JP2004049077A - 細菌の識別法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便かつ正確に細菌を識別する方法を提供する。
【解決手段】特定の細菌を識別するために選択したDNA又はその部分から一本鎖DNAを増幅する第1段階、該一本鎖DNAを特定の塩基配列を含む1ないし数種類の縮退プライマーを用いてPCR反応を行う第2段階、該第2段階で得られた反応産物をゲル電気泳動することにより電気泳動パターンを取得する第3段階から成る。既知の代表的な菌を用いて標準的な電気泳動のパターンのデータを蓄積しておき、どのパターンに一致するかを判定する。
【選択図】 なし
【解決手段】特定の細菌を識別するために選択したDNA又はその部分から一本鎖DNAを増幅する第1段階、該一本鎖DNAを特定の塩基配列を含む1ないし数種類の縮退プライマーを用いてPCR反応を行う第2段階、該第2段階で得られた反応産物をゲル電気泳動することにより電気泳動パターンを取得する第3段階から成る。既知の代表的な菌を用いて標準的な電気泳動のパターンのデータを蓄積しておき、どのパターンに一致するかを判定する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、細菌を識別する方法に関し、より詳細には、細菌の16SリボソームRNA遺伝子(以下「16SrDNA」という。)等の細菌を識別するために選択したDNAやその一部から電気泳動パターンを得て、これを既得の電気泳動パターンと比較して細菌を識別する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
細菌種の識別には、そのサイズが検査に適当である等の理由から、16SリボソームRNAが常用されている(日本細菌学会誌 49, 812−821 (1994); Curr. Opin. Microbiol. 2, 299−305 (1999); Lett. Appl. Microbiol. 21(2), 87−92(1995); Biotechnology (NY) 8(3), 233−6 (1990); Curr. Opin. Microbiol.2(3), 323−7 (1999)等)。その細菌の迅速同定法として、PCR法が用いられているが、各細菌に対応した特異的プライマー又はプローブを必要とするため、細菌を同定するためには多数のプライマー/プローブを用いる必要があり、その検査数は膨大なものとなっている。
【0003】
一方、遺伝子の塩基配列を解析する方法として、1組の縮退プローブを遺伝子に由来する被検体核酸とハイブリダイズさせ、この被検体核酸を鋳型とし、プローブをプライマーとしてPCR反応を行い、各プローブから得られた反応産物をゲル電気泳動で分離し、電気泳動パターンをプローブについて比較し、被検体核酸の塩基配列を解析する方法が知られている(特開2001−211898)。しかし、この方法を細菌の識別に応用する場合、迅速かつ簡便に未知の菌を同定するためには、どのようにすればいいのか明らかではなかった。また、この遺伝子解析法で用いるプライマー・プローブはn塩基の全ての組合せで解析する必要があり、例えば、4塩基でも256通りもあり、全てを電気泳動で分離するには、やはり、時間と労力がかかる。また、電気泳動のパターンから菌の種類を同定するにはどのようにすればいいのか明らかではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来法よりも簡便かつ正確に細菌を識別する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の問題を解決するために、本発明は、プライマーを厳選して、1ないし数種類のプライマーのみを用いて、簡便な菌の同定法を提供するものである。
実際に、遺伝子の多型を解析するのには1ないし数種類の制限酵素を用いたRFLP法が存在し、菌の同定にも利用され始めている。制限酵素では認識配列部位は制限酵素がない場合には利用できないが、プライマーを用いる限り、自由に設計できる利点がある。
また、この方法で菌を同定するには、必ずしも遺伝子データベースを利用する必要はない。実際に、既知の代表的な菌を用いて標準的な電気泳動のパターンのデータを蓄積しておき、どのパターンに一致するかを判定すればよい。
【0006】
