JP2004059553A - アミド化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液相中、温和な反応条件下、オキシム化合物をベックマン転位せしめ高収率でアミド化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】炭素数が8以上のオキシム化合物を、有機溶媒中で、酸無水物を含む触媒成分を添加して転位させてアミド化合物を製造する方法において、オキシム化合物及び溶媒に含まれる水の合計のモル比を、添加した酸無水物に対して15以下にして転位反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】炭素数が8以上のオキシム化合物を、有機溶媒中で、酸無水物を含む触媒成分を添加して転位させてアミド化合物を製造する方法において、オキシム化合物及び溶媒に含まれる水の合計のモル比を、添加した酸無水物に対して15以下にして転位反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアミド化合物の製造方法に関する。詳しくは、液相中で触媒の存在下にオキシムのベックマン転位反応を行うことによりアミド化合物を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、工業的に行われているアミド化合物の製造方法としては、オキシム化合物をベックマン転位反応させてアミド化合物に変換させる方法が知られており、例えば、ε−カプロラクタムはシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応により、ω−ラウリンラクタムはシクロドデカノンオキシムのベックマン転位により製造されている。かかるベックマン転位反応は、現在、工業的には濃硫酸または発煙硫酸のような強酸を触媒として用いた液相反応が採用されている。しかしながら、この公知の方法では、生成したラクタム化合物の分離のために、通常、硫酸をアンモニアで中和する必要があり、前記ラクタム化合物の約2倍量の硫酸アンモニウム(硫安)が副生すること、および大量の強酸を用いるために反応装置の腐食などの問題があり、必ずしも経済的な方法とは言えず、効率的な転位反応用触媒の開発が期待されている。
【0003】
そこで、硫酸触媒を使用しない液相でのベックマン転位反応に関し、種々の検討が行なわれてきた。例えば、均一触媒を用いた液相でのシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応では、N,N−ジメチルホルムアミドとクロルスルホン酸の反応で得られるイオン対(ビスマイヤー錯体)を触媒とする方法(M.A.Kira and Y.M.Shaker ,Egypt. J.Chem.,16,551(1973))、エポキシ化合物と強酸(三フッ化ホウ素・エーテラート等)から生成するアルキル化剤とN,N−ジアルキルホルムアミドから成る触媒を用いる方法(Y.Izumi,Chemistry Letters,pp.2171(1990))、シクロヘキサノンオキシムをヘプタン溶媒中でリン酸或いは縮合性リン酸化合物を用いて転位させる方法(特開昭62−149665号公報)、五酸化リンおよびN,N−ジアルキルホルムアミド等の化合物から成る触媒を用いる方法(特許−2652280号)、五酸化リンおよび含フッ素強酸あるいはその誘導体とN,N−ジアルキルホルムアミド等の化合物から成る触媒を用いる方法(特開平5−105654号公報)等が提案されている。
しかしながら、これらの触媒系を使用してオキシム化合物を液相でベックマン転位反応させラクタムを製造する方法は、工業的な製造方法としては必ずしも満足し得るものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
炭素数8〜15の環状オキシム化合物については、有機溶媒中、ベックマン転位させる方法としては、有機スルホン酸または、硫酸半エステルの無水物または、有機スルホン酸と硫酸半エステルとの混合無水物を触媒としてベックマン転位する方法(特開平62−108861)が知られている。
本発明者らは、特開平62−108861の実施例1を追試した。実施例を忠実に追試したが、実施例に記述されているような、「触媒が溶媒に溶解する」、「直ちに強い発熱がおきる」現象は観測されなかった。さらに、0.5時間後のラクタム収率を1H−NMRにより調べたが、ラクタム収率は0.5%にすぎず、実施例を再現することはできなかった。なお、ベンゾールスルホン酸無水物は市販品がなかったため、代わりにp−トルエンスルホン酸無水物を使用し、また、反応スケールを1/4にした(本願比較例1)。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、一般的な方法によりオキシムを製造すると、オキシム化合物は、5〜15重量%程度の水を含有し、また有機溶媒にも通常水が存在するため、必然的に反応系に一定量の水が存在するが、これらの水分量を減少させることにより高効率でアミド化合物を製造できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、炭素数が8以上のオキシム化合物を、有機溶媒中で、酸無水物を含む触媒成分を添加して転位させてアミド化合物を製造する方法において、オキシム化合物及び溶媒に含まれる水の合計のモル比を、添加した酸無水物に対して15以下にして転位反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法に存する。
【0006】
本発明の好適な態様としては、上記アミド化合物の製造方法において、酸無水物を含む触媒成分が強酸無水物、あるいはカルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物であることが挙げられる。さらにはオキシム化合物が環状オキシム、中でもシクロドデカノンオキシムで、アミド化合物がω−ラウリンラクタムであることを挙げることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
<オキシム化合物>
本発明のベックマン転位反応で使用される原料のオキシム化合物は、炭素数が8以上のオキシム化合物が用いられるが通常炭素数20以下、好ましくは炭素数13以下のオキシム化合物を用いる。オキシムとしては、脂環式ケトンのオキシムまたは置換脂環式ケトンのオキシムが好ましい。中でもシクロデカノンオキシム、シクロウンデカノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、より好ましくはシクロウンデカノンオキシム、シクロドデカノンオキシムが用いられる。
【0008】
<触媒成分>
本発明のベックマン転位反応で使用される触媒成分は、酸無水物を含む触媒成分であれば特に限定されるものではないが、通常、水との反応性が高く、容易に加水分解して強酸を生ずる酸無水物を用いる。なお、該強酸としては特に限定されないが、pKa4以下の強酸が好ましい。
酸無水物を含む触媒成分としては具体的には、(1) 加水分解により強酸を生ずる酸無水物、(2) カルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物が挙げられる。以下、(1)および(2)のそれぞれにつき説明する。
(1) 加水分解により強酸を生ずる酸無水物
加水分解により強酸を生ずる酸無水物とは、強酸と強酸の無水物、強酸と弱酸の無水物のいずれでもよい。具体的には、芳香族スルホン酸無水物、脂肪族スルホン酸無水物等のスルホン酸無水物や、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等の含フッ素酸無水物、燐酸の無水物である五酸化燐、過レニウム酸の無水物である七酸化レニウム、燐酸と硼酸の無水物である燐酸硼素、硫酸半エステルの無水物等がより好ましく例示され、これらの混合酸無水物でもよい。ここで硫酸半エステルの無水物とは、一般式R−OSO2−O−OSO2−R’(但しRおよびR’は、同一でも異なっても良い炭素数1〜20好ましくは1〜10の脂肪族基または炭素数6〜20好ましくは6〜10の芳香族基であり、ハロゲンを含んでも良いが、通常アルキル基である。また、RとR’とが閉環してもよい)により示される化合物である。
これらの中でも、工業的に安価に入手し易いという意味では、非含フッ素スルホン酸無水物や五酸化燐等が好ましく、さらに取り扱い易いという意味では、非含フッ素スルホン酸無水物が好ましい。非含フッ素スルホン酸無水物としては特に限定されるものではなく、芳香族スルホン酸無水物、鎖状または環状の脂肪族スルホン酸無水物等を用いることができる。芳香族スルホン酸無水物は、通常炭素数6〜20好ましくは炭素数6〜10であって、芳香環に置換基を有していても良い。脂肪族スルホン酸無水物は、通常炭素数1〜20好ましくは炭素数1〜10であって、置換基を有していても良い。ここで、置換基とは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、Cl、Br等のハロゲン原子を表す。
【0009】
具体的な化合物としてはベンゼンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物、m−キシレン−4−スルホン酸無水物、p−ドデシルベンゼンスルホン酸無水物、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸無水物、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸無水物、4−クロロベンゼンスルホン酸無水物、α−ナフチルスルホン酸無水物、β−ナフチルスルホン酸無水物、ビフェニルスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、エタンスルホン酸無水物、プロパンスルホン酸無水物、1−ヘキサンスルホン酸無水物、1−オクタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸とメタンスルホン酸との混合酸無水物等が挙げられ、中でもp−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物が好ましい。
