JP2002172166A - プレフィルドシリンジ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 血管確保を問題なく行うことができ、また潤
滑剤による汚染の問題を生じることもなく、更に金属製
の注射針とその他の合成樹脂部分とを容易に分別回収す
ることができるプレフィルドシリンジを提供することを
目的とする。 【解決手段】 内部に薬液ｍが充填され、シール膜１２
又は小孔１５を有する薄板１４で塞がれた薬液カートリ
ッジ１と、注射針５が取り付けられた有底円筒状のシリ
ンジ本体２と、該シリンジ本体の中心軸に沿って立設さ
れた柱状体３と、該柱状体３の先端部に設けられたピス
トン部４とを具備してなり、上記薬液カートリッジ１を
上記シリンジ本体２内に挿入して、上記ピストン部４を
該薬液カートリッジ１内に圧入し、該薬液カートリッジ
１内で上記ピストン部４を摺動させることにより、該カ
ートリッジ１内の薬液ｍを上記柱状体３の薬液通路３１
を通して上記注射針５先端から射出させるように構成し
たことを特徴とするプレフィルドシリンジを提供する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、予め薬液が充填さ
れた薬液カートリッジをそのままシリンジ本体に装着し
て注射投薬することができるプレフィルドシリンジに関
する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来か
ら、予め薬液を充填した薬液カートリッジをシリンジ本
体に装着して、注射投薬を行うプレフィルドシリンジが
提案されており、このプレフィルドシリンジによれば、
アンプルやバイアルから薬液をシリンジに吸引注入して
投薬を行う通常の注射器に比べて、迅速に投薬を行うこ
とができ、かつ薬液をシリンジに充填する際の汚染も確
実に防止することができる。

【０００３】このようなプレフィルドシリンジとして
は、カートリッジ内に薬液を充填してピストンを兼ねた
ゴム栓でカートリッジを閉塞し、このカートリッジをシ
リンジ本体内に設けられた柱状部で押圧することによ
り、カートリッジ内の薬液をシリンジ本体先端に設けら
れた注射針から射出させるタイプのシリンジが、特開平
６−９８９３５号公報，同８−１５５０２８号公報等に
提案されている。

【０００４】例えば、特開平６−９８９３５号公報に開
示されたシリンジは、図７に示したとおり、薬液ｍが充
填された薬液カートリッジｂと、この薬液カートリッジ
ｂが装着されるシリンジ本体ａとからなるもので、次の
ようにして投薬を行うものである。即ち、上記薬液カー
トリッジｂを上記シリンジ本体ａ内に挿入すると共に、
このシリンジ本体ａ内に軸線に沿って立設された柱状体
ｃを薬液カートリッジｂ内に挿入し、該柱状体ｃ先端に
設けられた凸部ｆで薬液カートリッジｂ内のゴム栓ｄに
設けられた閉鎖体ｅを押圧してゴム栓ｄに設けられた薬
液通路ｇを開通させると共に、該薬液通路ｇと上記柱状
体ｃに設けられた薬液通路ｈとを連通させる。なお、図
示していないが、上記シリンジ本体ａの先端には注射針
を取り付けておく。

【０００５】この状態で薬液カートリッジｂを押圧し、
上記柱状体ｃにより上記ゴム栓ｄを薬液カートリッジｂ
内で摺動させることにより、該薬液カートリッジｂ内の
薬液ｍを薬液通路ｇ及びｈを通してシリンジ本体ａの先
端に取り付けた図示しない注射針から射出させることに
より、投薬を行うものである。なお、特開平８−１５５
０２８号公報に開示のシリンジも、ゴム栓ｄに設けられ
た閉鎖体ｅ及び薬液通路ｇの形状が若干異なるのみで、
同様の機構により投薬を行うように構成されたものであ
る。

【０００６】このプレフィルドシリンジによれば、上述
のように、上記薬液カートリッジｂをシリンジ本体ａに
装着するだけの単純な作業により、速やかに投薬を行う
ことができ、薬液充填に伴う汚染も可及的に防止される
ものである。

【０００７】しかしながら、このプレフィルドシリンジ
には、上記ゴム栓ｄの摺動を良好ならしめるために用い
られるシリコーングリース等の潤滑剤により薬液ｂが汚
染される虞がある。即ち、上記薬液カートリッジｂの内
周面或いはゴム栓ｄの外周面には、通常ゴム栓ｄの摺動
を良好ならしめるためにシリコーングリース等の潤滑剤
が塗布又は焼き付けされるが、このシリコーングリース
等の潤滑剤が長時間カートリッジｂ内に充填された薬液
ｍと接触することとなり、また製剤製造工程（薬液をカ
ートリッジ内に充填する工程）時に、このシリコーング
リース等の潤滑剤が薬液ｍ中に混入する虞がある。ま
た、薬液の種類によっては、このシリコーングリース等
の潤滑剤のためにプレフィルドシリンジの形態を採るこ
とが困難な場合もある。更に、ゴム栓ｄに塗布する潤滑
剤を極少量とした場合には、薬液カートリッジｂとゴム
栓ｄとが常時接触していることによって、潤滑剤が経時
と共に接触面を拡散し、初期摺動抵抗が高くなるという
問題を生じることとなる。

