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JP2011228195A - 燃料電池、燃料電池の製造方法および電子機器 - Google Patents

燃料電池、燃料電池の製造方法および電子機器 Download PDF

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JP2011228195A JP2010098531A JP2010098531A JP2011228195A JP 2011228195 A JP2011228195 A JP 2011228195A JP 2010098531 A JP2010098531 A JP 2010098531A JP 2010098531 A JP2010098531 A JP 2010098531A JP 2011228195 A JP2011228195 A JP 2011228195A
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Hiroki Mita
洋樹 三田
Takaaki Nakagawa
貴晶 中川
Hideyuki Kumita
英之 汲田
Hideki Sakai
秀樹 酒井
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Abstract

【課題】正極または負極が酵素が固定化された電極からなる場合に、高い電流値を安定して得ることができる燃料電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】正極2と負極1とが電解質層3を介して対向した構造を有するバイオ燃料電池において、正極2および負極1のうちの少なくとも一方を、酵素が固定化され、緩衝液に対する接触角が80°以上120°以下の電極、あるいは、酵素が固定化され、規則的な繊維構造を有する材料からなる電極により構成する。電極の材料としては例えばカーボンを用いる。電極の材料として規則的な繊維構造を有するカーボンを用いる場合、その空隙率は70%以上96%以下とする。
【選択図】図2

Description

この発明は、燃料電池、燃料電池の製造方法および電子機器に関し、特に、酵素を用いたバイオ燃料電池およびその製造方法ならびにこのバイオ燃料電池を電源に用いた各種の電子機器に適用して好適なものである。
近年、酵素を用いた燃料電池(バイオ燃料電池)が注目されている(例えば、特許文献1〜13参照。)。このバイオ燃料電池は、燃料を酵素により分解してプロトン(H+ )と電子とに分離するもので、燃料としてメタノールやエタノールなどのアルコール類あるいはグルコースなどの単糖類あるいはデンプンなどの多糖類を用いたものが開発されている。
特開2000−133297号公報 特開2003−282124号公報 特開2004−71559号公報 特開2005−13210号公報 特開2005−310613号公報 特開2006−24555号公報 特開2006−49215号公報 特開2006−93090号公報 特開2006−127957号公報 特開2006−156354号公報 特開2007−12281号公報 特開2007−35437号公報 特開2007−87627号公報
上述のバイオ燃料電池の正極の電極には一般に、酸素の供給のためにカーボンフェルトやカーボンペーパーなどの空隙を有する材料が用いられる。
しかしながら、このようなバイオ燃料電池により得られる電流値は必ずしも十分に高くなく、電流値のより一層の向上が望まれていた。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、例えば、正極が酵素が固定化された電極からなる場合に、高い電流値を安定して得ることができる燃料電池およびその製造方法を提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、上記のような優れた燃料電池を用いた電子機器を提供することである。
上記課題および他の課題は本明細書の記述によって明らかとなるであろう。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、正極の電極の材料としてカーボンフェルトやカーボンペーパーなどの空隙を有する材料を用いた場合には、電極内部への緩衝液の染み込みが悪く、空隙により電極の表面の面積が大きくなっても、電極の表面の面積を有効に使用することができていなかったことが判明した。そして、電極内部への緩衝液の染み込みやすさの向上を図るべく鋭意研究を行った結果、正極の電極の緩衝液に対する接触角を80°以上120°以下とすることにより、電極内部への緩衝液の染み込みやすさを大幅に向上させることができることを見出した。また、正極の電極の材料として規則的な繊維構造を有する材料を用いることによっても、電極内部への緩衝液の染み込みやすさを大幅に向上させることができることを見出した。さらに検討を行った結果、負極が酵素が固定化された電極からなる場合にも、この電極の緩衝液に対する接触角を80°以上120°以下とし、あるいは、この電極の材料として規則的な繊維構造を有する材料を用いることが有効であるという結論に至った。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、
上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が、酵素が固定化され、緩衝液に対する接触角が80°以上120°以下である電極からなる燃料電池である。
また、この発明は、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が酵素が固定化された電極からなる燃料電池を製造する場合に、上記電極として緩衝液に対する接触角が80°以上120°以下である電極を用いる燃料電池の製造方法である。
また、この発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用い、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、
上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が、酵素が固定化され、緩衝液に対する接触角が80°以上120°以下である電極からなる燃料電池である電子機器である。
また、この発明は、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、
上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が、酵素が固定化された、規則的な繊維構造を有する材料からなる電極からなる燃料電池である。
また、この発明は、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が酵素が固定化された電極からなる燃料電池を製造する場合に、上記電極として規則的な繊維構造を有する材料からなる電極を用いる燃料電池の製造方法である。
