JP2004047863A - 放熱回路基板とその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属放熱基板上面にセラミックス構造物を具備する放熱回路基板であって、金属放熱基板に前記セラミックス構造物が接着層を介することなく直接接合されており、また、前記セラミックス構造物の上面は、熱伝導率が35W/(m・K)以上の高熱伝導部と、この高熱伝導部より金属濡れ性が良く熱伝導率が35W/(m・K)未満の低熱伝導部とから構成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CPU等が搭載され放熱特性に優れたハイパワーモジュール等へ応用される放熱回路基板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、CPU等が搭載されたハイパワーモジュール等の放熱回路基板としては、特開2000−86368号公報、特開2000−127123号公報、特開2000−269392号公報或いは特開2000−353769号公報に開示されるように、セラミックス基板に放熱用の金属製のヒートシンクをロウ付け等の方法により接合したものが使用されている。セラミックス基板の作製方法は、用いる材料によって異なるが、通常は、粉末成形法、グリーンシート及びドクターブレード法によってシート状に成形されたセラミックス生地を焼成して得られる。
【0003】
電極や配線部を必要とする場合は、上記公報に開示されるように、あらかじめグリーンシート上にペースト塗布などにより導電性物質を配置した後、グリーンシートを積層して圧縮成形し、これを還元雰囲気で焼成したり、1度焼成した焼成体にスクリーン印刷及びメッキ法にて電極や配線部を形成し、大気あるは還元雰囲気中にて焼成を行うといった方法が用いられている。
【0004】
また、セラミックス基板とヒートシンクの接合は、熱伝導性を向上させるために銅や銀系のロウ材を使って銅板と接合する活性金属法や、銅と酸素の共晶点を利用して直接銅と接合する直接接合法(DBC法)などが多く用いられている。
【0005】
セラミックスの材料としては、絶縁性に優れ、強度が強く、熱伝導率にも優れ、湿度や温度変化に対して劣化の少ない酸化アルミニウムや、さらに熱伝導率に優れるという理由から窒化アルミニウムあるいは窒化ケイ素などが通常使用されているが、コスト的な問題を考えなければダイヤモンドで構成されることが最も望ましい。その厚さも、焼成法で作製するには、ハンドリング性の観点から薄くすることができず、数百μm以上が一般的である。
【0006】
ヒートシンクには、前述した銅が熱伝導率に優れ、安価であり、よく使用されているほか、熱伝導性には銅に譲るものの、軟質であるなどの理由でアルミニウムも使用される。
【0007】
演算処理スピードの高速化に伴いCPUチップの発熱は年々深刻な問題となりつつあり、放熱特性の良好な基板が求められているが、放熱特性の良好で一般的に使われている窒化アルミニウムセラミック基材は原料コストが高く、また電極材料として用いられるTi、Ni、Cu、Cr、Ag、Pt,Auなどの金属材料との濡れ性が悪く、CPU等のICチップの基板へのハンダ付けが難しく、現状では、電極形成した部分のみ金属材料との濡れ性を向上させるために、部分的に酸化処理を施し、酸化アルミニウムを形成し金属濡れ性を向上させる手段が施されているのが一般的であり、その加工の複雑さも加味されて窒化アルミニウムで作製した放熱特性の良好な基板は高価であり、応用化の妨げになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した方法は、まずセラミックスを作製するために1000℃以上の高温を必要とし、配線を配置する場合は、還元性雰囲気の環境を与えなければならない。
【0009】
また、セラミックス基板とヒートシンクを接合する場合も、活性金属法では780℃以上、直接接合法では1050℃以上と、高温環境を必要とし、このような高温のため、熱膨張の差で接合部に大きな応力が発生し、基板が割れたり、残留応力による基板の反りが発生するなどの不具合が生じる。また接合部の熱伝導率が低い場合もあり、これが冷却効果を劣化させる原因ともなる。また多くの加熱工程は、エネルギー消費量の問題のほか、煩雑さもあり、コスト高の要因となっている。
【0010】
