JP2004069472A - 局部腐食の評価方法及び抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水系プラントの金属部材における局部腐食の模擬構造を備える人工ピット151を設け、該人工ピット151の内部水Xの水質変化を、微小電極M1を用いて測定することによって、前記金属部材における局部腐食の発生又は進行状況を評価し、前記測定結果に基づいて、前記金属部材において発生した局部腐食の発生又は進行を抑制する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系における熱交換器又は配管等の表面に発生する局部腐食(孔食、すき間腐食)の状態を評価し、該局部腐食の進行を抑制する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
水系プラントの熱交換器や配管等において局部腐食が発生して、進行すると、孔食(浸食)の深さが増加し、やがては貫通に至ると水系プラントの操業停止等の事態を招くことがある。このため、水系プラントの設備の運転、通水を休止することなく局部腐食の進行を確実に予測できる技術が関連産業界から要請されている。
【0003】
ここで、水系において発生する局部腐食に関しては、腐食が進行している部分とその他のいわゆる自由表面との間の物質移動が起こりにくくなることから、局部腐食内部水の水質が極端に変化し、局部腐食内部水において、溶存酸素の消費、金属イオンならびに塩化物イオンの濃縮、金属イオンの加水分解によるpHの低下が起こることが知られている。
【0004】
現在、局部腐食内部水におけるpH低下の機構、塩化物イオンの濃縮の機構について、前者は金属イオンの加水分解から、後者は電気的中性条件から定性的には理解されている。これらの局部腐食内部水の水質変化について、局部腐食をモデル化したセルを用いて実験室的に測定した報告がある(水流徹,腐食防食部門委員会研究集会資料,29,17(1985);杉本克久,腐食防食´86,C−105,(1986))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来においては、局部腐食の進行に伴った局部腐食内部水の水質変化を測定するのみで、発生した局部腐食に対して積極的にその進行を停止する処理を施し、その局部腐食が修復されるまでの過程ならびに局部腐食が完全に修復されたことの確認を、孔食内部水の水質変化、特にpHならびに塩化物イオン濃度を測定することによって評価する技術はなかった。
【0006】
また、上記報告は、バルクの塩化物イオン濃度が高い条件(0.5M NaCl)での結果であって、報告記載の測定方法を低塩化イオン濃度条件(数mg/L〜数百mg/L)である実際の冷却水系あるいはボイラ水系にそのまま適用した場合には、局部腐食の模擬構造を備える人工ピットの内部水の水質変化(pHの低下、塩化イオンの濃縮、溶存酸素の消費)の測定を終えるまでには、多大な時間を必要としていた。
【0007】
つまり、バルクが低塩化物イオン濃度条件である場合において、人工ピットの内部水の水質変化を短時間で測定するためには、人工ピットのセルの体積を可能な限り小さく製作し、測定対象のセル内部水の容量を少なくする必要があった。しかし、電極構造の微小化が困難なことから、セルの狭小化自体には、限界があった。
【0008】
そこで、本発明は、水系プラントの局部腐食を模擬した微小内部水の水質変化(pHならびに塩化イオン濃度)を、微小電極を用いて測定することによって、局部腐食の発生や進行状況を評価するとともに、局部腐食の進行現象の機構解明、並びにその発生又は進行を抑制、修復する技術を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成して、上記技術的課題を解決するために、本願では、次の手段を採用する。
【0010】
まず、水系プラントの金属部材における局部腐食の模擬構造を備える人工ピットを設け、該人工ピットの内部水の水質変化、即ち、前記内部水のpH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度の少なくとも一つを、微小電極を用いて測定する局部腐食の評価方法を提供する。
【0011】
具体的には、水系プラントの所定箇所に、局部腐食状態の模擬構造を備える人工ピットを形成する。例えば、ステンレス鋼製、銅製、炭素鋼製その他の鋼製チューブの一部分に、局部腐食の模擬構造を備え、微小電極が配設された人工ピットを設け、このチューブ内に水系媒体を連続的に通水し、人工ピット内部水のpH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度を微小電極で測定し、評価する。
【0012】