また、この発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用い、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、
上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が、酵素が固定化された、規則的な繊維構造を有する材料からなる電極からなる燃料電池である電子機器である。
この発明において、正極または負極の電極の材料としては、好適にはカーボンが用いられるが、他の材料を用いてもよい。正極または負極の電極の材料として規則的な繊維構造を有する材料を用いる場合、この規則的な繊維構造を有する材料は、繊維状材料(繊維状カーボンなど)を用いて織ったり編んだりした形状を有する。繊維状材料の太さは必要に応じて選ばれるが、例えば、100μm以上300μm以下、典型的には150μm以上250μm以下である。この規則的な繊維構造を有する材料の空隙率は、例えば、70%以上96%以下、好適には80%以上95%以下、さらに好適には80%以上90%以下である。
この発明において、電極内部への緩衝液の染み込みやすさの向上を図る観点からは、正極または負極の電極の表面を撥水性とすることが望ましい。このためには、例えば、この電極の表面に撥水材料を含む撥水剤を形成する。具体的には、例えば、この撥水剤を電極の表面に塗布または染み込ませたり、電極を撥水剤にディップ(浸漬)したりする。この撥水剤としては種々のものを用いることができ、必要に応じて選択されるが、例えば、撥水材料、取り分け微粒子状の撥水材料が有機溶剤に分散されたものを用いることができる。撥水剤中の撥水材料の割合は極微量であってもよい。この撥水剤としては、好適には、少なくとも撥水材料と水と分離する有機溶媒、あるいは、少なくとも撥水材料と酵素の溶解度が十分に小さい、例えば溶解度が10mg/ml以下、好適には1mg/ml以下の有機溶媒とを含むものが用いられる。
上記のような有機溶媒としては、好適には、メチルイソブチルケトン、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、イソオクタン、ジエチルエーテルなどが用いられるが、より一般的には、脂肪族、脂環式または芳香族系の炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、これらのハロゲン化物などの各種の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ブタン類、ペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類、ノナン類、デカン類、ドデカン類、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、キシレン類、ブタノール、ペンタノール、メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、塩化メチレン、メチルクロロホルム、四塩化炭素、ジクロロジフルオロメタン、パークロロエチレン、塩素原子、臭素原子および(または)ヨウ素原子で1個以上置換されたベンゼン系溶媒やトルエン系溶媒などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらは単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
有機溶媒としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、2−クロロ−m−キシレン、2−クロロ−p−キシレン、4−クロロ−o−キシレン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、モノフルオロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、ニトロベンゼン、ベンゼンなどの炭化水素溶媒なども挙げられる。有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサノン、1−メトキシイソプロパノールアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、石油エーテル、シリコンオイルなども挙げられる。
有機溶媒としてはさらに、イオン性液体を用いることもできる。このイオン性液体としては、例えば、アニオンとして、フルオロアルキル硫酸アニオン、フルオロシクロアルキル硫酸アニオンおよびフルオロベンジル硫酸アニオンからなる群から選ばれた少なくも1つのアニオンを含有するものが挙げられる。
撥水剤には、必要に応じて、撥水材料と有機溶媒とに加えてバインダーなどを含ませる。このバインダーとしては種々のものを用いることができるが、ポリビニルブチラールなどの撥水性が高いバインダーを用いるとより好ましい。撥水剤中のバインダーの割合は例えば0.01〜10%であるが、これに限定されるものではない。バインダーが例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの撥水性を有するものである場合にはこのバインダー自身を撥水材料として用いることができる。
撥水材料としては種々のものを用いることができるが、例えばカーボン系の材料、好適にはカーボン粉末を用いることができる。カーボン粉末としては、例えば、天然黒鉛などの黒鉛、活性炭、リチウムイオン電池の添加材などに使用されるカーボンナノファイバー(気相法炭素繊維)、ケッチェンブラックなどを用いることができる。撥水材料としては撥水性ポリマーを用いることもできる。このような撥水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルブチラールのほか、各種のフッ素系ポリマーなどを用いることができる。フッ素系ポリマーの具体例を挙げると、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニル、パーフルオロアルコキシ樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエーテルスルフォンなどであるが、これらに限定されるものではない。
正極および負極に固定化される酵素は、種々のものであってよく、必要に応じて選ばれる。また、正極および負極に酵素が固定化される場合、好適には、酵素に加えて電子メディエーターが固定化される。
正極に固定化される酵素は、典型的には酸素還元酵素を含む。この酸素還元酵素としては、例えば、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼなどを用いることができる。この場合、正極には、好適には、酵素に加えて電子メディエーターも固定化される。電子メディエーターとしては、例えば、ヘキサシアノ鉄酸カリウム、フェリシアン化カリウム、オクタシアノタングステン酸カリウムなどを用いる。電子メディエーターは、好適には、十分に高濃度、例えば平均値で0.64×10-6mol/mm2 以上固定化する。
