JP2004068168A - 工業用二層織物 - Google Patents
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Abstract
【構成】上層面側経糸が完全組織の中の1箇所または複数箇所の、上層面側経糸が上層面側緯糸を上層面側から織り込む部位で、織物組織上は上層面側経糸が織り込むべき上層面側緯糸を1回織り込まずに上層面側と下層面側との間を通過する上層面側経糸であり、一方下層面側経糸は、該上層面側経糸が1回織り込まなかった部位で、上層面側に向かって上層面側経糸が織り込まなかった上層面側緯糸を上層面側から織り込んで接結糸としても機能する下層面側経糸であることを特徴とする工業用二層織物である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製紙用織物、不織布製造用織物、汚泥等の脱水や搾水に用いられる織物、建材製造用ベルト、コンベアベルト等の工業用織物に関し、特には製紙用織物、中でもティッシュ製造用の抄紙用織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から使用されている工業用織物としては、例えば抄紙用織物やカンバス等の製紙用織物、不織布製造用織物、汚泥等の脱水や搾水に用いられる織物、建材製造用ベルト、コンベアベルト等多くのものがある。これらの工業用織物は、使用時に経糸方向に張力を受けながら走行するため伸びや巾方向の収縮が発生しないよう寸法安定性が要求される。また、蛇行したり皺が発生しないように姿勢安定性が要求される。さらに走行中に駆動ロール等に接触して摩耗を受けるので耐摩耗性も要求される。また、表面に物を載置して搬送したり加工したりすることからいえば表面が平滑であることが要求される。
このような問題は、工業用織物においてほぼ共通の問題であるが、未だ解決されていないのが現状である。工業用織物の中でも最も厳しくこれらの性能を要求される製紙用織物、特に抄紙用織物は、上記の性能に加え後述する抄紙独自の諸性能を要求されるが、抄紙用織物について説明すればほとんどの工業用織物共通の問題とその解決について説明でき理解できるので、以下抄紙用織物を代表して本発明を説明することとする。
製紙方法は周知の技術であって、まずパルプ繊維等を含む製紙原料が、ヘッドボックスからエンドレスに形成されて抄紙機のロール間に掛け入れられ走行している抄紙用織物上に供給される。抄紙用織物の原料が供給される側が上層面、その反対側が下層面である。
供給された原料は抄紙用織物の走行にともなって移動し、移動中に遠心力や織物の下層面側に設置されたサクションボックスやフォイル等の脱水装置によって、水分が除去され、湿紙が形成される。すなわち抄紙用織物がフィルターとして機能し、パルプ繊維と水を分離するのである。
この抄紙ゾーンで形成された湿紙は、次にプレスゾーンとドライヤーゾーンに移送される。プレスゾーンでは、湿紙は抄紙用フェルトによって移送され製紙用フェルトとともにプレスロール間でニップ圧によって搾水され、さらに水分が除去される。ドライヤーゾーンでは、湿紙は抄紙用キャンバスによって移送され、乾燥されて紙が製造される。
【0003】
製紙用織物は、合成樹脂モノフイラメント等の経糸、緯糸を用いて織機で製織される。無端状に形成するには周知の織継やピンシーム等によって無端状に形成されるか、袋織り織機により製織の段階で無端状に形成される。袋織りの場合は織機上と使用時では経糸と緯糸の関係が逆になる。
本明細書にて、経糸とは製紙機械の機械方向すなわち織物の進行方向に伸びている糸であり、緯糸とは製紙機械の機械横断方向すなわち織物の巾方向に伸びている糸である。
ところで、効果的に繊維の支持性を向上させ、紙にワイヤーマークを発生させずに、良質な紙を抄造するためには、繊維の配向性等の関係から好適には緯糸で繊維を支持することが重要である。特にティッシュ製造用の抄紙用織物では、ティッシュが非常に薄葉であり、抄紙機が高速でありながら脱水ゾーンが短いということから、繊維支持性、紙剥がれ性が特に要求される。繊維支持性、紙剥がれ性が悪いとピンホールの発生につながり、見掛け上の問題のみならず、不透明度の低下、紙力の低下の原因にもなり、また、ファイバーキャリーバックやスプラッシュにもつながり操業上も大きな問題となる。
