又は高融点金属化物を用いる例を説明する。
選択成長用のマスク膜13に、高融点金属であるタングステン(W)を用いると、マスク膜13に誘電体を用いる場合と比べて結晶成長の選択性が向上し、マスク膜13上の多結晶体41の析出がより抑えられる。これにより、多結晶体41の影響を受けない高品質な積層体30を極めて容易に形成することができる。
これは金属からなるマスク膜13の方が誘電体からなるマスク膜13と比べて、窒化物半導体結晶との結合力が弱いことに起因する。
また、高融点金属であるタングステンは、その融点が3380℃と、金属で最も融点が高く且つ蒸気圧も低くて特性が安定しているため、酸化シリコン等の誘電体を用いた場合のシリコンや酸素等の不純物が選択成長層14へ混入する虞がない。このため、タングステンからなるマスク膜13を用いて成長した選択成長層14には深い準位や非発光中心が形成されない。
図7は誘電体からなるマスク膜13を用いた選択成長層14と、高融点金属からなるマスク膜13を用いた選択成長層14との室温でのフォトルミネッセンスを比較した結果を示している。
図7に示すように、第1変形例に係る選択成長層14は波長が430nm付近の深い準位からの発光もなく、極めて強いバンド端発光を得られている。これにより、第1の実施形態に係る選択成長層14と比べて、より高品質な結晶体を得られることが分かる。従って、このような高品位な選択成長層14の上に積層体30を成長すれば、より発光効率が高いMQW活性層18を形成することができる。
なお、第1変形例に係るマスク膜13にタングステンを用いたが、代わりに、他の高融点金属又は高融点金属化物を用いてもよい。例えば、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステンシリサイド(WSix )、モリブデンシリサイド(MoSix )又はニオブシリサイド(NbSix )を用いてもよい。これらの膜は、電子ビーム蒸着法又はスパッタ法を用いることにより、比較的容易に得ることができる。
(第1の実施形態の第2変形例)
図8は本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の断面構成を示している。図8において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図8に示すように、第2変形例に係る半導体レーザ素子は、シード層12の上に、選択成長層及びn型コンタクト層を設けることなく、n型Al0.07Ga0.93Nからなるn型クラッド層16を設けている。
第1の実施形態において説明したように、シード層12の上部に種結晶となる領域を除いて溝部12bを形成しているため、マスク膜13の上側には空隙部12cが形成される。これにより、マスク膜13上に多結晶体が析出したとしても、該多結晶体がシード層12の上に選択成長する半導体層に取り込まれなくなる。その結果、選択成長する半導体層の結晶性が良好となり、レーザ構造の積層体30の一部であるn型クラッド層16をシード層12の上に直接に形成できる。この場合には、n側電極24は露出したn型クラッド層16の露出部分上に設けることになる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図9は本発明の第2の実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子のM面を共振器端面とする断面構成を示している。図9において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態に係る半導体レーザ素子は、例えば、サファイアからなる基板11Aの上部に、選択成長用のストライプ状の凸部11aが共振器端面のM面に垂直な方向、すなわち基板11AのA軸(=<11−20>)方向に設けられている。
ここで、n型コンタクト層15は、基板11Aの各凸部11aのC面上に生成された単結晶核を種結晶として直接に形成されていることを特徴とする。
以下、前記のように構成された半導体レーザ素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図10(a)、図10(b)〜図12は本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ素子の工程順の断面構成を示している。
まず、図10(a)に示すように、C面を主面とする基板11A上にレジスト膜を塗布した後、塗布したレジスト膜をフォトリソグラフィ法によりストライプ状にパターニングを行なって、基板11AのA軸方向に延びるストライプ状パターンでその周期が約10μm〜30μmとなるレジストパターン40を形成する。続いて、レジストパターン40をマスクとして、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングにより基板11Aの上部に、断面幅が約9μm〜27μmで深さが約20nm〜500nmの溝部11bを形成する。ここでは、溝部11b同士の間の領域からなる凸部11aの断面幅を約1μm〜3μmとしている。
次に、図10(b)に示すように、レジストパターン40を除去して、上部にA軸方向に延びるストライプ状の凸部11aを有する基板11Aを得る。
次に、図11に示すように、MOVPE法を用いて、基板温度を約1000℃に昇温した後、例えば、圧力が約100Torr(1Torr=133.322Pa)の水素と窒素との混合雰囲気として、基板11Aの上にトリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH3 )及びシラン(SiH4 )を供給して、基板11Aの上に、凸部11aの頂面に現われたC面上に生成する単結晶核を種結晶として、n型GaNからなるn型コンタクト層15を成長する。このとき、n型コンタクト層15は、各凸部11aの頂面から上方に成長すると共に、基板面に平行な方向にも成長して、隣接する溝部11bの両側から成長してきた結晶体同士の互いに対向する側面が溝部11bのほぼ中央部で接合して接合部15aを形成する。これにより、複数の凸部11aの頂面から成長する各結晶体は一体化されて、上面がC面からなるn型コンタクト層15が形成される。また、このとき、各溝部11bの底面及び壁面とn型コンタクト層15の下面とにより囲まれてなる複数の空隙部11cが形成される。
ここで、サファイアからなる基板11Aによる選択成長の成長機構を説明する。
通常、窒化物半導体を成長する際に、該窒化物半導体と格子定数が異なる基板を用いる場合には、基板上に窒化物半導体からなる低温バッファ層を介さずにGaN結晶を直接に成長させると、GaNからなる単結晶核同士が合体してなる3次元的な膜しか得られない。
一方、本実施形態においては、基板11Aの溝部11bの形成にドライエッチングを施しているため、溝部11bの底面及び壁面上にはドライエッチングによるダメージ層が形成される。このため、溝部11bの底面及び壁面上では単結晶核の生成が阻害される。また、ドライエッチングが施されていない凸部11aの頂面は、その断面幅が約1μm〜3μmと小さいため、高密度の単結晶核が容易に生成される。このように凸部11aの頂面上に生成された単結晶核が選択成長の種結晶となり、前述の成長条件で基板面方向への選択成長が促進される。
図11において、接合部15a以外の選択成長領域では貫通転位が約1x106 cm-2の密度で観測されるのに対して、接合部15aではC面内に水平な転位が約4x107 cm-2の密度で観測される。n型コンタクト層15の厚さは、溝部11bの幅等にも依存するが、約2μm〜6μmとしている。また、n型コンタクト層15における凸部11aの上側部分のC軸と空隙部11c上の領域のC軸とのチルト角は0.01度〜0.03度に抑えられている。
このように、本実施形態に係るELO成長法が従来のELO成長と比較してチルト角が極めて小さくなるのは、ELO成長した結晶層であるn型コンタクト層15が基板11Aと接触しておらず、マスク膜13との界面で従来のようなストレスが発生しないからである。
