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JP2001523264A - 急性腎不全の治療 - Google Patents

急性腎不全の治療

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JP2001523264A JP54804898A JP54804898A JP2001523264A JP 2001523264 A JP2001523264 A JP 2001523264A JP 54804898 A JP54804898 A JP 54804898A JP 54804898 A JP54804898 A JP 54804898A JP 2001523264 A JP2001523264 A JP 2001523264A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、急性腎不全の、またはその危険性のある哺乳動物被験体、あるいは組織損傷または傷害から生じる炎症、好中球媒介細胞損傷、およびアポトーシスの被験体またはその危険性のある被験体の処置方法、およびその処置に使用するための医薬品を提供する。この方法は、タンパク質のTGF-βスーパーファミリーの中の、骨原性タンパク質/骨形態形成タンパク質(OP/BMP)ファミリーの特定のタンパク質の投与を含む。

Description

【発明の詳細な説明】 急性腎不全の治療 発明の分野 本発明は、一般的に腎臓病の治療方法、特に急性腎不全に苦しむか、またはそ の危険性がある哺乳動物(ヒトを含む)の処置方法に関する。この方法は、タン パク質のTGF-βスーパーファミリーの中の、骨原性タンパク質/骨形態形成タン パク質(OP/BMP)ファミリーの特定のタンパク質の投与を含む。 発明の背景 哺乳動物腎臓系は、血流からの代謝排泄産物の除去、ならびに体内の体液およ び電解液平衡の維持の両方において重要な役割を担っている。従って腎不全は、 代謝産物および他の毒素の蓄積、ならびに/または電解液もしくは体液の有意な 不均衡の発生は、他の主要な器官系の不全および死を導き得る生命を脅かす状態 である。一般的な事項として、腎不全は、「急性」または「慢性」として分類さ れる。以下で詳述するように、急性腎不全は、代表的には、数時間から数週間の 期間にわたる急速な、劇的な、生命を脅かす腎機能の損失を含む。対照的に、慢 性腎不全は、代表的には数カ月から数年間の期間にわたる緩慢な、進行性の腎機 能の損失を含み、その期間の間に患者の生命はすぐには脅かされることはない。 急性腎不全は、腎機能の突然の停止または実質的な減少によって特徴付けられ 、そして代表的には、2〜3時間または数日間の期間にわたる、血中の尿素窒素 (BUN)または血清クレアチニンレベルの比較的急速な増加によって診断される 。90〜95%までの多くの場合において、急性腎不全は、外傷、外科手術、または 他の急性の医学的状態に続発的であり得る。一般的にいえば、急性腎不全は、前 腎的、後腎的、または内腎的な原因に起因する。前腎的原因(例えば、心臓出力 の低下、血液量減少、血管耐性の変化)および後腎的原因(例えば、輸尿管、膀 胱または尿道の閉塞または収縮)は、腎臓に対する直接的な損害を含まないが、 腎臓に対する血流、または腎臓からの尿の流れに影響を与えることによって、腎 組 織に対して顕著に永続的および/または進行性の損害に導き得る。一方、急性腎 不全は、内腎的な原因に起因し得、これは腎臓に対する直接的な発作または傷害 を含み、そして、ネフロンまたは他の腎臓構造に永続的および/または進行性の 損害も残し得る。急性腎不全の内的原因は、感染性の疾患(例えば、種々の細菌 性、ウイルス性、または寄生生物性感染)、炎症性疾患(例えば、糸球体腎炎、 全身性エリテマトーデス)、虚血(例えば、腎動脈閉塞)、毒性症候群(例えば 、重金属中毒、抗菌処理または化学療法の副作用)および直接的な外傷を含むが 、これらに限定されない。 ヒトの急性腎不全患者において、50〜70%の症例に、尿量減少症(尿排出<40 0ml/日)または無尿症(尿排出<50ml/日)が存在し得、BUNレベルは10〜20mg/d L/日以上に上昇し得、血漿クレアチニンレベルは、0.5〜1.0mg/dL/日に上昇し得 、そして代謝的アシドーシスがほとんど常に存在する。処置されない場合、急性 腎不全に関連する電解質および溶液の不均衡(例えば、高カリウム血症、アシド ーシス、水腫)が、生命を脅かす不整脈、うっ血性の心不全、または多器官系不 全に導き得る。急性腎不全の重篤性に起因して、生存しているエピソードは数週 間より長く続くことはほとんどなく、そして患者の中の基準において処置される 。 それゆえに、急性腎不全から生じ得る腎機能の永続的または進行的な損失を予 防、阻害、遅延または軽減する処置の必要性が残されている。 発明の要旨 本発明は、急性腎不全の、またはその危険性がある哺乳類被験体の処置方法、 および処置における使用のための薬学的調製物に関する。このような被験体は、 急性腎不全をすでに罹患した被験体、ならびに腎機能の急性の損失に苦しむと合 理的に予測される任意の被験体を含む。特定の被験体が急性腎不全であるか、ま たは急性腎不全の危険性があるかどうかは、関連する医学または獣医学分野の当 業者によって日常的になされ得る決定である。急性腎不全の被験体は、(1)血 中尿素窒素(BUN)の、少なくとも2〜4mmol/L/日(5〜10mg/dL/日)の速度での 増加、または(2)血清クレアチニンの、少なくとも20〜40μmol/L/日(0.25〜 0.5mg/dL/日)の速度での増加のいずれかを示す被験体を含む。より代表的には 、 急性腎不全の被験体は、少なくとも4〜8mmol/L/日(10〜20mg/dL/日)のBUNの増 加速度および少なくとも40〜80μmol/L/日(0.5〜1.0mg/dL/日)の血清クレアチ ニンの増加速度を示す。急性腎不全の「危険性がある」被験体は、急性腎不全に 入ることが合理的に予測できる被験体、またはさもなくば腎機能の急速な進行性 の損失に苦しむことが予測される被験体を含む。特定の被験体が危険性があるか どうかは、関連する医学または獣医学分野の当業者によって日常的になされ得る 決定である。急性腎不全の危険性がある被験体は以下を含むが、これらに限定さ れない:(1)BUNの連続測定が、少なくとも1〜2mmol/L/日(2.5〜5mg/dL/日) の増加速度を示す被験体;(2)血漿クレアチニンの連続測定が、少なくとも10 〜20μmol/L/日(0.125〜0.25mg/dL/日)の増加速度を示す被験体;(3)急性 腎不全の前腎原因と診断された被験体;(4)急性腎不全の後腎原因と診断され た被験体;および(5)急性腎不全の内腎原因と診断された被験体。 本発明の方法および組成物は、本明細書でOP/BMP腎治療剤として定義され、骨 原性タンパク質/骨形態形成タンパク質(OP/BMP)ファミリーのタンパク質のメ ンバーを含む、真核生物由来のある種のタンパク質が、急性腎不全の、またはそ の危険性がある被験体の処置に使用され得る、という発見を一部利用する。有用 な腎治療剤は、ポリペプチド、またはポリペプチドの機能的な改変体を含み、OP -1、OP-2、OP-3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP9、およびヒトOP-1の7つ のシステインドメインのアミノ酸配列に少なくとも70%、またはより好ましくは 75%もしくは80%のアミノ酸配列相同性を示すタンパク質からなる群から選択さ れる哺乳動物タンパク質の少なくともC−末端の6つまたは7つのシステインド メインを含み;そして腎治療剤は、(a)Reddi-Sampath異所性骨アッセイ(Sam pathおよびReddi(1981),Proc .Natl.Acad.Sci.(USA)78:7599-7603)または 実質的に等価なアッセイにおいて軟骨形成を誘導し得るか;(b)急性腎不全の 標準的モデル動物において、急性腎不全から生じ得る腎機能の永続的または進行 性の損失を、有意に予防、阻害、遅延、または軽減し得るか;あるいは(c)急 性腎不全に罹患しているか、またはその危険性がある哺乳動物に投与した場合に 、腎機能の標準マーカーにおいて臨床的に顕著な改善を生じ得る。 本発明の腎治療剤は、選択した薬剤が適用可能な任意の投与経路により投与さ れ得、投与の経路に適切な任意の薬学的に受容可能なキャリアを用いて処方され 得る。好ましい投与経路は、非経口投与であり、特に、静脈内、腹膜内、および 腎嚢内である。投与は、急性腎不全の間の期間(代表的には1〜3週間)、連続的 または頻繁に(例えば、毎日)されることが期待されるが、急性のフェーズ後の 数週間または数カ月間継続してもよい。腎治療剤の1日の用量は、体重kgあたり 約0.01〜1000μgの範囲、より好ましくは体重kgあたり約10〜700μgであること が望まれるが、正確な用量は、特定の使用される腎治療剤ならびに特定の被験体 の医療状態および病歴に依存して変化する。 本発明の処置は、急性腎不全の、またはその危険性がある哺乳動物における罹 患率の速度および/または程度を減少させることにおいて有用である。さらに、 本発明の処置は、急性腎不全から生じ得る永続的または進行的な腎機能の損失の 予防、阻害、遅延、または軽減において有用である。このように、本発明は、生 存率を増加させるためのみではなく、慢性的な透析もしくは腎移植治療の必要性 を予防または遅延させること、慢性腎不全(chronic renal insufficiency)ま たは慢性腎不全(chronic renal failure)の発症を予防または遅延させること 、および/あるいは慢性的な腎臓透析の必要頻度を減少させることにおいてもま た大きな価値を有する。 