またPVDやCVDなどで金属板の表面にセラミックス層を形成することも可能であるが、高温プロセスを必要とするだけでなく、厚い膜厚のセラミックス層を作製するのが困難である。また溶射法であれば膜厚を厚くできるが、膜質が比較的ポーラスで緻密質より熱伝導性が劣ることや、高温プロセスが必要であることが問題である。
【0011】
更に最近では、金属やセラミックス等の超微粒子をガス攪拌にてエアロゾル化し、微小なノズルを通して加速せしめ、基材表面に超微粒子の圧粉体層を形成させ、これを加熱して焼成させることにより被膜を形成するというガスデポジション法(加集誠一郎:金属 1989年1月号)や、微粒子を帯電させ電場勾配を用いて加速せしめ、この後はガスデポジション法と同様の基本原理で被膜形成を行う静電微粒子コーティング法(井川 他:昭和52年度精密機械学会秋季大会学術講演会前刷)も知られているが、何れも加熱プロセスを伴うため、前記したように基板の割れや反りを発生しやすい。
【0012】
また、上記のガスデポジション法あるいは静電微粒子コーティング法を改良した先行技術として、特開平8−81774号公報、特開平10−202171号公報、特開平11−21677号公報、特開平11−330577号公報或いは特開2000−212766号公報に開示されるものが知られている。
しかしながら、これらの先行技術には放熱回路基板への適用が示唆されておらず、且つ回路基板として要求される密着性、絶縁性を有し且つ所定の厚さのものを得ることはできない。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の知見に基づいてなされた。
即ち、延展性を持たない脆性材料(セラミックス)に機械的衝撃力を付加すると、結晶子同士の界面などの劈開面に沿って結晶格子のずれを生じたり、あるいは破砕される。そして、これらの現象が起こると、ずれ面や破面には、もともと内部に存在し別の原子と結合していた原子が剥き出しの状態となった新生面が形成される。この新生面の原子一層の部分は、もともと安定した原子結合状態から外力により強制的に不安定な表面状態に晒され、表面エネルギーが高い状態となる。この活性面が隣接した脆性材料表面や同じく隣接した脆性材料の新生面あるいは基板表面と接合して安定状態に移行する。外部からの連続した機械的衝撃力の付加は、この現象を継続的に発生させ、微粒子の変形、破砕などの繰り返しにより接合の進展、緻密化が行われ、脆性材料構造物が形成される。
【0014】
そして、更に上記機械的衝撃を搬送ガスにて脆性材料を基材に衝突させるようにした本発明の一態様を微粒子ビーム堆積法あるいはエアロゾルデポジション法と称する。
この微粒子ビーム堆積法は、ガスデポジション法より発展してきた手法であり、金属などの基材上に脆性材料の多結晶構造物をダイレクトに形成させる方法である。この手法は、脆性材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを搬送し、高速で基材表面に噴射して衝突させ、微粒子を破砕・変形せしめ、基板との界面にアンカー層を形成して接合させるとともに、破砕した断片粒子同士を接合させることにより、基材との密着性が良好で強度の大きい構造物を得ることができる。
また、この微粒子ビーム堆積法は、ガス中に分散させる脆性材料を変えることにより、容易に構造物の形成範囲を調整することができる。
【0015】
上記の知見から発展した本発明に係る放熱回路基板は、ヒートシンクとして作用する金属放熱基板に前記セラミックス構造物が接着層を介することなく直接接合されており、また、前記セラミックス構造物の上面は、熱伝導率が35W/(m・K)以上の高熱伝導部と、この高熱伝導部より金属濡れ性が良く熱伝導率が35W/(m・K)未満の低熱伝導部とから構成される。
【0016】
ここで、接着層を介することなく直接接合されているとは、接合面に、接着剤層,ロウ付け層,焼成によるセラミック構成元素の拡散層、の何れも介在していないことを言う。
また、ここで言う金属濡れ性の良いものとは、1988年プリント配線板試験方法JIS−C5012規格の機械的性能試験(導体の引き剥がし強さ)に準じた試験にて、Ti、Ni、Cu、Cr、Ag、Pt,Au何れの金属材料を用いた場合であっても銅箔との密着が1.0kgf/cm以上ものを示し、金属濡れ性の悪いものとしては、Ti、Ni、Cu、Cr、Ag、Pt,Au何れかの金属材料を用いた場合の銅箔との密着が1.0Kgf/cm未満のを示すものである。
【0017】