なお、このとき、接合部15aの下部に、空隙部11c側に開口する逆V字状のボイドが現われる。
さらに、本実施形態においては、n型コンタクト層15の選択成長を行なう際に、溝部11bの底面上に多結晶体が析出したとしても、基板11Aの上部に設けた凸部11aと溝部11bとの間に生じる段差によって多結晶体がn型コンタクト層15と接触しないため、積層体30の結晶の品質に悪影響を及ぼすことはない。その結果、積層体30から形成されるレーザ素子の動作特性のばらつきを低減でき、歩留まりを向上させることができる。
次に、図12に示すように、n型コンタクト層15の上に積層体30の残りの半導体層を形成する。
すなわち、例えば、基板温度を約970℃に設定した後、圧力が約300Torrの水素と窒素との混合雰囲気として、n型コンタクト層15の上に、n型クラッド層16、n型光ガイド層17、MQW活性層18、p型光ガイド層19、p型クラッド層20及びp型コンタクト層21を順次成長する。ここでは、MQW活性層18を、厚さが約4nmのGa0.92In0.08Nからなる井戸層と厚さが約6nmのGaNからなるバリア層により構成している。
続いて、図9に示すように、p型クラッド層20の上部及びp型コンタクト層21に対して、積層体30のM軸(=<1−100>)方向、すなわち、基板11Aの溝部11bと平行な方向に、MWQ活性層18に選択的に電流を注入するリッジ部31を、空隙部11cの上方で且つ接合部15aと重ならない領域、すなわち、低転位密度領域に形成する。ここで、リッジ部31の幅は約2μm〜5μmとしている。
なお、GaN系結晶は可視光にとって透明であるため、光学顕微鏡により凸部11aと空隙部11cとを識別することが容易である。このため、フォトリソグラフィ法を用いたリッジ部31の位置決めを行なう際に、専用のアライメントパターンを用いる必要がない。
次に、積層体30のリッジ部31を含まない領域をマスクして、n型コンタクト層15を露出した後、積層体30の露出面に絶縁膜22を堆積する。続いて、絶縁膜22上にリッジ部31を跨ぐと共にp型コンタクト層21の絶縁膜22からの露出領域上にp側電極23を形成する。また、n型コンタクト層15における絶縁膜22からの露出領域上にn側電極24を形成する。
次に、積層体30のM面で、すなわち基板11AをそのA面でへき開することにより共振器端面を形成する。前述したように、サファイアのA面はへき開が困難な結晶面であるが、基板11Aに空隙部11cを設けたことにより、へき開が所定の位置からずれた状態でサファイア結晶が破断したとしても、この破断が積層体30に伝播しないため、共振器端面の近傍には良好なへき開面を容易に得ることができる。これにより、レーザ素子のへき開による歩留まりを高くすることができる。
次に、へき開した共振器の両端面に適当な反射率となるように誘電体膜等によってコーティングを施し、その後、リッジ部31に対して平行な側面でチップ状に分割して半導体レーザ素子を得る。
本実施形態に係る半導体レーザ素子は、第1の実施形態で述べたように、ELO成長した領域において一様なステップフロー成長が観察される。このような平坦な表面上にMQW活性層18を成長すると、インジウムの局所的な偏析が起こらない。その結果、MQW活性層18は高品位な結晶体となるので、レーザ素子の動作電流を低減することができる。
図13は本実施形態に係る半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の共振器端面に平行な方向における遠視野像を示しており、単峰性の良好な光強度分布が得られている。一方、第1の従来例に係る半導体レーザ素子は、図42に示したように、光強度分布が多峰性となる遠視野像を示す。
本実施形態に係る半導体レーザ素子に単峰性を得られるのは、積層体30と基板11Aとの間に空隙部11cが設けられることにより、積層体30と基板11Aとが光学的に互いに分離されているためである。
具体的に説明すると、図9に示すように、n型クラッド層16の下側には、該n型クラッド層16よりも光の屈折率が大きいn型コンタクト層15が形成されているため、MQW活性層18で生成された生成光が基板11A側に漏れやすい。しかしながら、本実施形態においては、n型コンタクト層15の下側に、屈折率が極めて低い空隙部11cを設けているため、n型クラッド層16と基板11Aとの間に寄生的な導波路が形成されず、従って、生成光の漏れによるMQW活性層18の光の閉じ込め係数値が低下しないからである。
なお、この寄生的な導波路の生成を阻止する効果は、空隙部11cの基板面に垂直な方向の間隔、すなわち溝部11bの深さに依存する。計算機シミュレーションによると、溝部11bの深さ寸法が少なくとも50nm程度あれば、基板11A側への光の漏れが実質的になくなることを確認している。
また、GaNからなるn型コンタクト層15にアルミニウムを2%以上添加すると、基板11A側への光の漏れをより効果的に抑制できることをも確認している。
また、本実施形態においては、基板11Aの凸部11aの頂面に生成される単結晶核として窒化ガリウムを用いたが、他の窒化ガリウム系の混晶、すなわち、Alu Gav Inw N(但し、u,v,wは、0≦u,v,w≦1、u+v+w=1である。)であればよい。混晶の場合は、該混晶の組成に応じてELO成長に最適な成長条件を選ぶことができる。
また、基板11Aにサファイアを用いたが、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素や窒化ガリウム等を用いてもよい。但し、炭化ケイ素を基板11Aに用いると、積層体30に引っ張り歪みが加わり、クラックが発生しやすくなるため、溝部11bの断面幅をできるだけ小さくすることにより、n型コンタクト層15が一体化されたときの膜厚が2μm未満となるようにすることが望ましい。また、基板11Aに炭化ケイ素や窒化ガリウムを用いた場合は、へき開はM面及びA面のいずれの面でも容易となるが、溝部11bのストライプ方向と直交する面でへき開する方が歩留まりを高くできる。
また、基板11Aに溝部11bを形成する際に、RIE法によるドライエッチングを用いたが、溝部11bの底面及び壁面にダメージ層を形成し、窒化ガリウム系半導体に選択成長性を付与できる方法であれば、他のドライエッチング方法、例えば、イオンミリング法を用いてもよい。
また、溝部11bのダメージ層をELO成長のためのマスク層としたが、析出した多結晶体がダメージ層に付着するような場合、特に、基板11Aに窒化ガリウムを用いる場合には、選択性をより向上させるために、窒化シリコン等からなるマスク膜を溝部11bの少なくとも底面上に形成することが好ましい。
なお、マスク膜13は、窒化シリコンに限らず、第1の実施形態に示した誘電体、非晶質の絶縁体でも良く、さらには、その第1変形例に示した高融点金属又は高融点金属化物を用いることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る発明は、レーザ素子に関するが、転位密度が低い窒化ガリウム系結晶を得る半導体の製造方法としても適用できる。さらに、第1の実施形態のように、基板11上にシード層12を設けないため、製造プロセスを簡略化できる。
また、本実施形態に係る低転位密度領域を有する窒化物半導体層を用いることにより、発光素子に限らず、電子素子等の他の半導体素子を形成しても良い。これにより、該半導体素子の高信頼性と高歩留まりとを実現できる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図14は本発明の第3の実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の断面構成を示している。図14において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第1の実施形態との構成上の相違点のみを説明する。