よって、従来よりティッシュ製造用の製紙用織物としては、主として緯糸が上層面側にロングクリンプを形成するタイプの単層織物が使用されてきた。ティッシュマシンでは、填料をほとんど含まないため耐摩耗性よりも繊維支持性、紙剥がれ性を重要視したためである。しかし、単層織物では、益々高速化する抄紙機の増大する機械的負荷に対応することができなくなってきた。単層織物は、網厚が薄く良好なろ水性等の利点を有するものの、その構造からくる剛性不足が要因となる地合不良、走行性、リテンションが悪い等の不利益が非常に大きくなってきたのである。
そこで、最近ではティッシュマシンにおいても多重織物の使用が増加し、そこそこの成功を収めるにいたった。多重織物の構造としては、緯糸二重織物や接結糸を使用して上下織物を結合した上下二層織物構造であり、上層面側の組織としては緯糸が上層面側にロングクリンプを形成する構造である。また、二層織物では、ろ水性確保、小さな保水性確保の点で網厚を薄くする等の目的から、下層面側織物が経糸を2本平行に揃えて配置した畝織りの平織り組織がもっぱら使用されている。
また、最近では、ヨーロッパ特許EP0889160A1公報に開示されているような上層経糸の一部で上下網を接結した、独立した接結糸を有しない地糸接結タイプの二層織物が一部で使用さている。このタイプの二層織物は独立の接結糸がないために、ろ水性(通気度)を低下させることなく緯糸本数を多くすることが可能であった。従って、繊維支持性を向上させることができると期待され、使用されたのであるが、上層経糸が接結する部分に起因する大きな問題があったのである。上層経糸が接結糸として機能するために下層面側に潜る部分において、上層面側に経糸が存在しない状態となるため、その部分で局部的に脱水過多となり、ファイバーキャリーバック、スプラッシュ等が発生し、また、その部分が横マークとなって発生し、強い場合にはクレーピング時に悪影響を及ぼすほどであった。この問題は、未だ解決されてないのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題に鑑みて、独立した接結糸を有しない地糸接結タイプの二層織物において、接結部で上層面側に経糸が存在しない状態が発生せず、局部的な脱水過多が発生しない構造とし、ろ水性(通気度)を低下させることなく緯糸本数を多くすることが可能であり、かつ、繊維支持性が良好で、ファイバーキャリーバック、スプラッシュ等が発生しないワイヤーマーク性も良好な製紙用織物を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1. 上層面側経糸と上層面側緯糸とからなる上層面側織物と、下層面側経糸と下層面側緯糸とからなる下層面側織物とからなり、両織物を接結してなる工業用二層織物において、上層面側経糸が完全組織の中の1箇所または複数箇所の、上層面側経糸が上層面側緯糸を上層面側から織り込む部位で、織物組織上は上層面側経糸が織り込むべき上層面側緯糸を1回織り込まずに上層面側と下層面側との間を通過する上層面側経糸であり、一方下層面側経糸は、該上層面側経糸が1回織り込まなかった部位で、上層面側に向かって上層面側経糸が織り込まなかった上層面側緯糸を上層面側から織り込んで接結糸としても機能する下層面側経糸であることを特徴とする工業用二層織物。
2. 下層面側経糸は、上層面側経糸が上層面側緯糸を1回織り込まなかった部位で、下層面側緯糸を織り込まず、上層面側に向かって上層面側経糸が織り込まなかった上層面側緯糸を上層面側から織り込んで接結糸としても機能する経糸である、1項に記載された工業用に層織物。
3. 上層面側織物組織が、上層面側経糸が連続する3本の上層面側緯糸の下側を通った後1本の上層面側経糸の上側を通る組織の繰り返しであり、上層面側緯糸が、連続する3本の上層面側経糸の上側を通って上層面側にロングクリンプを形成した後1本の上層面側経糸の下側を通る組織の繰り返しであり、下層面側織物組織が、下層面側経糸が2本平行に同組織で配置された畝織り組織の平織組織であることを特徴とする、1項または2項に記載された工業用二層織物。」
に関する。