【０００８】更に、このプレフィルドシリンジには、そ
の構造上の理由から取り扱い性の問題もある。即ち、静
脈注射を行う場合、通常の注射器では血管内に注射針を
刺入した後、ピストンを僅かに後退させることにより血
管内を流れる血液を注射器内に逆流させて、注射針先端
が確実に血管内に刺入されていることを確認する、所謂
血管確保を行った後、薬液を注入する方法がとられる
が、上記図７に示したプレフィルドシリンジでは、薬液
カートリッジｂを後退させてもピストンとなる上記ゴム
栓ｄを後退させることができないため、この血管確保の
作業を行うことはその構造上不可能である。

【０００９】一方、このような血管確保を行うことが可
能なプレフィルドシリンジとしては、特公昭５２−８６
３４号公報に開示されたシリンジが提案されている。即
ち、このシリンジは、図８に示したように、シリンジ本
体ａに設けられた柱状体ｃの先端部と薬液カートリッジ
ｂ内に配設されたピストンｄの両方に互いに螺合する螺
子部ｊ，ｊを設けると共に、上記柱状体ｃ内に注射針ｋ
と一体に連通する液流通管ｐを埋設し、該液流通管ｐの
先端を柱状体ｃ先端から突出させたものである。そし
て、このプレフィルドシリンジは、上記薬液カートリッ
ジｂを上記シリンジ本体ａ内に挿入し、上記柱状体ｃの
先端部を薬液カートリッジｂ内に挿入して上記２つの螺
子部ｊ，ｊを螺合させることにより、柱状体ｃとピスト
ンｄとを連結させると共に、上記液流通管ｐの先端部を
ピストンｄの隔壁ｒを貫通させて薬液カートリッジｂ内
と注射針ｋとを連通させ、この状態で薬液カートリッジ
ｂを押圧してピストンｄを摺動させることにより、薬液
ｍを注射針ｋから射出させるものである。

【００１０】このプレフィルドシリンジによれば、上記
螺子部ｊ，ｊにより柱状体ｃとピストンｄとが連結され
るので、薬液カートリッジｂを後退させることにより、
ピストンｄを後退させることができ、上述した血管確保
の作業を行うことが可能である。

【００１１】しかしながら、このプレフィルドシリンジ
も、薬液が充填された薬液カートリッジｂ内に予めピス
トンｄを挿入しておくように構成されているため、上述
したシリコーングリース等の潤滑剤による汚染の問題を
生じることとなる。また、このプレフィルドシリンジ
は、注射針ｋと一体に形成された金属管である液流通管
ｐが柱状体ｃに埋設されているため、金属製の注射針ｋ
及び液流通管ｐと合成樹脂製のシリンジ本体ａ及び薬液
カートリッジｂとを分別回収することが困難である、と
いう問題もある。

【００１２】更に、従来のプレフィルドシリンジでは、
上記のように、薬液カートリッジを閉塞するためにピス
トン部をカートリッジ内に圧挿しているが、この場合シ
リンジ本体と薬液カートリッジとを接合してカートリッ
ジ内部をシリンジ本体の薬液通路と連通させた時に、コ
アリングが薬液漏洩の問題を生じる虞がある。このた
め、従来はこの問題を回避するため、特公昭５６−１２
１４０号公報や上記特開平６−９８９３５公報及び同８
−１５５０２８号公報に見られるように、ピストン部に
特殊な構造を与える必要があり、これが製造コストを大
幅に引き上げることとなり、製造コスト面で現実的では
ない。

【００１３】本発明は、上記事情に鑑みなされたもの
で、取り扱い性に優れ血管確保を問題なく行うことがで
き、またシリコーングリース等の潤滑剤による汚染の問
題を生じることもなく、更に注射針等の金属部分とその
他の合成樹脂部分とを容易に分別回収することができる
プレフィルドシリンジを提供することを目的とする。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するため、第１の発明として、内部に薬液が充填さ
れ、シール膜で密封された有底筒状の薬液カートリッジ
と、注射針が取り付けられた底壁を有する円筒状のシリ
ンジ本体と、該シリンジ本体の底壁からシリンジ本体の
中心軸に沿って立設され、上記注射針と連通した薬液通
路を有する柱状体と、該柱状体の先端部外周に設けられ
たピストン部とを具備してなり、上記薬液カートリッジ
を上記シリンジ本体内に挿入して、該薬液カートリッジ
の上記シール膜を上記柱状体先端部で突き破り、上記ピ
ストン部を該薬液カートリッジ内に圧入し、この状態で
薬液カートリッジを操作して該薬液カートリッジ内で上
記ピストン部を摺動させることにより、該薬液カートリ
ッジ内の薬液を上記薬液通路を通して上記注射針先端か
ら射出させるように構成したことを特徴とするプレフィ
ルドシリンジを提供する。