別の局面において、本発明のOP/BMP腎治療剤は、炎症および好中球媒介の組織 損傷を減少させることにおいて有用である。この点において、OP/BMP腎治療剤は また、全身的に投与した場合に、ICAM、特にICAM-1の発現を減少させることにお いて有用であることが示される。特に、OP/BMP治療剤は、上皮組織、特に腎上皮 において発現するICAMを減少させるために使用され得る。 なお別の局面において、本発明のOP/BMP腎治療剤は、損傷または傷害された組 織の細胞のアポトーシスを阻害するために有用である。この点において、OP/BMP 腎治療剤は、損傷または傷害された上皮組織、特に腎上皮のアポトーシスを減少 させることが示される。 別の局面において、本発明のOP/BMP腎治療剤は、上記の条件のいずれかの処置 のための医薬品の製造に使用され得る。図面の簡単な説明 図1は、一時的に腎臓の血流を妨害することにより虚血性腎損傷が誘導された ラットのクレアチニンレベルに対するOP-1の効果を示す棒グラフである。グラフ の縦軸はクレアチニンのスケール(μmol/L)である。 図2は、クレアチニンレベルに対する、およびノルエピネフリン投与によって 腎機能が傷害されたラットにおける血流力学パラメーターに対するOP-1の効果を 示す表である。 発明の詳細な説明 I.定義 本発明の内容をより明確に、かつ簡潔に示すために、以下の記載および添付の 請求の範囲において使用される特定の用語について、以下の定義を提供する。 急性腎不全。急性腎不全は、代表的には、身体における窒素性老廃物の蓄積を 生じるに十分な、腎臓機能における急速な劣化として定義される(例えば、Ande rsonおよびSchrier(1994)、Harrison's Principles of Internal Medicine、第1 3版、Isselbacherら編、McGraw Hill Text,New Yorkを参照のこと)。BUNにおけ る少なくとも4〜8mmol/L/日(10〜20mg/dL/日)の増加率、および少なくとも4 0〜80μmol/L/日(0.5〜1.0mg/dL/日)の血清クレアチニンの増加率は、急性腎 不全に特有である。異化(または異化亢進)である被験体において、BUNにおけ る増加率は、100/mg/dL/日を越え得る。BUNまたは血清クレアチニンにおける増 加率は、通常、連続的な血液試験によって決定され、そして好ましくは、少なく とも2回の血液検査が、6〜72時間の間、またはより好ましくは12〜24時間の間 の期間にわたって行われる。時に、「急性」腎不全(数日にわたる劣化)と、「 急速進行性」腎不全(数週間にわたる劣化)との間の区別がなされる。しかし、 本明細書中で使用される句「急性腎不全」は、両方の症候群を含むことが意図さ れる。 急性腎不全の腎前性原因。本明細書中で使用される「急性腎不全の腎前性原因 」は、減少した心拍出量、血液量減少、容量再分布(volume redistribution)、 および変化した血管抵抗を含む。急性腎不全の腎後性原因。本明細書中で使用される「急性腎不全の腎後性原因 」は、尿管閉塞、骨盤閉塞、および膀胱閉塞を含む。例えば、血餅および腎臓結 石は、尿管または膀胱の閉塞を生じ得る。閉塞はまた、脱落した乳頭および菌球 から生じ得る。外因性閉塞は、例えば、悪性疾患または肥大(例えば、前立腺ガ ンまたは膀胱ガン)、腹膜後線維症、または医原性原因(不注意な結紮)から生 じ得る。尿道狭窄または包茎はまた、腎前性急性腎不全を生じ得る。 急性腎不全の腎臓固有の原因。本明細書中で使用される「急性腎不全の、腎臓 固有の原因」は以下を含む: (1)血管収縮性疾患(例えば、悪性高血圧、強皮症、溶血性尿毒症症候群、 血栓性血小板減少性紫斑病)、および脈管炎(例えば、結節性多発性動脈炎、過 敏性血管炎、血清病、ヴェーゲナー肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、混合(mixed)ク リオグロブリン血症、ヘーノホ‐シェーンライン紫斑病、全身性エリテマトーデ ス)のような脈管構造の異常; (2)感染後性異常(例えば、streptococcus感染後性、pneumococcus感染後 性、gonococcus感染後性、staphylococcus感染後性、enterococcus感染後性、ウ イルス[例えば、B型肝炎およびC型肝炎、ムンプス、麻疹、エプスタイン−バ ー]感染後性、マラリア感染後性、またはブルセラ症、Legionella、Listeria、 シャント腎炎、らい病、レプトスピラ症、もしくは内臓膿瘍関連)、および非感 染性異常(例えば、急速進行性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、グッドパス チャー症候群、全身性エリテマトーデス、ヴェーゲナー肉芽腫症): (3)薬物関連原因(例えば、ペニシリン、スルホンアミド、カルベニシリン 、セファロスポリン、エリスロマイシン、ナフシリン、オキサシリン、非ステロ イド性抗炎症剤、利尿薬[フロセミド、エタクリン酸、サイアザイド、スピロノ ラクトン、水銀]、フェニトイン、フェノバルビタール、プロベネシド(probeni cid)、アロプリノール、シメチジン)、感染関連原因(例えば、急性腎孟腎炎、 streptococcus、staphylococcus、レプトスピラ症、マラリア、サルモネラ症) 、乳頭壊死(例えば、糖尿病、鎌状赤血球病、鎮痛薬濫用、アルコール中毒症関 連)、および他の種々の原因(例えば、サルコイドーシス、白血病、リンパ腫) から生じる急性間質性腎炎; (4)結晶性沈着物(例えば、尿酸、シュウ酸塩、メトトレキサート)、また は多発性骨髄腫および軽鎖疾患に起因する管内閉塞;ならびに (5)腎細胞毒素(例えば、アミノ配糖体、テトラサイクリン、アンホテリシ ン、ポリミキシン、セファロスポリンのような抗菌剤)、重金属(例えば、水銀 、鉛、ヒ素、金塩、バリウム)、および他の種々の化学薬剤(例えば、シスプラ チン、ドキソルビシン、ストレプトゾシン、メトキシフルラン、ハロタン、エチ レングリコール、四塩化炭素)から生じる急性管状壊死、または虚血(例えば、 出血、低血圧、敗血症、熱傷、腎梗塞形成、腎動脈切開、横紋筋融解症、外傷) 、または他の種々の原因(例えば、造影剤、輸血反応、ミオグロビン血症、熱射 病、ヘビおよびクモの噛み付き)から生じる急性管状壊死。 被験体を急性腎不全の危険にさらす他の疾患および状態は、以下を含む:腎臓 移植手術(ドナーまたはレシピエントとして)、両側動脈閉塞、両側急性腎静脈 血栓症、急性尿酸腎症、血液量減少、心臓血管虚脱、急性両側上行路(upper tra ct)閉塞、高カルシウム血症腎症、溶血性尿毒症症候群、急性尿停滞、悪性腎硬 化症、本態性混合クリオイムノグロブリン血症(cyroimmunoglobulinemia)、シ ュウ酸腎症、皮質壊死、分娩後糸球体硬化症、過敏性腎症、強皮症、特発性急速 進行性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、非グッドパスチャー抗GBM病、急 性細菌性心内膜炎または内臓敗血症、顕微鏡的結節性多発性動脈炎、ヴェーゲナ ー肉芽腫症、アレルギー性肉芽腫症、急性放射線腎炎、streptococcus感染後性 糸球体腎炎、非streptococcus感染後性糸球体腎炎、びまん増殖性(diffuse pro liferative)ループス腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、腎静脈血栓症、ヴァルデン ストレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、ベルジェ(IgA)腎症、ヘー ノホ‐シェーンライン紫斑病、および巣状糸球体硬化症。 OP/BMP 腎治療剤。本明細書中で使用される用語「OP/BMP腎治療剤」、「本発明 の腎治療剤」などは、OP-1、OP-2、OP-3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP9 からなる群より選択される哺乳動物タンパク質の少なくともC末端の6または7 システインドメインを含む、ポリペプチドまたはポリペプチドの機能的改変体、 ならびにヒトOP-1の7システインドメインのアミノ酸配列と、少なくとも70%、 またはより好ましくは75%もしくは80%のアミノ酸配列相同性を示すタンパク質 を意味し;そしてこれは(a)Reddi-Sampath異所性骨アッセイ(SampathおよびRed di(1981),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:7599-7603)または実質的に等価なアッ セイにおいて軟骨形成を誘導し得るか、(b)急性腎不全の標準的な動物モデルに おいて、急性腎不全から生じ得る腎機能の永続的または進行的損失を有意に予防 、阻害、遅延または軽減し得るか、あるいは(c)急性腎不全であるか、またはそ の危険にある哺乳動物に投与される場合に、腎機能の標準的マーカーにおいて臨 床的に有意な改善を生じ得る。 治療的効力。本明細書中で使用される、本発明の腎治療剤は、「治療的効力」 を有するといわれ、そして特定の量の薬剤の投与が、急性腎不全であるか、また はその危険にある哺乳動物被験体(例えば、ヒト患者)に投与される場合に腎機 能の標準的マーカーにおいて臨床的に有意な改善を生じるに十分である場合、こ の特定の量の薬剤は「治療有効」であるといわれる。