正直、『都会のトム&ソーヤ』の映画化としては物足りない部分がかなりあります。竜王創也はもっと毒舌でポンコツだし、内藤内人のサバイバル能力はこんなもんじゃない。でも「はやみねかおる作品」の映画化としては最高です。特筆すべきはあのピエロ。都会トム単体だとあのピエロはいなくても話は充分成立しますが、はやみね作品を、赤い夢を実写化すると考えると必要不可欠な存在です。そしてキャストの子どもたち。主演の城桧吏くん、ヒロインの豊嶋花さんこそ経験の多い役者さんですが、周りの同級生役は映画初出演の子が多く、中には演技そのものが初めてというメンバーもいます。ひとつの作品を通して、同年代の子たちと一緒に経験を積ませて役者として成長させる。視聴者はドラマパートを含め小さな俳優さんたちの成長を見守る。この流れこそが、はやみねかおるがデビュー当時から書き続けてきた「この世界は子どもが主役」「大人は子どもから世界を預かっていて、少しでもより良くして子どもに返す役割」という信念を感じ取れるものではないでしょうか。
これからの長い人生、役者として頑張っていく子どもたちの成長を支える作品になっている。そしてピエロを通して原作ファンに赤い夢の片鱗を見せてくれる。それだけで「はやみねかおる作品の映画化一作目」として大成功だと思うのです。