負極に固定化される酵素は、例えば、燃料としてグルコースのような単糖類を用いる場合には、単糖類の酸化を促進し分解する酸化酵素を含み、通常はこれに加えて酸化酵素によって還元される補酵素を酸化体に戻す補酵素酸化酵素を含む。この補酵素酸化酵素の作用により、補酵素が酸化体に戻るときに電子が生成され、補酵素酸化酵素から電子メディエーターを介して電極に電子が渡される。酸化酵素としては例えばNAD+ 依存型グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、補酵素としては例えばニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+ )が、補酵素酸化酵素としては例えばジアホラーゼが用いられる。
燃料として多糖類(広義の多糖類であり、加水分解によって2分子以上の単糖を生じる全ての炭水化物を指し、二糖、三糖、四糖などのオリゴ糖を含む)を用いる場合には、好適には、上記の酸化酵素、補酵素酸化酵素、補酵素および電子メディエーターに加えて、多糖類の加水分解などの分解を促進し、グルコースなどの単糖類を生成する分解酵素も固定化される。多糖類としては、具体的には、例えば、デンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、マルトース、スクロース、ラクトースなどが挙げられる。これらは単糖類が二つ以上結合したものであり、いずれの多糖類においても結合単位の単糖類としてグルコースが含まれている。なお、アミロースとアミロペクチンとはデンプンに含まれる成分であり、デンプンはアミロースとアミロペクチンとの混合物である。多糖類の分解酵素としてグルコアミラーゼを用い、単糖類を分解する酸化酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを用いた場合には、グルコアミラーゼによりグルコースにまで分解することができる多糖類、例えばデンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、マルトースのいずれかを含むものであれば、これを燃料として発電することが可能となる。なお、グルコアミラーゼはデンプンなどのα−グルカンを加水分解しグルコースを生成する分解酵素であり、グルコースデヒドロゲナーゼはβ−D−グルコースをD−グルコノ−δ−ラクトンに酸化する酸化酵素である。好適には、多糖類を分解する分解酵素も負極上に固定化される構成とし、最終的に燃料となる多糖類も負極上に固定化される構成とする。
また、デンプンを燃料とする場合には、デンプンを糊化してゲル状の固形化燃料としたものを用いることもできる。この場合、好適には、糊化したデンプンを酵素などが固定化された負極に接触させ、あるいは負極上に酵素などとともに固定化する方法をとることができる。このような電極を用いると、負極表面のデンプン濃度を、溶液中に溶解したデンプンを用いた場合よりも高い状態に保持することができ、酵素による分解反応がより速くなり、出力が向上するとともに、燃料の取り扱いが溶液の場合よりも容易で、燃料供給システムを簡素化することができ、しかも燃料電池を天地無用とする必要がなくなるため、例えばモバイル機器に用いたときに非常に有利である。
電子メディエーターとしては基本的にはどのようなものを用いてもよいが、好適には、キノン骨格を有する化合物、取り分け、ナフトキノン骨格を有する化合物が用いられる。このナフトキノン骨格を有する化合物としては各種のナフトキノン誘導体を用いることが可能であるが、具体的には、例えば、2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)、2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)、2−メチル−1,4−ナフトキノン(VK3)、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)などが用いられる。キノン骨格を有する化合物としては、ナフトキノン骨格を有する化合物以外に、例えば、アントラキノンやその誘導体を用いることもできる。電子メディエーターには、必要に応じて、キノン骨格を有する化合物以外に、電子メディエーターとして働く一種または二種以上の他の化合物を含ませてもよい。キノン骨格を有する化合物、特にナフトキノン骨格を有する化合物を負極に固定化する際に用いる溶媒としては、好適にはアセトンが用いられる。このように溶媒としてアセトンを用いることにより、キノン骨格を有する化合物の溶解性を高めることができ、キノン骨格を有する化合物を負極に効率的に固定化することができる。溶媒には、必要に応じて、アセトン以外の一種または二種以上の他の溶媒を含ませてもよい。
酵素、補酵素、電子メディエーターなどを負極および正極に固定化するための固定化材としては、各種のものを用いることができるが、好適には、ポリ−L−リシン(PLL)をはじめとしたポリカチオンまたはその塩とポリアクリル酸(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAcNa))をはじめとしたポリアニオンまたはその塩とを用いて形成されるポリイオンコンプレックスを用いることができ、このポリイオンコンプレックスの内部に酵素、補酵素、電子メディエーターなどが含まれるようにすることができる。
プロトン伝導体としては種々のものを用いることができ、必要に応じて選択されるが、具体的には、例えば、セロハン、不織布、パーフルオロカーボンスルホン酸(PFS)系の樹脂膜、トリフルオロスチレン誘導体の共重合膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、芳香族ポリエーテルケトンスルホン酸膜、PSSA−PVA(ポリスチレンスルホン酸ポリビニルアルコール共重合体)や、PSSA−EVOH(ポリスチレンスルホン酸エチレンビニルアルコール共重合体)、含フッ素カーボンスルホン酸基を有するイオン交換樹脂(ナフィオン(商品名、米国デュポン社)など)などからなるものが挙げられる。
プロトン伝導体として緩衝物質(緩衝液)を含む電解質を用いる場合には、高出力動作時において、プロトンを介する酵素反応により、プロトンの増減が電極内部または酵素の固定化膜内で起きても、十分な緩衝作用を得ることができ、至適pHからのpHのずれを十分に小さく抑えることができ、酵素が本来持っている能力を十分に発揮することができるようにするために、電解質に含まれる緩衝物質の濃度を0.2M以上2.5M以下にすることが有効であり、好適には0.2M以上2M以下、より好適には0.4M以上2M以下、さらに好適には0.8M以上1.2M以下とする。緩衝物質は、一般的には、pKa が5以上9以下のものであれば、どのようなものを用いてもよいが、具体例を挙げると、リン酸二水素イオン(H2 PO4 - )、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(略称トリス)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、カコジル酸、炭酸(H2 CO3 )、クエン酸水素イオン、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(略称トリシン)、グリシルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(略称ビシン)などである。