JP2004041070A - 光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法であって、
(I)一般式(1)
【化1】
(式中、Xはシアノメチル基等を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)
【化2】
(式中、XおよびRは前記と同じ意味を表し、*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する第一工程、
(II)前記第一工程後、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル等を不斉水解する第二工程、及び
(III)前記第ニ工程後、反応液から不斉水解しない光学異性体
、あるいは、反応液から不斉水解する光学異性体から生じた
光学活性3−ヒドロキシブタン酸又はその誘導体を回収する第三工程
を有することを特徴とする製造方法等が提供可能になった。
【選択図】 なし
【解決手段】光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法であって、
(I)一般式(1)
【化1】
(式中、Xはシアノメチル基等を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)
【化2】
(式中、XおよびRは前記と同じ意味を表し、*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する第一工程、
(II)前記第一工程後、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル等を不斉水解する第二工程、及び
(III)前記第ニ工程後、反応液から不斉水解しない光学異性体
、あるいは、反応液から不斉水解する光学異性体から生じた
光学活性3−ヒドロキシブタン酸又はその誘導体を回収する第三工程
を有することを特徴とする製造方法等が提供可能になった。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
3−位にヒドロキシ基を持つブタン酸誘導体は医薬中間体として有用である。例えば、特許第3241723号に記載されるように、抗高脂血症剤等の鍵中間体として重要性である。上記の誘導体を効率的に合成するには、光学純度の高い3−ヒドロキシブタン酸系化合物が極めて有用である。
このような光学純度の高い光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を製造する簡便な方法は知られていなかった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者等は、光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法について鋭意検討した結果、3−オキソブタン酸エステルを原料とし、かつ、不斉還元反応及び不斉加水分解反応の両者反応を前記順序で組み合わせることにより、目的とする光学純度の高い光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を簡便に製造できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法であって、
(I)一般式(1)
【化5】
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基、あるいは、ハロゲノメチル基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)
【化6】
(式中、XおよびRは前記と同じ意味を表し、*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する第一工程、
(II)前記第一工程後、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体を不斉水解する第二工程、及び
(III)前記第ニ工程後、反応液から不斉水解しない光学異性体、あるいは、反応液から不斉水解する光学異性体から生じた光学活性3−ヒドロキシブタン酸又はその誘導体を回収する第三工程
を有することを特徴とする製造方法;
2.第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
3.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物が、前記能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
4.形質転換体が、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが導入されてなる形質転換体であることを特徴とする前項3記載の製造方法;
5.形質転換体が大腸菌であることを特徴とする前項3又は4記載の製造方法;
6.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される−3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2又は4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2又は4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4−置換−3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性4−置換−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
7.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
8.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
9.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
10.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
11.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
12.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
13.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物の由来が、コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
14.第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として金属触媒を、水素雰囲気下において一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
15.金属触媒が、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体であることを特徴とする前項14記載の製造方法;
16.ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体における光学活性ホスフィンが、(R)−BINAP又は(S)−BINAPであることを特徴とする前項15記載の製造方法;
17.第二工程における不斉水解のための反応が、触媒として一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又は前記誘導体に作用させ、これを不斉水解する反応であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
18.(1)第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であって、かつ、(2)第二工程における不斉水解のための反応が、触媒として一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又は前記誘導体に作用させ、これを不斉水解する反応であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
19.エステル加水分解酵素が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体の(S)体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素であることを特徴とする前項17記載の製造方法;
20.エステル加水分解酵素が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体の(R)体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素であることを特徴とする前項17記載の製造方法;
21.一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物が、前記能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞であることを特徴とする前項17記載の製造方法;
22.形質転換体が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが導入されてなる形質転換体であることを特徴とする前項21記載の製造方法;
23.形質転換体が大腸菌であることを特徴とする前項21又は22記載の製造方法;
24.一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項21記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号5、7,9で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号5、7,9で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号6、8,10で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号6、8,10で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)クロモバクテリウム属、アルスロバクタ−属又はアスペルギルス属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列
25.一般式(1)
【化7】
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基、あるいは、ハロゲノメチル基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される3−オキソブタン酸エステルから光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を製造するための触媒としての、前記一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元触媒と一般式(2)
【化8】
(式中、XおよびRは前記と同じ意味を表し、*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解触媒との両触媒の使用;
等を提供するものである。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明製造方法では、不斉還元反応(即ち、第一工程)及び不斉加水分解反応(即ち、第二工程)の両者反応を前記順序で組み合わせて用いることが重要である。
【0005】
まず、本発明製造方法の第一工程について説明する。
当該工程において用いられる原料である、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルは、例えば、Synthesis,(1995)1014等に記載されるように、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸エステルは4−クロロ−3−オキソブタン酸エステルに水素化ナトリウム存在下、ベンジルアルコールを反応させることにより得ることができる。また例えば、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸エステルは4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチルに酢酸カリウムを反応させることにより得ることができる。これらの方法に限定されるわけではなく、他の方法により得られたものでも使用することができる。
【0006】
一般式(1)におけるRで示される置換されてもよい炭素数1〜4の低級アルキル基としては、具体的には、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、等が例示される。
一般式(1)におけるXで示される置換基のうち、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基としては、例えば、4−メチルベンジルオキシメチル、3−クロルベンジルオキシメチル、4−シアノベンジルオキシメチル、3−ニトロベンジルオキシメチル等が例示され、置換されていてもよいアルコキシメチル基としては、例えば、クロロメチルオキシメチル、メチルオキシエチルオキシメチル等が例示され、置換されていてもよいアシルオキシメチル基としては、クロロアセチルオキシメチル、トリフルオロアセチルオキシメチル基等が例示され、またハロゲノメチル基としては、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロルメチル、ジクロルメチル、トリクロルメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル等が例示される。
【0007】
一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルとして、具体的には、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸メチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸エチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸n−プロピル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸イソプロピル4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸メチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸エチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸n−プロピル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸イソプロピル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸メチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸エチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸プロピル、4−シアノ−3−オキソブタン酸イソプロピル、4−シアノ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸エチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸プロピル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸イソプロピル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸メチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸エチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸プロピル、4−クロロ−3−オキソブタン酸イソプロピル、4−クロロ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸メチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸エチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸プロピル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸一プロピル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸イソブチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸t−ブチル等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0008】
当該工程において用いられる触媒としては、例えば、(1)一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物(第一の本発明製造方法に対応している。)、(2)金属触媒(第二の本発明製造方法に対応している。)等をあげることができる。
第一の本発明製造方法における触媒としての酵素は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素である(以下、本還元酵素と記すこともある。)。このような酵素は、市販品酵素であってもよく、また本還元酵素を産生する微生物等から通常の生化学的な手法や遺伝子工学的な手法等を利用して調製することもできる。例えば、本還元酵素を産生する微生物が形質転換体である場合には、当該形質転換体としては、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが少なくとも導入されてなる形質転換体(以下、本形質転換体と記すこともある。)等をあげることができる。また、本還元酵素を産生する微生物が非形質転換体(即ち、前記能力が人為的に付与されていないにも係わらず、予め当該能力を有する微生物)である場合には、当該非形質転換体としては、後述の実施例のように、市販の微生物又は土壌などから前記能力を指標にしてスクリーニングすることにより単離された微生物等があげられる。このような微生物の例としては、コリネバクテリウム属やペニシリウム属に属する微生物等をあげることができる。
【0009】
「一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力」の具体的な例としては、例えば、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力をあげることができる。
<アミノ酸配列群>
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(a2)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b1)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(b2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c1)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(c2)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d1)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(d2)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e1)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e2)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
【0010】
本形質転換体を作製する際に用いられる、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素(即ち、本還元酵素)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本還元酵素遺伝子と記すこともある。)は、(1)天然に存在する遺伝子の中からクローニングされたものであってもよいし、(2)天然に存在する遺伝子であっても、このクローニングされた遺伝子の塩基配列において、その一部の塩基の欠失、置換又は付加が人為的に導入されてなる遺伝子(即ち、天然に存在する遺伝子を変異処理(部分変異導入法、突然変異処理等)を行ったもの)であってもよいし、(3)人為的に合成されたものであってもよい。
【0011】
ここで、前記(b)、(b1)又は(b2)にある「アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」や前記(d)、(d1)又は(d2)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAに対し相補性を有するDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列」には、例えば、配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が細胞内で受けるプロセシング、該酵素が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)、(b1)又は(b2)にある「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を見出すことのできる範囲であればよい。
また前記欠失、置換若しくは付加のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0012】
本発明において「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」には、例えば、2つの蛋白質間のアミノ酸配列に関する高い配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。また「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」には2つのDNA間の塩基配列に関する配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。
ここで「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
前記(d)、(d1)又は(d2)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)に記載される方法や、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989年、農村文化社発行)に記載されているサザンハイブリダイゼーション法等の通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(900mM NaCl、90mM クエン酸三ナトリウムを含む溶液。尚ここでは、NaCl175.3g、クエン酸三ナトリウム88.2gを含む溶液を水800mlで溶解し、10N NaClでpHを調製した後、全量を1000 mlとした溶液を20×SSCとする。)中で65℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1−6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.1×SSCで65℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0013】
本還元酵素遺伝子は、例えば、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
コリネバクテリウム・シュードジフテリティカム(Corynebacterium pseudodiphteriticum)等のコリネバクテリウム属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法に準じて染色体DNAを調製し、調製された染色体DNAを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号2で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム由来の染色体DNAを鋳型として、かつ配列番号17に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号18に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−50℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃−(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0014】
また、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)等のペニシリウム属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法)に準じてcDNAライブラリーを調製し、調製されたcDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号4で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでペニシリウム・シトリナム由来のcDNAライブラリーを鋳型として、かつ配列番号11に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号12に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号4で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−50℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃−(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0015】
本形質転換体を調製する方法としては、例えば、本還元酵素遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本還元酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるような組換プラスミド(例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域を本還元酵素遺伝子に連結して組換プラスミドを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換プラスミド)を作製し、これを宿主細胞に導入することにより作製する方法等があげられる。さらに、本還元酵素遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入する方法も利用することができる。
上記の組換プラスミドとしては、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーを持つ発現ベクターに、本還元酵素をコードする遺伝子が機能可能な形で導入されたものを好ましく挙げることができる。尚、発現ベクターとしては、各種のものが市販されている。