【0010】
加水分解により強酸を生ずる酸無水物の量は、特に制限されるものではないが、一般には、原料オキシムに対して約0.1〜20モル%、好ましくは0.3〜15モル%、更に好ましくは0.5〜10モル%の範囲で用いられる。この範囲を超えて少な過ぎると十分な触媒活性が得られず、他方、過多にすぎると転位反応後の触媒処理に要する負荷が多くなりいずれも好ましくない。
【0011】
(2) カルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物
また、酸無水物として、カルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物を用いる場合には、カルボン酸無水物としては、特に限定されるものではないが、例えば置換基を有していても良い炭素数1〜20、好ましくは1〜8の脂肪族カルボン酸無水物、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の芳香族カルボン酸無水物を使用することができる(ここで、置換基とは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、Cl、Br、F等のハロゲン原子を表す)。カルボン酸の価数は特に限定されないが、好ましくは一価である。具体的な化合物としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、n−吉草酸無水物、n−カプロン酸無水物、n−ヘプタン酸無水物、2−エチルヘキサン酸無水物、安息香酸無水物、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物等が挙げられるが、中でも低沸点化合物の無水酢酸、プロピオン酸無水物が本発明では好ましい。
【0012】
本発明におけるカルボン無水物の使用量は、特に制限されるものではないが、一般には、上述したスルホン酸およびこれらの酸無水物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物に対して約0.5〜200モル倍、好ましくは1.0〜100モル倍、更に好ましくは2.0〜50モル倍の範囲で用いられる。この範囲を越えて少なすぎると十分な触媒活性が得られず、他方、過多にしすぎると転位反応後の触媒分離に要する負荷が多くなりいずれも好ましくない。
強酸および/または強酸無水物における、強酸無水物とは強酸と弱酸の無水物でも、強酸と強酸の無水物でもよい。強酸および/または強酸無水物としては、スルホン酸および/またはその酸無水物から選ばれる化合物が好ましい。スルホン酸および/またはその酸無水物から選ばれた化合物は特に限定されるものではなく、置換基を有していても良い炭素数6〜20、好ましくは6〜10の芳香族スルホン酸、置換基を有していても良い炭素数1〜20、好ましくは1〜10の脂肪族スルホン酸およびこれらの酸無水物を使用することができる(ここで、置換基とは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、Cl、Br、F等のハロゲン原子を表す)。これらの中、より好ましくは非含フッ素スルホン酸及びその酸無水物である。
【0013】
具体的な化合物としてはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸・一水和物、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−フルオロベンゼンスルホン酸、α−ナフチルスルホン酸、β−ナフチルスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸およびこれらの酸無水物または混合酸無水物等が挙げられ、中でもメタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸およびこれらの酸無水物または混合酸無水物が好ましく、特にメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびこれらの酸無水物が好ましい。なお、トリフロロメタンスルホン酸およびその酸無水物等の含フッ素強酸化合物も転位反応を良好に進行させる化合物ではあるが、含フッ素強酸化合物は極めて高価であるため、経済的な工業製造法を確立するためには高度な該含フッ素強酸化合物の回収技術ならびに再使用技術の確立が求められる。
【0014】
本発明における強酸および/または強酸無水物から選ばれた化合物の使用量は、特に制限されるものではないが、一般には、原料オキシムに対して約0.1〜20モル%、好ましくは0.3〜15モル%、更に好ましくは0.5〜10モル%の範囲で用いられる。この範囲を越えて少なすぎると十分な触媒活性が得られず、他方、過多にすぎると転位反応後の触媒処理に要する負荷が多くなりいずれも好ましくない。
【0015】
<溶媒>
本発明の転位反応に使用することが出来る溶媒としては、通常炭素数1〜20の有機溶媒を用いる。転位反応を阻害するものでなければ特に限定されない。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ドデカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、アセトニトリル、プロパンニトリル、カプロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル化合物、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル等のエステル化合物、N,N―ジメチルホルムアミド、N,N,N‘,N’テトラメチル尿素等のアミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類を挙げることができ、これらは単独でも混合しても使用することが出来る。
これらの溶媒の中でも、触媒が溶解していないと反応速度が低下することがあるため、反応条件において触媒を溶解させる溶媒がより好ましい。
【0016】
溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、オキシム化合物に対して、1重量倍から100重量倍、好ましくは2重量倍から10重量倍の量を用いることができる。
【0017】
<オキシム化合物及び反応溶媒に含まれる水の合計のモル比>
本発明では、オキシム化合物及び反応溶媒に含まれる水の合計のモル比を、添加した酸無水物に対して15以下となるよう制御して反応を行う。該モル比は10以下が好ましく、6以下が更に好ましく、3以下が特に好ましい。
該モル比を制限することにより、目的のアミド化合物の収率あるいは、TONを向上させることができる。
なお、本発明における水分量の測定は公知の方法によって行えばよく、例えばカールフィッシャー法を用いることができる。
酸無水物に対して、オキシム化合物及び反応溶媒に含まれる水の合計のモル比を求めるためには、回分反応であれば反応器に仕込む化合物の量で求められ、連続反応である場合、単位時間あたりに反応器に導入される化合物の量によって求めればよい。また、後述するように反応液から触媒成分を分離し、触媒の再生工程を経ずに触媒成分を反応器にリサイクルする場合には、「仕込みの酸無水物に対する全反応に用いたオキシム化合物および溶媒の水分量の合計」から求めることになる。
なお、本反応では、酸無水物を用いるが、反応中酸無水物は次第に分解し、対応する酸または、酸成分を含む誘導体に変化することが、1H−NMRによりわかっている。したがって、本発明においては反応系中での酸無水物に対応する酸または酸成分の合計と、反応系中に存在する水との比率としては通常7未満であって、中でも5以下が好ましく、更には3以下が好ましく、特に1.5以下が好ましい。
反応系中に存在する水の存在量を測定する際に、カールフィッシャー法を用いる場合には、溶解していない酸無水物が存在する場合には酸無水物を除去して測定し、固形分として原料のオキシム化合物や目的生成物であるアミド化合物が存在する場合には、固体と溶液とをそれぞれ測定して合計するのが好ましい。酸無水物は水により加水分解するため、酸無水物が混合した試料が水分測定装置に導入されると、分析の時の水分量に影響を及ぼす。また、固形分として原料のオキシム化合物や目的生成物であるアミド化合物が存在する場合その内部に水を含有する可能性があるため、水分量を測定する必要がある。しかしながら、固形分と溶液のスラリー状態のまま一部サンプリングして水分測定を行うと、本来の溶液組成との誤差が大きくなりやすい。このため、酸無水物や固形分と溶液とを一緒に測定すると、正確な水の存在量を求められないことがある。
オキシムの一般的な工業的な製造方法は、ケトン類にヒドロキシルアミン硫酸塩を作用させる。この様な製造方法を経て得られたオキシム化合物は、5から15重量%程度の水を含有するのが一般的である。また、反応溶媒も種類にもよるが、通常、数100ppm、場合によっては、数1000ppmの水分が含まれる場合もある。保存方法によってそれ以上の水分を含む場合もありうる。また、反応器やそれに付随する受器や配管も壁に水分が付着している。
本発明においては、オキシム化合物及び反応溶媒に含まれる水分の合計モル比が、用いる酸無水物に対して特定値以下になるまで低減させて使用する。また、反応液相中の水分を制限することが好ましいので、これらだけでなく、反応器やそれに付随する受器なども乾燥させることが好ましい。