シード層12の各凸部12aの頂面から成長して一体化された選択成長層14Aに窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いる共に、n型AlGaNとn型GaNとを含む超格子構造を持つn型超格子クラッド層16Aがn型コンタクト層15を兼ねる構成を採る。これにより、MQW活性層18の光の閉じ込め係数値を大きくしている。
図15は本実施形態に係る半導体レーザ素子のリッジ部における基板と垂直な方向の屈折率分布と、共振器端面の光強度分布との関係を示している。また、図16は本実施形態に係る半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の共振器端面に平行な方向における遠視野像を示している。
第3の実施形態においては、シード層12の溝部12bの深さを約50nmとし、n型超格子クラッド層16Aの平均組成をAl0.07Ga0.93Nとしている。また、n型光ガイド層17から上の積層体の構成は、図37に示した従来の半導体レーザ素子と同等の構成としている。
図15から分かるように、本実施形態に係る半導体レーザ素子は基板11側への生成光の漏れがみられない。また、MQW活性層18への光の閉じ込め係数値は、図41の場合の約1.54倍にも達することを確認している。
これは、MQW活性層18が、シード層12の空隙部12cによって基板11と分離されている上に、n型超格子クラッド層16Aとシード層12との間に、光の屈折率がn型超格子クラッド層16Aよりも小さいか又同等の屈折率を持つn型AlGaNからなる選択成長層14Aを設けていることによる。これにより、n型超格子クラッド層16Aと基板11との間に寄生的な導波路が形成されないため、MQW活性層18における光の閉じ込め係数値の生成光の漏れによる低下を抑制できる。
なお、この寄生的な導波路の生成を阻止する効果は、空隙部12cの基板面に垂直な方向の間隔、すなわち溝部12bの深さ寸法に依存する。前述したように、溝部12bの深さ寸法が少なくとも50nm程度あれば、基板11側への光の漏れを実質的になくすことができる。
また、選択成長層14Aのアルミニウムの組成は、2%以上、望ましくは4%以上とすることにより、生成光の基板11側への漏れを抑制できる。
また、本実施形態においても、選択成長層14Aを成長する際に、AlGaNからなる多結晶体がマスク膜13上に析出したままELO成長を続行しても、種結晶である凸部12aの頂面と多結晶体が析出した溝部12bの底面との間には段差が生じているため、多結晶体により選択成長層14Aの結晶性が劣化することがない。その結果、積層体30の結晶性のばらつきを大きく低減でき、半導体レーザ素子の製造の歩留まりが向上する。
以下、積層体30上のリッジ部31の位置合わせ方法について説明する。
積層体30における空隙部12cの上方の低転位密度領域にリッジ部31を形成するには、フォトリソグラフィ法によりリッジ部31の位置決めを高精度に行なう必要がある。
図17は積層体30を形成する前の選択成長層14の光学顕微鏡による平面写真と、それと対応する選択成長層14の断面構成を表わしている。図17に示すように、光学顕微鏡によって、低転位密度領域14cは、高転位密度領域14b及び接合部14aと容易に識別できる。従って、フォトリソグラフィ法によるリッジ部31の位置決めを行なう工程において、専用のアライメントパターン(位置合わせマーク)を用意する必要がない。
また、共振器端面の形成には、基板11及び積層体30をへき開する必要がある。本実施形態においても、シード層12に設けた空隙部12cにより、基板11に生じた傷が空隙部12cでとどまるため、積層体30への影響を確実に低減できる。
本実施例においては、n側電極24はn型超格子クラッド層16Aと接するように形成されており、n型超格子クラッド層16Aをn型コンタクト層としている。
前述したように、MQW活性層18からの生成光が基板11側に漏れないためには、n型光ガイド層17と空隙部12cとの間にアルミニウムを含む半導体層によって構成する必要がある。ところが、n側電極24を形成するためのn型コンタクト層にアルミニウムの組成が大きいバルク層(単層)、例えば、n型Al0.07Ga0.93Nからなる単層を用いると、該単層の抵抗率が窒化ガリウムと比べて2倍程度に増えたり、さらにはコンタクト抵抗が増えたりして、レーザ素子の駆動電圧が増大してしまう。
本願発明者らは種々検討を重ねた結果、例えば、n型Al0.14Ga0.86Nとn型GaNとからなるn型超格子クラッド層16Aの比抵抗は単層のn型GaN層の比抵抗とほぼ同等となるという知見を得ている。これは超格子半導体層に生成される2次元電子ガスの移動度が大きいためである。さらに、本願発明者らは、超格子を構成する単位層の膜厚を十分に小さく、例えば2nm程度とすることにより、コンタクト抵抗がn型GaN層と同等にできるという知見をも得ている。このときのn型不純物のドーピング濃度を1×1018cm-3程度としている。
これにより、AlGaNとGaNとを超格子構造とすることにより、AlGaNの低屈折率を生かしながら、同時に低抵抗化をも実現でき、低電圧化を確実に達成できる。
なお、超格子層は、アルミニウムの平均組成が2%で且つ膜厚がλ/(4n)以下が好ましい。ここで、λは光の波長であり、nは単位層の屈折率である。
さらに、本実施形態によると、図17に示す選択成長層14Aの低転位密度領域14cは、原子間力顕微鏡(Atomic-Force-Microscopy:AFM)による測定によって、一様なステップフロー成長が確認されており、表面は良好な平坦性を有している。その結果、インジウムを含むMQW活性層18の成長時に、インジウムの局所的な偏析が生じなくなるので、しきい値電流を低減することができる。
また、基板11にサファイアを用いたが、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素、ネオジムガレート(NGO)又は窒化ガリウム等を用いてもよい。
また、シード層12の上部の凸部12aの形成にリフトオフ法を用いたが、凸部12a及び溝部12bが形成でき、該溝部12bの少なくとも底面上にマスク膜13が残る方法であれば、他の方法を用いてもよい。
また、マスク膜13は、空隙部12cが形成されればよく、溝部12bの底面上にのみ形成してもよい。
また、マスク膜13には、ECRスパッタ法による窒化シリコンや酸化シリコン等の誘電体を用いても良く、さらに好ましくは、タングステン等の高融点金属やそのシリサイド化物を用いると良い。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図18は本発明の第4の実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の断面構成を示している。図18において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第3の実施形態との構成上の相違点のみを説明する。
第3の実施形態に係るAlGaNからなる選択成長層14Aを、図18に示すように、シード層12の凸部12aの頂面の近傍に形成されたGaNからなる第1の選択成長層14Bと、該第1の選択成長層14Bの上方及び側方を覆う、AlGaNからなる第2の選択成長成長14Cとの2層構造としている。
また、n型コンタクト層を兼ねるn型超格子クラッド層16Aを、n型超格子コンタクト層15Aと単層のAl0.07Ga0.93Nからなるn型クラッド層16との2層構造としている。ここでは、n型超格子コンタクト層15Aの構成を、n型Al0.1Ga0.9Nとn型GaNとからなる超格子構造としている。
また、積層体30の上部におけるリッジ部31には、該リッジ部31の上面にのみp側電極23を形成し、該p側電極23及びリッジ部31を覆うようにp側配線電極25が形成されている。同様に、n側電極24上には該n側電極24を覆うn側配線電極26が形成されている。
以下、本実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の特徴を説明する。