リン酸二水素イオン(H2 PO4 - )を生成する物質は、例えば、リン酸二水素ナトリウム(NaH2 PO4 )やリン酸二水素カリウム(KH2 PO4 )などである。緩衝物質としては、イミダゾール環を含む化合物も好ましい。このイミダゾール環を含む化合物は、具体的には、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、イミダゾール誘導体(ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、イミダゾール−2−カルボン酸エチル、イミダゾール−2−カルボキシアルデヒド、イミダゾール−4−カルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、イミダゾール−1−イル−酢酸、2−アセチルベンズイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、N−アセチルイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、N−(3−アミノプロピル) イミダゾール、5−アミノ−2−(トリフルオロメチル) ベンズイミダゾール、4−アザベンズイミダゾール、4−アザ−2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール)などである。緩衝物質としては、2−アミノエタノール、トリエタノールアミン、TES(N-Tris(hydroxymethyl)methyl-2-aminoethanesulfonic acid)、BES(N,N-Bis(2-hydroxyethyl)-2-aminoethanesulfonic
acid)などを用いてもよい。緩衝物質を含む電解質のpHは、好適には7付近であるが、一般的には1〜14のいずれであってもよい。必要に応じて、これらの緩衝物質も、上記の酵素や電子メディエーターの固定化膜に固定化してもよい。
この燃料電池は、およそ電力が必要なもの全てに用いることができ、大きさも問わないが、例えば、電子機器、移動体(自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船など)、動力装置、建設機械、工作機械、発電システム、コージェネレーションシステムなどに用いることができ、用途などによって出力、大きさ、形状、燃料の種類などが決められる。
電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品などである。
上述のように構成されたこの発明においては、電極の緩衝液に対する接触角を80°以上120°以下とし、あるいは、電極の材料として規則的な繊維構造を有する材料を用いていることにより、電極内部への緩衝液の染み込みやすさの大幅な向上を図ることができる。
この発明によれば、電極内部への緩衝液の染み込みやすさの大幅な向上により、高い電流値を安定して得ることができる燃料電池を実現することができる。そして、この優れた燃料電池を用いることにより、高性能の電子機器などを実現することができる。
この発明の第1の実施の形態によるバイオ燃料電池を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態によるバイオ燃料電池の負極の構成の詳細ならびにこの負極に固定化された酵素群の一例およびこの酵素群による電子の受け渡し反応を模式的に示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態によるバイオ燃料電池の全体構成の一例を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態によるバイオ燃料電池の全体構成の他の例を示す略線図である。 カーボンシルク(登録商標)の走査型電子顕微鏡像を示す図面代用写真である。 カーボンフェルトの走査型電子顕微鏡像を示す図面代用写真である。 カーボンペーパーの走査型電子顕微鏡像を示す図面代用写真である。 この発明の第1の実施の形態によるバイオ燃料電池の評価のために行ったクロノアンペロメトリーの測定に用いられた測定系を示す略線図である。 撥水剤により撥水性としたカーボンシルク(登録商標)またはカーボンフェルトを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いて行ったクロノアンペロメトリーの結果を示す略線図である。 撥水剤により撥水性としたカーボンシルク(登録商標)を用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の撥水剤濃度と電流密度および緩衝液の接触角との関係を示す略線図である。 撥水剤により撥水性としたカーボンシルク(登録商標)を用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の緩衝液の接触角と電流密度との関係を示す略線図である。 撥水剤により撥水性としたカーボンフェルトを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の撥水剤濃度と電流密度および緩衝液の接触角との関係を示す略線図である。 撥水剤により撥水性としたカーボンフェルトを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の緩衝液の接触角と電流密度との関係を示す略線図である。 撥水剤により撥水性としたカーボンペーパーを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の撥水剤濃度と電流密度および緩衝液の接触角との関係を示す略線図である。 撥水剤により撥水性としたカーボンペーパーを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の緩衝液の接触角と電流密度との関係を示す略線図である。 カーボンシルク(登録商標)の空隙率と撥水剤により撥水性としたカーボンシルク(登録商標)を用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の電流値との関係を示す略線図である。 空隙率が異なる7種類のカーボンシルク(登録商標)を撥水剤により撥水性としたものを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の電流値を示す略線図である。 空隙率が異なる4種類のカーボンシルク(登録商標)の走査型電子顕微鏡像を示す図面代用写真である。 撥水剤により撥水性としたカーボンシルク(登録商標)を用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極を用いてクロノアンペロメトリーを行った場合の正極内の電子メディエーターの濃度と電流値との関係を示す略線図である。 規則的な繊維構造を有するカーボンの他の例の走査型電子顕微鏡像を示す図面代用写真である。