本発明の方法では、細菌の16SrDNAのような特徴ある配列を対象として、数塩基(特に、3〜6塩基)のプライマーで伸長反応を行う。その結果、このプライマーは16SrDNAに相補的な複数の場所から伸長を行い、フラグメントが検出されるが、そのパターンは細菌により異なり、再現性がある。実際には1種類のプライマーで一般的な院内感染に関与する菌は識別可能であることが判明している。このFPPE(Finger Printing by Primer Extension)法と高精度並列キャピラリー電気泳動チップを解析に用いることにより、検査の簡便化及び迅速化を図ることができる。
【0007】
現在のところ、1種類の4塩基プローブで細菌の識別が可能であることが分かったが、将来的に多数の病原細菌を同定できるようにしても、2〜3種類のプローブで十分であると考えられる。したがって、特異的プローブ/プライマーを用いたPCR法に比し、細菌同定に必要な検査数は圧倒的に少なくて済む。その結果、検査の迅速性も確保できる。特に、解析に泳動チップを用いるので泳動は数分以内に終了する。検査全体として3〜4時間で結果を得ることができる。また、この同定法には熟練した技術を要しない。
【0008】
即ち、本発明は、特定の細菌を識別するために選択したDNA又はその部分から一本鎖DNAを増幅する第1段階、該一本鎖DNAを特定の塩基配列を含む1ないし数種類の縮退プライマーを用いてPCR反応を行う第2段階、該第2段階で得られた反応産物をゲル電気泳動することにより電気泳動パターンを取得する第3段階、一方各種細菌について該第1〜3段階の処理を行うことにより特定の縮退プライマーについて対応する電気泳動パターンを予め取得しておく第4段階、及び該第3段階で得た電気泳動パターンを該第4段階で予め得ておいた電気泳動パターンと比較する第5段階から成る細菌の識別法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
第1段階において、細菌を識別できるような特徴的配列であればその細菌のDNA又はその部分のいずれを用いてもよい。それらのなかで細菌の識別に常用されている16SrDNA又はその一部を用いることが好ましい。一本鎖のDNAを得るために、非対称PCRを用いることが好ましい。通常PCR法では同量の2つのプライマーを用いてその間のDNAを増幅するが、この場合は2本鎖DNAができるため、非対称PCRでは、2つのプライマーのうち、片方だけを極端に少なくすることで1本鎖DNAが得ることができる。その比は100対1〜25対1程度が好ましい。
【0010】
第2段階で用いる「縮退プライマー」とは、特定の塩基配列を有する固定部分(すなわち、塩基配列が一定の部分)と所定の塩基長の可変部分(すなわち、塩基配列が4種類の塩基のランダムな組み合わせからなる部分)とを有するプライマーである。本発明の方法においては、この縮退プライマーを1ないし数種類用いるが、具体的には1〜3種程度用い、この種類は少ないほど方法が簡便になるので好ましく、最も好ましくは1種の縮退プライマーを用いる。
【0011】
この縮退プライマーとして、N1N2N3・・NnX1X2・・Xm(式1)、N1N2N3・・X1X2・・XmNn(式2)、N1N2N3・・X1X2・・XmNn−1Nn(式3)、・・・・・・又はX1X2・・XmN1N2N3・・Nn−1Nn(式n)(式中、N1〜Nnは、4種類の塩基A、T、G及びCのいずれかを表すが、ランダムであり、一方X1〜Xmは特定の塩基配列を表し、m及びnはそれぞれ自然数を表す。)で表わされるオリゴヌクレオチドが好ましい。このようなプライマーは当業者に周知の方法、例えば市販のDNA自動合成機によって容易に合成できる。
【0012】
このN1〜nとして、G、A、T又はCのどれでもよく、実際に合成する過程でNにはG、A、T及びCの混合液を使うので、by chance でどれかになる。数塩基の固定部分のプライマーのみではプライマーとして十分働かないので安定性を増すため、どれとでもアニールするように結合したものである。このプライマーの特徴的な固定部分によりPCR反応が行われ、この固定部分に対応したPCR反応産物が得られる。従って、PCR増幅機能はm塩基に存在するが、プライマー自体はn+m塩基の長さとなる。このnは好ましくは5〜8、より好ましくは6、mは好ましくは3〜6、より好ましくは4である。
【0013】
またこの縮退プライマーを構成する各塩基配列の上流にユニバーサル・ヌクレオチドであるイノシンを付加することにより、細菌の識別能力が向上する。この付加するイノシンの個数は好ましくは4〜8個、より好ましくは6個である。
【0014】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