【００１５】この第１発明にかかるプレフィルドシリン
ジは、上記のように、上記薬液カートリッジを上記シリ
ンジ本体内に挿入すると共に、シリンジ本体に設けられ
た柱状体を薬液カートリッジ内に挿入し、該柱状体の先
端部外周に設けられたピストン部を薬液カートリッジ内
で摺動させることにより、柱状体に設けられた薬液通路
を通して薬液カートリッジ内の薬液をシリンジ本体先端
部に取り付けられた注射針から射出させるものである。

【００１６】この場合、このプレフィルドシリンジで
は、薬液カートリッジ内で摺動することにより薬液を押
し出すピストン部がシリンジ本体側の柱状体先端部に設
けられているので、シリンジ本体にセットされた薬液カ
ートリッジを進退させることにより、該薬液カートリッ
ジ内で上記ピストン部を進退させることができる。従っ
て、静脈注射を行う場合に、血管内に注射針を刺入した
後、薬液カートリッジを操作して上記ピストン部を僅か
に後退させることにより、血管内を流れる血液をシリン
ジ内に逆流させて、注射針先端が確実に血管内に刺入さ
れていることを確認することができ、所謂血管確保を確
実に行うことができる。

【００１７】また、このプレフィルドシリンジは、ピス
トン部がシリンジ本体の柱状体に設けられており、薬液
カートリッジ内には薬液のみを充填し、これを上記シー
ル膜により密閉しておけばよいので、ピストン部の摺動
性を良好ならしめるためにシリコーングリース等の潤滑
剤を用いる場合でも、これをピストン部側に塗布してお
くことにより、薬液カートリッジ内の薬液がシリコーン
グリース等の潤滑剤と一切接触しない状態で製剤化し流
通保管することができ、シリコーングリース等の潤滑剤
の混入を可及的に防止することができると共に、これら
潤滑剤の影響を殆ど考慮することがないので、適用薬剤
の範囲も拡大することができるものである。

【００１８】更に、本発明は、上記目的を達成するた
め、第２の発明として、小孔を有する薄板が摺動可能に
内挿されて閉塞されていると共に、該摺動板の内側に薬
液が充填された有底筒状の薬液カートリッジと、注射針
が取り付けられた底壁を有する円筒状のシリンジ本体
と、該シリンジ本体の底壁からシリンジ本体の中心軸に
沿って立設され、上記注射針と連通した薬液通路を有す
る柱状体と、該柱状体の先端部外周に設けられたピスト
ン部とを具備してなり、上記薬液カートリッジを上記シ
リンジ本体内に挿入して、上記ピストン部を該薬液カー
トリッジ内に圧入し、この状態で薬液カートリッジを操
作して該薬液カートリッジ内で上記ピストン部を摺動さ
せることにより、該薬液カートリッジ内の薬液を上記薄
板の小孔及び上記薬液通路を通して上記注射針先端から
射出させるように構成したことを特徴とするプレフィル
ドシリンジを提供する。

【００１９】この第２発明にかかるプレフィルドシリン
ジは、上記第１発明におけるシール膜に代えて、小孔が
形成された薄板を用い、この薄板を摺動可能に内挿する
ことにより薬液が充填された薬液カートリッジを閉塞し
たものであり、上記第１発明のプレフィルドシリンジと
同様に、シリンジ本体に設けられた柱状体を薬液カート
リッジ内に挿入し、該柱状体の先端部外周に設けられた
ピストン部を薬液カートリッジ内で摺動させることによ
り、柱状体に設けられた薬液通路を通して薬液カートリ
ッジ内の薬液をシリンジ本体先端部に取り付けられた注
射針から射出させるものである。

【００２０】この場合、この第２発明にかかるプレフィ
ルドシリンジでは、上記薄板が上記ピストン部に押圧さ
れて該ピストン部と共に摺動し、この薄板に設けられた
小孔を通して上記柱状体に設けられた薬液通路へと薬液
が圧送されるものである。このとき、実際に薬液を薬液
カートリッジから押出すのは上記ピストン部により行わ
れ、上記薄板は単に保管流通時に薬液をカートリッジ内
に保持しておくためのもので、投薬時には単に上記ピス
トン部に追随して薬液カートリッジ内を摺動するだけで
ある。従って、この薬液カートリッジに内挿された上記
薄板は、薬液カートリッジ内の薬液の漏洩を防止出来る
程度にカートリッジ内周壁に密着させればよいので特に
潤滑剤を用いる必要はない。

