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性別世代関係なく生活を苦しめるコロナ。中でも子どもを抱える母親の悩みは深刻だ。photo/iStock
性別世代関係なく生活を苦しめるコロナ。中でも子どもを抱える母親の悩みは深刻だ。photo/iStock

1杯のうどんを子どもと4人で…母たちを襲うコロナ貧困の現実

支援団体が語る「母親支援」の重要性

泣いてしまうママが多いことに気づいた

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年から生活に困窮する人や自殺する人が急増している。特に影響を受けているのが女性たちだ。昨年の緊急事態宣言直後、仕事を失った女性は約70万人(男性の約2倍)に上った(※1)。

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また、収入が新型コロナの感染拡大前と比べて3割以上の大幅減となった女性は21.9%(男性15.6%の1.4倍)、シングルマザーでは24.6%と約4人に1人が生活の困窮を抱えている(※2)。2020年は、例年に比べて自殺者も増えた。特に女性は深刻で、昨年10月は去年の82.8%も増加している(※3)。

子どもを連れ、養育費も支払われずに貧困に陥るシングルマザーも多い。しかも、貧困に苦しむ女性の中にはDVを受けていながら支援に結びつかない女性たちもいる。困難な状況にある女性への支援は、届いているのだろうか。

「女性は、もともと非正規で雇用が不安定な人がとても多い。コロナ禍で、さらに弱い立場に追いやられ、苦しい思いをしているママがたくさんいます。でも実は、母親に向けた公的支援はまだまだ足りていない。社会全体で助ける仕組みが必要です」

こう訴えるのは、地域で子育てママ向けのサロンやシングルマザー支援、フードバンク活動などを行う『NPO法人子育てパレット』代表理事の三浦りささんだ。

三浦さんら立ち上げメンバーは、自宅サロンでベビーマッサージをする中で、ちょっとした会話の中で泣いてしまうママが多いと気づいた。自分たちに何かできないか、不安や悩みがある子育てママたちの居場所を作ろうと思い立ち、東京都足立区を拠点にもう10年以上活動を続けている。

 

※1:内閣府 2020年11月19日 コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会「緊急提言
※2:2020年10月の収入『新型コロナウイルスと雇用・暮らしに関するNHK・JILPT共同調査
※3:2020年12月10日厚生労働省自殺対策推進室『警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等

活動の中で出会うのは子どもの涙以上にママの涙だという。photo/Getty Images

昨年夏からフードバンク登録者が急増

2020年3月の緊急事態宣言後、フードバンクの利用者が急増したという。3月に60人ぐらいだった登録者は、8月以降270人ほどに増えた(2021年1月現在327人)。月1回40世帯だった配布数を、一時期は月2回80世帯に増やし対応したけれど、数は足りない。会員用のLINEで希望者を募ると、募集開始から数分で、募集世帯を超える申し込みが殺到する。

足立区には12ヵ所のフードバンクが立ち上がっていて、子育てパレットは、特に経済的に厳しいひとり親世帯に特化している。

「食料を配るだけでなく、ママたちとつながることも目的のひとつなので、お話を聞く時間を設けています。小さい赤ちゃんを連れてきていたら『何ヵ月?』と声をかけたりして、何気ない会話を続けていると、悩みごとを話す方も多いのです。

雇い止めにあった、シフトを減らされた、子どものために頑張らなきゃ行けないと思うと苦しい、みんなのようにいいママになれそうにない…など、困っている問題は様々です」

泣きながら食料を受け取る女性、9月に派遣が切られ「仕事が見つからないと生活していけない」と訴える女性もいた

「以前は、冷蔵品や乳製品もあったけれど、今は保存が効く常温品がほとんど。コロナ禍になってフードバンクを実施する団体や自治体が増え、1世帯に届けられる品物は減ってきています。数が足りなくなると、他のフードバンクを紹介することも。でも、他のところは女性限定ではないので、私たちのところに戻ってくるママも多い。『ここなら女性だけだから安心』『話を聞いてもらえるから』という声も多いですね」

