JP2004085276A - 膜厚測定方法及び膜厚測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】干渉スペクトルの波形形状の特徴により、測定スペクトル波形は複数の基底スペクトルの線形和で近似表現できる。そこで、予め周期を変数として定めておいた基底スペクトルを用い、各周期において、測定スペクトルに対する二乗誤差が最小になるような近似スペクトルを見つけ、その最小二乗誤差と周期との関係をグラフとして求める。複膜の各層と、複膜の場合に複数現れる最小二乗誤差の極小点との対応を求める。各層毎に極小点を与える周期とその層の屈折率から膜厚を算出する。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光測定を利用して試料膜の膜厚を測定するための膜厚測定方法及び膜厚測定装置に関する。本発明に係る膜厚測定方法及び膜厚測定装置は、例えば、半導体製造工程などにおいてウエハ基板上に形成された各種薄膜の膜厚の検査等の各種分野で広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
紫外光、可視光又は赤外光を利用した分光光度計の応用分野の一つとして、薄膜状の試料の膜厚の測定がある。分光測定を用いた膜厚測定の基本原理は次の通りである。
【0003】
図8に示すように、膜状の試料Sに対して単一波長の入射光Iを入射すると、その一部は試料Sの表面(上表面)S1で反射され、残りは試料S内部に入り込んで、その一部は光の入射面とは反対側の表面(下表面)S2で反射して試料S内部を戻り、上表面S1から外部へと出射する。前者の反射光R1と後者の透過反射光R2には光路差があるため、両者間には入射光Iの波長λと膜厚dに応じた干渉が発生する。入射光Iの波長λを所定範囲で走査し、波数k(又は波長λ)を横軸に、反射光(干渉光)の強度を縦軸にとってグラフを描くと、周期性を持つ波状の干渉スペクトル波形が得られる。この干渉スペクトル波形は余弦関数で表すことができ、その余弦関数の周期は膜厚dに対応したものとなる。そこで、この干渉スペクトル波形を利用して、そのピークの山又は谷に対応する波数を自動又は手動で読み取り、それらの波数間隔情報を最小二乗法などにより求め、試料Sの既知の屈折率nを利用して波数周期から膜厚を算出する。
【0004】
しかしながら、分光測定によって得られる干渉スペクトル波形は、種々の要因のために、理想的な余弦波形となることは殆どない。こうした干渉スペクトル波形を乱す要因としては、例えば、干渉効率の波数依存性、光源のエネルギ分布の波数依存性、装置の各種ノイズなどが考え得る。従来の膜厚の計算方法ではこうした要因が考慮されておらず、理想的な余弦波形となることを前提として膜厚を算出しているため、膜厚の測定精度を高めることが困難であった。
【0005】
そこで、本願出願人は特願2002−147107号出願において、以下の膜厚測定方法を提案した。入射光の波数を横軸に、反射光の強度を縦軸にとったグラフで表される測定スペクトルに対して、理想的な余弦波形に波形を乱す各種要因を加味した近似スペクトルを定義する。この近似スペクトルは膜厚を変数とする関数で表される。測定スペクトルと近似スペクトルとの最小二乗誤差を膜厚に対するグラフで表し、その最小二乗誤差の極小点における膜厚を、求める膜厚とする。この方法では、干渉スペクトル波形を乱す要因を近似スペクトルに取り込んでいるため、膜厚の測定精度が向上した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記の通り、特願2002−147107号出願の膜厚測定方法では、近似スペクトルと測定スペクトルとの最小二乗誤差の極小点を求めるに際して、近似スペクトル波形は膜厚dをパラメータとして変化させていた。この方法では、単層の膜及び複層の膜のいずれも測定をすることが可能であるが、各層の屈折率nは全て同一であるとしなければならなかった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは各層が異なる屈折率を有する複数の層から成る試料膜(複膜)の場合においても膜厚算出を行うことが可能な膜厚測定方法及び膜厚測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために成された本発明に係る膜厚測定方法は、
a)単数又は複数の層から成る試料膜に照射する単色測定光の波長を走査したときに、該試料膜の上表面、各層間の境界面及び該試料膜の下表面からの各反射光の干渉光が示す周期性を持つスペクトルである測定スペクトルを採取する処理と、
b)前記測定スペクトルの周期と同じ次元を有する周期をパラメータとする近似スペクトルを生成する処理と、
c)前記測定スペクトルと前記近似スペクトルとの間の最小二乗誤差を求める処理と、
d)前記パラメータを所定範囲内で変化させる間の前記最小二乗誤差の極小点を検出する処理と、
e)求められた極小点を与えるパラメータから、各層を構成する物質の屈折率を利用して前記単数又は複数の層の各膜厚を算出する膜厚算出処理と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る膜厚測定装置は前記膜厚測定方法を具現化する装置であって、