【００２１】このため、上記第１発明の場合と同様に、
ピストン部の摺動性を良好ならしめるためにシリコーン
グリース等の潤滑剤を用いる場合でも、これをピストン
部側に塗布しておくことにより、薬液カートリッジ内の
薬液がシリコーングリース等の潤滑剤と一切接触しない
状態で製剤化し流通保管することができ、シリコーング
リース等の潤滑剤の混入を可及的に防止することができ
ると共に、これら潤滑剤の影響を殆ど考慮することがな
いので、適用薬剤の範囲も拡大することができるもので
ある。なお、上記薄板に形成された小孔は、薬液の圧出
に支障を来たさず、かつ当該薬液の界面張力との関係か
ら該薬液が不意に滴出するのを阻止し得る程度の孔径に
設計されるものであるが、その孔径が０．１〜２ｍｍの
ものであれば、大気圧により実質的に閉塞された状態と
なりカートリッジ内の薬液が漏洩することはなく、かつ
投薬時には十分な液流通量を確保することができるが、
特に０．３〜１ｍｍの孔径のものであることが好まし
い。

【００２２】また、上述した血管確保を行う場合には、
薬液カートリッジを操作して上記ピストン部を僅かに後
退させることにより、上記第１発明のプレフィルドシリ
ンジと同様に、血管内を流れる血液をシリンジ内に逆流
させることにより、容易かつ確実に行うことができる。
この場合、薬液カートリッジ内の上記薄板は特に摺動す
ることなく該薄板に設けられた小孔を通して薬液が流通
するだけである。

【００２３】更に、上記第１発明及び第２発明のいずれ
のプレフィルドシリンジも、上記柱状体をシリンジ本体
と一体に合成樹脂で形成すると共に、該シリンジ本体に
設けられる注射針を着脱可能とすることにより、金属材
料からなる注射針と合成樹脂からなるその他の部材とを
容易に分別回収することができるものである。

【００２４】

【発明の実施の形態及び実施例】以下、実施例を示し本
発明をより具体的に説明する。 ［第１実施例］図１は、上記第１の発明にかかるプレフ
ィルドシリンジの一例を示すもので、同図に示されてい
るように、本例プレフィルドシリンジは薬液カートリッ
ジ１と、シリンジ本体２と、カバーキャップ６とから構
成されている。

【００２５】上記薬液カートリッジ１は、図１に示され
ているように、合成樹脂で形成された容器本体１１内に
薬液を充填し、シール膜１２及びカバー膜１３でこの薬
液を容器本体１１内に密封したものである。

【００２６】この薬液カートリッジ１を構成する上記容
器本体１１は、合成樹脂で形成された有底円筒状のもの
で、その底壁内面には後述するシリンジ本体２に設けら
れた柱状体３先端部の形状に相応した漏斗状の凹部が形
成されており、また容器本体１１の開放端部分はやや大
径に形成され、その境界部分の内周面には周方向に沿っ
て円形の段差が形成されている。そして、この容器本体
１１の内部は上記段差に張設されたシール膜１２及び開
口端面に張設されたカバー膜１３により密封されてお
り、上記シール膜１２の内側に薬液ｍが充填されてい
る。

【００２７】ここで、上記シール膜１２は、上記容器本
体１１の段差部に固着されるもので、特に制限されるも
のではないが、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン
テレフタレート（ＰＥＴ）、または環状ポリオレフィン
（ＣＯＣ）等の樹脂フィルムを用いることができ、特に
薬液カートリッジの容器本体１１と同材質のものが好ま
しく用いられる。

【００２８】一方、上記カバー膜１３としては、通常、
アルミニウム箔と、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピ
レン（ＰＰ）、エチレンビニルアルコール（ＥＶＡ）等
の合成樹脂フィルムとの積層フィルムやアルミニウム箔
にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアル
コール等の樹脂を塗布したフィルムなどが用いられ、上
記容器本体１１開口面に易剥離状態（イージーピール）
に張着されたものである。また、図１に示されているよ
うに、このカバー膜１３には、上記容器本体１１開口端
の周縁から突出した摘み部１３１が設けられており、こ
の摘み部１３１を摘んでこのカバー膜１３を剥離するよ
うになっている。