『つらい、眠れない』LINE悩み相談も増えた

コロナ禍の昨年は、24時間365日稼働するLINEでの悩みごと相談も多くなった。三浦さんらは「大丈夫、ひとりじゃないよ!」と呼びかける。月ほんの数件だったシングルマザー専用相談は、今では月70件ほど。悩みをつぶやくだけでもいいし、1対1のトークも可能だという。通常はSNS上でのやり取りが中心だが、ちょっと心配なママには、スタッフが個別に声をかけ、話を聞くようにしている。

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「夜中に『つらい、眠れない』とつぶやいている人がいたら、翌朝に『私たちのサロンに来ない?』と誘うこともあります。布団を敷いてまずはママに寝てもらうのです。その間、私たちが赤ちゃんの面倒をみています」

三浦さんらが心がけているのが、話を聞くときの「3時間ルール」というものだ。

「経験から学んだのですが、大体の人は泣きじゃくっていても、3時間も話すと笑顔になって帰ってくれる。考えが整理されて元気になるんですね。『聴く』という字は、耳編に十四の心と書きますよね。それくらい耳を傾けることが大切なのです。

中には、DVを受けているんじゃないか、このままでは子どもを虐待してしまいそう…と気づくケースもある。緊急性があると感じたら、公的機関の支援につないでいきます。必要なのは子ども支援センターなのか、保健師さんの支援なのか、シェルターなのか。つながったらなんとなる。私たちは、ママたちの伴奏者の役割ができればと思っています」

この年末年始、東京都は、様々な悩みを抱える女性が困窮して孤立してしまうことがないよう、女性向けの相談体制を例年より強化した。だが「そうした情報は私たちのような地域で活動するNPOには必ずしも降りてこない。十分な連携ができていないように思います。自分から電話をかけたり、相談したいと出向いてこれるママたちはそれほど多くないという現実も、多くの人に知ってほしい」と三浦さんは話す。

「さらに小さい子を抱えて仕事までしていると、生活に追われネットで情報を検索する余裕すらない。行政からのお知らせも目に入っていないことが多々あります。

また、日本の女性は我慢強い方が多く驚きます。『私は1日1食でも食べられているから、まだいい。もっと大変な人がいるから…』と支援を受けることを遠慮してしまう。パートナーのDVによって貧困が生まれている家庭もあるのですが、怪我をするまで殴られてやっとDVと気づくケースも少なくありません。助けを求める『つながる第一歩』が踏み出せないために、情報格差が生まれ、ますます一人で悩んでしまう状況が生まれています

子育ては十人十色。いろんな子育てがあっていいという思いを伝えるため、1年前からは『ドットリボン®️』活動を始めた。

「子ども虐待防止を訴えるオレンジリボン、女性への暴力の根絶を目指すパープルリボン運動がありますよね。同じように、『頑張らなくていいよ』とママを応援するためのマークがドットリボン®️です。できたら、国が認めて広めてくれたらと思っています。コロナ禍で限界に来ているママたちに、『頑張らなくていいよ』『助けてと声を出していいんだよ』と、声をかけられる社会にしましょう」と呼びかけている。

『ドットリボン®️』ドット柄は「子育ては十人十色」を表しているという。写真/NPO法人子育てパレット
経済的DVは見えにくく、助けてと言いにくい

DVには、暴言を吐くことや、生活費を渡さないこと、友人との付き合いを制限することも含まれる。どちらかの親が子どもの前で、配偶者に暴力をふるったり、暴言を吐いたりする行為も『面前DV』といって、子ども虐待につながる。

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DVの種類をリストにしたものを見せると、やっと自分がDVを受けていたのだと気づいてくれます。ただ、大抵の人は、すぐに家を出られる状況にないので、『一緒に考えていこう』『こんな選択肢があるよ』と、励まし寄り添いながら支援を続けます。一旦気づくと、行動を始める女性は多いです」