また、用いる酸無水物は、水分が混入しないように保管することが好ましく、転位反応器、受器、配管の乾燥をおこなうことが好ましい。そして、反応系中に水分の混入を避けるため、反応の仕込み及び反応は乾燥処理したガスの雰囲気下で実施することが好ましく、水分を含有する大気の混入は避けることが好ましい。通常は窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性なガス雰囲気で行われるが、乾燥した空気も使用できる。反応液中の水分を除去するために、反応液中に吸水剤を存在させてもよいし、水を除きながら反応を行っても良い。
【0018】
<水分量を制限する方法>
上記したオキシム化合物、反応溶媒および反応雰囲気ガス、反応器の乾燥方法は特に限定されないが、それぞれ以下に示されるような工程で行うのが好ましい。
【0019】
(1)オキシム化合物
本発明方法の原料オキシム化合物としては、通常、5重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは0.6重量%以下、特には0.3重量%以下に含水量を低減したものを使用するのが好ましい。
オキシム化合物の乾燥方法としては、具体的には、一般的な蒸留、薄膜蒸発器を用いた蒸留、晶析、固体オキシムの減圧乾燥等の方法が挙げられ、これらを適宜組み合わせても良い。
【0020】
(2)有機溶媒
本発明の有機溶媒は通常1%以下、好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下特には0.05%以下に含水量を低減したものを使用するのが好ましい。
有機溶媒の乾燥方法としては、具体的には、一般的な蒸留、薄膜蒸発器を用いた蒸留、モレキュラーシブス等を用いた乾燥、金属ナトリウム等を用いる方法、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウム等の塩類を用いた乾燥等の手法を用いることができる。またこれらを組合わせることもできる。有機溶媒の乾燥が十分に行われているものを入手出来る場合は、本工程を必ずしも含まなくてもよい。
【0021】
(3)反応雰囲気ガス
反応雰囲気のガスを乾燥させる方法としては、反応器に至るまでのガス配管の間にモレキュラーシーブス等の吸湿剤を組み込む方法などが挙げられるが、水分量が充分少ないものを供給できる場合は本工程を必ずしも含まなくても良い。
(4)転位反応器および反応器に付随する受器や配管類等
また、転位反応器および反応器に付随する受器や配管類等の乾燥方法としては、乾燥ガスを予め流通させる、保温しながら乾燥ガスを流通させる、若しくは減圧乾燥などの方法により水分を除去する方法などを採用することができる。
以上説明した乾燥工程を経て得られたオキシム化合物、反応溶媒の乾燥の程度を適宜組み合わることにより、仕込まれる水分量を所定の状態にすることができる。
【0022】
本反応では酸無水物を用いるため、反応原料や溶媒と触媒である酸無水物を混合すると、反応原料や溶媒中または、反応器に付着している水分により酸無水物が加水分解し、水が消費される。したがって、反応の原料と触媒である酸無水物を混合させる前と混合させた後(酸無水物の加水分解がおきたあと)では、測定される水の量が変化する。本反応では、反応に添加する原料中の水の酸無水物に対するモル比が所定量以下とするように、反応雰囲気、反応器などの水分を制限し、反応液自体の水分量を増加させないことが好ましい。
【0023】
本発明では、上記した通りに添加した酸無水物に対する水分量を低減させることにより、目的とするアミド化合物の収率を向上させることができる。
【0024】
<転位反応条件>
本発明方法を実施する条件としては特に規定されないが、反応温度は通常0℃から200℃、好ましくは40℃から150℃、更に好ましくは50℃から130℃の範囲で実施される。
反応圧力も特に制限されるものでなく、減圧、常圧および加圧条件下で実施できるが、通常常圧下で実施する。
反応時間或いは反応基質の反応器中の滞留時間は、通常10秒〜10時間であり、好ましくは1分〜7時間である。
本発明では酸無水物と原料オキシム化合物を如何なる順序で混合しても転位反応は進行する。例えば、原料オキシムを有機溶媒に混合し、所定温度に達した後、酸無水物を添加してもよいし、酸無水物を有機溶媒に混合した混合物、あるいはこれらの混合物に更に少量の原料オキシム化合物を加えた混合物を所定の温度に加熱し、次いで原料オキシム化合物の溶解した原料液を一括添加してもよいし、逐次的に供給して反応を開始してもよい。
原料オキシム化合物は、溶媒の一部に溶解して反応に供することもできるし、溶解させずにそのまま添加することも出来る。
【0025】
<転位反応形式>
本発明の反応を実施する反応形式は特に規定されるものではなく、回分反応、連続流通反応のいずれでも実施することができるが、工業的には連続流通反応形式を用いるのが好ましい。反応器の形式については特に制約はなく、1槽あるいは2槽以上の連続した攪拌槽からなる反応器や、チューブラー型反応器等、一般的な反応器を使用することができる。また、本発明で使用される無水物は、反応液中に含まれる水により加水分解して酸が生ずるため反応器材質は耐腐食性材質のものを用いるのが好ましく、例えばステンレス鋼、ハステロイ、モネル、インコネル、チタン、チタン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、タンタル、又はフッ素樹脂、各種ガラスを内側にコーテイングした材料などが例示できる。
【0026】
<転位反応方法>
本発明の反応方法は特に限定されないが、例えばバッチでも連続でもよく、工業的には連続反応で行うのが好ましい。
連続流通反応の場合の具体例としては、十分に乾燥処理した反応器に本発明の酸無水物を含む触媒成分、具体的には、強酸無水物、もしくはカルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物を溶解させた触媒液を仕込み、所定温度に維持する。これに原料オキシム化合物を溶解させた溶媒とともに連続的に供給して所望の滞留時間の間に反応させ、同時に生成したアミド化合物、未反応オキシム化合物および触媒成分、更には溶媒を含む反応混合物を連続的に取り出す。
【0027】
<反応混合物>
取り出した反応混合物は、軽沸生成物、溶媒、目的生成物であるアミド化合物、未反応オキシム、残りの触媒成分(カルボン酸無水物並びに酸または強酸無水物を用いた場合はカルボン酸を含む)を含む。
<アミド化合物の分離>
この反応液は、次に蒸留塔に導かれ、蒸留により順次、軽沸副生成物、溶媒、カルボン酸(触媒成分としてカルボン酸無水物並びに酸または強酸無水物を用いた場合)を留去し、目的生成物であるアミド化合物と未反応のオキシム化合物と残りの触媒成分を含む混合物を得る。回収した溶媒は反応器に再循環しうるが、この場合、不要な副生成物類は別途蒸留等の分離手段で分離除去する。
【0028】
蒸留で分離した目的化合物であるアミド化合物、未反応のオキシム化合物、残りの触媒を含む化合物は例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物の水溶液を加えて中和し、トルエン等の貧溶媒を加えて、触媒とアミド化合物およびオキシム化合物とを分離する。
溶媒、アミド化合物及びオキシム化合物の混合物は、蒸留分離、抽出分離あるいは晶析分離等の各種分離操作により溶媒、アミド化合物及びオキシム化合物にそれぞれ分離する。
アミド化合物はさらに蒸留、晶析等の方法により精製することにより、さらに高純度品を得ることが出来る。
<溶媒のリサイクル>
回収した溶媒は、触媒の失活工程へと再循環し、その場合、不要な副生成物は別途、蒸留等の分離手段で分離する。
<未反応のオキシム化合物>
また、オキシム化合物は適宜精製し、反応原料として使用することができる。
【0029】
<触媒再生>
アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物を加えて失活・分離させた触媒塩を再生して使用する場合には、例えば硫酸、塩酸、硝酸等の強酸、あるいは固体酸、酸型のイオン交換樹脂等を用いて酸に戻すことができる。再生された酸は不活性溶媒に溶解させた状態でそのまま反応系に再循環することが可能であるが、酸無水物に変換する場合には、例えばスルホン酸の場合には、温和な操作条件で行えば、発煙硫酸、五酸化燐、縮合燐酸、無水酢酸等の脱水剤との接触で容易に脱水してスルホン酸無水物に変換できる。再生されスルホン酸無水物は反応器へと再循環可能である。
【0030】
反応後の処理方法としてはこのほかに、反応液から直接または一部の溶媒を留去後反応液の温度を低下させて晶析により触媒と、目的アミド化合物及び未反応オキシム化合物を分離することもできる。未反応のオキシム化合物がない条件を選べば、未反応オキシム化合物を分離しなくて良いので、触媒成分と目的アミド化合物を晶析により分離することができる。目的アミド化合物は、必要があればさらに蒸留、晶析等の方法により精製することにより、さらに高純度品を得ることが出来る。分離された触媒成分は、必要に応じて再生工程を経て、反応器へ循環可能である。
【0031】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例においてラクタム収率は、仕込みオキシムに対するモル%で表し、TON値(Turn Over Number)は仕込みのスルホン酸無水物に対する生成ラクタムのモル数で表した。
また、ラクタム収率及びTONは1H−NMRにより求めた。不溶の触媒が存在する場合は内部標準としてジクロロメタンを用い、ラクタムのN−HまたはC=Oに隣接したメチレン(CH2)の積分比(2H分)とのジクロロメタンのプロトンとの積分比(2H)から換算して求めた。
触媒が全て溶解している場合には、p−トルエンスルホン酸のベンゼン核の水素(2H)を基準にラクタムの生成量を求めた。
【0032】
参考例(シクロドデカノンオキシムの合成)
シクロドデカノンオキシムは市販品がないので、合成した。合成法の一例を下記に示す。