a)単数又は複数の層から成る試料膜に単色測定光を照射する測定光照射手段と、
b)前記試料膜の表面から反射されてくる反射光の強度を測定する反射光強度測定手段と、
c)前記単色測定光の波長を走査させつつ前記反射光の強度を測定し、測定スペクトルを作成する測定スペクトル作成手段と、
d)前記測定スペクトルの周期と同じ次元を有する周期をパラメータとする近似スペクトルを生成する近似スペクトル生成手段と、
e)前記測定スペクトルと前記近似スペクトルとの間の最小二乗誤差を求める最小二乗誤差算出手段と、
f)前記パラメータを所定範囲内で変化させる間の前記最小二乗誤差の極小点を検出する極小点検出手段と、
g)求められた極小点を与えるパラメータから、各層を構成する物質の屈折率を利用して前記単数又は複数の層の各膜厚を算出する膜厚算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
これらの膜厚測定方法及び膜厚測定装置において、複数の層から成る試料膜(複膜)を測定する場合は、前記近似スペクトルを、前記測定スペクトルの周期と同じ次元を有する周期(次元は、波長又は波数)をパラメータとする基底スペクトルの線形和で構成するようにする。
【0011】
【発明の実施の形態】
(1)膜厚測定方法
図1のように、屈折率n1, n2,..., niを持つi枚の層から成る複膜10に入射された単一波長の測定光の一部は、複膜10の上表面(空気との境界面)、複膜10を構成するそれぞれの層同士の境界面、及び複膜10の下表面(空気との境界面)においてそれぞれ反射される。すなわち、(i+1)面ある境界面において反射された(i+1)種の反射光が複膜10の表面から出射される。従って、複膜10の表面の反射光として測定される光は、これら(i+1)種の反射光が互いに干渉しあった結果の光である。
【0012】
入射する単色測定光の波長を変化させる(走査する)と、複膜10の表面から反射されてくる光の強度が変化する。入射光の波数又は波長を横軸に、反射光の強度を縦軸に取ってグラフを作成すると、このグラフは周期性を有するスペクトルとなる。これを測定スペクトルと呼ぶこととする。図2に、異なる屈折率を有し、厚さが約200nm及び4000nmである2枚の層から成る複膜に対する測定スペクトルの一例を示す。
【0013】
以下では波数を横軸に取った場合について説明する。測定スペクトルは通常、以下の特徴を示す。
(i)一定の周期性を有する
(ii)オフセットが存在する
(iii)右上がりにほぼ線形のドリフトが存在する
(iv)干渉効率のため、波数が大きいほど干渉波の振幅が小さくなる
【0014】
ここで、(i)は2光波の干渉によるものと考えられる。層の数がiである場合、反射面の数は(i+1)であるため、この2光波干渉の組み合わせは(i+1)C2種となる。ここで、(i+1)C2=jとする。従って、(i)はこのような2光波干渉による周期的な光干渉スペクトルがj種重畳したものと考えられる。例えば、層の数が2である場合、周期的な光干渉スペクトルが3種重畳したものとなる。(ii)は測定装置のバックグラウンドによると考えられる。
【0015】
図2の測定スペクトルでは、約1000cm−1の周期を有する正弦波と、その数十倍の周期を持つ正弦波と、オフセットと、右上がりのドリフトとが重ね合わされているように見える。このうちオフセットとドリフトは上記のように通常見られるものである。試料が2枚の層から成る複膜であることから、図2のスペクトルには3種の周期的なスペクトルが重畳されているはずであるが、一見すると周期的スペクトルは2つのみである。従って、測定スペクトルから直接膜厚を求めることは困難であり、本発明に係る膜厚測定方法を用いる必要がある。
【0016】
前記(i)の各2光干渉スペクトルの角周波数をω1〜ωjとし、その他の要因(ii)〜(iv)も考慮に入れると、測定スペクトル波形は次の(1)式で近似できると考えられる。
f(x)=α0+α1x+α2(1/x)sin(ω1x+δ1)+α3(1/x)sin(ω2x+δ2)+...+αj+1(1/x)sin(ωjx+δj) …(1)
ここで、角周波数ω1〜ωjは、測定スペクトルの横軸を波数としたため、長さの次元を持つ。xは波数である。
(1)式の右辺の第1項はオフセットを反映し、第2項はドリフトを反映し、第3項以降は周期性波形を反映している。更に詳しく言えば、第3項以降の各項中の(1/x)の部分は波数増加に伴う振幅の減少を反映し、δは特に膜厚が大きい場合に顕著になる位相ずれを反映している。
【0017】
ここで、
sin(ωx+δ)=sinωxcosδ+cosωxsinδ
であるから、前記(1)式は次の(2)式に変形することができる。
f(x)=α0+α1x+α2(1/x)sin(ω1x)+α3(1/x)cos(ω1x)+...+α2j(1/x)sin(ωjx)+α2j+1(1/x)cos(ωjx) …(2)
2j+2個の関数f0(x), f1(x), ..., f2j+1(x)を、
f0(x)=1
f1(x)=x
f2(x)=(1/x)sin(ω1x)
f3(x)=(1/x)cos(ω1x)
...