以下前述したように抄紙用織物、を代表として本発明を説明する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、上層面側経糸の一部または全部が、経糸方向のある部分の上層面側経糸が上層面側緯糸を上層面側から織込む部位において、織物組織上は上層面側経糸が織り込むべき上層面側緯糸を1回織り込まずに上層面側緯糸と下層面側緯糸との間を通過する上層面側経糸、すなわち、上層面側組織上織り込むべき上層面側緯糸を通常通り織り込んだ後上層面側緯糸と下層面側緯糸との間を通過し、次の織り込むべき上層面側緯糸を1回織り込まずに上層面側緯糸と下層面側緯糸との間を通過して、ついで次の織り込むべき上層面側緯糸を通常通り織り込む上層面側経糸であり、一方下層面側経糸は、該上層面側経糸が1回織り込まなかった部分において、上層面側に向かって上層面側経糸が織り込まなかった上層面側緯糸を上層面側から織り込んで接結糸としても機能する下層面側経糸であることに特徴がある。
上記構成としたことによって、従来の上層面側経糸が接結糸として機能するために下層面側に潜る部分、例えばヨーロッパ特許EP0889160A1公報に開示されている製紙用織物では、上層面側に経糸が存在しない状態となって、局部的に脱水過多となり、ファイバーキャリーバック、スプラッシュ等の問題を発生させていた部分が形成されないのである。
【0007】
すなわち、従来例のように上層面側経糸が接結糸として機能するために下層面側に潜らず、本発明では上層面側緯糸と下層面側緯糸との間を通過して繊維支持性を確保するため、脱水過多となる問題点を解決できたのである。
そして、この部分で下層面側経糸が上層面側に向かって上層面側緯糸を上層面側から織り込んで接結糸として機能し、上層面側織物と下層面側織物とを連結しているのである。
さらに、下層面側経糸が上層面側緯糸を織り込む位置が、本来上層面側経糸が織込むべき上層面側緯糸であるため、実質上、上層面側組織が崩れることがなく、ワイヤーマーク特性等も良好である。
また、本発明は、地糸経糸で接結する構造であるため、接結糸として機能する糸が地糸であり、かつ、使用中は常にテンションがかかる経糸であるため、細い緯糸の接結糸を使用するのと比較し、上層面側織物と下層面側織物とを結合する接結力が非常に強く、常に上層面側織物と下層面側織物とを密着させる力が働くため、密着性が良好である。従って、接結糸が両織物間で揉まれて内部摩耗が発生して接結力が弱くなったり、両織物間に隙間が発生したり、分離する等の問題が生じない。
【0008】
また、上層面側織物組織及び下層面側織物組織は、上記の構成を形成できる組織であれば特に限定されないが、上層面側織物組織を、上層面側経糸が連続する3本の上層面側緯糸の下側を通った後、1本の上層面側経糸の下側を通る組織の繰り返しで、上層面側緯糸が、連続する3本の上層面側経糸の上側を通って上層面側にロングクリンプを形成した後1本の上層面側経糸の下側を通る組織の繰り返しとすると、緯糸が製紙面側となる上層面側に多く現れる構造となり、また、下層面側織物組織を、下層面側経糸が2本平行に同組織で配置された畝織り組織の平織組織とすると、経糸に薄い扁平糸を使用したと同様な状態となり、また、組織上緯糸のクリンプ長さが短くなるため網厚が薄い構造となるため、良好な繊維支持性、紙剥がれ性、網厚の薄さが特に要求されるティッシュ製造用の抄紙用織物に特に好適である。
上層面側織物に対する糸本数の密度は特に限定されず、下層面側緯糸を上層面側と同密度や1/2や2/3等の密度にすることができる。
また、当然であるが、厚さを薄くする目的や平滑性を向上させるため等に表面研磨を実施することができる。しかし、ティッシュ製造用の抄紙用織物や不織布製造用の織物では、繊維が引っ掛かってシートの剥離不良が発生しないように研磨バリには十分な注意が必要である。
【0009】
本発明に使用される糸としては、製紙用織物に望まれる特性によって自由に選択でき特に限定されない。例えばモノフイラメントの他、マルチフイラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、モール糸、あるいはこれらをより合わせる等して組み合わせた糸等が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の矩形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても自由に選択でき、ポリエステル、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリふっかビニリデン、4ふっかエチレン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、綿、ウール、金属等が使用できる。勿論、共重合体やこれらの材質に目的に応じて色々な物質をブレンドしたり含有させた糸を使用しても良い。