【００２９】また、上記シリンジ本体２は、図１に示さ
れているように、底壁を有する円筒状本体２１内に、そ
の底面から中心軸に沿って円柱状の柱状体３を立設した
ものである。上記円筒状本体２１の底壁外面中央部に
は、注射針５を取り付ける凸部２２が突設されていると
共に、開放端外周縁部には、鍔状のフランジ２３が一体
に形成されている。

【００３０】上記柱状体３には、その中心線に沿って薬
液通路３１が形成されており、この薬液通路３１は円筒
状本体２１の上記凸部２２を貫通して該凸部２２の先端
に開口している。また、この柱状体３の先端部には、該
柱状体３の外周面から外方へと突出する厚肉鍔状のピス
トン部４が設けられていると共に、該ピストン部４の中
心を貫通して穿入管３２が一体に突設されており、この
穿入管３２は上記薬液通路３１と連通していると共に、
その先端が鋭利に形成されている。なお、図１中の３２
１，３２１は、上記穿入管３２を補強する補強リブであ
る。

【００３１】このシリンジ本体２の上記凸部２２には、
図１に示されているように、注射針５が取り付けられて
いる。この注射針５は、略中空円錐状の嵌合体５１の頂
部に植設されたもので、上記嵌合体５１を凸部２２に嵌
着することにより、シリンジ本体２に着脱可能に取り付
けられている。そして、図１に示されているように、こ
の注射針５を覆って中空円錐状のカバーキャップ６が着
脱可能に取り付けられている。

【００３２】ここで、上記容器本体１１及びシリンジ本
体２は、いずれも合成樹脂により形成されたものであ
り、その合成樹脂としては、ポリプロピレン（ＰＰ）、
ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、環状ポリオレ
フィン（ＣＯＣ）など、種々の合成樹脂が例示され、適
宜選定することができる。なお、この容器本体１１を形
成する樹脂は、下記の点を考慮して選択することが好ま
しい。 強度に優れ、破損しにくい。 透明性に優れ、カートリッジに充填した後の異物検査
が容易である。 水蒸気透過性が小さい（透過し難い）。 耐熱性に優れ、オートクレーブによる滅菌処理に十分
耐え得る。 添加剤の溶出が少ない。 成形時の収縮が少なく成形寸法精度に優れ、上記ピス
トン部４との密着性（液密性）、摺動性に優れたカート
リッジを得ることができる。

【００３３】更に、上記ピストン部４は、シリンジ本体
２１と同一の材料で柱状体３と一体に成形することも可
能であるが、上記薬液カートリッジ１との液密性を良好
ならしめるために、弾性体を用いて形成することが好ま
しい。この弾性体としては、特に制限はなく、種々のゴ
ムやその他のエラストマーを用いることができるが、特
にブチルゴム又はイソプレンゴムが好適に用いられる。
また、このピストン部４の外周には、上記薬液カートリ
ッジ１内周面との摺動性を向上させるために、シリコー
ングリース等の潤滑剤を塗布したり、焼き付けておくこ
とが好ましい。

【００３４】次に、このプレフィルドシリンジの使用方
法及び使用時の動作について説明する。このプレフィル
ドシリンジを用いて注射を行う場合、図２（Ａ）に示し
たように、まず上記薬液カートリッジ１のカバー膜１３
を引き剥がして、薬液カートリッジ１の開口端を開放
し、図２（Ｂ）に示したように、この開口端側から薬液
カートリッジ１を上記シリンジ本体２内に挿入すると共
に、該シリンジ本体２の柱状体３先端部を薬液カートリ
ッジ１内に挿入する。

【００３５】この状態で、薬液カートリッジ１をシリン
ジ本体２内へと押圧し、柱状体３の先端部に設けられた
上記穿入管３２の先端でシール膜１２を突き破り、図２
（Ｃ）に示したように、ピストン部４を薬液カートリッ
ジ１の上記段差部よりも内側へと圧入する。この場合、
薬液カートリッジ１の開口部に挿入されたピストン部４
は該薬液カートリッジ１の開口部内周壁に液密に周接
し、上記シール膜１２が突き破れた際に薬液ｍが薬液カ
ートリッジ１から漏出することが防止され、更に、小径
に形成された段差部より内側に圧入されることにより、
液密状態を確実に維持したまま薬液カートリッジ１内に
装填される。

【００３６】また、このとき、図２（Ｃ）に示されてい
るように、カバーキャップ６を取り外し、注射針５を上
にして薬液カートリッジ１を若干押し込むことにより、
薬液カートリッジ１内の薬液ｍを穿入管３２を通して柱
状体３の薬液通路３１に導入し、更に注射針５の先端か
ら少量の薬液ｍを吐出させ、シリンジ内の空気抜きを行
って薬液カートリッジ１内から注射針５先端までの空間
部に薬液ｍを充満させる。