腎機能のこのようなマーカ ーは医学文献において周知であり、そしてBUNレベルの増加率、血清クレアチニ ンの増加率、BUNの静的測定、血清クレアチニンの静的測定、糸球体濾過率(GFR )、BUN/クレアチニンの比、ナトリウム(Na+)の血清濃度、クレアチニンにつ いての尿/血漿比、尿素についての尿/血漿比、尿重量オスモル濃度、1日あた りの尿排出量などを含むがこれらに限定されない(例えば、AndersonおよびSchr ier(1994),Harrison's Principles of Internal Medicine,第13版,Isselbache rら編,McGraw Hill Text,New York;KumarおよびStein(1994),Internal Medic ine ,第4版,J.H.Stein編,Mosby-Year Book,Inc.St.Louisを参照のこと) 。 II.本発明の実施態様 A.概論 本発明は、急性腎不全の被験体または急性腎不全の危険性のある被験体への、 特定のタンパク質に基づく腎治療剤の投与が、死亡率および/または罹患率を低 減し、そして急性腎不全と関連する腎機能の永続的損失および/または進行的損 失を予防、阻害、遅延、または軽減し得るという驚くべき知見に部分的に依存す る。本発明は、急性腎不全のための標準的な処置レジメは、腎臓に対する負担を 低減させるためのタンパク質の摂取の制限を含むが、本発明の薬剤がタンパク質 であるという事実の点から特に驚くべきものである。好ましい実施態様において 、本発明の腎治療剤は、TGF-βスーパーファミリーのタンパク質のうち骨原性タ ンパク質/骨形成タンパク質(OP/BMP)ファミリーのメンバーである。 B.OP/BMP 腎治療剤 本発明の腎治療剤は、TGF-βスーパーファミリーのタンパク質のうち骨原性タ ンパク質/骨形成タンパク質(OP/BMP)ファミリーの、天然に存在するタンパク 質、または天然に存在するタンパク質の機能的改変体である。すなわち、これら のタンパク質は、TGF-βスーパーファミリーとして公知の配列に関連したタンパ ク質のおおよその進化的分類において明瞭なサブグループ(「OP/BMPファミリー 」と本明細書中で呼ばれる)を形成する。このタンパク質ファミリーのメンバー は、共通の構造的特徴を共有し、そしてプロタンパク質から同様に処理されてカ ルボキシ末端成熟タンパク質を生じる、分泌ポリペプチドを含む。この成熟タン パク質において、全てのメンバーは、97〜106アミノ酸ドメインを規定する6ま たは7のシステイン残基の保存的パターンを共有し、そしてこれらのタンパク質 の活性形態は、単一のファミリーメンバーのジスルフィド結合ホモダイマーか、 または2つの異なるメンバーのヘテロダイマーのいずれかである(例えば、Massa gue(1990),Annu.Rev.Cell Biol.6:597;Sampathら(1990),J.Biol.Chem.26 5:13198を参照のこと)。例えば、成熟のネイティブな形態において、天然供給源 由来のヒトOP-1は、SDS-PAGEで決定される場合、代表的には約30〜36kDaの見か けの分子量を有するグリコシル化ダイマーである。還元された場合、30kDaタン パク質は、約16kDaおよび18kDaの見かけの分子量を有する2つのグリコシル化ペ プチドサブユニットを生じる。非グリコシル化タンパク質は、約27kDaの見かけ の分子量を有する。還元された場合、27kDaタンパク質は、約14kDa〜16kDaの分 子量を有する2つの非グリコシル化ポリペプチド鎖を生じる。 代表的には、天然に存在するOP/BMPタンパク質は、N末端シグナルペプチド配 列、「プロ」ドメイン、および「成熟」タンパク質ドメインを有する前駆体とし て翻訳される。シグナルペプチドは、代表的には30残基未満であり、そしてVon Heijne(1986),Nucleic Acids Research 14:4683-4691の方法を用いて予測され 得る切断部位で、翻訳の際に迅速に切断される。「プロ」ドメインは、配列およ び長さの両方において可変であり、約200〜400残基以上の範囲に及ぶ。プロドメ インは切断され、約115〜180残基の「成熟」C末端ドメインを生じる。これは97 〜106残基の保存された6または7システインC末端ドメインを含む。本明細書 中で使用されるOP/BMPファミリーメンバーの「プロ形態」は、各々がOP/BMPポリ ペプチドの成熟ドメインと共有結合または非共有結合したプロドメインを含む、 ポリペプチドの折り畳まれた対を含むタンパク質をいう。代表的には、タンパク 質のプロ形態は、生理学的条件下で、成熟形態よりも可溶性である。プロ形態は 、培養された哺乳動物細胞から分泌された一次形態であるようである。タンパク 質の「成熟形態」は、プロドメインと共有結合も非共有結合もしていない成熟C 末端ドメインをいう。OP-1の任意の調製物は、調製物におけるプロドメインの量 が「成熟」C末端ドメインの量の5%を越えない場合、成熟形態を含むと考えら れる。 本明細書中において有用なOP/BMPファミリーメンバーは、任意の公知の天然に 存在するネイティブタンパク質(対立遺伝子対応物、系統学的対応物、およびそ れらの他の改変体(天然の供給源由来または生合成的に生成されたもの(例えば 、「ムテイン」または「変異体タンパク質」を含む))を含む)、ならびにOP/B MPファミリーのタンパク質の新規の活性なメンバーを含む。 特に有用な配列は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)OP-1、OP-2、OP-3、BMP2、 BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP8、およびBMP9のC末端7システインドメインを含 む配列を含む。本発明の実施において有用な他のタンパク質は、活性形態のGDF- 5、GDF-6、GDF-7、DPP、Vgl、Vgr-1、60A、GDF-1、GDF-3、GDF-5、GDF-6、GDF-7 、BMP10、BMP11、BMP13、BMP15、UNIVIN、N0DAL、SCREW、ADMP、またはNURAL、 およびそれらのアミノ酸配列改変体を含む。現在のところ好ましい1つの実施態 様において、本発明の腎治療剤は、OP-1、OP-2、OP-3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5 、BMP6、およびBMP9のうちのいずれか1つから選択される。 これらの配列、ならびにそれらの化学的および物理学的特性を開示する刊行物 は、以下を含む:OP-1およびOP-2:米国特許第5,011,691号、米国特許第5,266,6 83号、およびOzkaynakら(1990),EMBO J.9:2085-2093;OP-3:WO94/10203;BMP2 、 BMP3、およびBMP4;米国特許第5,013,649号、WO91/18098、WO88/00205およびWoz neyら(1988),Science 242:1528-1534;BMP5およびBMP6:WO90/11366、およびCele steら(1991),Proc.Natl.Acad.Sci(USA)87:9843-9847;Vgr-1:Lyonsら(1989 ),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)86:4554-4558:DPP:Padgettら(1987),Nature 3 25:81-84;Vgl:Weeks(1987),Cell 51:861-867;BMP-9:WO95/33830;BMP10;WO94/26 893;BMP−11:WO94/26892;BMP12:WO95/16035;BMP-13:WO95/16035;GDF-1:WO92/003 82、およびLeeら(1991),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:4250-4254;GDF-8:WO94/2 1681;GDF-9:WO94/15966;GDF-10:WO95/10539;GDF-11:WO96/01845;BMP-15:WO96/36 710;MP121:WO96/01316;GDF-5(CDMP-1,MP52):WO94/15949,WO96/14335,WO93/16 099、およびStormら(1994),Nature 368:639-643;GDF-6(CDMP-2,BMP13):WO95/0 1801,WO96/14335、およびWO95/10635;GDF-7(CDMP-3,BMP12):WO95/10802および WO95/10635;BMP-3b:Takaoら(1996),Biochem.Biophys.Res.Comm.219:656-662;GD F-3:WO94/15965;60A:Blasterら(1993),Cell 73:687-702およびGenBank登録番号 L12032。別の実施態様において、有用なタンパク質は、2つ以上の公知のOP/BMP ファミリータンパク質由来の配列を用いて設計された新規な生合成タンパク質お よびキメラタンパク質を含む、生物学的に活性な生合成構築物を含む。米国特許 第5,011,691号(この開示は、本明細書中に参考として援用される)において開 示された生合成構築物(例えば、COP-1、COP-3、COP-4、COP-5、COP-7、およびC OP-16)もまた参照のこと。 