セラミック構造物の材質としては、高熱伝導部は窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、ダイヤモンドの何れかが主成分であり、低熱伝導部としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウムの何れかが主成分とすることができる。
これらは表1に示すように、何れも絶縁性を確保するために必要となる耐電圧が1kV/mm以上であり、しかも、非酸化物系材料である窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、ダイヤモンドは熱伝導率としては35W/(m・K)であるため、この高熱伝導部は放熱回路基板として良好な熱伝導性を確保することができ、一方、酸化物系材料である酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウムは熱伝導率は35W/(m・K)未満ではあるが、金属濡れ性が良好であり、この低熱伝導部は、配線部との密着力を確保することができる。
【0018】
【表1】
【0019】
本発明にあっては、前記セラミックス構造物が、多結晶の脆性材料からなり、結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在せず、前記セラミックス基板と前記金属材料との界面は、前記セラミックス構造物が前記金属放熱材料に食い込むアンカー部となっている。
また、このセラミックス基板に導電性配線が直接形成されている。
【0020】
前記セラミックス構造物の厚さは1〜1000μmが放熱回路基板として適当であり、また緻密度は95%以上であることが好ましい。
すなわち、本願では厚さ1μmレベルの薄膜品が焼成せずに作成でき、そのために回路基板をより小型化することが可能となった。また、1000μmレベルの緻密な厚膜も作成可能となり、このセラミックス構造物に導電性配線を多層に形成することにより大面積の回路設計をも可能とした。
【0021】
また、本発明に係る放熱回路基板の製造方法は、熱伝導率が35W/(m・K)以上の高熱伝導性のセラミック脆性材料微粒子を金属放熱基板表面の一部に高速で衝突させると共に、金属放熱基板の他部に前記高熱伝導性のセラミック脆性材料微粒子より金属濡れ性が良く熱伝導率が35W/(m・K)未満のセラミック脆性材料微粒子を高速で衝突させ、この衝突によって前記セラミック脆性材料微粒子を変形または破砕し、この変形または破砕にて生じた活性な新生面を介して微粒子同士を再結合せしめることで、前記金属放熱基板表面に前記脆性材料微粒子が食い込むアンカー部を形成させ、このアンカー部の上にセラミックス層を形成するようにした。
【0022】
また、本発明に係わる別の放熱回路基板の製造方法は、熱伝導率が35W/(m・K)以上の高熱伝導性のセラミック脆性材料微粒子を金属放熱基板表面に高速で衝突させ、この衝突によって前記脆性材料微粒子を変形または破砕し、この変形または破砕にて生じた活性な新生面を介して微粒子同士を再結合せしめることで、前記金属放熱基板表面に前記脆性材料微粒子が食い込むアンカー部を形成させ、このアンカー部の上に高熱伝導のセラミックス層を形成し、このセラミック層の一部へ前記高熱伝導性のセラミック脆性材料微粒子より金属濡れ性が良く熱伝導率が35W/(m・K)未満のセラミック脆性材料微粒子を高速で衝突させ、この衝突によって2種類の脆性材料微粒子を変形または破砕し、この変形または破砕によって生じた活性な新生面を介して2種類の微粒子同士を再結合せしめることで、高熱伝導のセラミック層の一部に低熱伝導のセラミック層を形成するようにした。
なお、ここでいうセラミック脆性材料微粒子の熱伝導率とは、このセラミック脆性材料微粒子と同一材料からなる板状のセラミック焼成体の熱伝導率を測定した結果である。
【0023】
その剥離強度に優れ、且つ必要な厚さのセラミックス構造物を得るには、脆性材料微粒子はあらかじめ内部歪が印加されていることが好ましい。微粒子に歪を与える粉砕処理は、微粒子にかかる粉砕のための衝撃を大きく与えることのできる粉砕手段を用いるのが好ましい。微粒子に比較的一様に大きな歪を付与することができるからである。このような粉砕手段としては、セラミックスの粉砕処理によく用いられるボールミルに比べて大きな重力加速度を与えることの出来る振動ミルやアトライタ、遊星ミルを用いるのが好ましく、とりわけボールミルに比べて格段に大きな重力加速度を与えることの出来る遊星ミルを用いることが最も好ましい。微粒子の状態に着目すれば、クラックは内部歪をキャンセルするものであるので、最も好ましいのは、クラックが生じる直前まで内部歪が高まっている微粒子ということになる。