ここで、「機能可能な形で」とは、上記の組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本還元酵素遺伝子が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、又は、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。またコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム、ペニシリウム・シトリナム、バシラス・メガテリウムにおいて本還元酵素遺伝子の発現を制御しているプロモーターを利用してもよい。
また発現ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして容易に選択することができる。
さらなる高発現を導くことが必要な場合には、本還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボゾーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20, p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms, p202, 講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
宿主細胞としては、原核生物(例えば、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属)もしくは真核生物(例えば、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Aspergillus属)である微生物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞等を挙げることができる。例えば、本形質転換体の大量調製が容易になるという観点では、大腸菌等を好ましく挙げることができる。
本還元酵素が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coli Pulser System」 Bio−Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
宿主細胞において本還元酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドが導入された形質転換体を選抜するには、前記の如く、例えば、ベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
プラスミドが導入された宿主細胞(即ち、形質転換体)が本還元酵素遺伝子を保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2ndedition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
【0016】
本形質転換体の培養は、微生物培養、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞の培養に使用される通常の方法によって行うことができる。例えば大腸菌の場合、適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等の液体培養のいずれの方法でもよく、好ましくは、通気撹拌培養法等の液体培養を挙げることができる。
培養温度は、本形質転換体が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約10〜50℃、好ましくは約20〜40℃である。
培地のpHは約6〜8の範囲が好ましい。
培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1日〜約5日が好ましい。
本形質転換体を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001〜5%(w/v)程度である。
さらに、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと、本還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体の場合には、本還元酵素の生産を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。
【0017】
本形質転換体の取得は、例えば、前記の培養により得られた培養物を遠心分離等により形質転換体を沈殿物として回収すればよい。必要に応じて、回収前に当該形質転換体を、例えば、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)等の緩衝液等を用いて洗浄してもよい。
【0018】
第一の本発明製造方法において、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素を産生する微生物の、本発明製造方法の反応に用いる形態には、例えば、(1)培養液をそのまま用いる形態、(2)培養液の遠心分離等により菌体を集め、当該菌体を緩衝液若しくは水で洗浄することにより得られた湿菌体を用いる形態、等の培養により得られた微生物の菌体をそのまま用いる形態が含まれる。この場合には、その使用量は、例えば、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに対して通常0.01から200重量倍程度、好ましくは0.1〜50重量倍程度である。また、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素あるいは当該酵素又は当該酵素を産生する微生物の処理物の、本発明製造方法の反応に用いる形態には、例えば、培養液の遠心分離等により菌体を集め、当該菌体を緩衝液若しくは水で洗浄した湿菌体を、(1)有機溶媒(アセトン、エタノール等)処理することにより得られたものを用いる形態や(2)凍結乾燥処理することにより得られたものを用いる形態や(3)アルカリ処理することにより得られたものを用いる形態や(4)菌体を物理的に又は酵素的に破砕することにより得られたものを用いる形態、さらには、これらのものを公知の方法により固定化処理することにより得られたものを用いる形態も含まれる。この場合には、その使用量は、例えば、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに対して通常0.001から2重量倍程度、好ましくは0.02〜0.5重量倍程度である。
【0019】
第一の本発明製造方法において用いられる一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物のうち、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞が好ましく使用される。
【0020】
本形質転換体から、その死菌化細胞を下記の方法により調製することもできる。
死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、カルボニル基、シアン及び抗生物質)をあげることができる。尚、これらの殺菌法のうちできるだけ本還元酵素の酵素活性を失活させず、かつ反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理方法を各種の反応条件に応じて適宜選択することがよい。
【0021】
このようにして調製された形質転換体又はその死菌化細胞は、例えば、凍結乾燥細胞、有機溶媒処理細胞、乾燥細胞等の形態、あるいは、固定化された形態(固定化物)で利用してもよい。
【0022】
固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に本形質転換体又はその死菌化細胞を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本形質転換体又はその死菌化細胞を閉じ込める方法)が挙げられる。
【0023】
続いて、第一の本発明製造方法の第一工程における不斉還元反応について説明する。
第一の本発明製造方法の第一工程において一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を作用させることによって達成される。
当該反応は、通常、水の存在下で行われる。水は緩衝液の形態であってもよく、この場合に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
尚、緩衝液を溶媒として用いる場合、その量は一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステル1重量部に対して、通常、1〜300重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
当該反応に際しては、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0024】
反応温度としては、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素(即ち、本還元酵素)又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物に含まれた本還元酵素の安定性、反応速度の点から0〜70℃程度をあげることができ、好ましくは約10〜40℃があげられる。
反応pHとしては、反応が進行する範囲内で適宜変化させることができるが、例えば、5〜8をあげることができる。
【0025】
反応は、水の他に有機溶媒の共存下に行うこともできる。この場合の有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、キ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類、t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトン等のカルボニル基類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。
反応に使用する有機溶媒の量は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに対して、通常、100重量倍以下であり、好ましくは70重量倍以下である。
【0026】
反応は、例えば、NADH、NADPHのような補酵素を加えて通常行うことがよい。
反応に用いられる補酵素の量は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに対して、通常、0.5重量倍以下、好ましくは0.1重量倍以下である。
【0027】
さらに本還元酵素が依存する補酵素を再生するための共役系反応を組み合わせて用いることにより、当該補酵素の使用量を大幅に削減することができる。当該補酵素を再生する能力を有する酵素としては、例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素又は有機脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等が挙げられる。具体的には、グルコース脱水素酵素を精製酵素として用いる場合には、その使用量は、基質に対して通常、0.1〜10重量%である。また、グルコースの使用量は、基質に対して通常、0.1〜10モル当量である。
また、上記のような補酵素を再生する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子と本還元酵素遺伝子とを同時に宿主細胞に導入してなる形質転換体を用いて不斉還元反応及び上記の共役系反応の両者を行うこともできる。
反応はさらに、必要に応じて、グルコース、シュークロース、フルクトース等の糖類、エタノール等のアルコール類、界面活性剤等を加えて行うこともできる。
【0028】
不斉還元反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜10日間、好ましくは30分間〜4日間、より好ましくは0.5時間から10時間の範囲をあげることができる。
【0029】
当該反応終了後は、触媒として酵素や微生物等を使用して化合物を製造する方法において通常用いられる化合物の回収方法により目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。必要に応じて反応液を濾過したり、又は遠心分離等の処理により不溶物を除去した後に前記抽出操作を行なえばよい。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー等によりさらに精製することができる。
また、上記の不斉還元反応が終了した後、生成した一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルを単離することなく、続く不斉加水分解反応に用いることもできる。
【0030】
第ニの本発明製造方法の第一工程における不斉還元反応で用いられる金属触媒としては、例えば、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体、光学活性酒石酸−ラネーニッケル錯体等をあげることができる。さらに、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体における光学活性ホスフィンとしては、(R)−BINAP又は(S)−BINAP等があげられる。
【0031】
第ニの本発明製造方法の第一工程における不斉還元反応における水素雰囲気下としては、例えば、水素カス圧5〜100kg/cm2(0.5〜10MPa)のような水素ガス加圧下等をあげることができる。
【0032】
当該反応は、通常、有機溶媒の存在下で行われる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のプロトン性溶媒単独、あるいはこれらとテトラヒドロフラン、塩化メチレン、トルエン等の混合溶媒をあげることができる。尚、有機溶媒を用いる場合、その量は一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステル1重量部に対して、通常、0.1〜100重量倍、好ましくは1〜10重量倍である。
当該反応に際しては、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0033】
反応温度としては、通常、30〜150℃程度、好ましくは約50〜120℃があげられる。
【0034】
反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜20時間、好ましくは30分間〜10時間の範囲をあげることができる。
【0035】
反応終了後は、通常用いられる化合物の回収方法により目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー、蒸留等によりさらに精製することができる。
また、上記の不斉還元反応が終了した後、生成した一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルを単離することなく、続く不斉加水分解反応に用いることもできる。
【0036】
次に、本発明製造方法の第ニ工程について説明する。
当該工程において用いられる原料である、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体は、前記の本発明製造方法の第一工程で生成される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま公知の合成方法に基づいた付加的な工程を経ることにより誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの誘導体である。付加的な工程としては、例えば、一般式(1)におけるXで示される置換基がハロゲノメチル基である場合、当該置換基に対するシアノ化反応、アシルオキシ化反応、アルキルオキシ化反応等をあげることができる。このような反応は、一段階での反応でもよいし、多段階での反応であってもよい。上記の光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの誘導体として、具体的には、例えば、4−シアノ−3−ヒドロキシ−ブタン酸エステル、4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステル、4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステル等があげられる。
【0037】
当該工程において用いられる触媒としては、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物等をあげることができる。
【0038】
本発明製造方法の第ニ工程で用いられるエステル加水分解酵素は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素である(以下、本加水分解酵素と記すこともある。)。本加水分解酵素のうち、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体の(R)体又は(S)体のいずれかのエステル結合部位を優先的に水解する能力を有するエステル加水分解酵素等を好ましいものとしてあげることができる。
【0039】
本加水分解酵素は、市販品酵素であってもよく、また本加水分解酵素を産生する微生物等から通常の生化学的な手法や遺伝子工学的な手法(例えば、特開2001−4608号公報、特開平7−163364、特開平5−56787、特開2001−46084号公報、Gene 96 125−128 1990、特開2000−78988号公報、特開平7−213280号公報に記載されている。)等を利用して調製することができる。例えば、本加水分解酵素を産生する微生物が形質転換体である場合には、当該形質転換体としては、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが少なくとも導入されてなる形質転換体(以下、本形質転換体2と記すこともある。)等をあげることができる。また、本加水分解酵素を産生する微生物が非形質転換体(即ち、前記能力が人為的に付与されていないにも係わらず、予め当該能力を有する微生物)である場合には、当該非形質転換体としては、後述の実施例のように、市販の微生物又は土壌などから前記能力を指標にしてスクリーニングすることにより単離された微生物等があげられる。このような微生物の例としては、アルスロバクターSC−6−98−28 (FERM BP−3658)株が属するアルスロバクター属、アスペルギルス・フラバス ATCC−11492株が属するようなアスペルギルス属、クロモバクテリウムSC−YM−1(FERM BP−6703)株が属するようなクロモバクテリウム属、キラザイムL−2やキラザイムL−5(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)の起源微生物が属するようなキャンデイダ属等に属する微生物等をあげることができる。
【0040】
「一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素」の具体的な例としては、例えば、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力をあげることができる。
<アミノ酸配列群>
(a1)配列番号5で示されるアミノ酸配列
(a2)配列番号7で示されるアミノ酸配列
(a3)配列番号9で示されるアミノ酸配列
(b1)配列番号5で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(b2)配列番号7で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(b3)配列番号9で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(c1)配列番号6で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(c2)配列番号8で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(c3)配列番号10で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d1)配列番号6で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(d2)配列番号8で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(d3)配列番号10で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(e1)クロモバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(e2)アルスロバクター属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(e3)アスペルギルス属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
【0041】
本形質転換体2を作製する際に用いられる、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素(即ち、本加水分解酵素)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本加水分解酵素遺伝子と記すこともある。)は、(1)天然に存在する遺伝子の中からクローニングされたものであってもよいし、(2)天然に存在する遺伝子であっても、このクローニングされた遺伝子の塩基配列において、その一部の塩基の欠失、置換又は付加が人為的に導入されてなる遺伝子(即ち、天然に存在する遺伝子を変異処理(部分変異導入法、突然変異処理等)を行ったものであってもよいし、(3)人為的に合成されたものであってもよい。
【0042】
ここで、前記(b)、(b1)、(b2)又は(b3)にある「アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」や前記(d)、(d1)、(d2)又は(d3)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAに対し相補性を有するDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列」には、例えば、配列番号5、7又は9で示されるアミノ酸配列を有する酵素が細胞内で受けるプロセシング、該酵素が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)、(b1)、(b2)又は(b3)にある「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号5、7又は9で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を見出すことのできる範囲であればよい。
また前記欠失、置換若しくは付加のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0043】
本発明において「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」には、例えば、2つの蛋白質間のアミノ酸配列に関する高い配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。また「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」には2つのDNA間の塩基配列に関する配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。
ここで「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
前記(d)又は(d1)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)に記載される方法や、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989年、農村文化社発行)に記載されているサザンハイブリダイゼーション法等の通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(900mM NaCl、90mM クエン酸三ナトリウムを含む溶液。尚ここでは、NaCl175.3g、クエン酸三ナトリウム88.2gを含む溶液を水800mlで溶解し、10N NaClでpHを調製した後、全量を1000 mlとした溶液を20×SSCとする。)中で65℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1−6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.1×SSCで65℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0044】
本加水分解酵素遺伝子は、前述の還元酵素遺伝子調製方法同様に行なえばよい。例えば、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
アルスロバクターグロビフォルミス(Arthrobacter globiformis IFO12958)等のアルスロバクター属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法)に準じてcDNAライブラリーを調製し、調製されたcDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、本加水分解酵素遺伝子を調製する。
【0045】
本形質転換体2を調製する方法としては、例えば、本加水分解酵素遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本加水分解酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるような組換プラスミド(例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域を本加水分解酵素遺伝子に連結して組換プラスミドを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換プラスミド)を作製し、これを宿主細胞に導入することにより作製する方法等があげられる。さらに、本加水分解酵素遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入する方法も利用することができる。
上記の組換プラスミドとしては、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーを持つ発現ベクターに、本加水分解酵素をコードする遺伝子が機能可能な形で導入されたものを好ましく挙げることができる。尚、発現ベクターとしては、各種のものが市販されている。
ここで、「機能可能な形で」とは、上記の組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本加水分解酵素遺伝子が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、又は、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。またコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム、ペニシリウム・シトリナム、バシラス・メガテリウムにおいて本加水分解酵素遺伝子の発現を制御しているプロモーターを利用してもよい。
また発現ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして容易に選択することができる。
さらなる高発現を導くことが必要な場合には、本加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボゾーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20, p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms, p202, 講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