f2j(x)=(1/x)sin(ωjx)
f2j+1(x)=(1/x)cos(ωjx)
と定義すれば、関数f(x)はこれら2j+2個の関数の線形和により、
f(x)=α0f0(x)+α1f1(x)+α2f2(x)+α3f3(x)+...+α2jf2j(x)+α2j+1f2j+1(x)…(3)
と表すことができる。
【0018】
これまでに説明したように、関数f(x)は測定スペクトルg(x)の妥当な近似表現であるため、以下、この関数f(x)を測定スペクトルg(x)の近似スペクトルとして使用する。関数f(x)にはj個の未知数ω1〜ωjが含まれる。
【0019】
関数f(x)と測定スペクトルg(x)の間の二乗誤差が最小になったとき、関数f(x)は測定スペクトルg(x)の最も良い近似スペクトルとなる。そのため、未知数の組[ω1, ω2, ..., ωj]をある値に固定し、関数f(x)の係数α0, α1, ..., α2j+1を変化させて関数f(x)と測定スペクトルg(x)との二乗誤差が最小になるようにする。この操作を様々な未知数の組[ω1, ω2, ..., ωj]について行う。未知数の組[ω1, ω2, ..., ωj]毎に得られる最小二乗誤差が極小となるときの未知数の組[ω1, ω2, ..., ωj]が、重畳されたj種の周期性波形のそれぞれの角周波数の近似値として求められるはずである。
【0020】
しかし、この計算はj個の未知数[ω1, ω2, ..., ωj])を取り扱うため、実用的ではない。そこで、未知数である周波数ωを1つのみとする。すなわち、4個の関数fa0(x)、fa1(x)、fa2(x)、fa3(x)を、
fa0(x)=1
fa1(x)=x
fa2(x)=(1/x)sin(ωx)
fa3(x)=(1/x)cos(ωx)
と定義し、関数fa(x)を前記4個の関数の線形和である、
fa(x)=α0fa0(x)+α1fa1(x)+α2fa2(x)+α3fa3(x) …(3’)
と定義する。式(3’)には1つの未知数ωのみが含まれる。未知数ωをある値に固定し、関数fa(x)の係数α0, α1, α2, α3を変化させて関数fa(x)と測定スペクトルg(x)との二乗誤差を求める。この二乗誤差が最小になるときの関数fa(x)を、そのωの値の時の近似スペクトルと呼ぶ。この操作を様々な値のωについて行うと、或るωにおいて最小二乗誤差が極小値を持つ。この極小点において、関数fa(x)は最も測定スペクトルg(x)に近似していると言える。
【0021】
そこで、測定スペクトルg(x)と近似スペクトルfa(x)との誤差を、角周波数ω又は周期Tを変数として表す誤差関数として求めることを考える。まず、測定スペクトル、近似スペクトルとも、所定の波数値/波長値における(ΔT毎又はΔλ毎の)強度を要素とするベクトルとして表現する。
【0022】
前記の通り、近似スペクトルfa(x)は4個の関数fa0(x)、fa1(x)、fa2(x)、fa3(x)の線形和としたが、これは、これら4個の関数fa0(x)、fa1(x)、fa2(x)、fa3(x)を基底ベクトルとしたときのベクトル和として近似ベクトルfa(x)が表現されることを意味する。すると、測定スペクトルと近似スペクトルfa(x)との最小二乗誤差の極小値は、ベクトル空間では、測定ベクトルYとこれら4個の基底ベクトルfa0(x)、fa1(x)、fa2(x)、fa3(x)で張られる部分空間Wとの間の距離となる(図3参照)。すなわち、測定スペクトルの最適な近似スペクトルfa(x)は、測定ベクトルYから前記部分空間Wに降ろした垂線の足の点の近似ベクトルY’である。以下、それを計算する。
【0023】
いま、測定ベクトルY及びその測定点(波数)を表すベクトルXをそれぞれ、
【数1】
とする。4個の基底ベクトルfa0(x)、fa1(x)、fa2(x)、fa3(x)をベクトルXの要素を用いて表し、それらを用いて、周期T=2π/ωの関数として行列A(T)を次の(4)式で定義する。
【数2】
【0024】
近似ベクトルY’が前記のように測定ベクトルYから前記部分空間Wに降ろした垂線の足で定義されるため、ベクトル(Y’−Y)は4個の基底ベクトルのいずれとも直交する(図3参照)。よって、tA(Y’−Y)=0の関係が満たされ、これを変形することにより、近似ベクトルY’は次の(5)式で表される。