【0024】
また、本発明方法の特徴は、セラミックス構造物の形成を室温環境下で行うことであり、脆性材料微粒子を高速で衝突させる手段が、脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを、高速で前記金属放熱基板に向けて噴射することにより、異種のセラミックス構造物を厚さ1μmレベルの薄膜で焼成せずに、放熱性のある金属材料表面上に作製できるために、部分的に所望の特性を持たせたセラミックス絶縁構造物を作ることができることである。
このために、本願で作製した基板は、最も発熱する部分を高熱伝導性セラミックスで絶縁し、CPU等の部品のハンダ付けが必要になる電極付き基板においては、電極用金属材料との濡れ性の良い低熱伝導性セラミックスを放電金属材料上に室温環境下で、密着性が良好な構造物が形成でき、かつ、その構造物の耐電圧性が高いために、その厚みも薄く構成できる。これによって、本願で作製した放熱基板は、放熱特性・電子部品搭載性に優れた高速演算処理CPU等が搭載できるハイパワーモジュールの基板等への応用が期待でき、更なる小型化が可能である。
【0025】
ここで、本発明を理解する上で重要となる語句の解釈を以下に示す。多結晶とは、本件では結晶子が接合・集積してなる構造体を指す。結晶子は実質的にそれひとつで結晶を構成しその径は通常5nm以上である。ただし、微粒子が破砕されずに脆性材料構造物中に取り込まれるなどの場合がまれに生じるが、実質的には多結晶である。界面とは、本件では結晶子同士の境界を構成する領域を指す。粒界層とは、界面あるいは焼結体でいう粒界に位置するある厚み(通常数nm〜数μm)を持つ層で、通常結晶粒内の結晶構造とは異なるアモルファス構造をとり、また場合によっては不純物の偏析を伴う。アンカー部とは、本件の場合には、基材と脆性材料構造物の界面に形成された凹凸を指し、特に、予め基材に凹凸を形成させるのではなく、脆性材料構造物形成時に、元の基材の表面精度を変化させて形成される凹凸のことを指す。内部歪とは、原料微粒子に含まれる格子歪のことで、X線回折測定におけるHall法を用いて算出される値であり、微粒子を十分にアニールした標準物質を基準として、そのずれを百分率表示した値である。
【0026】
【発明の実施の態様】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
図1、2に実施の一態様としての放熱回路基板1、2の断面図を示す。図3にこの実施の態様を達成するために使用する作製装置20(エアロゾルデポジション装置)の模式図を示す。放熱回路基板1は、放熱金属材料基板10上に高熱伝導部セラミックス構造物層11、低熱伝導部セラミックス構造物層12が所望の位置に直接連続的に接合された構造からなる放熱回路基板である。放熱回路基板2としては、まず、放熱金属材料基板10上に、高熱伝導部セラミックス構造物層11を形成し、続いて、その上に、低熱伝導部セラミックス構造物層12が所望の位置に連続的に直接接合形成された積層型の構造を有する放熱回路基板である。
ここでいう高熱伝導部セラミックス構造物としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、あるいはダイヤモンドなどを少なくとも1種類以上主成分とすることを特徴とし、低熱伝導部のセラミックス構造物としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウムなどを少なくとも1種類以上主成分とすることを特徴とする。
【0027】
作製装置20は、窒素ガスボンベ201がガス搬送管202を介して、あらかじめミル解砕により歪みを印加した高伝導性セラミックス微粒子を内蔵するエアロゾル発生器203、低伝導性セラミックス微粒子を内蔵するエアロゾル発生器204に接続し、エアロゾル搬送管205、206を介して形成室207内に設置された、なお、それぞれのエアロゾル搬送管には、エアロゾルの発生を制御できるようにバルブ212、213が設けられ、縦0.4mm横10mmの開口を持つノズル208、209に接続されている。ノズル208、209の先にはXYステージ210に設置された放熱金属材料基板10が配置される。形成室207は真空ポンプ211に接続されている。放熱金属材料基板10は表面が平面に加工されている。
【0028】