宿主細胞としては、原核生物(例えば、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属)もしくは真核生物(例えば、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Aspergillus属)である微生物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞等を挙げることができる。例えば、本形質転換体2の大量調製が容易になるという観点では、大腸菌等を好ましく挙げることができる。
本加水分解酵素が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coliPulser System」 Bio−Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
宿主細胞において本加水分解酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドが導入された形質転換体を選抜するには、前記の如く、例えば、ベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
プラスミドが導入された宿主細胞(即ち、形質転換体)が本加水分解酵素遺伝子を保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
【0046】
本形質転換体2の培養は、微生物培養、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞の培養に使用される通常の方法によって行うことができる。例えば大腸菌の場合、適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等の液体培養のいずれの方法でもよく、好ましくは、通気撹拌培養法等の液体培養を挙げることができる。
培養温度は、本形質転換体2が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約10〜50℃、好ましくは約20〜40℃である。
培地のpHは約6〜8の範囲が好ましい。
培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1日〜約5日が好ましい。
本形質転換体2を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001〜5%(w/v)程度である。
さらに、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと、本加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体の場合には、本加水分解酵素の生産を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。
【0047】
本形質転換体2の取得は、例えば、前記の培養により得られた培養物を遠心分離等により形質転換体を沈殿物として回収すればよい。必要に応じて、回収前に当該形質転換体を、例えば、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)等の緩衝液等を用いて洗浄してもよい。
【0048】
本発明製造方法の第二工程では、触媒として、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素を産生する微生物が使用されるが、その用いられる形態には、(1)培養液をそのまま用いる形態、(2)培養液の遠心分離等により菌体を集め、当該菌体を緩衝液若しくは水で洗浄することにより得られた湿菌体を用いる形態、等の培養により得られた微生物の菌体をそのまま用いる形態が含まれる。この場合には、その使用量は、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体に対して、通常、0.01〜200重量倍程度、好ましくは0.1〜50重量倍程度である。
また、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素あるいは当該酵素又は当該酵素を産生する微生物の処理物も使用されるが、その用いられる形態には、培養液の遠心分離等により菌体を集め、当該菌体を緩衝液若しくは水で洗浄した湿菌体を、(1)有機溶媒(アセトン、エタノール等)処理することにより得られたものを用いる形態や(2)凍結乾燥処理することにより得られたものを用いる形態や(3)アルカリ処理することにより得られたものを用いる形態や(4)菌体を物理的に又は酵素的に破砕することにより得られたものを用いる形態、さらには、これらのものを公知の方法により固定化処理することにより得られたものを用いる形態も含まれる。この場合には、その使用量は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又はその誘導体に対して、通常、0.001〜2重量倍程度、好ましくは0.02〜0.5重量倍程度である。
【0049】
一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物のうち、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞が好ましく使用される。
【0050】
本形質転換体2から、その死菌化細胞を下記の方法により調製することもできる。
死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、カルボニル基、シアン及び抗生物質)をあげることができる。尚、これらの殺菌法のうちできるだけ本加水分解酵素の酵素活性を失活させず、かつ反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理方法を各種の反応条件に応じて適宜選択することがよい。
【0051】
このようにして調製された形質転換体又はその死菌化細胞は、例えば、凍結乾燥細胞、有機溶媒処理細胞、乾燥細胞等の形態、あるいは、固定化された形態(固定化物)で利用してもよい。
【0052】
固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に本形質転換体2又はその死菌化細胞を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本形質転換体2又はその死菌化細胞を閉じ込める方法)が挙げられる。
【0053】
続いて、本発明製造方法の第二工程における不斉加水分解反応について説明する。
当該工程において一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体を不斉水解する反応は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を作用させることによって達成される。
当該反応は、通常、水の存在下で行われる。水は緩衝液の形態であってもよく、この場合に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
尚、緩衝液を溶媒として用いる場合、その量は一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又はその誘導体1重量部に対して、通常、1〜300重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
当該反応に際しては、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又はその誘導体を反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0054】
反応温度としては、本形質転換体2又はその死菌化細胞に含まれた本加水分解酵素の安定性、反応速度の点から0〜70℃程度をあげることができ、好ましくは約10〜40℃があげられる。
反応pHとしては、反応が進行する範囲内で適宜変化させることができるが、例えば、5〜8をあげることができる。
【0055】
反応は、水の他に有機溶媒の共存下に行うこともできる。この場合の有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、キ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類、t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトン等のカルボニル基類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。
反応に使用する有機溶媒の量は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又はその誘導体に対して、通常、100重量倍以下であり、好ましくは70重量倍以下である。
【0056】
反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜10日間、好ましくは30分間〜4日間の範囲をあげることができる。
【0057】
次に、本発明製造方法の第三工程について説明する。
当該工程において反応液から光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物
[(I)不斉水解しない光学異性体、即ち、
(I−a)一般式(3)
【化9】
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、
(I−b)当該エステルが有する不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体、
あるいは、
(II)反応液から不斉水解する光学異性体から生じた一般式(4)
【化10】
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸又はその誘導体、即ち、
(II−a)反応液から不斉水解する光学異性体である光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルから生じた一般式(4)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸、又は、
(II−b)反応液から不斉水解する光学異性体である光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルが有する不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体から生じた一般式(4)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸誘導体]
を回収するには、反応終了後に、触媒として酵素や微生物等を使用して化合物を製造する方法において通常用いられる化合物の回収方法に準じて目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。必要に応じて反応液を濾過したり、又は遠心分離等の処理により不溶物を除去した後に前記抽出操作を行なえばよい。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー等により
さらに精製することができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0059】
実施例1 (本発明製造方法の例(その1))
(1−1)本発明製造方法の第一工程(不斉還元反応);
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 15mlにグルコース 2.3g、NADP+ 0.7mg、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸メチル 0.52gを仕込んだところへ、実施例6で得られたHB101(pTrcRSbG12)の微生物培養液5.1gを添加した。反応中は、30℃で攪拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整した。20時間後、この反応混合物を、酢酸エチルで抽出、遠心分離することにより有機層を分離した。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチル 0.50g(光学純度94%ee、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸メチルに対する収率94%)を得た。
【0060】
(1−2)本発明製造方法の第ニ工程(不斉加水分解反応)及び第三工程(回収);
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 200mLに、実施例7で得られたJM105(pCC160A189Y363term)の微生物培養液10mLを加えたところへ、上記(1−1)で得られた4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチル0.5g及びメタノール6mlを添加した。反応中は、20℃で撹拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整した。24時間後、この反応混合物を酢酸エチル200mLで抽出、遠心分離することにより有機層分離した。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、(S)−4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチル 0.41g(光学純度98%ee)を得た。
光学純度分析条件:
カラム:キラルセルOB−H(ダイセル化学)
移動層:ヘキサン/イソプロパノール/トリフルオロ酢酸=2700/300/3
検出器:UV 220nm
溶出時間:37.0分、38.8分
尚、当該工程において用いられた原料である4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸メチルの調製は、Synthesis(1995)1014に記載される方法に準じた。また光学異性体の分析については、別途調製した4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルのラセミ体との比較により行なった。
【0061】
実施例2 (本発明製造方法の第一工程(不斉還元反応))
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 15mlにグルコース 0.75g、NADP+ 0.7mg、4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチル 0.30g、酢酸ブチル15mLを仕込んだところへ、実施例6で得られたHB101(pTrcRSbG12)の微生物培養液 2gを添加した。反応中は、30℃で攪拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整した。24時間後、この反応混合物を、酢酸エチルで抽出、遠心分離することにより有機層を分離した。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、4−ブロモ−3−ヒドロキシブタン酸メチル 0.27g(光学純度97%ee、4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチルに対する収率90%)を得た。
4−ブロモ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの光学純度分析
カラム:γ−TA(0.25mmφ×30m、0.125μm)
カラム温度:110゜C(20分)−(5℃/分)−180℃(1分)
キャリア−流量 :He1.0mL/分
注入口 :250℃
検出器 :250℃ スフ゜リット比 :1/50
溶出時間: 17.6、18.1分
【0062】
実施例3 (本発明製造方法(その2)
(3−1) 本発明製造方法の第一工程(不斉還元反応);
窒素置換をおこなった1Lオートクレーブに4−クロロアセト酢酸エチル40g、エタノール150mLを仕込んだところへ、窒素雰囲気下Ru2Cl4((+)−BINAP)2(C2H5)3N 0.5gを加えて密閉し、内温を100℃した。水素をオートクレーブ内に導入し内圧 約 1 Mpaで4時間攪拌を続けた。反応マスを室温に戻した後、反応液を濃縮、さらに減圧蒸留し(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを30gを得た。(GC分析による光学純度92%ee)。
4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの光学純度分析
カラム:γ−TA(0.25mmφ×30m、0.125μm)
カラム温度:110゜C(20分)−(5℃/分)−180℃(1分)
キャリア−流量 :He1.0mL/分
注入口 :250℃
検出器 :250℃ スフ゜リット比 :1/50
溶出時間: 13.5分、14.1分
【0063】
(3−2)本発明製造方法の付加的な工程、第ニ工程(不斉加水分解反応)及び第三工程(回収);
(3−2−a)本発明製造方法の付加的な工程(第一工程により得られる光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま公知の合成方法に基づいた付加的な工程を経ることにより誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの誘導体に関する製造方法);
上記(3−1)で得られた(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチル(光学純度92%ee)28gを5分間かけて滴下し、さらに室温で10分間攪拌した。その後、反応混合物を氷冷し、シアン化ナトリウム8.7gを加え、続いて内温25〜33℃で4.5時間攪拌した。反応混合物に濃塩酸を加え、反応混合物のpHを1未満とした後、酢酸エチルで5回抽出した。有機層を合わせて減圧下で溶媒を留去することにより、残渣を得た。得られた残渣を酢酸エチル200mLに溶解した後、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸の溶液を得た。この溶液に氷冷下で、トリエチルアミン20g及び硫酸ジエチル27gを滴下し、室温まで自然昇温させながら攪拌した。さらに55〜63℃で40分間攪拌した後、氷冷し、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加えた。有機層を分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濃縮した。濃縮物を減圧蒸留することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチル14g(純度95%;光学純度94%ee)を得た。
【0064】
(3−2−b)第ニ工程(不斉加水分解反応)及び第三工程(回収);
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 200mL、実施例8で得られたJM105(SC−6−98−28)の微生物培養液10mLを加えたところへ、上記(3−2−a)で得られた(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチル 0.5g及びメタノール6mlを添加した。反応中は、20℃で撹拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整した。24時間後、この反応混合物を濾過し、得られた濾液を酢酸エチルで抽出、遠心分離することにより有機層分離した。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチル 0.41g(光学純度97%ee)を得た。
光学純度分析条件
カラム:キラルセルOD(ダイセル化学)
移動層:ヘキサン/イソプロパノール=4/1
検出器:UV 230nm
溶出時間:11.5分、12.5分
尚、光学異性体の分析については、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルのラセミ体から別途調製した4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチルとの比較により行なった。
【0065】
実施例4 (本発明製造方法の例(その3))
(4−1)本発明製造方法の第一工程(不斉還元反応);
あらかじめ窒素置換した100mlオートクレーブに、4−クロロ−3−オキソブタン酸エチル約0.3molとt−ブチルアルコール120mlを加え、ここにRu2Cl4[(R)−BINAP]2Et3N 150μMの塩化メチレン2ml溶液を加え、水素圧10〜15kg/cm2、反応温度100℃で2時間攪拌して水素化を行なう。溶媒を留去して残渣を減圧蒸留することにより、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを得る。
【0066】
(4−2)本発明製造方法の付加的な工程(第一工程により得られる光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま公知の合成方法に基づいた付加的な工程を経ることにより誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの誘導体に関する製造方法;
水50gに塩化カルシウム23g及び水酸化カルシウム8.4gを加え、室温で20分間攪拌した。ここに上記(4−1)で得られる(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチル28gを5分間かけて滴下し、さらに室温で10分間攪拌する。その後、反応混合物を氷冷し、シアン化ナトリウム8.7gを加え、続いて内温25〜33℃で4.5時間攪拌する。反応混合物に濃塩酸を加え、反応混合物のpHを1未満とした後、酢酸エチルで5回抽出する。有機層を合わせて減圧下で溶媒を留去することにより、残渣を得る。得られる残渣を酢酸エチル200mLに溶解した後、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸の溶液を得る。この溶液に氷冷下で、トリエチルアミン20g及び硫酸ジエチル27gを滴下し、室温まで自然昇温させながら攪拌する。さらに55〜63℃で40分間攪拌した後、氷冷し、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加える。有機層を分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濃縮する。濃縮物を減圧蒸留することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを得る。
【0067】
(4−3)第ニ工程(不斉加水分解反応)及び第三工程(回収);
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 200mL、実施例8で得られたJM105(SC−6−98−28)の微生物培養液10mLを加えたところへ、上記(4−2)で得られる(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチル 0.5g及びメタノール6mlを添加する。反応中は、20℃で撹拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整する。24時間後、この反応混合物を濾過し、得られる濾液を酢酸エチルで抽出、遠心分離することにより有機層分離する。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを得る。
光学純度分析条件
カラム:キラルセルOD(ダイセル化学)
移動層:ヘキサン/イソプロパノール=4/1
検出器:UV 230nm
溶出時間:11.5分、12.5分
尚、光学異性体の分析については、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルのラセミ体から別途調製した4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチルとの比較により行う。
【0068】
実施例5 (本還元酵素を産生する微生物の処理物の調製)
500mlの坂口フラスコに滅菌済み培地(1Lの水にポテト抽出物200g及びデキストロース20gを加えたもの)100mlを入れ、ここに市販のペニシリウムシトリナムIFO4631株(財団法人 発酵研究所(www.ifo.or.jp)から入手可能)の菌体を植菌した。これを30℃で好気条件下、48時間振盪培養した。その後、培養液を遠心分離(8000xg、10分)して菌体を集め、集められた菌体を生理的食塩水5mlに懸濁した。この菌体懸濁液に冷やしたアセトン300mlを加え、濾過した。回収された菌体を真空乾燥することにより、ペニシリウムシトリナムIFO4631のアセトン乾燥処理菌体10gを得た。
【0069】
実施例6 (本形質転換体の調製(その1))
(6−1)本還元酵素遺伝子の調製
(6−1−a)cDNAライブラリーの調製
500mlフラスコに培地(水にポテト・デキストロース・ブロース(ベクトン・ディッキンソン社製)を24g/Lの割合で溶解したもの)100mlを入れ、121℃で15分間滅菌した。ここに同組成の培地中で培養(30℃、48時間、振盪培養)したペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)IFO4631株(財団法人 発酵研究所(www.ifo.or.jp)から入手可能)の培養液0.5mlを加え、30℃で好気条件下、72時間振盪培養した。その後、培養液を遠心分離(8000xg、10分)して菌体を集め、集められた菌体を20mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)50mlで3回洗浄することにより、約1.0gの洗浄菌体を得た。
得られた洗浄菌体を用いて、チオシアン酸グアニジンフェノールクロロホルム法で全RNAを調製した。調製された全RNAから、Oligotex(dT)30−Super(宝酒造社製)を用いてpoly(A)を有するRNAを得た。
cDNAライブラリーの作製は、Gubler and Hoffman法に基づいて実施した。まず、上記のようにして得られたpoly(A)を有するRNA、Oligo(dT)18−リンカープライマー((含XhoIサイト)宝酒造社製)、RAV−2 Rtase及びSuperScriptII Rtaseを用いて一本鎖cDNAを調製した。調製された一本鎖cDNA(を含む前記反応液)にE. coli DNA polymerase、E. coli Rnase/E. coli DNA Ligase Mixture及びT4 DNA Polymeraseを加えることにより、二本鎖cDNAの合成及び当該二本鎖cDNAの平滑末端化処理を行った。
このようにして得られた二本鎖cDNAとEcoRI−NotI−BamHIアダプター(宝酒造社製)とのライゲーションを行った。ライゲーション後に得られたDNAを、以下の順で、リン酸化処理、XhoIでの切断処理、スピンカラム(宝酒造社製)を用いる低分子量DNAの除去処理、λZapII(EcoRI−XhoI切断)とのライゲーションした後、in vitro packaging kit (STRATAGENE社製)を用いてパッケージングすることにより、cDNAライブラリー(以下、cDNAライブラリー(A)と記すこともある。)を調製した。
【0070】
(6−1−b)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcRPcの構築)
配列番号13で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、上記(6−1−a)で調製されたcDNAライブラリーを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0071】