他の好ましい実施態様において、本明細書中において有用な腎治療剤は、アミ ノ酸配列が、ヒトOP-1の活性形態に存在するC末端7システインドメイン(すな わち、米国特許第5,266,683号の配列番号2に示される残基330〜431)と少なく とも70%のアミノ酸配列「相同性」、そして好ましくは、75%または80%の相同 性を共有する配列を含む、治療的に有効なタンパク質を含む。他の好ましい実施 態様において、本明細書中において有用な腎治療剤は、アミノ酸配列が、ヒトOP -1の活性形態に存在するC末端7システインドメインと、少なくとも60%のアミ ノ酸配列同一性、そして好ましくは、65%または70%の同一性を共有する配列を 含む、治療的に有効なタンパク質を含む。当業者によって理解されるように、相 同または機能的に等価な配列は、保存的システイン骨格内のシステイン残基の機 能的に等価な配置を含み、機能的に等価な配置は、これらのシステインの一次配 置を変えるが、ダイマータンパク質の折り畳み構造におけるシステインの関係( 生物学的活性のために必要であり得るような、鎖内または鎖間ジスルフィド結合 を形成する能力を含む)を実質的に損なわない、アミノ酸挿入または欠失を含む 。ヒトOP-1のC末端の7システイン骨格に対する候補アミノ酸配列の相同性の程 度を決定するために、候補配列および参照配列が、ダイナミックプログラミング アルゴリズム(Needlemanら,J.Mol.Biol.48:443(1970)において記載される)、 またはAlign Program(DNAstar,Inc.によって製造される市販のソフトウェアパ ッケージ)のようなアラインメントアルゴリズムを用いてまず整列される(これ らの教示は、本明細書において参考として援用される)。最初のアラインメント が作製された後、次いで関連するタンパク質のOP/BMPファミリーの他のメンバー の配列との比較によって、そのアラインメントは洗練され得る。一旦候補配列と 参照配列との間のアラインメントが作製され、そして洗練されると、パーセント 相同性スコアが算定される。各配列の個々のアミノ酸は、互いの類似性に従って 、連続的に比較される。類似性因子は、類似のサイズ、形状、および電荷を含む 。アミノ酸類似性を決定する、1つの特に好ましい方法は、Dayhoffら(1978),A tlas of Protein Sequence and Structure、第5巻、(補遺3)354〜352頁,Na tl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.(本明細書中で参考として援用され る)において記載されるPAM250マトリクスである。まず、類似性スコアを、整列 された対状の(pair-wise)アミノ酸類似性スコアの総計として算定する。挿入お よび欠失を、パーセント相同性および同一性の目的のために無視する。従って、 ギャップペナルティーを、この計算において使用しない。次いで、未処理のスコ アを、候補化合物のスコアとhOP-1の7システイン骨格のスコアの相乗平均で割 ることによって規格化する。相乗平均は、これらのスコアの積の平方根である。 規格化した未処理のスコアが、パーセント相同性である。 従って、アミノ酸配列「相同性」は、アミノ酸配列同一性および類似性の両方 を含むことが本明細書中において理解され、そして本明細書中において使用され る2つのアミノ酸配列間のパーセント「相同性」は、配列間で同一または類似で あるアミノ酸残基の割合を示す。「類似の」残基は、Dayhoffら(1978)前出に おける「受容される点変異」について規定された基準を満たす「保存的置換」で ある。従って、「保存的置換」は、対応する参照残基に物理学的または機能的に 類似し、類似のサイズ、形状、電荷、および/または化学的特性(例えば、共有 結合または水素結合を形成する能力)などを有する残基である。保存的置換の例 は、あるアミノ酸の、類似の特徴を有する別のアミノ酸との置換(例えば、以下 の群内での置換)を含む:(a)バリン、グリシン;(b)グリシン、アラニン;(c) バリン、イソロイシン、ロイシン;(d)アスパラギン酸、グルタミン酸;(e)アス パラギン、グルタミン;(f)セリン、スレオニン;(g)リジン、アルギニン、メチ オニン;および(h)フェニルアラニン、チロシン。用語「保存的置換」または「 保存的変異」もまた、所定のポリペプチド鎖における置換されていない親アミノ 酸の代わりに、置換されたアミノ酸の使用を含む(ただし、得られる置換された ポリペプチド鎖もまた、本発明における治療効力を有する)。 本発明の腎治療剤はまた、当業者により容易に確認され得る生物学的活性によ って特徴付けられる。詳細には、本発明の腎治療剤は、(a)Reddi-Sampath異所性 骨アッセイ(SampathおよびReddi(1981),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:7599-76 03)もしくは実質的に等価なアッセイにおいて軟骨形成を誘導し得るか、(b)急 性腎不全の標準的動物モデルにおける急性腎不全から生じ得る腎機能の永続的ま たは進行的損失を、有意に予防、阻害、遅延、または軽減し得るか、あるいは(c )急性腎不全であるか、または急性腎不全の危険性を有する哺乳動物に投与され る場合に、腎機能の標準的マーカーに臨床的に有意な改善を生じ得る。 Reddi-Sampath異所性骨アッセイは、軟骨形成活性のアッセイとして当該分野 で周知である。容易に実施され得るアッセイは、例えば、SampathおよびReddi(1 981),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:7599-7603;ならびにWozney(1989)「Bone Mo rphogenetic Proteins」Progress in Growth Factor Research 1:267-280に記載 されそして議論されている。他の動物および組織部位を使用する多くの等価なア ッセイが、本発明の腎治療剤の生物学的活性を評価するために、当業者によって 使用または開発され得る。例えば、米国特許第5,226,683号に記載のバイオアッ セイを参照のこと。 本発明の腎治療剤はまた、急性腎不全の動物モデルにおいて試験され得る。急 性腎不全の哺乳動物モデル(例えば、マウス、ラット、モルモット、ネコ、イヌ 、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、および非ヒト霊長類)は、動物の腎臓組織 に適切な、直接的または間接的な損傷または傷害を生じることによって作製され 得る。急性腎不全の動物モデルは、例えば、急性腎不全の「危険性に」被験体を 置くように、動物において上記の状態または疾患を誘導することによって作製さ れ得る。特に好ましい実施態様において、急性腎不全が、腎毒素剤(例えば、シ スプラチン、アミノ配糖体抗生物質、重金属)の制御された投与によって誘導さ れる、動物モデルが使用される。 最後に、本発明の腎治療剤は、急性腎不全である、またはその危険性のある哺 乳動物被験体(例えば、ヒト患者)に投与される場合、腎機能の標準的なマーカ ーにおいて臨床的に有意な改善を生じることにおけるその治療的効力について評 価され得る。このような腎機能のマーカーは、医学文献において周知であり、そ して、BUNレベルの増加率、血清クレアニチンの増加率、BUNの静的測定、血清ク レアニチンの静的測定、糸球体濾過率(GFR)、BUN/クレアニチンの比、ナトリ ウム(Na+)の血清濃度、クレアニチンについての尿/血漿比、尿素についての 尿/血漿比、尿重量オスモル濃度、1日あたりの尿排出量などが含まれるが、こ れらに限定されない(例えば、AndersonおよびSchrier(1994),Harrison's Prin ciples of Internal Medicine、第13版、Isselbacherら編、McGraw Hill Text, New York;KumarおよびStein(1994)、Internal Medicine、第4版、J.H.Stein編 、Mosby-Year Book,Inc.St.Louisを参照のこと)。 本明細書中で意図される腎治療剤は、インタクトなもしくは短縮型のゲノムDN AもしくはcDNAから、または合成DNAから、原核生物宿主細胞もしくは真核生物宿 主細胞において発現され得る。ダイマータンパク質は、培養培地から単離され、 そして/またはインビトロで再折り畳みされ、そしてダイマー化され、生物学的 に活性な組成物を形成し得る。ヘテロダイマーは、別々の異なるポリペプチド鎖 を結合させることによってインビトロで形成され得る。あるいは、ヘテロダイマ ーは、別々の異なるポリペプチド鎖をコードする核酸を同時発現することによっ て、単一細胞中に形成され得る。例えば、いくつかの例示的な組換えヘテロダイ マータンパク質生成プロトコルについて、WO 93/09229または米国特許第5,411,9 41号を参照のこと。現在のところ好ましい宿主細胞としては、E.coliを含む原核 生物、または酵母、Saccharomyces、昆虫細胞、もしくは哺乳動物細胞(例えば 、CHO、COS、またはBSC細胞)を含む真核生物が挙げられるが、これらに限定さ れない。当業者は、他の宿主細胞が有利に使用され得ることを理解する。本発明 の実施に有用なタンパク質の詳細な説明(本発明の実施に有用なタンパク質の作 製法、使用法、および軟骨形成活性についての試験法を含む)は、米国特許第5, 266,683号および同第5,011,691号を含む多数の刊行物に開示され、これらの開示 は、本明細書中で参考として援用される。 C.