まず、細菌として表皮ブドウ球菌(日本細菌学会教育用菌株)を用い、その16SrDNAから、下記の方法により1本鎖DNAを調製した。
1本鎖核酸を得るために、非対称PCRを行った。プライマーとして、既報(from J. Clin. Microbiol. (1990) 28: 1942)に従って、プライマー0 : 5’−gagtttgatcntggctcag−3’(配列番号1)とプライマーC5 :5’−taccttgttacgactt−3’(配列番号2)を用いた。これらプライマーの濃度比は、16Sの相補鎖によるサイクル伸長産物が電気泳動的に無視できるように、実験で決めた。実施したプロトコールは以下のようにまとめられる。
【0015】
【表1】非対称PCRミックス(1サンプル当たり)
細菌 コロニーピック又はOD 1.0 × 5μl程度
プライマーPO (100pmole/μl) 1μl
プライマーPC5 (4pmole/μl) 1μl
Ready−To−GoTM PCRミックス* 1錠
蒸留水 バランス
全量 25μl
【0016】
* Ready−To−GoTM PCRミックスを25μlに溶かしたときの主な内容物は下記のとうりである。
【表2】
1.5 units of Taq
10 mM Tris−HCl (室温でpH 9.0)
50 mM KCl
1.5 mM MgCl2
200 μM of each dNTP
【0017】
非対称PCRは下記の手順で行った。
94度1分→(90度70秒→55度2.5分→72度3分)×23回
このPCR産物(即ち、1本鎖DNA)を、マイクロカラム(G−50)でTE(25μl)に回収した。サイクル伸長反応には1サンプル当たり10μl使用した。
【0018】
次に、得られた1本鎖DNAにポリメラーゼ伸長反応を行い、その産物をゲル電気泳動にかけた。
オリゴヌクレオチド(gcag)をDNA自動合成機(PE Applied Biosystem社製381型等)により合成し、これにランダムに6個の塩基を付加し、全長10塩基の縮退プライマーとした。
上記で得られた一本鎖DNA、縮退プライマー、ポリメラーゼ酵素、ヌクレオチド、緩衝液、蛍光ラベル−dUTPを混合して以下の温度サイクルでサイクル伸長反応を行った。伸長反応の産物は更に精製され、変性条件で電気泳動してフラグメント解析を行った。
【0019】
実施したプロトコールは以下のようにまとめられる。
【表3】サイクル伸長反応ミックス(1サンプル当たり)
上記作成済の核酸 10μl
縮退プライマー (100pmol/μl) 5μl
Ready−To−GoTM PCR ミックス 1錠
サーモシークエナーゼ 3.2U
R6G−dUTP (100μM) 0.5μl
蒸留水 バランス
全量 25μl
【0020】
サイクル伸長反応を下記の手順で行った。
96度1分→(96度30秒→20度15秒→60度4分)×20回
PCR産物をマイクロカラム(G−50)で精製し、標準プロトコールに従い電気泳動してR6Gの蛍光でフラグメント解析を行った。
同時に、サイズスタンダードとしてGensScan 2500 RedDye(ROX)を流す。データはサイズスタンダードを元に塩基長で表示した。装置は、ABI Genetic Analyzer 310 及び解析ソフト GeneScanTM ver2.1を用いた。
【0021】
実施例2〜4
オリゴヌクレオチドを、gctg、gccg又はtggcとして実施例1と同様の縮退プライマーを作製し、実施例1と同様の操作を行った。
実施例1〜4で得られた電気泳動パターンを図1に示す。それぞれ縮退プライマーの固定部分に対応して特徴的な電気泳動パターンが得られることがわかる。この電気泳動パターンはまた細菌の種類によって特徴的である。
【0022】
実施例5、比較例1
縮退プライマーの上流に常法によりイノシンを6個付加し、これを縮退プライマーとして実施例1と同様の操作を繰り返し、電気泳動パターンを得た(実施例5)。
比較のため、縮退プライマーとして、実施例1のN1〜6を付加せずに、イノシンを6個付加したものを用いて、実施例1と同様の操作を行い、電気泳動パターンを得た(比較例1)。
実施例1、5及び比較例1の電気泳動パターンを図2に示す。比較例1のものは各ピークが明確でないのに対し、実施例1と5のものは比較例1よりも遥かに各ピークが明確であり、実施例5のものは実施例1のものより更にピークが明確である。各ピークが明確であるということはこれらパターンを比較し、それにより細菌の同定を行うのに適しているといえる。
【0023】
実施例6