[反応液組成]
cDNAライブラリー原液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0072】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持した。
【0073】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、ベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE. coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcRPcと記すこともある。)を取り出した。
次に、取り出されたプラスミドpTrcRPcを鋳型として、Dye TerminatorCycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いたシークエンス反応を行った後、得られたDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析した。その結果を配列番号1に示した。
【0074】
(6−2)グルコース脱水素酵素遺伝子の調製
(6−2−a)染色体DNA(B)の調製
Bacillus megaterium IFO12108株(財団法人 発酵研究所(www.ifo.or.jp)から入手可能)からQiagen Genomic Tip (Qiagen社製)を用い、それに付属するマニュアルに記載される方法に従って染色体DNA(以下、染色体DNA(B)と記すこともある。)を精製した。
【0075】
(6−2−b)グルコース脱水素酵素遺伝子を含むプラスミドの調製
The Journal of Biological Chemistry Vol.264, No.11, 6381−6385(1989)に記載されたBacillus megaterium IWG3由来のグルコース脱水素酵素のアミノ酸配列に基づいて配列番号15で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号16で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーとを合成した。
配列番号4で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号5で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーとをプライマーに用い、前記(6−2−a)で精製された染色体DNA(B)を鋳型にして(6−1−b)に記載させる反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片を、Invitrogen社製TOPOTMTA cloningキットを用いてpCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションした。得られたライゲーション液でE. coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてグルコース脱水素酵素遺伝子を含むプラスミド(以下、このプラスミドをプラスミドpSDGDH12と記すこともある。)を取り出した。
次に、取り出されたプラスミドpSDGDH12を鋳型として、Dye Terminator Cycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いたシークエンス反応を行った後、得られたDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析した。その結果を配列番号19に示した。
【0076】
(6−2−c)還元酵素遺伝子及びグルコース脱水素酵素遺伝子を含むプラスミドの調製
プラスミドpSDGDH12に2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpTrcRPcに2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE. coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて還元酵素遺伝子およびグルコース脱水素酵素遺伝子を含むプラスミド(以下、このプラスミドをpTrcRSbG12と記すこともある。)を取り出した。
【0077】
(6−2−d)還元酵素遺伝子及びグルコース脱水素酵素遺伝子を含む形質転換体の調製
pTrcRSbG12プラスミドを用いてE.coli HB101を形質転換した。得られた形質転換体を500ml容三角フラスコにLB培地100mlを入れて滅菌した後、アンピシリンを50μg/mlになるように加えたところに、接種し、30℃で18時間回転振とう培養した。次に3L容の小型培養槽(丸菱バイオエンジ社製、MDL型)に滅菌した液体培地(水1Lにグリセロ−ル15g、酵母エキス25g及びリン酸一カリウム0.4g、硫酸マグネシウム2g硫酸第一鉄0.1gを溶解し、pH7.0とする。)1500mlを仕込み、そこへ上記の三角フラスコで培養した培養液15mlを接種した。30℃で通気攪拌培養を始め、対数増殖期中期(培養10〜15時間)にIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド)を終濃度1mMになるように添加した後、滅菌した培地を流加し、さらに培養を継続、計40時間培養することにより、還元酵素遺伝子およびグルコース脱水素酵素遺伝子を含む形質転換体の培養液(この培養液をHB101(pTrcRSbG12)の培養液と記すこともある。)を得た。
【0078】
実施例7 (本加水分解酵素を産生する微生物の調製(その1))
クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ遺伝子組換え体微生物[JM105(pCC160A189Y363term)]は、特開平7−213280号公報等に記載される方法に準じて作成した。即ち、クロモバクテリウムSC−YM−1株(FERM P−14009)由来のエステラーゼ遺伝子に部位特異的変異を導入した遺伝子を含むプラスミドpCC160A189Y363termを作成し、大腸菌JM105株に導入することにより組換え微生物を構築した。
以下にプラスミドpCC160A189Y363termの構築方法を示す。
【0079】
(7−1)プラスミドpCC160Aの調製
まず、クロモバクテリウムSC−YM−1由来の野生型エステラーゼ遺伝子を含むプラスミドpCC101を特開平7−213280号公報に記載された実施例1〜5にある方法に準じて作成した。同公報に記載された実施例7にある方法に準じて、プラスミドpCC101(0.5μg)を鋳型DNAとし、同公報に記載された実施例6にある方法に準じて作成した変異プライマ−MY−1(100pmol:特開平7−213280号公報に配列番号27として記載されている。)および変異プライマー160A(100pmol:特開平7−213280号公報に配列番号11として記載されている。)を用いて、GeneAmp PCR Reagent キット(宝酒造株式会社製)によりDNA断片を増幅した。得られたPCR産物(270bpDNA断片)をSUPREC−02カラム(宝酒造株式会社製)を使用して精製した。
続いて、同様に、プラスミドpCC101(0.5μg)を鋳型DNAとし、変異プライマーRV−C(50pmol:特開平7−213280号公報に配列番号26として記載されている。)および先に精製した270bpDNA断片(50pmol)をプライマーとしてGeneAmp PCR Reagentキット(宝酒造株式会社製)によりDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素CelIIIおよびClaIで消化し、サンプルを4%アガロースゲル(NuSieve3:1Agarose(宝酒造株式会社製)で電気泳動後、約240bpのDNA断片を分離し、ジーンクリーンDNA精製キット(Bio101、Inc製)を用いて精製した。
一方、プラスミドpCC101(3μg)を制限酵素CelIIIおよびClaIで消化後、アルカリフォスファターゼ処理を行った。ついでこのDNA断片(4.2kbp)と先に調製して得られた変異の導入された約240bpのDNA断片をDNAライゲーションキット(宝酒造株式会社製)を用いて連結し、通常の方法に従って大腸菌JM109株に形質転換した。
このようにして得られた形質転換体から定法に従いプラスミドpCC160Aを調製した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。
【0080】
(7−2)プラスミドpCC189Yの調製
pCC160Aの調製の場合に用いられた変異プライマー160Aを特開平7−213280号公報に記載された実施例6にある方法に準じて作成した変異プライマー189Y(特開平7−213280号公報に配列番号24として示されている。)に変更して、その他はプラスミドpCC160Aの調製の場合と同様にして、プラスミドpCC189Yを調製した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。
【0081】
(7−3)プラスミドpCC363termの調製
プラスミドpCC101(0.5μg)を鋳型DNAとし、変異プライマーMY−2(100pmol:特開平7−213280号公報に配列番号30として示されている。)および変異プライマーA363term(100pmol:特開平7−213280号公報に配列番号28として示されている。)を用いて、GeneAmp PCR Reagent キット(宝酒造株式会社製)によりDNA断片を増幅した。得られたPCR産物(150bp断片)をSUPREC−02カラム(宝酒造株式会社製)を使用して精製した。
続いて、同様にプラスミドpCC101(0.5μg)を鋳型DNAとし、変異プライマーRV−D(50pmol:特開平7−213280号公報に配列番号29として示されている。)および先に精製した150bpDNA断片(50pmol)をプライマーとしてGeneAmp PCR Reagentキット(宝酒造株式会社製)によりDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素BstPIおよびXbaIで消化し、サンプルを4%アガロースゲル(NuSieve3:1Agarose(宝酒造社株式会社製)で電気泳動し、約280bpのDNA断片を分離し、ジーンクリーンDNA精製キット(Bio101、Inc製)を用いて精製した。一方、pCC101(3μg)をBstPIおよびXbaIで消化し、アルカリフォスファターゼ処理を行った。ついでこの4.2kbpのDNA断片と先に調製して得られた変異の導入された280bpのDNA断片をDNAライゲーションキット(宝酒造株式会社製)を用いて連結し、通常の方法に従って大腸菌JM109株に形質転換した。得られた形質転換体から定法に従ってプラスミドpCC363termを調製した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。
【0082】
(7−4)多重変異型エステラーゼ生産プラスミドの構築
上記(7−1)で得られた変異体プラスミドpCC160A(10μg)を制限酵素EcoRIおよびFspIで消化して得た0. 6kbpのDNA断片、上記(7−2)で得られた変異体プラスミドpCC189Y(10μg)をFspIおよびBstPIで消化して得た0.4kbpの断片および上記(7−3)で得られたプラスミドpCC363term(3μg)を制限酵素BstPIおよびEcoRIで消化して得た3. 4kbpのDNA断片の3種をDNAライゲーションキット(宝酒造株式会社製)を用いて連結し、通常の方法に従って大腸菌JM105株に形質転換し、多重変異型エステラーゼ遺伝子を含有するプラスミドpCC160A189Y363termを含有する形質転換体微生物を得た。
【0083】
(7−5)形質転換体微生物の培養
500ml容三角フラスコに液体培地(水1Lにグリセロ−ル5g、酵母エキス6g及びリン酸一カリウム9g、リン酸二カリウム4gを溶解し、pH7.0とする。)100mlを入れて滅菌した後、アンピシリンを50μg/mlになるように加え、上述の方法で作成したクロモバクテリウム(Chromobacterium)SC−YM−1株由来のエステラ−ゼ遺伝子組換え微生物の斜面培養から1白金耳接種し、30℃で24時間回転振とう培養した。次に3L容の小型培養槽(丸菱バイオエンジ社製、MDL型)に滅菌した液体培地(水1Lにグリセロ−ル15g、酵母エキス25g及びリン酸一カリウム0.4g、硫酸マグネシウム2g硫酸第一鉄0.1gを溶解し、pH7.0とする。)1500mlを仕込み、そこへ上記の三角フラスコで培養した培養液15mlを接種した。30℃で通気攪拌培養を始め、対数増殖期中期(培養10〜15時間)にIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド)を終濃度1mMになるように添加した後、滅菌した培地を流加し、さらに培養を継続、計40時間培養することにより、微生物培養液(この培養液をJM105(pCC160A189Y363term)の培養液と記すこともある。)を得た。
【0084】
実施例8 (本加水分解酵素を産生する微生物の調製(その2))
アルスロバクターSC−6−98−28株(FERM P−11851)由来のエステラーゼ遺伝子組換え体微生物[JM105(SC−6−98−28)]は、特開平5−56787号公報記載の方法に準じて作成した。
即ち、特開平5−56787号公報に記載される実施例にある方法に準じてアルスロバクターSC−6−98−28株由来のエステラーゼ遺伝子を含むプラスミドpAGE−1を調製した。これを制限酵素NspV、HindIIIで消化することによりエステラーゼの翻訳領域を切り出し、エステラーゼ遺伝子の開始コドンGTGをATGに変換するために合成したDNA断片および、制限酵素BamHI、HindIIIで消化したlacプロモータを有する発現ベクターpUC118(宝酒造株式会社製)とライゲーションを行った。この様にして、lacプロモーターの下流にアルスロバクターSC−6−98−28株由来のエステラーゼ遺伝子を有する大腸菌用発現プラスミドを作成した後、定法に従い大腸菌JM105株に導入することにより組換え体微生物を構築した。
アルスロバクタ−(Arthrobacter)SC−6−98−28株由来のエステラ−ゼ遺伝子組換え微生物を、実施例7(7−5)に記載される方法と同様にして培養し、微生物培養液(この培養液をJM105(SC−6−98−28)の培養液と記すこともある。)を得た。
【0085】
実施例9 (本形質転換体の調製(その2))
(9−1)本還元酵素遺伝子の調製
配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドpKARを以下のようにして調製した。
まず、Appl Microbial Biotechnol(1999)52:386−392等に記載される公知のプラスミドpUAR(受託番号FERM P−18127)から、配列番号2で示されるDNAを含むDNA断片を、PstI及びSmaIを用いて切り出した。切り出されたDNA断片を、PstI/SmaI処理したpKK223−3ベクター(Amersham Pharmacia Biotech社製)のTacプロモーターの下流に挿入した。このようにしてプラスミドpKARを構築した。
【0086】
(9−2)本還元酵素を産生する形質転換体の調製
構築されたプラスミドpKARを用いてE. coli JM109株を形質転換した。
次に、フラスコに液体培地(水1000mlにトリプトン10g、酵母エキス5g及び塩化ナトリウム5gを溶解した。この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを7.0に調整した。)100mlを入れ、滅菌した後、アンピシリンを100μg/ml、ZnCl2を0.01%(w/v)、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を0.4mMになるように加えた。このようにして調製された培地に、上記で得られた形質転換体(E. coli JM109/pKAR株)が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で14時間振盪培養した。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収した。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、本還元酵素を産生する形質転換体である洗浄菌体を得た。
【0087】
実施例10 (本形質転換体の調製(その3))
(10−1)染色体DNAの調製
フラスコに液体培地(水1000mlにトリプトン5g、酵母エキス2.5g、塩化ナトリウム4g、ゼラチン2.5g、酢酸ナトリウム1.5g及びスレオニン2.4gを溶解する。この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを7.0に調整する。)100mlを入れ、滅菌する。このようにして調製された培地に、特開平10−94399等に記載される公知のコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム亜種(Corynebacterium pseudodiphteriticum)ST−10株(受託番号FERM P−13150)が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で10時間振盪培養する。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収する。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、洗浄菌体を得る。
このようにして得られる洗浄菌体を用いて、J.C.Wangらの方法(Appl Microbiol Biotechnol (1999)52:386−392)によって染色体DNAを調製する。
【0088】
(10−2)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcPARの構築)
配列番号17で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号18で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに、前記(2−1)で調製される染色体DNAを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行う。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0089】
[反応液組成]
染色体DNA 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0090】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する。
【0091】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化する。次いで得られるDNA断片を精製する。
一方、ベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化する。次いで得られるDNA断片を精製する。
このようにして精製して得られる2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションする。得られるライゲーション液でE. coli DH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcPARと記すこともある。)を取り出す。
【0092】
実施例11 (本還元酵素を産生する微生物の取得方法)
(11−1)洗浄菌体の調製
市販の微生物又は土壌などから単離した微生物を滅菌LB培地(10ml)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
(11−2)スクリーニング
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)20mlに、上記(11−1)で調製された洗浄菌体1g、NADP+12mg、NAD+12mg及びグルコース2.5gを加える。この混合物に、さらに一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステル240mgを加えた後、当該混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調製する。このようにして得られる混合物(反応液)を30℃で4時間攪拌することにより反応を行う。反応終了後、反応液に酢酸エチル25mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収する。回収される水層に再度酢酸エチル25mlを加えて同様な操作を行う。このようにして得られる有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥する。乾燥後、クロロホルムを留去することにより残渣を得る。得られる残渣に、3−ヒドロキシブタン酸エステルが含まれていることを液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにて定性及び/定量分析により確認する。
【0093】
実施例12 (本加水分解酵素を産生する微生物の取得方法)
(12−1)洗浄菌体の調製
市販の微生物又は土壌などから単離した微生物を滅菌LB培地(10ml)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
(12−2)スクリーニング
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)20mlに、上記(12−1)で調製された洗浄菌体1gを加える。この混合物に、さらに一般式(2)で示される3−ヒドロキシブタン酸エステル240mgを加え、30℃で10時間攪拌することにより反応を行う。反応終了後、反応液に酢酸エチル25mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収する。回収される水層に再度酢酸エチル25mlを加えて同様な操作を行う。このようにして得られる有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥する。乾燥後、クロロホルムを留去することにより残渣を得る。得られる残渣に、3−ヒドロキシブタン酸エステルが含まれていることを液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにて定性及び/定量分析により確認する。
【0094】
【発明の効果】
本発明により、光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を簡便に製造することができる。
[配列表フリーテキスト]
配列番号11
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号12
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号13
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号14
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号15
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号16
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号17
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号18
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
【0095】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
3−位にヒドロキシ基を持つブタン酸誘導体は医薬中間体として有用である。例えば、特許第3241723号に記載されるように、抗高脂血症剤等の鍵中間体として重要性である。上記の誘導体を効率的に合成するには、光学純度の高い3−ヒドロキシブタン酸系化合物が極めて有用である。
このような光学純度の高い光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を製造する簡便な方法は知られていなかった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者等は、光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法について鋭意検討した結果、3−オキソブタン酸エステルを原料とし、かつ、不斉還元反応及び不斉加水分解反応の両者反応を前記順序で組み合わせることにより、目的とする光学純度の高い光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を簡便に製造できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法であって、
(I)一般式(1)
【化5】
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基、あるいは、ハロゲノメチル基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)
【化6】
(式中、XおよびRは前記と同じ意味を表し、*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する第一工程、
(II)前記第一工程後、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体を不斉水解する第二工程、及び
(III)前記第ニ工程後、反応液から不斉水解しない光学異性体、あるいは、反応液から不斉水解する光学異性体から生じた光学活性3−ヒドロキシブタン酸又はその誘導体を回収する第三工程
を有することを特徴とする製造方法;
2.第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
3.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物が、前記能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
4.形質転換体が、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが導入されてなる形質転換体であることを特徴とする前項3記載の製造方法;
5.形質転換体が大腸菌であることを特徴とする前項3又は4記載の製造方法;
6.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される−3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2又は4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2又は4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4−置換−3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性4−置換−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
7.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
8.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
9.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
10.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