一般的には、上層面側経糸、下層面側経糸、上層面側緯糸には剛性があり、寸法安定性が優れているポリエステルモノフイラメントを用いるのが好ましい。また、耐摩耗性が要求される下層面側緯糸は、ポリエステルモノフイラメントとナイロンモノフイラメントを交互に配置する等、交織して剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上させることもできる。
また、組織上は本来1本の糸が配置される部分に、同組織で糸を複数本引き揃えて配置することもできる。細い線径の糸を複数本引き揃えて配置することによって、表面性の向上と織物の厚みを薄くすることができる。
【0010】
【実施例】
本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例の完全組織を示す意匠図である。完全組織とは、織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1,2,3,で示し、緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1´,2´,3´,で示す。
また、×印は上層面側経糸が上層面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印は下層面側経糸が下層面側緯糸の下側に位置していることを示し、▲印は下層面側経糸が上層面側緯糸の上側に位置している部分、すなわち下層面側経糸が接結糸として機能している接結部を示し、□印は上層面側経糸が下層面側緯糸の下側に位置している部分、すなわち上層面側経糸が接結糸として機能している接結部を示す。
上層面側と下層面側の経糸、緯糸は上下に重なって配置されている。尚、意匠図では糸が上下に正確に重なって上層面側の経糸、緯糸の真下に下層面側の経糸、緯糸が配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物ではずれて配置されても構わないものである。本実施例では下層面側織物が、隣り合う2本の経糸が同組織の畝織り組織であるため、実際には2本の下層面側経糸が隣接配置されるのである。
【0011】
実施例1
図1が本発明の実施例1の完全組織を示す意匠図である。
図1の意匠図において、1,2,3,4,5,6,7,8が経糸であり上層面側経糸と下層面側経糸が上下に配置されている。1´,2´,3´・・・16´が緯糸であって上層面側緯糸が上側に配置され下層面側緯糸が半分の密度で奇数番号の上層面側緯糸1´,3´・・・の下側に配置されている。
まず上層面側織物をみてみると、例えば上層面側緯糸4′は、3本の上層面側経糸1,2,3の上側を通り、次いで1本の上層面側経糸4の下側を通り、次いで3本の上層面側経糸5,6,7の上側を通り、次いで1本の上層面側経糸8の下側を通っており、連続する3本の上層面側経糸の上側を通った後1本の上層面側経糸の下側を通過する組織であることがわかる。
一方上層面側経糸4は、3本の上層面側緯糸1´,2´,3´の下側を通り、次いで1本の上層面側緯糸4´の上側を通り、次いで3本の上層面側緯糸5´,6´,7´の下側を通り、次いで1本の上層面側緯糸8´の上側を通っており、連続する3本の上層面側緯糸の下側を通った後1本の上層面側緯糸の上側を通過する組織であることがわかる。
上層面側に上層面側緯糸が上層面側経糸3本分のロングクリンプを形成するため緯糸の繊維支持性が良好となる。上層面側経糸は上層面側緯糸1本分上側へシフトして順次配置されており綾織りであることがわかる。本実施例では上記組織を採用したが勿論これに限定されるわけではなく、朱子織り組織であっても良いし、緯糸のクリンプがもっと長くても短くても良い。綾織り組織にすると朱子織り組織よりも緯糸の打込限界本数を増加できるので、通気が問題なければ、緯糸本数を多くすることができる。
次に下層面側織物は、下層面側経糸1と2、3と4、5と6、7と8が同じ下層面側緯糸の上下を交互に通過する、同組織で揃って配置された畝織りの平織り組織である。このような組織とすると網厚を薄くすることが可能であり、特にティッシュ製造用の抄紙用織物として好適である。実際の織物では上層面側経糸1、2の間の下側に下層面側経糸1、2が密着して配置される。畝織り構造とすることの利点としては、2本分の断面積を有する1本の太い経糸を配置した場合と比較し、断面扁平の糸を使用した場合と同じことになるため網厚を薄くでき、緯糸摩耗型に形成される点がある。
