ヒト抗ヒト B7RP-1抗体およびその抗体フラグメント
技術分野
[0001] 本発明は、ヒト B7 Related Protein 1 (別名、 B7h、 GL50、 ICOSリガンド、以下、「B7R P-l」とする)に結合し、その生物活性を阻害するヒト抗ヒト B7RP-1抗体または該抗体 フラグメントに関する。当該抗体および抗体フラグメントは、 B7RP-1が、その T細胞上 のレセプターである ICOS (Inducible costimulator)と結合することによって惹起される T細胞の過度な活性ィ匕を抑えることで、臓器移植時の免疫抑制剤、アレルギー'自己 免疫などの免疫異常性疾患の治療薬として期待される。
背景技術
[0002] ICOSは、 T細胞の補助刺激レセプター CD28ファミリーの第 3番目の分子として発見 され、ホモダイマーを形成する膜結合型蛋白であり、 TCRを介したシグナルによって T細胞を刺激することで T細胞表面上に誘導される(非特許文献 1)。この分子を介す る補助刺激は、 CD4、 CD8双方の T細胞の増殖を増大させ、 IL_4、 IL-10などのサイト 力インの分泌とともに、 T細胞の CD154 (CD40リガンド)の発現を誘導する。このことか ら、 ICOSは特に、活性化 T細胞における様々なエフェクター機能において重要であ ると考えられる。実際に、 ICOSをノックアウトしたマウスでは、抗原刺激による T細胞の 増殖や IL-4産生能が消失する (非特許文献 2)。
[0003] ICOSのリガンドとして同定された B7RP-1は、もうひとつの補助刺激分子である CD28 のリガンドである B7分子(CD80、 CD86)のファミリーに属し、 B細胞やマクロファージ、 LPSなどで刺激された非免疫細胞に発現する膜結合蛋白である(非特許文献 3)。 B7 RP-1は、現在知られている唯一の ICOSのリガンドであり、生理学的な条件下では、 C D28や CTLA4 (CD154)などとの交差結合性は示さない。 ICOSと B7RP-1間の結合は 、 T細胞のヘルパー機能に非常に重要であり、 ICOSのノックアウトマウスでは、ヘル パー機能による抗体のクラススィッチが著しく抑制される(非特許文献 2)。しかし、こ の抑制は抗 CD40抗体を用いた CD40からの B細胞刺激によって、部分的に回復する ことが知られて ヽる (非特許文献 4)。
[0004] オボアルブミン(OVA)により免疫したマウスを用いた OVAの吸気によるマウス気管 支炎症モデル実験で、抗 ICOS阻害抗体あるいは ICOS-Fcによる ICOS/B7RP-1間の シグナルブロックの前処理をしたマウスでは、気管支肺胞洗浄液 (BAL: bronchoalveo lar lavage)中でのリンパ球、好中球の侵入が減少し、 IL- 4、 IL- 10などのサイト力イン の産生も抑えられた。このような抑制は、 CTLA4-FCによる CD28/B7間のシグナルの ブロックによってもみられたが、特に、これらの阻害剤の投与時期の違いに伴い、 IL- 4産生のパターンが顕著に異なっていた。このこと力ら、補助刺激 CD28/B7と ICOS/B 7RP-1の役割の違 、として、前者は T細胞の活性ィ匕開始にぉ 、て重要な役割を果た すのに対し、後者はその活性ィ匕後のエフェクター機能を制御する上で主要な役割を 担って ヽることが示された (非特許文献 5)。
[0005] ヒトの分類不能型免疫不全 (CVID: common variable immunodeficiency)の原因が、 ICOSのホモザィゴートによる遺伝子欠損によることが明らかにされている。このことは 、ヒト B細胞の成熟、抗体産生へと導くヘルパー T細胞機能における ICOSの重要性 を示しているとともに、 ICOSが種々の免疫疾患の原因遺伝子となることを強く示唆し ている(非特許文献 6)。
[0006] マウスを用いた心臓の同種異個体 (ァ口)移植において、抗 ICOS阻害抗体の投与 は、急性の拒絶反応を遅延させるだけでなぐ移植断片への CD4、 CD8陽性 T細胞、 マクロファージの浸潤も抑制した。この抗 ICOS阻害抗体によるこのような効果は、免 疫抑制剤として使用されて 、るシクロスポリン Aと相乗的な免疫抑制効果を示し、拒 絶までの時期を遅延させた (非特許文献 7)。免疫抑制を目的とした蛋白製剤として、 CTLA4- Igによる CD28/B7間のシグナルの阻害や、抗 CD40リガンド抗体による CD40 /CD40リガンド(CD154)間のシグナルの阻害が検討されている力 ICOS/B7RP-1間 の阻害による抑制効果は、それらと同等もしくは、格段に優れた結果をもたらしている
[0007] 実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE: experimental allergic encephalomyelitis)モデ ルを用いたマウスの実験では、抗 ICOS阻害抗体の投与により、 EAEの発症までの期 間を延ばすことができた。し力しながら、 EAE誘導のための抗原ペプチド感作と同時 期に抗 ICOS阻害抗体の投与を行うと、症状が劇的に増悪する結果となった (非特許
文献 8)。このことは、臨床において抗 ICOS抗体でシグナルを阻害することは、アレル ギー症状などを増悪する危険性を孕むことを示唆して 、る。
[0008] 一方、 B7RP-1に対するモノクローナル抗体の使用例は、これまであまり報告されて いないが、マウス B7RP-1に対するラットモノクローナル抗体が、マウスのコラーゲン誘 導関節炎(CIA: collagen type II- induced arthritis)に対して治療的投与により効果を 示したことが報告されており、自己免疫疾患の病態形成にも ICOS/B7RP-1間のシグ ナルが重要な寄与を果たして 、ることが示唆されて 、る(非特許文献 9)。
[0009] 非特許文献 1 : Hutloff, A.ら、 (1999) Nature, 397(6716), p.263- 266
非特許文献 2 : Dong, C.ら、 (2001) Nature, 409(6816), p.97- 101
非特許文献 3 :Yoshinaga, S. K.ら、 (1999) Nature, 402(6763), p.827-832
非特許文献 4:McAdam, A. J.ら、 (2001) Nature, 409(6816), p.102- 105
非特許文献 5 : Gonzalo, J. A.ら、 (2001) Nat. Immunol, 2(7), p.597- 604
非特許文献 6 : Grimbacher, B.ら、 (2003) Nat. Immunol, 4(3), p.261-268