11.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
12.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
13.一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物の由来が、コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物であることを特徴とする前項2記載の製造方法;
14.第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として金属触媒を、水素雰囲気下において一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
15.金属触媒が、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体であることを特徴とする前項14記載の製造方法;
16.ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体における光学活性ホスフィンが、(R)−BINAP又は(S)−BINAPであることを特徴とする前項15記載の製造方法;
17.第二工程における不斉水解のための反応が、触媒として一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又は前記誘導体に作用させ、これを不斉水解する反応であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
18.(1)第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であって、かつ、(2)第二工程における不斉水解のための反応が、触媒として一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又は前記誘導体に作用させ、これを不斉水解する反応であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
19.エステル加水分解酵素が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体の(S)体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素であることを特徴とする前項17記載の製造方法;
20.エステル加水分解酵素が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体の(R)体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素であることを特徴とする前項17記載の製造方法;
21.一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物が、前記能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞であることを特徴とする前項17記載の製造方法;
22.形質転換体が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが導入されてなる形質転換体であることを特徴とする前項21記載の製造方法;
23.形質転換体が大腸菌であることを特徴とする前項21又は22記載の製造方法;
24.一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項21記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号5、7,9で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号5、7,9で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号6、8,10で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号6、8,10で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)クロモバクテリウム属、アルスロバクタ−属又はアスペルギルス属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列
25.一般式(1)
【化7】
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基、あるいは、ハロゲノメチル基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される3−オキソブタン酸エステルから光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を製造するための触媒としての、前記一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元触媒と一般式(2)
【化8】
(式中、XおよびRは前記と同じ意味を表し、*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解触媒との両触媒の使用;
等を提供するものである。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明製造方法では、不斉還元反応(即ち、第一工程)及び不斉加水分解反応(即ち、第二工程)の両者反応を前記順序で組み合わせて用いることが重要である。
【0005】
まず、本発明製造方法の第一工程について説明する。
当該工程において用いられる原料である、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルは、例えば、Synthesis,(1995)1014等に記載されるように、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸エステルは4−クロロ−3−オキソブタン酸エステルに水素化ナトリウム存在下、ベンジルアルコールを反応させることにより得ることができる。また例えば、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸エステルは4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチルに酢酸カリウムを反応させることにより得ることができる。これらの方法に限定されるわけではなく、他の方法により得られたものでも使用することができる。
【0006】
一般式(1)におけるRで示される置換されてもよい炭素数1〜4の低級アルキル基としては、具体的には、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、等が例示される。
一般式(1)におけるXで示される置換基のうち、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基としては、例えば、4−メチルベンジルオキシメチル、3−クロルベンジルオキシメチル、4−シアノベンジルオキシメチル、3−ニトロベンジルオキシメチル等が例示され、置換されていてもよいアルコキシメチル基としては、例えば、クロロメチルオキシメチル、メチルオキシエチルオキシメチル等が例示され、置換されていてもよいアシルオキシメチル基としては、クロロアセチルオキシメチル、トリフルオロアセチルオキシメチル基等が例示され、またハロゲノメチル基としては、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロルメチル、ジクロルメチル、トリクロルメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル等が例示される。
【0007】
一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルとして、具体的には、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸メチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸エチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸n−プロピル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸イソプロピル4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸メチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸エチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸n−プロピル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸イソプロピル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−アセチルオキシ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸メチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸エチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸プロピル、4−シアノ−3−オキソブタン酸イソプロピル、4−シアノ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−シアノ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸エチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸プロピル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸イソプロピル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−ブロモ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸メチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸エチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸プロピル、4−クロロ−3−オキソブタン酸イソプロピル、4−クロロ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸イソブチル、4−クロロ−3−オキソブタン酸t−ブチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸メチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸エチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸プロピル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸一プロピル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸n−ブチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸sec−ブチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸イソブチル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸t−ブチル等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0008】
当該工程において用いられる触媒としては、例えば、(1)一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物(第一の本発明製造方法に対応している。)、(2)金属触媒(第二の本発明製造方法に対応している。)等をあげることができる。
第一の本発明製造方法における触媒としての酵素は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素である(以下、本還元酵素と記すこともある。)。このような酵素は、市販品酵素であってもよく、また本還元酵素を産生する微生物等から通常の生化学的な手法や遺伝子工学的な手法等を利用して調製することもできる。例えば、本還元酵素を産生する微生物が形質転換体である場合には、当該形質転換体としては、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが少なくとも導入されてなる形質転換体(以下、本形質転換体と記すこともある。)等をあげることができる。また、本還元酵素を産生する微生物が非形質転換体(即ち、前記能力が人為的に付与されていないにも係わらず、予め当該能力を有する微生物)である場合には、当該非形質転換体としては、後述の実施例のように、市販の微生物又は土壌などから前記能力を指標にしてスクリーニングすることにより単離された微生物等があげられる。このような微生物の例としては、コリネバクテリウム属やペニシリウム属に属する微生物等をあげることができる。
【0009】
「一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力」の具体的な例としては、例えば、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力をあげることができる。
<アミノ酸配列群>
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(a2)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b1)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(b2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c1)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(c2)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d1)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(d2)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e1)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e2)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
【0010】
本形質転換体を作製する際に用いられる、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素(即ち、本還元酵素)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本還元酵素遺伝子と記すこともある。)は、(1)天然に存在する遺伝子の中からクローニングされたものであってもよいし、(2)天然に存在する遺伝子であっても、このクローニングされた遺伝子の塩基配列において、その一部の塩基の欠失、置換又は付加が人為的に導入されてなる遺伝子(即ち、天然に存在する遺伝子を変異処理(部分変異導入法、突然変異処理等)を行ったもの)であってもよいし、(3)人為的に合成されたものであってもよい。
【0011】
ここで、前記(b)、(b1)又は(b2)にある「アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」や前記(d)、(d1)又は(d2)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAに対し相補性を有するDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列」には、例えば、配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が細胞内で受けるプロセシング、該酵素が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)、(b1)又は(b2)にある「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を見出すことのできる範囲であればよい。
また前記欠失、置換若しくは付加のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0012】
本発明において「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」には、例えば、2つの蛋白質間のアミノ酸配列に関する高い配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。また「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」には2つのDNA間の塩基配列に関する配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。
ここで「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
前記(d)、(d1)又は(d2)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)に記載される方法や、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989年、農村文化社発行)に記載されているサザンハイブリダイゼーション法等の通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(900mM NaCl、90mM クエン酸三ナトリウムを含む溶液。尚ここでは、NaCl175.3g、クエン酸三ナトリウム88.2gを含む溶液を水800mlで溶解し、10N NaClでpHを調製した後、全量を1000 mlとした溶液を20×SSCとする。)中で65℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1−6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.1×SSCで65℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0013】
本還元酵素遺伝子は、例えば、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
コリネバクテリウム・シュードジフテリティカム(Corynebacterium pseudodiphteriticum)等のコリネバクテリウム属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法に準じて染色体DNAを調製し、調製された染色体DNAを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号2で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム由来の染色体DNAを鋳型として、かつ配列番号17に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号18に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−50℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃−(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0014】
また、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)等のペニシリウム属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法)に準じてcDNAライブラリーを調製し、調製されたcDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号4で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでペニシリウム・シトリナム由来のcDNAライブラリーを鋳型として、かつ配列番号11に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号12に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号4で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−50℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃−(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0015】
本形質転換体を調製する方法としては、例えば、本還元酵素遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本還元酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるような組換プラスミド(例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域を本還元酵素遺伝子に連結して組換プラスミドを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換プラスミド)を作製し、これを宿主細胞に導入することにより作製する方法等があげられる。さらに、本還元酵素遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入する方法も利用することができる。
上記の組換プラスミドとしては、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーを持つ発現ベクターに、本還元酵素をコードする遺伝子が機能可能な形で導入されたものを好ましく挙げることができる。尚、発現ベクターとしては、各種のものが市販されている。
ここで、「機能可能な形で」とは、上記の組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本還元酵素遺伝子が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、又は、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。またコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム、ペニシリウム・シトリナム、バシラス・メガテリウムにおいて本還元酵素遺伝子の発現を制御しているプロモーターを利用してもよい。
また発現ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして容易に選択することができる。
さらなる高発現を導くことが必要な場合には、本還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボゾーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20, p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms, p202, 講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
宿主細胞としては、原核生物(例えば、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属)もしくは真核生物(例えば、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Aspergillus属)である微生物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞等を挙げることができる。例えば、本形質転換体の大量調製が容易になるという観点では、大腸菌等を好ましく挙げることができる。
本還元酵素が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coli Pulser System」 Bio−Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
宿主細胞において本還元酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドが導入された形質転換体を選抜するには、前記の如く、例えば、ベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
プラスミドが導入された宿主細胞(即ち、形質転換体)が本還元酵素遺伝子を保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2ndedition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
【0016】
本形質転換体の培養は、微生物培養、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞の培養に使用される通常の方法によって行うことができる。例えば大腸菌の場合、適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等の液体培養のいずれの方法でもよく、好ましくは、通気撹拌培養法等の液体培養を挙げることができる。
培養温度は、本形質転換体が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約10〜50℃、好ましくは約20〜40℃である。
培地のpHは約6〜8の範囲が好ましい。
培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1日〜約5日が好ましい。
本形質転換体を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001〜5%(w/v)程度である。
さらに、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと、本還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体の場合には、本還元酵素の生産を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。
【0017】
本形質転換体の取得は、例えば、前記の培養により得られた培養物を遠心分離等により形質転換体を沈殿物として回収すればよい。必要に応じて、回収前に当該形質転換体を、例えば、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)等の緩衝液等を用いて洗浄してもよい。
【0018】
