日本三名園として親しまれている金沢市の兼六園、水戸市の偕楽園、岡山市の後楽園は、日本庭園の美が凝縮されています。この記事では、それぞれ異なる個性を持つ名園たちの歴史、造園思想、見どころ、周辺の観光施設やグルメを徹底解説。兼六園の理想的な庭園美や、偕楽園の陰と陽が表現された造園哲学、後楽園の借景の美の魅力に迫ります。
兼六園 金沢を彩る日本庭園の傑作
加賀藩が築いた庭園美の極致
石川県金沢市にある兼六園は1676年、加賀藩の5代藩主・前田綱紀(つなのり)が建てた別荘の周辺を庭園にしたことが始まりです。加賀藩の歴代藩主によって整備され、1863年にほぼ現在の姿になりました。兼六園の名は「宏大(こうだい)」「幽邃(ゆうすい)」「人力(じんりょく)」「蒼古(そうこ)」「水泉(すいせん)」「眺望(ちょうぼう)」という6つの景観要素を兼ね備えていることが由来とされています。広大な敷地には、人工的に造られた小山や優雅な茶屋、池などが巧みに配置されています。
兼六園の見どころ:季節を映す霞が池と徽軫灯籠
兼六園の中心部に位置する霞が池は、園内最大の池として兼六園のシンボル的な存在となっています。池の水面には季節ごとに異なる表情の木々が映り込み、特に春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪景色は、それぞれが絵画のような美しさを演出します。
霞が池の北岸に立つ徽軫灯籠(ことじとうろう)も、兼六園のシンボル的な存在です。琴の糸を支える琴柱(ことじ)に似た独特の形状からその名が付けられたとされ、特に雪化粧した冬の徽軫灯籠は、金沢を代表する絶景として多くのカメラマンに愛されています。また、瓢池(ひさごいけ)の東岸にたたずむ夕顔亭は、茶室内の壁に施された夕顔の透彫りが名前の由来。1774年に建てられたとされ、当時の姿を今に伝えています。
兼六園の周辺も満喫:金沢の歴史と文化に触れる
兼六園から徒歩15分ほどのところにあるひがし茶屋街は、加賀藩が奨励した金沢の伝統を色濃く残す重要伝統的建造物群保存地区です。木虫籠(きむすこ)と呼ばれる格子が施された家屋が美しく、カフェで休憩したり、お土産を買ったりと街歩きを楽しめます。
金沢21世紀美術館は、兼六園から徒歩で10分程度。レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」をはじめとする体験型の現代アート作品は、伝統的な兼六園とは対照的な、ユニークな体験を提供してくれます。
兼六園の開園時間・入園料情報
開園時間:7:00~18:00(3月1日~10月15日)、8:00~17:00(10月16日~2月末日)
入園料:大人(18歳以上)320円、小人(6歳~18歳未満)100円
偕楽園 水戸に咲く梅香る庭園
徳川斉昭の理念が反映された陰と陽の世界
茨城県水戸市にある偕楽園は、水戸藩の9代藩主であった徳川斉昭(なりあき)によって造園され、1842年に開園しました。偕楽園の名は、「民と偕(とも)に楽しむ」という、中国の古典『孟子』の一節に由来しています。庭園の演出には陰と陽の思想が用いられ、静寂に包まれた竹林や杉林から、梅林の広がる好文亭(こうぶんてい)に至ることでその世界を体験できます。また、園内にある「偕楽園記」の石碑裏には入園の心得が刻まれており、公共利用のためのルールを示す近代公園に近い性格も持ち合わせているとされています。
偕楽園の見どころ:静寂とパノラマの自然
好文亭表門から園内に入ると、陰の世界を代表する孟宗竹林(もうそうちくりん)が広がっています。約1,000本の竹が密生する竹林の中を歩くと、日常の喧騒(けんそう)から隔絶された静寂に包まれ、心を落ち着かせることができます。
その先にある吐玉泉(とぎょくせん)からは、一日に約100トンの水が湧き出しているとされています。水の流れる音を聞きながら中門へ向かって歩くと、偕楽園の象徴的な存在である好文亭が見えてきます。
好文亭は、木造三階建ての風雅な建物。三階からは園内の梅林はもちろん、千波湖(せんばこ)や筑波山(つくばさん)までを一望でき、斉昭が表現した陽の世界を体験できます。
偕楽園周辺も満喫:水戸の歴史と自然を楽しむ
水戸駅から徒歩約8分の場所にある弘道館は、1841年に斉昭によって設立された藩校です。藩校としては全国一の規模を誇り、藩士とその子弟が学ぶ総合的な教育施設でした。現在は、正門、正庁および至善堂(しぜんどう)が国の重要文化財に指定されています。