非特許文献 7 : Ozkaynak, E.ら、 (2001) Nat. Immunol, 2(7), p.591- 596
非特許文献 8 : Rottman, J. B.ら、 (2001) Nat. Immunol, 2(7), p.605- 611
非特許文献 9 : Iwai, H.ら、 (2002) J. Immunol, 169(8), p.4332- 4339
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 臓器移植の拒絶反応、アレルギーなどの免疫異常性疾患の症状の増悪には、 T細 胞の増殖、患部への浸潤、エフェクター機能が決定的な関与をしている。そのような 機能に関与する ICOS/B7RP-1間のシグナルの阻害、あるいは制御を行う医薬品は、 臓器移植時の免疫抑制、アレルギーなどの免疫異常性疾患の治療薬として期待さ れる。
[0011] ICOS/B7RP-1間のシグナルをブロックする特異的なモノクローナル抗体を開発する ことができれば、 ICOS/B7RP-1のシグナルによって発症、増悪する多くの疾患の有 効な治療手段になることが期待される。
[0012] ICOS/B7RP-1の補助シグナルをブロックする抗体として、抗 ICOS抗体と抗 B7RP-1 抗体が考えられる。抗体の抗原結合部は 2価であり、それゆえ、抗体と標的分子との
結合によって細胞にシグナルを入れる可能性があり、特に抗 ICOS抗体の場合、 ICO Sのシグナルを阻害する目的での投与が、逆にシグナルを送ることで、 T細胞の増殖 を促す可能性も除外できない。その意味で、抗 B7RP-1抗体による ICOS/B7RP-1間 のシグナル阻害は、 ICOSを介して T細胞の増殖活性ィ匕を促すことは考えられな 、。 たとえ B細胞上の B7RP-1への抗 B7RP-1抗体の結合により B細胞へシグナルが送ら れたとしても、 ICOS/B7RP-1シグナルにより、 B7RP-1は発現が減少することが知られ ており、 T細胞のエフェクター機能を抑制する方向に働くため、阻害抗体として抗 B7R P-1抗体は優れていると考えられる。
[0013] 現在、ヒト B7RP-1に対する抗体 (抗ヒト B7RP-1抗体)としては、マウスやラット由来の モノクローナル抗体が 、くつか取得されて 、るに過ぎな、、。このような従来の抗ヒト B7 RP-1抗体は、非ヒト由来のため、その高い免疫原性によって、ヒトに対して投与した 場合、異物として認識'排除される。したがって、従来の抗ヒト B7RP-1抗体を、疾患の 治療薬剤として用いることは困難である。
[0014] この問題を解決する方法として、ヒト B7RP-1に対するマウスモノクローナル抗体を、 蛋白工学的手法を用いてヒト化することが考えられる力 マウスモノクローナル抗体由 来の配列を一部含むため、反復投与や長期投与により、投与するヒト化抗 B7RP-1抗 体の活性を阻害するような抗体が作られ、その効果を著しく減弱するだけでなぐ重 篤な副作用を招く可能性がある。また、ヒト化により活性が低下することも多ぐ構築に は多大な労力とコストを要する。
[0015] 本発明は、安全性と治療効果を兼ね備えたヒト抗ヒト B7RP-1抗体およびその断片を 提供するとともに、それらの利用方法を提案するものである。
課題を解決するための手段
[0016] 本発明者は、上記課題に対して検討した結果、健常人の末梢血 Bリンパ球より調製 した免疫グロブリン H鎖および L鎖の可変領域 (VH,VL)をコードする遺伝子を発現 したヒト単鎖 Fv抗体ファージディスプレイライブラリーから、抗ヒト B7RP-1単鎖 Fv抗体 分子 (抗体断片)を取得し、そのアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基 配列を明らかにした。さらに、この単鎖 Fv抗体が、ヒトの B7RP-1の生理活性を阻害す ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0017] 本発明による抗体は、ヒト抗体遺伝子に由来する抗体ファージライブラリーを用いて 単離したものであり、これらの抗体は完全にヒト由来の配列をもち、このままヒトへの治 療用として利用しても、免疫原性としては問題ないものである。その意味では、従来 のマウスモノクローナル抗体力もヒト化技術によって作製されたヒト化抗体において危 惧されるマウス由来の配列に対する免疫原性についても解決されている。また、その 開発コストは、ヒト化抗体に比べて非常に低い。一方で、近年、ヒトの染色体をもつトラ ンスクロモソームマウスによるヒト抗体産生も行われて 、るが、ヒトの分子に対する阻 害作用を有するヒト抗体を作製する技術が、本発明のようにまったく動物を使用せず に作製できることは、大きなメリットである。
[0018] すなわち、本発明は、医学上または産業上有用な方法'物質として下記 1)〜29) の発明を含むものである。
[0019] 1)ヒト B7 Related Protein 1 (以下、 B7RP- 1)に結合性を有するヒト抗ヒト B7RP- 1抗 体。
[0020] 2) H鎖の相補性決定領域 (CDR)が以下の(a)または (b)のアミノ酸配列を有し、 L 鎖の相補性決定領域 (CDR)が以下の(c)または (d)のアミノ酸配列を有する、上記 1)に記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体:
(a) CDRlとして配列番号 1〜3のいずれか一つ、 CDR2として配列番号 4〜6のい ずれか一つ、および CDR3として配列番号 7〜9のいずれか一つによりそれぞれ示さ れるアミノ酸配列;
(b) CDRl〜3のアミノ酸配列として、それぞれ、配列番号 1〜3、 4〜6、または 7〜9 、またはこれらアミノ酸配列において 1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入 、および/または付加されたアミノ酸配列であって、ヒト B7RP-1に対する H鎖の相補 性決定領域となりうるもの;
(c) CDRlとして配列番号 10〜12のいずれか一つ、 CDR2として配列番号 13〜15 のいずれか一つ、 CDR3として配列番号 16〜18のいずれか一つによりそれぞれ示 されるアミノ酸配列;
(d) CDRl〜3のアミノ酸配列として、それぞれ、配列番号 10〜12、 13〜15、または 16〜18、またはこれらアミノ酸配列において 1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠
失、挿入、および Zまたは付加されたアミノ酸配列であって、ヒト B7RP-1に対する L鎖 の相補性決定領域となりうるもの。
[0021] 3) H鎖の CDR1〜3のアミノ酸配列力 配列番号 1、 4および 7、配列番号 2、 5およ び 8、または配列番号 3、 6および 9の組み合わせ力 選択されるアミノ酸配列であり、 L鎖の CDR1〜3のアミノ酸配列力 配列番号 10、 13および 16、配列番号 11、 14お よび 17、または配列番号 12、 15および 18の組み合わせ力も選択されるアミノ酸配列 である上記 1)または 2)に記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体。
[0022] 4) H鎖の CDR1〜3と L鎖の CDR1〜3との組み合わせのアミノ酸配列力 配列番 号 1、 4および 7と配列番号 10、 13および 16、配列番号 2、 5および 8と配列番号 11、 14および 17、または配列番号 3、 6および 9と配列番号 12、 15および 18とのいずれ か一つの組み合わせである、上記 3)に記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体。
[0023] 5) H鎖可変領域が以下の(e)または (f)のアミノ酸配列を有し、 L鎖可変領域が以 下の(g)または(h)のアミノ酸配列を有する、上記 1)力も 4)の 、ずれかに記載のヒト 抗ヒト B7RP- 1抗体:
(e)配列番号 19〜21のいずれか一つのアミノ酸配列力 選択されるアミノ酸配列;
(f)配列番号 19〜21に示されるアミノ酸配列において 1またはそれ以上のアミノ酸が 置換、欠失、挿入、および Zまたは付加されたアミノ酸配列であって、ヒト B7RP-1に 対する H鎖可変領域となりうるもの;
(g)配列番号 22〜24の!、ずれか一つのアミノ酸配列力 選択されるアミノ酸配列;
(h)配列番号 22〜24に示されるアミノ酸配列において 1またはそれ以上のアミノ酸が 置換、欠失、挿入、および Zまたは付加されたアミノ酸配列であって、ヒト B7RP-1に 対する L鎖可変領域となりうるもの。
[0024] 6) H鎖可変領域と L鎖可変領域との組み合わせのアミノ酸配列力 配列番号 19と 配列番号 22、配列番号 20と配列番号 23、または配列番号 21と配列番号 24との組 み合わせにより示されるアミノ酸配列である、上記 1)から 5)のいずれかに記載のヒト 抗ヒト B7RP- 1抗体。
[0025] 7)ヒト B7RP-1に結合性を有するヒト抗ヒト B7RP-1抗体の H鎖可変領域フラグメント。
[0026] 8)相補性決定領域 (CDR)が以下の(a)または (b)のアミノ酸配列を有する、上記 7
)に記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の H鎖可変領域フラグメント:
(a) CDRlとして配列番号 1〜3のいずれか一つ、 CDR2として配列番号 4〜6のい ずれか一つ、および CDR3として配列番号 7〜9のいずれか一つによりそれぞれ示さ れるアミノ酸配列;
(b) CDRl〜3のアミノ酸配列として、それぞれ、配列番号 1〜3、 4〜6、または 7〜9 、またはこれらアミノ酸配列において 1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入 、および/または付加されたアミノ酸配列であって、ヒト B7RP-1に対する H鎖の相補 性決定領域となりうるもの。
[0027] 9) CDR1〜3のアミノ酸配列力 配列番号 1、 4および 7、配列番号 2、 5および 8、ま たは配列番号 3、 6および 9の組み合わせ力も選択されるアミノ酸配列である、上記 8) に記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の H鎖可変領域フラグメント。
[0028] 10)以下の(e)または (f)のアミノ酸配列を有する、上記 7)力も 9)の 、ずれかに記 載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の H鎖可変領域フラグメント:
(e)配列番号 19〜21のいずれか一つのアミノ酸配列力 選択されるアミノ酸配列;
(f)配列番号 19〜21に示されるアミノ酸配列において 1またはそれ以上のアミノ酸が 置換、欠失、挿入、および Zまたは付加されたアミノ酸配列であって、ヒト B7RP-1に 対する H鎖可変領域となりうるもの。
[0029] 11)ヒト B7RP-1に結合性を有するヒト抗ヒト B7RP-1抗体の L鎖可変領域フラグメント
[0030] 12)相補性決定領域 (CDR)が以下の(c)または (d)のアミノ酸配列を有する、上記 11)に記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の L鎖可変領域フラグメント:
(c) CDRlとして配列番号 10〜12のいずれか一つ、 CDR2として配列番号 13〜15 のいずれか一つ、および CDR3として配列番号 16〜18のいずれか一つによりそれ ぞれ示されるアミノ酸配列;
(d) CDRl〜3のアミノ酸配列として、それぞれ、配列番号 10〜18、 13〜15のいず れか一つ、または 16〜18、またはこれらアミノ酸配列において 1またはそれ以上のァ ミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列であって、ヒト抗ヒ ト B7RP-1抗体の L鎖の相補性決定領域となりうるもの。
[0031] 13) CDR1〜3のアミノ酸配列が、配列番号 10、 13および 16、配列番号 11、 14お よび 17、または配列番号 12、 15および 18の組み合わせ力も選択されるアミノ酸配列 である、上記 12)に記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の L鎖可変領域フラグメント。
[0032] 14)以下の(g)または (h)のアミノ酸配列を有する、上記 11)力も 13)のいずれかに 記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の L鎖可変領域フラグメント:
(g)配列番号 22〜24の!、ずれか一つのアミノ酸配列力 選択されるアミノ酸配列;
(h)配列番号 22〜24に示されるアミノ酸配列において 1またはそれ以上のアミノ酸が 置換、欠失、挿入、および Zまたは付加されたアミノ酸配列であって、ヒト B7RP-1に 対する L鎖可変領域となりうるもの。