第一の本発明製造方法において、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素を産生する微生物の、本発明製造方法の反応に用いる形態には、例えば、(1)培養液をそのまま用いる形態、(2)培養液の遠心分離等により菌体を集め、当該菌体を緩衝液若しくは水で洗浄することにより得られた湿菌体を用いる形態、等の培養により得られた微生物の菌体をそのまま用いる形態が含まれる。この場合には、その使用量は、例えば、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに対して通常0.01から200重量倍程度、好ましくは0.1〜50重量倍程度である。また、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素あるいは当該酵素又は当該酵素を産生する微生物の処理物の、本発明製造方法の反応に用いる形態には、例えば、培養液の遠心分離等により菌体を集め、当該菌体を緩衝液若しくは水で洗浄した湿菌体を、(1)有機溶媒(アセトン、エタノール等)処理することにより得られたものを用いる形態や(2)凍結乾燥処理することにより得られたものを用いる形態や(3)アルカリ処理することにより得られたものを用いる形態や(4)菌体を物理的に又は酵素的に破砕することにより得られたものを用いる形態、さらには、これらのものを公知の方法により固定化処理することにより得られたものを用いる形態も含まれる。この場合には、その使用量は、例えば、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに対して通常0.001から2重量倍程度、好ましくは0.02〜0.5重量倍程度である。
【0019】
第一の本発明製造方法において用いられる一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物のうち、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞が好ましく使用される。
【0020】
本形質転換体から、その死菌化細胞を下記の方法により調製することもできる。
死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、カルボニル基、シアン及び抗生物質)をあげることができる。尚、これらの殺菌法のうちできるだけ本還元酵素の酵素活性を失活させず、かつ反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理方法を各種の反応条件に応じて適宜選択することがよい。
【0021】
このようにして調製された形質転換体又はその死菌化細胞は、例えば、凍結乾燥細胞、有機溶媒処理細胞、乾燥細胞等の形態、あるいは、固定化された形態(固定化物)で利用してもよい。
【0022】
固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に本形質転換体又はその死菌化細胞を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本形質転換体又はその死菌化細胞を閉じ込める方法)が挙げられる。
【0023】
続いて、第一の本発明製造方法の第一工程における不斉還元反応について説明する。
第一の本発明製造方法の第一工程において一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を作用させることによって達成される。
当該反応は、通常、水の存在下で行われる。水は緩衝液の形態であってもよく、この場合に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
尚、緩衝液を溶媒として用いる場合、その量は一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステル1重量部に対して、通常、1〜300重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
当該反応に際しては、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0024】
反応温度としては、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素(即ち、本還元酵素)又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物に含まれた本還元酵素の安定性、反応速度の点から0〜70℃程度をあげることができ、好ましくは約10〜40℃があげられる。
反応pHとしては、反応が進行する範囲内で適宜変化させることができるが、例えば、5〜8をあげることができる。
【0025】
反応は、水の他に有機溶媒の共存下に行うこともできる。この場合の有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、キ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類、t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトン等のカルボニル基類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。
反応に使用する有機溶媒の量は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに対して、通常、100重量倍以下であり、好ましくは70重量倍以下である。
【0026】
反応は、例えば、NADH、NADPHのような補酵素を加えて通常行うことがよい。
反応に用いられる補酵素の量は、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに対して、通常、0.5重量倍以下、好ましくは0.1重量倍以下である。
【0027】
さらに本還元酵素が依存する補酵素を再生するための共役系反応を組み合わせて用いることにより、当該補酵素の使用量を大幅に削減することができる。当該補酵素を再生する能力を有する酵素としては、例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素又は有機脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等が挙げられる。具体的には、グルコース脱水素酵素を精製酵素として用いる場合には、その使用量は、基質に対して通常、0.1〜10重量%である。また、グルコースの使用量は、基質に対して通常、0.1〜10モル当量である。
また、上記のような補酵素を再生する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子と本還元酵素遺伝子とを同時に宿主細胞に導入してなる形質転換体を用いて不斉還元反応及び上記の共役系反応の両者を行うこともできる。
反応はさらに、必要に応じて、グルコース、シュークロース、フルクトース等の糖類、エタノール等のアルコール類、界面活性剤等を加えて行うこともできる。
【0028】
不斉還元反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜10日間、好ましくは30分間〜4日間、より好ましくは0.5時間から10時間の範囲をあげることができる。
【0029】
当該反応終了後は、触媒として酵素や微生物等を使用して化合物を製造する方法において通常用いられる化合物の回収方法により目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。必要に応じて反応液を濾過したり、又は遠心分離等の処理により不溶物を除去した後に前記抽出操作を行なえばよい。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー等によりさらに精製することができる。
また、上記の不斉還元反応が終了した後、生成した一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルを単離することなく、続く不斉加水分解反応に用いることもできる。
【0030】
第ニの本発明製造方法の第一工程における不斉還元反応で用いられる金属触媒としては、例えば、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体、光学活性酒石酸−ラネーニッケル錯体等をあげることができる。さらに、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体における光学活性ホスフィンとしては、(R)−BINAP又は(S)−BINAP等があげられる。
【0031】
第ニの本発明製造方法の第一工程における不斉還元反応における水素雰囲気下としては、例えば、水素カス圧5〜100kg/cm2(0.5〜10MPa)のような水素ガス加圧下等をあげることができる。
【0032】
当該反応は、通常、有機溶媒の存在下で行われる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のプロトン性溶媒単独、あるいはこれらとテトラヒドロフラン、塩化メチレン、トルエン等の混合溶媒をあげることができる。尚、有機溶媒を用いる場合、その量は一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステル1重量部に対して、通常、0.1〜100重量倍、好ましくは1〜10重量倍である。
当該反応に際しては、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0033】
反応温度としては、通常、30〜150℃程度、好ましくは約50〜120℃があげられる。
【0034】
反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜20時間、好ましくは30分間〜10時間の範囲をあげることができる。
【0035】
反応終了後は、通常用いられる化合物の回収方法により目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー、蒸留等によりさらに精製することができる。
また、上記の不斉還元反応が終了した後、生成した一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルを単離することなく、続く不斉加水分解反応に用いることもできる。
【0036】
次に、本発明製造方法の第ニ工程について説明する。
当該工程において用いられる原料である、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体は、前記の本発明製造方法の第一工程で生成される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま公知の合成方法に基づいた付加的な工程を経ることにより誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの誘導体である。付加的な工程としては、例えば、一般式(1)におけるXで示される置換基がハロゲノメチル基である場合、当該置換基に対するシアノ化反応、アシルオキシ化反応、アルキルオキシ化反応等をあげることができる。このような反応は、一段階での反応でもよいし、多段階での反応であってもよい。上記の光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの誘導体として、具体的には、例えば、4−シアノ−3−ヒドロキシ−ブタン酸エステル、4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステル、4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステル等があげられる。
【0037】
当該工程において用いられる触媒としては、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物等をあげることができる。
【0038】
本発明製造方法の第ニ工程で用いられるエステル加水分解酵素は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素である(以下、本加水分解酵素と記すこともある。)。本加水分解酵素のうち、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体の(R)体又は(S)体のいずれかのエステル結合部位を優先的に水解する能力を有するエステル加水分解酵素等を好ましいものとしてあげることができる。
【0039】
本加水分解酵素は、市販品酵素であってもよく、また本加水分解酵素を産生する微生物等から通常の生化学的な手法や遺伝子工学的な手法(例えば、特開2001−4608号公報、特開平7−163364、特開平5−56787、特開2001−46084号公報、Gene 96 125−128 1990、特開2000−78988号公報、特開平7−213280号公報に記載されている。)等を利用して調製することができる。例えば、本加水分解酵素を産生する微生物が形質転換体である場合には、当該形質転換体としては、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが少なくとも導入されてなる形質転換体(以下、本形質転換体2と記すこともある。)等をあげることができる。また、本加水分解酵素を産生する微生物が非形質転換体(即ち、前記能力が人為的に付与されていないにも係わらず、予め当該能力を有する微生物)である場合には、当該非形質転換体としては、後述の実施例のように、市販の微生物又は土壌などから前記能力を指標にしてスクリーニングすることにより単離された微生物等があげられる。このような微生物の例としては、アルスロバクターSC−6−98−28 (FERM BP−3658)株が属するアルスロバクター属、アスペルギルス・フラバス ATCC−11492株が属するようなアスペルギルス属、クロモバクテリウムSC−YM−1(FERM BP−6703)株が属するようなクロモバクテリウム属、キラザイムL−2やキラザイムL−5(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)の起源微生物が属するようなキャンデイダ属等に属する微生物等をあげることができる。
【0040】
「一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素」の具体的な例としては、例えば、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力をあげることができる。
<アミノ酸配列群>
(a1)配列番号5で示されるアミノ酸配列
(a2)配列番号7で示されるアミノ酸配列
(a3)配列番号9で示されるアミノ酸配列
(b1)配列番号5で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(b2)配列番号7で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(b3)配列番号9で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(c1)配列番号6で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(c2)配列番号8で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(c3)配列番号10で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d1)配列番号6で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(d2)配列番号8で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(d3)配列番号10で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(e1)クロモバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(e2)アルスロバクター属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
(e3)アスペルギルス属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列
【0041】
本形質転換体2を作製する際に用いられる、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素(即ち、本加水分解酵素)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本加水分解酵素遺伝子と記すこともある。)は、(1)天然に存在する遺伝子の中からクローニングされたものであってもよいし、(2)天然に存在する遺伝子であっても、このクローニングされた遺伝子の塩基配列において、その一部の塩基の欠失、置換又は付加が人為的に導入されてなる遺伝子(即ち、天然に存在する遺伝子を変異処理(部分変異導入法、突然変異処理等)を行ったものであってもよいし、(3)人為的に合成されたものであってもよい。
【0042】
ここで、前記(b)、(b1)、(b2)又は(b3)にある「アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」や前記(d)、(d1)、(d2)又は(d3)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAに対し相補性を有するDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列」には、例えば、配列番号5、7又は9で示されるアミノ酸配列を有する酵素が細胞内で受けるプロセシング、該酵素が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)、(b1)、(b2)又は(b3)にある「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号5、7又は9で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を見出すことのできる範囲であればよい。
また前記欠失、置換若しくは付加のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0043】
本発明において「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」には、例えば、2つの蛋白質間のアミノ酸配列に関する高い配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。また「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」には2つのDNA間の塩基配列に関する配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。
ここで「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
前記(d)又は(d1)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)に記載される方法や、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989年、農村文化社発行)に記載されているサザンハイブリダイゼーション法等の通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(900mM NaCl、90mM クエン酸三ナトリウムを含む溶液。尚ここでは、NaCl175.3g、クエン酸三ナトリウム88.2gを含む溶液を水800mlで溶解し、10N NaClでpHを調製した後、全量を1000 mlとした溶液を20×SSCとする。)中で65℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1−6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.1×SSCで65℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0044】
本加水分解酵素遺伝子は、前述の還元酵素遺伝子調製方法同様に行なえばよい。例えば、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
アルスロバクターグロビフォルミス(Arthrobacter globiformis IFO12958)等のアルスロバクター属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法)に準じてcDNAライブラリーを調製し、調製されたcDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、本加水分解酵素遺伝子を調製する。
【0045】
本形質転換体2を調製する方法としては、例えば、本加水分解酵素遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本加水分解酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるような組換プラスミド(例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域を本加水分解酵素遺伝子に連結して組換プラスミドを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換プラスミド)を作製し、これを宿主細胞に導入することにより作製する方法等があげられる。さらに、本加水分解酵素遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入する方法も利用することができる。
上記の組換プラスミドとしては、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーを持つ発現ベクターに、本加水分解酵素をコードする遺伝子が機能可能な形で導入されたものを好ましく挙げることができる。尚、発現ベクターとしては、各種のものが市販されている。
ここで、「機能可能な形で」とは、上記の組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本加水分解酵素遺伝子が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、又は、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。またコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム、ペニシリウム・シトリナム、バシラス・メガテリウムにおいて本加水分解酵素遺伝子の発現を制御しているプロモーターを利用してもよい。
また発現ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして容易に選択することができる。
さらなる高発現を導くことが必要な場合には、本加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボゾーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20, p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms, p202, 講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
宿主細胞としては、原核生物(例えば、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属)もしくは真核生物(例えば、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Aspergillus属)である微生物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞等を挙げることができる。例えば、本形質転換体2の大量調製が容易になるという観点では、大腸菌等を好ましく挙げることができる。
本加水分解酵素が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coliPulser System」 Bio−Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
宿主細胞において本加水分解酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドが導入された形質転換体を選抜するには、前記の如く、例えば、ベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
プラスミドが導入された宿主細胞(即ち、形質転換体)が本加水分解酵素遺伝子を保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
【0046】
本形質転換体2の培養は、微生物培養、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞の培養に使用される通常の方法によって行うことができる。例えば大腸菌の場合、適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等の液体培養のいずれの方法でもよく、好ましくは、通気撹拌培養法等の液体培養を挙げることができる。
培養温度は、本形質転換体2が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約10〜50℃、好ましくは約20〜40℃である。
培地のpHは約6〜8の範囲が好ましい。
培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1日〜約5日が好ましい。
本形質転換体2を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001〜5%(w/v)程度である。
さらに、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと、本加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体の場合には、本加水分解酵素の生産を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。
【0047】
本形質転換体2の取得は、例えば、前記の培養により得られた培養物を遠心分離等により形質転換体を沈殿物として回収すればよい。必要に応じて、回収前に当該形質転換体を、例えば、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)等の緩衝液等を用いて洗浄してもよい。
【0048】
本発明製造方法の第二工程では、触媒として、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素を産生する微生物が使用されるが、その用いられる形態には、(1)培養液をそのまま用いる形態、(2)培養液の遠心分離等により菌体を集め、当該菌体を緩衝液若しくは水で洗浄することにより得られた湿菌体を用いる形態、等の培養により得られた微生物の菌体をそのまま用いる形態が含まれる。この場合には、その使用量は、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体に対して、通常、0.01〜200重量倍程度、好ましくは0.1〜50重量倍程度である。
また、例えば、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素あるいは当該酵素又は当該酵素を産生する微生物の処理物も使用されるが、その用いられる形態には、培養液の遠心分離等により菌体を集め、当該菌体を緩衝液若しくは水で洗浄した湿菌体を、(1)有機溶媒(アセトン、エタノール等)処理することにより得られたものを用いる形態や(2)凍結乾燥処理することにより得られたものを用いる形態や(3)アルカリ処理することにより得られたものを用いる形態や(4)菌体を物理的に又は酵素的に破砕することにより得られたものを用いる形態、さらには、これらのものを公知の方法により固定化処理することにより得られたものを用いる形態も含まれる。この場合には、その使用量は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又はその誘導体に対して、通常、0.001〜2重量倍程度、好ましくは0.02〜0.5重量倍程度である。
【0049】