固定部分をgccgとして実施例1と同様に縮退プライマーを作製し、5種の菌株(赤痢菌、腸炎ビブリオ、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、プロテウス・ブルガリス、及びパラチフスA菌、いずれも日本細菌学会教育用菌株である。)を用いて、実施例1と同様の操作を行った。得られた電気泳動パターンを図3に示す。これらの電気泳動パターンは明確に区別できるので、一種の縮退プライマーにより各種細菌を識別することができることが分かる。
このようにして代表的な菌について標準的な電気泳動のパターンのデータを蓄積しておき、被検体である細菌について得られたパターンがどのパターンに一致するかを判定すれば、容易に細菌の種類を同定することができる。
【0024】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】表皮ブドウ球菌の16SrDNAから得た一本鎖DNAを各種プライマーを用いて伸長した電気泳動パターンを示す図である。プライマーの固定部分:(1)gcag(実施例1)、(2)gctg(実施例2)、(3)gccg(実施例3)、(4)tggc(実施例4)
【図2】表皮ブドウ球菌の16SrDNAから得た一本鎖DNAを各種プライマーを用いて伸長した電気泳動パターンを示す図である。(5)プライマーの固定部分:gcag、可変部分:ランダムな6塩基(実施例1)、(6)プライマーの固定部分:gcag、可変部分:なし、上流にイノシン6個付加(比較例1)、(7)プライマーの固定部分:gcag、可変部分:ランダムな6塩基、更に上流にイノシン6個付加(実施例5)
【図3】5種の菌株(赤痢菌、腸炎ビブリオ、肺炎桿菌、プロテウス・ブルガリス、及びパラチフスA菌)の16SrDNAから得た一本鎖DNAを、プライマーの固定部分をgccgとした一種のプライマーを用いて伸長した電気泳動パターンを示す図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、細菌を識別する方法に関し、より詳細には、細菌の16SリボソームRNA遺伝子(以下「16SrDNA」という。)等の細菌を識別するために選択したDNAやその一部から電気泳動パターンを得て、これを既得の電気泳動パターンと比較して細菌を識別する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
細菌種の識別には、そのサイズが検査に適当である等の理由から、16SリボソームRNAが常用されている(日本細菌学会誌 49, 812−821 (1994); Curr. Opin. Microbiol. 2, 299−305 (1999); Lett. Appl. Microbiol. 21(2), 87−92(1995); Biotechnology (NY) 8(3), 233−6 (1990); Curr. Opin. Microbiol.2(3), 323−7 (1999)等)。その細菌の迅速同定法として、PCR法が用いられているが、各細菌に対応した特異的プライマー又はプローブを必要とするため、細菌を同定するためには多数のプライマー/プローブを用いる必要があり、その検査数は膨大なものとなっている。
【0003】
一方、遺伝子の塩基配列を解析する方法として、1組の縮退プローブを遺伝子に由来する被検体核酸とハイブリダイズさせ、この被検体核酸を鋳型とし、プローブをプライマーとしてPCR反応を行い、各プローブから得られた反応産物をゲル電気泳動で分離し、電気泳動パターンをプローブについて比較し、被検体核酸の塩基配列を解析する方法が知られている(特開2001−211898)。しかし、この方法を細菌の識別に応用する場合、迅速かつ簡便に未知の菌を同定するためには、どのようにすればいいのか明らかではなかった。また、この遺伝子解析法で用いるプライマー・プローブはn塩基の全ての組合せで解析する必要があり、例えば、4塩基でも256通りもあり、全てを電気泳動で分離するには、やはり、時間と労力がかかる。また、電気泳動のパターンから菌の種類を同定するにはどのようにすればいいのか明らかではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来法よりも簡便かつ正確に細菌を識別する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の問題を解決するために、本発明は、プライマーを厳選して、1ないし数種類のプライマーのみを用いて、簡便な菌の同定法を提供するものである。
