「3週間で学校に行けるようになります」
「これをすれば劇的に変化します」
そういった言葉で親の不安に入り込み、短期間での解決をうたう一方で、実際には高額な料金を請求するような「不登校ビジネス」が存在する。不登校の子どもを持つ親は、日々不安や焦りを感じている。だからこそ、「もし改善するのなら……」と心が揺れてしまうのも仕方のないことだ。
NPO法人『福祉広場』代表の池添素さんは、不登校や発達障害の子どもと親にかかわり続けて40年、子どもの不登校に悩み苦しむ親たちを支えている。その池添さんと出会った家族と池添さんに、ジャーナリストの島沢優子さんが取材する連載「不登校と向き合うあなたへ~待つ時間は親子がわかり合う刻~」。第18回では、3歳から不登園になったひとり息子のリンタくんの父・シンペイさんについてお伝えしている。
前編【3歳から不登園の息子が小1で突然登校…父親が学んだ「子どもの急激な変化」の裏側】では、「泣いても、力ずくでも連れて行ったほうがいい」といったSNS上の声に戸惑いながらも、シンペイさん夫婦が息子リンタくんの特性と丁寧に向き合い、池添さんへの相談を通じて少しずつ理解を深めていく姿をお伝えした。リンタくんは小学校に入学し、一時は教室で過ごせるようになるが、突然また行けなくなる。そんなとき、池添さんからかけられた言葉が、「不登校とどう向き合うか」を考える大きな手がかりになった。
後編では、「これをやれば劇的に改善する」という不登校ビジネスに直面したシンペイさんの葛藤を描く。不安と希望が入り混じる中で、「子どもにとっての幸せ」とは何か。不登校ビジネスに触れたことで見えてきたものとは。親として、ひとりの人間として、シンペイさんが感じたこと、学んだことをお伝えする。
「これをやれば劇的に改善する」は本当?
学校に行ける日もあれば、行けない日もある。そんな低空飛行が続くなか、小学3年生になった春に発達検査を受けた。能力の種類による違いが大きかった。例えば、どれとどれを組み合わせると同じ形になるかといった図形の組み合わせは飛びぬけて点数が良かった。これに対し、短期記憶や言語能力が弱かった。
目から入るものをとらえる再現性は強力で、情報収集力が高く知識も豊富。その一方で、言葉がすぐ出てこなかったり、一度に複数のことを指示されると、ひとつやったら、もうひとつは忘れてしまう。持っている能力の凸凹の幅が大きい。要するに、発達障害の大きな特徴がリンタくんには顕著だった。
シンペイさんは「すごくギャップが大きかった」と驚きを隠さない。検査結果について「対人恐怖みたいなものがあるのも確か。ASD(自閉症スペクトラム)のいくつかの症状があるのも確か。うちの子はグレーゾーンでも、かなり濃いめなグレーなんだろうなって感じました」
療育を受けながら、インターネットに出てくる情報や書籍も読んだ。それらの中には、すぐにでも手を伸ばしたくなる情報があふれていた。
「これをやれば劇的に改善します、みたいなのもありました。そういったフレーズを目にすると、知りたくなりますよね。不登校のお子さん、こんなトレーニングを3ヵ月やれば、すぐに学校に行けますみたいなのがあって。中には詐欺めいたものもありました」
いわゆる「不登校ビジネス」と言われるものなのかはわからないが、コロナの時期にリンタくんにやらせたこともあった。妻が誰かに「体の動かし方を改善すれば不登校が解消される」といったふれこみで紹介され、オンライントレーニングのレッスンを受けた。