以上の構成の作製装置20による放熱回路基板1の作製手順を次に述べる。まずは、高熱伝導部セラミックス構造物層11を放熱金属材料基板10に形成するために、窒素ガスボンベ201を開栓し、窒素ガスは搬送管202を通じてエアロゾル発生器203に導入させ、窒化アルミニウム微粒子を含むエアロゾルを発生させる。次に、バルブ212が開けられ、発生したエアロゾルは搬送管205を通じて、成膜室207に設置されたノズル208へと送られ、ノズル208の開口より高速で噴出される。このとき真空ポンプ211の作動により、形成室207内は数kPaの減圧環境下に置かれている。
【0029】
ノズル208の開口の先に配置された放熱金属材料基板10に高熱伝導性セラミックス微粒子が高速で衝突し、粒子はその運動エネルギーにより変形、破砕を起こして、一部は放熱金属材料基板10に食い込みアンカー層を形成し、一部はアンカー層の上に破砕して形成された微細断片粒子同士がその新生面を介して接合し、これを繰り返して放熱金属材料基板10上に緻密質の高熱伝導部セラミックス構造物層11を形成していく。放熱金属材料基板10はXYステージ210により揺動されており、所望の面積に低熱伝導部セラミックス構造物層12は形成され、放熱金属材料基板10上に約10μmの高熱伝導部セラミックス構造物層11(窒化アルミニウム)を得た。これらのプロセスはすべて室温下で行われた。
【0030】
続いて、ハンダ塗れ性の良い低熱伝導部セラミックス構造物層12を形成するために、一旦、高伝導性セラミックス微粒子を含むエアロゾルの発生を止めるために、バルブ212が閉じる。次に、低伝導性セラミックス微粒子を含むエアロゾルを発生させるためには、低伝導性セラミックス微粒子が入ったエアロゾル発生器204に、窒素ガスが搬送管202を介して導入させ、低伝導性セラミックス微粒子を含むエアロゾルを発生させ、開かれたバルブ213を通じて、発生した低伝導性セラミックスエアロゾルは搬送管206を通って、成膜室207に設置されたノズル209へと送られる。ノズル209の開口から噴射されるエアロゾルは、真空ポンプ211の作動により高速で噴射され、形成室207内は数kPaの減圧環境下に置かれている。
【0031】
放熱金属材料基板10はXYステージ210により揺動されており、所望の部分に所望の面積にて低熱伝導部セラミックス構造物層12は形成することができる。たとえば、ノズル209の開口の先に配置された高熱伝導部セラミックス構造物層11が形成された放熱金属材料基板10に、高熱伝導部セラミックス構造物層11が形成されていない部分を目がけて、低熱伝導部セラミックス構造物層12を形成することが可能である。また、その際には、正確なパターンニング必要であれば、ノズルと成膜を行う放熱金属材料基板の間に金属遮蔽板13を設けて、部分的に脆性材料を形成させる方法も有効である。さらに、前記脆性材料微粒子を高速で衝突させる手段として、エアロゾルを噴射させるノズルを少なくとも1本以上用いて、同一チャンバー内にて基板を形成する方法においては、スピーディーに効率良くセラミックス構造物を形成できるので、非常に有効的な方法である。
【0032】
これらの形成のメカニズムについては、上記に示したのと同じように、低伝導性セラミックス微粒子が高速で衝突し、粒子はその運動エネルギーにより変形、破砕を起こして、一部は銅基板10に食い込みアンカー層を形成し、一部はアンカー層の上に破砕して形成された微細断片粒子同士がその新生面を介して接合し、これを繰り返して放熱金属材料基板10上に緻密質の低熱伝導部セラミックス構造物層12を形成していく。これらのプロセスもまた、すべて室温下で行われる。
【0033】
本出願の製造方法においては、XYステージ210を使うことによって、成膜した部分、しない部分等を目がけた部分的な成膜体が可能であるために、上記手順に従って作製しても、図2に示したように積層型の基板を作製することができる。
【0034】
このようにして得られた放熱回路基板1は、放熱金属材料基板10と高熱伝導部セラミックス構造物層11及び低熱伝導部セラミックス構造物層12が強固に接着しており、室温で形成されているため、金属とセラミック層間に発生する残留応力も少ない。形成後の表面はRa=0.18μm程度の表面荒さを保有しているが、この表面は研磨しても良いし、後工程での電極との密着性を考慮すれば、このまま用いることも好適である。
【0035】