[0033] 15)上記 7)力も 10)のいずれかに記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の H鎖可変領域フラ グメントと、上記 11)力 14)のいずれかに記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の L鎖可変領 域フラグメントとを連結してなる、ヒト B7RP-1に対するヒト由来の抗体の一本鎖可変領 域フラグメント。
[0034] 16)上記 7)から 10)の!、ずれかに記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体の H鎖可変領域フラ グメント、および Zまたは上記 11)力 14)のいずれかに記載のヒト抗ヒト B7RP-1抗体 の L鎖可変領域フラグメントに、ヒト由来の抗体定常領域を連結してなる、 B7RP-1に 対するヒト由来の抗体またはその抗体フラグメント。
[0035] 17)当該抗体フラグメント力 Fab、 Fab'、 F(ab')、 scAb、または scFv-Fcである上記
2
16)に記載の抗体フラグメント。
[0036] 18)上記 1)から 17)のいずれかに記載の抗体またはそのフラグメントとペプチド或 いは他のタンパク質とを融合させた融合抗体またはそのフラグメント。
[0037] 19)上記 1)から 18)のいずれかに記載の抗体もしくは融合抗体またはそのフラグメ ントに修飾剤が結合されてなる修飾抗体またはそのフラグメント。
[0038] 20)上記 1)から 19)のいずれかに記載の抗体もしくは融合抗体またはそのフラグメ ントをコードする遺伝子。
[0039] 21)上記 20)に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。
[0040] 22)上記 20)に記載の遺伝子が導入された形質転換体。
[0041] 23)上記 20)に記載の遺伝子を宿主に発現させることによって、ヒト抗 B7RP-1抗体
またはその断片を生産する方法。
[0042] 24)上記 1)から 17)のいずれかに記載の抗体またはそのフラグメント、または上記 1 8)に記載の融合抗体またはそのフラグメント、または上記 19)に記載の修飾抗体また はそのフラグメントを用いた B7RP-1の検出試薬。
[0043] 25)上記 20)に記載の遺伝子を含む遺伝子治療剤。
[0044] 26)上記 1)から 17)のいずれかに記載の抗体またはそのフラグメント、または上記 1 8)に記載の融合抗体またはそのフラグメント、または上記 19)に記載の修飾抗体また はそのフラグメントを用いた B7RP-1と ICOSとの結合活性阻害剤。
[0045] 27)上記 1)から 17)のいずれかに記載の抗体またはそのフラグメント、または上記 1 8)に記載の融合抗体またはそのフラグメント、または上記 19)に記載の修飾抗体また はそのフラグメントが認識する B7RP-1上の抗原決定領域に基づいて分子設計された 低分子化合物またはその誘導体。
[0046] 28)上記 27)に記載の低分子化合物またはその誘導体を用いた B7RP-1と ICOSと の結合活性阻害剤。
[0047] 29)上記 26)または上記 28)に記載の結合活性阻害剤を用いた B7RP-1と ICOSと の相互作用により惹起される炎症および免疫異常性疾患の予防または治療薬。 発明の効果
[0048] 本発明のヒトモノクローナル抗体および該抗体フラグメント分子は、ヒト由来抗ヒト B7 RP-1抗体の可変領域を有し、ヒト B7RP-1と強く反応して、その ICOSとの相互作用を 阻害する。このことから、本発明の抗体および該抗体フラグメントは B7RP-1と ICOSと の結合により惹起される炎症および免疫異常性疾患の予防または治療薬として使用 することができる。
図面の簡単な説明
[0049] [図 1]クローンィ匕した単鎖 Fv抗体ファージの B7RP-1-FCに対する結合特異性を評価 した ELISAの結果を示す図。
[0050] [図 2]クローンィ匕した単鎖 Fv抗体の B7RP-1-FCに対する結合特異性を評価した ELI
SAの結果を示す図。
[0051] [図 3]単離した抗 B7RP-1単鎖 Fv抗体とセンサーチップ上に固定化された B7RP1との
結合の速度論的解析を表面プラズモン共鳴によって評価した結果を示す図。
[0052] [図 4]単離された抗 B7RP-1単鎖 Fv抗体による ICOS-Fcと B7RP-1-FC間の結合阻害 活性を評価した ELISAの結果を示す図。
[0053] [図 5]フローサイトメータを用いた単離した抗 B7RP-1単鎖 Fv抗体の B細胞への結合 性を評価した結果を示す図(FITC並びに PEでともに染色された集団をボックスで示 してある)。
[0054] [図 6]単離した抗 B7RP-1単鎖 Fv抗体を用いた ICOS補助刺激シグナルのブロックによ る T細胞増殖阻害活性を評価した結果を示す図。
発明を実施するための最良の形態
[0055] 本発明の抗体および抗体フラグメントに使用される scFvは以下のようにして得られ た。
[0056] 健常者 20名分の末梢血 Bリンパ球より、 RT— PCR法にて、免疫グロブリン重 (H) 鎖、軽 (L)鎖 cDNAを増幅、更に両者をリンカ一 DNAで結合し、健常者リンパ球由 来の H鎖可変領域 (VH鎖または VH)と L鎖可変領域 (VL鎖または VL)のランダム な組み合わせによる scFv DNAを作製した。
[0057] この scFv DNAをファージミドベクター pCANTAB5Eに組込み、 109クローンからなる 健常者由来 scFvディスプレイファージライブラリーを作製した。このライブラリーを、固 相に固定ィ匕されたヒト B7RP-1と結合させて回収、濃縮し、抗ヒト B7RP-1 scFvデイス プレイファージクローンをスクリーニングした。その結果、スクリーニングされた各クロ ーンは、ヒト B7RP- 1と結合する scFvを産生した。
[0058] scFvの発現方法としては、例えば、大腸菌で発現させることができる。大腸菌の場 合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列等、発現させる scFvを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、 la cZプロモーター、 araBプロモーター等を挙げることができる。 scFvの分泌のためのシ グナル配列としては、大腸菌のペリブラズムに発現させる場合、 pelBシグナル配列(L ei, SP.ら、 J. BacterioL, 1987, 169: 4379- 4383)を用いるとよい。培養上清中に分泌 させるには M13ファージの g3蛋白のシグナル配列を用いることもできる。