【数3】
【0025】
この測定ベクトルYと近似ベクトルY’を用い、誤差関数ε(T)を次の(6)式で定義する。
【数4】
【0026】
(6)式によって、ある周期Tにおける測定スペクトルと近似スペクトルとの二乗誤差(最小二乗誤差)が得られる。周期を横軸に、誤差関数ε(T)を縦軸にとったグラフで表すと、極小点が1つもしくは複数現れる。極小点をとるときの周期が、j種の2光波干渉の周期のいずれかに対応する。
【0027】
j種の2光波干渉のうちi種は、1つの層の上下境界面による光路差によって生じる干渉、言い換えれば1つの層のみが関与する干渉である。それ以外は複数の層が関与する干渉である。例えば、図1において反射光R11と反射光R12との干渉は1層目のみが関与する干渉であり、反射光R12と反射光R13との干渉は2層目のみが関与する干渉であるのに対して、反射光R11と反射光R13との干渉は1層目+2層目が関与する干渉である。膜厚の計算には、このうち、1つの層のみが関与する干渉を用いれば足りる。
【0028】
すなわち、実際の測定に際しては、得られた各極小点から、各層が単独で関与する干渉に対応するものを選択する。これは実際上可能であり、どの極小点がどの2光波干渉に対応するかは予め見当がついている場合が多い。例えば、品質管理部門等においてこの膜厚測定方法を使用する場合、同種類の試料を測定してその膜厚の合否を見ることが多いため、得られる誤差カーブも類似したものになる。このような場合には、測定者はどの極小点がどの2光波干渉に対応するかを経験的に知ることができる。また、他の方法によって複膜を構成するそれぞれの層の厚さをある程度の精度で求めておけば、その値から2光波干渉を考慮して前記極小点の位置を予測することができる。
【0029】
選択した各極小点における干渉波形の周期Tと試料膜の膜厚dとの関係を求める。従来から知られているように、屈折率nである試料膜に入射角θで測定光が入射したときに得られる反射光に基づいて膜厚dを算出する際の基本式は、
d[cm]=Δm /{2・(n2−sin2θ)1/2(1/λ2−1/λ1)} …(7)
である。ここで、Δmは、波長λ1のピークを基点として短波長側へピークを順次数えていったときに、波長λ2のピークが何番目に現われるかを示す数であり、通常はΔm=1とすればよい。
【0030】
周期T[cm−1]=1/λ2−1/λ1
を用いると(7)式は、
d=1/2・(n2−sin2θ)1/2T
であり、これを変形すると、
T=1/{2・(n2−sin2θ)1/2d}=1×107/{2・(n2−sin2θ)1/2d’}
となる。但し、d’は単位がcmであるdを単位nmで表現したものである。
いまθ=0とすれば、sinθの項は無視できるから、次の(8)式の関係が成り立つ。
T=1×107/(2・n・d’) …(8)
これを変形し、膜厚を求める式(9)が得られる。
d’[nm]=1×107/(2・n・T) …(9)
【0031】
各層が単独で関与する2光波干渉の周期と各層の屈折率を式(9)に代入すれば、求める各層の膜厚を得ることができる。
【0032】
以下に、前記膜厚測定方法の一例として、図4のように層21と層22の2枚の層から成る複膜における膜厚測定について説明する。この場合、R21〜R23で示す3種の反射光が出射され、[R21、R22]、[R22、R23]、[R21、R23]の3種の2光波干渉が生じる。このうち[R21、R22]の2光波干渉には層21が関与し、[R22、R23]の2光波干渉には層22が関与し、[R21、R23]の2光波干渉には層21と層22が共に関与する。このうち、前記の通り、膜厚の計算には1つの層のみが関与する干渉[R21、R22]及び[R22、R23]を用いる。
【0033】
図4の2枚の膜から成る複膜に単色測定光を入射し、その波長を走査することによって得られた測定スペクトルから、(6)式の誤差関数を求め、周期に対してこの誤差関数をプロットしたものの一例を図5に示す。周期が12000cm−1及び14000cm−1の位置に極小点が存在する。また、図示していないが10000cm−1以下に更に極小点が存在するので、得られた極小点は全部で3点である。この3点の極小点は、それぞれ前記3種の2光波干渉[R21、R22]、[R22、R23]、[R21、R23]のいずれかに対応する