また、水戸駅からバスに乗って約15分のところにある千波公園の中心には、偕楽園からもその姿を見ることができる千波湖が広がっています。湖畔には約700本の桜が植えられており、春には偕楽園の梅と合わせて楽しむことができます。
偕楽園の開園時間・入園料情報
開園時間:6:00~19:00(2月中旬~9月30日)、7:00~18:00(10月1日~2月中旬)
入園料:大人(15歳以上)320円、小人(小中学生)160円
後楽園 岡山市に息づく江戸の美意識
池田綱政が理想とした藩主の静養庭園
岡山県岡山市にある後楽園は1700年、岡山藩主であった池田綱政(つなまさ)によって完成されました。広い芝生地や池、人工的に造られた小山が園路や水路で結ばれた回遊式庭園で、歩きながら水の流れとともに移り変わる景色を楽しめます。最大の特徴は、岡山城や操山(みさおやま)などの周辺の景観を「借景」として取り入れた、雄大な庭園設計。特に岡山城の黒い天守は、庭園の景観にも重要な役割を果たしています。
後楽園の見どころ:回遊式庭園の名建築と絶景
延養亭(えんようてい)は後楽園でもっとも重要な建造物で、第2次世界大戦末期に空襲で焼失したものの、1960年に江戸時代から伝わる文書や図面をもとに再建されました。建物内部は期間限定で公開されており、居間からは庭園の主要な景観を一望できます。
唯心山(ゆいしんざん)は、綱政の子・継政(つぐまさ)の時代に築かれた小山で、延養亭や沢の池を上から眺めることができ、園内の景色を立体的に楽しめます。
花葉の池は、夏に咲く蓮(はす)の花で有名。6月中旬から8月にかけては一天四海(いってんしかい)という白い蓮の花が咲き誇り、園内を彩ります。花は早朝に開き午後には閉じてしまうため、美しい花を楽しむには午前中の訪問がおすすめです。
後楽園周辺も満喫:歴史とグルメを味わう
後楽園の借景として重要な役割を果たしている岡山城は、1597年に宇喜多秀家によって建てられた名城です。黒い下見板張りの外観から「烏城(うじょう)」とも呼ばれ、最上階からは旭川や後楽園を俯瞰する見渡すことができます。
また、デミカツ丼は後楽園を観光するならランチにぜひ味わいたいメニュー。カツレツにデミグラスソースをかけた岡山のご当地グルメで、後楽園の周辺にも多くの老舗レストランがあります。
後楽園の開園時間・入園料情報
開園時間:7:30~18:00(3月20日~9月30日)、8:00~17:00(10月1日~3月19日)
入園料:大人(中高生を除く15~64歳)500円、高校生以下無料、65歳以上のシニア200円
日本三名園の旅を最高の思い出にする実用ガイド
和の美しさを表現する構図の取り方とアングル
兼六園の徽軫灯籠など園内のシンボルを撮影する際は、スマートフォンやデジタルカメラに表示されるグリッド線を活用します。灯籠を画面中央ではなく左右のどちらかに寄せて配置し、霞が池の水面を大きく取り入れると、庭園の趣を表現できます。
偕楽園の梅や後楽園の蓮の花を撮るなら、光が柔らかい早朝や夕方の時間帯がおすすめ。梅はシンプルな背景を選び、蓮はローアングルで水面を生かします。スマートフォンであれば、被写体をタップしてピントを合わせ、露出(明るさ)を補正します。構図や明るさを意識することで、スマートフォンでも手軽に美しい写真を撮ることができます。
兼六園・偕楽園・後楽園のベストシーズン
日本三名園は、季節ごとに異なる魅力と美しさを見せてくれます。
春の兼六園は、4月頃に桜が咲き誇り、雪の白から淡いピンクへと表情を変えます。偕楽園は2月下旬から3月下旬にかけて約100品種3,000本の梅が開花し、園内を芳しい香りで包み込みます。
夏の後楽園は、6月中旬から8月にかけて花葉の池に蓮の花が咲き誇り、水面に映える涼やかな景色を楽しめます。また、初夏には兼六園でもカキツバタやツツジなどの鮮やかな花を見ることができます。
秋が深まると、後楽園では11月中旬から下旬にかけて紅葉が庭園を彩り、特に紅葉越しの岡山城は絵画のような美しさを演出します。
冬の兼六園では12月から3月中旬にかけて、樹木の枝が雪の重みで折れないよう縄や針金で支える「雪吊り(ゆきづり)」が施されます。縄が傘のように広がった木々の優美な姿は、金沢ならではの雪景色。偕楽園も、2月には梅の花と雪が織りなす趣深い光景が広がります。
日本三名園は、それぞれ独自の魅力と季節ごとに異なる美しさを持っています。ぜひ足を運んで、日本庭園の奥深い美意識と先人たちの思いに触れてみてください。