処置のための被験体 一般的な問題として、本発明の方法は、急性の腎不全を患っているかまたはそ の危険にある任意の哺乳動物被験体のために利用され得る。本発明の方法によっ て処置され得る哺乳動物被験体には、ヒト被験体または患者が含まれるが、これ らに限定されない。しかし、さらに、本発明は、ヒトの仲間として維持されるか (例えば、イヌ、ネコ、ウマ)、有意な商業的価値を有するか(例えば、乳牛、 肉牛、狩猟用の動物)、有意な科学的価値を有するか(例えば、絶滅の危機にさ らされている種の捕獲されたまたは自由な検体)、または他の様式で価値のある 、飼い慣らされた哺乳動物の処置において利用され得る。さらに、一般的な問題 として、本発明の方法を用いる処置のための被験体は、急性腎不全または急性腎 不全の危険に関連した徴候以外に、他の点では本発明の薬剤での処置のための徴 候を顕わす必要はない。すなわち、処置のための被験体は、本発明の薬剤での処 置のための徴候がなくてもよい。しかし、いくらかの場合において、被験体は、 腎治療薬剤処置が指示される他の徴候(例えば、骨形成異常)を顕わし得る。こ のような場合、腎治療薬剤処置は、過剰投薬を避けるためにそれに従って調整さ れるべきである。 医学または獣医学の分野の当業者は、急性腎不全にあるかまたはその危険にあ る被験体を認識するように訓練されており、そして詳細な科学的文献が、被験体 に対して明らかにされている。例えば、AndersonおよびSchrier(1994)、Harriso n's Principles of Internal Medicine,第13版、Isselbacherら、編、McGraw H ill Text,New York;KumarおよびStein(1994)、Internal Medicine,第4版、J. H.Stein編、Mosby-Year Book,Inc.St.Louisを参照のこと。 好ましくは、被験体が、急性腎不全にあるか、または急性腎不全に進入する危 険にあるという診断は、因子の中でもとりわけ、循環レベルの血清クレアチニン および血中尿素窒素を測定する連続血液検査に基づいてなされる。このような「 連続」血液検査は、急性腎不全の症状を顕わす診断されていない患者の受け入れ た直後から数時間毎に採取され得る。しかし、より代表的には、継続した連続血 液検査は、少なくとも6時間、72時間を超えない、そして好ましくは12〜24時間 の期間を隔てる。24時間または72時間の期間内に2回以上の血液検査に基づいて 、血清クレアチンまたはBUNの増加の速度を計算することが可能である。 最後に、単一の腎臓を有する被験体は、他方の腎臓をどのように喪失したか( 例えば、物理的外傷、外科的除去、先天的欠損症)にかかわらず、急性腎不全の 危険度が高いと考えられ得る。これは、特に1つの腎臓が、残りの腎臓を冒し得 る疾患または状態に起因して欠損されている被験体についてあてはまる。同様に 、すでに腎移植のレシピエントである被験体、または慢性的透析(例えば、慢性 的血液透析または連続的な外来腹膜透析)を受けている被験体は、急性腎不全の 危険度が高いと考えられ得る。それゆえ、これらの被験体にとって、上記の臨床 的な徴候は、より注意深くモニターされる必要があり得、そして腎治療剤処置で のより早期のまたはより積極的な介入が、推奨され得る。 別の局面において、本発明のOP/BMP腎治療剤は、炎症および好中球媒介組織損 傷を低減するのに有用である。これは、下記の実施例3において実証され、そこ では全身的に投与されたOP-1は、ARFのラット虚血再灌流傷害モデルにおける炎 症、好中球の蓄積および活性、ならびに好中球媒介損傷を減少させたことが観察 されている。従って、OP/BMP治療剤は、傷害を受けたまたは損傷した上皮組織、 および特に腎上皮組織における炎症、好中球の蓄積および活性、ならびに好中球 媒介損傷を低減するのに有用であることも示されている。この同じ局面において 、OP/BMP治療剤はまた、全身的に投与された場合、ICAM、特にICAM-1の発現を低 減するのに有用であることが示される。従って、OP/BMP治療剤は、上皮組織、特 に 腎上皮組織におけるICAM発現を低減するのに有用であることが示される。 なお別の局面において、本発明のOP/BMP腎治療剤は、損傷したかまたは傷害を 受けた組織における細胞のアポトーシスを阻害するのに有用である。これはまた 、下記の実施例3において実証され、そこでは、全身的に投与されたOP-1が、AR Fのラット虚血再灌流傷害モデルにおけるアポトーシス細胞の数を減少させるこ とが観察される。従って、OP/BMP治療剤は、損傷したまたは傷害を受けた上皮組 織、特に腎上皮のアポトーシスを阻害するのに有用であることが示される。 D.処方および処置の方法 本発明の腎治療剤は、利用される特定の腎治療剤と適合性である任意の経路で 投与され得る。従って、適切ならば、投与は、経口または非経口(静脈内、腹腔 内、および腎嚢内の投与経路を含む)であり得る。さらに、投与は、腎治療剤の ボーラスの定期的な注入によってであり得るか、または外部(例えば、静脈内バ ッグ)または内部(例えば、生体腐食性インプラントまたは移植されたポンプ) のリザーバからの静脈内かまたは腹腔内投与によってより連続的になされ得る。 本発明の腎治療剤は、任意の適切な手段によって、好ましくは直接的に(例え ば、組織部位への注射または局所投与のように局所的に)、または全身的に(例 えば、非経口的にまたは経口的に)個体に提供され得る。薬剤が非経口的(例え ば、静脈内、皮下、または筋肉内投与によって)に提供される場合、薬剤は、好 ましくは、水性溶液の一部を含む。溶液は、所望の薬剤の被験体への送達に加え て、溶液が他の様式で被験体の電解質および/または容量の平衡に悪影響を与え ないように生理学的に受容可能である。従って、薬剤のための水性媒体は、通常 生理食塩水(例えば、9.85%NaCl、0.15M、pH7〜7.4)を含み得る。 所望ならば、所定の腎治療剤または他の薬剤は、適切な分子との結合により、 より可溶性にされ得る。例えば、成熟OP/BMPダイマーのOP/BMPプロドメインとの 結合によって、代表的には、対応する成熟形態よりも、生理学的溶液に可溶性で あるかまたは分散可能である腎治療剤のプロ形態を生じる。実際、OP/BMPファミ リーの内因性メンバーは、この形態の哺乳動物体において輸送される(例えば、 分泌および循環される)と考えられる。タンパク質のこの可溶性形態は、OP/BMP 分泌哺乳動物細胞(例えば、そのタンパク質をコードし、そして発現し得る核酸 でトランスフェクトされた細胞)の培養培地から得られ得る。あるいは、可溶性 種は、成熟ダイマー(またはその活性フラグメント)を、プロドメインまたはそ の可溶性増強フラグメント(以下により詳細に記載される)と複合体化させるこ とによって処方され得る。可溶性を増大させ得、そして経口投与に特に特に有用 な別の分子は、カゼインである。例えば、0.2%カゼインの添加は、OP-1の成熟 な活性形態の可溶性を80%増大させる。乳汁および/または種々の血清タンパク 質において見出される他の成分もまた有用であり得る。 非経口投与のために有用な溶液は、薬学の分野において周知の任意の方法(例 えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Gennaro,A.編),Mack Pub,1990 によって調製され得る。 あるいは、本明細書に記載される薬剤は、経口によってのみ投与され得る。治 療剤としてのタンパク質の経口投与は、一般に、ほとんどのタンパク質が、血流 に吸収され得る前に哺乳動物消化系における消化酵素および酸によって容易に分 解するので、実施されない。しかし、本明細書に記載される腎治療剤は、代表的 には、酸安定性であり、そしてプロテアーゼ耐性である(例えば、米国特許第4, 968,590号を参照のこと)。さらに、これらの腎治療剤の少なくとも1つ、OP-1 が、乳腺抽出物、初乳、および57日乳汁において同定されている。さらに、乳腺 抽出物から精製されたOP-1は、治療的に有効であり、そしてまた血流において検 出される。最後に、可溶性形態OP-1(例えば、プロドメインと結合した成熟OP-1 )は、治療的に有効であることを示している。これらの知見、ならびに以下の実 施例に開示される知見は、経口および非経口投与は、本発明の腎治療剤を個体に 投与するための実行可能な手段である。さらに、本明細書中に記載される成熟形 態の特定の腎治療剤が、代表的には、あまり可溶性でないのに対して、乳汁に見 出される形態(および、乳腺抽出物および初乳)は、おそらく成熟の治療的に有 効な形態の、インタクトな配列のプロドメインの一部または全部との結合によっ て、および/または1つ以上の乳汁成分との結合によって容易に可溶である。従っ て、本明細書中に提供される化合物はまた、それらの可溶性をインビトロまたは インビボで増強し得る分子と結合し得る。 本明細書中に提供される化合物はまた、腎治療剤を所望の組織に標的化し得る 分子と結合し得る。例えば、抗体、抗体フラグメント、または所望の組織の細胞 上の表面分子と特異的に相互作用する他の結合タンパク質が使用され得る。有用 な標的化分子は、例えば、米国特許第5,091,513号に例えば開示される単鎖結合 部位技術を使用することによって設計され得る。 当業者に理解されるように、処方された組成物は、治療的有効量の腎治療剤を 含む。すなわち、これらは、適切な濃度の薬剤を腎組織に、腎機能の永続的なま たは進行的な損失を防止、阻害、遅延、または軽減するために十分な時間、提供 するか、またはそうでなければ治療効力を提供する量を含有する。