次に接結部の説明をする。図面からわかるように、本実施例においては、下層面側経糸1,5が接結糸として機能している。下層面側経糸5では、上層面側緯糸9´との交差部分が接結部となっており、下層面側経糸5が上層面側緯糸9´の上側を通過(▲で図示)して上層面側緯糸9´を上層面側から織り込んで、上層面側織物と下層面側織物とを結合しているのである。
ところで、前述した通り上層面側経糸は、連続する3本の上層面側緯糸の下側を通った後1本の上層面側緯糸の上側を通過する組織であるから、組織上は本来であれば、上層面側緯糸9´は、上層面側経糸5が上層面側から織り込むべきである。
従って、上層面側経糸5は、上層面側織物組織上は本来上層面側経糸5が上層面側から織込むべき上層面側緯糸9´を1回織込むことなしに上層面側緯糸と下層面側緯糸との間を通過しているのである。
そして、接結糸として機能する下層面側経糸5は、上層面側経糸5が上層面側緯糸9´を織り込まずに上層面側緯糸と下層面側緯糸との間を通過している部分において、下層面側織物組織上は本来下層面側経糸5が下層面側から織込むべき下層面側緯糸9´を1回織込むことなしに上層面側に向かい、上層面側織物組織上は本来上層面側経糸5が織込むべきであった上層面側緯糸9´を上層面側から織込んでいることが良く理解できる。
このような組織としたことにより、従来技術における上層面側経糸5が接結糸として機能するために下層面側に下降することがなく、経糸のサポートがなくなった状態となって、局部的に脱水過多となり、ファイバーキャリーバック、スプラッシュ等の問題を発生させていた部分が形成されないことが良く理解できる。また、上層面側経糸が上層面側緯糸を織り込む位置が、本来上層面側経糸が織込むべき上層面側緯糸であるため、実質上、上層面側組織が崩れることがなく、ワイヤーマーク特性等も良好となるのである。
なお、本実施例においては、接結部において、下層面側織物組織上は本来下層面側経糸が下層面側から織込むべき下層面側緯糸を1回織込まない部分を形成したが、勿論これに限定されるわけではなく、後に説明する実施例2のように形成しても良い。本実施例のように形成すると接結部での下層面側経糸の傾斜が緩やかになり、上層面側を急激に引き込むことが無く表面平滑性が良好になる利点がある。当然下層面側の組織は崩れることになるが、下層面側であり、また本実施例では、下層面側経糸が畝織り組織であるため、接結糸として機能する下層面側経糸に隣接して、本来の織組織の下層面側経糸が配置されているので抄紙特性に悪影響を及ぼすことはない。
なお、本実施例では、上層面側緯糸と下層面側緯糸との比率を2:1とし、接結糸として機能する経糸を1/4の割合で配置し、
下層面側経糸は、下層面側緯糸を下層面側から3回織込んだ後、上層面側に向かって、上層面側緯糸を上層面側から織込む組織とした。勿論これに限定されるわけではないが、この比率が通気や剛性、ワイヤーマーク性等のバランスが良く好適である。
上下織物の接結力を強くしたい場合は、接結糸として機能する経糸の比率を増やしたり接結部を多くすれば良く、また、より通気度を高くしたい場合は、接結糸として機能する経糸の比率を減らしたり接結部を少なくすれば良いのである。
図2は、図1のA−A´線で切断した経糸に沿った断面図である。
下層面側経糸が上層面側に上昇して上層面側緯糸を上層面側から織り込んで接結する構造となっており、その部分では上層面側経糸が上層面側緯糸と下層面側緯糸との間を通過しており、上層面側緯糸にはこれを織り込む経糸が存在し、経糸が存在せずに局部的な脱水過多となり、ファイバーキャリーバック、スプラッシュ等の問題を発生させていた部分がないことが良く理解できる。
【0012】
実施例2
図3が本発明の実施例2の完全組織を示す意匠図である。
実施例1では、接結部において下層面側経糸が下層面側織物組織上は本来下層面側経糸が下層面側から織込むべき下層面側緯糸を1回織込むことなしに上層面側に向かって上層面側緯糸を上層面側から織込んでいたが、本実施例では、接結糸として機能する下層面側経糸が下層面側から織込むべき下層面側緯糸を織込んだ後すぐに上層面側に向かって上層面側緯糸を上層面側から織込み、次いですぐに下層面側に向かって次に下層面側経糸が下層面側から織込むべき下層面側緯糸を織込む構造である。本組織としたことにより実質上、下層面側組織が崩れることがなくなり、ワイヤーマーク特性等がさらに良好となるのである。
図4は、図1のB−B´線で切断した経糸に沿った断面図である。