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(バイオ燃料電池)
2.第2の実施の形態(バイオ燃料電池)
〈1.第1の実施の形態〉
[バイオ燃料電池]
図1は第1の実施の形態によるバイオ燃料電池を模式的に示す。このバイオ燃料電池では燃料としてグルコースを用いるものとする。図2は、このバイオ燃料電池の負極の構成の詳細ならびにこの負極に固定化された酵素群の一例およびこの酵素群による電子の受け渡し反応を模式的に示す。
図1に示すように、このバイオ燃料電池は、負極1と正極2とがプロトンのみ伝導する電解質層3を介して対向した構造を有する。負極1は、燃料として供給されたグルコースを酵素により分解し電子を取り出すとともにプロトン(H+ )を発生する。正極2は、負極1から電解質層3を通って輸送されたプロトンと負極1から外部回路を通って送られた電子と例えば空気中の酸素とにより水を生成する。
負極1は、例えば多孔質カーボンなどからなる電極11(図2参照)上に、グルコースの分解に関与する酵素と、グルコースの分解プロセスにおける酸化反応に伴って還元体が生成される補酵素(例えば、NAD+ 、NADP+ など)と、補酵素の還元体(例えば、NADH、NADPHなど)を酸化する補酵素酸化酵素(例えば、ジアホラーゼ)と、補酵素酸化酵素から補酵素の酸化に伴って生じる電子を受け取って電極11に渡す電子メディエーターとが、例えばポリマーなどからなる固定化材により固定化されて構成されている。
グルコースの分解に関与する酵素としては、例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を用いることができる。この酸化酵素を存在させることにより、例えば、β−D−グルコースをD−グルコノ−δ−ラクトンに酸化することができる。
さらに、このD−グルコノ−δ−ラクトンは、グルコノキナーゼとフォスフォグルコネートデヒドロゲナーゼ(PhGDH)との二つの酵素を存在させることにより、2−ケト−6−フォスフォ−D−グルコネートに分解することができる。すなわち、D−グルコノ−δ−ラクトンは、加水分解によりD−グルコネートになり、D−グルコネートは、グルコノキナーゼの存在下、アデノシン三リン酸(ATP)をアデノシン二リン酸(ADP)とリン酸とに加水分解することでリン酸化されて、6−フォスフォ−D−グルコネートになる。この6−フォスフォ−D−グルコネートは、酸化酵素PhGDHの作用により、2−ケト−6−フォスフォ−D−グルコネートに酸化される。
また、グルコースは上記分解プロセスのほかに、糖代謝を利用してCO2 まで分解することもできる。この糖代謝を利用した分解プロセスは、解糖系によるグルコースの分解およびピルビン酸の生成ならびにTCA回路に大別されるが、これらは広く知られた反応系である。
単糖類の分解プロセスにおける酸化反応は、補酵素の還元反応を伴って行われる。この補酵素は作用する酵素によってほぼ定まっており、GDHの場合、補酵素にはNAD+ が用いられる。すなわち、GDHの作用によりβ−D−グルコースがD−グルコノ−δ−ラクトンに酸化されると、NAD+ がNADHに還元され、H+ を発生する。
生成されたNADHは、ジアホラーゼ(DI)の存在下で直ちにNAD+ に酸化され、二つの電子とH+ とを発生する。したがって、グルコース1分子につき1段階の酸化反応で二つの電子と二つのH+ とが生成されることになる。2段階の酸化反応では、合計四つの電子と四つのH+ とが生成される。
上記プロセスで生成された電子はジアホラーゼから電子メディエーターを介して電極11に渡され、H+ は電解質層3を通って正極2へ輸送される。
電子メディエーターは電極11との電子の受け渡しを行うもので、燃料電池の出力電圧は、電子メディエーターの酸化還元電位に依存する。つまり、より高い出力電圧を得るには、負極1側ではよりネガティブな電位の電子メディエーターを選ぶとよいが、電子メディエーターの酵素に対する反応親和性、電極11との電子交換速度、阻害因子(光、酸素など)に対する構造安定性なども考慮しなければならない。このような観点から、負極1に作用する電子メディエーターとしては、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)やビタミンK3などが好適である。そのほかに、例えばキノン骨格を有する化合物、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの金属錯体、ベンジルビオローゲンなどのビオローゲン化合物、ニコチンアミド構造を有する化合物、リボフラビン構造を有する化合物、ヌクレオチド−リン酸構造を有する化合物なども電子メディエーターとして用いることができる。
電解質層3は負極1において発生したH+ を正極2に輸送するプロトン伝導体であり、電子伝導性を持たず、H+ を輸送することが可能な材料により構成されている。この電解質層3は、例えばすでに挙げたものの中から適宜選ばれたものを用いることができる。この場合、この電解質層3には、好適には、緩衝液としてイミダゾール環を有する化合物を緩衝物質として含むものが含まれている。このイミダゾール環を有する化合物は、例えばイミダゾールなどの、すでに挙げたものの中から適宜選ぶことができる。この緩衝物質としての、イミダゾール環を有する化合物の濃度は必要に応じて選ばれるが、好適には0.2M以上3M以下の濃度含ませる。こうすることで高い緩衝能を得ることができ、燃料電池の高出力動作時においても、酵素本来の能力を十分に発揮することができる。さらに、イオン強度(I.S.)は、あまり大きすぎても小さすぎても酵素活性に悪影響を与えるが、電気化学応答性も考慮すると、適度なイオン強度、例えば0.3程度であることが好ましい。ただし、pHおよびイオン強度は、用いる酵素それぞれに最適値が存在し、上述した値に限定されない。上記の緩衝液は、電解質層3だけでなく、負極1および正極2にも染み込んでいる。
上記の酵素、補酵素および電子メディエーターは、電極近傍で起こっている酵素反応現象を効率よく電気信号として捉えるために、固定化材を用いて電極11上に固定化されることが好ましい。さらに、燃料を分解する酵素および補酵素も電極11上に固定化することで、負極1の酵素反応系の安定化を図ることができる。このような固定化材としては、例えば、グルタルアルデヒド(GA)とポリ−L−リシン(PLL)とを組み合わせたものやポリアクリル酸ナトリウム(PAAcNa)とポリ−L−リシン(PLL)とを組み合わせたものを用いてもよいし、これらを単独で用いてもよいし、さらには他のポリマーを用いてもよい。グルタルアルデヒドとポリ−L−リシンとを組み合わせた固定化材を用いることにより、それぞれが持つ酵素固定化能力を大きく改善することが可能となり、固定化材全体として優れた酵素固定化能力を得ることができる。この場合、グルタルアルデヒドとポリ−L−リシンとの組成比は、固定化する酵素とこの酵素の基質とに応じて最適な値が異なるが、一般的には任意の組成比で構わない。具体例を挙げると、グルタルアルデヒド水溶液(0.125%)とポリ−L−リシン水溶液(1%)とを用い、それらの比を1:1、1:2、2:1などとする。