まず、シード層12の各凸部12aの頂面を種結晶として成長する複数の第1の選択成長層14Bを成長させる。続いて、各第1の選択成長層14Bを種結晶として成長する第2の選択成長層14C同士が接合して一体化するまでは、第1及び第2の選択成長層14B、14Cの成長圧力を200Torr程度と比較的低く設定している。
これは、減圧状態とする程、第1及び第2の選択成長層14B、14Cの成長速度が、基板面に垂直のC軸方向と比べて、シード層12のA軸方向、すなわち、溝部12bを横切る方向の方が大きくなるからである。
これに対して、MQW活性層18は成長時の圧力を300Torr程度に高くして行なう。これは、成長圧力を高くした方が、蒸気圧が高いインジウムの蒸発を抑制でき、MQW活性層18の結晶品質を高くしやすいためである。従って、積層体30を形成する際には、第1及び第2の選択成長層14B、14Cと成長圧力を変更することになる。
このように、連続する窒化物半導体の成長工程において、成長圧力を変更するには、稼働中に成長圧力を変更可能な1つの結晶成長炉を用いても良く、また、それぞれの成長圧力に設定された別々の結晶成長炉を用いても良い。
第4の実施形態に係る半導体レーザ素子は、第3の実施形態と同様に、図15に示した屈折率分布及び光強度分布を示し、図16に示した出射光の遠視野像を得ている。
これは、MQW活性層18が、シード層12の空隙部12cによって基板11と分離されている上に、n型クラッド層16とシード層12との間に、光の屈折率がn型クラッド層16Aよりも小さいか又は同等の屈折率を持つn型超格子コンタクト層15A及び第2の選択成長層14Cを設けているからである。これにより、n型クラッド層16と基板11との間に寄生的な導波路が形成されず、MQW活性層18における光の閉じ込め係数値の生成光の漏れによる低下を抑制できる。
なお、本実施形態の場合は、計算機シミュレーションの結果、溝部12bの深さ寸法が少なくとも20nm程度あれば、基板11側への光の漏れを実質的になくすことができることを確認している。
また、第2の選択成長層14Cのアルミニウムの組成は、2%以上、望ましくは4%以上とすることにより、生成光の基板11側への漏れを抑制できる。
以上の構成により、MQW活性層18への光閉じ込め係数値は、図41の場合の約1.5倍となり、レーザのしきい値電流を低減できる。
次に、本発明に係る凸部12aの頂面を種結晶とする選択成長法と、図38に示す、平坦なシード層をストライプ状にマスクする第2の従来例の選択成長法との成長機構の相違点を説明する。
図19(a)は第4の実施形態に係る選択成長機構を模式的に表わしており、図19(b)は第2の従来例に係る選択成長機構を模式的に表わしている。
良く知られているように、分子等からなる反応種が所望の結晶体に成長するまでには、結晶体の表面上やマスク膜の表面上において、反応種が吸着、拡散及び蒸発等を繰り返すというプロセスを経る。例えば、GaNからなる結晶表面に吸着した原子は結晶表面の上面であるテラス上を拡散する。また、表面に吸着された原子はステップと呼ばれるテラス上の段差部で結晶化する。
図19(b)に示すように、従来のELO成長の場合においても、マスク膜403上で同様のプロセスを経る。すなわち、マスク膜403上を拡散した原子は、GaNからなる半導体層404の端部に吸着する。このとき、マスク膜403を構成するシリコン又は酸素が、水素やアンモニアの還元作用によって分解されて、不純物として半導体層404に取り込まれることにより、半導体層404の結晶性が劣化する。
これに対して、図19(a)に示すように、本実施形態においては、マスク膜13上を拡散して、GaNからなる第1の選択成長層14Bに取り込まれる原子はない。それは、第1の選択成長層14Bの下面に結晶が成長し得ないためである。このように、マスク膜13上の反応種の結晶成長への寄与が従来のELO法と異なっており、このことから、本発明の成長機構は従来のELO法による成長機構と異なっている。
本実施形態においては、第1の選択成長層14BにGaNを用い、第2の選択成長層14CにAl0.05Ga0.95Nを用いたが、第1の選択成長層14Bには、アルミニウムの組成が4%以下のAlx Gay Inz N(x+y+z=1)からなる窒化物半導体であればよい。
以下、低屈折率を有する第2の選択成長層14Cを成長するよりも前に、シード層12を種結晶とする第1の選択成長層14Bを形成する目的を図面に基づいて説明する。
第3の実施形態で説明したように、基板面に対して垂直な方向の横モード制御及びMQW活性層18への光の閉じ込め係数値を大きくするのであれば、選択成長層を2層構造とする必要はない。
ところが、図20(b)に示すように、AlGaNからなる選択成長層14Aにおいてアルミニウムの組成が4%を越える場合には、選択成長層14Aの成長方向の端面にうねり14dが生じる場合がある。選択成長層14Aの成長条件、例えば成長圧力、成長温度、又はIII 族源に対するV族源のモル比であるV/III 比等に適当な値を設定すれば多少の改善はされるものの、量産を考えると、成長端面のうねり14dの発生を極力なくすことが好ましい。
本願発明者らは、シード層12を種結晶とする選択成長層には、アルミニウムの組成を小さくした窒化物半導体層を用いることが好ましいことを見いだしている。
具体的には、図20(a)に示すように、まず、アルミニウムの組成が4%以下の窒化ガリウム系半導体からなる第1の選択成長層14Bをシード層12の凸部12の近傍に成長しておき、その後、成長した第1の選択成長層14Bを種結晶として、アルミニウムの組成が4%を越え、低屈折率を有する窒化ガリウム系半導体からなる第2の選択成長層14Cを成長する。これにより、第2の選択成長層14Cは成長端面にうねり14dを生じない良好なラテラル成長を行なえるようになる。
また、第2の選択成長層14Cは、そのアルミニウムの組成が大きい程、また、その成長時間が長いほど、マスク膜13上に多結晶体41が析出しやすくなる。これはGaN結晶と比べてAlGaN結晶又はAlN結晶の蒸発速度が小さいためである。
図21(a)〜図21(d)に示すように、GaNからなり、多結晶体41が析出しにくい第1の選択成長層14Bを最初に成長することにより、成長端面が接合するまでに要する第2の選択成長層14Cの成長時間を短くすることができる。
また、図21(c)第1の選択成長層14Bが傘状に成長するため、マスク膜13上に供給される反応種の量を低減できる。これらの効果により、マスク膜13上の多結晶体41の析出量を大きく低減できるようになり、空隙部12cの上方に成長する積層体30への影響を極めて小さくすることができる。その結果、光の閉じ込め係数値を確実に大きくできる上に、積層体30の結晶性が向上してレーザ素子としての動作特性のばらつきを大きく低減できるので、製造の歩留まりをも確実に向上することができる。
なお、本実施形態においては、基板11にサファイアを用いたが、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素、ネオジムガレート又は窒化ガリウム等を用いてもよい。
また、マスク膜13は、空隙部12cが形成されれば、溝部12bの底面上にのみ形成してもよい。
また、マスク膜13には、ECRスパッタ法による窒化シリコンや酸化シリコン等の誘電体を用いても良く、さらに好ましくは、タングステン等の高融点金属やそのシリサイド化物を用いると良い。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図22及び図23は本発明の第5の実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子であって、図22は積層体のM面における断面構成、すなわち基板のA面における断面構成を示し、図23図22のXXIII−XXIII線における断面を示し、積層体のA面、すなわち基板のM面における断面構成を示している。図22及び図23において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第5の実施形態は、MQW活性層18を含む積層体30から、平坦な共振器端面32を持つ半導体レーザ素子を確実に形成できるようにすることを特徴とする。