メカニカルスターラーと温度計を備えた4つ口にフラスコにシクロドデカノン19.04g(0.104mol)を仕込み、エタノール164gを加えて室温で攪拌し、溶解させた。酢酸ナトリウム18.07g(0.220mol)、ヒドロキシルアミン硫酸塩10.67g(0.0650mol)を52mlの水に溶解させた水溶液を、シクロドデカノンオキシムのエタノール溶液に十分な攪拌下室温で滴下した。滴下中33℃まで反応液の温度が上昇した。室温でさらに3時間充分に攪拌を行ったのち、1H−NMR分析でシクロドデカノンの残留がないことを確認後、エタノールを40℃で減圧下留去した。195mlの水を添加し、白色固体を洗浄、濾過したのち、さらに400mlの水で水洗した。この白色固体に脱塩水を加え、90℃加熱攪拌後濾過し、さらに90℃の脱塩水で洗浄した。洗浄された白色固体にエタノールを加え加熱溶解後、熱濾過したのちに、エタノール(300g)−水(112g)の混合溶媒から再結晶し、減圧濾過して結晶を得た。減圧濾過器の濾過鐘上でエタノール(74g)−水(28g)の0℃の混合溶媒で結晶を洗浄し減圧濾過を行い、さらに1.5時間風乾してシクロドデカノンオキシムを得た。このときのシクロドデカノンオキシムの水分量は11.3wt%であった。
以下の本実施例、比較例のシクロドデカノンオキシムはこのような方法で得た結晶を適宜、減圧乾燥したものを用いた。尚、この方法によれば、仕込みのシクロドデカノンに対し、90mol%前後の収率でシクロドデカノンオキシムが得られる。
また、以下の実施例に於ける仕込みの水分量の分析は、シクロドデカノンオキシム及び反応溶媒に含まれる水分量から算出した。また、反応後の水分量は、反応液そのままを分析した。水分量の分析にはカールフィッシャー法を用い、シクロドデカノンオキシムの水分量は、固体のまま分析を行った。
【0033】
実施例1
アルゴン雰囲気下で、70℃の乾燥機で乾燥した50mlの丸底フラスコに、減圧乾燥により水分含有量715ppmに低下させた、シクロドデカノンオキシム10.0755g(51.06mmol)及び予めモレキュラーシーブ3Aで乾燥したトルエン40.1g(水分含量8ppm)を仕込んだ。アルゴン雰囲気下、95℃に加熱してシクロドデカノンオキシムが溶解した後、p−トルエンスルホン酸無水物0.2185g(0.6695mmol)とトルエン2.5gを混合したもの(大部分のp−トルエンスルホン酸無水物はトルエンに溶解していない)を加え、引き続き95℃に加熱攪拌しベックマン転位反応を行った。
反応条件下でも、大部分のp−トルエンスルホン酸無水物は溶媒に溶解せずに溶媒中に分散していた。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は12.7%、TON値は9.7であった。1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間後のTONはそれぞれ25.8、32.5、33.2、34.6であり、除々に増加する傾向が観察された。
また、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、0.63であった。
【0034】
比較例1
参考例と同様の方法で合成したシクロドデカノンオキシムを、減圧濾過の後、さらさらになるまで風乾した。このとき、水分含量は1.89wt%であった。このシクロドデカノンオキシムと、純正化学製の市販のトルエン(水分量118ppm)をそのまま用い、仕込み及び反応雰囲気の置換をおこなわない以外は実施例1と同じ方法でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位を行った。この場合も、大部分のp−トルエンスルホン酸無水物はトルエン2.5gに溶解しなかった。
反応液を同様に1H−NMRで分析した結果、ω−ラウリンラクタムの収率は0.5時間で0.5%、TON値は0.4であった。また、1.0時間後のTON値は0.7であり、顕著に増加していく様子もみられなかった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、15.9であった。
【0035】
実施例2
アルゴン雰囲気下で、70℃の乾燥機で乾燥した50mlの丸底フラスコに、減圧乾燥により水分含有量0.128wt%に低下させた、シクロドデカノンオキシム10.0585g(50.98mmol)及び予めモレキュラーシーブ3Aで乾燥したアセトニトリル40.0g(水分含量0ppm)を仕込んだ。アルゴン雰囲気下、55℃に加熱した後、p−トルエンスルホン酸無水物0.2206g(0.6759mmol)をアセトニトリル2.5gに溶解させた溶液を加え、攪拌しながら反応温度を3時間かけて除々に80℃まで上昇させベックマン転位反応を行った。反応条件下でも、p−トルエンスルホン酸無水物は溶媒に溶解していた。シクロドデカノンオキシムは、反応開始時に溶媒に全部溶解していなかったが、次第に溶解した。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、3時間後のω−ラウリンラクタムの収率は100%、TON値は76であり、全てのシクロドデカノンオキシムは消失した。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、1.1であった。
【0036】
実施例3
アルゴン雰囲気下で、70℃の乾燥機で乾燥した50mlの丸底フラスコに、減圧乾燥により水分含有量を0.249wt%に低下させた、シクロドデカノンオキシム8.0231g(40.66mmol)及び純正化学製のアセトニトリル32.15g(水分含量133ppm)を仕込んだ。アルゴン雰囲気下、80℃に加熱した後、p−トルエンスルホン酸無水物0.1772g(0.5429mmol)をモレキュラーシーブス3Aで予め乾燥したアセトニトリル2.5g(水分含量0ppm)に溶解させた溶液を加え、攪拌しながらベックマン転位反応を行った。反応条件下でも、p−トルエンスルホン酸無水物は溶媒に溶解していた。反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は96%、TON値は72であった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、2.5であり、反応後の水分量は0.04wt%(H2O/仕込みp−トルエンスルホン酸無水物=2相当、H2O/「酸無水物に対応する酸および酸成分の合計」=1)であった。
【0037】
実施例4
シクロドデカノンオキシムの水分量が0.536wt%のものを用いた以外は実施例3と同様の方法でベックマン転位反応を行った。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は77%、TON値は57であった。また、1時間後のTON値は58であった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、4.7であり、反応後の水分量は0.1wt%(H2O/仕込みp−トルエンスルホン酸無水物=5相当、H2O/「酸無水物に対応する酸および酸成分の合計」=2.5)であった。
【0038】
実施例5
水分量が1.11wt%のシクロドデカノンオキシムと、予めモレキュラーシーブス3Aで乾燥したアセトニトリル(水分量0ppm)を用いた以外は実施例3と同様の方法でベックマン転位反応を行った。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は58%、TON値は43であった。また、1時間後のTON値は46であった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、9.0であり、反応後の水分量は0.1wt%(H2O/仕込みp−トルエンスルホン酸無水物=6相当、H2O/「酸無水物に対応する酸および酸成分の合計」=3)であった。
比較例2
参考例と同様の方法で合成したシクロドデカノンオキシムを、減圧濾過の後、さらさらになるまで風乾した。このとき、水分含量は1.71wt%であった。このシクロドデカノンオキシム8.0500g(40.80mmol)と、純正化学製の市販のアセトニトリル32.13g(水分含量395ppm)を、仕込みの雰囲気の置換を行わずに50mlの丸底フラスコに仕込んだ。反応雰囲気の置換もおこなわずに、80℃に加熱した後、p−トルエンスルホン酸無水物0.1699g(0.5206mmol)を上述のアセトニトリル2.7g(水分含量395ppm)に溶解させた溶液を加え、攪拌しながらベックマン転位反応を行った。反応条件下でも、p−トルエンスルホン酸無水物は溶媒に溶解していた。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は38%、TON値は30であった。また、1時間後のω−ラウリンラクタムの収率は40%、TON値は31であり、顕著に増加していく様子もみられなかった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびアセトニトリルに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、15.1であり、反応後の水分量は0.3wt%(H2O/仕込みp−トルエンスルホン酸無水物=14相当、H2O/「酸無水物に対応する酸および酸成分の合計」=7)であった。
【0039】
【表1】
表1に示した通り、通常の手法により得られたオキシムを、特別な水分除去の操作をしない溶媒中で反応させた比較例1および2に対して、オキシム中の水分量を減少させ、乾燥させた溶媒中で反応させた実施例1〜5は反応成績が優れることは明らかである。
【0040】
【発明の効果】
本発明方法によれば、オキシム化合物から温和な反応条件下で高収率でアミド化合物を製造できるため、工業的に有利な方法である。
【発明の属する技術分野】