下層面側経糸5が下層面側から織込むべき下層面側緯糸11´を織込んだ後すぐに上層面側に向かって上層面側緯糸13´を上層面側から織込み、継いですぐに下層面側に向かって次に下層面側経糸5が下層面側から織込むべき下層面側緯糸15´を織込む構造で、下層面側緯糸の上下を交互に通過しており下層面側の組織が崩れてなくいことが良く理解できる。
【0013】
従来例
図5がヨーロッパ特許EP0889160A1公報に開示されている従来例の完全組織を示す意匠図である。図6は、図5のC−C´線で切断した経糸に沿った断面図である。図面からわかるように、基本的な上下織物の構造は、実施例と同等であるが、接結部の構造が異なり、問題点があった。
上層面側経糸1,5が接結糸として機能しており、上層面側経糸5では、緯糸11´との交差部分が接結部となっている。上層面側経糸5が上層面側緯糸9´と13´を織り込んでいる部分の間で下方に下がって下層面側緯糸11´の下側を通過(□で図示)して下層面側緯糸11´を下層面側から織り込み、上層面側織物と下層面側織物とを結合している。接結部において上下両層側の経糸は下層面側緯糸の下方に集まり、上層面側緯糸と下層面側緯糸との間には経糸が存在しない状態となって、経糸のサポートがなくなり、局部的に脱水過多となり、ファイバーキャリーバック、スプラッシュ等の問題を発生させる部分が形成されるのである。
また、接結部の下層面側は、下層面側経糸5,6と上層面側経糸5との3本の経糸が密接して並列配置され、下層面側の組織が崩れるため、ワイヤーマーク発生の原因にもなっていた。
【0014】
【発明の効果】
本発明の工業用二層織物は、ろ水性(通気度)を低下させることなく緯糸本数を多くすることが可能であり、また、接結部において、上層面側に経糸が存在しない状態が発生せず、局部的な脱水過多が発生することがないため、繊維支持性が良好であり、ファイバーキャリーバック、スプラッシュ等が発生せず、ワイヤーマーク性も良好であるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の完全組織を示す意匠図である。
【図2】図1のA−A´線で切断した経糸に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施例2の完全組織を示す意匠図である。
【図4】図3のB−B´線で切断した経糸に沿った断面図である。
【図5】従来例の完全組織を示す意匠図である。
【図6】図5のC−C´線で切断した経糸に沿った断面図である。
【符号の説明】
1 経糸
2 経糸
3 経糸
4 経糸
5 経糸
6 経糸
7 経糸
8 経糸
1´ 緯糸
2´ 緯糸
3´ 緯糸
4´ 緯糸
5´ 緯糸
6´ 緯糸
7´ 緯糸
8´ 緯糸
9´ 緯糸
10´ 緯糸
11´ 緯糸
12´ 緯糸
13´ 緯糸
14´ 緯糸
15´ 緯糸
16´ 緯糸
Claims (3)
- 上層面側経糸と上層面側緯糸とからなる上層面側織物と、下層面側経糸と下層面側緯糸とからなる下層面側織物とからなり、両織物を接結してなる工業用二層織物において、上層面側経糸が完全組織の中の1箇所または複数箇所の、上層面側経糸が上層面側緯糸を上層面側から織り込む部位で、織物組織上は上層面側経糸が織り込むべき上層面側緯糸を1回織り込まずに上層面側と下層面側との間を通過する上層面側経糸であり、一方下層面側経糸は、該上層面側経糸が1回織り込まなかった部位で、上層面側に向かって上層面側経糸が織り込まなかった上層面側緯糸を上層面側から織り込んで接結糸としても機能する下層面側経糸であることを特徴とする工業用二層織物。
- 下層面側経糸は、上層面側経糸が上層面側緯糸を1回織り込まなかった部位で、下層面側緯糸を織り込まず、上層面側に向かって上層面側経糸が織り込まなかった上層面側緯糸を上層面側から織り込んで接結糸としても機能する経糸である、請求項1に記載された工業用に層織物。
- 上層面側織物組織が、上層面側経糸が連続する3本の上層面側緯糸の下側を通った後1本の上層面側経糸の上側を通る組織の繰り返しであり、上層面側緯糸が、連続する3本の上層面側経糸の上側を通って上層面側にロングクリンプを形成した後1本の上層面側経糸の下側を通る組織の繰り返しであり、下層面側織物組織が、下層面側経糸が2本平行に同組織で配置された畝織り組織の平織組織であることを特徴とする、請求項1または2に記載された工業用二層織物。
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