一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物のうち、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞が好ましく使用される。
【0050】
本形質転換体2から、その死菌化細胞を下記の方法により調製することもできる。
死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、カルボニル基、シアン及び抗生物質)をあげることができる。尚、これらの殺菌法のうちできるだけ本加水分解酵素の酵素活性を失活させず、かつ反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理方法を各種の反応条件に応じて適宜選択することがよい。
【0051】
このようにして調製された形質転換体又はその死菌化細胞は、例えば、凍結乾燥細胞、有機溶媒処理細胞、乾燥細胞等の形態、あるいは、固定化された形態(固定化物)で利用してもよい。
【0052】
固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に本形質転換体2又はその死菌化細胞を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本形質転換体2又はその死菌化細胞を閉じ込める方法)が挙げられる。
【0053】
続いて、本発明製造方法の第二工程における不斉加水分解反応について説明する。
当該工程において一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体を不斉水解する反応は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を作用させることによって達成される。
当該反応は、通常、水の存在下で行われる。水は緩衝液の形態であってもよく、この場合に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
尚、緩衝液を溶媒として用いる場合、その量は一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又はその誘導体1重量部に対して、通常、1〜300重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
当該反応に際しては、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又はその誘導体を反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0054】
反応温度としては、本形質転換体2又はその死菌化細胞に含まれた本加水分解酵素の安定性、反応速度の点から0〜70℃程度をあげることができ、好ましくは約10〜40℃があげられる。
反応pHとしては、反応が進行する範囲内で適宜変化させることができるが、例えば、5〜8をあげることができる。
【0055】
反応は、水の他に有機溶媒の共存下に行うこともできる。この場合の有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、キ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類、t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトン等のカルボニル基類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。
反応に使用する有機溶媒の量は、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又はその誘導体に対して、通常、100重量倍以下であり、好ましくは70重量倍以下である。
【0056】
反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜10日間、好ましくは30分間〜4日間の範囲をあげることができる。
【0057】
次に、本発明製造方法の第三工程について説明する。
当該工程において反応液から光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物
[(I)不斉水解しない光学異性体、即ち、
(I−a)一般式(3)
【化9】
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、
(I−b)当該エステルが有する不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体、
あるいは、
(II)反応液から不斉水解する光学異性体から生じた一般式(4)
【化10】
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸又はその誘導体、即ち、
(II−a)反応液から不斉水解する光学異性体である光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルから生じた一般式(4)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸、又は、
(II−b)反応液から不斉水解する光学異性体である光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルが有する不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体から生じた一般式(4)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸誘導体]
を回収するには、反応終了後に、触媒として酵素や微生物等を使用して化合物を製造する方法において通常用いられる化合物の回収方法に準じて目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。必要に応じて反応液を濾過したり、又は遠心分離等の処理により不溶物を除去した後に前記抽出操作を行なえばよい。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー等により
さらに精製することができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0059】
実施例1 (本発明製造方法の例(その1))
(1−1)本発明製造方法の第一工程(不斉還元反応);
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 15mlにグルコース 2.3g、NADP+ 0.7mg、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸メチル 0.52gを仕込んだところへ、実施例6で得られたHB101(pTrcRSbG12)の微生物培養液5.1gを添加した。反応中は、30℃で攪拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整した。20時間後、この反応混合物を、酢酸エチルで抽出、遠心分離することにより有機層を分離した。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチル 0.50g(光学純度94%ee、4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸メチルに対する収率94%)を得た。
【0060】
(1−2)本発明製造方法の第ニ工程(不斉加水分解反応)及び第三工程(回収);
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 200mLに、実施例7で得られたJM105(pCC160A189Y363term)の微生物培養液10mLを加えたところへ、上記(1−1)で得られた4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチル0.5g及びメタノール6mlを添加した。反応中は、20℃で撹拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整した。24時間後、この反応混合物を酢酸エチル200mLで抽出、遠心分離することにより有機層分離した。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、(S)−4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチル 0.41g(光学純度98%ee)を得た。
光学純度分析条件:
カラム:キラルセルOB−H(ダイセル化学)
移動層:ヘキサン/イソプロパノール/トリフルオロ酢酸=2700/300/3
検出器:UV 220nm
溶出時間:37.0分、38.8分
尚、当該工程において用いられた原料である4−ベンジルオキシ−3−オキソブタン酸メチルの調製は、Synthesis(1995)1014に記載される方法に準じた。また光学異性体の分析については、別途調製した4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルのラセミ体との比較により行なった。
【0061】
実施例2 (本発明製造方法の第一工程(不斉還元反応))
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 15mlにグルコース 0.75g、NADP+ 0.7mg、4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチル 0.30g、酢酸ブチル15mLを仕込んだところへ、実施例6で得られたHB101(pTrcRSbG12)の微生物培養液 2gを添加した。反応中は、30℃で攪拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整した。24時間後、この反応混合物を、酢酸エチルで抽出、遠心分離することにより有機層を分離した。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、4−ブロモ−3−ヒドロキシブタン酸メチル 0.27g(光学純度97%ee、4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチルに対する収率90%)を得た。
4−ブロモ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの光学純度分析
カラム:γ−TA(0.25mmφ×30m、0.125μm)
カラム温度:110゜C(20分)−(5℃/分)−180℃(1分)
キャリア−流量 :He1.0mL/分
注入口 :250℃
検出器 :250℃ スフ゜リット比 :1/50
溶出時間: 17.6、18.1分
【0062】
実施例3 (本発明製造方法(その2)
(3−1) 本発明製造方法の第一工程(不斉還元反応);
窒素置換をおこなった1Lオートクレーブに4−クロロアセト酢酸エチル40g、エタノール150mLを仕込んだところへ、窒素雰囲気下Ru2Cl4((+)−BINAP)2(C2H5)3N 0.5gを加えて密閉し、内温を100℃した。水素をオートクレーブ内に導入し内圧 約 1 Mpaで4時間攪拌を続けた。反応マスを室温に戻した後、反応液を濃縮、さらに減圧蒸留し(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを30gを得た。(GC分析による光学純度92%ee)。
4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの光学純度分析
カラム:γ−TA(0.25mmφ×30m、0.125μm)
カラム温度:110゜C(20分)−(5℃/分)−180℃(1分)
キャリア−流量 :He1.0mL/分
注入口 :250℃
検出器 :250℃ スフ゜リット比 :1/50
溶出時間: 13.5分、14.1分
【0063】
(3−2)本発明製造方法の付加的な工程、第ニ工程(不斉加水分解反応)及び第三工程(回収);
(3−2−a)本発明製造方法の付加的な工程(第一工程により得られる光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま公知の合成方法に基づいた付加的な工程を経ることにより誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの誘導体に関する製造方法);
上記(3−1)で得られた(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチル(光学純度92%ee)28gを5分間かけて滴下し、さらに室温で10分間攪拌した。その後、反応混合物を氷冷し、シアン化ナトリウム8.7gを加え、続いて内温25〜33℃で4.5時間攪拌した。反応混合物に濃塩酸を加え、反応混合物のpHを1未満とした後、酢酸エチルで5回抽出した。有機層を合わせて減圧下で溶媒を留去することにより、残渣を得た。得られた残渣を酢酸エチル200mLに溶解した後、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸の溶液を得た。この溶液に氷冷下で、トリエチルアミン20g及び硫酸ジエチル27gを滴下し、室温まで自然昇温させながら攪拌した。さらに55〜63℃で40分間攪拌した後、氷冷し、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加えた。有機層を分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濃縮した。濃縮物を減圧蒸留することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチル14g(純度95%;光学純度94%ee)を得た。
【0064】
(3−2−b)第ニ工程(不斉加水分解反応)及び第三工程(回収);
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 200mL、実施例8で得られたJM105(SC−6−98−28)の微生物培養液10mLを加えたところへ、上記(3−2−a)で得られた(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチル 0.5g及びメタノール6mlを添加した。反応中は、20℃で撹拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整した。24時間後、この反応混合物を濾過し、得られた濾液を酢酸エチルで抽出、遠心分離することにより有機層分離した。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチル 0.41g(光学純度97%ee)を得た。
光学純度分析条件
カラム:キラルセルOD(ダイセル化学)
移動層:ヘキサン/イソプロパノール=4/1
検出器:UV 230nm
溶出時間:11.5分、12.5分
尚、光学異性体の分析については、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルのラセミ体から別途調製した4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチルとの比較により行なった。
【0065】
実施例4 (本発明製造方法の例(その3))
(4−1)本発明製造方法の第一工程(不斉還元反応);
あらかじめ窒素置換した100mlオートクレーブに、4−クロロ−3−オキソブタン酸エチル約0.3molとt−ブチルアルコール120mlを加え、ここにRu2Cl4[(R)−BINAP]2Et3N 150μMの塩化メチレン2ml溶液を加え、水素圧10〜15kg/cm2、反応温度100℃で2時間攪拌して水素化を行なう。溶媒を留去して残渣を減圧蒸留することにより、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを得る。
【0066】
(4−2)本発明製造方法の付加的な工程(第一工程により得られる光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま公知の合成方法に基づいた付加的な工程を経ることにより誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの誘導体に関する製造方法;
水50gに塩化カルシウム23g及び水酸化カルシウム8.4gを加え、室温で20分間攪拌した。ここに上記(4−1)で得られる(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチル28gを5分間かけて滴下し、さらに室温で10分間攪拌する。その後、反応混合物を氷冷し、シアン化ナトリウム8.7gを加え、続いて内温25〜33℃で4.5時間攪拌する。反応混合物に濃塩酸を加え、反応混合物のpHを1未満とした後、酢酸エチルで5回抽出する。有機層を合わせて減圧下で溶媒を留去することにより、残渣を得る。得られる残渣を酢酸エチル200mLに溶解した後、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸の溶液を得る。この溶液に氷冷下で、トリエチルアミン20g及び硫酸ジエチル27gを滴下し、室温まで自然昇温させながら攪拌する。さらに55〜63℃で40分間攪拌した後、氷冷し、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加える。有機層を分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濃縮する。濃縮物を減圧蒸留することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを得る。
【0067】
(4−3)第ニ工程(不斉加水分解反応)及び第三工程(回収);
0.1Mリン酸バッファ−(pH6.5) 200mL、実施例8で得られたJM105(SC−6−98−28)の微生物培養液10mLを加えたところへ、上記(4−2)で得られる(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチル 0.5g及びメタノール6mlを添加する。反応中は、20℃で撹拌しながら、反応混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調整する。24時間後、この反応混合物を濾過し、得られる濾液を酢酸エチルで抽出、遠心分離することにより有機層分離する。さらに減圧下で分離された有機層の溶媒を留去することにより、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを得る。
光学純度分析条件
カラム:キラルセルOD(ダイセル化学)
移動層:ヘキサン/イソプロパノール=4/1
検出器:UV 230nm
溶出時間:11.5分、12.5分
尚、光学異性体の分析については、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルのラセミ体から別途調製した4−シアノ−3−ヒドロキシブタン酸エチルとの比較により行う。
【0068】
実施例5 (本還元酵素を産生する微生物の処理物の調製)
500mlの坂口フラスコに滅菌済み培地(1Lの水にポテト抽出物200g及びデキストロース20gを加えたもの)100mlを入れ、ここに市販のペニシリウムシトリナムIFO4631株(財団法人 発酵研究所(www.ifo.or.jp)から入手可能)の菌体を植菌した。これを30℃で好気条件下、48時間振盪培養した。その後、培養液を遠心分離(8000xg、10分)して菌体を集め、集められた菌体を生理的食塩水5mlに懸濁した。この菌体懸濁液に冷やしたアセトン300mlを加え、濾過した。回収された菌体を真空乾燥することにより、ペニシリウムシトリナムIFO4631のアセトン乾燥処理菌体10gを得た。
【0069】
実施例6 (本形質転換体の調製(その1))
(6−1)本還元酵素遺伝子の調製
(6−1−a)cDNAライブラリーの調製
500mlフラスコに培地(水にポテト・デキストロース・ブロース(ベクトン・ディッキンソン社製)を24g/Lの割合で溶解したもの)100mlを入れ、121℃で15分間滅菌した。ここに同組成の培地中で培養(30℃、48時間、振盪培養)したペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)IFO4631株(財団法人 発酵研究所(www.ifo.or.jp)から入手可能)の培養液0.5mlを加え、30℃で好気条件下、72時間振盪培養した。その後、培養液を遠心分離(8000xg、10分)して菌体を集め、集められた菌体を20mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)50mlで3回洗浄することにより、約1.0gの洗浄菌体を得た。
得られた洗浄菌体を用いて、チオシアン酸グアニジンフェノールクロロホルム法で全RNAを調製した。調製された全RNAから、Oligotex(dT)30−Super(宝酒造社製)を用いてpoly(A)を有するRNAを得た。
cDNAライブラリーの作製は、Gubler and Hoffman法に基づいて実施した。まず、上記のようにして得られたpoly(A)を有するRNA、Oligo(dT)18−リンカープライマー((含XhoIサイト)宝酒造社製)、RAV−2 Rtase及びSuperScriptII Rtaseを用いて一本鎖cDNAを調製した。調製された一本鎖cDNA(を含む前記反応液)にE. coli DNA polymerase、E. coli Rnase/E. coli DNA Ligase Mixture及びT4 DNA Polymeraseを加えることにより、二本鎖cDNAの合成及び当該二本鎖cDNAの平滑末端化処理を行った。
このようにして得られた二本鎖cDNAとEcoRI−NotI−BamHIアダプター(宝酒造社製)とのライゲーションを行った。ライゲーション後に得られたDNAを、以下の順で、リン酸化処理、XhoIでの切断処理、スピンカラム(宝酒造社製)を用いる低分子量DNAの除去処理、λZapII(EcoRI−XhoI切断)とのライゲーションした後、in vitro packaging kit (STRATAGENE社製)を用いてパッケージングすることにより、cDNAライブラリー(以下、cDNAライブラリー(A)と記すこともある。)を調製した。
【0070】
(6−1−b)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcRPcの構築)
配列番号13で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、上記(6−1−a)で調製されたcDNAライブラリーを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0071】
[反応液組成]
cDNAライブラリー原液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0072】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持した。
【0073】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、ベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE. coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcRPcと記すこともある。)を取り出した。
次に、取り出されたプラスミドpTrcRPcを鋳型として、Dye TerminatorCycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いたシークエンス反応を行った後、得られたDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析した。その結果を配列番号1に示した。
【0074】
(6−2)グルコース脱水素酵素遺伝子の調製
(6−2−a)染色体DNA(B)の調製
Bacillus megaterium IFO12108株(財団法人 発酵研究所(www.ifo.or.jp)から入手可能)からQiagen Genomic Tip (Qiagen社製)を用い、それに付属するマニュアルに記載される方法に従って染色体DNA(以下、染色体DNA(B)と記すこともある。)を精製した。
【0075】
(6−2−b)グルコース脱水素酵素遺伝子を含むプラスミドの調製
The Journal of Biological Chemistry Vol.264, No.11, 6381−6385(1989)に記載されたBacillus megaterium IWG3由来のグルコース脱水素酵素のアミノ酸配列に基づいて配列番号15で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号16で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーとを合成した。
配列番号4で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号5で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーとをプライマーに用い、前記(6−2−a)で精製された染色体DNA(B)を鋳型にして(6−1−b)に記載させる反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片を、Invitrogen社製TOPOTMTA cloningキットを用いてpCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションした。得られたライゲーション液でE. coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてグルコース脱水素酵素遺伝子を含むプラスミド(以下、このプラスミドをプラスミドpSDGDH12と記すこともある。)を取り出した。
次に、取り出されたプラスミドpSDGDH12を鋳型として、Dye Terminator Cycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いたシークエンス反応を行った後、得られたDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析した。その結果を配列番号19に示した。
【0076】
(6−2−c)還元酵素遺伝子及びグルコース脱水素酵素遺伝子を含むプラスミドの調製
プラスミドpSDGDH12に2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
一方、プラスミドpTrcRPcに2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE. coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて還元酵素遺伝子およびグルコース脱水素酵素遺伝子を含むプラスミド(以下、このプラスミドをpTrcRSbG12と記すこともある。)を取り出した。
【0077】
(6−2−d)還元酵素遺伝子及びグルコース脱水素酵素遺伝子を含む形質転換体の調製
pTrcRSbG12プラスミドを用いてE.coli HB101を形質転換した。得られた形質転換体を500ml容三角フラスコにLB培地100mlを入れて滅菌した後、アンピシリンを50μg/mlになるように加えたところに、接種し、30℃で18時間回転振とう培養した。次に3L容の小型培養槽(丸菱バイオエンジ社製、MDL型)に滅菌した液体培地(水1Lにグリセロ−ル15g、酵母エキス25g及びリン酸一カリウム0.4g、硫酸マグネシウム2g硫酸第一鉄0.1gを溶解し、pH7.0とする。)1500mlを仕込み、そこへ上記の三角フラスコで培養した培養液15mlを接種した。30℃で通気攪拌培養を始め、対数増殖期中期(培養10〜15時間)にIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド)を終濃度1mMになるように添加した後、滅菌した培地を流加し、さらに培養を継続、計40時間培養することにより、還元酵素遺伝子およびグルコース脱水素酵素遺伝子を含む形質転換体の培養液(この培養液をHB101(pTrcRSbG12)の培養液と記すこともある。)を得た。