実際に、遺伝子の多型を解析するのには1ないし数種類の制限酵素を用いたRFLP法が存在し、菌の同定にも利用され始めている。制限酵素では認識配列部位は制限酵素がない場合には利用できないが、プライマーを用いる限り、自由に設計できる利点がある。
また、この方法で菌を同定するには、必ずしも遺伝子データベースを利用する必要はない。実際に、既知の代表的な菌を用いて標準的な電気泳動のパターンのデータを蓄積しておき、どのパターンに一致するかを判定すればよい。
【0006】
本発明の方法では、細菌の16SrDNAのような特徴ある配列を対象として、数塩基(特に、3〜6塩基)のプライマーで伸長反応を行う。その結果、このプライマーは16SrDNAに相補的な複数の場所から伸長を行い、フラグメントが検出されるが、そのパターンは細菌により異なり、再現性がある。実際には1種類のプライマーで一般的な院内感染に関与する菌は識別可能であることが判明している。このFPPE(Finger Printing by Primer Extension)法と高精度並列キャピラリー電気泳動チップを解析に用いることにより、検査の簡便化及び迅速化を図ることができる。
【0007】
現在のところ、1種類の4塩基プローブで細菌の識別が可能であることが分かったが、将来的に多数の病原細菌を同定できるようにしても、2〜3種類のプローブで十分であると考えられる。したがって、特異的プローブ/プライマーを用いたPCR法に比し、細菌同定に必要な検査数は圧倒的に少なくて済む。その結果、検査の迅速性も確保できる。特に、解析に泳動チップを用いるので泳動は数分以内に終了する。検査全体として3〜4時間で結果を得ることができる。また、この同定法には熟練した技術を要しない。
【0008】
即ち、本発明は、特定の細菌を識別するために選択したDNA又はその部分から一本鎖DNAを増幅する第1段階、該一本鎖DNAを特定の塩基配列を含む1ないし数種類の縮退プライマーを用いてPCR反応を行う第2段階、該第2段階で得られた反応産物をゲル電気泳動することにより電気泳動パターンを取得する第3段階、一方各種細菌について該第1〜3段階の処理を行うことにより特定の縮退プライマーについて対応する電気泳動パターンを予め取得しておく第4段階、及び該第3段階で得た電気泳動パターンを該第4段階で予め得ておいた電気泳動パターンと比較する第5段階から成る細菌の識別法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
第1段階において、細菌を識別できるような特徴的配列であればその細菌のDNA又はその部分のいずれを用いてもよい。それらのなかで細菌の識別に常用されている16SrDNA又はその一部を用いることが好ましい。一本鎖のDNAを得るために、非対称PCRを用いることが好ましい。通常PCR法では同量の2つのプライマーを用いてその間のDNAを増幅するが、この場合は2本鎖DNAができるため、非対称PCRでは、2つのプライマーのうち、片方だけを極端に少なくすることで1本鎖DNAが得ることができる。その比は100対1〜25対1程度が好ましい。
【0010】
第2段階で用いる「縮退プライマー」とは、特定の塩基配列を有する固定部分(すなわち、塩基配列が一定の部分)と所定の塩基長の可変部分(すなわち、塩基配列が4種類の塩基のランダムな組み合わせからなる部分)とを有するプライマーである。本発明の方法においては、この縮退プライマーを1ないし数種類用いるが、具体的には1〜3種程度用い、この種類は少ないほど方法が簡便になるので好ましく、最も好ましくは1種の縮退プライマーを用いる。
【0011】
この縮退プライマーとして、N1N2N3・・NnX1X2・・Xm(式1)、N1N2N3・・X1X2・・XmNn(式2)、N1N2N3・・X1X2・・XmNn−1Nn(式3)、・・・・・・又はX1X2・・XmN1N2N3・・Nn−1Nn(式n)(式中、N1〜Nnは、4種類の塩基A、T、G及びCのいずれかを表すが、ランダムであり、一方X1〜Xmは特定の塩基配列を表し、m及びnはそれぞれ自然数を表す。)で表わされるオリゴヌクレオチドが好ましい。このようなプライマーは当業者に周知の方法、例えば市販のDNA自動合成機によって容易に合成できる。
【0012】
このN1〜nとして、G、A、T又はCのどれでもよく、実際に合成する過程でNにはG、A、T及びCの混合液を使うので、by chance でどれかになる。数塩基の固定部分のプライマーのみではプライマーとして十分働かないので安定性を増すため、どれとでもアニールするように結合したものである。このプライマーの特徴的な固定部分によりPCR反応が行われ、この固定部分に対応したPCR反応産物が得られる。従って、PCR増幅機能はm塩基に存在するが、プライマー自体はn+m塩基の長さとなる。このnは好ましくは5〜8、より好ましくは6、mは好ましくは3〜6、より好ましくは4である。