【００３７】この状態で、注射針５を患者の所定部位に
刺入し、図２（Ｄ）に示したように、薬液カートリッジ
１を押圧して上記ピストン部４を薬液カートリッジ１内
で該カートリッジ１の底壁側へと摺動させることによ
り、薬液カートリッジ１内の薬液ｍを上記薬液通路３１
を通して注射針５の先端から射出させ、患者の所定部位
に注入する。そして、図２（Ｅ）に示したように、薬液
カートリッジ１をシリンジ本体２の最深部まで押し込む
ことにより、上記柱状体３先端部に設けられた穿入管３
２及び補強リブ３２１，３２１が薬液カートリッジ１の
底壁に設けられた凹部内に挿入され、ピストン部４が薬
液カートリッジ１の底壁内面に当接する位置まで摺動
し、薬液カートリッジ１内に充填されたほぼ全ての薬液
ｍが患者に注射投与される。この場合、図２（Ｅ）に示
されているように、薬液通路３１，注射針５の嵌合体５
１内に若干量の薬液ｍが残留することとなるので、この
残留量を考慮して薬液カートリッジ１内に充填する薬液
量を「注射剤の実容量試験」に適合するように設定して
おけばよい。

【００３８】また、本例プレフィルドシリンジを用いて
静脈注射を行う場合には、上記図２の（Ａ）〜（Ｃ）に
示した場合と同様の操作により、注射針５の先端まで薬
液を充満させて空気抜きを行った図３（Ａ）に示した状
態で、注射針５を患者の所定部位で静脈内に刺入し、図
３（Ｂ）に示したように、薬液カートリッジ１を少しだ
け後退させて該薬液カートリッジ１内でピストン部４を
ほんの少し開口端側に後退させる。これにより、注射針
５の先端が静脈内に刺入されていれば、同図に示したよ
うに血管内の血液ｔがシリンジ内に逆流し、この血液ｔ
を確認することにより、注射針５の先端が血管内に確実
に刺入されていることを確認する、血管確保の作業を行
う。そして、血管確保の後、上記と同様に薬液カートリ
ッジ１をゆっくりと圧入して静脈内に薬液ｍを注入す
る。

【００３９】［第２実施例］図４は、上記第２の発明に
かかるプレフィルドシリンジの一例を示すものである。
このプレフィルドシリンジは、上記第１実施例のプレフ
ィルドシリンジにおけるシール膜１２を薄板１４に代え
ると共に、柱状体３の先端に穿入管３２（図１参照）及
び補強リブ３２１（図１参照）を設けることなく、ピス
トン部４の上面中心部に薬液通路３１を直接開口させた
ものである。なお、その他の構成は、上記第１実施例の
プレフィルドシリンジと同一であるため、同一個所に第
１実施例と同一の参照符号を付してその説明を省略す
る。

【００４０】上記薄板１４は、図４に示されているよう
に、一面側中央部に球面状の凹部が形成されて中央部が
やや薄肉に形成されていると共に、中心部に小孔１５が
穿設された円板状のものである。

【００４１】この薄板１４は、薬液カートリッジ１内に
摺動可能に内挿されて、薬液カートリッジ１を開口面近
傍において閉塞しており、この薄板１４の内側に薬液ｍ
が充填されている。この場合、薄板１４の外周面と薬液
カートリッジ１内周面との接触は、液漏れを起こさない
範囲で比較的緩やかに圧接しており、シリコーングリー
ス等の潤滑剤を用いることなく比較的スムーズに薬液カ
ートリッジ１内を摺動し得るようになっている。

【００４２】また、この薄板１４の小孔１５は、薬液ｍ
が漏出することなく、かつ投薬時には十分な液流通量が
得られる孔径とされ、カートリッジ１内の薬液ｍがこの
小孔１５から漏洩することがないようになっている。こ
の小孔の具体的な孔径は薬液ｍの種類、投薬量、求めら
れる投薬速度などに応じて適宜設定され、特に制限され
るものではないが、通常は０．１〜２ｍｍ、特に０．３
〜１ｍｍとすることが好ましく、これにより薬液ｍの漏
洩を確実に防止することができると共に、十分な液流通
量を確実に確保することができる。

【００４３】この薄板１４の材質は、特に制限されるも
のではなく、適宜な合成樹脂を用いて形成することがで
きるが、特に薬液カートリッジ１を形成する樹脂と同一
の樹脂を用いることが好ましい。

