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撮影 岡本武志
撮影 岡本武志

「貧しくて野球もできない」ラグビー日本代表・姫野和樹が「貧しくても悪いことはしなかった」理由

姫野ノート「弱さ」と闘う53の言葉 後編

  • 姫野 和樹

2023年9月8日開幕のラグビーW杯。2019年に続き日本代表としての活躍が期待されるのが姫野和樹選手だ。海外の選手にも負けない最強のフォワードは、その人柄にも信頼が厚い。そんな姫野選手の魅力の理由を伝えるのが、『姫野ノート「弱さ」と闘う 53 の言葉』(飛鳥新社)だ。
チームのキャプテンとして、これまでのラグビー人生の中で学んできた、考え方や意識作り、メンタルメソッド、自分との向き合い方、目標設定術、リーダー論、組織マネジメント論.....姫野選手の「思考習慣」がまとまった一冊となっている。

本書の発売とW杯開幕を記念して本書より抜粋する前編では、給食費も何度も滞納するほど貧しかった小学生時代のことをお伝えした。家でのんびりくつろげないから、家の外で夜遅くまで月を見ていたという「姫野少年」。後編では、ラグビーに出会い、「姫野選手」となっていく経緯をお届けする。

2019年のラグビーW杯は日本代表が初のベスト8に輝き、日本中が沸いた Photo by Getty Images
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「普通の生活」がしたい

太陽や月は、大げさではなく本当に僕の友達だった。
「大人になって、もし自分の子どもができたら……」
「オレみたいな、こういう思いは絶対にさせたくない」
月を眺めながら、そんなことを考えていた。

両親のことを憎んだり嫌ったりしていたわけではない。3人の子どもを、大変な思いをしながら何だかんだちゃんと食べさせてくれて、育ててくれていたわけだから。
ただ、1人になると、恥ずかしくて、悲しくて、しんどかったのだ。
そして同時に、強く心に誓っていた。
「絶対にラグビーで這い上がってやる」
「大きくなったら絶対に凄い選手になってやる……!」

たくさんお金を稼いでお金持ちになってやろう、というのではない。僕が子どもだった当時、ラグビーはまだまだアマチュアのスポーツ、マイナーなスポーツだったから大金が稼げる世界ではなかった。ただただ、安定した生活を夢見ていただけだ。一軒家や自分の部屋にも憧れがあった。暖かくて掃除が行き届いた部屋で、家族みんなで笑いながらくつろげる――そういう普通の生活が憧れだった。

Photo by iStock

「ラグビーを頑張れば、大きな会社に入って普通に暮らせる」
そうなるための、僕の唯一の“希望の光”がラグビーだったし、その光の先にあるのが、トヨタというチームだった。

だから、僕は今でも月が好きだ。
満月の夜は、自宅マンションのベランダに出て、20分、30分……と、ただただずっと月を眺める。冬でもダウンジャケットをわざわざ着込んで外に出て、月を見る。
眺めながら、今もやっぱり考える。
「あの頃の夢は叶えたのかな……」
「いや。オレ、まだまだだよな……」
「もっとやらないと、考えないとな……」
30分もそうやっていると、不思議なことに気持ちが落ち着いてくる。
「……よし、頑張ろう!」
また前向きになれるのだ。
子どもの頃も今も、僕は月からエナジーを貰っているのかもしれない。

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