この評価方法によれば、局部腐食内部水の水質変化を短時間で再現することができる。即ち、人工ピットの電極構造部位に微小電極を採用することによって、セルの狭小化を達成できるので、該セルに収容される内部水の少容量化できるので、局部腐食内部水の水質変化を短時間で再現することができる。
【0013】
ここで、「微小電極」(microelectorode 又は microvoltammetric electrode)は、ポーラグラフィーやボルタンメトリーの作用電極として用いられる微小な電極と定義でき、一般には、0.01〜0.1cm2程度の表面積をもつ電極を指すが、それ以下の表面積、例えば10−7〜10−6cm2程度の極微小な電極も包含し、本発明では、微容量の内部水の水質変化を測定できるものであれば広く採用できる。
【0014】
なお、現在、この微小電極は、生体細胞内の濃度分析など、医学および神経生理学の領域で使い始められ、既往の研究において、肝臓内、脳細胞および皮膚細胞組織内、血液内などにおける溶存酸素濃度、水素イオン濃度,酸素活性,細胞内外ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのイオンが測定され、その結果、細胞内およびその周辺の微小領域の状況が明らかにされている。また、環境工学の分野においては、はじめに淡水域の低泥内の生物学的代謝活性および化学的反応速度をin situで定量する研究に適用された。最近では、廃水処理に用いられる生物膜内について各種の微小電極(例えば、pH、O2、N2O、NO3 −、NH4 +、H2S,H2S、CH4、CO2など)を用いた研究が活発に行われている。
【0015】
しかしながら、水系プラントの局部腐食の模擬構造である人工ピットに配設する電極、即ち人工ピットの内部水の水質変化を測定するために用いられる電極に上記微小電極を採用するという技術的思想は、従来その着想すらなく、該微小電極を前記人工ピットに用いることによって得られる「局部腐食内部水の水質変化を短時間で再現する」という効果は、当業者でも予測し得なかった。
【0016】
ここで、内部水のpHを測定する微小電極については、液膜(Liquid Ion−exchanging membrane;LIX)に隔てられた2つの水相内に水素イオン選択的透過能を有するイオン交換体(tridodecylamine)が存在する構成とされ、前記水相間に生じる電位差(起電力)を測定するものが好ましい。ここで、起電力は以下に記述するNernstの(1)式によって表現され、測定した起電力から活量すなわち濃度を定量できる。
【0017】
E=Eo+slog(ai)・・・(1)
[E:起電力(mv)、Eo:標準電極電位(mv)、s:傾き(mv)、ai:活量(M)]
【0018】
回路内では液膜間以外にも塩橋表面や電極‐液体界面においても電位差が生じるが、輸率の等しい電解質(例えばKCI)や、被測定物質の濃度変化に伴う電位差の変化を無視できる比較電極を使用することにより、起電力の変化をLIX間の濃度変化にのみ起因すると見なすことができる。試作したpH微小電極については、予め種々のpHの溶液にてその電位を測定して計量線を作成しておき、局部腐食の模擬構造である人工ピットのセル内部水におけるpH微小電極の電位を測定し、前記計量線に基づいて前記セル内部水のpHを求める。
【0019】
塩化物イオン濃度の測定については、飽和KCI銀塩化銀電極に対するAg/AgCI電極(極細のAg/AgCI線)の電位を測定する。Ag/AgCIの電極電位と塩化物イオン濃度との間には以下に記述する(2)式の関係があり、Ag/AgCIの電極電位測定値から塩化イオン濃度が換算できる。
【0020】
[CI−(mg/L)]=2.2×105EXP[−43.9×E]・・・(2)
E:Ag/AgCIの電極電位(V)
【0021】
次に、溶存酸素濃度を測定する微小電極については、白金または白金に皮膜した金の表面において酸素が還元される際に発生する電流値によって酸素濃度を定量する。酸素に固有の限界電流が得られる一定電圧を印可することで、酸素濃度に比例した限界電流が得られ、酸素濃度を定量できる。ここで、感応部を直接被測定溶液に接触させないために、感応部を酸素透過性皮膜を介して溶液と隔離する方法を採っても良い。
【0022】
次に、本願では、水系プラントの金属部材における局部腐食の模擬構造を備える人工ピットを設け、該人工ピットの内部水の水質変化を、微小電極を用いて測定し、該測定結果に基づいて、前記金属部材において発生した局部腐食の発生又は進行を抑制する局部腐食の抑制方法を提供する。
【0023】
この方法では、前記人工ピットを用いた測定作業から得られたpH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度の測定結果に基づいて、実際の水系プラントの熱交換器や配管等の設備における局部腐食又は進行を推定又は予測し、現実の局部腐食を抑制する。