【0034】
前記のように、他の方法によって又は経験的に極小点と2光波干渉との対応を得て、そこから1つの層のみが関与するものを抽出する。例えば予備的測定として、図5のグラフ(グラフAとする)を得た後に、層22はそのままで層21のみを厚くして再び同様の測定を行い図5と同様のグラフBを得れば、グラフAとグラフBを比較してx軸(波数)方向に移動した方の極小点が層21が関与する干渉によるものと特定される。図5の例では、周期12000cm−1の極小点が層21が関与する干渉[R21、R22]によるものと特定され、周期14000cm−1の極小点が層22が関与する干渉[R22、R23]によるものと特定されるものとする。なお、更に周期10000cm−1以下に現れる極小点は反射光R21と反射光R23の2光波干渉であるが、これは層21と層22とが共に関与する干渉であるので、膜厚計算では用いない。
【0035】
1層目の膜厚d1及び2層目の膜厚d2は、それぞれの周期(12000cm−1、14000cm−1)及び屈折率n1、n2を式(9)に代入することによって、
d1[nm]=1×107/(2・n1・12000)
d2[nm]=1×107/(2・n2・14000)
と求められる。
【0036】
なお、前記特願2002−147107号に記載の発明においても(6)式と同様に誤差関数を定義したが、その際は周期ではなく膜厚を変数としていた。その際、誤差関数に屈折率が含まれていた。それに対して本発明の方法では周期を変数とすることにより、(6)式及び(6)式に代入される(4)、(5)式には屈折率が含まれない。これにより、異なる屈折率を持ち異なる膜厚を有する複膜に対しても、膜厚測定を行うことができる。
【0037】
ここまでは試料膜が複膜であることを前提として述べたが、この周期を変数とした膜厚計算方法は単独の膜(単膜)に対しても適用することができる。その場合、2光波干渉は1種類のみであり、最小二乗誤差の極小点も1つのみ生じる。
【0038】
(2)膜厚測定装置
次に、前記のような膜厚測定方法を採用した膜厚測定装置の一実施例について説明する。図6は本実施例による膜厚測定装置の概略構成図である。
【0039】
この膜厚測定装置は、分光測定部として、光源41、分光部42、測定光学系43、光検出器44を含む。検出器44による検出信号はスペクトル作成部45に与えられ、スペクトル作成部45により作成された干渉スペクトルが演算処理部46に与えられて、後述するような所定の演算処理が実行されることにより膜厚が算出される。なお、スペクトル作成部45及び演算処理部46の実体は、CPUを中心に構成されるパーソナルコンピュータであって、該コンピュータ上で所定のプログラムを実行することにより演算処理が達成される。
【0040】
前記構成の動作を概略的に説明すると、まず光源41から発した白色光の中から、分光部42により特定の波長を有する単色光が取り出され、測定光学系43を介して膜状の試料Sに測定光として照射される。この試料Sは単膜、複膜のいずれでもよい。以下では試料Sはi枚の層から成るとする。試料Sの上表面や下表面、複膜の場合は更に各層の境界面で反射した光は、測定光学系43を介して光検出器44に導入され、これら反射光の総強度に応じた電気信号がスペクトル作成部45に送られる。試料Sからの光は干渉光となるから、測定光の波長を変化させた(走査した)とき、検出器45の出力は周期性を持つスペクトル(干渉スペクトル)を構成する。スペクトル作成部45は、測定光の波長走査に対応して光検出器44で得られる信号に基づいて、横軸が波数(又は波長)、縦軸が相対強度であるこの干渉スペクトルを作成する。これが前記測定スペクトルである。演算処理部46はこの干渉スペクトルを受け取り、前記のような膜厚算出方法に基づく演算処理を実行する。
【0041】