本発明はアミド化合物の製造方法に関する。詳しくは、液相中で触媒の存在下にオキシムのベックマン転位反応を行うことによりアミド化合物を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、工業的に行われているアミド化合物の製造方法としては、オキシム化合物をベックマン転位反応させてアミド化合物に変換させる方法が知られており、例えば、ε−カプロラクタムはシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応により、ω−ラウリンラクタムはシクロドデカノンオキシムのベックマン転位により製造されている。かかるベックマン転位反応は、現在、工業的には濃硫酸または発煙硫酸のような強酸を触媒として用いた液相反応が採用されている。しかしながら、この公知の方法では、生成したラクタム化合物の分離のために、通常、硫酸をアンモニアで中和する必要があり、前記ラクタム化合物の約2倍量の硫酸アンモニウム(硫安)が副生すること、および大量の強酸を用いるために反応装置の腐食などの問題があり、必ずしも経済的な方法とは言えず、効率的な転位反応用触媒の開発が期待されている。
【0003】
そこで、硫酸触媒を使用しない液相でのベックマン転位反応に関し、種々の検討が行なわれてきた。例えば、均一触媒を用いた液相でのシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応では、N,N−ジメチルホルムアミドとクロルスルホン酸の反応で得られるイオン対(ビスマイヤー錯体)を触媒とする方法(M.A.Kira and Y.M.Shaker ,Egypt. J.Chem.,16,551(1973))、エポキシ化合物と強酸(三フッ化ホウ素・エーテラート等)から生成するアルキル化剤とN,N−ジアルキルホルムアミドから成る触媒を用いる方法(Y.Izumi,Chemistry Letters,pp.2171(1990))、シクロヘキサノンオキシムをヘプタン溶媒中でリン酸或いは縮合性リン酸化合物を用いて転位させる方法(特開昭62−149665号公報)、五酸化リンおよびN,N−ジアルキルホルムアミド等の化合物から成る触媒を用いる方法(特許−2652280号)、五酸化リンおよび含フッ素強酸あるいはその誘導体とN,N−ジアルキルホルムアミド等の化合物から成る触媒を用いる方法(特開平5−105654号公報)等が提案されている。
しかしながら、これらの触媒系を使用してオキシム化合物を液相でベックマン転位反応させラクタムを製造する方法は、工業的な製造方法としては必ずしも満足し得るものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
炭素数8〜15の環状オキシム化合物については、有機溶媒中、ベックマン転位させる方法としては、有機スルホン酸または、硫酸半エステルの無水物または、有機スルホン酸と硫酸半エステルとの混合無水物を触媒としてベックマン転位する方法(特開平62−108861)が知られている。
本発明者らは、特開平62−108861の実施例1を追試した。実施例を忠実に追試したが、実施例に記述されているような、「触媒が溶媒に溶解する」、「直ちに強い発熱がおきる」現象は観測されなかった。さらに、0.5時間後のラクタム収率を1H−NMRにより調べたが、ラクタム収率は0.5%にすぎず、実施例を再現することはできなかった。なお、ベンゾールスルホン酸無水物は市販品がなかったため、代わりにp−トルエンスルホン酸無水物を使用し、また、反応スケールを1/4にした(本願比較例1)。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、一般的な方法によりオキシムを製造すると、オキシム化合物は、5〜15重量%程度の水を含有し、また有機溶媒にも通常水が存在するため、必然的に反応系に一定量の水が存在するが、これらの水分量を減少させることにより高効率でアミド化合物を製造できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、炭素数が8以上のオキシム化合物を、有機溶媒中で、酸無水物を含む触媒成分を添加して転位させてアミド化合物を製造する方法において、オキシム化合物及び溶媒に含まれる水の合計のモル比を、添加した酸無水物に対して15以下にして転位反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法に存する。
【0006】
本発明の好適な態様としては、上記アミド化合物の製造方法において、酸無水物を含む触媒成分が強酸無水物、あるいはカルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物であることが挙げられる。さらにはオキシム化合物が環状オキシム、中でもシクロドデカノンオキシムで、アミド化合物がω−ラウリンラクタムであることを挙げることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
<オキシム化合物>
本発明のベックマン転位反応で使用される原料のオキシム化合物は、炭素数が8以上のオキシム化合物が用いられるが通常炭素数20以下、好ましくは炭素数13以下のオキシム化合物を用いる。オキシムとしては、脂環式ケトンのオキシムまたは置換脂環式ケトンのオキシムが好ましい。中でもシクロデカノンオキシム、シクロウンデカノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、より好ましくはシクロウンデカノンオキシム、シクロドデカノンオキシムが用いられる。
【0008】
<触媒成分>
本発明のベックマン転位反応で使用される触媒成分は、酸無水物を含む触媒成分であれば特に限定されるものではないが、通常、水との反応性が高く、容易に加水分解して強酸を生ずる酸無水物を用いる。なお、該強酸としては特に限定されないが、pKa4以下の強酸が好ましい。
酸無水物を含む触媒成分としては具体的には、(1) 加水分解により強酸を生ずる酸無水物、(2) カルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物が挙げられる。以下、(1)および(2)のそれぞれにつき説明する。
(1) 加水分解により強酸を生ずる酸無水物
加水分解により強酸を生ずる酸無水物とは、強酸と強酸の無水物、強酸と弱酸の無水物のいずれでもよい。具体的には、芳香族スルホン酸無水物、脂肪族スルホン酸無水物等のスルホン酸無水物や、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等の含フッ素酸無水物、燐酸の無水物である五酸化燐、過レニウム酸の無水物である七酸化レニウム、燐酸と硼酸の無水物である燐酸硼素、硫酸半エステルの無水物等がより好ましく例示され、これらの混合酸無水物でもよい。ここで硫酸半エステルの無水物とは、一般式R−OSO2−O−OSO2−R’(但しRおよびR’は、同一でも異なっても良い炭素数1〜20好ましくは1〜10の脂肪族基または炭素数6〜20好ましくは6〜10の芳香族基であり、ハロゲンを含んでも良いが、通常アルキル基である。また、RとR’とが閉環してもよい)により示される化合物である。
これらの中でも、工業的に安価に入手し易いという意味では、非含フッ素スルホン酸無水物や五酸化燐等が好ましく、さらに取り扱い易いという意味では、非含フッ素スルホン酸無水物が好ましい。非含フッ素スルホン酸無水物としては特に限定されるものではなく、芳香族スルホン酸無水物、鎖状または環状の脂肪族スルホン酸無水物等を用いることができる。芳香族スルホン酸無水物は、通常炭素数6〜20好ましくは炭素数6〜10であって、芳香環に置換基を有していても良い。脂肪族スルホン酸無水物は、通常炭素数1〜20好ましくは炭素数1〜10であって、置換基を有していても良い。ここで、置換基とは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、Cl、Br等のハロゲン原子を表す。
【0009】
具体的な化合物としてはベンゼンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物、m−キシレン−4−スルホン酸無水物、p−ドデシルベンゼンスルホン酸無水物、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸無水物、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸無水物、4−クロロベンゼンスルホン酸無水物、α−ナフチルスルホン酸無水物、β−ナフチルスルホン酸無水物、ビフェニルスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、エタンスルホン酸無水物、プロパンスルホン酸無水物、1−ヘキサンスルホン酸無水物、1−オクタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸とメタンスルホン酸との混合酸無水物等が挙げられ、中でもp−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物が好ましい。
【0010】
加水分解により強酸を生ずる酸無水物の量は、特に制限されるものではないが、一般には、原料オキシムに対して約0.1〜20モル%、好ましくは0.3〜15モル%、更に好ましくは0.5〜10モル%の範囲で用いられる。この範囲を超えて少な過ぎると十分な触媒活性が得られず、他方、過多にすぎると転位反応後の触媒処理に要する負荷が多くなりいずれも好ましくない。
【0011】
(2) カルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物