【0024】
例えば、水系プラントの所定箇所に、前記測定結果に応じた所定量の局部腐食停止剤を添加することによって、現実に発生している水系プラント内に局部腐食の微細孔又はすき間における内部水のpHの低下並びに塩化物イオンの濃縮を抑制することができる。即ち、リン酸塩は、水系媒体内においてpH緩衝剤として作用するとともに、また、局部腐食の進行に伴って生成するさび膜をカチオン透過性に変質する作用を発揮して塩化物イオンの浸入を阻止する作用を発揮する。
【0025】
ここで、「局部腐食停止剤」としては、「リン酸系薬剤」と「金属塩系薬剤」の混合物を例示できる。リン酸系薬剤としては、オルトリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸やアミノトリメチルホスホン酸、2−ホスホノ−1,2,4−トリカルボキシブタン、ヒドロキシエチリデンホスホン酸等のホスホン酸及びそれらの水溶性塩を挙げることができる。金属塩系薬剤としては、亜鉛塩、モリブデン酸塩、クロム酸塩等を例示できる。
【0026】
これらの薬剤は予め混合した後に対象水系に添加しても良いし、同時に添加しても良いし、あるいはそれぞれの薬剤を別々に添加しても良い。使用に際しては、手動又は自動のいずれも採用可能である。
【0027】
なお、リン酸系薬剤と金属塩系薬剤との混合物を使用する場合には、リン酸カルシウムや炭酸カルシウムの分散を図るために、水溶性ポリマーを併用することが好ましい。水溶性ポリマーとしては、ポリアクリルアミドの部分加水分解物など、公知のスケール分散剤を適用することができる。
【0028】
また、上記方法によれば、局部腐食の発生又は進行の抑制効果についても、人工ピット内部水の水質変化(pH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度)を継続的にモニタリングすることによって確認することができる。即ち、水系プラント内の局部腐食の発生又は進行の抑制効果が良好な場合には、人工ピット内部水のpHの低下、塩化物イオンの濃縮並びに溶存酸素の消費が抑制されるという測定結果に反映される。
【0029】
以上のように、本発明は、水系プラントの金属部材における局部腐食の発生又は進行をリアルタイムで監視でき、更には、該局部腐食の発生又は進行を抑制できる方法を提供するという技術的意義を有している。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好適な実施形態について、添付した図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
まず、図1は、本発明に係る局部腐食の評価方法を好適に実施できる水系全体の構成を表す図である。
【0032】
水系プラントにおける図1中符号1で示された熱交換器の左右端部には、それぞれ流入側ヘッダー2と流出側ヘッダー3が設けられ、両ヘッダー2,3の間には、複数の伝熱チューブ4が配設されている。この伝熱チューブ4の周囲に冷却される液W1が通水される。なお、符号W2は、熱交換器1によって冷却された液を表している。
【0033】
前記流入側ヘッダー2には、符号5で示された冷却塔から流出される冷却水C1がポンプ6によって供給される。伝熱チューブ4を通過して流出側ヘッダー3から吐出された水C2は、流出側ヘッダー3に連設された鋼製のチューブ7に配置された局部腐食のモニタリング装置8を経て冷却塔5へ返送される。なお、チューブ7の材質は、任意に選択される。
【0034】
モニタリング装置8は、微小電極が配置された人工ピットを備えている。この人工ピットは、前記チューブ7の一部に形成されており、該チューブ7の内部空洞部に連通する微小な連絡孔を有している。即ち、この連絡孔は、局部腐食の孔食を模擬した構造を備えている。なお、チューブ7並びにモニタリング装置8の設置数は、図1においては3箇所であるが、適宜選択可能である。
【0035】
チューブ7内に試験水となる水C2を連続的に通水する過程において、人工ピットのセル内部水の電位変化を電圧計82によって検出し、該検出値E(図1参照)は、図1中において符号9で示された演算装置に送られる。演算装置9では、所定の演算式に従って、人工ピットの微小孔内に流入する内部水のpH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度を求める。
【0036】
ここで、演算装置9で算出された人工ピットの内部水のpH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度に関するデータ信号Sを制御部10に送り、槽11に貯留されている所定濃度の局部腐食停止剤12を、ポンプ13を介して冷却水C1が通水される配管14に添加する。制御部10は、前記データ信号Sに応じて、局部腐食停止剤12の添加量を制御する。