以下に、演算処理部46が行う具体的な演算処理を、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、演算条件として、演算を行う周期の範囲Ta〜Tbと間隔ΔT、及び各層の屈折率nk(k=1〜i)を外部より指示する(ステップS1)。膜厚測定方法の説明において述べたように、極小点が現れる周期が予めおおよそ知られている場合には、その周期を含むように適宜の演算周期範囲Ta〜Tbを設定することにより、演算時間を短縮することが可能である。複膜の場合は各層に対応する極小点が現れるので、1つの層のみが関与する干渉による極小点を全てを含むように演算する。また、算出精度の点からは周期間隔ΔTを小さくして演算することが好ましいが、周期間隔ΔTを小さくするほど演算時間が長くなるから、必要な精度との兼ね合いで適宜に決めるとよい。
【0042】
複膜の場合はステップS1において更に、各層ごとにその層のみが関与する干渉による極小点が含まれる想定周期範囲を外部から指示するようにしてもよい。この想定周期範囲は後述のステップS8において用いる。なお、各層ごとの想定周期範囲の入力は、ステップS8においてするようにしてもよい。
【0043】
同種類の試料を頻繁に測定する場合には、ステップS1における入力事項を予め登録しておき、測定の度に外部から指示しなくてもよいようにすることもできる。
【0044】
演算処理が開始されると、まず演算周期TをTaに設定し(ステップS2)、上述したような方法により近似スペクトルfa(x)あるいは近似ベクトルY’を探索し、その近似スペクトルが与える最小二乗誤差を取得する(ステップS3)。
【0045】
次に、そのときの演算周期TがTb以上であるか否かを判定し(ステップS4)、Tb未満であれば、T+ΔTを新たな演算周期Tとし(ステップS5)、ステップS3へと戻る。そして、ステップS4で演算周期TがTb以上であると判定されるまで、ステップS3、S4、S5なる処理を繰り返す。これにより、演算周期範囲Ta〜Tb内でΔT間隔毎に近似スペクトルあるいは近似ベクトルが探索され、それに対応する最小二乗誤差が順次取得される。
【0046】
その結果、図5に示したような、周期と最小二乗誤差との関係を示すカーブが得られる(ステップS6)。そして、そのカーブにおける極小点を探す(ステップS7)。
【0047】
ステップS1において装置に入力された各層ごとの想定周期範囲から、ステップS7において得られた極小点と2光波干渉との対応を得る(ステップS8)。詳しく言えば、想定周期範囲に極小点が1個のみ入れば、その極小点がその想定周期範囲に対応する2光波干渉によることが特定される。
【0048】
なお、ある極小点がどの想定周期範囲にも入らない場合や、1つの想定周期範囲に複数の極小点が入る場合等は、その極小点がどの2光波干渉に対応するかを自動的に決定することはできない。それらの場合は、周期と最小二乗誤差との関係を示すカーブから、測定者が他の方法によって又は経験的に極小点と2光波干渉との対応を得てその極小点がどの2光波干渉に対応するかを決定し、測定者がそれらを演算処理部16に入力する。あるいは、ステップS1においては想定周期範囲を入力せず、ステップS8において周期と最小二乗誤差との関係を示すカーブから測定者が必要な全ての極小点について2光波干渉との対応を入力するようにしてもよい。
【0049】
1〜i番目までの各層毎に、ステップS8において得られた極小点に対応する周期とステップS1において入力した屈折率を用いて式(9)の計算を行い、各層毎の膜厚を算出する(ステップS9)。
【0050】
(3)変形例
前記説明において近似スペクトルを表現するための基底のとり方は任意であって、前記記載のものに限らない。また、特に膜厚が薄い場合には、干渉スペクトル波形において明確な周期を持つピークが得られにくい傾向にある。このような場合には、基底としてsin項や1/x項を除外するほうが良好な近似が行い易い。また、それ以外にも、(3’)式に示した関数の各項を適宜に変形又は加減することにより、近似精度を一層向上させることができる。
【0051】
膜厚の計算には通常1つの層のみが関与する干渉を用いれば足りるため、2つの層以上が関与する干渉を無視した。しかし、極小点が近接し1つの層のみが関与する干渉をうまく抽出できない場合には、2つの層以上が関与する干渉を利用して膜厚計算を行うことができる。例えば、図1の[反射光R11、反射光R12]の干渉による極小点が他の極小点と近接し1層目の膜厚d1の計算がその干渉からはできない場合、[反射光R12、反射光R13]の干渉による極小点から2層目の膜厚d2を計算し、[反射光R11、反射光R13]の干渉による極小点における周期T12とd2、n1、n2を用いて、