図22に示すように、シード層12の上部には、断面幅が約3μmの凸部12aと断面幅が約12μmの溝部12bとを一周期とする周期構造体の34周期(長さ510μm)ごとに、溝部12bの断面幅を約20μmと大きくした拡大溝部12dが形成されている。
第1の実施形態と同様の方法で積層体30を形成すると、シード層12の各凸部12aの頂面を種結晶としてラテラル成長する積層体30は、拡大溝部12dの上方では接合されないため、隣接する積層体30のA面同士の成長端面が接することなく現われる。この成長端面は、自然形成された結晶面であるため、M面等の他の面方位が全く混在していない。従って、この成長端面を共振器端面32に用いると、図43に示した従来の半導体レーザ素子のように、A面とM面とが混在することにより生ずる共振器端面におけるミラー損失を防止できる。
この自然形成されたA面を持つ成長端面を原子間力顕微鏡(AFM)により観察すると、その表面は荒さの2乗の平均値が1nm以下となる極めて平坦な表面を得られていることを確認している。
さらに、この成長端面を共振器端面32とすると、エネルギーギャップがMQW活性層18よりも大きいp型光ガイド層19、p型クラッド層20が共振器端面32上に形成されているため、p型光ガイド層19及びp型クラッド層20における端面上の領域で出射光が吸収されることがない。これにより、積層体30における共振器端面32の近傍の温度上昇が抑制されるので、端面劣化による信頼性の低下を防止できる。
第5の実施形態に係る半導体レーザ素子によると、ストライプ状の凸部12aの頂面を種結晶とするELO成長法を用いると共に、さらに、凸部12a同士の側面により形成される溝部12bの形成周期をその形成周期よりも大きい周期で拡大溝部12dを設けている。これにより、拡大溝部12dの上方に積層体30の成長端面がそのまま露出するため、この自然形成された露出面が共振器の端面32となる。この共振器端面を持つ本実施形態に係る半導体レーザ素子と、図39に示す第2の従来例に係る半導体レーザ素子とのレーザ光の発振しきい値を比較すると、本実施形態に係るレーザ素子の方が約30%も低減する。
なお、基板11にサファイアを用いたが、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素、ネオジムガレート(NGO)又は窒化ガリウム等を用いてもよい。
また、マスク膜13は、空隙部12cが形成されれば、溝部12bの底面上にのみ形成してもよい。
また、マスク膜13には、ECRスパッタ法による窒化シリコンや酸化シリコン等の誘電体を用いても良く、さらに好ましくは、タングステン等の高融点金属やそのシリサイド化物を用いると良い。
また、シード層12の上部に設けた凸部12a及び溝部12bの幅はそれぞれ3μm及び12μmに限られないが、凸部12aの幅を溝部12bの幅よりも小さくする方が好ましい。このようにすると、凸部12aの頂面の種結晶から積層体30に伝播する転位の影響を低減でき、転位によるレーザ素子の動作特性の劣化を防止できるので、該レーザ素子の信頼性を向上することができる。
また、シード層12の上部の拡大溝部12dの形成周期も共振器長に合わせて適当な値に設定すればよい。
第5の実施形態においては、凸部12aのストライプ方向として積層体30のM軸方向を選び、その自然形成されたA面を共振器端面32としたが、代わりに、凸部12aのストライプ方向として積層体30のM軸と直交するA軸方向を選ぶと、M面が自然形成される。従って、A軸方向に延びるストライプ状の凸部12aを形成することにより、自然形成されたM面を共振器端面32に持ち、しきい値電流を大きく低減でき且つ信頼性が向上する半導体レーザ素子を得ることができる。
(第5の実施形態の第1変形例)
以下、本発明の第5の実施形態の第1変形例について図面を参照しながら説明する。
図24は第5の実施形態の第1変形例に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子における積層体のM面における断面構成、すなわち基板のA面における断面構成を示している。図24においては、図22に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付している。
図24に示すように、第1変形例に係る半導体レーザ素子は、積層体30の共振器端面32を自然形成する拡大溝部12dの内側に隣接する溝部をも断面幅が20μm程度に拡大された拡大溝部12dを有している。これにより、積層体30の共振器端面側の両端部に、それぞれの対向面がA面からなる側面空隙部30aが形成されている。
このように、共振器端面32に、屈折率が1である側面空隙部30aと、屈折率が約2.6の窒化ガリウム系半導体からなる積層体30とを組み合わせることにより、高屈折率差を実現できるため、共振器端面32におけるレーザ光の反射率を誘電体膜等によりコーティングする場合と比べて大きくすることができる。
共振器端面32におけるレーザ光の反射率を高めるには、側面空隙部30aによって積層体30から孤立する孤立体の出射方向の幅寸法が、λ/(4n)の整数倍であることが好ましい。ここで、λは光の波長であり、nは孤立体の屈折率である。
なお、側面空隙部30aを積層体30の両端部に設けたが、反射率を高めて出射光の出力値を増大させるために、積層体30のいずれか一方の端部にのみ側面空隙部30aを設けてもよい。
本変形例によると、レーザ光の発振しきい値電流は、側面空隙部30aを設けない場合と比べて、約20%も低減され、側面空隙部30aの効果は極めて大きい。なお、側面空隙部30aは積層体30中に3つ以上設けてもよい。
(第5の実施形態の第2変形例)
図25は、第5の実施形態に係る第2変形例であって、シード層12の上部に設けるストライプ状の溝部をすべて拡大溝部12dとしている。
このようにすると、複数の積層体30のそれぞれは、基板11上においてすべてが孤立体となる。従って、所望の共振器長を持つ共振器が形成されるように複数の孤立体からなる共振器を形成し、形成した共振器の端面と対応する位置の側面空隙部30aにおいて基板11を分割することにより、複数の孤立体を含む1つの半導体レーザ素子を形成できる。
これにより、第2変形例に係る半導体レーザ素子は、レーザ光のミラー損失の要因となる凹凸がなく極めて平坦なA面を持ち、且つ、該レーザ素子に孤立体を含める個数を変えることにより、共振器長を容易に変更することができる。
さらには、各拡大溝部12dごとに基板11を分割することにより、凸部12aの1つ分からなり、共振器長が約15μmのレーザ素子を得ることも可能となる。従来のように基板と積層体とを同時にへき開する方法では、共振器端面の平坦性を維持しながら、このような微小な共振器を形成することは極めて困難である。
(第5の実施形態の第3変形例)
以下、第3変形例として、選択成長層の上部にストライプ状の凸部をさらに設けて、積層体30から結晶転位を完全になくしてしまうことにより、半導体レーザ素子の信頼性をより向上できる方法を説明する。
図26に示すように、上部に凸部12a及び溝部12bが設けられ、該溝部12bの底面及び壁面に第1のマスク膜13Aが形成されたシード層12aの上には、選択成長シード層34がELO成長により一体に形成されている。
選択成長シード層34の上には、シード層12の凸部12a及び溝部12bと同等の周期を持つ、凸部34a及び溝部34bが設けられており、該溝部34bの底面及び壁面には第2のマスク膜13Bが形成されている。
ここで、凸部34aは、選択成長シード層34における低転位密度領域及び接合部を避けるように、溝部12bの上方に形成されている。