【0037】
前記方法により、水系に所定量の局部腐食停止剤12を添加することによって、現実に発生している水系プラント内に局部腐食の微細孔又はすき間における内部水のpHの低下並びに塩化物イオンの濃縮を抑制することができる。
【0038】
これは、局部腐食停止剤12が水系媒体内においてpH緩衝剤として作用するとともに、また、局部腐食の進行に伴って生成するさび膜をカチオン透過性に変質する作用を発揮して、微細孔又はすき間への塩化物イオンの浸入を阻止する作用を発揮するからである。
【0039】
また、モニタリング装置8では、局部腐食の発生又は進行の抑制効果についても、人工ピットの内部水の水質変化(pH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度)を継続的にモニタリングして確認することができる。
【0040】
即ち、局部腐食停止剤12の添加によって、水系プラント内の局部腐食の発生の抑制又は進行の抑制が見られた場合には、人工ピットの内部水におけるpHの低下、塩化物イオンの濃縮、溶存酸素の消費がそれぞれ抑制されるという測定結果がモニタリング装置8から得られることになる。
【0041】
【実施例】
実施例1(局部腐食の再現試験)。
【0042】
図2は、局部腐食の模擬構造である人工ピット15の基本構成を表す図である。この図2に示された人工ピット15を用いて、実機冷却水系における炭素鋼の局部腐食を再現する実験を行った。人工ピット15のセル15a内部体積は、0.04cm3、試験極面積は、0.035cm2、セル15aの内部水Xと外部溶液Yとの連絡孔15bは、φ1mmである。試験極15cである炭素鋼に、+600ミリV vs Ag/AgCI/sat.KCIの電位を付与したアノード分極を行った。試験溶液Yには実機冷却水模擬水を用いた。なお、図1中の符号15dは、ポテンショスタット、符号15eは、Ag/AgCl/sat.KCL照合電極、符号15fは、溶液Yの溶存酸素定量用の白金板を表している。
【0043】
ここで、図3は、セル内部水XのpH測定を行う際の人工ピット15の構成を表す図である。符号M1は、pH測定用の微小電極を示している。該微小電極M1の先端は、セル15a内に挿入されている。なお、符号15gは、Ag/AgCI/sat.KCI電極を示し、符号15hは、微小電極M1及びAg/AgCI/sat.KCI電極に導通されたデジタル電圧計をそれぞれ表している。
【0044】
図4は、セル内部水Xの塩化物イオン濃度測定を行う際の人工ピット15の構成を表す図である。図4中の符号15iは、口径φ1mmのAg/AgCl微小電極である。
【0045】
図5は、セル内部水Xの溶存酸素測定を行う際の人工ピット15の構成を表す図である。図5中に示す符号M2は、セル内部水Xの溶存酸素測定用の微小電極を示している。また、符号15jは、微小電極M2に導通する微小電流計(ピコアンメーター)である。
【0046】
セル15aの内部水XのpH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度を、それぞれ図3、図4、図5に示された構成の人工ピット151〜153によって測定した結果を図6に示す。
【0047】
図6(A)は、実施例1における人工ピット内部水のpHの経時変化を表す図(グラフ)、図6(B)実施例1における人工ピット内部水の塩化物イオン濃度の経時変化を表す図(グラフ)、図6(C)は、実施例1における人工ピット内部水中の溶存酸素が還元される際に発生する電流値(溶解電流値)の経時変化を表す図(グラフ)である。
【0048】
図6に示すように、試験開始前の溶液のpHは8.5、塩化物イオン濃度は200mg/L、電流値から換算された溶存酸素濃度は5.6mg/Lである。pHは、24時間後には3前後まで低下した。塩化物イオン濃度は試験開始直後より増大しており、48時間後には35000mg/Lまで濃縮した。溶存酸素は24時間後にはほとんど還元されていた。上記に示すように、局部腐食の進行に伴って、セル内部水XのpH低下、塩化物イオンの濃縮、溶存酸素の消費(還元)が確認されたことから、該人工ピット15の局部腐食模擬構造としての有効性が実証できた。
【0049】
実施例2(特定の局部腐食停止剤による水質変化抑制検証実験)。
【0050】
次に、上記実験の局部腐食の再現試験を開始した時点で、リン酸系薬剤と亜鉛塩系薬剤とを注入することによって、局部腐食の進行が抑制されるか否かを検証する実験を行った。この実験の結果を図7に示す。なお、本実験で採用した局部腐食防止剤は、リン酸塩系薬剤と亜鉛塩系薬剤との混合薬剤であり、具体的に使用したリン酸塩系薬剤はヘキサメタリン酸100mgPO4/L、亜鉛塩系薬剤は塩化亜鉛20mgZn/Lである。
【0051】