また、酸無水物として、カルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物を用いる場合には、カルボン酸無水物としては、特に限定されるものではないが、例えば置換基を有していても良い炭素数1〜20、好ましくは1〜8の脂肪族カルボン酸無水物、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の芳香族カルボン酸無水物を使用することができる(ここで、置換基とは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、Cl、Br、F等のハロゲン原子を表す)。カルボン酸の価数は特に限定されないが、好ましくは一価である。具体的な化合物としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、n−吉草酸無水物、n−カプロン酸無水物、n−ヘプタン酸無水物、2−エチルヘキサン酸無水物、安息香酸無水物、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物等が挙げられるが、中でも低沸点化合物の無水酢酸、プロピオン酸無水物が本発明では好ましい。
【0012】
本発明におけるカルボン無水物の使用量は、特に制限されるものではないが、一般には、上述したスルホン酸およびこれらの酸無水物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物に対して約0.5〜200モル倍、好ましくは1.0〜100モル倍、更に好ましくは2.0〜50モル倍の範囲で用いられる。この範囲を越えて少なすぎると十分な触媒活性が得られず、他方、過多にしすぎると転位反応後の触媒分離に要する負荷が多くなりいずれも好ましくない。
強酸および/または強酸無水物における、強酸無水物とは強酸と弱酸の無水物でも、強酸と強酸の無水物でもよい。強酸および/または強酸無水物としては、スルホン酸および/またはその酸無水物から選ばれる化合物が好ましい。スルホン酸および/またはその酸無水物から選ばれた化合物は特に限定されるものではなく、置換基を有していても良い炭素数6〜20、好ましくは6〜10の芳香族スルホン酸、置換基を有していても良い炭素数1〜20、好ましくは1〜10の脂肪族スルホン酸およびこれらの酸無水物を使用することができる(ここで、置換基とは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、Cl、Br、F等のハロゲン原子を表す)。これらの中、より好ましくは非含フッ素スルホン酸及びその酸無水物である。
【0013】
具体的な化合物としてはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸・一水和物、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−フルオロベンゼンスルホン酸、α−ナフチルスルホン酸、β−ナフチルスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸およびこれらの酸無水物または混合酸無水物等が挙げられ、中でもメタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸およびこれらの酸無水物または混合酸無水物が好ましく、特にメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびこれらの酸無水物が好ましい。なお、トリフロロメタンスルホン酸およびその酸無水物等の含フッ素強酸化合物も転位反応を良好に進行させる化合物ではあるが、含フッ素強酸化合物は極めて高価であるため、経済的な工業製造法を確立するためには高度な該含フッ素強酸化合物の回収技術ならびに再使用技術の確立が求められる。
【0014】
本発明における強酸および/または強酸無水物から選ばれた化合物の使用量は、特に制限されるものではないが、一般には、原料オキシムに対して約0.1〜20モル%、好ましくは0.3〜15モル%、更に好ましくは0.5〜10モル%の範囲で用いられる。この範囲を越えて少なすぎると十分な触媒活性が得られず、他方、過多にすぎると転位反応後の触媒処理に要する負荷が多くなりいずれも好ましくない。
【0015】
<溶媒>
本発明の転位反応に使用することが出来る溶媒としては、通常炭素数1〜20の有機溶媒を用いる。転位反応を阻害するものでなければ特に限定されない。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ドデカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、アセトニトリル、プロパンニトリル、カプロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル化合物、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル等のエステル化合物、N,N―ジメチルホルムアミド、N,N,N‘,N’テトラメチル尿素等のアミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類を挙げることができ、これらは単独でも混合しても使用することが出来る。
これらの溶媒の中でも、触媒が溶解していないと反応速度が低下することがあるため、反応条件において触媒を溶解させる溶媒がより好ましい。
【0016】
溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、オキシム化合物に対して、1重量倍から100重量倍、好ましくは2重量倍から10重量倍の量を用いることができる。
【0017】
<オキシム化合物及び反応溶媒に含まれる水の合計のモル比>
本発明では、オキシム化合物及び反応溶媒に含まれる水の合計のモル比を、添加した酸無水物に対して15以下となるよう制御して反応を行う。該モル比は10以下が好ましく、6以下が更に好ましく、3以下が特に好ましい。
該モル比を制限することにより、目的のアミド化合物の収率あるいは、TONを向上させることができる。
なお、本発明における水分量の測定は公知の方法によって行えばよく、例えばカールフィッシャー法を用いることができる。
酸無水物に対して、オキシム化合物及び反応溶媒に含まれる水の合計のモル比を求めるためには、回分反応であれば反応器に仕込む化合物の量で求められ、連続反応である場合、単位時間あたりに反応器に導入される化合物の量によって求めればよい。また、後述するように反応液から触媒成分を分離し、触媒の再生工程を経ずに触媒成分を反応器にリサイクルする場合には、「仕込みの酸無水物に対する全反応に用いたオキシム化合物および溶媒の水分量の合計」から求めることになる。
なお、本反応では、酸無水物を用いるが、反応中酸無水物は次第に分解し、対応する酸または、酸成分を含む誘導体に変化することが、1H−NMRによりわかっている。したがって、本発明においては反応系中での酸無水物に対応する酸または酸成分の合計と、反応系中に存在する水との比率としては通常7未満であって、中でも5以下が好ましく、更には3以下が好ましく、特に1.5以下が好ましい。
反応系中に存在する水の存在量を測定する際に、カールフィッシャー法を用いる場合には、溶解していない酸無水物が存在する場合には酸無水物を除去して測定し、固形分として原料のオキシム化合物や目的生成物であるアミド化合物が存在する場合には、固体と溶液とをそれぞれ測定して合計するのが好ましい。酸無水物は水により加水分解するため、酸無水物が混合した試料が水分測定装置に導入されると、分析の時の水分量に影響を及ぼす。また、固形分として原料のオキシム化合物や目的生成物であるアミド化合物が存在する場合その内部に水を含有する可能性があるため、水分量を測定する必要がある。しかしながら、固形分と溶液のスラリー状態のまま一部サンプリングして水分測定を行うと、本来の溶液組成との誤差が大きくなりやすい。このため、酸無水物や固形分と溶液とを一緒に測定すると、正確な水の存在量を求められないことがある。
オキシムの一般的な工業的な製造方法は、ケトン類にヒドロキシルアミン硫酸塩を作用させる。この様な製造方法を経て得られたオキシム化合物は、5から15重量%程度の水を含有するのが一般的である。また、反応溶媒も種類にもよるが、通常、数100ppm、場合によっては、数1000ppmの水分が含まれる場合もある。保存方法によってそれ以上の水分を含む場合もありうる。また、反応器やそれに付随する受器や配管も壁に水分が付着している。
本発明においては、オキシム化合物及び反応溶媒に含まれる水分の合計モル比が、用いる酸無水物に対して特定値以下になるまで低減させて使用する。また、反応液相中の水分を制限することが好ましいので、これらだけでなく、反応器やそれに付随する受器なども乾燥させることが好ましい。
また、用いる酸無水物は、水分が混入しないように保管することが好ましく、転位反応器、受器、配管の乾燥をおこなうことが好ましい。そして、反応系中に水分の混入を避けるため、反応の仕込み及び反応は乾燥処理したガスの雰囲気下で実施することが好ましく、水分を含有する大気の混入は避けることが好ましい。通常は窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性なガス雰囲気で行われるが、乾燥した空気も使用できる。反応液中の水分を除去するために、反応液中に吸水剤を存在させてもよいし、水を除きながら反応を行っても良い。
【0018】
<水分量を制限する方法>
上記したオキシム化合物、反応溶媒および反応雰囲気ガス、反応器の乾燥方法は特に限定されないが、それぞれ以下に示されるような工程で行うのが好ましい。
【0019】
(1)オキシム化合物
本発明方法の原料オキシム化合物としては、通常、5重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは0.6重量%以下、特には0.3重量%以下に含水量を低減したものを使用するのが好ましい。
オキシム化合物の乾燥方法としては、具体的には、一般的な蒸留、薄膜蒸発器を用いた蒸留、晶析、固体オキシムの減圧乾燥等の方法が挙げられ、これらを適宜組み合わせても良い。