図2には、一例として、グルコースの分解に関与する酵素がグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、グルコースの分解プロセスにおける酸化反応に伴って還元体が生成される補酵素がNAD+ 、補酵素の還元体であるNADHを酸化する補酵素酸化酵素がジアホラーゼ(DI)、補酵素酸化酵素から補酵素の酸化に伴って生じる電子を受け取って電極11に渡す電子メディエータがACNQである場合が図示されている。
正極2は、緩衝液に対する接触角が80°以上120°以下の例えばカーボンなどからなる電極、あるいは、規則的な繊維構造を有する例えばカーボンなどの材料からなる電極上に酸素還元酵素およびこの電極との間で電子の受け渡しを行う電子メディエーターが固定化されたものである。規則的な繊維構造を有するカーボンとしては、種々のものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。酸素還元酵素としては、例えば、ビリルビンオキシダーゼ(BOD)、ラッカーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼなどを用いることができる。電子メディエーターとしては、例えばヘキサシアノ鉄酸カリウムの電離により生成されるヘキサシアノ鉄酸イオンを用いることができる。この電子メディエーターは、好適には、十分に高濃度、例えば、平均値で0.64×10-6mol/mm2 以上固定化する。
この正極2においては、酸素還元酵素の存在下で、電解質層3からのH+ と負極1からの電子とにより空気中の酸素を還元し水を生成する。
以上のように構成された燃料電池の動作時(使用時)において、負極1側にグルコースが供給されると、このグルコースが酸化酵素を含む分解酵素により分解される。この単糖類の分解プロセスで酸化酵素が関与することで、負極1側で電子とH+ とを生成することができ、負極1と正極2との間で電流を発生させることができる。
このバイオ燃料電池においては、正極2に用いられる電極の表面の少なくとも一部、好適には大半を撥水性とする。ここで、電極の表面とは、電極の外面と電極内部の空隙の内面との全体を含む。具体的には、例えば、この電極の表面の少なくとも一部に撥水材料を形成することにより撥水性としている。この撥水材料を電極内部の空隙の内面に形成するためには、この撥水材料は、この空隙の大きさより十分に小さい微粒子(粉末)状とし、空隙の内部の空間の大半がこの撥水材料により占められないようにする必要がある。この撥水材料としては種々のものを用いることができ、必要に応じて選択されるが、好適には、例えば、黒鉛粉末などのカーボン粒子が用いられる。このように、この電極の表面の少なくとも一部に撥水材料を形成するためには、例えば、この撥水材料を有機溶媒に分散させた撥水剤をこの電極の表面に塗布し、内部の空隙を通してこの電極に含浸させた後、有機溶媒を除去する。このような撥水剤を用いる場合、正極2に固定化された酵素を失活させないようにすることが重要であるが、有機溶剤としてすでに挙げたものを用いることにより酵素の失活を防止することができる。また、この撥水性の電極は、この電極に対する酵素や電子メディエーターなどの固定化物質の親水性が高いことが望ましい。
このバイオ燃料電池の全体構成の二つの例を図3および図4に示す。
図3に示すバイオ燃料電池においては、電解質層3を介して負極1と正極2とが対向した構造を有し、また、正極2の電解質層3と反対側の面に空気は透過し、燃料溶液12は透過しない材料からなるシート13が貼り付けられており、負極1の外面(上面および側面)の全体と負極1、正極2の側面および正極2の外部にはみ出した部分の電解質層3とに燃料溶液12(燃料溶液12の収容容器の図示は省略する)が接触するように構成されている。電解質層3としては例えば不織布が用いられるが、これに限定されるものではない。また、シート13としては例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブレンが用いられるが、これに限定されるものではない。このバイオ燃料電池においては、正極2の側面と燃料溶液12とが接触しているので、電池反応の進行に伴って正極2の内部に生成される水がこの正極2の側面を通って燃料溶液12中に戻されるため、燃料溶液12の濃度をほぼ一定に保つことができるという利点が得られる。
図4に示すバイオ燃料電池においては、電解質層3を介して負極1と正極2とが対向した構造を有し、負極1の外面(上面および側面)の全体と負極1および正極2の外部にはみ出した部分の電解質層3に燃料溶液12(燃料溶液12の収容容器の図示は省略する)が接触するように構成されている。電解質層3としては例えばセロハンが用いられるが、これに限定されるものではない。
電極の材料を変えて正極2の評価を行った結果について説明する。
正極2としては、次のようにして作製される酵素/電子メディエーター固定化電極を用いた。まず、規則的な繊維構造を有する材料として、シナノケンシ株式会社製のカーボンシルク(登録商標)を用意し、このカーボンシルクを1cm角に切り抜いた。このカーボンシルクの走査型電子顕微鏡像(倍率は100倍)を図5に示す。次に、ヘキサシアノ鉄酸イオン(100mM)を80μl、ポリ−L−リシン(1wt%)を80μl、BOD溶液を80μl(50mg/ml)、上記のカーボンシルクに順に染み込ませ、乾燥する。次に、このカーボンシルクを撥水剤中にディップし、このカーボンシルクの表面に撥水剤を塗布した。この撥水剤は、撥水材料として天然黒鉛を13〜18%、バインダーとしてポリビニルブチラールを3〜8%、カーボンブラックを8.4%、有機溶媒としてメチルイソブチルケトンを69.48%含有するものである。この後、乾燥を行って撥水剤中に含まれる有機溶剤を除去する。こうして、カーボンシルクの表面に撥水材料として黒鉛粉末を形成し、撥水性とした。こうして得られる酵素/電子メディエーター固定化電極の厚さは2mmである。これとは別に、電極材料としてカーボンシルクの代わりにカーボンフェルトまたはカーボンペーパーを用いたことを除いて上述と同様な正極2を作製した。カーボンフェルトの走査型電子顕微鏡像(倍率100倍)を図6に、カーボンペーパー(東レ製:型番 TGP−H−090)の走査型電子顕微鏡像(倍率100倍)を図7に示す。
正極2に固定化された酵素、すなわちBODに対する上述の撥水剤の影響を調べるために、この撥水剤に含まれる有機溶媒であるメチルイソブチルケトンとBOD溶液(5mg/ml 50mMリン酸緩衝液)とABTS溶液とを混合したところ、メチルイソブチルケトンと水とに相分離することが確認された。この場合、BODの活性は維持されていることが確認された。これは、BODは水相に存在するので、失活しにくいためである。ここで、メチルイソブチルケトンの水に対する溶解度は1.91g/100mLである。
さらに、有機溶媒としてヘプタン、ヘキサン、トルエン、イソオクタン、ジエチルエーテルを用い、これらの有機溶媒とBOD溶液とABTS溶液とを混合したところ、これらの有機溶媒と水とに相分離することが確認された。これらの場合も、BODの活性は維持されていることが確認された。ここで、ヘプタン、トルエンおよびイソオクタンは水に不溶であり、ヘキサンの水に対する溶解度は13mg/L、ジエチルエーテルの水に対する溶解度は6.9g/100mLである。