また、本手法にて得られたセラミックス構造物は緻密質であるために絶縁破壊電圧値が100V/μm以上の高熱伝導部セラミックス構造物層11(窒化アルミニウム層)及び低熱伝導部セラミックス構造物層12(酸化アルミニウム層)が約10μm厚みで形成されているため、放熱金属材料基板10をグランドとしても、1000V以上の耐電圧を有し、回路基板等への応用は全く問題がない。
【0036】
図4は放熱回路基板1を用い、ICチップをはめ込んでパッケージ化した多層配線基板3の断面図である。図5は多層配線基板3のセラミックス基板部分の形成に用いた作製装置21の一部を示した模式図であり、作製装置20に準じているが、ノズル209に3次元構造形成装置40が設置され、プログラムコントローラ41につながっている。
【0037】
図6は3次元構造形成装置の斜視図であり、ノズルの開口の先に届く、可動式の、幅500μmのピンを多数並べた構造となっており、XYステージと同期しつつプログラム稼動する。
【0038】
多層配線基板3の構成は、放熱金属基板10の表面に高熱伝導部セラミックス構造物層11と低熱伝導部セラミックス構造物層12が配置され、その表面にあるパターンを描く導電性配線111が配置され、その上に低熱伝導部セラミックス構造物層14、15が配置される。この層間にも導電性配線111が通っている。すなわち導電性配線は3次元の立体配線構造をとっている。また、低熱伝導部セラミックス構造物層14、15はスルーホール16が各所に設置されており、導電性配線111がここから覗いている。高熱伝導部セラミックス構造物層11上に、またICチップ17が接して設置されており、導電性配線111とワイヤーボンディング18によって接続されている。
【0039】
この多層配線基板3の作製方法を次に述べる。放熱金属材料基板10を作製装置21内のXYステージ210に設置し、まずICチップの放熱特性を向上させるために高熱伝導部セラミックス構造物層11をXYステージの揺動によって、所望の大きさで、所望な場所の放熱金属材料基板10の表面上に厚み約10μmで形成する。次に、導電性配線との配線が必要になる部分については、ハンダ付けが必要となるために、金属濡れ性が良好な低熱伝導部セラミックス構造物層12を、所望の場所に所望の大きさで放熱金属材料基板10及び高熱伝導部セラミックス構造物層11上に形成する。
上記に示した放熱金属材料基板10上に高熱伝導部セラミックス構造物層11と低熱伝導部セラミックス構造物層12を形成した放熱回路基板1上に図には示さないマスキングを施し、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、スクリーン印刷法等によりアルミニウム、クロム、銀、金、ニッケル等で配線パターンを形成した後、作製装置21内のXYステージ210に設置する。
上記と同様の操作で低熱伝導部セラミックス構造物層14を厚さ10μmで形成するが、形成中3次元構造物形成装置40のピンがプログラムによりエアロゾルの噴射(粉体ビーム)の一部をカットして、放熱回路基板1まで届くのを阻止し、カット部分には低熱伝導部セラミックス構造物層を形成しないマスクの役割を果たす。従ってこれが約500μm×500μmの正方形状のスルーホールとなり、導電性配線111をむき出しのままの状態に保つ。また中央部はICチップを設置するためのキャビティ部分も3次元構造物形成装置40の働きにより、層が形成されない。なお、ピンに粉体ビームが当たる位置は、粉体ビームの直進方向に対し、45°の傾きを持っているため、ビームはここで直角にそろって進路変更をするため、反射するビームが、直進する粉体ビームを散乱させたり、放熱回路基板1に悪影響を及ぼすことはない。
【0040】
低熱伝導部セラミックス構造物層15を形成後に作製装置21より取り出し、再び導電性配線111を配線して作製装置21内に設置し、同様の操作を行って低熱伝導部セラミックス構造物層15を形成させる。このようにして作製した多層配線基板3にICチップ17を接着させ、ワイヤーボンディング18で導電性配線111と導通させて、ICパッケージとする。
【0041】
【実施例】
(実施例1)
実施例1として、本発明図3とほぼ同様の作製装置を用いてアルミニウムおよびアルミナ基板上に酸化アルミニウムの構造物を10μmの厚みで形成した。原料粉末としては平均粒径0.5μm、純度99%upの酸化アルミニウム微粒子を用い、搬送ガスとして窒素を使用し、流量を5L/minとした。
表2に、基材上に本発明法による酸化アルミナセラミックス構造物の基材との密着力強度を測定した結果を示す。比較例として、各種基材上に比較的容易に厚膜でセラミックス構造物を形成できるプラズマ溶射法にて酸化アルミニウムを約100μmの厚みで作製した結果も示した。