あるとき、「横断歩道でぼーっとしていたから」と、地域の女性が身重の女性を、子育てパレットが運営するサロンに連れてきたという。

「話を聞くと、育休中の手当てでなんとか生活をしてきたけれど、2人目を生む寸前になってもパートナーがお金を少ししか渡してくれないと。その女性は1歳に満たない赤ちゃんを連れていて、第一子出産後すぐに妊娠したようでした。結局、シェルターに入り、そこで出産したのですが、その後、支援員が止めるのも聞かず、パートナーの元に戻ってしまいました。再び生活が立ち行かなくなり、私たちのところにきたときには、ガリガリにやせ細っていました。パートナーとは離れて実家へ身を寄せたらどうかと提案し、新幹線代も工面しました。

でも、今度は実家の母親が『私だって我慢してきたのに、なぜ頑張れないの? 戻ってきてはいけない』と言って、娘を受け入れようとしない。私たちと彼女とで彼女の母親を2時間かけて説得して、やっと実家に身を寄せてもらったというケースもありました 」

また、ある女性は「夫は服も買って食べたいものを食べ贅沢にしているのに、私は1杯のうどんを子どもと4人で食べている」と言って泣いた。「がんになり、仕事も辞め収入がなくなってしまった。それなのに夫が仕事を辞めてしまったので保険証もなければ生活費もない。治療も受けられない」と途方に暮れている女性もいた。「夫にひとりで長時間外出することを許されていない、買い物に行くと言ってここ(子育てパレットのサロン)に来た」と話す女性もいたという。これは精神的DVの可能性がある。

夫に長期間外出を許されず、買い物と言って相談に来る女性もいた。photo/iStock

『母親なんだから頑張りなさい』は励ましではなく刃

「幸い、足立区には行政にキーマンになる職員がいて、地域の議員や支援機関、私たちのような支援団体やお店、企業などの連携が取れるよう、熱心に働きかけてくれているので、困った人をすくい上げる仕組みがあります。

苦しいときに我慢してしまう母親がまだまだ多いので、つながる場はたくさんあったほうがいい。私たちは支援が必要な人を見つけて公的機関につなぎますし、地域の保健師や支援員さんが『話を聞いてもらえるよ』と私たちのサロンを紹介してくれることもあります。このようなモデルが全国各地域に必要です」

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三浦さんらが目指しているのは、ひとり親世代をはじめ、ママたちが苦しいときに「助けて!」と声を出せる街づくりだ。三浦さんのような女性支援のNPOのスタッフは、いわば支援が必要な女性を見つけて必要なケア(機関)を見極める、コーディネーターのような役割も果たしている。現場でたくさんの母親を見てきたからこそ、課題がしっかりと見えている。

「結局はまだまだ男性社会のという現状の中、妊娠・出産、離婚などの要因で雇用が不安定になるのは女性がほとんどです。『母親なんだから、我慢しなさい』という風潮がさらに追い討ちをけています。就職するにも『このくらいの条件でも、仕事があるだけマシ。頑張るしかないんだよ』と言われて、低賃金で使われているのに、我慢しなきゃならない現状があります。納得できなくても、シフトを減らされたら生活ができなくなるから黙るしかない。そうした我慢を強いられる負の連鎖が、ずっとずっと続いているのです。『お母さんなんだから頑張りなさい』が、どれだけ母親たちを苦しめているか、気づいてほしい」

目黒区の結愛ちゃん虐待事件も、大阪2児餓死事件も、支援にうまくつながれていないことが母親の孤立という状況を生み出し、事件につながってしまった。

「相互扶助が社会に広がれば、お母さんはもう少し楽になって、笑顔になれます。自分らしく働いて、弱みを握られなくても生きていけるようにしてほしい。社会が変わらなければ、苦しいお母さんは増え続けていきます。虐待は世代間連鎖を生むことが知られています。育児をするようになると、子ども時代のつらい思い出がよみがえってきて、ママたちの心が揺れてしまうこともあります」

三浦さんたちは「子どもの支援活動には助成金がたくさんあるのに、母親支援の活動には助成がなく悔しい思いをしてきた」と明かす。
母親支援は子ども の支援と“地続き”なのだということをわかってほしい

子育てをする母親が幸せに暮らせる支援こそが今求められているのだ。photo/Getty Images

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