当業者に理解 されるように、本発明の治療組成物中の記載の化合物の濃度は、選択された薬剤 の生物学的効力、利用される化合物の化学的特徴(例えば、疎水性)、化合物賦 形剤の処方、投与経路、および意図される処置(活性成分が直接腎臓または腎嚢 に投与されるのか、または全身的に投与されるのか否かを含む)を含む多くの因 子に依存して変化する。投与されるべき好ましい投薬量はまた、特定の被験体の 腎組織の状態、腎機能損失の程度、および全体的な健康状態のような変量に依存 するようである。投薬量は、好ましくは連続的に投与されるが、しかし毎日、1 週間に複数回(multi-weekly)、l週間毎、または月毎の投薬量もまた利用され得 る。他の様式で連続的な、1週間に2回の、または1週間に3回の血液透析セッシ ョンを必要とする被験体にとっては、連続的な、1週間に2回のまたは1週間に3 回の静脈内または腹腔内注入は、過度に都合が悪いとは考えられない。さらに、 頻繁な注入を容易にするために、半永久的なステント(例えば、静脈内、腹腔内 、または嚢内)の移植が推奨され得る。 本発明の腎治療剤は、当然に、単独で、または本明細書に記載される状態の処 置において有益であると知られている他の分子と組み合わせて投与され得る。他 の薬剤と組み合わせて使用される場合、それに応じて本発明の腎治療剤の投薬量 を変化させることが推奨され得る。 従って、別の局面において、本発明は、上記の状態のいずれかの処置のための 医薬の製造における本発明のOP/BMP腎治療剤の使用を提供する。 本発明の実施(さらなる好ましい局面およびその実施態様を含む)は、例示の ためのみに本明細書中に提示され、そして本発明をいかなる様式においても限定 することを意図されるべきではない以下の実施例から、なおより完全に理解され る。 実施例1 腎臓に対する急性虚血性発作の後の腎機能の経過に有益に影響を与えるOP-1の 能力を試験するために、クレアチニンレベルに対するOP-1の効果を、虚血性腎損 傷が一時的に腎臓の血流を防止することによって誘導されたラットにおいて試験 した。このモデル系において、両方の腎大動脈は、60分間クランプで止められる 。OP-1は、以下の時点で0.25μg/kgで各ラットの尾静脈に投与される:動脈をク ランプする10分前、次いで虚血性傷害の24、48、および72時間後。図1に示され るように、プラシーボ処置したラットのクレアチニンレベルは、傷害の後、迅速 に上昇し、24時間後の測定においてピークに達し、そして傷害後18日目までに正 常まで回復する。対照的に、OP-1処置は、プラシーボ群のレベルのわずか半分の レベルまでに24時間後の測定でピークに達し、その後減少し始めるクレアチニン レベルと関連する。測定がなされた傷害後の4つの日数の各々について、プラシ ーボ処置ラットのクレアチニンレベルは、OP-1処置動物のレベルの少なくとも2 倍高かった。これらの結果は、OP-1が、虚血性発作によって腎臓組織に引き起こ された損傷を限定し得、そしてまた腎臓の機能の回復を迅速化させ得ることを示 す。 実施例2 腎不全の別の動物モデルにおける腎臓機能に対する傷害後OP-1処置の効果を研 究するために、単一の腎臓を有するラットを、ノルエピネフリン誘導腎損傷の2 日後に、OP-1で処置した。モデル系において(Congerら、Kidney Intl.40:21-28 ,1991においてさらに記載される)、各ラットは、90分間のノルエピネフリンの 動脈内注入によって誘導された腎傷害の7日前に腎臓を除去された。ノルエピネ フリン投与の2日後、OP-1を、0.25mg/kgで静脈内に投与する。 図2の上部の表は、ビヒクル処置およびOP-1処置のラットのクレアチニンレベ ルを表す。傷害の4日後に、傷害後の第2日目にOP-1で処置された動物は、ビヒク ル処置されたコントロールのレベルよりも有意に低いクレアチニンレベルを有し ていた。図2の下部の表に表されるデータは、OP-1処置がまた、コントロールと 比較して、腎臓の血流、GFR、および尿流における改善と関連していたことを示 す。 実施例3 ラットにおける急性腎不全のモデルとして虚血再灌流傷害を使用するさらなる 実験を、以下のように行った: 動物外科手順および実験プロトコル 200〜250gの雄のウィスターラット(Pilva Breeding Laboratory,Zagreb,C roatia)を、手術前に12時間飢餓させた。ケラチン(20mg/kg)麻酔剤の腹腔内 投与の後に、両方の腎臓大動脈を60分間、毛細血管瘤クランプ(Roboz)で背面咬 合した。ビヒクル緩衝液またはOP-1を含有する20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(50 0μl)を、尾静脈を介して投与した。すべての動物を、手術の間の任意の体液損 失を補償するために、1〜3mlの予め暖めた(37℃)生理食塩水(0.9%NaCl)を腹 腔内投与した。実験は、ブラインドであり、そしてラットは、30分〜18日までの 範囲の異なる時間間隔で屠殺した。血液サンプル(0.5ml)を、再灌流後の0時間 、24時間、48時間、および72時間で、そしていくつかの場合には、30分、2時間 、8時間、および96時間、ならびに18日で眼窩の叢から得た。GFR測定のために、 尿を、以前に記載のように代謝ケージから24時間回収した(Vukicevicら(1989)Bo ne Miner.6:125-39)。血清および尿クレアチニンを、Jaffe法(Wheltonら(1994 )、Clinical Chemistry,BurtisおよびAshwood、編、Amer.Assn,Clin.Chem. )によって測定し、そして血中尿素窒素(BUN)を、グルタメートデヒドロゲナー ゼUV手順によって測定し、リンをモリブデート法によって測定し、そしてカルシ ウムをo-クレゾールフタレイン法によって測定した。血清電解質を、間接電位差 計によって測定した。合計456のラットを使用して15の独立した実験を行った。 予防的なモデルにおいて、OP-1を、手術の10分前に投与し、次いで24時間、48時 間、および72時間後に投与した。治療モデルにおいて、第一のOP-1注入を、再灌 流後の1時間または16時間のいずれかで投与し、再灌流後の96時間まで、24時間 間隔で注入した。 組織形態計測および免疫細胞化学 屠殺の際に、各腎臓を、長軸に沿って分割し、そして片半分を4%パラホルム アルデヒド中で固定した。パラフィンで包埋したブロックからの2つの連続する 切片を、H&EおよびPASで染色した。形態計測測定を、長軸切片上で、Nikon顕微 鏡(Nikon Optiphot-2;MVI,Avon,MA)下で、100ポイントのグリッド線を含む アイピースグリッド(eye-piece grid)を使用して行った。グリッドを、ステー ジマイクロメータによって較正し、そして特定の特徴を有する領域を、目的の組 織上に重ねた交差点(点またはヒット)の数を数えることによって測定した。全 ての計数を、1×対物レンズを介して行った。各点またはヒットは、0.61mm2の 領域を表す。特徴の評価を、それらが1×対物レンズを介して識別し得ない場合 、より高い倍率で行った。 形態計測変量は、総組織領域、拡大した尿細管領域、詰まった尿細管領域、梗 塞した領域、および壊死した領域を含んでいた。拡大した尿細管は、拡大した管 腔および同定可能な上皮細胞を有する尿細管構造として定義された。詰まった尿 細管は、細片で満たされた管腔および同定可能な上皮細胞を有する尿細管構造と して定義された。梗塞した領域は、H&E染料によって明るいピンクに染色され、 そして外側髄質における局所的鬱血と関連した同定可能な組織プロフィールおよ び損失した細胞細片を示す腎臓の部分またはゾーンとして定義された。壊死領域 は、組織プロフィットおよび細胞の細片の両方の損失を示す梗塞した領域に位置 する腎臓の部分またはゾーンとして規定された。 免疫細胞化学を、免疫ペルオキシダーゼ検出系を使用して行った(Zymed,San Francisco,CA)。以下のモノクローナル抗体を使用した:PCNA(増殖する細胞核 抗原:Dako,Denmark)、平滑筋αアクチン(SMA)(Dako,Denmark)、平滑筋ミオシ ンIgG(BTI、Stoughton、MA)およびICAM(CD54;Dako,Denmark)。PCNAおよびSM Aについて染色した腎臓切片あたり最小3000細胞を計数し、そして陽性細胞の数 を、皮質の小分割(subdivision)および/またはS3ゾーンにおける総計数 細胞のパーセントとして表した。 アポトーシス細胞を、TACS 2 TdTインサイチュアポトーシス系(Trevigen,Ga ithersburg,MD)によって検出した。再灌流の1、2、3、および5日後に屠殺 して、アポトーシス細胞の総数を、群あたり8つの独立した動物からの腎臓あた り3つの切片において皮質および髄質において計数した。 好中球蓄積および活性 好中球浸潤を、組織学的切片上でのナフトールAS-Dクロロアセテートエステラ ーゼ染色(Sigma)を使用して決定した。好中球を、接眼グリッドを使用して、皮 質およびS3ゾーン(髄質外部および皮質内部)において計数した。データは、傷 害の24時間後に、8つの独立したラット由来の、動物あたり2切片、切片あたり 100高出力視野上で評価した、mm2あたり好中球の数として表した。さらに、好中 球活性を、ミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)によって、傷害後24時間に決定し た。