図7(A)は、局部腐食停止剤注入時の人工ピット内部水のpHの経時変化を表す図(グラフ)、図7(B)は、局部腐食停止剤注入時の人工ピット内部水の塩化物イオン濃度の経時変化を表す図(グラフ)、図7(C)は、局部腐食停止剤注入時の人工ピット内部水中の溶存酸素が還元される際に発生する電流値の経時変化を表す図(グラフ)である。
【0052】
図6と図7を比較対照すれば容易に分かるように、リン酸系薬剤と亜鉛塩系薬剤の注入によって、セル内部水XのpH低下、塩化物イオンの濃縮、溶存酸素の消費(還元)がそれぞれ抑制されることが明らかになった。即ち、局部腐食停止剤には、pH緩衝能があり、また、局部腐食の進行に伴って生成するさび膜をカチオン透過性に変質することで塩化物イオンの浸入を阻止する作用がある。その結果、局部腐食内におけるpHの低下、塩化物イオンの濃縮、溶存酸素の消費(還元)が有効に抑制されることが明らかになった。
【0053】
【発明の効果】
本発明に係る局部腐食の評価方法及び局部腐食の抑制方法では、水系における炭素鋼その他の鋼製設備の表面にて発生する局部腐食(孔食、すき間腐食)を模擬した微小内部水(人工ピット内部水)のpH、塩化物イオン濃度並びに溶存酸素濃度を測定することによって、局部腐食の発生又は進行の状況をモニタリングすることができる。また、水系プラントにおいて発生した局部腐食に対して積極的にその進行を停止する処理を施し、その局部腐食が修復されるまでの過程、局部腐食が完全に修復されたことの確認並びに局部腐食の進行現象の機構解明が、人工ピットの内部水の水質変化をモニタリングすることによって可能となる。
【0054】
本発明に係る方法微小電極を採用したことによって、人工ピットのセル容積を少なくすることができるので、セル内部水の水質変化を短時間で再現することが可能となる。即ち、人工ピットの電極構造部位に微小電極を採用することによって、セルの狭小化を実現できる結果、該セルに収容される内部水の少容量化できるので、局部腐食内部水の水質変化を短時間で再現することができる。
【0055】
更に、本発明によれば、水系プラントの局部腐食の状況がリアルタイムで把握できるので、水系プラントの余寿命の推定が可能となる。
【0056】
水系プラントの運転を継続しながらの局部腐食のモニタリングが可能となり、局部腐食の進行によって生じる貫通・漏洩事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る局部腐食の評価方法及び抑制方法を好適に実施できる水系全体の構成を表す図
【図2】実施例で用いる人工ピット(15)の基本構成を表す図
【図3】セル内部水XのpH測定を行う際の人工ピット(151)の構成を表す図
【図4】セル内部水Xの塩化物イオン濃度測定を行う際の人工ピット(152)の構成を表す図
【図5】セル内部水Xの溶存酸素測定を行う際の人工ピット(153)の構成を表す図
【図6】(A)実施例1における人工ピット内部水(X)のpHの経時変化を表す図(グラフ)
(B)実施例1における人工ピット内部水(X)の塩化物イオン濃度の経時変化を表す図(グラフ)
(C)実施例1における人工ピット内部水(X)中の溶存酸素が還元される際に発生する電流値(溶解電流値)の経時変化を表す図(グラフ)
【図7】(A)局部腐食停止剤注入時の人工ピット内部水(X)のpHの経時変化を表す図(グラフ)
(B)局部腐食停止剤注入時の人工ピット内部水(X)の塩化物イオン濃度の経時変化を表す図(グラフ)
(C)局部腐食停止剤注入時の人工ピット内部水(X)中の溶存酸素が還元される際に発生する電流値の経時変化を表す図(グラフ)
【符号の説明】
8 (人工ピット構造を備える)モニタリング装置
12 局部腐食停止剤
15(151,152,153) 人工ピット
15a セル
15b 連絡孔
C2 (熱交換器1から吐出された)冷却水(モニターする試験水)
M(M1,M2) 微小電極
X (セル)内部水
Claims (4)
- 水系プラントの金属部材における局部腐食の模擬構造を備える人工ピットを設け、該人工ピットの内部水の水質変化を、微小電極を用いて測定することを特徴とする局部腐食の評価方法。
- 前記微小電極により、前記内部水のpH、塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度の少なくとも一つを測定することを特徴とする請求項1に記載の局部腐食の評価方法。
- 水系プラントの金属部材における局部腐食の模擬構造を備える人工ピットを設け、該人工ピットの内部水の水質変化を、微小電極を用いて測定し、該測定結果に基づいて、前記金属部材において発生した局部腐食の発生又は進行を抑制することを特徴とする局部腐食の抑制方法。
- 前記測定結果に応じて、局部腐食停止剤を水系プラントに添加することを特徴とする請求項3記載の局部腐食の抑制方法。
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