【0078】
実施例7 (本加水分解酵素を産生する微生物の調製(その1))
クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ遺伝子組換え体微生物[JM105(pCC160A189Y363term)]は、特開平7−213280号公報等に記載される方法に準じて作成した。即ち、クロモバクテリウムSC−YM−1株(FERM P−14009)由来のエステラーゼ遺伝子に部位特異的変異を導入した遺伝子を含むプラスミドpCC160A189Y363termを作成し、大腸菌JM105株に導入することにより組換え微生物を構築した。
以下にプラスミドpCC160A189Y363termの構築方法を示す。
【0079】
(7−1)プラスミドpCC160Aの調製
まず、クロモバクテリウムSC−YM−1由来の野生型エステラーゼ遺伝子を含むプラスミドpCC101を特開平7−213280号公報に記載された実施例1〜5にある方法に準じて作成した。同公報に記載された実施例7にある方法に準じて、プラスミドpCC101(0.5μg)を鋳型DNAとし、同公報に記載された実施例6にある方法に準じて作成した変異プライマ−MY−1(100pmol:特開平7−213280号公報に配列番号27として記載されている。)および変異プライマー160A(100pmol:特開平7−213280号公報に配列番号11として記載されている。)を用いて、GeneAmp PCR Reagent キット(宝酒造株式会社製)によりDNA断片を増幅した。得られたPCR産物(270bpDNA断片)をSUPREC−02カラム(宝酒造株式会社製)を使用して精製した。
続いて、同様に、プラスミドpCC101(0.5μg)を鋳型DNAとし、変異プライマーRV−C(50pmol:特開平7−213280号公報に配列番号26として記載されている。)および先に精製した270bpDNA断片(50pmol)をプライマーとしてGeneAmp PCR Reagentキット(宝酒造株式会社製)によりDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素CelIIIおよびClaIで消化し、サンプルを4%アガロースゲル(NuSieve3:1Agarose(宝酒造株式会社製)で電気泳動後、約240bpのDNA断片を分離し、ジーンクリーンDNA精製キット(Bio101、Inc製)を用いて精製した。
一方、プラスミドpCC101(3μg)を制限酵素CelIIIおよびClaIで消化後、アルカリフォスファターゼ処理を行った。ついでこのDNA断片(4.2kbp)と先に調製して得られた変異の導入された約240bpのDNA断片をDNAライゲーションキット(宝酒造株式会社製)を用いて連結し、通常の方法に従って大腸菌JM109株に形質転換した。
このようにして得られた形質転換体から定法に従いプラスミドpCC160Aを調製した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。
【0080】
(7−2)プラスミドpCC189Yの調製
pCC160Aの調製の場合に用いられた変異プライマー160Aを特開平7−213280号公報に記載された実施例6にある方法に準じて作成した変異プライマー189Y(特開平7−213280号公報に配列番号24として示されている。)に変更して、その他はプラスミドpCC160Aの調製の場合と同様にして、プラスミドpCC189Yを調製した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。
【0081】
(7−3)プラスミドpCC363termの調製
プラスミドpCC101(0.5μg)を鋳型DNAとし、変異プライマーMY−2(100pmol:特開平7−213280号公報に配列番号30として示されている。)および変異プライマーA363term(100pmol:特開平7−213280号公報に配列番号28として示されている。)を用いて、GeneAmp PCR Reagent キット(宝酒造株式会社製)によりDNA断片を増幅した。得られたPCR産物(150bp断片)をSUPREC−02カラム(宝酒造株式会社製)を使用して精製した。
続いて、同様にプラスミドpCC101(0.5μg)を鋳型DNAとし、変異プライマーRV−D(50pmol:特開平7−213280号公報に配列番号29として示されている。)および先に精製した150bpDNA断片(50pmol)をプライマーとしてGeneAmp PCR Reagentキット(宝酒造株式会社製)によりDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素BstPIおよびXbaIで消化し、サンプルを4%アガロースゲル(NuSieve3:1Agarose(宝酒造社株式会社製)で電気泳動し、約280bpのDNA断片を分離し、ジーンクリーンDNA精製キット(Bio101、Inc製)を用いて精製した。一方、pCC101(3μg)をBstPIおよびXbaIで消化し、アルカリフォスファターゼ処理を行った。ついでこの4.2kbpのDNA断片と先に調製して得られた変異の導入された280bpのDNA断片をDNAライゲーションキット(宝酒造株式会社製)を用いて連結し、通常の方法に従って大腸菌JM109株に形質転換した。得られた形質転換体から定法に従ってプラスミドpCC363termを調製した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。
【0082】
(7−4)多重変異型エステラーゼ生産プラスミドの構築
上記(7−1)で得られた変異体プラスミドpCC160A(10μg)を制限酵素EcoRIおよびFspIで消化して得た0. 6kbpのDNA断片、上記(7−2)で得られた変異体プラスミドpCC189Y(10μg)をFspIおよびBstPIで消化して得た0.4kbpの断片および上記(7−3)で得られたプラスミドpCC363term(3μg)を制限酵素BstPIおよびEcoRIで消化して得た3. 4kbpのDNA断片の3種をDNAライゲーションキット(宝酒造株式会社製)を用いて連結し、通常の方法に従って大腸菌JM105株に形質転換し、多重変異型エステラーゼ遺伝子を含有するプラスミドpCC160A189Y363termを含有する形質転換体微生物を得た。
【0083】
(7−5)形質転換体微生物の培養
500ml容三角フラスコに液体培地(水1Lにグリセロ−ル5g、酵母エキス6g及びリン酸一カリウム9g、リン酸二カリウム4gを溶解し、pH7.0とする。)100mlを入れて滅菌した後、アンピシリンを50μg/mlになるように加え、上述の方法で作成したクロモバクテリウム(Chromobacterium)SC−YM−1株由来のエステラ−ゼ遺伝子組換え微生物の斜面培養から1白金耳接種し、30℃で24時間回転振とう培養した。次に3L容の小型培養槽(丸菱バイオエンジ社製、MDL型)に滅菌した液体培地(水1Lにグリセロ−ル15g、酵母エキス25g及びリン酸一カリウム0.4g、硫酸マグネシウム2g硫酸第一鉄0.1gを溶解し、pH7.0とする。)1500mlを仕込み、そこへ上記の三角フラスコで培養した培養液15mlを接種した。30℃で通気攪拌培養を始め、対数増殖期中期(培養10〜15時間)にIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド)を終濃度1mMになるように添加した後、滅菌した培地を流加し、さらに培養を継続、計40時間培養することにより、微生物培養液(この培養液をJM105(pCC160A189Y363term)の培養液と記すこともある。)を得た。
【0084】
実施例8 (本加水分解酵素を産生する微生物の調製(その2))
アルスロバクターSC−6−98−28株(FERM P−11851)由来のエステラーゼ遺伝子組換え体微生物[JM105(SC−6−98−28)]は、特開平5−56787号公報記載の方法に準じて作成した。
即ち、特開平5−56787号公報に記載される実施例にある方法に準じてアルスロバクターSC−6−98−28株由来のエステラーゼ遺伝子を含むプラスミドpAGE−1を調製した。これを制限酵素NspV、HindIIIで消化することによりエステラーゼの翻訳領域を切り出し、エステラーゼ遺伝子の開始コドンGTGをATGに変換するために合成したDNA断片および、制限酵素BamHI、HindIIIで消化したlacプロモータを有する発現ベクターpUC118(宝酒造株式会社製)とライゲーションを行った。この様にして、lacプロモーターの下流にアルスロバクターSC−6−98−28株由来のエステラーゼ遺伝子を有する大腸菌用発現プラスミドを作成した後、定法に従い大腸菌JM105株に導入することにより組換え体微生物を構築した。
アルスロバクタ−(Arthrobacter)SC−6−98−28株由来のエステラ−ゼ遺伝子組換え微生物を、実施例7(7−5)に記載される方法と同様にして培養し、微生物培養液(この培養液をJM105(SC−6−98−28)の培養液と記すこともある。)を得た。
【0085】
実施例9 (本形質転換体の調製(その2))
(9−1)本還元酵素遺伝子の調製
配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドpKARを以下のようにして調製した。
まず、Appl Microbial Biotechnol(1999)52:386−392等に記載される公知のプラスミドpUAR(受託番号FERM P−18127)から、配列番号2で示されるDNAを含むDNA断片を、PstI及びSmaIを用いて切り出した。切り出されたDNA断片を、PstI/SmaI処理したpKK223−3ベクター(Amersham Pharmacia Biotech社製)のTacプロモーターの下流に挿入した。このようにしてプラスミドpKARを構築した。
【0086】
(9−2)本還元酵素を産生する形質転換体の調製
構築されたプラスミドpKARを用いてE. coli JM109株を形質転換した。
次に、フラスコに液体培地(水1000mlにトリプトン10g、酵母エキス5g及び塩化ナトリウム5gを溶解した。この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを7.0に調整した。)100mlを入れ、滅菌した後、アンピシリンを100μg/ml、ZnCl2を0.01%(w/v)、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を0.4mMになるように加えた。このようにして調製された培地に、上記で得られた形質転換体(E. coli JM109/pKAR株)が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で14時間振盪培養した。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収した。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、本還元酵素を産生する形質転換体である洗浄菌体を得た。
【0087】
実施例10 (本形質転換体の調製(その3))
(10−1)染色体DNAの調製
フラスコに液体培地(水1000mlにトリプトン5g、酵母エキス2.5g、塩化ナトリウム4g、ゼラチン2.5g、酢酸ナトリウム1.5g及びスレオニン2.4gを溶解する。この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを7.0に調整する。)100mlを入れ、滅菌する。このようにして調製された培地に、特開平10−94399等に記載される公知のコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム亜種(Corynebacterium pseudodiphteriticum)ST−10株(受託番号FERM P−13150)が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で10時間振盪培養する。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収する。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、洗浄菌体を得る。
このようにして得られる洗浄菌体を用いて、J.C.Wangらの方法(Appl Microbiol Biotechnol (1999)52:386−392)によって染色体DNAを調製する。
【0088】
(10−2)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcPARの構築)
配列番号17で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号18で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに、前記(2−1)で調製される染色体DNAを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行う。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0089】
[反応液組成]
染色体DNA 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0090】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する。
【0091】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化する。次いで得られるDNA断片を精製する。
一方、ベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化する。次いで得られるDNA断片を精製する。
このようにして精製して得られる2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションする。得られるライゲーション液でE. coli DH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcPARと記すこともある。)を取り出す。
【0092】
実施例11 (本還元酵素を産生する微生物の取得方法)
(11−1)洗浄菌体の調製
市販の微生物又は土壌などから単離した微生物を滅菌LB培地(10ml)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
(11−2)スクリーニング
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)20mlに、上記(11−1)で調製された洗浄菌体1g、NADP+12mg、NAD+12mg及びグルコース2.5gを加える。この混合物に、さらに一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステル240mgを加えた後、当該混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調製する。このようにして得られる混合物(反応液)を30℃で4時間攪拌することにより反応を行う。反応終了後、反応液に酢酸エチル25mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収する。回収される水層に再度酢酸エチル25mlを加えて同様な操作を行う。このようにして得られる有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥する。乾燥後、クロロホルムを留去することにより残渣を得る。得られる残渣に、3−ヒドロキシブタン酸エステルが含まれていることを液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにて定性及び/定量分析により確認する。
【0093】
実施例12 (本加水分解酵素を産生する微生物の取得方法)
(12−1)洗浄菌体の調製
市販の微生物又は土壌などから単離した微生物を滅菌LB培地(10ml)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
(12−2)スクリーニング
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)20mlに、上記(12−1)で調製された洗浄菌体1gを加える。この混合物に、さらに一般式(2)で示される3−ヒドロキシブタン酸エステル240mgを加え、30℃で10時間攪拌することにより反応を行う。反応終了後、反応液に酢酸エチル25mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収する。回収される水層に再度酢酸エチル25mlを加えて同様な操作を行う。このようにして得られる有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥する。乾燥後、クロロホルムを留去することにより残渣を得る。得られる残渣に、3−ヒドロキシブタン酸エステルが含まれていることを液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにて定性及び/定量分析により確認する。
【0094】
【発明の効果】
本発明により、光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を簡便に製造することができる。
[配列表フリーテキスト]
配列番号11
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号12
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号13
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号14
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号15
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号16
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号17
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号18
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
【0095】
【配列表】
Claims (25)
- 光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物の製造方法であって、
(I)一般式(1)
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基、あるいは、ハロゲノメチル基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)
(式中、XおよびRは前記と同じ意味を表し、*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する第一工程、
(II)前記第一工程後、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体を不斉水解する第二工程、及び
(III)前記第ニ工程後、反応液から不斉水解しない光学異性体
、あるいは、反応液から不斉水解する光学異性体から生じた
光学活性3−ヒドロキシブタン酸又はその誘導体を回収する第三工程
を有することを特徴とする製造方法。 - 第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物が、前記能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 形質転換体が、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが導入されてなる形質転換体であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
- 形質転換体が大腸菌であることを特徴とする請求項3又は4記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される−3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2又は4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2又は4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4−置換−3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性4−置換−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列 - 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列 - 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列 - 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力が、配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物の由来が、コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として金属触媒を、水素雰囲気下において一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 金属触媒が、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体であることを特徴とする請求項14記載の製造方法。
- ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体における光学活性ホスフィンが、(R)−BINAP又は(S)−BINAPであることを特徴とする請求項15記載の製造方法。
- 第二工程における不斉水解のための反応が、触媒として一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又は前記誘導体に作用させ、これを不斉水解する反応であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- (1)第一工程における不斉還元のための反応が、触媒として一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルに作用させ、これを不斉還元して一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応であって、かつ、(2)第二工程における不斉水解のための反応が、触媒として一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物を、前記光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル又は前記誘導体に作用させ、これを不斉水解する反応であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- エステル加水分解酵素が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体の(S)体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素であることを特徴とする請求項17記載の製造方法。
- エステル加水分解酵素が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体の(R)体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素であることを特徴とする請求項17記載の製造方法。
- 一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素又は当該酵素を産生する微生物、あるいはそれらの処理物が、前記能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞であることを特徴とする請求項17記載の製造方法。
- 形質転換体が、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドが導入されてなる形質転換体であることを特徴とする請求項21記載の製造方法。
- 形質転換体が大腸菌であることを特徴とする請求項21又は22記載の製造方法。
- 一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項21記載の製造方法。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号5、7,9で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号5、7,9で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号6、8,10で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号6、8,10で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)クロモバクテリウム属、アルスロバクタ−属又はアスペルギルス属に属する微生物由来の、一般式(2)で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有する酵素のアミノ酸配列 - 一般式(1)
(式中、Xはシアノメチル基、置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、置換されていてもよいアルコキシメチル基、置換されていてもよいアシルオキシメチル基又はヒドロキシメチル基、あるいは、ハロゲノメチル基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数1から4の低級アルキル基を表す。)
で示される3−オキソブタン酸エステルから光学活性3−ヒドロキシブタン酸系化合物を製造するための触媒としての、前記一般式(1)で示される3−オキソブタン酸エステルの3位にあるカルボニル基を不斉還元する能力を有する還元触媒と一般式(2)
(式中、XおよびRは前記と同じ意味を表し、*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル、又は、当該エステルからその不斉炭素の絶対立体配置を保持したまま誘導された光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体のエステル結合部位を不斉水解する能力を有するエステル加水分解触媒との両触媒の使用。
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| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2006325504A (ja) * | 2005-05-27 | 2006-12-07 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 光学活性シクロプロパンカルボン酸の製造方法 |
| CN114829336A (zh) * | 2019-10-10 | 2022-07-29 | 达特沙尔股份公司 | 三-(3-羟基丁酸)-甘油酯的制备方法 |
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- 2002-07-11 JP JP2002202396A patent/JP2004041070A/ja active Pending
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