MPOについては、腎臓を、50mM KPO4緩衝液、pH6.0中の0.5%HTAB(Sigma)に おいて抽出し、10分間ホモジナイズし、5分間超音波処理し、そして最後に溶解 物を60分間、20,000×gで遠心分離した。10μlの抽出物を、0.167mg/ml O-ジア ニシジン(Sigma)および0.0005%H2O2を含有する50mM KPO4緩衝液の1mlとともに2 5℃でインキュベートした。吸光度を、ミエロペルオキシダーゼ標準(Oxis)を使 用して460nmで測定し、そして腎臓の湿重量に対して正規化した。 統計学的分析 分散の2元分析およびDuncan's多範囲検定でのhoc後分析を、生化学的および 組織学的パラメータに対する処置および時間の効果を決定するために行った。Ma nn-Whittney-U検定およびχ検定を使用して、選択した群の間の結果における差 異の有意性を決定した。 予防的および治療的効果 代表的な実験において、再灌流後の24時間で、血清クレアチニン(Cr)および血 中尿素窒素(BUN)レベルは、ビヒクルアセテート緩衝液(500μl;pH4.5) を受けた急性腎不全のラットにおける正常値を超えて8〜10倍まで増加した。 クランプする10分前の、250μgのOP-1/kgの静脈内注射および、次いで24時間間 隔での再灌流後72時間までの静脈内注射により、ビヒクル処置ラットに比較して 、死亡率が劇的に減少し、そして血清Cr、BUN、リン、およびカリウム値の上昇 を強力に抑制した。血清ナトリウムおよび塩化物の値は、全ての動物において不 変であった。ビヒクル単独は、何も受けなかったARFラットに比較して、ARFを有 するラットにおける腎臓機能に影響を及ぼさなかった。虚血傷害に対して腎臓を 首尾良く保護したOP-1用量は、動物の齢および虚血の重篤度および再灌流によっ て変化し、そして50〜250μg/kgの範囲内であった。再灌流後24時間に測定したG FRは、ビヒクル処置ラットにおけるよりも、OP-1処置ラットにおいて有意に高か った。詳細には、シャムラットは、4.7±0.8のGFR(ml/分)を有し;ビヒクル処置 したARFラットは、0.25±0.11のGFRを有し;そしてOP-1処置したラットは、0.45 ±0.17のGFRを有した(ARFに対してp<0.05)。樹立したARFの処置のためにOP-1 の治療的能力を試験するために、OP-1を再灌流後の1時間または16時間のいずれ かで投与した。両方のOP-1処置群は、より低い血清CrおよびBUN値を示した。血 清CrおよびBUNの減少は、1時間で投与されたOP-1を有するラットにおいて、OP-1 を再灌流後16時間で受けたラットよりも劇的であった。これらの結果は、OP-1が 、血清生化学的パラメータによって測定されたように、虚血における腎臓機能の 損失に対して保護することを示す。 腎臓損傷に対する保護 ARFを有するラット由来の腎臓切片の組織学的分析は、形態学的な変化がS3ゾ ーンにおいて起こっていたことを示した。再灌流の二時間後に、ビヒクルで処置 した腎臓は、再灌流後24時間、72時間、および120時間に試験した場合に、実質 性梗塞および壊死の大きな領域に導く鬱血の徴候を示した。しかし、OP-1を虚血 前に与えられた動物は、ほとんどか全く鬱血を示さず、そしてより少ない梗塞を 有していた;32のビヒクル処置腎臓のうちの28、および32のOP-1処置腎臓のうち 16は、白色梗塞を有していた(壊死)。そして32のビヒクル処置したラットのうち 26および32のOP-1処置したラットのうち14は、赤色梗塞を有していた。組織形 態学的分析は、ビヒクル処置ラットにおける6および11%の腎臓切片領域、なら びにOP-1処置ラットの0および0.3%は、それぞれ白色または赤色の梗塞を有し ていたことを示した。梗塞に冒された腎臓領域において、約50%の尿細管を、ビ ヒクルおよびOP-1処置ラットの両方において、傷害の1〜5日後に拡大した。し かし、傷害の2および5日後、OP-1処置ラットにおいて観察された剥離した上皮 細胞、細胞細片、および円柱状(cast)マトリックスで詰まった尿細管は、ビヒク ル処置動物と比較してより少なかった。尿細管周囲の毛細管由来の平滑筋細胞の 分析により、OP-1処置腎臓のS3ゾーンにおいて傷害後24時間で約5倍多い細胞が 、ビヒクル処置腎臓に比較して、αアクチンを発現したことが明らかになった。 これは、OP-1治療が、血管の平滑筋表現型の維持を支持することを示唆する。PC NA染色によって評価された細胞増殖は、OP-1処置ラットの皮質および外側髄質の 近位尿細管細胞増殖における増大を示した。再灌流の1時間後に処置した動物に おいて、OP-1は、腎臓組織学において同様な保護作用を有していた。再灌流後16 時間に処置された動物において、構造的な損傷は、傷害後24時間でのビヒクル処 置動物に類似していた。 炎症の抑制 ICAM-1が、ARFの発症の間に重要な役割を果たすことが報告されているので、 本発明者らは、虚血および再灌流後の異なる時点でのICAM-1の発現に対するOP-1 の効果を決定した。虚血の10分前のOP-1処置は、再灌流後30分、2時間、8時間 に得た腎臓の分子的および組織化学的分析によって決定したところ、ICAM-1の発 現を減弱した。ビヒクル処置ラットにおける有意な好中球蓄積が、再灌流後24時 間で、S3ゾーンにおいて観察された。対照的に、OP-1で処置されたラットは、劇 的に減少した好中球蓄積を有していた(ビヒクル中232±47細胞/mm2、対OP-1群 中9±3細胞/mm2;n=8、p<0.01)。腎臓における好中球活性は、総組織ミエロ ペルオキシダーゼ活性(MPO)を測定することによってモニターされた。再灌流後1 時間でのOP-1の投与は、再灌流後24時間で決定したとき、MPO活性が約3倍減少 した(MPO/μg/湿重量腎臓:ビヒクル中37.3±16.5、対OP-1処置腎臓中12.8±7. 6;n=8;p<0.01)。減少したアポトーシス 傷害後1および2日に、OP-1およびビヒクル処置腎臓の両方の髄質におけるア ポトーシス細胞の数に差異はなかった。しかし、アポトーシス細胞の数の減少は 、OP-1処置ラットの皮質において観察された。傷害の5日後、OP-1処置は、皮質 および髄質の両方の尿細管の基底膜に接着しているアポトーシス細胞の劇的な減 少をもたらしたのに対し、多くのアポトーシス細胞が、ビヒクル処置ラットの腎 尿細管の管腔に観察された。等価物 本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態 において実施され得る。上記の実施態様は、それゆえ、全ての局面において、本 明細書中に記載される本発明について限定的ではなく例示的であると考えられる 。従って、本発明の範囲は、上記の記載によってというよりむしろ添付の請求の 範囲によって示され、そして請求項の等価性の意味および範囲内に入る全ての変 更は、そこに包含されることが意図される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR, NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL ,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR, BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,E E,ES,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU ,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR, KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL ,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK, SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,U Z,VN,YU,ZW (72)発明者 コーヘン,チャールズ エム. アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02193,ウェストン,ハリントン レーン 1