【0013】
またこの縮退プライマーを構成する各塩基配列の上流にユニバーサル・ヌクレオチドであるイノシンを付加することにより、細菌の識別能力が向上する。この付加するイノシンの個数は好ましくは4〜8個、より好ましくは6個である。
【0014】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
まず、細菌として表皮ブドウ球菌(日本細菌学会教育用菌株)を用い、その16SrDNAから、下記の方法により1本鎖DNAを調製した。
1本鎖核酸を得るために、非対称PCRを行った。プライマーとして、既報(from J. Clin. Microbiol. (1990) 28: 1942)に従って、プライマー0 : 5’−gagtttgatcntggctcag−3’(配列番号1)とプライマーC5 :5’−taccttgttacgactt−3’(配列番号2)を用いた。これらプライマーの濃度比は、16Sの相補鎖によるサイクル伸長産物が電気泳動的に無視できるように、実験で決めた。実施したプロトコールは以下のようにまとめられる。
【0015】
【表1】非対称PCRミックス(1サンプル当たり)
細菌 コロニーピック又はOD 1.0 × 5μl程度
プライマーPO (100pmole/μl) 1μl
プライマーPC5 (4pmole/μl) 1μl
Ready−To−GoTM PCRミックス* 1錠
蒸留水 バランス
全量 25μl
【0016】
* Ready−To−GoTM PCRミックスを25μlに溶かしたときの主な内容物は下記のとうりである。
【表2】
1.5 units of Taq
10 mM Tris−HCl (室温でpH 9.0)
50 mM KCl
1.5 mM MgCl2
200 μM of each dNTP
【0017】
非対称PCRは下記の手順で行った。
94度1分→(90度70秒→55度2.5分→72度3分)×23回
このPCR産物(即ち、1本鎖DNA)を、マイクロカラム(G−50)でTE(25μl)に回収した。サイクル伸長反応には1サンプル当たり10μl使用した。
【0018】
次に、得られた1本鎖DNAにポリメラーゼ伸長反応を行い、その産物をゲル電気泳動にかけた。
オリゴヌクレオチド(gcag)をDNA自動合成機(PE Applied Biosystem社製381型等)により合成し、これにランダムに6個の塩基を付加し、全長10塩基の縮退プライマーとした。
上記で得られた一本鎖DNA、縮退プライマー、ポリメラーゼ酵素、ヌクレオチド、緩衝液、蛍光ラベル−dUTPを混合して以下の温度サイクルでサイクル伸長反応を行った。伸長反応の産物は更に精製され、変性条件で電気泳動してフラグメント解析を行った。
【0019】
実施したプロトコールは以下のようにまとめられる。
【表3】サイクル伸長反応ミックス(1サンプル当たり)
上記作成済の核酸 10μl
縮退プライマー (100pmol/μl) 5μl
Ready−To−GoTM PCR ミックス 1錠
サーモシークエナーゼ 3.2U
R6G−dUTP (100μM) 0.5μl
蒸留水 バランス
全量 25μl
【0020】
サイクル伸長反応を下記の手順で行った。
96度1分→(96度30秒→20度15秒→60度4分)×20回
PCR産物をマイクロカラム(G−50)で精製し、標準プロトコールに従い電気泳動してR6Gの蛍光でフラグメント解析を行った。
同時に、サイズスタンダードとしてGensScan 2500 RedDye(ROX)を流す。データはサイズスタンダードを元に塩基長で表示した。装置は、ABI Genetic Analyzer 310 及び解析ソフト GeneScanTM ver2.1を用いた。
【0021】
実施例2〜4
オリゴヌクレオチドを、gctg、gccg又はtggcとして実施例1と同様の縮退プライマーを作製し、実施例1と同様の操作を行った。
実施例1〜4で得られた電気泳動パターンを図1に示す。それぞれ縮退プライマーの固定部分に対応して特徴的な電気泳動パターンが得られることがわかる。この電気泳動パターンはまた細菌の種類によって特徴的である。
【0022】
実施例5、比較例1
縮退プライマーの上流に常法によりイノシンを6個付加し、これを縮退プライマーとして実施例1と同様の操作を繰り返し、電気泳動パターンを得た(実施例5)。