[0059] 発現された scFvは細胞内外、宿主力も分離し均一にまで精製することができる。本
発明で発現される scFvは、その C末端に E tag配列が付加されているので、抗 E tag 抗体を用いたァフィユティークロマトグラフィーを用いて、容易に短時間で精製するこ とができる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を組み合わ せて精製することも可能である。例えば、限外濾過、塩析、ゲル濾過 Zイオン交換 Z 疎水クロマト等のカラムクロマトグラフィーを組み合わせれば抗体を分離.精製するこ とがでさる。
[0060] 得られた抗体や抗体フラグメントのヒト B7RP-1に対する結合活性を測定する方法と しては、 ELISA、 BIAcore等の方法がある。例えば ELISAを用いる場合、ヒト B7RP- 1 -Fcを固相化した 96穴プレートに目的の抗体や抗体フラグメントを含む試料、例えば 大腸菌の培養上清や精製抗体を加える。次にパーォキシダーゼ等の酵素で標識し た二次抗体を添加し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、発色基質 TMBZ を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。また、 BIAco reを用いる場合、センサーチップに B7-RP1-FCを固定化する力、または抗ヒト Fc F(ab ')抗体に B7-RP1-FCをキヤプチヤーさせて、目的の試料の結合解離定数を測定する
2
ことができる。
[0061] また、得られた抗体や抗体フラグメントの B7RP-1/ICOS結合阻害活性を測定する 方法として、 ELISA, BIAcore等の方法がある。例えば ELISAを用いる場合、ヒト B7R Ρ-1-Fcを固相化した 96穴プレートに目的の抗体や抗体フラグメントを含む試料と、ビ ォチン標識した ICOS-Fcを混合したものをカ卩える。次にパーォキシダーゼ等の酵素 で標識したストレプトアビジンを添カロし、プレートをインキュベーション、洗浄した後、 発色基質 TMBZを加えて吸光度を測定することで B7RP-1/ICOS結合阻害活性を評 価することができる。
[0062] 更に、得られた抗体や抗体フラグメントについて、末梢血 Bリンパ球上の B7RP-1へ の結合性を調べる方法として、フローサイトメータを用いる方法がある。例えば、ヒト末 梢血リンパ球を用いて、蛍光フローサイトメータで解析する場合、ヒト末梢血より末梢 血リンパ球を精製し、 PMAと PHAで刺激した後、ヒ HgG抗体をカロえてヒ HgG Fe yレセ プターのブロックを行 、、目的の抗体や抗体フラグメントを含む試料(E tagを付カロし た scFvであれば scFvを含む試料と抗 E tag抗体の混合物)を加え反応させる。細胞
を洗浄後、 PEラベルイ匕したストレプトアビジンならびに、ヒト B細胞特異的マーカーとし て、 FITCでラベルイ匕した抗 CD19抗体を反応させ、蛍光ラベル化する。洗浄後、蛍光 フローサイトメータを用いて、 PEならびに FITCチャンネルでの 2次元フローサイトメトリ 一解析を行 ヽ、末梢血 Bリンパ球上の B7RP-1への結合性を評価することができる。
[0063] 上記の抗体や抗体フラグメントについて、 T細胞補助刺激シグナルに対する阻害活 性を調べる方法としては、 T細胞増殖刺激アツセィがある。例えば、 96穴プレートに、 抗 CD3抗体と抗ヒ HgG Fcフラグメント F(ab')抗体の混合液をコートし洗浄したのち、 B
2
7RP-1-FCを加えて反応させる。再度プレートを洗浄した後、 目的の抗体や抗体フラ グメントを含む試料を加え反応させ、その後ヒト末梢血から調製した末梢血リンパ球を 加え、培養する。培養中にトリチウムチミジンを添加し、細胞が取り込んだトリチウムチ ミジン量を測定することで、 T細胞補助刺激シグナルに対する阻害活性を評価するこ とがでさる。
[0064] 上記の方法により、抗ヒト B7RP-1 scFvを分離し評価した結果、 B7RP-1に特異的に 結合すること、し力もその親和性はレセプターである ICOSに匹敵する程高いものであ ること、抗原提示細胞上に発現されている B7RP-1にも結合しうること、 B7RP-1と ICOS との結合を阻害すること、および B7RP-1/ICOSを介した補助刺激による T細胞の増 殖を抑制することが示された。従ってこれらの抗体は、生体内でも同様の効果を示し 、B7RP-l/ICOSの結合および T細胞の増殖を抑制する薬剤として有用であると考え られる。
[0065] 上記阻害活性を有する 3種類の scFv (223、 323、 325)の VH鎖および VL鎖のァ ミノ酸配列およびそれをコードする塩基配列は、下記の通りである。
(1)クローン 223
クローン 223の VH鎖のアミノ酸配列を配列番号 19に示した。当該 VH鎖の CDR1 〜3のアミノ酸配列を配列番号 1、 4および 7に示した。すなわち、配列番号 19に示す VH鎖のアミノ酸配列において、 31番目〜35番目のアミノ酸配列が CDR1 (配列番 号 1)、 50番目〜66番目のアミノ酸配列が CDR2 (配列番号 4)、 99番目〜109番目 のアミノ酸配列が CDR3 (配列番号 7)に対応している。また、当該 VH鎖をコードする 遺伝子の塩基配列を配列番号 25に示した。
[0066] また、クローン 223の VL鎖のアミノ酸配列を配列番号 22に示した。当該 VL鎖の C DR1〜3のアミノ酸配列を配列番号 10、 13および 16に示した。すなわち、配列番号 22に示す VL鎖のアミノ酸配列において、 24番目〜35番目のアミノ酸配列が CDR1 (配列番号 10)、 51番目〜57番目のアミノ酸配列が CDR2 (配列番号 13)、 90番目 〜98番目のアミノ酸配列が CDR3 (配列番号 16)に対応している。また、当該 VL鎖 をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号 28に示した。
[0067] (2)クローン 323
クローン 323の VH鎖のアミノ酸配列を配列番号 20に示した。当該 VH鎖の CDR1 〜3のアミノ酸配列を配列番号 2、 5および 8に示した。すなわち、配列番号 20に示す VH鎖のアミノ酸配列において、 30番目〜34番目のアミノ酸配列が CDR1 (配列番 号 2)、 49番目〜65番目のアミノ酸配列が CDR2 (配列番号 5)、 98番目〜108番目 のアミノ酸配列が CDR3 (配列番号 8)に対応している。また、当該 VH鎖をコードする 遺伝子の塩基配列を配列番号 26に示した。