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.急性腎不全に罹患しているか、またはその危険性のある哺乳動物の処置の方 法であって、該哺乳動物に、治療に有効な量のOP/BMP腎治療剤を投与する工程を 包含する、方法。 2.哺乳動物の透析処置の必要を遅らせるか、またはその頻度を減少させる処置 方法であって、該哺乳動物に、治療に有効な量のOP/BMP腎治療剤を投与する工程 を包含する、方法。 3.損傷もしくは傷害されたか、または損傷もしくは傷害の危険性のある哺乳動 物組織において、炎症、好中球の蓄積、および/または好中球媒介の損傷を減少 させる方法であって、該哺乳動物に治療に有効な量のOP/BMP腎治療剤を投与する 工程を包含する、方法。 4.損傷もしくは傷害されたか、または損傷もしくは傷害の危険性のある哺乳動 物組織において、細胞のアポトーシスを阻害する方法であって、該哺乳動物に治 療に有効な量のOP/BMP腎治療剤を投与する工程を包含する、方法。 5.前記腎治療剤が、OP-1、OP-2、OP-3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、およ びBMP9からなる群から選択されるポリペプチドのプロ形態、成熟形態、および可 溶性形態からなる群から選択されるタンパク質の、少なくともC−末端システイ ンドメインからなるポリペプチドを包含する、請求項1から4のいずれかに記載 の方法。 6.前記腎治療剤が、ヒトOP-1のプロ形態、成熟形態、および可溶性形態からな る群から選択されるタンパク質の、少なくともC−末端システインドメインから なるポリペプチドを包含する、請求項5に記載の方法。 7.前記腎治療剤が、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配列と少 なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを包含する、請求項1から4のいず れかに記載の方法。 8.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配列 と少なくとも75%の相同性を有する、請求項7に記載の方法。 9.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配列 と少なくとも80%の相同性を有する、請求項7に記載の方法。 10.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配 列と少なくとも60%の同一性を有する、請求項7に記載の方法。 11.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配 列と少なくとも65%の同一性を有する、請求項7に記載の方法。 12.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配 列と少なくとも70%の同一性を有する、請求項7に記載の方法。 13.前記腎治療剤が、 (a)異所性骨アッセイにおいて軟骨形成を誘導するか; (b)急性腎不全の動物モデルにおいて、急性腎不全から生じる腎機能の損失 を、予防、阻害、遅延、または軽減するか;あるいは (c)急性腎不全に罹患しているか、またはその危険性のある哺乳動物に投与 した場合に、腎機能の標準マーカーにおいて臨床的に有意な改善を生じる、 請求項5から12のいずれかに記載の方法。 14.前記腎治療剤が、ヒト骨原性タンパク質およびヒト骨形態形成タンパク質 からなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 15.前記哺乳動物におけるBUNの連続測定が、少なくとも2〜4mmol/L/日 (5〜10mg/dL/日)のBUNの増加速度を示す、請求項1または2のいずれかに 記載の方法。 16.前記哺乳動物におけるBUNの連続測定が、少なくとも4〜8mmol/L/日 (10〜20mg/dL/日)のBUNの増加速度を示す、請求項1または2のいずれかに 記載の方法。 17.前記哺乳動物における血清クレアチニンの連続測定が、少なくとも20〜40 μmol/L/日(0.25〜0.5mg/dL/日)の血清クレアチニンの増加速度を示す、請求項 1または2のいずれかに記載の方法。 18.前記哺乳動物における血清クレアチニンの連続測定が、少なくとも40〜80 μmol/L/日(0.5〜1.0mg/dL/日)の血清クレアチニンの増加速度を示す、請求項 1または2のいずれかに記載の方法。 19.前記哺乳動物が、急性腎不全の前腎的原因、急性腎不全の後腎的原因、お よび急性腎不全の内腎的原因からなる群から選択される状態に苦しむ、請求項1 または2のいずれかに記載の方法。 20.前記哺乳動物が、心臓の出力の低下、血液量減少、容量の再分配、および 血管抵抗の変化からなる群から選択される急性腎不全の前腎的原因に苦しむ、請 求項19に記載の方法。 21.前記哺乳動物が、尿管閉塞、骨盤(pelvic)閉塞、および膀胱閉塞からな る群から選択される急性腎不全の後腎的原因に苦しむ、請求項19に記載の方法 。 22.前記哺乳動物が、脈管構造の異常、糸球体の異常、急性間質性腎炎、尿細 管内閉塞、および急性尿細管壊死からなる群から選択される急性腎不全の内腎的 原因に苦しむ、請求項19に記載の方法。 23.前記哺乳動物が、腎移植物レシピエントである、請求項1または2のいず れかに記載の方法。 24.前記哺乳動物が、1つの腎臓のみを有する、請求項1または2のいずれか に記載の方法。 25.前記投与が経口投与である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 26.前記投与が非経口投与である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 27.前記投与が静脈内投与である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 28.前記投与が腹腔内投与である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 29.前記投与が腎嚢内投与である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 30.前記投与のために、ステントが前記哺乳動物に移植されている、請求項2 6に記載の方法。 31.前記ステントが静脈内ステントである、請求項30に記載の方法。 32.前記ステントが腹腔内ステントである、請求項30に記載の方法。 33.前記ステントが腎嚢内ステントである、請求項30に記載の方法。 34.前記投与が移植されたデバイスによってなされる、請求項26に記載の方 法。 35.前記投与が、少なくとも約1週間の期間の間に毎日行われる、請求項1か ら4のいずれかに記載の方法。 36.前記投与が、少なくとも約1か月の期間の間に週に少なくとも一度行われ る、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 37.前記腎治療剤が、前記哺乳動物の体重kgあたり約0.01〜1000μgの投薬量 で投与される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。 38.前記腎治療剤が、前記哺乳動物の体重kgあたり約0.1〜100μgの投薬量で 投与される、請求項37に記載の方法。 39.急性腎不全のまたはその危険性のある哺乳動物の処置のための医薬品の製 造における、OP/BMP腎治療剤の使用。 40.哺乳動物の透析処置の必要を遅延させるか、またはその頻度を減少させる ための医薬品の製造における、OP/BMP腎治療剤の使用。 41.損傷もしくは傷害されたか、または損傷もしくは傷害の危険性のある哺乳 動物組織において、炎症、好中球の蓄積、および/または好中球媒介の損傷を減 少させるための医薬品の製造における、OP/BMP腎治療剤の使用。 42.損傷もしくは傷害されたか、または損傷もしくは傷害の危険性のある哺乳 動物組織において、細胞のアポトーシスを阻害するための医薬品の製造における 、OP/BMP腎治療剤の使用。 43.前記腎治療剤が、OP-1、OP-2、OP-3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、お よびBMP9からなる群から選択されるポリペプチドのプロ形態、成熟形態、および 可溶性形態からなる群から選択されるタンパク質の、少なくともC−末端システ インドメインからなるポリペプチドを包含する、請求項39から42のいずれか に記載の使用。 44.前記腎治療剤が、ヒトOP-1のプロ形態、成熟形態、および可溶性形態から なる群から選択されるタンパク質の、少なくともC−末端システインドメインか らなるポリペプチドを包含する、請求項43に記載の使用。 45.前記腎治療剤が、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配列に 少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを包含する、請求項39から42 のいずれかに記載の使用。 46.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配 列に少なくとも75%の相同性を有する、請求項45に記載の使用。 47.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配 列に少なくとも80%の相同性を有する、請求項45に記載の使用。 48.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配 列に少なくとも60%の同一性を有する、請求項45に記載の使用。 49.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配 列に少なくとも65%の同一性を有する、請求項45に記載の使用。 50.前記ポリペプチドが、ヒトOP-1の7つのシステインドメインのアミノ酸配 列に少なくとも70%の同一性を有する、請求項45に記載の使用。 51.前記腎治療剤が、 (a)異所性骨アッセイにおいて軟骨形成を誘導するか; (b)急性腎不全のモデル動物において、急性腎不全から生じる腎機能の損失 を、予防、阻害、遅延、または軽減するか;あるいは (c)急性腎不全に罹患しているか、またはその危険性のある哺乳動物に投与 した場合に、腎機能の標準マーカーにおいて臨床的に有意な改善を生じる、 請求項43から50のいずれかに記載の使用。 52.前記腎治療剤が、ヒト骨原性タンパク質およびヒト骨形態形成タンパク質 からなる群から選択される、請求項39から42のいずれかに記載の使用。
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