【0020】
(2)有機溶媒
本発明の有機溶媒は通常1%以下、好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下特には0.05%以下に含水量を低減したものを使用するのが好ましい。
有機溶媒の乾燥方法としては、具体的には、一般的な蒸留、薄膜蒸発器を用いた蒸留、モレキュラーシブス等を用いた乾燥、金属ナトリウム等を用いる方法、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウム等の塩類を用いた乾燥等の手法を用いることができる。またこれらを組合わせることもできる。有機溶媒の乾燥が十分に行われているものを入手出来る場合は、本工程を必ずしも含まなくてもよい。
【0021】
(3)反応雰囲気ガス
反応雰囲気のガスを乾燥させる方法としては、反応器に至るまでのガス配管の間にモレキュラーシーブス等の吸湿剤を組み込む方法などが挙げられるが、水分量が充分少ないものを供給できる場合は本工程を必ずしも含まなくても良い。
(4)転位反応器および反応器に付随する受器や配管類等
また、転位反応器および反応器に付随する受器や配管類等の乾燥方法としては、乾燥ガスを予め流通させる、保温しながら乾燥ガスを流通させる、若しくは減圧乾燥などの方法により水分を除去する方法などを採用することができる。
以上説明した乾燥工程を経て得られたオキシム化合物、反応溶媒の乾燥の程度を適宜組み合わることにより、仕込まれる水分量を所定の状態にすることができる。
【0022】
本反応では酸無水物を用いるため、反応原料や溶媒と触媒である酸無水物を混合すると、反応原料や溶媒中または、反応器に付着している水分により酸無水物が加水分解し、水が消費される。したがって、反応の原料と触媒である酸無水物を混合させる前と混合させた後(酸無水物の加水分解がおきたあと)では、測定される水の量が変化する。本反応では、反応に添加する原料中の水の酸無水物に対するモル比が所定量以下とするように、反応雰囲気、反応器などの水分を制限し、反応液自体の水分量を増加させないことが好ましい。
【0023】
本発明では、上記した通りに添加した酸無水物に対する水分量を低減させることにより、目的とするアミド化合物の収率を向上させることができる。
【0024】
<転位反応条件>
本発明方法を実施する条件としては特に規定されないが、反応温度は通常0℃から200℃、好ましくは40℃から150℃、更に好ましくは50℃から130℃の範囲で実施される。
反応圧力も特に制限されるものでなく、減圧、常圧および加圧条件下で実施できるが、通常常圧下で実施する。
反応時間或いは反応基質の反応器中の滞留時間は、通常10秒〜10時間であり、好ましくは1分〜7時間である。
本発明では酸無水物と原料オキシム化合物を如何なる順序で混合しても転位反応は進行する。例えば、原料オキシムを有機溶媒に混合し、所定温度に達した後、酸無水物を添加してもよいし、酸無水物を有機溶媒に混合した混合物、あるいはこれらの混合物に更に少量の原料オキシム化合物を加えた混合物を所定の温度に加熱し、次いで原料オキシム化合物の溶解した原料液を一括添加してもよいし、逐次的に供給して反応を開始してもよい。
原料オキシム化合物は、溶媒の一部に溶解して反応に供することもできるし、溶解させずにそのまま添加することも出来る。
【0025】
<転位反応形式>
本発明の反応を実施する反応形式は特に規定されるものではなく、回分反応、連続流通反応のいずれでも実施することができるが、工業的には連続流通反応形式を用いるのが好ましい。反応器の形式については特に制約はなく、1槽あるいは2槽以上の連続した攪拌槽からなる反応器や、チューブラー型反応器等、一般的な反応器を使用することができる。また、本発明で使用される無水物は、反応液中に含まれる水により加水分解して酸が生ずるため反応器材質は耐腐食性材質のものを用いるのが好ましく、例えばステンレス鋼、ハステロイ、モネル、インコネル、チタン、チタン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、タンタル、又はフッ素樹脂、各種ガラスを内側にコーテイングした材料などが例示できる。
【0026】
<転位反応方法>
本発明の反応方法は特に限定されないが、例えばバッチでも連続でもよく、工業的には連続反応で行うのが好ましい。
連続流通反応の場合の具体例としては、十分に乾燥処理した反応器に本発明の酸無水物を含む触媒成分、具体的には、強酸無水物、もしくはカルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物を溶解させた触媒液を仕込み、所定温度に維持する。これに原料オキシム化合物を溶解させた溶媒とともに連続的に供給して所望の滞留時間の間に反応させ、同時に生成したアミド化合物、未反応オキシム化合物および触媒成分、更には溶媒を含む反応混合物を連続的に取り出す。
【0027】
<反応混合物>
取り出した反応混合物は、軽沸生成物、溶媒、目的生成物であるアミド化合物、未反応オキシム、残りの触媒成分(カルボン酸無水物並びに酸または強酸無水物を用いた場合はカルボン酸を含む)を含む。
<アミド化合物の分離>
この反応液は、次に蒸留塔に導かれ、蒸留により順次、軽沸副生成物、溶媒、カルボン酸(触媒成分としてカルボン酸無水物並びに酸または強酸無水物を用いた場合)を留去し、目的生成物であるアミド化合物と未反応のオキシム化合物と残りの触媒成分を含む混合物を得る。回収した溶媒は反応器に再循環しうるが、この場合、不要な副生成物類は別途蒸留等の分離手段で分離除去する。
【0028】
蒸留で分離した目的化合物であるアミド化合物、未反応のオキシム化合物、残りの触媒を含む化合物は例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物の水溶液を加えて中和し、トルエン等の貧溶媒を加えて、触媒とアミド化合物およびオキシム化合物とを分離する。
溶媒、アミド化合物及びオキシム化合物の混合物は、蒸留分離、抽出分離あるいは晶析分離等の各種分離操作により溶媒、アミド化合物及びオキシム化合物にそれぞれ分離する。
アミド化合物はさらに蒸留、晶析等の方法により精製することにより、さらに高純度品を得ることが出来る。
<溶媒のリサイクル>
回収した溶媒は、触媒の失活工程へと再循環し、その場合、不要な副生成物は別途、蒸留等の分離手段で分離する。
<未反応のオキシム化合物>
また、オキシム化合物は適宜精製し、反応原料として使用することができる。
【0029】
<触媒再生>
アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物を加えて失活・分離させた触媒塩を再生して使用する場合には、例えば硫酸、塩酸、硝酸等の強酸、あるいは固体酸、酸型のイオン交換樹脂等を用いて酸に戻すことができる。再生された酸は不活性溶媒に溶解させた状態でそのまま反応系に再循環することが可能であるが、酸無水物に変換する場合には、例えばスルホン酸の場合には、温和な操作条件で行えば、発煙硫酸、五酸化燐、縮合燐酸、無水酢酸等の脱水剤との接触で容易に脱水してスルホン酸無水物に変換できる。再生されスルホン酸無水物は反応器へと再循環可能である。
【0030】
反応後の処理方法としてはこのほかに、反応液から直接または一部の溶媒を留去後反応液の温度を低下させて晶析により触媒と、目的アミド化合物及び未反応オキシム化合物を分離することもできる。未反応のオキシム化合物がない条件を選べば、未反応オキシム化合物を分離しなくて良いので、触媒成分と目的アミド化合物を晶析により分離することができる。目的アミド化合物は、必要があればさらに蒸留、晶析等の方法により精製することにより、さらに高純度品を得ることが出来る。分離された触媒成分は、必要に応じて再生工程を経て、反応器へ循環可能である。
【0031】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例においてラクタム収率は、仕込みオキシムに対するモル%で表し、TON値(Turn Over Number)は仕込みのスルホン酸無水物に対する生成ラクタムのモル数で表した。
また、ラクタム収率及びTONは1H−NMRにより求めた。不溶の触媒が存在する場合は内部標準としてジクロロメタンを用い、ラクタムのN−HまたはC=Oに隣接したメチレン(CH2)の積分比(2H分)とのジクロロメタンのプロトンとの積分比(2H)から換算して求めた。
触媒が全て溶解している場合には、p−トルエンスルホン酸のベンゼン核の水素(2H)を基準にラクタムの生成量を求めた。
【0032】
参考例(シクロドデカノンオキシムの合成)
シクロドデカノンオキシムは市販品がないので、合成した。合成法の一例を下記に示す。
メカニカルスターラーと温度計を備えた4つ口にフラスコにシクロドデカノン19.04g(0.104mol)を仕込み、エタノール164gを加えて室温で攪拌し、溶解させた。酢酸ナトリウム18.07g(0.220mol)、ヒドロキシルアミン硫酸塩10.67g(0.0650mol)を52mlの水に溶解させた水溶液を、シクロドデカノンオキシムのエタノール溶液に十分な攪拌下室温で滴下した。滴下中33℃まで反応液の温度が上昇した。室温でさらに3時間充分に攪拌を行ったのち、1H−NMR分析でシクロドデカノンの残留がないことを確認後、エタノールを40℃で減圧下留去した。195mlの水を添加し、白色固体を洗浄、濾過したのち、さらに400mlの水で水洗した。この白色固体に脱塩水を加え、90℃加熱攪拌後濾過し、さらに90℃の脱塩水で洗浄した。洗浄された白色固体にエタノールを加え加熱溶解後、熱濾過したのちに、エタノール(300g)−水(112g)の混合溶媒から再結晶し、減圧濾過して結晶を得た。減圧濾過器の濾過鐘上でエタノール(74g)−水(28g)の0℃の混合溶媒で結晶を洗浄し減圧濾過を行い、さらに1.5時間風乾してシクロドデカノンオキシムを得た。このときのシクロドデカノンオキシムの水分量は11.3wt%であった。