[0068] また、クローン 323の VL鎖のアミノ酸配列を配列番号 23に示した。当該 VL鎖の C DR1〜3のアミノ酸配列を配列番号 11、 14および 17に示した。すなわち、配列番号 23に示す VL鎖のアミノ酸配列において、 23番目〜33番目のアミノ酸配列が CDR1 (配列番号 11)、 49番目〜55番目のアミノ酸配列が CDR2 (配列番号 14)、 88番目 〜98番目のアミノ酸配列が CDR3 (配列番号 17)に対応している。また、当該 VL鎖 をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号 29に示した。
[0069] (3)クローン 325
クローン 325の VH鎖のアミノ酸配列を配列番号 21に示した。当該 VH鎖の CDR1 〜3のアミノ酸配列を配列番号 3、 9および 15に示した。すなわち、配列番号 21に示 す VH鎖のアミノ酸配列において、 31番目〜35番目のアミノ酸配列が CDR1 (配列 番号 3)、 50番目〜66番目のアミノ酸配列が CDR2 (配列番号 9)、 99番目〜108番 目のアミノ酸配列が CDR3 (配列番号 15)に対応している。また、当該 VH鎖をコード する遺伝子の塩基配列を配列番号 27に示した。
[0070] また、クローン 325の VL鎖のアミノ酸配列を配列番号 24に示した。当該 VL鎖の C DR1〜3のアミノ酸配列を配列番号 12、 15および 18に示した。すなわち、配列番号
24に示す VL鎖のアミノ酸配列において、 23番目〜33番目のアミノ酸配列が CDR1 (配列番号 12)、 49番目〜55番目のアミノ酸配列が CDR2 (配列番号 15)、 88番目 〜98番目のアミノ酸配列が CDR3 (配列番号 18)に対応している。また、当該 VL鎖 をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号 30に示した。
[0071] 本発明により得られたクローン毎にアミノ酸配列および塩基配列について上述した 力 配列表に記載された各アミノ酸配列情報 (VH鎖、 VL鎖、各 CDR1〜3)をもとに 、単独または複数の配列を適宜組み合わせて使用することも可能である。
[0072] 本発明の抗体およびその抗体フラグメントは、上記 VH鎖および VL鎖、並びにそれ らの CDRとして、上記配列番号に示される配列に限定されるものではなぐそれらの 一部が改変された変異ポリペプチドであってもよい。
[0073] すなわち、各配列番号に記載されたアミノ酸配列において、 1またはそれ以上のァ ミノ酸が置換、欠失、挿入、および Zまたは付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒト B7RP-1に対する H鎖または L鎖の相補性決定領域、 H鎖または L鎖の可変領域とな るポリペプチドも含まれる。
[0074] ここで、「1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および Zまたは付加され た」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異タンパク質作製法により置換 、欠失、挿入、および Z又は付加できる程度の数、例えば、 1ないし 6程度の数のアミ ノ酸が置換、欠失、挿入、および Z又は付加されることを意味する。このような「変異」 としては、主として、公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を 意味するが、天然 (例えばヒト)に存在する同様の変異ポリペプチドを単離精製したも のであってもよい。
[0075] なお、上記「変異」は、本発明の抗体またはその抗体フラグメントを、治療薬として利 用する場合 (ヒトに投与する場合)には、ヒト由来の構造を保持またはヒトが免疫反応 を起こさない範囲で行い、検出器具や診断キットなどとして使用する場合 (ヒトに投与 しない場合)には、その範囲は特に制限されない。
[0076] 本発明で開示される VH鎖および Zまたは VL鎖は、ファージ抗体法を用いて主と して scFvの形で得られたものである力 原則としてその適用は scFvに限定されること はない。例えば、開示した VH鎖および Zまたは VL鎖をヒト免疫グロブリンの定常領
域と連結した完全分子型、またヒト免疫グロブリンの定常領域の一部と組み合わせた Fab, Fab'または F(ab')、さらに scFvをヒト免疫グロブリンの L鎖の定常領域と結合さ
2
せた一本鎖抗体 (scAb)や、 scFvをヒト免疫グロブリンの H鎖の定常領域と結合させ た scFv-Fcなどの他の抗体フラグメントもその適用範囲に含まれる。
[0077] また、本発明の抗体またはそのフラグメントは、当該抗体またはフラグメントにぺプ チド或いは他のタンパク質と融合させた融合抗体またはそのフラグメントとすることも できる。
[0078] また、これらの抗体および抗体フラグメントあるいは上記融合抗体またはそのフラグ メントに、ポリエチレングリコールなどの高分子修飾剤を結合させた修飾抗体またはそ のフラグメントとすることもできる。
[0079] H鎖と L鎖の Fvを適当なリンカ一で連結させた scFvを調製する場合、ペプチドリン カーとしては、例えばアミノ酸 10〜25残基力もなる任意の一本鎖ペプチドが用いら れる。
[0080] 本発明の抗体または抗体フラグメントは、配列番号 25から 30に示した本発明により 得られた各クローンの VH鎖および VL鎖をコードする遺伝子配列情報をもとに、適当 な宿主 (例えば、細菌、酵母)に導入して、本発明の抗体またはそのフラグメントを発 現させることができる。
[0081] また本発明の遺伝子は、 B7RP-1と ICOSとの相互作用を調節するための、遺伝子 治療の補助剤としても利用できる。
[0082] 本発明の抗体またはその抗体フラグメントは、 B7RP-1と ICOSとの結合活性阻害剤 として利用可能である。
[0083] また、これらの抗体またはそのフラグメントが認識するヒト B7RP-1上の抗原決定領域 に基づき分子設計することにより、 B7RP-1/ICOSのシグナリングに作用する低分子化 合物の開発に重要な手段を提供する。
[0084] その低分子化合物には、本発明の抗体またはそのフラグメントが認識しうるアミノ酸 配列からなるペプチドおよびその立体構造を模したィヒ合物が含まれる。そのペプチド のアミノ酸配列に非天然アミノ酸を加えた改変ペプチドも同様に使用できる。また、そ れらのペプチドを他のタンパク質と融合させた融合蛋白質も同様である。上記のぺプ