このように、第3変形例によると、選択成長シード層34の上部に設けられた凸部34aの頂面であるC面を種結晶として選択成長層14が成長している。この凸部34aの頂面には、シード層12における凸部12aの頂面の種結晶からの転位や、選択成長シード層34の接合部に起因する欠陥等が含まれない高品位の結晶面が現われている。その結果、高品位の選択成長層14の上に形成される積層体30は欠陥フリーとなり、結晶欠陥に起因したレーザ光の散乱による損失及びキャリアの非発光過程による信頼性の低下等を防止でき、極めて高品質な窒化ガリウム系半導体レーザ素子を実現できる。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図27は本発明の第6の実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子であって、積層体のA面における断面構成、すなわち基板のM面における断面構成を示している。図27において、図14に示す第3の実施形態に係るレーザ素子の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第3の実施形態との構成上の相違点のみを説明する。
図27に示すように、サファイアからなる基板11上には、第1のシード層12A及び第2のシード層12Bが設けられている。
第1のシード層12Aの上部には、ストライプ状の凸部12a及び溝部12bが基板11のM面に対して平行に、すなわち、積層体30のA面に対して平行に設けられている。同様に、第2のシード層12Bの上部には、ストライプ状の凸部12a及び溝部12bが、第1のシード層12Aの凸部12a及び溝部12bと平行で且つ基板面に垂直な方向で重ならないように設けられている。
以下、前記のように構成された半導体レーザ素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図28(a)、図28(b)〜図31は本発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法であって、基板のA面における工程順の断面構成を示している。
まず、図28(a)に示すように、MOVPE法により、C面を主面とする基板11上に、基板温度を約530℃に設定し、例えば圧力が約300Torrの水素と窒素との混合雰囲気として、III 族源のTMGと、窒素源のNH3 とを供給して、GaNからなる低温バッファ層を堆積する(図示せず)。続いて、基板温度を約970℃にまで昇温した後、TMG、NH3 及びSiH4 を基板11上に供給することにより、膜厚が0.5μm〜1μm程度のn型GaNからなる第1のシード層12Aを成長する。このとき、第1のシード層の主面はC面となっており、転位密度は109 cm-2台である。
次に、図28(b)に示すように、第1のシード層12A上にレジスト膜を塗布した後、塗布したレジスト膜をフォトリソグラフィ法により、ストライプ方向が第1のシード層12AのM軸方向と一致するパターニングを行なって、レジストパターン40を形成する。続いて、レジストパターン40をマスクとして、第1のシード層12Aに対してドライエッチングを行なうことにより、第1のシード層12Aの上部に、断面幅が約3μm〜6μmの凸部12aと断面幅が約12μm〜24μmの溝部12bとを一周期とする周期構造体を形成する。このとき、溝部12bの深さ寸法を50nm〜1μm程度としている。
次に、図29(a)に示すように、ECRスパッタ法を用いて、第1のシード層12Aにおける溝部12bの底面及び壁面とレジストパターン40上に、窒化シリコンからなるマスク膜13を堆積する。ここでも、シリコンの原料には、固体シリコンを用い、反応性ガスには窒素を用い、プラズマガスにはアルゴンを用いている。
次に、図29(b)に示すように、レジスタパターン40に対してリフトオフを行なって、レジストパターン40及びその上のマスク膜13を除去する。なお、マスク膜13は、溝部12bの壁面の全面を覆っていても良く、壁面の一部を覆っていても良い。
次に、図30(a)に示すように、再度MOVPE法を用いて、例えば圧力が約100Torrの水素と窒素との混合雰囲気とし、基板温度を約1000℃にまで昇温した後、TMG、NH3 及びSiH4 を第1のシード層12Aの上に供給することにより、第1のシード層12Aのマスク膜13から露出した領域を種結晶として、n型GaNからなる第2のシード層12Bを成長する。このとき、第2のシード層12Bは、各凸部12aの頂面から上方に成長すると共に、基板面に平行な方向にも成長して、隣接する溝部12bの両側から成長してきた結晶体同士の互いに対向する側面が溝部12bのほぼ中央部で接合して接合部12eを形成する。これにより、複数の凸部12aの頂面から成長する各結晶体は一体化されて、上面がC面からなる第2のシード層12Bが形成される。また、このとき、第1のシード層12Aにおける各溝部12bの底面及び壁面と第2のシード層12Bの下面とにより囲まれてなる複数の空隙部12cが形成される。このときの、第2のシード層12Bの膜厚は、溝部12bの幅寸法等に依存するが、約2μm〜6μmである。
第2のシード層12Bにおける接合部12eを除く選択成長領域では、転位密度が約1x106 cm-2程度の貫通転位が観測されるのに対し、接合部12eでは、C面内に平行な転位密度が約4x107 cm-2の結晶転位が観測される。
また、第2のシード層12Bにおける凸部12aの上側部分のC軸と空隙部12c上の領域のC軸とのチルト角は0.01度〜0.03度である。
このように、本実施形態に係るELO成長法が従来のELO成長と比較してチルト角が極めて小さくなるのは、ELO成長した結晶層である第2のシード層12Bが第1のシード層12Aと接触しておらず、マスク膜13との界面で従来のようなストレスが発生しないからである。
なお、接合部12eの下部に、空隙部12c側に開口する逆V字状のボイドが現われる。
さらに、本実施形態においては、第2のシード層12Bの選択成長を行なう際に、溝部12bの底面上に多結晶体が析出したとしても、第1のシード層12Aの上部に設けた凸部12a及び溝部12bにより形成される段差によって多結晶体が第2のシード層12Bと接触しないため、レーザ構造を含む積層体30の結晶品質に悪影響を及ぼすことはない。その結果、積層体30から形成されるレーザ素子の動作特性のばらつきを低減でき、歩留まりを向上させることができる。
次に、図30(b)に示すように、成長した第2のシード層12Bの上部に、凸部12a及び溝部12bを一周期とする周期構造体を、第1のシード層12Aと同様の方法で形成する。このとき、第2のシード層12Bの凸部12aを、その頂面の位置が第2のシード層12Bの低転位密度領域の上に位置するように形成することが好ましい。すなわち、第2のシード層12Bの凸部12aの頂面の位置が、第1のシード層12Aの凸部12aの頂面の位置と基板面方向に異なり且つ接合部12eの側方の領域に形成する。
これにより、第2のシード層12Bにおける、第1のシード層12Aの空隙部12c上に位置する低転位密度領域を種結晶として、2回目のELO成長を行なえるようになる。なお、窒化ガリウム系結晶は可視光にとって透明であるため、光学顕微鏡により凸部12aと溝部部12bとを容易に識別することができ、フォトリソグラフィ法によるストライプ状パターンを持つ凸部12aの位置決めを行なう際に、専用のアライメントパターンを用いる必要はない。
次に、図31に示すように、MOVPE法を用いて、例えば、圧力が約100Torrの水素と窒素との混合雰囲気とし、基板温度を約1000℃として、第2のシード層12Bの上に、マスク膜13から露出する凸部12aの頂面に現われたC面を種結晶として、n型AlGaNからなり主面がC面からなる選択成長層14Aを一体化されるまで成長させる。これにより、選択成長層14Aは周期的に形成される接合部14aを除くすべての領域で転位密度が約1x106 cm-2と小さくなる。