比較のため、縮退プライマーとして、実施例1のN1〜6を付加せずに、イノシンを6個付加したものを用いて、実施例1と同様の操作を行い、電気泳動パターンを得た(比較例1)。
実施例1、5及び比較例1の電気泳動パターンを図2に示す。比較例1のものは各ピークが明確でないのに対し、実施例1と5のものは比較例1よりも遥かに各ピークが明確であり、実施例5のものは実施例1のものより更にピークが明確である。各ピークが明確であるということはこれらパターンを比較し、それにより細菌の同定を行うのに適しているといえる。
【0023】
実施例6
固定部分をgccgとして実施例1と同様に縮退プライマーを作製し、5種の菌株(赤痢菌、腸炎ビブリオ、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、プロテウス・ブルガリス、及びパラチフスA菌、いずれも日本細菌学会教育用菌株である。)を用いて、実施例1と同様の操作を行った。得られた電気泳動パターンを図3に示す。これらの電気泳動パターンは明確に区別できるので、一種の縮退プライマーにより各種細菌を識別することができることが分かる。
このようにして代表的な菌について標準的な電気泳動のパターンのデータを蓄積しておき、被検体である細菌について得られたパターンがどのパターンに一致するかを判定すれば、容易に細菌の種類を同定することができる。
【0024】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】表皮ブドウ球菌の16SrDNAから得た一本鎖DNAを各種プライマーを用いて伸長した電気泳動パターンを示す図である。プライマーの固定部分:(1)gcag(実施例1)、(2)gctg(実施例2)、(3)gccg(実施例3)、(4)tggc(実施例4)
【図2】表皮ブドウ球菌の16SrDNAから得た一本鎖DNAを各種プライマーを用いて伸長した電気泳動パターンを示す図である。(5)プライマーの固定部分:gcag、可変部分:ランダムな6塩基(実施例1)、(6)プライマーの固定部分:gcag、可変部分:なし、上流にイノシン6個付加(比較例1)、(7)プライマーの固定部分:gcag、可変部分:ランダムな6塩基、更に上流にイノシン6個付加(実施例5)
【図3】5種の菌株(赤痢菌、腸炎ビブリオ、肺炎桿菌、プロテウス・ブルガリス、及びパラチフスA菌)の16SrDNAから得た一本鎖DNAを、プライマーの固定部分をgccgとした一種のプライマーを用いて伸長した電気泳動パターンを示す図である。
Claims (8)
- 特定の細菌を識別するために選択したDNA又はその部分から一本鎖DNAを増幅する第1段階、該一本鎖DNAを特定の塩基配列を含む1ないし数種類の縮退プライマーを用いてPCR反応を行う第2段階、該第2段階で得られた反応産物をゲル電気泳動することにより電気泳動パターンを取得する第3段階、一方各種細菌について該第1〜3段階の処理を行うことにより特定の縮退プライマーについて対応する電気泳動パターンを予め取得しておく第4段階、及び該第3段階で得た電気泳動パターンを該第4段階で予め得ておいた電気泳動パターンと比較する第5段階から成る細菌の識別法。
- 前記第1段階において細菌の16SリボソームRNA遺伝子又はその一部を増幅する請求項1に記載の方法。
- 前記縮退プライマーが、N1N2N3・・NnX1X2・・Xm(式1)、N1N2N3・・X1X2・・XmNn(式2)、N1N2N3・・X1X2・・XmNn−1Nn(式3)、・・・・・・又はX1X2・・XmN1N2N3・・Nn−1Nn(式n)(式中、N1〜Nnは、4種類の塩基A、T、G及びCのいずれかを表すが、ランダムであり、一方X1〜Xmは特定の塩基配列を表し、m及びnはそれぞれ自然数を表す。)で表わされるオリゴヌクレオチドである請求項1又は2に記載の方法。
- 前記nが5〜8、前記mが3〜6である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記nが6、前記mが4である請求項4に記載の方法。
- 前記縮退プライマーを構成する各塩基配列の上流にイノシンを付加した請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記付加するイノシンの個数が4〜8個である請求項6に記載の方法。
- 前記付加するイノシンの個数が6である請求項7に記載の方法。
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