チドまたは化合物に、ポリエチレングリコールなどの高分子修飾剤を結合させた修飾 分子も同様である。
[0085] これらの低分子化合物またはその誘導体も、 B7RP-1と ICOSとの結合活性阻害剤と して利用可能である。
[0086] さらに、本発明の抗体またはその抗体フラグメント、並びに低分子化合物またはそ の誘導体からなる結合活性阻害剤は、 B7RP-1と ICOSとの相互作用により惹起される 炎症および免疫異常性疾患の予防または治療薬として有効である。
[0087] 以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定さ れるものではない。
実施例
[0088] 《実施例 1:健常者からのファージライブラリーの構築》
ファージライブラリーの構築は、 J. D. Marksら(J. Mol. Biol, 222: 581-597, 1991) により報告されている方法を参考に、健常者 20名由来末梢血由来リンパ球を出発材 料に、構築した。構築した VH( γ )— V κ、 VH( γ )— Vえ、 VH( )— V κ、 VH ( ) V の各サブライブラリ一はそれぞれ 1.1 X 108、 2.1 X 108、 8.4 X 107、 5.3 X 107クロー ンの多様性を有すると評価された。
[0089] 《実施例 2 :パンニング》
ヒト B7RP- 1- Fc lO /z g)を 0.1M NaHCO溶液 lmlに溶解し、ィムノチューブ(Nunc)
3
にー晚、 4°Cにてコートした。 0.1%Tween20を含む PBSで 1回洗浄後、 0.5%ゼラチン ZPBSで、 2時間、室温にてブロックした。 0.1%TweenZPBSで、 6回洗浄した後、健 常人由来の抗体ファージライブラリー(一本鎖抗体提示ファージ液、 1012 TUZml)を lmlカ卩え、 2時間、室温で反応させた。
[0090] 非特異的なファージを 0.1%Tween20/PBSで 20回の洗浄によって除いた後、 B7RP - 1-Fcに結合したファージクローンを lmg/ml BSA (ゥシ血清アルブミン)を含む 0.1M グリシン- HCl (pH2.2)で溶出し、直ちに 1.0M Tris- HCl (pH9.1)で中和した。中和した ファージ溶液を、ヒト IgGをコートし 0.5%ゼラチン ZPBSでブロックしたィムノチューブ に加え、 2時間、室温で反応させた。その上清を、対数増殖期の大腸菌 TGI (20ml) に加え、 30°Cにて、 30分、放置後、一部を SOBAGプレートに撒き、残りについては
培地を 30mlの 2 XYTAGに換えた後、 30°Cにてー晚培養した。培養液を 2200rpm X 10分で遠心後、沈殿した大腸菌を 3mlの 2 XYTAGに懸濁し、 1次パンユングの大腸 菌ライブラリ一とした。この TG1液を、 2 XYTAG培地に植え、ヘルパーファージを用 いてレスキューし、スクリーニング後のファージライブラリーを調製した。
[0091] 上記のバイオパンユングの操作を、合計で 3回行い、それぞれ、 2次、 3次のパン- ングで得られたファージ溶液を、 2次ファージライブラリー、 3次ファージライブラリーと した。ただし、 2次パンニング、 3次パンユングでは、ブロッキング溶液にそれぞれ、 5 %スキムミルク、 0.5%BSAを用いた。
[0092] 2次パンニング、ならびに 3次パンユング後の SOBAGプレートから任意にクローンを 抽出し、短鎖 Fv抗体ファージクローンを調製して、 B7RP-1-FCに対する特異性の確 認ならびに抗体遺伝子の配列解析を行った。
[0093] 《実施例 3 :スクリーニング B7RP-1 ELISA))
分離した単鎖 Fv抗体ファージの ELISAによる結合特異性の確認は、以下の方法 で行った。 ELISAプレート(Nunc)に B7RP- 1- Fc (80ng/well)を 4°Cでー晚コートし、 0 .5%ゼラチン/ PBSでブロッキングを行った。 0.1%Tween20/PBSで洗浄後、単離した 単鎖 Fvファージクローン(l X 1013pfo/ml) 40 1を加え、常温で 2時間反応させた。結 合ファージの検出は、一次抗体としてピオチン化抗 M13ファージ抗体(Pharmacia)を 、二次抗体として AP標識したストレプトアビジンを加え反応させた後、基質溶液(10% 2,2-イミノジエタノールを含む lmg/ml PNP-リン酸の PBS溶液)をカ卩え、 405nmでの吸 光度を、マルチプレートオートリーダー NJ-2001 (Nunc社)にて測定した。その結果、 最終的に評価したクローンすべて力 B7RP-1に特異的であることがわ力つた(図 1)。
[0094] 《実施例 4 :クローンの配列分析》
単離したクローンの scFv遺伝子の VHおよび VLの DNA塩基配列を Dye terminate r cycle sequencing FS Ready Reaction kit (Applied Biosystems)を用い 決定し 7こ。 E LISAおよび配列分析の結果、単離したクローンは 4種の scFvに分類された。
[0095] 《実施例 5 :ヒト由来抗ヒト B7RP- IscFvの発現と精製》
前記実施例 2、 3で単離したヒト B7RP-1に反応する scFvクローン力もプラスミド DN Aを回収して、常法に従って大腸菌 HB2151を形質転換した。 2%グルコースおよび 1
00 g/mLのアンピシリンを含む 2 XYT培地でこれらの大腸菌を一夜前培養後、ダル コースフリーの 2 ΧΥΤ培地に一部移植し、終濃度 ImM IPTG、 100 g/mLのアンピ シリンを加えて 4時間培養して scFvの発現誘導を行った。培養終了後菌体を遠心回 収し、 ImM EDTAを含む PBSに懸濁して氷中に 30分菌体を放置した。次いで 8,90 O X gで 30分間遠心し、上清を 0.45 μ mフィルター濾過したものをペリプラズム画分と し、 scFvの精製出発材料とした。
[0096] このようにして調製した精製の出発材料を、抗 E tag抗体を用いたァフィユティークロ マトグラフィ一で常法に従って精製した。 PBSで透析後、エンドトキシン除去カラム De toxi-gel (PIERCE社)で添付のプロトコルに従!、エンドトキシンを除去した。分子量力 ット 10,000の Centricon (Amicon社)で濃縮後、 0.45 μ mフィルター濾過して精製標品 とした。保存は- 20°Cで行った。