続いて、圧力が約300Torrの水素と窒素との混合雰囲気とし、基板温度を約970℃として、一体化された選択成長層14Aの上に、n型超格子クラッド層16A、n型光ガイド層17、MQW活性層18、p型光ガイド層19、p型クラッド層20及びp型コンタクト層21を順次成長して積層体30を形成する。ここで、MQW活性層18は発振波長が400nm帯となるレーザ発振を得るために、例えば、厚さが約4nmのGa0.92In0.08Nからなる井戸層と厚さが約6nmのGaNからなるバリア層とにより構成している。
その後、図27に示すように、ドライエッチング法により、p型クラッド層20の上部及びp型コンタクト層21に対して、MWQ活性層18に選択的に電流を注入する、幅が2μm〜5μmのリッジ部31を積層体30のA軸方向、すなわち凸部12aのストライプ方向と直交する方向に形成する。
続いて、積層体30におけるリッジ部31を含まない領域に対してドライエッチングを行なって、n型超格子クラッド層16Aを露出した後、積層体30の露出面に絶縁膜22を堆積する。続いて、絶縁膜22における、リッジ部31の上側の領域及びn型超格子クラッド層16Aの上側の領域にそれぞれ開口部を設けた後、蒸着法又はスパッタ法等により、リッジ部31における絶縁膜22の開口部からの露出領域上及びリッジ部31の周辺部上にp側電極23を形成し、また、n型超格子クラッド層16Aの絶縁膜22からの露出領域上にn側電極24を形成する。
次に、積層体30のA面、すなわちサファイアからなる基板11のM面でへき開することによって共振器端面を形成する。サファイアのM面はへき開が容易であり、半導体レーザ素子のへき開の歩留まりを良好に維持できる。なお、基板11と積層体30との間には、へき開面と平行にのびる複数で且つ2段構成の空隙部12cが存在するが、これらの空隙部12cによってへき開の歩留まりが低下することはない。
次に、へき開した両端面に適当な反射率を得られるように誘電体等によりコーティングを施し、チップ状に分離して図27に示す半導体レーザ素子を実現できる。
第6の実施形態に係る半導体レーザ素子は、MQW活性層18を含む積層体30のA軸方向に形成された共振器と、選択成長により形成されるM軸方向に延びるストライプ状の空隙部12cとが直交するように設けられていることを特徴とする。
但し、このようにすると、図31から分かるように、MQW活性層18のリッジ部31の長軸方向である電流注入領域は、各半導体層の接合部14aを横切ることになる。その結果、接合部14aに集中する転位がレーザ素子の動作に影響を与える虞がある。ところが、MQW活性層18の層内の転位を観測すると、貫通転位は接合部14aと無関係に面内で均一に約1x106 cm-2の密度で存在することを確認している。従って、電流注入領域が接合部14aを横切ることは半導体レーザ素子の信頼性に悪影響を与えることはない。
また、種結晶である第2のシード層12Bと選択成長層14Aとの間でC軸にチルトが存在すると、A軸方向に形成された共振器の場合は、基板面に対して垂直な方向にうねるジグザグ導波路となって導波損失を招く。その結果、レーザ素子の動作電流が増加する虞がある。たしかに、図38に示すような従来のELO成長法を用いて製造したレーザ素子ではチルト角が0.1度以上もあり、例えば空隙部12cの幅が12ミクロンとすれば、高低差が10nm以上のジグザグ導波路となるため、レーザ素子の動作電流が増加する。
一方、チルト角が0.05度以下であると、高低差は5nm程度に抑えられるため、ジグザグ導波路の影響をほとんど無視できる。本実施形態においては、明のレーザ素子では空隙部12cを形成しながら成長するラテラル成長により、チルト角を0.03度以下に抑えることができるので、ジグザグ導波路の発生を防止できる。
また、選択成長層14Aにおけるラテラル成長した領域において、一様なステップフロー成長を観察している。このような平坦な表面上にMQW活性層18を成長すると、インジウムの局所的な偏析が起こらず、均質なMQW活性層18を得られるので、動作電流の低減を図ることができる。
また、本実施形態に係る半導体レーザ素子における基板面に垂直な方向の遠視野像は図16に示すグラフと同等であって、単峰性で良好な光強度分布を得られている。
これは、第3の実施形態と同様に、第2のシード層12Bの各凸部12aの頂面から成長して一体化された選択成長層14Aにn型AlGaNを用いる共に、n型AlGaNとn型GaNとを含む超格子構造を持つn型超格子クラッド層16Aがn型コンタクト層を兼ねている。これにより、MQW活性層18の光の閉じ込め係数値が大きく向上するからである。
前述したように、選択成長層14Aのアルミニウムの組成は、2%以上、好ましくは4%以上とすると、光の基板11側への漏れを確実に防止することができる。
なお、本実施形態においては、第1及び第2のシード層12A、12BにGaNを用いたが、一般式Alu Gav Inw N(但し、u,v,wは、0≦u,v,w≦1、u+v+w=1である。)からなる窒化ガリウム系混晶、特にAlGaN又はGaInN等を用いると良く、混晶の組成に応じてラテラル成長に最適な成長条件を選べばよい。
また、第1のシード層12Aは、低温バッファ層を介して形成したが、第1のシード層に単結晶が得られる方法を用いれば良い。
また、基板11にサファイアを用いたが、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素、ネオジムガレート(NGO)又は窒化ガリウム等を用いてもよい。但し、炭化ケイ素を基板11に用いると、積層体30に引っ張り歪みが加わり、クラックが発生しやすいため、溝部12bの断面幅をできるだけ小さくすることにより、第2のシード層12Bが一体化されたときの膜厚が2μm未満となるようにすることが望ましい。このようにすると、2回の選択成長及び積層体30の成長を行なった後でも積層体30にクラックが生じない。
このため、基板11の材料に無関係に3回以上の選択成長は無意味であり、さらには、歪みに起因する新たな不具合を生じるので好ましくない。
また、第1及び第2のシード層12A、12Bの各上部の凸部12aを形成する際にリフトオフ法を用いたが、凸部12a及び溝部12bが形成でき、該溝部12bの少なくとも底面にマスク膜13が残る方法であれば、他の方法を用いてもよい。すなわち、凸部12aにおけるマスク13により覆われていない領域のうちのC面を種結晶として、空隙部12cが形成される方法であれば良い。
また、マスク膜13は、窒化シリコンに限らず、第1の実施形態及びその第1変形例に示した誘電体、非晶質の絶縁体、高融点金属又は高融点金属化物を用いることが好ましい。なお、誘電体膜の堆積にはECRスパッタ法を用いることにより、低温で良質のマスク膜13を得ることができる。
また、本実施形態に係る低転位密度領域を有する窒化物半導体層を用いることにより、発光素子に限らず、電子素子等の他の半導体素子を形成しても良い。これにより、該半導体素子の高信頼性と高歩留まりとを実現できる。
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図32は本発明の第7の実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の断面構成を示している。図32において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図32に示すように、第7の実施形態に係る半導体レーザ素子は、シード層12の上部に設けられたELO成長用の種結晶となり且つ第1の形成周期を持つストライプ状の凸部12aと、積層体30の上部に設けられ、電流注入用の1つのリッジ部31A及び該リッジ部31Aの位置合わせ用の複数のダミーリッジ部31Bとを有している。これらリッジ部31A及びダミーリッジ部31Bは、凸部12aと同一の方向に延び、且つ、第1の形成周期と異なる第2の形成周期を持つように形成されている。