一方、有機溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)、アセトン、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、これらの有機溶媒とBOD溶液とABTS溶液とを混合したところ、これらの混合溶液は白濁することが確認された。このことから、BODが変性したことが分かる。すなわち、これらの有機溶媒を用いた場合には、BODは失活してしまう。ここで、これらのテトラヒドロフラン、アセトン、エタノールおよびN,N−ジメチルホルムアミドはいずれも水と混和するものである。
上述のようにして作製した酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極2の電気化学特性を測定した結果について説明する。使用した測定系を図8に示す。図8に示すように、正極2を作用電極とし、これを透気性のPTFEメンブレン14上に載せてプレスし、この正極2に緩衝液15を接触させた状態で測定を行った。緩衝液15内に対極16および参照電極17を浸漬し、作用極としての正極2、対極16および参照電極17に電気化学測定装置(図示せず)を接続した。対極16としてはPt線、参照電極17としてはAg|AgClを用いた。測定は大気圧で行い、測定温度は25℃とした。緩衝液15としては、イミダゾール/塩酸緩衝液(pH7、2.0M)を用いた。図8に示す測定系を用いてクロノアンペロメトリーを300秒間行った。正極2としては、撥水剤で撥水性とした厚さ2mmのカーボンシルクを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極および撥水剤で撥水性とした厚さ2mmのカーボンフェルトを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極を用いた。また、前者の酵素/電子メディエーター固定化電極のカーボンシルクに固定化された酵素(BOD)の量は、後者の酵素/電子メディエーター固定化電極のカーボンフェルトに固定化されたBODの量の2/3である。測定結果を図9に示す。図9より、撥水剤で撥水性としたカーボンシルクを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極2を用いた場合には、表面を撥水性としたカーボンフェルトを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極2を用いた場合に比べて、初期電流密度が大幅に向上していることが分かる。このことから、正極2の電極の材料として規則的な繊維構造を有するカーボンシルクを用い、しかもその表面を撥水性とすることの有効性が証明される。
図10は、撥水剤で撥水性としたカーボンシルクを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極2について、撥水剤の濃度を変えて、緩衝液の接触角および電流密度を測定した結果を示す。撥水剤の濃度は、撥水材料として天然黒鉛を18%、バインダーとしてポリビニルブチラールを4.12%、カーボンブラックを8.4%、有機溶媒としてメチルイソブチルケトンを69.48%含有するものの天然黒鉛の濃度を1としたときの規格値である。図11は、図10の結果に基づいて接触角に対して電流密度をプロットしたものである。図10より、撥水剤の濃度が0.05以上0.3以下で高い電流密度が得られることが分かる。また、図11より、接触角が80°以上120°以下で高い電流密度が得られ、90°以上120°以下でより高い電流密度が得られ、100°以上110°以下で特に高い電流密度が得られることが分かる。
図12は、撥水剤で撥水性としたカーボンフェルトを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極2について、撥水剤の濃度を変えて、緩衝液の接触角および電流密度を測定した結果を示す。撥水剤の濃度は、撥水材料として天然黒鉛を18%、バインダーとしてポリビニルブチラールを4.12%、カーボンブラックを8.4%、有機溶媒としてメチルイソブチルケトンを69.48%含有するものの天然黒鉛の濃度を1としたときの規格値である。図13は、図12の結果に基づいて接触角に対して電流密度をプロットしたものである。図12より、撥水剤の濃度が0.16以上1以下で高い電流密度が得られることが分かる。また、図13より、接触角が80°以上120°以下で高い電流密度が得られ、90°以上110°以下でより高い電流密度が得られることが分かる。
図14は、撥水剤で撥水性としたカーボンペーパーを用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極2について、撥水剤の濃度を変えて、緩衝液の接触角および電流密度を測定した結果を示す。撥水剤の濃度は、撥水材料として天然黒鉛を18%、バインダーとしてポリビニルブチラールを4.12%、カーボンブラックを8.4%、有機溶媒としてメチルイソブチルケトンを69.48%含有するものの天然黒鉛の濃度を1としたときの規格値である。図15は、図14の結果に基づいて接触角に対して電流密度をプロットしたものである。図14より、撥水剤の濃度が0.15以上1以下で高い電流密度が得られることが分かる。また、図15より、接触角が80°以上120°以下で高い電流密度が得られ、90°以上120°以下でより高い電流密度が得られ、特に90°以上100°以下で特に高い電流密度が得られることが分かる。
図16は、空隙率が異なる7種類のカーボンシルクを用いて上記と同様のクロノアンペロメトリー測定を行い、300秒後および600秒後の電流値(相対値)を空隙率に対してプロットしたものである。カーボンシルクは、シナノケンシ株式会社製の型番WF−24−0007、WF−24−0008、WF−24−0009、WF−24−0010、WF−24−0011、WF−24−0017、WF−24−0018である。図17は、図16の300秒後の電流値(相対値)を棒グラフで表したものである。図18にWF−24−0007、WF−24−0008、WF−24−0009、WF−24−0010の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)を示す。図18にはカーボンシルクの繊維の太さを示してある。
図17より、空隙率が88%以上94%以下で高い電流値が得られ、89%以上93%以下でより高い電流値が得られ、90%以上92%以下でさらに高い電流値が得られることが分かる。
次に、撥水剤で撥水性としたカーボンシルク(登録商標)を用いた酵素/電子メディエーター固定化電極からなる正極2内の電子メディエーターの濃度を変えて上記と同様のクロノアンペロメトリー測定を行った。図19は300秒後、600秒後および3600秒後の電流値(相対値)を正極2内の電子メディエーターの濃度に対してプロットしたものである。
図19より、正極2内の電子メディエーターの濃度を高くしても電流値は向上しないことが分かる。正極2からの電子メディエーターの溶け出しなどを考慮すると、電子メディエーターはできる限り少量とすることが好ましいので、電子メディエーターの濃度は0.15mol/l以上0.2mol/l以下とすることが最適であると考えられる。