【0042】
【表2】
【0043】
なお、密着力強度の評価方法としては、図7に示す引き倒し試験法によって行った。引き倒し試験法としては、基材10上に形成されたセラミックス構造物11に、φ8mmのステンレス製引き倒し棒50を、エポキシ樹脂51で接着し、50℃の乾燥機中にて2時間の加熱硬化を行った後、プッシュプルバネばかり52で、引き倒し棒50を側面方向から引っ張り、セラミックス構造物11が、基材10から剥離した時の強度を算出し、次式(1)に代入して密着力Fを測定した。
密着力 :F=[4/(πr3)]×h×f (1)
h:側面から引っ張った基材からの高さ
r:引っ張り棒の半径
f:剥離強度
【0044】
成膜された本発明によるエアロゾルデポジション法では、基材が金属材料については70Mpa以上と大きな値を示し、アルミナ基材においても57Mpaと大きな値を示した。それぞれの値は、比較例で示したプラズマ溶射法と比較にならない値であることから、本発明によるセラミックス構造物の作製方法は、特開平10−134938号公報に記載の高熱伝導性セラミックスと低熱伝導性セラミックス及び金属とセラミックス材料といった異種材料間の接合界面で問題となる熱膨張の差や熱歪による割れを抑制することができることから、異種材料を接合し、熱が加わった用途においては、充分適応できる技術であることが明らかになった。
【0045】
(実施例2)
表3に、本発明におけるセラミックス構造物の耐電圧特性を評価した結果を示す。比較例として、各種作製法によって作製したセラミックス構造物の耐電圧結果も示した。耐電圧の評価方法としては、各種作製方法で作製したセラミックス構造物を、基材ごと針電極の間に挟み込み、電圧を両極間に掛け、絶縁破壊した電圧をそれぞれのセラミックス構造物の厚み(μm)で割った値にて表示した。
【0046】
【表3】
【0047】
本発明におけるセラミックス構造物は、本発明図3とほぼ同様の作製装置を用いてアルミニウム基板上に酸化アルミニウムの構造物を10μmの厚みで形成した。原料粉末としては平均粒径0.5μm、純度99%upの酸化アルミニウム微粒子を用い、搬送ガスとして窒素を使用し、流量を5L/minとした。比較例として、各種基材上に比較的容易に厚膜でセラミックス構造物を形成できるプラズマ溶射法にて酸化アルミニウムを約100μmの厚みで作製した結果及び1700℃の高温焼成にて作製したアルミナ焼成体を厚さ500μmまで研削し作製した結果も示した。
本発明におけるセラミックス構造物は、他の作製方法で作製したものに対して、かなり高い耐電圧特性を示すことから、充分薄い絶縁物を金属放熱基板上に形成できることが期待される。なお,絶縁耐圧が高い薄い絶縁物の形成は、充分な放熱特性が期待できることから、本発明法は、放熱用回路基板作製として最適であると考えられた。
【0048】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、部分的に高熱伝導性の絶縁材料を有する回路基板を高温プロセスを使用しないで薄く作製できるため、高放熱特性を有しハンダ付け作業性に富んだ回路基板が、低コスト、低消費エネルギーで作製できる。
また、セラミックス基板と裏面側の金属材料とが直接接合しているので、熱伝導率の低い接着層による冷却効率の低下がない。
また、セラミックス基板を極力薄くできるので、冷却効率が向上し、スルーホール内面に導電性コーティングをする必要がない。
また、緻密質のセラミックス基板が得られるので、導電性配線をめっき処理やペースト塗布で施す場合に余剰の成分がポアに残留して短絡するなどの危険性がない。
更に導電性配線をセラミックス基板内(厚さ内)に極力納めることができ、配線の劣化やゴミによる短絡などの危険性がなく、回路の高密度化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子回路基板の縦断面図
【図2】本発明に係る電子回路基板の別の縦断面図
【図3】本発明に係る電子回路基板の製造装置の一例を示す図
【図4】別実施形態に係る電子回路基板の縦断面図
【図5】別実施形態に係る電子回路基板の製造装置の一例を示す図
【図6】3次元構造形成装置の斜視図
【図7】密着強度測定の図
【符号の簡単な説明】