以下、前記のように構成された半導体レーザ素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図33〜図35は本発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図33に示すように、MOVPE法を用いて、第1の実施形態と同様に、第1のサファイアからなる基板11上にGaNからなるシード層12を成長し、レジスト膜を用いたフォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、成長したシード層12の上部に、リッジストライプ状の凸部12aを形成する。ここでは、一例として、凸部12aの断面幅を約4μmとし、溝部12bの断面幅を約12μmとして、第1の形成周期を16μmとしている。
次に、ECRスパッタ法を用いて、凸部12aが形成されたシード層12の上に全面にわたって、窒化シリコンからなるマスク膜13を堆積し、続いて、レジスト膜をリフトオフすることにより、凸部12aの少なくとも頂面をマスク膜13から露出する。ここで、マスク膜13は、溝部12bの壁面を覆っていてもよく、覆っていなくてもよい。
続いて、MOVPE法により、第1の実施形態と同様に、シード層12の上に、マスク膜13から露出する凸部12aの頂面に現われるC面を種結晶として、選択成長層14及び積層体30を順次成長させる。
次に、図34に示すように、p型クラッド層20の上部及びp型コンタクト層21に対して、断面幅が約3μmで、周期が18μmの第2の形成周期を持つリッジ部31A及びダミーリッジ部31Bを形成する。ここでは、電流注入用のリッジ部31Aは、空隙部12cの上方で且つ接合部14aと重ならない領域、すなわち、結晶転位が少ない低転位密度領域に形成する。その後、ECRスパッタ法により、アルゴンを雰囲気とし、金属アルミニウム及び窒素を原料として、リッジ部31A及びダミーリッジ部31Bの側面及びその間の領域を窒化アルミニウム(AlN)からなる絶縁膜35で覆う。
次に、図35に示すように、積層体30におけるリッジ部31Aを含まない領域に対して、ドライエッチングを行なって、n型コンタクト層15を、n型クラッド層16によるダミーリッジ部31が形成されるように露出した後、積層体30の露出面に窒化シリコンからなる絶縁膜22を堆積する。
次に、図32に示すように、四フッ化炭素(CF4 )を用いた反応性イオンエッチング(RIE)により、絶縁膜22における、リッジ部31Aの上側及び側方部分、並びにn型コンタクト層15における1つのダミーリッジ部31Bの上側及び側方部分にそれぞれ開口部を設ける。その後、リッジ部31A及びその側方における絶縁膜22の開口部からの露出領域上にp側電極23を形成すると共に、n型コンタクト層15の上におけるダミーリッジ部31B及びその側方における絶縁膜22の開口部からの露出領域上にn側電極24を形成する。なお、絶縁膜22におけるリッジ部31Aの上側及び側方部分を除去する際に、絶縁膜22の下側に形成されている絶縁膜35も多少はエッチングされるが、注入電流に対する電流狭窄及び水平横モード制御に影響がない程度であれば無視してもよい。
以上のようにして得られた半導体レーザ素子は、厚さが約3nmのGa0.8 In0.2 Nからなる井戸層と厚さが約6nmのGaNからなるバリア層とから構成されたMQW活性層18により、波長が約403nmのレーザ発振を起こす。
以下、本実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の特徴であるリッジ部31A及びダミーリッジ部31Bと凸部12aとの位置合わせ方法を図面に基づいて説明する。
前述したように、図32において、電流注入用のリッジ部31Aは積層体30における低転位密度領域に形成することが半導体レーザ素子の特性の向上を図る上で必須となる。
図36(a)は複数のリッジ部31のうち、電流注入用として適当なリッジ部31を示した例である。○印を付したリッジ部31は、凸部12aと接合部14aとの間にあって、最も転位密度が低い領域に位置している。これとは逆に、×印を付したリッジ部31は高転位密度領域上に位置している。
従って、図35に示した、n型コンタクト層15を露出するエッチング工程において、○印を付したリッジ部31を電流注入用のリッジ部31Aとして残しておく必要がある。
そこで、本実施形態においては、図36(b)に示すように、リッジ部31Aとダミーリッジ部31Bとを容易に且つ確実に選別できるように、以下のような方法を採る。
あらかじめ、第2の形成周期(パターンB)を持つリッジ部31A及びダミーリッジ部31Bを区別できるように番号等を付しておく。ここでは、番号2を付したリッジ部31を電流注入用のリッジ部31Aとする。
一方、ウエハ上には、リッジ部31ごとに付された番号と対応するように、例えば、基板11上におけるレーザ素子同士の間のへき開領域等に、合わせマーク(=アライメントパターン)を設けておく。本実施形態の場合は、第1の形成周期(パターンA)と第2の形成周期(パターンB)との差は2μmであるため、パターンBを8回繰り返すと、互いに近接するリッジ部31と凸部12aとの互いの位置関係が同一となる。従って、少なくとも8個の合わせマークを用意すれば、番号1〜8の間には、○印を付すことができるリッジ部31が少なくとも1つ存在することになる。
従って、図35に示したエッチング工程においては、一例として、積層体30における番号3のダミーリッジ部31Bと番号4のダミーリッジ部31Bとの間の領域に、フォトマスクの境界を合わせれば、電流注入用のリッジ部31Aを残すことができる。
また、p側電極23を形成する際に絶縁膜22に対して開口部を形成するエッチングの際にも、番号2が付されたリッジ部31Aを容易に認識できる。
なお、レーザ素子のチップ幅は約300μm〜500μmであるため、番号1〜8の第3の周期が1回でなく、2、3回現われる。
さらに、シード層12と選択成長層14との間にストライプ状の空隙部12cが形成されていることによる、マスクの位置合わせ時に生じる効果について説明する。この効果は、シード層12の上部に設けた空隙部12c同士の間の凸部12aの頂面をELO成長の種結晶に用いることから生じている。すなわち、転位が少ないリッジ部31を選択するには、光学顕微鏡等を用いて上方から観察する際に、積層体30における低転位密度領域を特定できなくてはならない。本実施形態においては、図32に示すように、空隙部12cによって、観察光の屈折率差が大きくなるため、凸部12a(高転位密度領域)の位置が明確となるので、凸部12aと接合部14aとの間に位置する電流注入用のリッジ部31Aの候補となるリッジ部31を容易に且つ確実に区別できるようになる。その結果、フォトリソグラフィ工程におけるマスクの位置合わせが容易となり、フォトリソグラフィ工程のスループットを向上できる。
なお、本実施形態においては、凸部12aの第1の形成周期と、リッジ部31の第2の形成周期とをいずれも一定の周期としたが、必ずしも一定である必要はなく、各形成周期が互いにずれるような構成であればよい。例えば、各形成周期が等差級数を満足するような数列群を構成していていもよい。
また、絶縁膜35に窒化アルミニウムを用い、絶縁膜22に窒化シリコンを用いたが、絶縁膜22のエッチングの際に、絶縁膜35に対してエッチング選択比が十分に大きければ良く、これらの代わりに、例えば、絶縁膜35が酸化シリコンで且つ絶縁膜22が窒化シリコンであっても良い。また、絶縁膜22に対するエッチングはウエットエッチングでもドライエッチングでもよい。
また、基板11にサファイアを用いたが、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素、ネオジウムガレート(NGO)又は窒化ガリウム等を用いてもよい。
また、マスク膜13には、ECRスパッタ法による窒化シリコンや酸化シリコン等の誘電体を用いても良く、さらに好ましくは、タングステン等の高融点金属やそのシリサイド化物を用いると良い。
また、シード層12の上部の凸部12aを形成する際にリフトオフ法を用いたが、凸部12a及び溝部12bが形成できる方法であればよい。
また、本実施形態に係る、互いに周期が異なる2種類の周期構造体を用いる方法は、従来のELO成長法等にも適用できる。