T12=1×107/(2・(n1d1+n2d2))
からd1を求めることができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明に係る膜厚測定方法及び膜厚測定装置によれば、様々な要因によって測定スペクトルに現れるオフセット、ドリフト、位相ずれ、周期性波形の振幅変化などの各種要素が考慮されるため、膜厚の測定精度が大幅に向上する。また、異なる屈折率を持ち複数種類の膜厚を有する複膜に対してもその複数の膜厚のそれぞれを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複膜の構成例及びその複膜における測定光と反射光の例を示す図。
【図2】2層から成る複膜の測定スペクトルの例を示す図。
【図3】測定ベクトルと近似ベクトルとの関係を表す図。
【図4】2層から成る複膜の構成例及びその複膜における測定光と反射光の例を示す図。
【図5】2層から成る複膜から得られる、測定スペクトルと近似スペクトルとの最小二乗誤差と周期との関係を表す図。
【図6】本発明の一実施例である膜厚測定装置の概略構成図。
【図7】本実施例の膜厚測定装置における膜厚算出の具体的な処理手順を示すフローチャート。
【図8】分光測定を利用した膜厚測定の原理を説明するための図。
【符号の説明】
10…複膜
R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23…反射光
21…1層目
22…2層目
41…光源
42…分光部
43…測定光学系
44…光検出器
45…スペクトル作成部
46…演算処理部
Claims (4)
- a)単数又は複数の層から成る試料膜に照射する単色測定光の波長を走査したときに、該試料膜の上表面、各層間の境界面及び該試料膜の下表面からの各反射光の干渉光が示す周期性を持つスペクトルである測定スペクトルを採取する処理と、
b)前記測定スペクトルの周期と同じ次元を有する周期をパラメータとする近似スペクトルを生成する処理と、
c)前記測定スペクトルと前記近似スペクトルとの間の最小二乗誤差を求める処理と、
d)前記パラメータを所定範囲内で変化させる間の前記最小二乗誤差の極小点を検出する処理と、
e)求められた極小点を与えるパラメータから、各層を構成する物質の屈折率を利用して前記単数又は複数の層の各膜厚を算出する膜厚算出処理と、
を含むことを特徴とする膜厚測定方法。 - 前記近似スペクトルが、前記測定スペクトルの周期と同じ次元を有する周期をパラメータとする基底スペクトルの線形和から成ることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定方法。
- a)単数又は複数の層から成る試料膜に単色測定光を照射する測定光照射手段と、
b)前記試料膜の表面から反射されてくる反射光の強度を測定する反射光強度測定手段と、
c)前記単色測定光の波長を走査させつつ前記反射光の強度を測定し、測定スペクトルを作成する測定スペクトル作成手段と、
d)前記測定スペクトルの周期と同じ次元を有する周期をパラメータとする近似スペクトルを生成する近似スペクトル生成手段と、
e)前記測定スペクトルと前記近似スペクトルとの間の最小二乗誤差を求める最小二乗誤差算出手段と、
f)前記パラメータを所定範囲内で変化させる間の前記最小二乗誤差の極小点を検出する極小点検出手段と、
g)求められた極小点を与えるパラメータから、各層を構成する物質の屈折率を利用して前記単数又は複数の層の各膜厚を算出する膜厚算出手段と、
を備えることを特徴とする膜厚測定装置。 - 前記近似スペクトル生成手段は、前記測定スペクトルの周期と同じ次元を有する周期をパラメータとする基底スペクトルの線形和として前記近似スペクトルを作成することを特徴とする請求項3に記載の膜厚測定装置。
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