1,2…放熱回路基板、20,21…作製装置(エアロゾルデポジション装置)、10…放熱金属材料基板、11…高熱伝導部セラミックス構造物層、12,14,15…低熱伝導部セラミックス構造物層、16…スルーホール、17…ICチップ、18…ワイヤーボンディング、40…3次元構造形成装置、41…プログラムコントローラ、111…導電性配線、201…窒素ガスボンベ、202…ガス搬送管、203…エアロゾル発生器、204…エアロゾル発生器、205,206…エアロゾル搬送管、207…形成室、208,209…ノズル、210…XYステージ、211…真空ポンプ、212,213…バルブ
Claims (11)
- 金属放熱基板上面にセラミックス構造物を具備する放熱回路基板であって、金属放熱基板に前記セラミックス構造物が接着層を介することなく直接接合されており、また、前記セラミックス構造物の上面は、熱伝導率が35W/(m・K)以上の高熱伝導部と、この高熱伝導部より金属濡れ性が良く熱伝導率が35W/(m・K)未満の低熱伝導部とから構成されていることを特徴とする放熱回路基板。
- 請求項1に記載の高熱伝導部のセラミックス構造物の材質としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、ダイヤモンドの何れかが主成分であることを特徴とする放熱回路基板。
- 請求項1に記載の低熱伝導部のセラミックス構造物の材質としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウムの何れかが主成分であることを特徴とする放熱回路基板。
- 請求項1に記載の放熱回路基板において、前記セラミックス構造物が、多結晶の脆性材料からなり、結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在せず、このセラミックス構造物と前記金属放熱基板との界面は、前記脆性材料が前記金属材料に食い込むアンカー部となっていることを特徴とする放熱回路基板。
- 請求項1乃至請求項4何れかに記載の放熱回路基板において、前記セラミックス構造物に導電性配線が直接形成されていることを特徴とする放熱回路基板。
- 請求項1乃至請求項5何れかに記載の放熱回路基板において、前記セラミックス構造物の厚さが1〜1000μmであることを特徴とする放熱回路基板。
- 請求項1乃至請求項6何れに記載の放熱回路基板において、前記セラミックス構造物の密度が相対密度95%以上であることを特徴とする放熱回路基板。
- 熱伝導率が35W/(m・K)以上の高熱伝導性のセラミック脆性材料微粒子を金属放熱基板表面の一部に高速で衝突させると共に、金属放熱基板の他部に前記高熱伝導性のセラミック脆性材料微粒子より金属濡れ性が良く熱伝導率が35W/(m・K)未満のセラミック脆性材料微粒子を高速で衝突させ、この衝突によって前記セラミック脆性材料微粒子を変形または破砕し、この変形または破砕にて生じた活性な新生面を介して微粒子同士を再結合せしめることで、前記金属放熱基板表面に前記脆性材料微粒子が食い込むアンカー部を形成させ、このアンカー部の上にセラミックス層を形成することを特徴とする放熱回路基板の形成方法。
- 熱伝導率が35W/(m・K)以上の高熱伝導性のセラミック脆性材料微粒子を金属放熱基板表面に高速で衝突させ、この衝突によって前記脆性材料微粒子を変形または破砕し、この変形または破砕にて生じた活性な新生面を介して微粒子同士を再結合せしめることで、前記金属放熱基板表面に前記脆性材料微粒子が食い込むアンカー部を形成させ、このアンカー部の上に高熱伝導のセラミックス層を形成し、このセラミック層の一部へ前記高熱伝導性のセラミック脆性材料微粒子より金属濡れ性が良く熱伝導率が35W/(m・K)未満のセラミック脆性材料微粒子を高速で衝突させ、この衝突によって2種類の脆性材料微粒子を変形または破砕し、この変形または破砕によって生じた活性な新生面を介して2種類の微粒子同士を再結合せしめることで、高熱伝導のセラミック層の一部に低熱伝導のセラミック層を形成することを特徴とする放熱回路基板の形成方法。
- 請求項8または請求項9に記載の放熱回路基板の形成方法において、前記セラミックス層の形成が室温環境下で行われることを特徴とする放熱回路基板の形成方法。
- 請求項10に記載の放熱回路基板の形成方法において、前記脆性材料微粒子を高速で衝突させる手段は、脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを、高速で前記金属材料に向けて噴射することを特徴とした放熱回路基板の形成方法。
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