以上のように、この第1の実施の形態によれば、正極2の電極の緩衝液に対する接触角を80°以上120°以下とし、あるいは、正極2の電極の材料として規則的な繊維構造を有する材料、例えばカーボンを用い、しかも正極2の電極の表面を撥水性としている。このため、正極2への緩衝液の染み込みやすさの大幅な向上を図ることができ、これによって高い電流値を安定して得ることができる。また、正極2の電極に固定化する酵素の量を少なくすることができるので、バイオ燃料電池の低コスト化を図ることができる。加えて、電解質層3が、イミダゾール環を含む化合物を緩衝物質として含む電解液を含むことにより、十分な緩衝能を得ることができる。このため、バイオ燃料電池の高出力動作時において、プロトンを介する酵素反応により、プロトンの増減がプロトンの電極内部または酵素の固定化膜内で起きても、十分な緩衝能を得ることができ、酵素の周囲の電解質のpHの至適pHからのずれを十分に小さく抑えることができる。このため、酵素が本来持っている能力を十分に発揮することができ、酵素、補酵素、電子メディエーターなどによる電極反応を効率よく定常的に行うことができる。これによって、高出力動作が可能な高性能のバイオ燃料電池を実現することができる。このバイオ燃料電池は、各種の電子機器、移動体、発電システムなどの電源に適用して好適なものである。
〈2.第2の実施の形態〉
[バイオ燃料電池]
このバイオ燃料電池においては、燃料として、多糖類であるデンプンを用いる。また、デンプンを燃料に用いることに伴い、負極11にデンプンをグルコースに分解する分解酵素であるグルコアミラーゼも固定化する。
このバイオ燃料電池においては、負極1側に燃料としてデンプンが供給されると、このデンプンがグルコアミラーゼによりグルコースに加水分解され、さらにこのグルコースがグルコースデヒドロゲナーゼにより分解され、この分解プロセスにおける酸化反応に伴ってNAD+ が還元されてNADHが生成され、このNADHがジアホラーゼにより酸化されて2個の電子とNAD+ とH+ とに分離する。したがって、グルコース1分子につき1段階の酸化反応で2個の電子と2個のH+ とが生成される。2段階の酸化反応では合計4個の電子と4個のH+ とが生成される。こうして発生する電子は負極1の電極11に渡され、H+ は電解質層3を通って正極2まで移動する。正極2では、このH+ が、外部から供給された酸素および負極1から外部回路を通って送られた電子と反応してH2 Oを生成する。
上記以外のことは第1の実施の形態によるバイオ燃料電池と同様である。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができるほか、デンプンを燃料に用いていることにより、グルコースを燃料に用いる場合に比べて発電量を増加させることができるという利点を得ることができる。
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
具体的には、例えば、規則的な繊維構造を有するカーボンとしては、図20に示すような規則性炭素繊維(東邦テナックス社製)を用いることもできる。
1…負極、2…正極、3…電解質層、11…電極

Claims (18)

  1. 正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、
    上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が、酵素が固定化され、緩衝液に対する接触角が80°以上120°以下である電極からなる燃料電池。
  2. 上記電極がカーボンからなる請求項1記載の燃料電池。
  3. 上記酵素が固定化された電極が正極である請求項2記載の燃料電池。
  4. 上記酵素が酸素還元酵素を含む請求項3記載の燃料電池。
  5. 上記電極の表面に撥水剤を形成することにより撥水性とした請求項4記載の燃料電池。
  6. 上記撥水剤が少なくとも撥水材料と水と相分離する有機溶媒とを含む請求項5記載の燃料電池。
  7. 正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が酵素が固定化された電極からなる燃料電池を製造する場合に、上記電極として緩衝液に対する接触角が80°以上120°以下である電極を用いる燃料電池の製造方法。
  8. 一つまたは複数の燃料電池を用い、
    少なくとも一つの上記燃料電池が、
    正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、
    上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が、酵素が固定化され、緩衝液に対する接触角が80°以上120°以下である電極からなる燃料電池である電子機器である。
  9. 正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、
    上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が、酵素が固定化された、規則的な繊維構造を有する材料からなる電極からなる燃料電池。
  10. 上記電極がカーボンからなる請求項9記載の燃料電池。
  11. 上記カーボンの空隙率が70%以上96%以下である請求項10記載の燃料電池。
  12. 上記酵素が固定化された、規則的な繊維構造を有する材料からなる電極が正極である請求項11記載の燃料電池。
  13. 上記酵素が酸素還元酵素を含む請求項12記載の燃料電池。
  14. 上記電極の表面に撥水剤を形成することにより撥水性とした請求項13記載の燃料電池。
  15. 上記撥水剤が少なくとも撥水材料と水と相分離する有機溶媒とを含む請求項14記載の燃料電池。
  16. 正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が酵素が固定化された電極からなる燃料電池を製造する場合に、上記電極として規則的な繊維構造を有する材料からなる電極を用いる燃料電池の製造方法。
  17. 上記電極がカーボンからなる請求項16記載の燃料電池の製造方法。
  18. 一つまたは複数の燃料電池を用い、
    少なくとも一つの上記燃料電池が、
    正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、
    上記正極および上記負極のうちの少なくとも一方が、酵素が固定化された、規則的な繊維構造を有する材料からなる電極からなる燃料電池である電子機器である。
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JP2015204198A (ja) * 2014-04-14 2015-11-16 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 微生物燃料電池および浮遊体

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