[0097] 《実施例 6:精製 scFvのヒト B7RP- 1との結合性》
精製した単鎖 Fv抗体の B7RP-1に対する結合活性の測定は、以下の方法で行った 。 ELISAプレート(Nunc)に B7RP- 1- Fc (80ng/well)を 4°Cでー晚コートし、 0.5%ゼラ チン/ PBSでブロッキングを行った、 0.1%Tween20/PBSで洗浄後、単離した単鎖 Fv 抗体 g/ml)と抗 E- tag抗体を混合したものを 40 1加え、 2時間反応させた。検出 は、二次抗体として AP標識した抗マウス IgG Fe y抗体を加え 60分反応させた後、基 質溶液を加え、 405nmでの吸光度を、マルチプレートオートリーダー NJ-2001にて測 定した。その結果、最終的に評価したクローンすべてが、 B7RP-1に特異的であること がわかった(図 2)。
[0098] また、クローン 223について、単鎖 Fv抗体と B7RP-1との結合解離定数を BIAcoreを 用いて検討した。センサーチップ CM5 (Biacore AB, Uppsala, Sweden)上の 4つのフ ローセルに 20°Cで 10mM酢酸緩衝液(pH4.0)で希釈した B7RP- 1- Fc、 ICOS- Fc、 CT LA- 4- Fc、抗ヒト Fc F(ab')抗体(各 10 μ g/mL)をそれぞれ流速 5 μ L/分で固定化し
2
た。 HBS緩衝液(lOOmM HEPES/5M NaCl/0.5M EDTA/0.005%Tween20 (Pharmaci a biotech) )によりセンサーチップを洗浄した後、 HBS緩衝液 /0.01%BSAで希釈した B 7RP- 1- Fcを反応させ、抗ヒト Fc F(ab')抗体にキヤプチヤーさせた。引き続き、各 scF
2
Vサンプル(100nMに調整)を流速 10 L/分で注入して反応させ、サンプル毎の結合
解離定数を測定した。また、各サンプルを反応させる工程の前に、 200mM NaClを含 む 200mMグリシン- HC1緩衝液 (pH2.2)により scFvを溶出し洗浄した。データ解析に は BIAevaluationソフトを使用した。その結果、まず B7RP- 1- Fcは ICOS- Fcと抗ヒト Fc F(ab')抗体を固定したチップにのみ反応を示し、その結果から、 B7RP-1と ICOSとの
2
結合解離定数は約 7nMであることが分力つた。引き続き、 233を反応させたところ、 B7 - RPl-Fcを固定したチップと、抗ヒト Fc F(ab')抗体に B7-RPl-Fcをキヤプチヤーさせ
2
たチップにのみ結合性を示し、 ICOSと結合して 、る B7-RPト Fcには結合性を示さな 力つたことから、 233については ICOSとの結合部位に結合することが推定された。 B7 RP-1との結合解離定数は約 13〜15nMと算出されたことから、レセプターである ICOS とほぼ同等であることが確認された(図 3)。
[0099] 《実施例 7 :抗 B7RP-1単鎖 Fv抗体による ICOS-Fcと B7RP-1-FC間の結合阻害》
96穴プレートに B7RP- 1- Fc (40ng/well)を 4°Cでー晚コートし、 0.5%ゼラチン/ PBS でブロックした後、 0.1%Tween20 /PBSで洗浄した。 125ηΜ〜2 Mの抗 B7RP- 1単鎖 Fv抗体溶液とピオチン標識した ICOS-Fcを混合したものを加え、 90分反応させた。 洗浄後、 AP標識したストレプトアビジンを加え、 30分反応させた後、基質溶液を加え 、 405nmの吸光度を測定した。その結果、クローン 223、 323、 325については、加え た単鎖 Fv抗体の用量依存的に、 ICOSと B7RP-1間の結合を阻害していることがわか つた(図 4)。
[0100] 《実施例 8:単鎖 Fv抗体の末梢血 Bリンパ球上の B7RP-1への結合のフローサイトメ一 タによる解析》
単離したヒト抗 B7RP-1単鎖 Fv抗体の細胞上に発現された B7RP-1分子に対する結 合活性を確認するために、ヒト末梢血リンパ球を用いて、蛍光フローサイトメータを使 つて解析した。ヒトへノ リン末梢血カもフイコールを用いた定法により PBMCを精製し た。 PMA(5ng/ml)と PHA(2 /z g/ml)で 41時間刺激した後、ヒト IgG抗体をカ卩えることで ヒト IgG Fe yレセプターのブロックを行い、単鎖 Fv抗体と抗 E tag抗体の混合物をカロ え 90分応させた。細胞を洗浄後、 PEラベルイ匕したストレプトアビジンならびに、ヒト B細 胞特異的マーカーとして、 FITCでラベルイ匕した抗 CD19抗体で 30分間反応させ、蛍 光ラベル化した。洗浄後、 Coulter EPICS XL (Coulter社 Miami, FL)フローサイトメ
ータを用いて、 PEならびに FITCチャンネルでの 2次元フローサイトメトリー解析を行つ た。その結果、クローン名、 223、 323、 325【こお!ヽて、抗 CD19抗体【こよって FITCラ ベルイ匕された B細胞集団の PEによる染色が確認されたことから、これらのクローンに つ!ヽては、 B細胞上の B7RP-1に対する結合活性を有することが示された(図 5)。 《実施例 9:ヒト抗 B7RP-1単鎖 Fv抗体による T細胞補助刺激シグナルに対する T細胞 増殖阻害活性》
抗原提示細胞上の B7RP-1と T細胞上の ICOS間の補助シグナルの伝達に対する、 得られた単鎖 Fv抗体の阻害活性を T細胞増殖活性を指標に解析した。 96穴の丸底 プレートに、抗 CD3抗体(2 μ g/ml)と抗ヒ HgG Fcフラグメント F(ab')抗体(2.4 /z g/ml)
2
の混合液を 37°Cで 90分間コートした。プレートを PBSで洗浄したのち、 B7RP-1- Fc (l μ g/ml)を加えて 37°Cで 2時間反応させた。再度プレートを洗浄した後、 RPMI1640で 調製した 1ηΜ〜500ηΜの単鎖 Fv抗体および抗 B7RP-1抗体をカ卩ぇ 30分反応させ、そ の後ヒト末梢血力も調製した末梢血リンパ球(1 X 105細胞/ well)を加え、 37°Cで培養 した。培養開始力も 48時間後にトリチウムチミジン (0.5 Ci/well)を加え、さらに 18時 間培養した。細胞の DNAをガラスフィルターに吸着させた後、液体シンチレ一タに溶 かし、 DNA中のトリチウムチミジン量をシンチレーシヨンカウンターで測定した。すべて のクローンで、ヒ HCOS-Fcを加えた場合とほぼ同等の単鎖 Fv抗体による用量依存 的な T細胞増殖阻害が起こっており、これらの単鎖 Fvクローン 223、 323、 325の IC OSシグナルに対する阻害活性が示された(図 6)。