【００４４】この第２実施例にかかるプレフィルドシリ
ンジによる投薬は、上記第１実施例と同様に行えばよ
い。即ち、図５に示したように、薬液カートリッジ１の
開口部に張着されたカバー膜１３を引き剥がし（図５
（Ａ））、該薬液カートリッジ１をシリンジ本体２内に
挿入すると共に、該シリンジ本体２の柱状体３先端部に
設けられたピストン部４を薬液カートリッジ１内に圧入
し（図５（Ｂ））、カバーキャップ６を取り外して薬液
カートリッジ１を若干押圧することにより、シリンジ内
の空気抜きを行った後、注射針５を患者の所定部位に刺
入して、薬液カートリッジ１をシリンジ本体２内に押し
込むことにより、ピストン部４を薬液カートリッジ１内
を摺動させ、薬液カートリッジ１内の薬液ｍを薬液通路
３１を通して注射針５の先端から患者の所定部位に注入
する（図５（Ｄ）（Ｅ））ものである。

【００４５】この場合、本実施例のプレフィルドシリン
ジでは、薬液カートリッジ１内に圧入された上記ピスト
ン部４の表面に上記薄板１４が当接し、ピストン部４の
摺動動作と共にこの薄板１４が摺動し、薬液カートリッ
ジ１内の薬液ｍは、この薄板１４の小孔を通って薬液通
路３１内に流入し、注射針５から射出される。

【００４６】また、このプレフィルドシリンジを用いて
静脈注射を行う場合も、上記第１実施例と同様に行えば
よい。即ち、図６（Ａ）に示した、空気抜きを行った状
態（図５（Ｃ）と同様の状態）で注射針５を患者の所定
部位で静脈内に刺入した後、図６（Ｂ）に示したよう
に、薬液カートリッジ１を少しだけ後退させて該薬液カ
ートリッジ１内でピストン部４をほんの少し後退させ、
同図に示したように血管内の血液ｔをシリンジ内に逆流
させてこの血液ｔを確認することにより、注射針５の先
端が血管内に確実に刺入されていることを確認するもの
である。なお、図６（Ｂ）に示されているように、この
血管確保の際、本実施例のプレフィルドシリンジでは、
上記薄板１４は摺動（後退）することなく、ピストン部
４のみが後退する。

【００４７】このように、上記第１実施例及び第２実施
例の両プレフィルドシリンジは、上記薬液カートリッジ
１を上記シリンジ本体２内に挿入すると共に、シリンジ
本体２に設けられた柱状体３を薬液カートリッジ１内に
挿入し、該柱状体３の先端部外周に設けられたピストン
部４を薬液カートリッジ１内で摺動させることにより、
柱状体３に設けられた薬液通路３１を通して薬液カート
リッジ１内の薬液ｍをシリンジ本体２先端部に取り付け
られた注射針５から射出させるものである。

【００４８】この場合、これらプレフィルドシリンジで
は、薬液カートリッジ１内で摺動することにより薬液ｍ
を押し出すピストン部４がシリンジ本体２側の柱状体３
先端部に設けられているので、シリンジ本体２にセット
された薬液カートリッジ１を進退させることにより、該
薬液カートリッジ１内で上記ピストン部４を進退させる
ことができる。従って、静脈注射を行う場合に、血管内
に注射針を刺入した後、上述のように薬液カートリッジ
１を操作して上記ピストン部１を僅かに後退させること
により、血管内を流れる血液をシリンジ内に逆流させ
て、注射針５先端が確実に血管内に刺入されていること
を確認することができ、所謂血管確保を確実に行うこと
ができる。

【００４９】また、このプレフィルドシリンジは、ピス
トン部４がシリンジ本体２の柱状体３に設けられてお
り、薬液カートリッジ１内には薬液のみを充填し、上記
シール膜１２又は薄板１４により薬液カートリッジ１を
閉塞すると共に、カバー膜１３により密封しておけばよ
いので、ピストン部４の摺動性を良好ならしめるために
シリコーングリース等の潤滑剤を用いる場合でも、これ
をピストン部４側に塗布しておくことにより、薬液カー
トリッジ１内の薬液がシリコーングリース等の潤滑剤と
一切接触しない状態で製剤化し流通保管することがで
き、シリコーングリース等の潤滑剤の混入を可及的に防
止することができると共に、これら潤滑剤の影響を殆ど
考慮することがないので、適用薬剤の範囲も拡大するこ
とができるものである。

【００５０】更に、更にこれらプレフィルドシリンジ
は、上記柱状体３がシリンジ本体２と一体に合成樹脂で
形成されていると共に、該シリンジ本体２に注射針５が
着脱可能に取り付けられているので、金属材料からなる
注射針５と合成樹脂からなるその他の部材とを容易に分
別回収することができるものである。

【００５１】なお、本発明のプレフィルドシリンジは、
上記第１及び第２実施例に制限されるものではなく、各
部材の形状、配置、組み合わせ、材質等は、本発明の要
旨を逸脱しない限り適宜変更して差し支えない。