以下の本実施例、比較例のシクロドデカノンオキシムはこのような方法で得た結晶を適宜、減圧乾燥したものを用いた。尚、この方法によれば、仕込みのシクロドデカノンに対し、90mol%前後の収率でシクロドデカノンオキシムが得られる。
また、以下の実施例に於ける仕込みの水分量の分析は、シクロドデカノンオキシム及び反応溶媒に含まれる水分量から算出した。また、反応後の水分量は、反応液そのままを分析した。水分量の分析にはカールフィッシャー法を用い、シクロドデカノンオキシムの水分量は、固体のまま分析を行った。
【0033】
実施例1
アルゴン雰囲気下で、70℃の乾燥機で乾燥した50mlの丸底フラスコに、減圧乾燥により水分含有量715ppmに低下させた、シクロドデカノンオキシム10.0755g(51.06mmol)及び予めモレキュラーシーブ3Aで乾燥したトルエン40.1g(水分含量8ppm)を仕込んだ。アルゴン雰囲気下、95℃に加熱してシクロドデカノンオキシムが溶解した後、p−トルエンスルホン酸無水物0.2185g(0.6695mmol)とトルエン2.5gを混合したもの(大部分のp−トルエンスルホン酸無水物はトルエンに溶解していない)を加え、引き続き95℃に加熱攪拌しベックマン転位反応を行った。
反応条件下でも、大部分のp−トルエンスルホン酸無水物は溶媒に溶解せずに溶媒中に分散していた。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は12.7%、TON値は9.7であった。1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間後のTONはそれぞれ25.8、32.5、33.2、34.6であり、除々に増加する傾向が観察された。
また、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、0.63であった。
【0034】
比較例1
参考例と同様の方法で合成したシクロドデカノンオキシムを、減圧濾過の後、さらさらになるまで風乾した。このとき、水分含量は1.89wt%であった。このシクロドデカノンオキシムと、純正化学製の市販のトルエン(水分量118ppm)をそのまま用い、仕込み及び反応雰囲気の置換をおこなわない以外は実施例1と同じ方法でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位を行った。この場合も、大部分のp−トルエンスルホン酸無水物はトルエン2.5gに溶解しなかった。
反応液を同様に1H−NMRで分析した結果、ω−ラウリンラクタムの収率は0.5時間で0.5%、TON値は0.4であった。また、1.0時間後のTON値は0.7であり、顕著に増加していく様子もみられなかった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、15.9であった。
【0035】
実施例2
アルゴン雰囲気下で、70℃の乾燥機で乾燥した50mlの丸底フラスコに、減圧乾燥により水分含有量0.128wt%に低下させた、シクロドデカノンオキシム10.0585g(50.98mmol)及び予めモレキュラーシーブ3Aで乾燥したアセトニトリル40.0g(水分含量0ppm)を仕込んだ。アルゴン雰囲気下、55℃に加熱した後、p−トルエンスルホン酸無水物0.2206g(0.6759mmol)をアセトニトリル2.5gに溶解させた溶液を加え、攪拌しながら反応温度を3時間かけて除々に80℃まで上昇させベックマン転位反応を行った。反応条件下でも、p−トルエンスルホン酸無水物は溶媒に溶解していた。シクロドデカノンオキシムは、反応開始時に溶媒に全部溶解していなかったが、次第に溶解した。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、3時間後のω−ラウリンラクタムの収率は100%、TON値は76であり、全てのシクロドデカノンオキシムは消失した。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、1.1であった。
【0036】
実施例3
アルゴン雰囲気下で、70℃の乾燥機で乾燥した50mlの丸底フラスコに、減圧乾燥により水分含有量を0.249wt%に低下させた、シクロドデカノンオキシム8.0231g(40.66mmol)及び純正化学製のアセトニトリル32.15g(水分含量133ppm)を仕込んだ。アルゴン雰囲気下、80℃に加熱した後、p−トルエンスルホン酸無水物0.1772g(0.5429mmol)をモレキュラーシーブス3Aで予め乾燥したアセトニトリル2.5g(水分含量0ppm)に溶解させた溶液を加え、攪拌しながらベックマン転位反応を行った。反応条件下でも、p−トルエンスルホン酸無水物は溶媒に溶解していた。反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は96%、TON値は72であった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、2.5であり、反応後の水分量は0.04wt%(H2O/仕込みp−トルエンスルホン酸無水物=2相当、H2O/「酸無水物に対応する酸および酸成分の合計」=1)であった。
【0037】
実施例4
シクロドデカノンオキシムの水分量が0.536wt%のものを用いた以外は実施例3と同様の方法でベックマン転位反応を行った。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は77%、TON値は57であった。また、1時間後のTON値は58であった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、4.7であり、反応後の水分量は0.1wt%(H2O/仕込みp−トルエンスルホン酸無水物=5相当、H2O/「酸無水物に対応する酸および酸成分の合計」=2.5)であった。
【0038】
実施例5
水分量が1.11wt%のシクロドデカノンオキシムと、予めモレキュラーシーブス3Aで乾燥したアセトニトリル(水分量0ppm)を用いた以外は実施例3と同様の方法でベックマン転位反応を行った。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は58%、TON値は43であった。また、1時間後のTON値は46であった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびトルエンに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、9.0であり、反応後の水分量は0.1wt%(H2O/仕込みp−トルエンスルホン酸無水物=6相当、H2O/「酸無水物に対応する酸および酸成分の合計」=3)であった。
比較例2
参考例と同様の方法で合成したシクロドデカノンオキシムを、減圧濾過の後、さらさらになるまで風乾した。このとき、水分含量は1.71wt%であった。このシクロドデカノンオキシム8.0500g(40.80mmol)と、純正化学製の市販のアセトニトリル32.13g(水分含量395ppm)を、仕込みの雰囲気の置換を行わずに50mlの丸底フラスコに仕込んだ。反応雰囲気の置換もおこなわずに、80℃に加熱した後、p−トルエンスルホン酸無水物0.1699g(0.5206mmol)を上述のアセトニトリル2.7g(水分含量395ppm)に溶解させた溶液を加え、攪拌しながらベックマン転位反応を行った。反応条件下でも、p−トルエンスルホン酸無水物は溶媒に溶解していた。
反応液を熱溶液のままサンプリングし、1H−NMRで分析した。その結果、0.5時間後のω−ラウリンラクタムの収率は38%、TON値は30であった。また、1時間後のω−ラウリンラクタムの収率は40%、TON値は31であり、顕著に増加していく様子もみられなかった。
この時、反応開始前のシクロドデカノンオキシムおよびアセトニトリルに含まれる水の合計量の、p−トルエンスルホン酸無水物に対するモル比は、15.1であり、反応後の水分量は0.3wt%(H2O/仕込みp−トルエンスルホン酸無水物=14相当、H2O/「酸無水物に対応する酸および酸成分の合計」=7)であった。
【0039】
【表1】
表1に示した通り、通常の手法により得られたオキシムを、特別な水分除去の操作をしない溶媒中で反応させた比較例1および2に対して、オキシム中の水分量を減少させ、乾燥させた溶媒中で反応させた実施例1〜5は反応成績が優れることは明らかである。
【0040】
【発明の効果】
本発明方法によれば、オキシム化合物から温和な反応条件下で高収率でアミド化合物を製造できるため、工業的に有利な方法である。
Claims (5)
- 炭素数が8以上のオキシム化合物を、有機溶媒中で、酸無水物を含む触媒成分を添加して転位させてアミド化合物を製造する方法において、オキシム化合物及び溶媒に含まれる水の合計のモル比を、添加した酸無水物に対して15以下にして転位反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法。
- 酸無水物を含む触媒成分が強酸無水物であることを特徴とする請求項1に記載のアミド化合物の製造方法。
- 酸無水物を含む触媒成分がカルボン酸無水物ならびに強酸および/または強酸無水物であることを特徴とする請求項1に記載のアミド化合物の製造方法
- オキシム化合物が環状オキシム化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載のアミド化合物の製造方法。
- オキシム化合物がシクロドデカノンオキシムであり、アミド化合物が、ω−ラウリンラクタムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアミド化合物の製造方法。
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