【００５２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明のプレフィ
ルドシリンジによれば、取り扱い性に優れ血管確保を問
題なく行うことができ、またシリコーングリース等の潤
滑剤による汚染の問題を生じることもなく、更に注射針
等の金属部分とその他の合成樹脂部分とを容易に分別回
収することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例にかかるプレフィルドシリン
ジを示す概略断面図である。

【図２】同プレフィルドシリンジを用いて投薬する際の
操作及び動作を順次説明する概略断面図である。

【図３】同プレフィルドシリンジを用いて静脈注射を行
う際に、血管確保を行う場合の操作及び動作を説明する
概略断面図である。

【図４】本発明の他の実施例にかかるプレフィルドシリ
ンジを示す概略断面図である。

【図５】同プレフィルドシリンジを用いて投薬する際の
操作及び動作を順次説明する概略断面図である。

【図６】同プレフィルドシリンジを用いて静脈注射を行
う際に、血管確保を行う場合の操作及び動作を説明する
概略断面図である。

【図７】従来のプレフィルドシリンジの一例を示す概略
断面図である。

【図８】従来のプレフィルドシリンジの他の例を示す概
略断面図である。

【符号の説明】

１ 薬液カートリッジ １１ 容器本体 １２ シール膜 １３ カバー膜 １４ 薄板 １５ 小孔 ２ シリンジ本体 ２１ 円筒状本体 ３ 柱状体 ３１ 薬液通路 ３２ 穿入管 ４ ピストン部 ５ 注射針 ６ カバーキャップ ｍ 薬液 ｔ 血液

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池田 かおり 兵庫県尼崎市杭瀬寺島２−１−３ 塩野義 製薬株式会社内 Ｆターム(参考） 4C066 AA09 BB01 CC01 DD07 EE06 FF05 GG07 GG18

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内部に薬液が充填され、シール膜で密封
   された有底筒状の薬液カートリッジと、注射針が取り付
   けられた底壁を有する円筒状のシリンジ本体と、該シリ
   ンジ本体の底壁からシリンジ本体の中心軸に沿って立設
   され、上記注射針と連通した薬液通路を有する柱状体
   と、該柱状体の先端部外周に設けられたピストン部とを
   具備してなり、上記薬液カートリッジを上記シリンジ本
   体内に挿入して、該薬液カートリッジの上記シール膜を
   上記柱状体先端部で突き破り、上記ピストン部を該薬液
   カートリッジ内に圧入し、この状態で薬液カートリッジ
   を操作して該薬液カートリッジ内で上記ピストン部を摺
   動させることにより、該薬液カートリッジ内の薬液を上
   記薬液通路を通して上記注射針先端から射出させるよう
   に構成したことを特徴とするプレフィルドシリンジ。
2. 【請求項２】 上記シール膜が、ポリプロピレン、ポリ
   エチレンテレフタレート、又は環状ポリオレフィンから
   なるフィルムである請求項１記載のプレフィルドシリン
   ジ。
3. 【請求項３】 小孔を有する薄板が摺動可能に内挿され
   て閉塞されていると共に、該摺動板の内側に薬液が充填
   された有底筒状の薬液カートリッジと、注射針が取り付
   けられた底壁を有する円筒状のシリンジ本体と、該シリ
   ンジ本体の底壁からシリンジ本体の中心軸に沿って立設
   され、上記注射針と連通した薬液通路を有する柱状体
   と、該柱状体の先端部外周に設けられたピストン部とを
   具備してなり、上記薬液カートリッジを上記シリンジ本
   体内に挿入して、上記ピストン部を該薬液カートリッジ
   内に圧入し、この状態で薬液カートリッジを操作して該
   薬液カートリッジ内で上記ピストン部を摺動させること
   により、該薬液カートリッジ内の薬液を上記薄板の小孔
   及び上記薬液通路を通して上記注射針先端から射出させ
   るように構成したことを特徴とするプレフィルドシリン
   ジ。
4. 【請求項４】 上記薄板に設けられた小孔の孔径が０．
   １〜２ｍｍである請求項３記載のプレフィルドシリン
   ジ。
5. 【請求項５】 上記シール膜又は薄板が、上記薬液カー
   トリッジ開口面のやや内側に配設されていると共に、該
   薬液カートリッジの開口面がカバー膜により開封可能に
   密封されており、該カバー膜の内側が滅菌処理されてい
   る請求項１〜４のいずれか１項に記載のプレフィルドシ
   リンジ。
6. 【請求項６】 上記シリンジ本体に取り付けられる注射
   針が着脱可能なものである請求項１〜５のいずれか１項
   に記載のプレフィルドシリンジ。